JP6714429B2 - 新規な1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類 - Google Patents
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Description
また近年、耐熱性、可撓性、耐候性に優れるポリエステル樹脂が望まれてきており、このような樹脂の原料ビスフェノール類として、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが用いられている。
従来、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類並びにその誘導体化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンのビス無水トリメリット酸エステル(特許文献1)など幾つかの化合物が知られている。
また、ポリエステル樹脂としては、例えば、特許文献2には、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンと芳香族ジカルボン酸ジクロライドを用いて製造されたポリエステルが記載されている。
また、特許文献3には、1,1−ビス(4−アセチルオキシフェニル)シクロヘキサンを用いて溶融重縮合により得られるポリエステルが記載されている。
しかしながら、ポリエステル樹脂に求められる性能は益々高度になり、より高純度で、耐熱性、可撓性、耐候性等に優れるポリエステル樹脂を得ることのできる原料として、より優れた性能の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類の誘導体が望まれている。
また、1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類を使用する溶融重合は、例えば、上記特許文献2に記載されている酸クロライドを使用する重合反応と異なり、酸クロライド由来の不純物を含まないことから、得られるポリエステル樹脂等が高純度で、熱安定性等の品質も優れている。
本発明の上記一般式(1)で表される1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類において、式中、Rは炭素原子数1〜4のアルキル基又は置換もしくは無置換のフェニル基を示し、R1、R2はそれぞれ独立して水素原子、炭素原子数1〜4のアルキル基又は炭素原子数1〜4のアルコキシ基を示す。
上記Rで示される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等の直鎖及び分岐状のアルキル基を挙げることができる。より好ましくはメチル基である。また、上記Rで示される置換もしくは無置換のフェニル基としては、炭素原子数1〜4のアルキル基、炭素原子数1〜4のアルコキシ基から選ばれる1又は2以上の基が置換してもよいフェニル基が好ましく、具体的には例えば、フェニル基、2−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3,4,5−トリメトキシフェニル基等が挙げることができる。より好ましくは無置換のフェニル基である。
また、上記R1およびR2で示される炭素原子数1〜4のアルキル基としては、具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基等の直鎖及び分岐状のアルキル基を挙げることができる。また、上記R1およびR2で示される炭素原子数1〜4のアルコキシ基としては、具体的には例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基等の直鎖及び分岐状のアルコキシ基を挙げることができる。R1およびR2としてより好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基である。
1,1−ビス(4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−ベンゾイルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−エチル−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−イソプロピル−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−t−ブチル−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−メトキシ−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−エトキシ−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジメトキシ−4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−エチルカルボニルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(4−プロピルカルボニルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
(方法1)
目的とする1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類に対応する、下記一般式(2)で表される原料1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類と下記一般式(3)で表される酸無水物を反応させる方法
(方法2)
目的とする1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類に対応する、下記一般式(2)で表される原料1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類と下記一般式(4)で表されるカルボン酸と酸触媒存在下で反応させる方法
(方法3)
目的とする1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類に対応する、下記一般式(2)で表される原料1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類と下記一般式(5)で表されるカルボン酸ハロゲン化物を反応させる方法、などが挙げられる。
(式中、R1、R2は一般式(1)のそれと同じである。)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じである。)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じである。)
(式中、Rは一般式(1)のそれと同じであり、Xはハロゲン原子である。)
反応式(I)
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジイソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジメトキシ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等が挙げられる。
また、原料として用いられる上記一般式(3)で表される酸無水物としては、具体的には例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水安息香酸、メチル安息香酸無水物等が挙げられる。より好ましくは無水酢酸、無水安息香酸である。
また、上記一般式(4)で表されるカルボン酸としては、具体的には例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、メチル安息香酸等が挙げられる。より好ましくは酢酸、安息香酸である。
また、上記一般式(5)で表されるカルボン酸ハロゲン化物としては、具体的には例えば、塩化アセチル、臭化アセチル、塩化プロピオニル、塩化ベンゾイル、4−メチルベンゾイルクロリド等が挙げられる。より好ましくは塩化アセチル、塩化ベンゾイルである。
原料の1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類と酸無水物のジエステル化反応において、原料の酸無水物の使用量は、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類1モルに対して通常2モル倍以上、好ましくは2.5〜5モル倍の範囲で用いられる。
エステル化反応の温度は、通常、80〜200℃の範囲、好ましくは100〜160℃の範囲である。この範囲で反応を行うと効率的であり、より高純度の目的物が得られることができるので好ましい。
また、反応は通常、常圧下で行われるが、用いる原料、溶媒の沸点によっては、反応温度が前記範囲内になるように、加圧下又は減圧下に行ってもよい。このような反応条件において、エステル化反応は通常3〜15時間程度で完結する。
反応終了後、反応溶液から目的生成物である1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類を分離精製する方法も公知の方法を用いることができる。
例えば、反応液を常圧もしくは減圧下で加熱することにより未反応の酸無水物や反応副生成物であるカルボン酸を蒸留により分離することで、粗製乃至高純度の目的生成物を得ることができる。また、目的物が可溶な溶媒を添加して抽出してもよい。溶媒により抽出された目的物は、溶媒を濃縮する方法、或は貧溶媒を添加する方法などにより単離することができる。
また必要であれば、さらにクロマトグラフィーによる分離や、晶析・濾過することで高純度品を得ることができる。
一般式(6)
(式中、Aは直接結合、置換または非置換の脂肪族二価基、置換または非置換の環状脂肪族二価基、置換または非置換の芳香族二価基、又はこれらを連結してできる二価基を示す。)
また、Aが芳香族二価基である場合のジカルボン酸としては、具体的には例えば、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、3,3’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。
また、Aが脂肪族二価基、環状脂肪族二価基、芳香族二価基を連結してできる二価基としては、具体的には例えば、4,4’−ベンゾフェノンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルホンジカルボン酸、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−カルボキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9’−ビス(4−カルボキシフェニル)フルオレンなどが挙げられる。また、このようなジカルボン酸は、単独で用いても、また2種以上を混合して用いてもよい。
一般式(7)
(式中、R1及びR2は上記一般式(1)のそれと同じであり、Aは上記一般式(6)のそれと同じであり、nは1以上の数を表す。)
等のポリエステルが挙げられる。
本発明の前記一般式(1)で表される1,1−ビス(4−アシルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類において、置換基Rがメチル基である、ジアセチル化合物と前記一般式(6)で表されるジカルボン酸から溶融重縮合法によりポリエステルを製造する方法は、例えば、米国特許第4256624号、特表2001−516374号公報等に記載されている方法を適用することができる。ジアセチル化合物とジカルボン酸の反応を含む重合反応は溶融アセトリシス重合として知られており、一般には芳香族化合物含有ポリエステルの製造に対して好ましい方法である。
溶融重合は触媒の非存在下で行うこともできるが、反応を促進するため金属アセテートや金属酸化物等の塩基性触媒、必要に応じてジアルキル錫酸化物、イミダゾール等の窒素塩基、有機カチオン含有塩等の助触媒の存在下に反応を行ってもよい。また、生成ポリエステルのメルトフローキャパシティーを改良し、ジカルボン酸の昇華を防ぐため補助溶媒、例えばジフェニルエーテル、置換シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の高沸点溶媒を使用してもよい。また、生成ポリエステルが結晶化する場合は、重縮合反応を溶融物中では完結するまで実施せずに、まだ容易に流動するプレポリマーの生成までに留め、次
に所望の重合度に達するまで、このプレポリマーをその融点以下で固相縮合するように反応を行ってもよい。この場合には縮合反応の完結は、減圧下で生成ポリマーの融点より少し低い温度において完結にまで導かれ、酢酸が更に離脱除去される。
実施例1
1,1−ビス(4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成
温度計、還流冷却器及び撹拌翼を取り付けた1Lの四つ口フラスコに無水酢酸229.0g(2.25モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン248.0g(0.80モル)を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温した後、同温度で7時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、未反応の無水酢酸及び酢酸を蒸留して除去することにより、蒸留残渣として固体316g(純度:99.8%)を得た。得られた固体は、ガスクロマトグラフィー質量分析により、分子量が394の化合物であることが確認された。
この固体は、FT−IRによりOH基由来のOH伸縮振動のピーク(3550〜3200cm−1)は検出されず、エステル基に由来する1755cm−1(C=O伸縮振動)および1200〜1100cm−1( C-C(C=O)-O、O-C-C逆対称伸縮振動)が検出され、エステル基を有することが確認された。
1,1−ビス(4−アセチルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成
温度計、還流冷却器及び撹拌翼を取り付けた1Lの四つ口フラスコに無水酢酸386.0g(3.78モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン434.0g(1.40モル)を仕込み、撹拌下に130℃まで昇温した後、同温度で6時間撹拌下に反応を行った。
反応終了後、未反応の無水酢酸及び酢酸を蒸留して除去した後、メタノール1104gを添加して25℃まで冷却し、析出した結晶を濾別した。得られた結晶を減圧下で乾燥することにより、白色結晶488g(純度100.0%)を得た。
得られた結晶の融点は90.5℃(示差走査熱量分析)であった。
1,1−ビス(4−ベンゾイルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成
温度計、還流冷却器及び撹拌翼を取り付けた2Lの四つ口フラスコに、p−キシレン52.0gを仕込み、撹拌下、無水安息香酸316.0g(1.40モル)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン155.0g(0.50モル)を順に添加した後、140℃まで昇温し、140〜145℃で撹拌下に6時間反応を行った。
反応終了後、1−ブタノール1036gを添加し、得られた溶液を25℃まで冷却し、析出した結晶を濾別した。得られた粗結晶を116℃でp−キシレン及び1−ブタノールに溶解した後、25℃まで冷却し、析出した結晶を濾別した。得られた結晶を減圧下で乾燥することにより白色結晶233g(純度99.8%)を得た。得られた結晶の融点は173.7℃(示差走査熱量分析)であり、ガスクロマトグラフィー質量分析により、分子量が518の化合物であることが確認された。
この白色結晶はFT−IRによりOH基由来のOH伸縮振動ピーク(3550〜3200cm−1)は検出されず、エステル基に由来する1733cm−1(C=O伸縮振動)および芳香族酸エステルに由来する1300〜1150cm−1(C-C(C=O)-O逆対称伸縮振動、O-C-C逆対称伸縮振動)のピークが検出され、フェノール性水酸基がベンゾイル化されていることが確認された。
Claims (1)
- 下記化学式
で表される1,1−ビス(4−ベンゾイルオキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン。
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