JP6718875B2 - 害虫防除用エアゾール組成物および害虫防除用エアゾール製品ならびに殺虫成分の効力増強方法 - Google Patents

Description

本発明は、害虫防除用エアゾール組成物および害虫防除用エアゾール製品ならびに殺虫成分の効力増強方法に関する。より詳細には、本発明は、殺虫成分の効力が増大され、少量の殺虫成分でも充分に害虫を防除し得る害虫防除用エアゾール組成物および害虫防除用エアゾール製品ならびに殺虫成分の効力増強方法に関する。

従来、害虫を防除するための害虫防除用エアゾール製品が知られている。このようなエアゾール製品において、少量の殺虫成分でも充分な殺虫効果を得るために、殺虫成分の効力を増強する手段が検討されている。具体的には、ピペロニルブトキサイド、サフロキサン、特定の界面活性剤、アミノ酸等を配合することにより、ピレスロイド系化合物等の特定の殺虫成分の効力を増強するものや、害虫に対する殺虫成分の皮膚浸透性を高めるものが知られている（特許文献１〜２参照）。

特開２００１−１９９８０８号公報 特開２００２−１６７３０４号公報

しかしながら、特許文献１〜２に記載の効力増強剤は、殺虫成分の効力を充分に増強することができない。

本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、殺虫成分の効力が増大され、少量の殺虫成分でも充分に害虫を防除し得る害虫防除用エアゾール組成物および害虫防除用エアゾール製品ならびに殺虫成分の効力増強方法を提供することを目的とする。

上記課題を解決する本発明の害虫防除用エアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分と、噴射剤とを含有する害虫防除用エアゾール組成物であり、前記精油成分は、前記害虫防除用エアゾール組成物中０．０５質量／容量％以下となるよう含有され、前記噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィンと、液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満の低密度噴射剤とを含み、２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下である、害虫防除用エアゾール組成物である。

また、上記課題を解決する本発明の害虫防除用エアゾール製品は、上記害虫防除用エアゾール組成物が加圧充填された害虫防除用エアゾール製品であり、前記精油成分の吐出量が３秒あたり０．１〜５ｍｇである害虫防除用エアゾール製品である。

さらに、上記課題を解決する本発明の殺虫成分の効力増強方法は、殺虫成分と、噴射剤とを含有する害虫防除用エアゾール組成物において、前記殺虫成分の効力を増強する方法であり、前記殺虫成分として精油成分を選択し、前記精油成分は、前記害虫防除用エアゾール組成物中０．０５質量／容量％以下となるよう含有され、前記噴射剤として、ハイドロフルオロオレフィンと、液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満の低密度噴射剤とを含む噴射剤を選択し、前記エアゾール組成物の密度を１（ｇ／ｍＬ）以下となるよう調整する、殺虫成分の効力増強方法である。

本発明によれば、殺虫成分の効力が増大され、少量の殺虫成分でも充分に害虫を防除し得る害虫防除用エアゾール組成物および害虫防除用エアゾール製品ならびに殺虫成分の効力増強方法を提供することができる。

ノックダウン効果の評価方法を説明するための模式図である。

［害虫防除用エアゾール組成物］
本発明の一実施形態の害虫防除用エアゾール組成物（以下、エアゾール組成物ともいう）は、殺虫成分である精油成分を含む原液と、噴射剤とを含有する。エアゾール組成物は、たとえばエアゾール容器に加圧充填され、その後、噴射されることにより、噴射剤が気化する際の気化熱を利用して対象害虫を凍結（行動停止）させるとともに、殺虫成分である精油成分によって対象となる害虫（対象害虫）を殺虫する。

対象害虫の種類は、特に限定されない。対象害虫は、たとえば、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ヤマトゴキブリ、ワモンゴキブリ、トビイロゴキブリ等のゴキブリ、クモ、ムカデ、アリ、ゲジ、ダンゴムシ、ワラジムシ、シロアリ、ケムシ、ダニ、シラミ等の匍匐害虫、ガ、ハチ、カメムシ、カツオブシムシ、シバンムシ、蚊、ハエ等の飛翔害虫である。

＜原液＞
原液は、噴射剤とともにエアゾール組成物を構成する成分である。原液は、後述するエアゾール製品が調製される際に、エアゾール容器に充填される。原液は、殺虫成分である精油成分と、任意成分とを含むことができる。

（殺虫成分である精油成分）
殺虫成分である精油成分は、対象害虫に対して殺虫効力（ノックダウン効果、致死効果等）を示す成分である。殺虫成分である精油成分の種類は、特に限定されず、公知の精油成分を使用できる。殺虫成分である精油成分は、防除すべき対象害虫の種類に合わせて適宜選択され得る。殺虫成分である精油成分は、たとえば、ハッカ油、オレンジ油、ウイキョウ油、ケイヒ油、チョウジ油、テレビン油、ユーカリ油、ヒバ油、ジャスミンオイル、ネロリオイル、ペパーミントオイル、ベルガモットオイル、ブチグレンオイル、レモンオイル、レモングラスオイル、シナモンオイル、シトロネラオイル、ゼラニウムオイル、シトラール、ｌ−メントール、酢酸シトロネリル、シンナミックアルデヒド、テルピネオール、ノニルアルコール、ｃｉｓ−ジャスモン、リモネン、リナロール、１，８−シネオール、ゲラニオール、α−ピネン、ｐ−メンタン−３，８−ジオール、オイゲノール、酢酸メンチル、チモール、安息香酸ベンジル、サリチル酸ベンジル等の各種殺虫性の精油成分が選択され得る。これら殺虫成分である精油成分を含むエアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分が少量であるにもかかわらず、殺虫効力が増強されやすい。また、殺虫成分である精油成分は、テルペン系の精油成分を含むことが好ましく、ハッカ油またはオレンジ油、ｐ−メンタン−３，８−ジオール、ｌ−メントール、リモネンを含むことがより好ましい。殺虫成分である精油成分がハッカ油またはオレンジ油、ｐ−メンタン−３，８−ジオール、ｌ−メントール、リモネンを含んでいる場合、得られるエアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分が少量であるにもかかわらず、殺虫効力が特に増強されやすい。

なお、本実施形態の原液は、殺虫成分である精油成分のほか、各種殺虫成分が配合されてもよい。このような殺虫成分としては、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等のグリコールエーテル類、アジピン酸ジブチル等の二塩基酸エステル類、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫性化合物である。

殺虫成分である精油成分の含有量は、充分な殺虫効力（ノックダウン効果、致死効果等）を示す含有量であれば良い。そのなかでも、殺虫成分である精油成分の含有量は、０．００２５質量／容量％以上であることが好ましく、０．００５質量／容量％以上であることがより好ましい。殺虫成分である精油成分の含有量の上限は特に限定されない。充分な殺虫効力の増強効果が得られる観点からは、殺虫成分である精油成分の含有量は、エアゾール組成物中０．０５質量／容量％以下であってもよい。このような含有量であれば、エアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分の効力増強効果が充分に得られ、殺虫成分である精油成分が０．０５質量／容量％以下のような少量であっても、充分な殺虫効力を示し得る。

原液は、本実施形態のエアゾール組成物の効果を阻害しない程度に、溶剤を配合することができる。溶剤は、殺虫成分である精油成分を均一に配合するために好適に含有される。一例を挙げると、溶剤は、エタノール、プロパノール等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール、直鎖、分岐鎖または環状のパラフィン類、灯油等の石油類、水；ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類等である。溶剤の含有量は、殺虫成分である精油成分１質量部に対して０．５質量部以上であることが好ましく、１質量部以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、殺虫成分である精油成分１質量部に対して１０００質量部以下であることが好ましく、５００質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、原液は、エアゾール組成物の効果を阻害せず、かつ、殺虫成分である精油成分を均一に配合しやすい。

（任意成分）
原液は、本実施形態のエアゾール組成物の効果を阻害しない限り、適宜任意成分を配合してもよい。任意成分は、非イオン、陰イオンまたは陽イオン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤；クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤；タルク、珪酸等の無機粉体、殺菌剤（防黴剤）、消臭剤、芳香剤（香料）、色素等が例示される。

原液の含有量は、エアゾール組成物中に０．０１容量％以上であることが好ましく、０．０５容量％以上であることがより好ましい。また、原液の含有量は、エアゾール組成物中に５容量％以下であることが好ましく、２容量％以下であることがより好ましい。原液の含有量が上記範囲内である場合、得られるエアゾール組成物は、冷却効果が持続されやすい。

＜噴射剤＞
噴射剤は、上記殺虫成分である精油成分を噴射するための媒体であり、殺虫成分である精油成分とともにエアゾール容器に加圧充填される。噴射剤は、エアゾール組成物が対象害虫に噴射されると、対象害虫に付着するとともに、噴射剤の気化熱により対象害虫を冷却し得る。本実施形態の噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィンと、２０℃における液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満の低密度噴射剤とを含む。

（ハイドロフルオロオレフィン）
ハイドロフルオロオレフィンとしては、ハイドロフルオロプロペンが例示される。具体的には、ハイドロフルオロプロペンは、１，３，３，３−テトラフルオロプロペン、２，３，３，３−テトラフルオロプロペン、２，３，３−トリフルオロプロペン、３，３，３−トリフルオロプロペン、１−クロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン等が例示される。１−クロロ−３，３，３−トリフルオロプロペンは、（Ｅ）−１−クロロ−３，３，３−トリフルオロプロペン等が例示される。これらの中でも、優れた冷却効果を示し、かつ、引火性が低い点から、ハイドロフルオロオレフィンは、１，３，３，３−テトラフルオロプロペンであることが好ましく、１，３，３，３−テトラフルオロプロペンの中でも（Ｅ）−１，３，３，３−テトラフルオロプロパ−１−エン（別称「トランス−１，３，３，３−テトラフルオロプロペン」、「ＨＦＯ−１２３４ｚｅ」）がより好ましい。

ハイドロフルオロオレフィンの配合量は、エアゾール組成物中に５容量％以上であることが好ましく、１０容量％以上であることがより好ましい。また、ハイドロフルオロオレフィンの含有量は、エアゾール組成物中に７０容量％以下であることが好ましく、６０容量％以下であることがより好ましい。ハイドロフルオロオレフィンの配合量が上記範囲内である場合、得られるエアゾール組成物は、引火性が低減されやすい。

（低密度噴射剤）
低密度噴射剤は、２０℃における液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満である噴射剤である。低密度噴射剤としては、ジメチルエーテル（液密度：０．６７（ｇ／ｍＬ））、液化石油ガス（ＬＰＧ、ノルマルブタンとイソブタンとプロパンとの混合物（液密度：約０．５〜０．６（ｇ／ｍＬ）））等が例示される。これらの中でも、引火性が比較的低い点から、低密度噴射剤は、ジメチルエーテルであることが好ましい。

低密度噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中に２０容量％以上であることが好ましく、４０容量％以上であることがより好ましい。また、低密度噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中に９５容量％以下であることが好ましく、９０容量％以下であることがより好ましい。低密度噴射剤の配合量が上記範囲内である場合、得られるエアゾール組成物のエアゾール組成物密度は、１（ｇ／ｍＬ）以下を示しやすい。

ハイドロフルオロオレフィンと低密度噴射剤との体積比は、エアゾール組成物の冷却効果や引火性を考慮して適宜設定していれば良く、特に限定されない。一例を挙げると、低密度噴射剤がジメチルエーテルである場合、ハイドロフルオロオレフィンとジメチルエーテルとの体積比は、１：９〜９：１であることが好ましく、１：９〜８：２であることがより好ましい。

噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中に９５容量％以上であることが好ましく、９８容量％以上であることがより好ましい。また、噴射剤の含有量は、エアゾール組成物中に９９．９容量％以下であることが好ましく、９９．５容量％以下であることがより好ましい。噴射剤の含有量が上記範囲内である場合、得られるエアゾール組成物は、冷却効果が持続されやすい。

なお、本実施形態のエアゾール組成物は、上記噴射剤に加えて、エアゾール組成物の圧力を調整するために、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス等の圧縮ガスが併用されてもよい。

エアゾール組成物の原液と噴射剤の体積比は０．０１：９９．９〜５：９５であることが好ましく、０．５：９９．５〜２：９８であることがより好ましい。このような体積比とすることで、エアゾール組成物は、優れた冷却効果を発現し得る。

本実施形態のエアゾール組成物は、上記噴射剤（ハイドロフルオロオレフィンおよび低密度噴射剤）を含み、かつエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下である。これにより、本実施形態のエアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分の殺虫効力を著しく増強することができる。なお、本実施形態において、エアゾール組成物密度（ｇ／ｍＬ）は、［エアゾール組成物の重量］／［原液の容量＋各噴射剤の容量の合計］によって算出される値である。本実施形態のエアゾール組成物において、エアゾール組成物密度は、１（ｇ／ｍＬ）以下であればよい。また、エアゾール組成物密度は、０．６８（ｇ／ｍＬ）以上であることが好ましく、０．８（ｇ／ｍＬ）以上であることがより好ましく、０．９５（ｇ／ｍＬ）以上であることがさらに好ましい。

以上、本実施形態のエアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分がエアゾール組成物中０．０５質量／容量％以下となるよう含有されており、少量である。しかしながら、本実施形態のエアゾール組成物は、ハイドロフルオロオレフィンと低密度噴射剤とを含み、エアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下を示している。その結果、エアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分が０．０５質量／容量％以下のような少量であっても、対象害虫に対する殺虫効力を充分に増強することができる。

［害虫防除用エアゾール製品］
本発明の一実施形態の害虫防除用エアゾール製品（以下、エアゾール製品ともいう）は、上記したエアゾール組成物（原液および噴射剤）がエアゾール容器に加圧充填された製品である。なお、以下の説明において、エアゾール容器は、エアゾールの技術分野において汎用される容器である。そのため、以下の説明は例示であり、エアゾール容器は、適宜設計変更され得る。

エアゾール容器は、エアゾール組成物が加圧充填される容器本体と、容器本体に取付けられるバルブと、バルブに取り付けられる噴射ボタンとから主に構成される。

容器本体は、内部にエアゾール組成物が充填される空間が形成された概略筒状の容器である。容器本体の上部には開口が設けられている。開口は、バルブによって密封される。

バルブは、容器本体の開口を閉止する部材である。バルブは、噴射ボタンが取り付けられる。バルブは、噴射ボタンが使用者により操作されることにより容器本体内と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材を内蔵する。また、開閉部材は、噴射ボタンと連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通（噴射状態）および遮断（非噴射状態）が切り替えられる。バルブには、容器本体からエアゾール組成物を取り込むためのアンダータップ孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射ボタンに送るためのステム孔とが形成されている。

噴射ボタンは、バルブに取り付けられる部材である。噴射ボタンには、バルブのステム孔を介して容器本体から取り込まれるエアゾール組成物が噴射される噴射孔が形成されている。エアゾール組成物は、噴射孔からスプレー状に噴射される。

本実施形態のエアゾール製品は、殺虫成分である精油成分の吐出量が３秒あたり０．１ｍｇ以上であることが好ましく、３秒あたり０．５ｍｇ以上であることがより好ましい。また、殺虫成分である精油成分が芳香性を有する場合、芳香が強すぎることによる刺激を軽減する観点から、殺虫成分である精油成分の吐出量は、３秒あたり１５ｍｇ以下であることが好ましく、３秒あたり５ｍｇ以下であることがより好ましい。

なお、本実施形態のエアゾール製品は、対象害虫に対して、増強された殺虫効力を発現し得るようエアゾール組成物を噴射できれば良く、充填されるエアゾール組成物の圧力、バルブおよび噴射ボタンの構成等は適宜設定され得る。例えば、エアゾール製品の内圧は、０．１〜０．６ＭＰａ（２５℃）に設定され得る。バルブは、ステム孔の総面積が０．０５〜３．５ｍｍ²であり、アンダータップ孔の総面積が０．０５〜５．０ｍｍ²に設定され得る。噴射ボタンは、噴射孔の総面積が０．１〜１０ｍｍ²に設定され得る。ほかにも、噴射ボタンにおける噴射孔の数、形状等が調整されてもよい。

本実施形態のエアゾール製品は、上記エアゾール組成物が加圧充填されている。そのため、エアゾール製品は、上記害虫防除用エアゾール組成物を対象害虫に噴射することができる。害虫防除用エアゾール組成物は、殺虫成分である精油成分が少量であるにもかかわらず、充分な殺虫効力を示す。その結果、エアゾール製品は、殺虫成分である精油成分の使用量を少なくすることができる。

［殺虫成分の効力増強方法］
本発明の一実施形態の殺虫成分の効力増強方法（以下、効力増強方法ともいう）は、殺虫成分である精油成分と噴射剤とを含有するエアゾール組成物を用いることにより、殺虫成分である精油成分の効力を増強する方法である。

本実施形態の効力増強方法は、エアゾール組成物の実施形態において上記した殺虫成分である精油成分および噴射剤を使用し得る。すなわち、殺虫成分である精油成分は、エアゾール組成物中０．０５質量／容量％以下となるように含有する。また、噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィンと、液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満の低密度噴射剤とを含む。さらに、効力増強方法では、エアゾール組成物の２０℃におけるエアゾール組成物密度は、１（ｇ／ｍＬ）以下を示している。なお、本実施形態の効力増強方法において、エアゾール組成物の２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下を示しように密度を調整する方法は特に限定されない。すなわち、上記した殺虫成分である精油成分と、ハイドロフルオロオレフィンおよび低密度噴射剤を配合させた結果、得られるエアゾール組成物の２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下となっている場合には、特段、密度を１（ｇ／ｍＬ）以下に調整する工程は省略されてもよい。一方、上記した殺虫成分である精油成分と、ハイドロフルオロオレフィンおよび低密度噴射剤を配合させた結果、得られるエアゾール組成物の２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）を超えている場合には、低密度噴射剤の種類や配合量を調整するか、または、他の低密度の成分を配合することにより、２０℃におけるエアゾール組成物密度を１（ｇ／ｍＬ）以下に調整する工程が採用され得る。

本実施形態の効力増強方法は、使用する殺虫成分である精油成分が少量であるにもかかわらず、エアゾール組成物のエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下を示していることにより、殺虫効力を充分に増強し得る。

以上、本発明の一実施形態について説明した。本発明は、上記実施形態に限定されない。

以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。

（実施例１）
表１の処方に従い、原液を調製した。得られた原液をブリキ製耐圧エアゾール容器本体（容量：３００ｍＬ）に充填した。その後、バルブ（アンダータップ孔径：２．２ｍｍ、ステム孔径：０．６ｍｍ）で容器本体を閉止し、表１に記載の配合に従って、噴射剤を加圧充填した。バルブに噴射ボタン（噴射孔：２．５ｍｍ、ノズル形状：フォワードテーパ）を取り付け、エアゾール製品を製造した。得られたエアゾール製品の内圧は、約０．４〜０．５ＭＰａであった。

＊１：ハイドロフルオロオレフィン（１，３，３，３−テトラフルオロ−１−プロペン（トランス異性体） ２０℃における液密度：１．１９４（ｇ／ｍＬ））
＊２：２０℃における液密度：０．６７（ｇ／ｍＬ）
＊３：液化石油ガス（組成：ノルマルブタンとイソブタンとプロパンとの混合物） ２０℃における液密度：０．５７（ｇ／ｍＬ）

（実施例２〜８、比較例１〜５および参考例１〜２）
表１に記載された配合割合に変更した以外は、実施例１と同様の方法によりエアゾール製品を製造した。

実施例１〜８、比較例１〜５および参考例１〜２で得られたエアゾール組成物について、以下の評価方法に従って、ノックダウン効果および致死率（％）を評価した。評価結果を表１に示す。

＜ノックダウン効果＞
図１は、ノックダウン効果の評価方法を説明するための模式図である。図１に示されるように、３頭の対象害虫（クロゴキブリ（雌） 図示せず）を、プラスチックカップ１（ＫＰカップＫＰ８６０、鴻池プラスチック（株）製 内径１３０ｍｍ、深さ１００ｍｍ）に入れた。プラスチックカップ１の内壁面には、対象害虫が逃亡しないように、炭酸カルシウムを塗布した。角度θ（本評価では４５°）の傾斜を備える供試台２にプラスチックカップ１を載置し、プラスチックカップ１から５０ｃｍ離れた場所から、エアゾール製品３に充填されているエアゾール組成物を噴射した。エアゾール組成物の殺虫成分吐出量は約１．１ｍｇであった。噴射後、対象害虫を固形餌および水が備えられた清潔なプラスチックカップ（図示せず）に移し、ノックダウンするかどうか、およびノックダウン後に何分経過後に回復するかを以下の評価基準に基づいて評価した。なお、固形餌および水は自由に摂取させた。試験は５回繰り返して行い、計１５頭の対象害虫に対するノックダウン効果を評価した。
（評価基準）
○：すべての対象害虫がノックダウンし、かつ、５分間回復しなかった。
△：少なくとも１頭の対象害虫がノックダウンしなかったか、または、すべての対象害虫がノックダウンしたが、そのうちの少なくとも１頭が５分以内に回復した。
×：すべての対象害虫がノックダウンしなかった。

＜致死率＞
ノックダウン効果の評価と同様の方法により、エアゾール組成物を対象害虫に噴射した。２４時間後における対象害虫の生死を観察し、死亡した対象害虫を計数し、致死率（％）を算出した。

（実施例９〜１１、比較例６〜７）
表２に記載された配合割合に変更した以外は、実施例１と同様の方法によりエアゾール製品を製造した。得られたそれぞれのエアゾール組成物密度が略一定のエアゾール製品について、エアゾール組成物を３秒あたり約１０ｇ噴射した以外は、上記した評価方法に従って、ノックダウン効果および致死率（％）を評価した。結果を表２に示す。

表１に示されるように、殺虫成分の吐出量が略一定の条件下において、２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下である実施例１〜８のエアゾール組成物は、いずれもノックダウン効果が優れ、致死率が高かった。一方、２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）を超える比較例１〜５のエアゾール組成物は、ノックダウン効果が充分でなく、致死率が低かった。なお、参考例１〜２のエアゾール組成物は、２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下であるかに関係なく、同様のノックダウン効果および致死率を示した。

また、表２に示されるように、エアゾール組成物密度が略一定の条件下において、殺虫成分が０．０５質量／容量％以下となるように配合された実施例９〜１１のエアゾール組成物は、いずれもノックダウン効果が優れ、致死率が高かった。一方、殺虫成分が含まれていない比較例６のエアゾール組成物は、致死率が低かった。また、殺虫成分が０．０５質量／容量％を超えるよう配合された比較例７のエアゾール組成物は、ノックダウン効果が充分でなく、致死率が低かった。以上をまとめると、表１および表２に示されるように、エアゾール組成物は、エアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下であり、かつ、殺虫成分として殺虫成分である精油成分を含む、その含有量が０．０５質量／容量％以下である結果、顕著に殺虫効力が増強されたことが分かった。

１ プラスチックカップ
２ 供試台
３ エアゾール製品

Claims (3)

1. 殺虫成分である精油成分と、噴射剤とを含有する害虫防除用エアゾール組成物であり、
   前記精油成分は、前記害虫防除用エアゾール組成物中０．０２５〜０．０５質量／容量％となるよう含有され、
   前記噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィンと、２０℃における液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満の低密度噴射剤とを含み、
   ２０℃におけるエアゾール組成物密度が１（ｇ／ｍＬ）以下である、害虫防除用エアゾール組成物。
2. 請求項１記載の害虫防除用エアゾール組成物が加圧充填された害虫防除用エアゾール製品であり、前記精油成分の吐出量が３秒あたり０．１〜５ｍｇである害虫防除用エアゾール製品。
3. 殺虫成分と、噴射剤とを含有する害虫防除用エアゾール組成物において、前記殺虫成分の効力を増強する方法であり、
   前記殺虫成分として精油成分を選択し、
   前記精油成分は、前記害虫防除用エアゾール組成物中０．０２５〜０．０５質量／容量％となるよう含有され、
   前記噴射剤として、ハイドロフルオロオレフィンと、２０℃における液密度が１（ｇ／ｍＬ）未満の低密度噴射剤とを含む噴射剤を選択し、前記エアゾール組成物の密度を１（ｇ／ｍＬ）以下となるよう調整する、殺虫成分の効力増強方法。

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