JP6719363B2 - メタン酸化除去用触媒の製造方法およびメタン酸化除去用触媒 - Google Patents
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Description
本明細書において、「酸化当量以上の酸素を含む」とは、メタン酸化除去用触媒に接触させる被処理ガスが、そこに含まれる炭化水素、一酸化炭素などの還元性成分を完全に酸化するのに必要な酸化当量以上に、酸素、窒素酸化物などの酸化性成分を含んでいる、すなわち過剰の酸素を含む状態を意味する。
さらに、被処理ガスが燃焼排ガスである場合には、燃料中に含まれている硫黄化合物に由来する硫黄酸化物(SOx)などの反応阻害物質が必然的に含まれているので、触媒表面に反応阻害物質が析出することにより、触媒活性が経時的に著しく低下することは避けがたい。
過剰量の酸素が存在する排ガスに含まれる低濃度炭化水素の酸化用触媒として、ハニカム基材上にアルミナ担体を介して7g/L以上のパラジウムおよび3〜20g/Lの白金を担持した触媒も開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この触媒を用いても、長期にわたる耐久性は十分ではなく、特に硫黄酸化物が共存する条件下では、触媒活性の経時的な劣化が避けられない。
メタンを含有し酸素を過剰に含む燃焼排ガス中の炭化水素の浄化用触媒であって、酸化ジルコニウムに、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種とイリジウム(Ir)とを担持してなり、比表面積が2〜60m2/gである触媒が、硫黄酸化物共存下で、400℃程度という低い温度であっても高いメタン酸化活性を維持し続けることが開示されている(特許文献5参照)。酸化ジルコニウム担体にイリジウムおよび白金を担持してなる触媒が、硫黄酸化物共存下でも高いメタン酸化活性を示すことは、今日では広く知られるようになっている(例えば、特許文献6、非特許文献4など)が、実用的な観点では、なお課題は残る。
貴金属コロイドを排ガス浄化触媒の調製に用いた例も多く知られている。特許文献7には、塩化白金酸(H2PtCl6)を、ポリビニルピロリドンを保護剤としてメタノールと水の混合溶媒中で加熱還流して白金コロイドを生成し、減圧下でメタノールを除いたのち、Al2O3担体を懸濁させ、ポリアクリルアミド水溶液を添加し、ろ過、洗浄を経て調製したPt/Al2O3触媒が、通常の含浸法により調製した触媒よりもNOxの浄化性能が高いことが示されている。
特許文献8でも3.75%Pd−0.75%Pt/Al2O3触媒12gの調製に、エタノールと純水の1:1混合水溶液500mLを用いており、担体質量の30倍を超える溶液を扱っているため現実的でない。
通常の含浸法では、担体と同程度の質量の含浸液を用いるのが一般的である。これに対し、コロイド法において、上記の先行文献のように担体質量の数十倍〜数百倍の溶液を扱うことが必要であれば、その経済性は著しく損なわれるため現実的でない。
担持には、生成した高分子保護金属コロイド粒子を含む貴金属コロイド溶液に担体を投入した後、ろ過ないしこれに類する固液分離法(成型担体を用いる場合には単純な液切りも選択できる)で固液分離する方法と蒸発乾固する方法がある。
蒸発乾固する場合には、前述したとおりの多量となる溶液から溶媒を除去することになり、極めて多量のエネルギーを消費する問題がある。ろ過は、消費エネルギーの観点では相対的に優れるが、金属コロイド粒子のうち担体に吸着されないものが生じる点が問題となる。
特許文献8では、いずれの工程を採用したのか明記がないが、溶媒を除去したとの記載から、蒸発乾固したものと推測される。特許文献7では、ろ過を採用しており、記載された白金担持量から逆算すると用いた白金のすべてがAl2O3担体に担持されたと推測される。しかし、これはAl2O3担体の場合であって、ZrO2担体の場合にも同様に金属コロイド粒子のすべてが担体に担持されるかどうかは不明である。
そして、酸化ジルコニウム担体表面に複合貴金属コロイド粒子を吸着させて配置した後に、当該複合貴金属コロイド溶液の液相成分(液体成分)を、ろ過などして流出させるという操作により、複合貴金属コロイド粒子が担持された酸化ジルコニウム担体と、液相成分とを分離して、複合貴金属コロイド粒子が担持された酸化ジルコニウム担体を得ることができる。
また、耐硫黄性の高いイリジウム−白金を活性成分とするので、被処理ガス中に硫黄酸化物や硫化水素などの硫黄化合物を含む場合も、触媒活性が大きく低下することはない。
また、脂肪族アルコールを、貴金属イオンの還元剤として作用させ、複合貴金属コロイド粒子を適切に調製することができる。
また、結着性ないしは成膜性のある高分子であるポリビニルピロリドンを保護高分子として用いることで、混合水溶液に酸化ジルコニウム担体を浸漬し、固液分離したのち、乾燥しても、焼成する以前の期間において、イリジウムと白金との複合貴金属が酸化ジルコニウム担体に担持された状態を良好に維持することができる。
なお、本実施形態においては、混合水溶液のイリジウム含有量が0.8〜2質量%かつ白金含有量が0.5〜2質量%である場合に、より良好な結果を示すものと考えられる。特に、混合水溶液のイリジウム含有量が0.8〜2質量%かつ白金含有量が0.5〜1.2質量%である場合に、さらに良好な結果を示すものと考えられる。
以下、本実施形態に係るメタン酸化除去用触媒と、その製造方法について概略構成を説明する。
このような酸化ジルコニウムは、市販の触媒担体用酸化ジルコニウムをそのままでもよいし、あるいは空気などの酸化雰囲気下において500℃〜800℃で焼成するなどの方法により調製することができる。
また、本実施形態において結晶相含有比率とは、X線回折測定などの公知の方法により求めた値が適用できる。
また、個々の複合貴金属コロイド粒子のイリジウム/白金比はできるだけ揃っているほうが良く、複合貴金属コロイド粒子の中に、イリジウムに富む粒子と白金に富む粒子が存在する場合には、所望の性能が得られないことがある。
これに対し、本願発明者らは、イリジウム−白金系のメタン酸化触媒においては、イリジウム含有量が0.8〜3質量%かつ白金含有量が0.5〜2質量%の混合水溶液を用いて調製すると高活性が得られることを見出した。また、イリジウム含有量が0.8〜2質量%かつ白金含有量が0.5〜2質量%の混合水溶液を用いて調製するとさらに高活性が得られることを見出した。とくに、イリジウム含有量が0.8〜2質量%かつ白金含有量が0.5〜1.2質量%の混合水溶液を用いて調製すると、含浸法で調製された触媒と比較して、より少ない貴金属量でも、高活性が得られることを見出した。
本実施形態に係るメタン酸化除去用触媒の製造方法では、まず硝酸イリジウム、ジニトロジアンミン白金、保護高分子および脂肪族アルコールを含み、イリジウム含有量が0.8〜3質量%かつ白金含有量が0.5〜2質量%の混合水溶液を調製し、これを加熱してイリジウムおよび白金の複合貴金属コロイド粒子を含む複合貴金属コロイド溶液を調製する。
具体的な脂肪族アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノールなどが含まれる。エタノールが特に好ましい。エタノールとしては、エタノールに対してたとえばメチルアルコール、アセトアルデヒド、ベンゼン、ピリジンなどを変性材として添加したいわゆる変性アルコールをも含む。
なお、本例においてカルボン酸類としては、例えば、グリコール酸、クエン酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、乳酸、コハク酸、酒石酸やこれらのうちから1種または2種以上の組み合わせも含まれる。
以下、酸化ジルコニウム担体の表面に担持するプロセスを具体的に説明する。
まず、複合貴金属コロイド粒子を含む複合貴金属コロイド溶液中に、酸化ジルコニウム担体を浸漬して酸化ジルコニウム担体表面に複合貴金属コロイド粒子を分子間力で付着(吸着)させて配置する。ついで、ろ過(液相流出)などの手段で固液分離する固液分離中間体を得る。ここで、固液分離中間体のうち、ろ過により得たものをろ過後触媒前駆体とする。
ついで、固液分離中間体を乾燥して酸化ジルコニウム担体の表面に複合貴金属微粒子が配置された溶液乾燥後触媒前駆体を得る。
さらに乾燥後触媒前駆体を焼成し、酸化ジルコニウム担体の表面に配置された複合貴金属微粒子を酸化ジルコニウム担体表面に固定して、複合貴金属微粒子が担持されたメタン酸化除去用触媒を得る。
ここで、配置するとの概念には、付着した状態と、担体の表面に付着状態が固定化された状態、担体の表面に相溶して存在する状態、などの、担体の表面に位置する概念を含む。
乾燥温度は80〜120℃程度とし、乾燥時間は1〜20時間程度とする。
焼成温度は、高すぎる場合には、担持された金属の粒成長が進んで高い活性が得られない。逆に、低すぎる場合には、焼成が十分に行われないので、メタン酸化除去用触媒の使用中に担持された金属粒子が粗大化して、安定した活性が得られないおそれがある。
いずれの場合にも、必要に応じて、バインダーを添加することができる。好ましい一例として、酸化ジルコニウム担体にバインダー(例えば酸化ジルコニウムゾル)と適量の水および必要に応じて増粘剤を添加してスラリーを調製し、これを耐火性ハニカム上にコートして、乾燥した後650〜750℃で焼成することで、耐火性ハニカム上に酸化ジルコニウム層を形成し、これに複合貴金属コロイド粒子を担持する方法が挙げられる。
本実施形態に係るメタン酸化触媒は、耐硫黄性の高いイリジウム−白金を活性成分とするので、被処理ガス中に硫黄酸化物や硫化水素などの硫黄化合物を含む場合も、触媒活性が大きく低下することはない。体積基準で0.1〜30ppm程度の硫黄酸化物(二酸化硫黄、三酸化硫黄)や硫化水素が含まれていても、一定の活性を維持することができる。
触媒1〜21、および29〜31は、酸化ジルコニウム担体を貴金属コロイド溶液に浸漬してから固液分離して乾燥、焼成して得たものである。これら触媒1〜21、29〜31が本発明の実施例である。
触媒22は、酸化ジルコニウム担体を貴金属コロイド溶液に浸漬してから蒸発乾固し、焼成して得たものである。触媒22は、本発明の比較例である。
触媒23〜28は、酸化ジルコニウム担体を、貴金属を含む水溶液に浸漬してから蒸発乾固し、焼成して得たものである。触媒23〜28は、本発明と対比される従来の技術であり、比較例である。
なお、これらメタン酸化除去用触媒の製造条件は表1に、メタン酸化除去用触媒および触媒活性等に係る物性などの評価値は別途記載する場合を除き、表2に一覧する。
表1に示すように、塩化イリジウム(IV)酸塩酸溶液、塩化白金(IV)酸を用いて、4質量%のイリジウムと2.67質量%の白金を含む水溶液6g(Ir−Pt混合液)を調製した。このIr−Pt混合液のイリジウム/白金の質量比はIr4%−Pt2.67%である。つまり、このIr−Pt混合液中のイリジウム/白金の質量比は約1.5である。純水86gとエタノール(特級)100gを混合しこれにポリビニルピロリドン(PVP)K−30(和光特級)8gを溶解した(PVP−エタノール溶液)。Ir−Pt混合液とPVP−エタノール溶液とを混合して混合水溶液とし、スターラーで1時間撹拌してなじませた。
なじませた後この混合水溶液を、還流冷却管を付けたナス型フラスコに入れ、フラスコ内を不活性ガス(窒素)で置換したのち、85℃のオイルバスで1時間加熱還流し、イリジウムおよび白金からなる複合貴金属コロイド粒子を含む複合貴金属コロイド溶液を調製した。本例では、複合貴金属コロイド溶液の色は、混合水溶液と比較してやや黒変する。
そして、酸化ジルコニウム担体を浸漬した複合貴金属コロイド溶液を、複合貴金属コロイド粒子が酸化ジルコニウム担体の粒子表面に吸着(付着)可能な状態とするために、複合貴金属コロイド溶液と酸化ジルコニウム担体との分散液として調整している。
さらに複合貴金属コロイド粒子の酸化ジルコニウム担体の粒子表面への吸着を促進するために、当該分散液を、1時間スターラーで撹拌している。
複合貴金属コロイド溶液中のイリジウムおよび白金がすべて触媒1に担持されたと仮定した場合、イリジウムの担持量の推算値は3質量%、白金の担持量は2質量%となる。この推算値と比較するとイリジウムの担持量は1割程度、白金の担持量は4割程度にとどまったことになる。また、イリジウムと白金の担持量の比も、これらの仕込み量の比とは大きく異なり、イリジウム/白金の質量比(Ir/Pt)は0.33であった。
メタン転化率(%)=100×(1−(CH4−OUT)/(CH4−in))
式中、「CH4−OUT」とは触媒層出口のメタン濃度を示し、「CH4−in」とは触媒層入口のメタン濃度を示す。
PVP−エタノール溶液の配合量を表1に示す通り変えた他は、触媒1と同様にして、触媒2〜4を製造した。これらの触媒のイリジウムおよび白金担持量、並びにメタン転化率は表1に示す通りであった。ナノコロイドを調製する際の溶液におけるPVP−エタノール溶液の割合を減らし、溶液中のイリジウムおよび白金濃度を高めることで、イリジウムおよび白金の担持量が向上するとともに、メタン転化率もある程度向上したが、なお不十分な結果にとどまった。
ジニトロジアンミン白金(Pt(NO2)2(NH3)2;白金60.5質量%含有)10gを20質量%硝酸50gに加熱溶解して、白金として10.1質量%を含有する硝酸酸性のジニトロジアンミン白金水溶液を得た。塩化イリジウム(IV)酸塩酸溶液に代えて硝酸イリジウム溶液を、塩化白金(IV)酸に代えて前記の硝酸酸性ジニトロジアンミン白金水溶液を用いた他は、触媒1と同様にして触媒5を得た。蛍光X線分析の結果、触媒5のイリジウム担持量は0.17質量%、白金担持量は0.15質量%であった。触媒5におけるメタン転化率は、表2に示すように400℃において6.7%(昇温時)および5.3%(降温時)にとどまった。
PVP−エタノール溶液の配合量を表1に示す通り変えた他は、触媒5と同様にして、触媒6、7、8を製造した。これらのメタン酸化除去用触媒のイリジウムおよび白金担持量は表1に示す通りであった。溶液中のイリジウムおよび白金濃度を高めることで、イリジウムおよび白金の担持量が向上した。触媒8においては、イリジウム担持量0.55質量%、白金担持量0.48質量%と、担持量は仕込み値の2割程度に過ぎず、合計の担持量は触媒1と大差なかったが、メタン転化率は、400℃において39.7%(昇温時)および35.9%(降温時)となり、大きく改善された。これは、複合貴金属コロイド溶液におけるイリジウムと白金の比率が仕込み値に近く、適切な値に制御されたためと考えられる。
混合水溶液に、シュウ酸1gを添加したほかは、触媒3と同様にして、触媒9を製造した。蛍光X線分析の結果、触媒9のイリジウム担持量は0.31質量%、白金担持量は0.63質量%であった。触媒3と比較すると、担持量もメタン転化率も低く、シュウ酸の添加は、触媒活性の向上はもたらさなかった。
混合水溶液に、シュウ酸1gを添加したほかは、触媒8と同様にして、触媒10を製造した。蛍光X線分析の結果、触媒10のイリジウム担持量は0.86質量%、白金担持量は0.57質量%であった。メタン転化率は、400℃において55.8%(昇温時)および57.4%(降温時)となり、触媒8と比べて、大きく改善された。触媒9とは異なり、イリジウムおよび白金化合物として硝酸塩を用いた場合には、シュウ酸の添加による触媒活性の向上が見られた。
混合水溶液に、クエン酸2gを添加したほかは、触媒3と同様にして、触媒11を製造した。蛍光X線分析の結果、触媒11のイリジウム担持量は0.35質量%、白金担持量は0.75質量%であった。メタン転化率は触媒3と同程度であった。
混合水溶液に、クエン酸2gを添加したほかは、触媒8と同様にして、触媒12を製造した。蛍光X線分析の結果、触媒10のイリジウム担持量は0.82質量%、白金担持量は0.59質量%であった。メタン転化率は触媒8よりも向上した。
PVP−エタノール溶液におけるPVP配合量を変えた他は触媒10と同様にして、触媒13、14を製造した。PVP配合量を低くすると、担持量およびメタン転化率はやや低下した。
PVP−エタノール溶液におけるPVP配合量を変えた他は触媒8と同様にして、触媒15、16を製造した。PVP配合量を低くすると、担持量およびメタン転化率は向上した。触媒13、14とは異なる傾向であるが、シュウ酸の有無により、PVP配合比の効果が変化したものと考えられる。
PVP−エタノール溶液におけるPVP、純水、エタノールの配合量を減らすとともに、混合水溶液に、シュウ酸0.5gを添加した他は触媒8と同様にして、触媒17〜19を製造した。メタン転化率(降温時)は67.7〜73.8%と触媒8の35.9%と比較して大きく向上したが、これは、イリジウム担持量が1.14〜1.39質量%、白金担持量が0.76質量%〜0.90質量%と触媒8よりも大きく向上し、またイリジウム/白金の担持量の比も仕込み値の1.5に近づいたことによると推測される。
シュウ酸添加量を0.25gまたは添加しないものとした他は触媒18と同様にして、触媒20、21を製造した。シュウ酸添加量を減らすと、メタン転化率は明らかに低下した。これは、シュウ酸がイリジウムおよび白金からなる複合貴金属コロイド粒子の形成と担体への担持において好適な作用をしていることを示している。
複合貴金属コロイド溶液に酸化ジルコニウム担体を投入し1時間スターラーで撹拌した後のろ過(液相流出)、乾燥の工程に代えて、蒸発乾固を行った他は、触媒18と同様にして触媒22を製造した。メタン転化率(降温時)は77.6%と触媒18の73.8%に比べて向上は見られたが、イリジウムおよび白金担持量が触媒22の方が2倍以上あることを考慮すると、貴金属量当たりの活性は逆に大きく低下したと言える。これは、ろ過しても担体上に吸着して担持されている複合貴金属コロイド粒子と比較して、蒸発乾固で強制的に付着させたイリジウムおよび白金(ろ過した場合には担持されず、濾液に流出したはずのもの)の活性は極めて低いことを意味している。経済性を考えると、このように活性にあまり寄与しないイリジウムおよび白金はろ過して除き、廃貴金属溶液として回収、再利用するほうが好ましいと考えられる。
なお、本実施形態において蒸発乾固とは、複合貴金属コロイド溶液と酸化ジルコニウム担体との分散液から、液体成分を蒸発・揮散させて固体成分を得る方法を言い、ろ過や液きりのような固液分離法に該当する工程は含まない。
塩化イリジウム(IV)酸塩酸溶液および塩化白金(IV)酸を用いて貴金属を含む水溶液を調製し、この水溶液に酸化ジルコニウム担体(日本電工社製「N−PC」を空気中600℃で6時間焼成、比表面積19.5m2/g)8gを投入して浸漬し、引き続いて蒸発乾固、乾燥、空気中500℃で1時間焼成する、いわゆる含浸法により約3質量%のイリジウムと約2質量%の白金を担持する触媒23を製造した。
また、塩化イリジウム(IV)酸塩酸溶液に代えて硝酸イリジウム溶液を、塩化白金(IV)酸に代えて硝酸酸性ジニトロジアンミン白金水溶液を用いた他は、触媒23と同様に含浸法で触媒24を製造した。
なお、触媒23〜28に係る実施形態において含浸法との概念には、固体成分である酸化ジルコニウム担体を上記水溶液に浸漬した後、さらに蒸発乾固する工程を含み、ろ過や液きりのような固液分離法に該当する工程は含まない。
シュウ酸0.5gに代えて、クエン酸1gまたは2gを添加した他は触媒18と同様にして、触媒29、30を製造した。いずれも触媒18とほぼ同等の担持量およびメタン転化率を示した。
Ir−Pt混合液中のIr含有量を5質量%に、Pt含有量を1.67質量%に変えて、Ir−Pt混合液中のイリジウム/白金の質量比を約3.0とした他は触媒4と同様にして、触媒31を製造した。Ir担持量は1.10質量%、Pt担持量は0.87質量%となって、イリジウム/白金の質量比は1を超えた。
触媒31のメタン転化率(降温時)は64.7%となって、触媒4の37.3%と比較すると大きく向上した。
そのため、イリジウム前駆体として塩化物を用いてIr−Pt混合液を調製して触媒を製造する場合、イリジウム前駆体として硝酸塩を用いてIr−Pt混合液を調製して触媒を製造する場合に比べて、当該Ir−Pt混合液中のイリジウムの質量比を大きくするとよい。
本実施例の場合にはたとえば、Ir−Pt混合液中のイリジウム/白金の質量比を2〜4程度に設定することにより、担持されたイリジウム/白金の質量比を好ましい範囲である1〜2に調製することができる。その結果、メタン転化率を向上することができる。
本実施例に係るメタン酸化除去用触媒はいずれもメタン分解能を発揮した。
表1、2および図1によれば、イリジウムおよび白金の合計の担持量が酸化ジルコニウム担体に対する質量比で0.9〜5質量%であり、イリジウムと白金の担持量の比がイリジウム/白金の質量比で1〜2である場合に、本実施例に係るメタン酸化除去用触媒は高いメタン分解能を発揮し、単位貴金属担持量あたりの触媒活性として良好な活性を得られることが分かった。
また、混合水溶液にカルボン酸としてシュウ酸またはクエン酸を含む場合に、さらに良好な触媒活性を示すことがわかった。
特に酸化ジルコニウム担体にイリジウムおよび白金を担持してなる触媒をコロイド法で調製して製造する場合に多くの課題があった。
例えば非特許文献5の方法に従う場合、3質量%のイリジウムと2質量%の白金を酸化ジルコニウム担体に担持した触媒100gの調製に適用しようとするなら、担持金属の質量は5gであるから、その1万倍すなわち50kgの溶液を加熱還流しなければならなかった。
また、従来法である含浸法で調製して製造された触媒よりも高活性な触媒を得られるかどうかについて何らの知見も得られていなかった。
しかし、本実施例で開示したように、酸化ジルコニウム担体にイリジウムおよび白金を担持してなる触媒においても、イリジウムと白金とが複合化した複合貴金属コロイドを調製し、これを酸化ジルコニウム担体に担持することで、担持金属粒子の粒径や、担持金属粒子内でのイリジウムおよび白金の存在状態を制御して、より高活性な触媒を得ることができた。
Claims (6)
- メタンおよび前記メタンの酸化当量以上の酸素を含む被処理ガス中の前記メタンを酸化除去するためのメタン酸化除去用触媒の製造方法であって、イリジウムおよび白金の複合貴金属コロイド粒子を含む複合貴金属コロイド溶液を酸化ジルコニウム担体に接触させて、前記複合貴金属コロイド粒子を前記酸化ジルコニウム担体に吸着させたのち、当該複合貴金属コロイド溶液の液相を流出させて固液分離することにより前記複合貴金属コロイド粒子を前記酸化ジルコニウム担体に担持するメタン酸化除去用触媒の製造方法。
- イリジウムおよび白金の合計の担持量を前記酸化ジルコニウム担体に対する質量比で0.9〜3質量%とし、イリジウムと白金の担持量の比をイリジウム/白金の質量比で1〜2とする請求項1に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
- 硝酸イリジウム、ジニトロジアンミン白金、保護高分子および脂肪族アルコールを含み、イリジウム含有量が0.8〜3質量%かつ白金含有量が0.5〜2質量%の混合水溶液を調製し、
前記混合水溶液を加熱して前記複合貴金属コロイド溶液を調製し、当該複合貴金属コロイド溶液に前記酸化ジルコニウム担体を浸漬し、固液分離したのち、乾燥、焼成する請求項1または2に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。 - 前記保護高分子がポリビニルピロリドンであり、前記脂肪族アルコールがエタノールである請求項3に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
- 前記混合水溶液が、さらにシュウ酸またはクエン酸を含む請求項3または4に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
- メタンおよび前記メタンの酸化当量以上の酸素を含む被処理ガス中の前記メタンを酸化除去するためのメタン酸化除去用触媒であって、イリジウムおよび白金の複合貴金属コロイド粒子を酸化ジルコニウム担体に担持することにより、イリジウムおよび白金が前記酸化ジルコニウム担体に担持されてなり、
イリジウムおよび白金の合計の担持量が前記酸化ジルコニウム担体に対する質量比で0.9〜3質量%であり、イリジウムと白金の担持量の比がイリジウム/白金の質量比で1〜2であるメタン酸化除去用触媒。
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