JP5047896B2 - 新規なビス無水トリメリット酸エステル類及びそれとジアミンから得られるポリエステルイミド前駆体 - Google Patents

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Description

本発明は、新規なビス無水トリメリット酸エステル類及びそれとジアミンから得られるポリエステルイミド前駆体に関し、詳しくは、1,1−ビス(4−オキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを中心骨格とするビス無水トリメリット酸エステル及びそのようなビス無水トリメリット酸エステル類とジアミンを反応して得られるポリエステルイミド前駆体に関する。
ビス無水トリメリット酸エステル類については、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂の硬化剤、或いはポリエステルイミド樹脂の原料等として用いられてきている。このようなビス無水トリメリット酸エステル類としては、従来、例えば、2,2−ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)のビス無水トリメリット酸エステル化合物(特許文献1)、4,4’−メチレンビスフェノール(ビスフェノールF)、4,4’−(1,3−ジメチルブチリデン)ビスフェノール、4,4’−シクロへキシリデンビスフェノール、中心骨格に芳香環を持つ4,4’−(1−フェニルエチリデン)ビスフェノール、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス無水トリメリット酸エステル化合物(特許文献2)、4,4’−ビフェノール、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールのビス無水トリメリット酸エステル化合物(特許文献3)等が知られている。
また、ポリエステルイミド前駆体については、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)トリデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンの無水トリメリット酸エステル化合物とジアミンよりのポリエステルイミド前駆体(特許文献4)などが知られている。
しかしながら、近年、特に、ポリエステルイミド樹脂は種々の用途に利用されてきており、その用途によっては、耐熱性等の更なる性能向上が要望されてきている。そこで、本発明者らは原料である無水トリメリット酸エステル化合物について鋭意検討した結果、新規エステル化合物である中心骨格のシクロヘキサン環の特定位置に3つのメチル基が置換した1,1−ビス(4−オキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを中心骨格とするビス無水トリメリット酸エステル、また、それとジアミンから得られるポリエステルイミド前駆体は前記耐熱性等の向上要求に応えるものであることを見出し本発明を完成した。
特開平04−208279号公報 特開平08−053436号公報 特開平04−029986号公報 特開平05−214101号公報
従って、本発明は、耐熱性、機械的強度等の改良されたエポキシ樹脂、ウレタン樹脂或いはポリエステルイミド樹脂等の硬化剤或いは原料等として好適に用いることのできる、新規なビス無水トリメリット酸エステル類を提供すること及びそれとジアミンから得られる新規なポリエステルイミド前駆体を提供することを目的とする。
本発明では、耐熱性のポリエステルイミド樹脂の原料の無水トリメリット酸エステル化合物として、新規エステル化合物である中心骨格のシクロヘキサン環の特定位置に3つのメチル基が置換した、下記一般式(1)の1,1−ビス(4−オキシフェニル)3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを中心骨格とするビス無水トリメリット酸エステル及び、該化合物とジアミンから得られる下記一般式(2)のポリエステルイミド前駆体を提供するものである。
Figure 0005047896
Figure 0005047896
本発明のビス無水トリメリット酸エステル類は、中心骨格のシクロヘキサン環の特定位置に3つのメチル基が置換された構造を有しており、このようなビス無水トリメリット酸エステル類は従来知られていない。さらに前述の先行文献のビス無水トリメリット酸エステル類に比べて有機溶剤への溶解性を維持しつつ、予想を超えて特異的に高い融点、ガラス転移温度を持つことを見出した。本発明によるビス無水トリメリット酸エステル類は、工業的に取り扱いやすく耐熱性の改良されたエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂等の硬化剤や、ポリイミド樹脂原料として有用である。また、このようなビス無水トリメリット酸エステル類とジアミンから得られるポリエステルイミド前駆体からは、耐熱性ないし機械的強度の優れたポリエステルイミド樹脂が得られる。
その他、対吸水性や光学特性ないし電気特性についても優れた特性が期待できる。
本発明による新規エステル化合物は、下記一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類である。
Figure 0005047896
(式中、R、Rは各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又はフェニル基を示す。)
また、本発明による今ひとつの新規な前駆体化合物は、上記のビス無水トリメリット酸エステル類とジアミンから得られるポリエステルイミド前駆体である。
上記一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類において、式中、R、Rは各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又はフェニル基を示す。
、Rにおいて、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、好ましくは、炭素原子数1〜4の鎖状または分岐鎖状のアルキル基、又は炭素原子数5〜7のシクロアルキル基である。炭素原子数1〜8のアルキル基として具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等が挙げられる。
また炭素原子数1〜8のアルコキシル基としては、好ましくは、炭素原子数1〜4の鎖状または分岐鎖状のアルコキシル基、又は炭素原子数5〜7のシクロアルコキシル基である。炭素原子数1〜8のアルコキシル基として具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基等が挙げられる。また、フェニル基には1〜3個のアルキル基が置換していても良い。
式中、R、Rにおいて、好ましいR及びRとしては、R及びRが共に水素原子である場合、又は、片方が水素原子でもう一方がアルキル基である場合である。
従って、上記一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類としては、具体的には、例えば、
1,1−ビス{4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
Figure 0005047896
さらに
1,1−ビス{3−メチル−4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス{3,5−ジメチル−4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ}フェニル−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス{3−エチル−4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス{3−シクロヘキシル−4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス{3−メトキシ−4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス{3−フェニル−4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
等が挙げられる。
本発明の一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類は、特に、その製造方法は限定されるものではないが、例えば、特開平8−53436号公報記載のように、ビスフェノールと無水トリメリット酸ハライドをアミンの存在下に反応させる方法、或いは、特開2006−206486号公報記載のようにビスフェノールの低級アルカン酸エステルとトリメリット酸無水物を相間移動触媒の存在下にエステル交換する方法と類似の方法により製造することができる。例えば、ビスフェノールと無水トリメリット酸ハライドをアミンの存在下に反応させる方法について具体的に述べると、下記反応式(1)で例示するように、本発明のビス無水トリメリット酸エステル類の中心骨格に対応する、下記一般式(3)で表される1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類と下記一般式(4)で表される無水トリメリット酸ハライドを、3級アミンの存在下、無溶媒又は有機溶媒中にて反応させることにより本発明の一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類を得ることができる。
Figure 0005047896
(一般式(3)中R、Rは一般式(1)のそれと同じである。また、一般式(4)中Xはハロゲン原子を表す。)
上記一般式(3)で表される原料ビスフェノールの1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類としては、具体的には、例えば、
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
1,1−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、
等が挙げられる。
また、上記一般式(4)で表される今ひとつの原料の無水トリメリット酸ハライドとしては、具体的には、例えば、無水トリメリット酸クロライド、無水トリメリット酸ブロマイド、無水トリメリット酸アイオダイド等が挙げられる。
1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類と無水トリメリット酸ハライドの反応において、無水トリメリット酸ハライドは、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類の通常1.5モル倍程度以上を用いるが、好ましくは、1.8〜3.0モル倍の範囲、特に、好ましくは、2.0〜2.5モル倍の範囲で用いられる。反応は、無水トリメリット酸ハライド類と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類とを有機溶媒中にて、3級アミンの存在下に反応させる。
ここに、3級アミン類としては、例えば、ピリジン、N,N−ジメチルアニリン、N−メチルジフェニルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、キノリン、アクリジン、ピラジン、イミダゾピリジン等を挙げることができる。特に、ピリジンが好ましく用いられる。これら3級アミン類の使用量は、原料トリメリット酸ハライドに対して、等モル量以上が必要であり、好ましくは1〜1.5倍モルの範囲で用いられる。
反応時の有機溶媒は、3級アミン類を多く用いるなどすることにより、操作上問題がなければ使用しなくてもよいが、有機溶媒を使用することが好ましい。また、有機溶媒としては、反応原料の溶媒となり且つ反応を阻害しないものであれば得に制限はないが、好ましくはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、メチルペンチルケトン、2−オクタノン、2−トリデカノン等のケトン類、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、プソイドクメン等の芳香族炭化水素類、エーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸等のカルボン酸類などが挙げられる。これらのうち、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類が好ましく、またこのような溶媒は単独で用いても2種類以上混合して用いても良い。
有機溶媒の使用量は特に制限はないが、通常、原料ビスフェノール類に対して1〜100重量倍、好ましくは2〜30重量倍、更に好ましくは5〜15重量倍の範囲で用いられる。
反応に際しては、原料である無水トリメリット酸ハライド類と1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類、アミン類及び反応溶媒の反応容器への仕込みの方法や順序については、特に、限定されるものではないが、通常は、トリメリット酸ハライドを溶媒に溶解させ、これを反応容器に仕込み、次いで、これに1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類をアミン類に溶解した溶液を滴下させて反応させるか、或いはトリメリット酸ハライドを溶媒に溶解させ、これを反応容器に仕込み、次いで、これにアミン類を滴下して、先ず、トリメリット酸ハライドのアミン塩を生成させた後、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン類を溶媒に溶解させた溶液を滴下して、反応させる方法が好ましい。
反応温度は、通常−10〜100℃の範囲、好ましくは、−10〜30℃の範囲、更に好ましくは、0〜10℃の範囲である。
反応終了後、反応生成混合液から、目的物を得るには、公知の精製方法を用いることができるが、例えば、得られた反応生成混合液に塩酸等の酸水溶液と水を加えて水洗し、アミン塩を含む水層を除去する。水層を分離除去するために必要ならば、メチルイソブチルケトン、トルエン又はエーテル等の水と分離可能な溶媒を加えて溶解した後、水層を分離すると共に油層を水洗する。得られた油層に無水酢酸を添加して開環したテトラカルボン酸の閉環反応を行い、晶析をすることによって結晶を得る。結晶の純度が低い等、必要ならば、晶析または沈殿を1回〜複数回行っても良い。得られた結晶を濾別し、乾燥することによって、本発明のビス無水トリメリット酸エステル類を高純度の結晶性粉末として得ることができる。晶析溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソプロピルケトン等の脂肪族ケトン類、トルエン、キシレン、メシチレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素類があげられる。
前述したように水洗操作等で水と接触させた場合は、目的物のビス無水トリメリット酸エステル類が水と反応し、全部ないし一部が下記一般式(5)のテトラカルボン酸となるが、下記反応式(2)で例示されるように生成したテトラカルボン酸を飽和脂肪族カルボン酸無水物と反応させる等の公知の方法により目的物のビス無水トリメリット酸エステル類を得ることができる。
Figure 0005047896
(一般式(5)中、R、Rは一般式(1)のそれと同じである。)
また、本発明による今ひとつの新規な前駆体化合物である、前記一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類とジアミンから得られるポリエステルイミド前駆体(以下、ポリアミック酸とも言う)は下記一般式(2)で表される。
Figure 0005047896
(式中、R、Rは各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又はフェニル基を示し、Aは2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を示す。)
一般式(2)において、式中、R、Rは一般式(1)のそれと同じである。
また、Aは2価の芳香族基及び又は脂肪族基を示す。2価の芳香族基及び又は脂肪族基であるAは、本発明のポリエステルイミド前駆体を得る製造スキームを示す下記反応式(3)中の下記一般式(6)のジアミン中の2価基Aと同じである。
Figure 0005047896
上記反応式(3)において、Aで示される2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を含む一般式(6)で示されるジアミンとしては、テトラカルボン酸二無水物である本発明のビス無水トリメリット酸エステル類と反応してポリエステルイミド前駆体を得ることができる芳香族及び/又は脂肪族ジアミンであれば、特に制限はない。
具体的には例えば、芳香族ジアミンとしては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、2,5−ジアミノトルエン、2,4−ジアミノキシレン、2,4−ジアミノデュレン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−メチレンビス(2−メチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2−エチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジメチルアニリン)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジエチルアニリン)、1,3−ビス{1−(4−アミノフェニル)イソプロピル}ベンゼン、1,4−ビス{1−(4−アミノフェニル)イソプロピル}ベンゼン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、2,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4−アミノフェニル−4’−アミノベンゾエート、4−アミノ−2−メチルフェニル−4’−アミノベンゾエート、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノ−2−メチルフェニル)テレフタレート、ベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、o−トリジン、m−トリジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルホン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、p−ターフェニレンジアミン、ビス(4−アミノフェニル)テレフタレート、ビス(4−アミノ−2−メチルフェニル)テレフタレート等が挙げられる。
また、脂肪族ジアミンとしては、具体的には例えば、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、イソホロンジアミン、トランス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、シス−1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンビス(メチルアミン)、2,5−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、2,6−ビス(アミノメチル)ビシクロ〔2.2.1〕ヘプタン、3,8−ビス(アミノメチル)トリシクロ〔5.2.1.0〕デカン、1,3−ジアミノアダマンタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)ヘキサフルオロプロパン、1,3−プロパンジアミン、1,4−テトラメチレンジアミン、1,5−ペンタメチレンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタメチレンジアミン、1,8−オクタメチレンジアミン、1,9−ノナメチレンジアミン等が挙げられる。このような芳香族乃至脂肪族ジアミンは単独で用いても、又、任意の2種類以上を併用して用いてもよい。
本発明の一般式(2)で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体は、その製造方法については公知の方法を用いることができる。具体的には例えば、前記一般式(6)で表されるジアミンを重合溶媒に溶解し、これに本発明のビス無水トリメリット酸エステル類(通常は、粉末状である)を徐々に添加し、例えばメカニカルスターラー等を用いて攪拌下に反応させる。反応温度および反応時間は、使用する原料や溶媒等に依存するが、通常、温度0〜100℃の範囲、好ましくは20〜60℃の範囲で0.5〜100時間、好ましくは1〜24時間反応させる。また、反応を促進するために無水溶媒を用いたり、窒素雰囲気下で反応させる態様も好適である。
反応においては、生成する反応混合液中のモノマー濃度は、通常5〜50重量%、特に10〜30重量%の範囲であることが好ましい。このモノマー濃度範囲で重合を行うことにより均一で高重合度のポリイミド前駆体を得ることができる。
このようにして得られる本発明の一般式(2)で表されるポリエステルイミド前駆体の固有粘度は、用いるビス無水トリメリット酸エステル類及びジアミンにより異なるが、通常、0.1〜20.0dL/gの範囲、好ましくは0.5〜5.0dL/gの範囲である。
本発明の一般式(2)で表されるポリエステルイミド前駆体は、溶媒を含むワニスとして用いてもよく、また、使用用途に応じて固体等他の形態で用いられてもよい。
反応に際し、テトラカルボン酸二無水物としては、本発明のビス無水トリメリット酸エステル類に加えて、他のテトラカルボン酸二無水物を併用して用いてもよい。
このようなテトラカルボン酸二無水物としては、具体的には例えば、芳香族テトラカルボン酸二無水物として、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、メチルハイドロキノン−ビス(トリメリテートアンハイドライド)、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。
また、脂肪族テトラカルボン酸二無水物として、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、5−(ジオキソテトラヒドロフリル−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸無水物、テトラヒドロフラン−2,3,4,5−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ−3,3’ ,4,4’−テトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などが挙げられる。また、このような他のテトラカルボン酸二無水物は2種類以上を併用して用いてもよい。
反応に際し、重合溶媒は用いても用いなくても良いが、操作上用いることが好ましく、その重合溶媒としては、原料のビス無水トリメリット酸エステル類とジアミンに対して適度な溶解度を有し、縮合反応を阻害しないものであれば特に制限されないが、具体的には例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン等のアミド溶媒、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−γ−ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、m−クレゾール、p−クレゾール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
これらのうちN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホオキシド等の非プロトン性溶媒、ジメチルアセトアミドやジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン等の極性溶媒が好ましく用いられる。
また、このような溶媒と共に他の一般的な有機溶剤を併用して混合溶媒として用いることができる。このような有機溶剤としては、具体的には例えばフェノール、0−クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、2−メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒などを挙げることができる。
また、ポリアミック酸の末端は封止されることもできる。末端封止剤を用いて封止する場合、その末端封止剤としては、例えばフタル酸クロライドおよびその置換体、アミン成分としてはアニリンおよびその置換体が挙げられる。
本発明の一般式(2)で表されるポリアミック酸は、これを熱的に又は脱水環化試薬等を用いて、公知の方法によりイミド化して、下記一般式(7)で表される反復単位を有するポリエステルイミド樹脂とすることができる。
Figure 0005047896
(式中、R、R及びAは一般式(2)のそれと同じである。)
このような上記一般式(7)で表される反復単位を有するポリエステルイミド樹脂としては、具体的には例えば、R,Rが水素原子、アミンが1,3−ビス{1−(4−アミノフェニル)イソプロピル}ベンゼンの場合について下記反応式(4)で示す。
Figure 0005047896
(式中、エステル基の結合位置は、アミド結合に対してメタ位又はパラ位である)
(実施例1)
1,1−ビス{4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンの合成;
還流器及び滴下ロートを備えた1Lの四つ口フラスコに無水トリメリット酸クロライド60.5g(0.297モル)、メチルイソブチルケトン233g、アセトン97gを仕込み、0〜5℃に冷却しながら溶解させた。別に、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン38.8g(0.125モル)、ピリジン29.7g(0.375モル)及びメチルイソブチルケトン38.8gを混合して室温下で溶解させた後、この溶液を滴下ロートで四つ口フラスコに温度0〜5℃を保持しながら2.5時間かけて滴下し、撹拌下に反応を行った。滴下終了後、さらに撹拌下に温度0〜5℃で1時間反応した後、70℃まで温度を上げさらに5時間撹拌下に反応させた。反応終了後、塩酸水と水を添加して撹拌した後、水層を分離した。得られた油層に水を添加して撹拌した後水層を分離する水洗操作を4回繰り返して、生成したピリジン塩酸塩を除去した。その後、水洗時に目的物が開環したテトラカルボン酸を含む油層に無水酢酸48.5g(0.475モル)を加えて温度85〜90℃で1.5時間かけて閉環させた後、室温まで冷却して析出した結晶を濾過することで純度97.8%(ゲル浸透クロマトグラフィー分析による)の白色結晶を得た。原料ビスフェノールに対する収率は74モル%であった。
融点;211℃(示差走査熱量測定法による)
1H−NMR分析(400MHz、溶媒:CDCl)
Figure 0005047896
Figure 0005047896
(実施例2)
ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)の合成;
実施例1で得られた1,1−ビス{4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンを有機溶媒を用いて晶析精製をおこない、純度99.0モル%の1,1−ビス{4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン粉状体を得て、これをポリイミド前駆体原料とした。
次いで、窒素置換した300mlの四つ口フラスコに1,3−ビス{1−(4−アミノフェニル)イソプロピル}ベンゼン6.89g(0.020モル)、N−メチルピロリドン120.3gを仕込み、温度30℃で溶解させた。その後、窒素雰囲気下に温度30℃に保持しながら前記粉状体の1,1−ビス{4−(1,3−ジオキソ−1,3−ジヒドロイソベンゾフラン−5−イルカルボニルオキシ)フェニル}−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン13.2g(0.020モル)を30分かけて添加した。添加終了後、温度30℃で18時間、撹拌下に反応を行った。反応終了後、得られた反応液をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)にて分析するとポリマー分子量は22410(ポリスチレン換算値)だった。またその反応液の粘度を測定すると8.0ポアズだった。
また、得られた重合体はGPC分析より、下記化学式で表される目的物のポリイミド前駆体であることを確認した。

Figure 0005047896
(式中、エステル基の結合位置は、アミド結合に対してメタ位又はパラ位を表す)
(比較例1)
実施例1において、原料ビスフェノールを(1)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンに代えて、(2)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−シクロヘキサン、(3)2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)を用いた以外は実施例1と同様にして、ビス無水トリメリット酸ビスフェノールエステル(2)、(3)を合成し、その化合物物性を下記表2に比較した。
これより、本発明に係るビス無水トリメリット酸エステル(1)は、高い融点、ガラス転移点を示し、しかも溶媒への溶解性も良好である。
Figure 0005047896
Figure 0005047896
溶解度測定方法;
各化合物10.0gに溶媒10.0gを加えて、撹拌下に90℃(テトラヒドロフランの場合は30℃)に昇温し、同温度で2分間溶解させた後、結晶が完全に溶解しているか確認した。結晶が溶け残っていたので、溶媒10.0gを追加して同様の操作で溶解させた。その後、結晶が完全に溶解するまで、溶媒を追加して同様の操作を行った。化合物が完全に溶解した時点の全溶媒量より溶解度を算出した。
ガラス転移温度測定方法:
示差走査熱量計において各化合物の結晶の融点より20℃高い温度まで昇温して、融解させた後、冷却し、更に、その後、加熱して、ガラス転移点を測定した。この際の測定条件は、測定開始温度40℃、測定終了温度融点+20℃、加熱速度10.0℃/分とした。

Claims (2)

  1. 下記一般式(1)で表されるビス無水トリメリット酸エステル類。
    Figure 0005047896
    (式中、R、Rは各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又はフェニル基を示す。)
  2. 下記一般式(2)で表される反復単位を有するポリエステルイミド前駆体。
    Figure 0005047896
    (式中、R、Rは各々独立して水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜8のアルコキシル基、又はフェニル基を示し、Aは2価の芳香族基及び/又は脂肪族基を示し、エステル基の結合位置は、アミド結合に対してメタ位またはパラ位を表す。)
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