JP6614897B2 - メタン酸化除去用触媒の製造方法およびメタン酸化除去方法 - Google Patents

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Description

本発明は、メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む被処理ガス中のメタンを酸化除去するためのメタン酸化除去用触媒の製造方法およびメタン酸化除去方法に関する。
炭化水素の酸化除去触媒として、白金、パラジウムなどの白金族金属を担持した触媒が高い性能を示すことが知られている。例えば、アルミナ担体に白金とパラジウムとを担持した排ガス浄化用触媒が開示されている(特許文献1参照)。しかしながら、このような触媒を用いても、メタン発酵ガスや天然ガスの燃焼排ガスのように、含まれる炭化水素の主成分がメタンである場合には、メタンが高い化学的安定性を有するために、十分なメタン除去が達成されないという問題がある。
さらに、被処理ガスが燃焼排ガスである場合には、燃料中に含まれている硫黄化合物に由来する硫黄酸化物(SOx)などの反応阻害物質が必然的に含まれているので、触媒表面に反応阻害物質が析出することにより、触媒活性が経時的に著しく低下することは避けがたい。
例えば、ランパートら(Lampert et al.)は、パラジウム触媒を用いてメタン酸化を行った場合に、わずかに0.1ppmの二酸化硫黄が存在するだけで、数時間内にその触媒活性がほとんど失われることを示して、硫黄酸化物の存在が触媒活性に著しい悪影響を与えることを明らかにしている(非特許文献1参照)。
過剰量の酸素が存在する排ガスに含まれる低濃度炭化水素の酸化用触媒として、ハニカム基材上にアルミナ担体を介して7g/L以上のパラジウムおよび3〜20g/Lの白金を担持した触媒も開示されている(特許文献2参照)。しかしながら、この触媒を用いても、長期にわたる耐久性は十分ではなく、硫黄酸化物が共存する条件下では、触媒活性の経時的な劣化が避けられない。
また、近年では地球温暖化問題が強く認識されるようになり、炭鉱換気ガスのように、希薄(0.1〜1%程度)なメタンを含有するガスが大量に放散されている点が問題視され、その経済的な処理も課題となっている。ここでも、メタンを接触酸化により除去するにあたって、可能な限り低温で処理できる高活性な触媒が求められている。炭鉱換気ガスには、メタン以外にも、石炭の成分に由来する硫黄化合物(硫化水素、メルカプタン、二酸化硫黄)などが含まれる場合があり、硫化水素やメルカプタンなどは触媒上で酸化されて硫黄酸化物に変化するため、燃焼排ガスの場合と同様の被毒による活性低下が起こる。
従って、従来技術の大きな問題点は、メタンに対して高い除去率が得られないこと、さらに硫黄化合物が共存する条件下では除去率が大きく低下することである。
このような実状に鑑みて、酸化ジルコニウム担体にパラジウムまたはパラジウムと白金とを担持させた触媒が、硫黄酸化物共存下でも高いメタン酸化活性を維持し続けることが開示されている(特許文献3参照)。しかしながら、この触媒は、特に約400℃以下の低温域でのメタン酸化活性が低いため、低温で十分な性能を確保するには多量の触媒を必要とする。
メタンの酸化には、パラジウムが有効であるというのが定説であった(非特許文献2、非特許文献3参照)のに対し、パラジウムを含まず、白金のみを酸化スズからなる担体に担持した触媒が、燃焼排ガス中のメタンの酸化除去に活性を示すことが示されている文献もある(特許文献4参照)。しかしながら、この触媒でも400℃以下でのメタン除去性能は十分とはいえない上に、高価な白金を多量に必要とする点も実用上の課題となる。
メタンを含有し酸素を過剰に含む燃焼排ガス中の炭化水素の浄化用触媒であって、酸化ジルコニウムに、白金、パラジウム、ロジウムおよびルテニウムからなる群より選択される少なくとも1種とイリジウムとを担持してなり、比表面積が2〜60m2/gである触媒が、硫黄酸化物共存下で、400℃程度という低い温度であっても高いメタン酸化活性を維持し続けることが開示されている(特許文献5参照)。酸化ジルコニウム担体にイリジウムおよび白金を担持してなる触媒が、硫黄酸化物共存下で高いメタン酸化活性を示すことは、今日では広く知られるようになっている(例えば、特許文献6、非特許文献4など)が、この触媒の調製においては、なお課題がある。
その課題とは、酸化ジルコニウム担体にイリジウムおよび白金を担持する際に、塩化物系の原料を用いることが高い活性を得るために必須となる点である。非特許文献4では、塩化イリジウム酸および塩化白金酸を用いて調製された触媒と、硝酸イリジウムおよびヘキサヒドロキソ白金酸を用いて調製された触媒の活性を比較しているが、初期に限れば両者は同等の活性を示すものの、耐久後の活性は後者の方が明らかに低い。塩化物系の原料を用いて触媒を調製する場合、次のような懸念がある。まず、ハニカム触媒を調製する場合に、メタル担体が使えないこと。これは、塩素分によりメタルが腐食するためである。さらに、触媒調製時の乾燥および焼成工程において、腐食性の高い塩化水素が発生するため、耐腐食性の高い特別の設備が必要となり、経済性の点で問題を生じることがある。
特許文献4には、イリジウムの有機金属錯体であるトリス(アセチルアセトナト)イリジウムとジニトロジアンミン白金の硝酸溶液を用いて調製したイリジウム−白金/ジルコニア触媒の活性結果も示されている。しかし、イリジウムの有機金属錯体は高価であることに加えて、難溶性で取り扱いが難しいことから、経済性の点で有利とはいえない。
特許文献6には、多孔質の酸化ジルコニウムに白金およびイリジウムを担持してなる硫黄酸化物を含む燃焼排ガス中のメタンの低温酸化除去用触媒の製造方法であって、多孔質の酸化ジルコニウムに対してpH=3以下のイリジウム化合物の水溶液を用いて含浸法により担持した後、pH=12以上の白金化合物の水溶液を用いて含浸法により担持し、焼成することを特徴とする硫黄酸化物を含む燃焼排ガス中のメタンの低温酸化除去用触媒の製造方法が示されている。この文献には、イリジウムと白金をこのような逐次的に含浸する方法による触媒のメタン除去率が、イリジウムと白金を同時に含浸する方法による触媒のメタン除去率に比べて格段に高く、耐久性については、ほぼ同じ傾向であることが示されている。ただし、この文献でも、イリジウム原料としてはヘキサクロロイリジウム酸(塩化イリジウム酸)が用いられていることから、塩化物系の原料を用いていることには変わりがない。
ガス燃料の燃焼排ガス中に含まれるNOx成分を分解除去させるために、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタンの1種または複数種からなる多孔状の担体に、イリジウム、白金、ロジウムの1種または複数種を担持させたNOx除去用触媒が提案されている(特許文献7参照)。しかしながら、この文献は、NOx除去性能を示すのみで、炭化水素の除去率については、一切教示しておらず、炭化水素の中で最も難分解性のメタンを酸化分解できるかどうかについては、何ら示唆もしていない。
また、クエン酸を使用する特定の方法により、活性アルミナなどの無機質担体に白金およびロジウムの少なくとも1種とイリジウムおよびルテニウムの少なくとも1種とを併せて担持させた排気ガス浄化用触媒を製造する方法が開示されている(特許文献8参照)。この文献によれば、イリジウムおよび/またはルテニウムが、白金および/またはロジウムと融点の高い固溶体を形成するので、得られた触媒の耐熱性が向上するとされている。しかしながら、この文献は、得られた触媒のNOx転化率が改善されたことを示すのみで、排気ガスに含まれる炭化水素の中でも特に難分解性のメタンの酸化分解については、一切教示していない。
高性能の白金含有触媒を与える触媒担持用白金含有溶液の製造方法であって、2.5規定以下の希硝酸水溶液中で、該希硝酸水溶液1リットル当り0.01〜0.5モルの割合の量のジニトロジアンミン白金を90℃〜100℃で加温熟成することを特徴とする方法が知られている(特許文献9)。しかし、この文献では、白金または白金−ロジウム触媒によるガソリンエンジン排ガスの理論空燃比条件での排ガス浄化性能が示されるのみで、排気ガス中に存在する種々の炭化水素類中でもメタンが特に難分解性であることについての認識を示しておらず、従って、過剰の酸素を含む排ガス中のメタンをどのようにすれば、効率良く酸化分解できるかなどについては、一切明らかにしていない。
特開昭51−106691号公報 特開平8−332392号公報 特開平11−319559号公報 特開2004−351236号公報 国際公開第2002/040152号 特開2009−112912号公報 特開平3−293035号公報 特開平3−98644号公報 特公昭63−27053号公報
アプライド キャタリシス B:エンバイロンメンタル(Applied Catalysis B: Environmental),第14巻,1997年,p.211−223 インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー(Industrial and Engineering Chemistry),第53巻、1961年,p.809−812 インダストリアル アンド エンジニアリング ケミストリー プロダクト リサーチ アンド ディベロップメント(Industrial and Engineering Chemistry Product Research and Development),第19巻,1980年,p.293−298 キャタリシス レターズ(Catalysis Letters),第141巻,2011年,p.413−419
本発明の課題は、メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む被処理ガス中のメタンの酸化除去において、経済性で種々問題がある塩化物系の原料を用いることなく、低い温度でも高いメタン分解能を発揮する触媒の製造方法、ならびに、この触媒を用いた被処理ガス中のメタンの酸化除去方法を提供することにある。
上記目的を達成するための本発明のメタン酸化除去用触媒の製造方法の特徴構成は、メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む被処理ガス中のメタンを酸化除去するためのメタン酸化除去用触媒の製造方法であって、硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解し、実質的に塩素イオンを含まない硝酸酸性水溶液を酸化ジルコニウム担体に含浸させてイリジウムおよび白金を担持させた後、焼成することにある。
また、上記構成において、前記酸化ジルコニウム担体に含浸させる前の前記硝酸酸性水溶液を、常温から75℃の温度で熟成処理してもよい。
なお、本発明において常温とは5℃以上35℃以下を意味する。
また、上記構成において、前記硝酸酸性水溶液が、さらに多価カルボン酸を含んでもよい。
また、上記構成において、前記硝酸酸性水溶液中に、前記多価カルボン酸を、前記硝酸酸性水溶液中に含まれるイリジウムおよび白金の質量に対して質量比で0.2〜5.0を含んでもよい。
また、上記構成において、前記多価カルボン酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸のうち少なくとも一つを含んでもよい。
また、上記目的を達成するための本発明のメタン酸化除去方法の特徴構成は、メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む被処理ガス中のメタンを酸化除去するメタン酸化除去方法であって、前記被処理ガスを300〜450℃の温度で、上記メタン酸化除去用触媒の製造方法により製造したメタン酸化除去用触媒に接触させる点にある。
本発明の製造方法で製造されたメタン酸化除去用触媒は、水蒸気や硫黄化合物による活性阻害に対して非常に優れた抵抗性を示すので、被処理ガスの一例である燃焼排ガスのように水蒸気を大量に含み、かつ硫黄酸化物を含む排ガスにおいても、高いメタン酸化活性を発揮する。
また、本発明の製造方法で製造されたメタン酸化除去用触媒は、低温でも高い活性を示すので、高価な貴金属の使用量を低減でき、経済性にも優れている。
以下に、本発明の実施形態に係るメタン酸化除去用触媒およびメタン酸化除去方法を説明する。なお、以下に好適な実施例を記すが、これら実施例はそれぞれ、本発明をより具体的に例示するために記載されたものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々変更が可能であり、本発明は、以下の記載に限定されるものではない。
メタン酸化除去用触媒は、メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む燃焼排ガス中のメタンを酸化除去するためのメタン酸化除去用触媒であって、硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を酸化ジルコニウム担体に含浸させてイリジウムおよび白金を担持させた後、焼成してなることを特徴とする。
担体である酸化ジルコニウムの表面積が小さすぎる場合には、触媒活性成分を高分散に保つことができなくなる。一方、表面積が大きすぎる場合には、酸化ジルコニウムの熱安定性が十分でなく、触媒の使用中に酸化ジルコニウム自体の焼結が進行するおそれがある。
担体として用いる酸化ジルコニウムの比表面積(本明細書においては、BET法による比表面積を言う)は、通常2〜90m2/g程度であり、好ましくは10〜30m2/g程度である。酸化ジルコニウムの結晶形は単斜晶が好ましいが、質量基準で25%以下の正方晶や立方晶を含んでいても良い。なお、結晶相含有比率の測定には、X線回折測定などの公知の方法が適用できる。このような酸化ジルコニウムは、市販の触媒担体用酸化ジルコニウムをそのままでもよいし、あるいは空気などの酸化雰囲気下において500℃〜800℃で焼成するなどの方法により調製することができる。
担体として用いる酸化ジルコニウムには、コージェライト等の支持体への付着性や焼結性の改善のため、アルミナ、シリカなどの酸化ジルコニウム以外の微量の成分を含んでいても良いが、これらの成分は質量基準で2%を超えないことが望ましい。
酸化ジルコニウムに対する白金、イリジウムの担持量は、少なすぎる場合には触媒活性が低くなるのに対し、多すぎる場合には粒径が大きくなって、担持された触媒活性成分が有効に利用されなくなる。
白金の担持量は、酸化ジルコニウムに対する質量比で0.5〜20%程度であるのが好ましく、0.5〜5%程度であるのがより好ましい。イリジウムの担持量は、酸化ジルコニウムに対する質量比で0.5〜20%程度であるのが好ましく、0.5〜5%程度であるのがより好ましい。白金とイリジウムの担持量の比率は、イリジウム/白金の質量比で0.3〜5程度であるのが好ましく、1〜2程度であるのがより好ましい。
メタン酸化除去用触媒は、硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を酸化ジルコニウム担体に含浸させてイリジウムおよび白金を担持させた後、焼成することにより得られる。
硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を酸化ジルコニウム担体に含浸させるには、酸化ジルコニウム担体に硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を所定量供給して含浸させてもよいし、硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液に酸化ジルコニウム担体を浸漬することにより含浸させることもできる。
硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液は、それぞれの硝酸酸性水溶液を調製し、これを混合してから含浸工程に供することが好ましい。このほかの硝酸酸性水溶液の調製方法としては、例えば硝酸イリジウムの硝酸酸性水溶液をまず調製し、これにジニトロジアンミン白金を加えて加熱溶解する方法もあげられるが、次に述べる熟成工程の管理が難しいため、それぞれの硝酸酸性水溶液を調製して混合する方法が好ましい。
硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を所定の方法で熟成することで、より高活性の触媒が得られる。熟成は、常温から90℃の温度で、30分〜30日程度行う。温度が高いほど熟成の時間は短くてよく、常温で20日程度、75℃では1時間程度でよい。熟成の時間が短すぎると効果がなく、長すぎても触媒の分散度が低下して活性が低下する。熟成の機構は不明であるが、イリジウムおよび白金錯体が縮合してクラスターを形成することにより、原子レベルでイリジウムおよび白金が均一に混合した担持状態の形成が促進されている可能性がある。
熟成に代えて、多価カルボン酸を添加して同様の効果を奏する。これは特許文献8と同様の効果とも推測されるが、実際は異なるものと考えられる。特許文献8では活性金属の状態は金属状態であるのに対し、本願の触媒では、活性金属は酸化状態にあることから、特許文献8のような固溶体は形成されないと考えられる。
多価カルボン酸には、水酸基をもつヒドロキシカルボン酸が含まれる。
多価カルボン酸として好ましいのは、脂肪族で短鎖の多価カルボン酸である。特に好ましいものは、ヒドロキシカルボン酸である。ヒドロキシカルボン酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸が好ましい。
長鎖のカルボン酸や芳香族のカルボン酸は、分子量あたりのカルボキシル基の数が小さいために、質量当たりの効果が薄くなることに加えて、触媒の焼成工程においてイリジウムおよび白金を過度に還元して、メタン酸化活性を損なう場合がある。
多価カルボン酸の添加量は、少なすぎると効果が薄く、多すぎてもかえって効果が損なわれる場合がある。硝酸酸性水溶液中への多価カルボン酸の添加量は、好ましくは硝酸酸性水溶液中の(多価カルボン酸)/(白金+イリジウム)の質量比で0.2〜5.0程度、より好ましくは0.2〜2.0程度、さらに好ましくは0.5〜2.0程度とする。あるいは、硝酸酸性水溶液中のイリジウムおよび白金イオンの合計の物質量に対して、多価カルボン酸のカルボキシル基の物質量が、好ましくは0.6〜20倍程度、より好ましくは0.6〜10倍程度、さらに好ましくは0.6〜6倍程度としてもよい。
含浸時間は、所定の担持量が確保される限り、特に制限されないが、通常1〜50時間程度、好ましくは3〜20時間程度である。次いで、所定の金属成分を担持させた酸化ジルコニウムを、必要に応じてホットプレートないしエバポレーターなどの加熱装置を用い、80℃〜120℃で蒸発乾固または乾燥させた後に、焼成する。
焼成は、酸化性ガスの流通下で行えばよい。例えば、空気の流通下に行えばよい。あるいは、空気または酸素と窒素などの不活性ガスとを適宜混合したガスなどの酸化性ガスの流通下において行っても良い。
焼成温度は、高すぎる場合には、担持された金属の粒成長が進んで高い活性が得られない。逆に、低すぎる場合には、焼成が十分に行われないので、触媒の使用中に担持された金属粒子が粗大化して、安定した活性が得られないおそれがある。従って、安定して高い触媒活性を得るためには、焼成温度は、450〜650℃程度とするのが好ましく、500〜600℃程度とするのがより好ましい。焼成時間は、特に制限されないが、通常1〜50時間程度であり、好ましくは3〜20時間程度である。
メタン酸化除去用触媒は、ペレット状やハニカム状などの任意の形状に成形して用いても良く、耐火性ハニカム上にウオッシュコートして用いてもよい。好ましくは、耐火性ハニカム上にウオッシュコートして用いる。
耐火性ハニカム上にウオッシュコートする場合には、上記の方法で調製したメタン酸化除去用触媒をスラリー状にしてウオッシュコートしても良く、あるいは、あらかじめ酸化ジルコニウムを耐火性ハニカム上にウオッシュコートした後に、上記の含浸手法に従って硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を含浸させて活性成分を担持してもよい。いずれの場合にも、必要に応じて、バインダーを添加することができる。好ましい一例として、酸化ジルコニウム担体にバインダー(例えば酸化ジルコニウムゾル)と適量の水および必要に応じて増粘剤を添加してスラリーを調製し、これを耐火性ハニカム上にコートして、乾燥した後650〜750℃で焼成することで、耐火性ハニカム上に酸化ジルコニウム層を形成し、これに硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解した硝酸酸性水溶液を含浸させて白金およびイリジウムを担持する方法が挙げられる。メタン酸化除去用触媒は、メタル担体を腐食させる塩化物を含有しないので、コージェライトのようなセラミック担体だけでなく、ステンレス箔を用いたメタル担体も採用できる。
メタン酸化除去用触媒の比表面積は、通常2〜90m2/g程度であり、好ましくは10〜30m2/g程度である。触媒の比表面積が90m2/gを超えると、使用中に担体の焼結が進行することにより触媒の耐久性が低下するおそれがある。一方、2m2/g未満では、活性金属の分散が低下して十分な活性が得られないおそれがある。
メタン酸化除去方法が処理対象とするのは、メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含むガス(被処理ガス)であり、例えば、燃焼排ガス、炭鉱換気ガスや各種化学プロセスから放出されるガスである。被処理ガス中には、メタンの他に、エタン、プロパンなどの低級炭化水素や一酸化炭素、含酸素化合物などの可燃性成分が含まれていても差し支えない。これらは、メタンに比して易分解性なので、メタン酸化除去方法により、メタンと同時に容易に酸化除去できる。
被処理ガス中の可燃性成分の濃度は、特に制限されないが、高すぎる場合には触媒層で極端な温度上昇が生じ、触媒の耐久性に悪影響を及ぼす可能性があるので、炭素数基準によるメタン換算の濃度として1体積%以下とするのが好ましく、体積基準で5,000ppm以下であればさらに好ましい。
メタン酸化除去方法は、上記のようにして得られたメタン酸化除去用触媒を用いることを特徴とする。
メタン酸化除去用触媒の使用量が少なすぎる場合には、有効な除去率が得られないので、ガス時間当たり空間速度(GHSV)で500,000h-1以下となる量を使用するのが好ましい。一方、ガス時間当たり空間速度(GHSV)を低くするほど触媒量が多くなるので、浄化率は向上するが、GHSVが低すぎる場合には、経済的に不利であり、また触媒層での圧力損失が大きくなる。従って、GHSVの下限は、1,000h-1程度とするのが好ましく、5,000h-1程度とするのがより好ましい。
被処理ガス中の酸素濃度は、被処理ガス中の還元性成分の酸化当量よりも酸素を過剰に含む限り特に制限されないが、体積基準として約2%以上(より好ましくは約5%以上)であって且つ炭化水素などからなる還元性成分の酸化当量の約5倍以上(より好ましくは約10倍以上)の酸素が存在するのが好ましい。
被処理ガス中の酸素濃度が極端に低い場合には、反応速度が低下するおそれがあるので、予め所要の量の空気や酸素過剰の排ガスなどを混ぜてもよい。
メタン酸化除去用触媒は、高い活性を有するが、処理温度が低すぎる場合には、活性が下がり、所望のメタン除去率が得られない。一方、処理温度が高すぎる場合には、触媒の耐久性が悪化するおそれがある。
メタン酸化除去用触媒の温度は、通常300〜600℃程度であり、好ましくは300〜450℃程度である。このため、被処理ガスは、メタン酸化除去用触媒に、300〜600℃程度の温度、好ましくは、300〜450℃程度の温度で接触する。
また、被処理ガス中の炭化水素の濃度が著しく高いときには、触媒層で急激な反応が起こって、触媒の耐久性に悪影響を及ぼすので、触媒層での温度上昇が、通常約200℃以下、好ましくは約100℃以下となる条件で用いるのが好ましい。
メタン酸化除去用触媒およびメタン酸化除去方法によれば、被処理ガス中のメタンの酸化除去を安定して行うことが可能となるので、メタン発酵ガスや天然ガス系都市ガスなどの燃焼排ガスや、炭鉱換気ガス、各種プロセスガスなどのメタンおよび硫黄化合物を含有するガス(被処理ガスの一例)をメタン酸化除去方法で処理することにより、ガス中に含まれるメタンを酸化除去して、その反応熱を回収してエネルギーとして有効利用できるほか、地球環境の改善にも寄与する。
炭鉱換気ガスの場合は1〜3体積%程度、燃焼排ガス中には5〜15体積%程度の水蒸気が含まれているが、メタン酸化除去用触媒およびメタン酸化除去方法によれば、このように水蒸気を含む排ガスに対しても、有効なメタン酸化除去が達成される。
また、燃焼排ガス中には、触媒活性を著しく低下させる硫黄酸化物が通常含まれるが、メタン酸化除去用触媒は、硫黄酸化物による活性低下に対して特に高い抵抗性を示すので、体積基準で0.1〜30ppm程度の硫黄酸化物が含まれる場合でも、メタン転化率には実質的に影響がない。ランドフィルガスなど廃棄物由来のガスには、硫化水素やメルカプタンなどの硫黄化合物が含まれ、これらは触媒上で硫黄酸化物となって触媒活性を著しく低下させるが、メタン酸化除去用触媒では、体積基準で0.1〜30ppm程度の硫黄化合物が含まれる場合でも、メタン転化率には実質的に影響がない。
以下、実施例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕(触媒Aの調製)
酸化ジルコニウム(日本電工社製「N−PC」、比表面積28m2/g)を空気中で700℃で6時間焼成して、焼成酸化ジルコニウム(比表面積17m2/g)を得た。
ジニトロジアンミン白金(Pt(NO22(NH32; 白金 60.5%含有)10gを20%硝酸50gに加熱溶解して、白金として10.1質量%を含有する硝酸酸性のジニトロジアンミン白金水溶液を得た。
イリジウムとして8.3質量%を含有する硝酸イリジウム(Ir(NO34)の希硝酸溶液(10.84g)と前記の白金として10.1質量%を含有する硝酸酸性のジニトロジアンミン白金水溶液(5.94g)とを混合し、純水(10ml)で希釈して硝酸酸性水溶液を調整した。この硝酸酸性水溶液に前記の焼成酸化ジルコニウム30gを浸漬し、適宜撹拌しながら15時間の含浸処理を行った。ホットプレート上で蒸発乾固し、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒A)を得た。この触媒Aの比表面積は17m2/gであった。
〔実施例2〕(触媒Bの調製)
イリジウムとして8.3質量%を含有する硝酸イリジウム(Ir(NO34)の希硝酸溶液(12.64g)と白金として10.1質量%を含有する硝酸酸性のジニトロジアンミン白金水溶液(6.93g)とを混合し、純水(16ml)で希釈して硝酸酸性水溶液を得た。この硝酸酸性水溶液をホットプレートを用いて撹拌しながら液温を75℃に60分保って熟成させた。熟成した硝酸酸性水溶液を、実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウム35gを浸漬し、適宜撹拌しながら15時間の含浸処理を行った。蒸発乾固し、120℃で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒B)を得た。この触媒Bの比表面積は17m2/gであった。
〔実施例3〕(触媒Cの調製)
熟成の条件を液温85℃で80分としたほかは実施例2と同様にして3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒C)を得た。
〔実施例4〕(触媒Dの調製)
熟成の条件を室温(約25℃)で22日間としたほかは実施例2と同様にして3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒D)を得た。
〔実施例5〕(触媒Eの調製)
イリジウムとして8.3質量%を含有する硝酸イリジウム(Ir(NO34)の希硝酸溶液(7.59g)と白金として10.1質量%を含有する硝酸酸性のジニトロジアンミン白金水溶液(4.12g)とを混合し、純水(9ml)で希釈し、さらにクエン酸2gを加えて撹拌溶解し、硝酸酸性水溶液を得た。硝酸酸性水溶液の(クエン酸)/(イリジウム+白金)の質量比は約1.9、(クエン酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比は約6である。この硝酸酸性水溶液に、実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウム21gを浸漬し、適宜撹拌しながら15時間の含浸処理を行った。蒸発乾固し、110℃で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒E)を得た。
〔参考例1〕(触媒Fの調製)
イリジウムとして8.6質量%を含有するヘキサクロロイリジウム酸(H2IrCl6)の希塩酸溶液(11.2g)および白金として16.3質量%を含有するヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液(3.93g)を混合し、純水(14ml)で希釈して硝酸酸性水溶液を得た。この硝酸酸性水溶液を実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウム32gに含浸させた。ホットプレート上で蒸発乾固し、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒F)を得た。この触媒Fの比表面積は17m2/gであった。
〔参考例2〕(触媒Gの調製)
ヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液に代えて実施例1と同じ硝酸酸性のジニトロジアンミン白金水溶液を用いた他は、参考例1と同様にして3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒G)を得た。この触媒Gの比表面積は17m2/gであった。
〔参考例3〕(触媒Hの調製)
ヘキサクロロイリジウム酸(H2IrCl6)の希塩酸溶液に代えて実施例1と同じ硝酸イリジウムの希硝酸溶液を用いた他は、参考例1と同様にして3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒H)を得た。この触媒Hの比表面積は17m2/gであった。
〔比較例1〕(触媒Iの調製)
ヘキサヒドロキソ白金酸(H2Pt(OH)6)0.82gを40%硝酸16gに加熱溶解した。これにイリジウムとして8.3質量%を含有する硝酸イリジウム(Ir(NO34)の希硝酸溶液(9.57g)を混合した。この混合溶液を実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウム26.5gに含浸させた。ホットプレート上で蒸発乾固し、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒I)を得た。この触媒Iの比表面積は17m2/gであった。
〔比較例2〕(触媒Jの調製)
イリジウムとして4.4質量%を含有するヘキサアンミンイリジウム水酸塩([Ir(NH36](OH)3)19.1gと白金として5.8質量%を含有するテトラアンミン白金硝酸塩([Pt(NH34](NO32)9.7gを混合した。この混合溶液に、実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウム28gを浸漬し、適宜撹拌しながら15時間の含浸処理を行った。ホットプレート上で蒸発乾固し、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒J)を得た。この触媒Jの比表面積は17m2/gであった。
〔比較例3〕(触媒Kの調製)
イリジウム原料として硝酸イリジウムを用いた他は、特許文献6の逐次含浸法に準じて調製した。まず、イリジウムとして8.3質量%を含有する硝酸イリジウムの硝酸酸性溶液(7.59g)を14mlの純水で希釈した溶液を用いて、実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウムにイリジウムを担持し、ホットプレート上で蒸発乾固、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中275℃で12時間焼成し、イリジウム/酸化ジルコニウムを得た。ジニトロジアンミン白金0.714gを28%アンモニア水40gに加熱溶解し、pH12の水溶液を得た。この溶液に前記のイリジウム/酸化ジルコニウムを浸漬し、適宜撹拌しながら15時間の含浸処理を行った。これをホットプレート上で蒸発乾固、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中550℃で6時間焼成し、3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒K)を得た。
〔実施例6〕(触媒Lの調製)
クエン酸の添加量を1gとした他は実施例5と同様にして、3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒L)を得た。硝酸酸性水溶液中の(クエン酸)/(イリジウム+白金)の質量比は約1.0、(クエン酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比は約3である。
〔実施例7〕(触媒Mの調製)
クエン酸の添加量を0.2gとした他は実施例5と同様にして、3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒M)を得た。硝酸酸性水溶液中の(クエン酸)/(イリジウム+白金)の質量比は約0.2、(クエン酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比は約0.6である。
〔実施例8〕(触媒Nの調製)
クエン酸2gに代えて、リンゴ酸(DL−リンゴ酸)2gを用いた他は実施例5と同様にして、3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒N)を得た。硝酸酸性水溶液中の(リンゴ酸)/(イリジウム+白金)の質量比は約1.9、(リンゴ酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比は約5.5である。
〔実施例9〕(触媒Oの調製)
リンゴ酸の添加量を1gとした他は実施例8と同様にして、3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒O)を得た。硝酸酸性水溶液中の(リンゴ酸)/(イリジウム+白金)の質量比は約1.0、(リンゴ酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比は約3である。
〔実施例10〕(触媒Pの調製)
リンゴ酸1gに代えて酒石酸(DL−酒石酸)1gを用いた他は実施例9と同様にして、3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒P)を得た。硝酸酸性水溶液中の(酒石酸)/(イリジウム+白金)の質量比は約1.0、(酒石酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比は約2.5である。
〔参考例4〕(触媒Qの調製)
イリジウムとして8.6質量%を含有するヘキサクロロイリジウム酸(H2IrCl6)の希塩酸溶液(7.33g)および白金として16.3質量%を含有するヘキサクロロ白金酸(H2PtCl6)水溶液(2.58g)を混合し、純水(10ml)で希釈し、さらにクエン酸2gを加えて撹拌溶解した。この溶液を実施例1と同じ焼成酸化ジルコニウム21gに含浸させた。ホットプレート上で蒸発乾固し、120℃の定温乾燥器で乾燥した後、空気中で550℃で6時間焼成して3%Ir−2%Pt/酸化ジルコニウム(触媒F)を得た。この触媒Qの比表面積は17m2/gであった。
〔活性評価試験〕
実施例1〜10、参考例1〜4および比較例1〜3において調製した触媒A〜Qをそれぞれ打錠成形してから砕いて粒径を1〜2mmに揃えたものを、各成形体1.45g(約1.5ml)を石英製反応管(内径15mm)に充填した。次いで、メタン1,000ppm、酸素10%、水蒸気10%(いずれも体積基準)および残部窒素からなる組成を有するガスを、2リットル/分(標準状態における体積)の流量で反応管に流通し、触媒層温度375℃、400℃、425℃および450℃におけるメタン転化率を測定した(初期の転化率)。反応前後のガス組成は、水素炎イオン化検知器および熱伝導度検出器を有するガスクロマトグラフにより測定した。その後、触媒層温度を450℃に保ったまま、反応ガスに二酸化硫黄3ppmを添加して反応を継続し、20、60時間後のそれぞれの時点で、触媒層温度375℃、400℃、425℃および450℃におけるメタン転化率を同様に測定した。いずれの触媒・反応条件でも、メタン濃度の減少に対応する二酸化炭素の生成が確認され、メタンは触媒上で完全酸化されていた。
メタン転化率の測定結果を表1に示す。ここで、メタン転化率とは、以下の式によって求められる値である。
CH4転化率(%)=100×((1−(CH4−OUT))/(CH4−in))
式中、「CH4−OUT」とは触媒層出口のメタン濃度を示し、「CH4−in」とは触媒層入口のメタン濃度を示す。
Figure 0006614897
実施例1〜5の触媒A〜Eは、初期において400℃で81〜90%のメタン転化率を示し、20時間後で78〜87%、60時間後でも75〜84%と高い値を維持していた。熟成処理を行った触媒B〜Dの活性は、いずれも概ね熟成処理をしない触媒Aよりも高い活性を示したが、85℃で80分間熟成処理をした触媒Cの活性は触媒Aと同程度ないし高温側では劣る傾向がみられ、やや熟成の温度が高すぎた可能性がある。常温で長時間熟成した触媒Dとクエン酸を添加した触媒Eの活性は、参考例である塩化物を用いて調製された触媒と同等以上であり、本発明のメタン酸化除去用触媒およびメタン酸化除去方法により、塩化物を用いることなく、これに劣らない高活性触媒が得られることが明らかである。
これに対して、比較例1あるいは2の触媒の活性は明らかに低く、実施例1〜5の触媒A〜Eのように硝酸イリジウムとジニトロジアンミン白金の組み合わせが、高活性触媒を得るためには必要であることが明らかである。また、比較例3の触媒の活性も顕著に低い。この結果は、特許文献6には示された逐次担持法により高活性な触媒が得られるとの結果とは異なる。その原因は明らかではないが、特許文献6の方法ではイリジウムの担持に塩化イリジウムを用いているのに対し、比較例3では塩化物の使用を避けるため、塩化イリジウムに代えて硝酸イリジウムを用いた。この点は特許文献6の方法とは異なっており、塩化物を用いない場合には、逐次担持法の効果は得られないためとも考えられる。
実施例5〜7の結果を比較すると、硝酸酸性水溶液中の(クエン酸)/(イリジウム+白金)の質量比が0.2である触媒Mでも、触媒Aとの比較では、活性の向上が見られている。具体的には、60時間後の400℃におけるメタン転化率は触媒Aの75%に対し、触媒Mは77%である。
そして、硝酸酸性水溶液中の(クエン酸)/(イリジウム+白金)の質量比を1.0とした触媒L、および、質量比を約1.9とした触媒Eでは、さらなる活性の向上が見られている。具体的には、60時間後の400℃におけるメタン転化率は触媒Lで81%、触媒Eは84%である。
すなわち、硝酸酸性水溶液中の(クエン酸)/(イリジウム+白金)の質量比が0.2〜2.0である場合に、硝酸酸性水溶液中に多価カルボン酸を含まない場合に比べて、メタン転化率が有意に向上するとの効果が得られたことが分かる。
また、実施例8〜10の結果を参照すれば、多価カルボン酸としてのクエン酸に代えて、これと同じく多価カルボン酸であるリンゴ酸および酒石酸を用いた場合でも同等の効果を奏することは明らかである。
さらに実施例5および7の結果を考慮すると、硝酸酸性水溶液中の(多価カルボン酸)/(イリジウム+白金)の質量比が0.2〜2.0である場合に、硝酸酸性水溶液中に多価カルボン酸を含まない場合に比べて、メタン転化率が有意に向上するとの効果が得られたことが分かる。
もしくは、硝酸酸性水溶液中の(多価カルボン酸のカルボキシル基)/(イリジウム+白金)の物質量比が0.6〜6.0である場合に、硝酸酸性水溶液中に多価カルボン酸を含まない場合に比べて、メタン転化率が有意に向上するとの効果が得られた、とも言い換えることが出来る。
一方、参考例1と参考例4の結果を比較すると、塩化物を用いて調製する場合には、クエン酸を添加するとメタン酸化活性は却って低下することが判る。多価カルボン酸を添加することによる活性向上については、不明な点が多いが、少なくともどのような場合でも多価カルボン酸の添加による活性向上が期待できるわけではないことは明らかといえる。
本発明のメタン酸化除去用触媒は、被処理ガスの一例である燃焼排ガスのように水蒸気を大量に含み、かつ硫黄酸化物を含む排ガスにおいても、高いメタン酸化活性を発揮する触媒として利用することができる。

Claims (6)

  1. メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む被処理ガス中のメタンを酸化除去するためのメタン酸化除去用触媒の製造方法であって、
    硝酸イリジウムおよびジニトロジアンミン白金の両方を溶解し、実質的に塩素イオンを含まない硝酸酸性水溶液を酸化ジルコニウム担体に含浸させてイリジウムおよび白金を担持させた後、焼成することを特徴とするメタン酸化除去用触媒の製造方法。
  2. 前記酸化ジルコニウム担体に含浸させる前の前記硝酸酸性水溶液を、常温から75℃の温度で熟成処理することを特徴とする請求項1に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
  3. 前記硝酸酸性水溶液が、さらに多価カルボン酸を含むことを特徴とする請求項1または2に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
  4. 前記硝酸酸性水溶液中に、前記多価カルボン酸を、前記硝酸酸性水溶液中に含まれるイリジウムおよび白金の質量に対して質量比で0.2〜5.0含むことを特徴とする請求項3に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
  5. 前記多価カルボン酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸のうち少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項3または4に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法。
  6. メタン、硫黄化合物および過剰の酸素を含む被処理ガス中のメタンを酸化除去するメタン酸化除去方法であって、前記被処理ガスを300〜450℃の温度で、請求項1ないし5のいずれか一項に記載のメタン酸化除去用触媒の製造方法により製造したメタン酸化除去用触媒に接触させるメタン酸化除去方法。
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