JP6692474B1 - 漆喰材 - Google Patents

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Abstract

【課題】引張強度の向上を図ることによって、壁面等に塗布した際、乾燥によるひび割れの発生を抑制することができる漆喰材を提供する。【解決手段】本発明の漆喰材は、水と、消石灰と、セルロースナノファイバ1とを含む。該セルロースナノファイバの配合率は、前記消石灰に対して0.2〜0.8重量%である。漆喰材の製造時、漆喰材を均一に攪拌することで漆喰材内の消石灰粒子100の間にセルロースナノファイバ1が入り込む。セルロースナノファイバ1を介して結合した消石灰粒子100は、乾燥収縮によって凝集体を形成しないため、従来の漆喰材のように凝集体間に発生したひび割れの発生を抑制できる。【選択図】図1

Description

本発明は、漆喰材に関し、さらに詳しくは、漆喰壁の製造に用いられる漆喰材に関する。
一般的に、漆喰材は、生石灰(CaO)に水を加えて消化させることによって得られる消石灰(Ca(OH))に、水等を混合して攪拌し、一定時間冷却後に得られる壁面塗布材である。この漆喰材は、調湿性、強度又は防火に優れ、また、白い壁面が美観に優れることから、古来、城壁や蔵の壁面等の漆喰壁を製造するため多く利用されている。
特開昭60−251161号公報(特許文献1)は、漆喰の混練りを省力化するために、生石灰に混和剤を配合して湿式消化し、石灰クリームとして使用する漆喰塗材料の製造方法を開示する。
特開2002−284565号公報(特許文献2)は、従来の漆喰の利用における施工の困難性又は作業効率の悪さに鑑み、現場における工期の短縮が可能で、手間なく塗布することのできる生石灰クリーム調湿複合塗材を開示する。
特開昭60−251161号公報 特開2002−284565号公報
しかしながら、特許文献1に記載の漆喰塗材料と特許文献2に記載の生石灰クリーム調湿複合塗材は、手軽に漆喰材を塗布できるという利点があるものの、一度に厚塗りを行うとひび割れが発生しやすくなるため、一回の塗布の厚みをできるだけ薄くする必要がある。そのため、漆喰材の塗布層を厚くしたい場合は、できるだけ薄く漆喰材を塗布して乾燥するのを待ち、その乾燥後、さらにその上から薄く漆喰材を塗布するという手順を繰り返さなければならない。よって、特許文献1に記載の漆喰塗材料と特許文献2に記載の生石灰クリーム調湿複合塗材は、壁面等に厚く塗布しようとする際、漆喰壁の製造に時間と手間がかかるという問題があった。
このようなひび割れは、図8に示すように、壁面等に塗布された漆喰材の水分Wが時間の経過とともに徐々に蒸発し、漆喰材が乾燥することによって発生する。具体的には、漆喰材に含有される消石灰粒子100の表面に残った水分Wの表面張力により、水分Wが蒸発した空隙を埋めるようにして消石灰粒子100同士が凝集(乾燥収縮)し、図示の左右に示すような凝集体を形成する。この際、凝集による収縮(引張)応力が漆喰材の引張強度を上回ることによって、凝集体の間にひび割れCが生じる。特に、漆喰材を一度に厚塗りをした場合は、薄く塗布した場合に比べて漆喰材の体積が大きく、収縮応力が強く生じる。そのため、一度に厚塗りをした漆喰材の方が、ひび割れCがより発生しやすくなる。
したがって、ひび割れを抑制するには、漆喰材の乾燥(引張)収縮に対して漆喰材の引張強度を向上させることが肝要である。
そこで、本発明は、引張強度の向上を図ることによって、壁面等に塗布した際、乾燥によるひび割れの発生を抑制することができる漆喰材を提供することを課題とした。
上記課題を解決するために、本発明は次のように構成した。すなわち、本発明に係る漆喰材は、水と、消石灰と、セルロースナノファイバとを含むことを特徴としている。
本発明に係る漆喰材によれば、漆喰材中の消石灰粒子の間にセルロースナノファイバが入り込み、セルロースナノファイバを介して消石灰粒子同士を結合することで、乾燥収縮を抑制することができる。そのため、漆喰材の引張強度が向上させることができ、ひび割れを抑制することができる。
好ましくは、セルロースナノファイバの配合率は、消石灰に対して0.2〜0.8重量%である。
0.2〜0.8重量%という少量のセルロースナノファイバを含有させたことより、効果的にひび割れの発生を抑制することができる。また、セルロースナノファイバを0.2重量%以上で含有させたことにより、十分な引張強度を確保でき、ひび割れの発生を抑制することができる。さらに、セルロースナノファイバを0.8重量%以下で含有させたことにより、セルロースナノファイバの過剰な添加による漆喰材のコテ滑りの悪化を防ぐことができ、施工性の悪化を抑制することができる。
なお、コテ滑りとは、いわゆる左官用コテを用いて漆喰材を壁面等に塗布するにあたり、左官用コテを移動させる際の滑らかさを言い、一般的にコテ滑りが良いほど漆喰材の塗布における仕上げが美しくなる。
さらに、好ましくは、セルロースナノファイバの直径の頻度分布は、300〜5000nmの範囲内に最大ピークを有する。
このように直径が比較的太いセルロースナノファイバを含有させることにより、より効果的に引張強度を向上でき、粘度の上昇を抑制することができる。また、セルロースナノファイバの直径が細すぎると、からまった繊維同士の解繊が困難になるため、漆喰材全体にセルロースナノファイバが均一に分散しにくくなる。一方、漆喰材中に含まれる消石灰粒子の粒径は最大でも10000nm程度であり、セルロースナノファイバの直径が10000nm以上になると、攪拌しても消石灰とセルロースナノファイバが互いに分離して均一性を保てなくなり、消石灰粒子同士の凝集体が形成されるため、ひび割れを発生させる原因となってしまう。そのため、直径が比較的太い300〜5000nmのセルロースナノファイバを多く含有させることにより、セルロースナノファイバを漆喰材全体に均一に分散させることができ、漆喰材全体でひび割れの発生を抑制することができる。
本発明に係る漆喰材によれば、壁面等に塗布した際、乾燥によるひび割れの発生を抑制することができる。
図1は、消石灰粒子とセルロースナノファイバを示す概略図である。 図2は、セルロースナノファイバの直径の頻度分布を示す図である。 図3は、試験片の引張強度の試験方法を示す図である。 図4は、試験片の引張強度を示すグラフである。 図5は、漆喰材の粘度の測定方法を示す図である。 図6は、漆喰材の見かけの粘度を示すグラフである。 図7は、漆喰板の写真である。 図8は、従来の漆喰材における消石灰粒子を示す概略図である。
以下、本発明の実施形態に係る漆喰材について具体的に説明する。
漆喰材は、基本的には、水と、消石灰と、セルロースナノファイバ(以下、CNFという。)とを含む。
消石灰は、石灰石を焼成して生石灰とし、生石灰に化学反応当量よりも余剰の水を加え、攪拌しながら消化させて、スラリー状にしたもの(消石灰スラリー)のうち、水分等を除く消石灰のみを示す。なお、生石灰又は消石灰は、一般的な漆喰材に用いられるものであればよく、石灰石又は消石灰の産地、焼成の方法又は消化の方法等によって限定されるものではない。また、消石灰スラリーは、生石灰に水を加えて消化させて粉末状の消石灰を一旦作成し、粉末状の消石灰に加水してスラリー状にしてもよい。
CNFは、木材から得られるパルプ繊維をナノサイズまで解繊処理等したものである。CNFは、漆喰材に含まれる消石灰に対して所定の割合で含有されている。所定の割合は、詳細は後述するが、消石灰を100重量%として、下限は、0.2重量%、好ましくは0.3重量%とするのがよく、上限は、0.8重量%、好ましくは0.7重量%とするのがよい。
また、CNFは、解繊回数が多ければ直径が比較的細くなり、解繊回数が少なければ直径が比較的太くなるというように、解繊処理の方法やその回数により、直径の太さが異なる。詳細は後述するが、CNFの直径の頻度分布は、300〜5000nmの範囲内に最大ピークを有するのがよい。
(CNFの定義)
CNFの直径は、学術的には1〜100nmと定義されることが多いが、機械的に解繊したCNFの直径は、分布をもち、より太い繊維を含むことが多い。また、一般的には、直径が数10nm〜数μmの分布をもつセルロース製の繊維もCNFと呼ばれている。したがって、本明細書及び特許請求の範囲において、CNFとは、10μm以下の直径を有するセルロース製の繊維をいう。
次に、本実施形態に係る漆喰材の製造方法について説明する。まず、生石灰(CaO)を化学反応当量よりも余剰の水(HO)に投入する。生石灰と水をなじませるように攪拌すると、発熱の上、蒸気を発生させながら化学反応が進行し、消石灰(Ca(OH))に変化する。この状態で所定の時間冷却させると、消石灰スラリーになる。消石灰スラリーに、所定の割合でCNFを溶解させたCNF水溶液を添加し、消石灰スラリーにCNFが均一に分散するように攪拌する。このようにして、CNFを含有した本発明に係る漆喰材を製造する。
このように製造された漆喰材によれば、図1に示すように、消石灰スラリー中の消石灰粒子100の間にCNF1が入り込み、CNF1を介して消石灰粒子100同士を結合する。そのため、図8に示すような凝集体が生じず、凝集体間のひび割れCの発生を抑制することができる。すなわち、CNF1を介して消石灰粒子100同士が結合されたことにより、乾燥収縮が凝集体単位ではなく塗布された漆喰材全体に生じるため、全体での引張強度を向上させることができる。これにより、ひび割れCの発生を抑制することができる。
下記表1の実施例1〜17の漆喰材と比較例の漆喰材とを作成した。
表1の「CNFの種類」において、「NBKP−DDR」は、針葉樹由来の木材を原料に製造された針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)をDDR処理することにより作成したCNFである。なお、DDR処理は、抄紙用パルプの叩解などの原料処理で使用されるダブルディスクリファイナー処理である。本実施例では、NBKPの濃度を3重量%に調整したパルプスラリーのDDR処理を30回繰り返し行い、NBKP−DDRを得た。なお、DDR処理の回数は、ひび割れ発生の抑制効果を奏する適切な繊維直径のCNFを得るという観点から、20〜40回とするのが好ましい。
また、「LBKP」とは、広葉樹由来の木材を原料に製造された広葉樹漂白クラフトパルプのことであり、「3Pass」とは、木材の解繊処理を3回行ったことを示す。「10Pass」とは、木材の解繊処理を10回行ったことを示す。「20Pass」とは、木材の解繊処理を20回行ったことを示す。解繊処理は、本実施例では、株式会社スギノマシン製の湿式微粒化装置「スターバースト」を使用して行った。具体的には、LBKPのパルプスラリーを245MPaの高圧で小さなノズルから噴射し、セラミックボールに衝突させることによりナノ化を行う「ボール衝突チャンバー」を使用して解繊処理を行った。
解繊処理を繰り返すことにより、CNFの直径は細くなる。したがって、解繊回数が多いほどCNFの直径が比較的細いものが多くなり、解繊回数が少ないほどCNFの直径が比較的太いものが多くなる。
[CNFの性状評価(繊維直径)]
そこでまず、各CNFの直径を評価した。原料となる木材の種類又は処理条件を変えて作成したCNFの各種(NBKP−DDR、LBKP−3Pass、LBKP−10Pass及びLBKP−20Pass)について、その直径を評価した。CNFの直径は、日本ルフト株式会社製の粒子径分布測定装置CPS・Disc・Centrifugeを用いて測定した。本装置は、頻度別遠心沈降法を用い、検出器の位置まで沈降する到達時間と吸光度測定により粒子径及び粒子径分布を測定する装置である。直径の測定は、回転数20000rpm、粒子径測定範囲0.03〜7μm、CNF濃度0.2%の条件で行い、測定ごとに粒径0.263μmのPVC粒子で校正した。各CNFの直径の頻度分布は、図2のグラフに示す通りである。
実施例1〜5の漆喰材に含まれるNBKP−DDRは、直径が300nm〜5000nmの範囲内に最大の山があり、この範囲内に直径の最大ピークを有している。NBKP−DDRの直径の最大ピークを有する範囲において、下限は、300nmであり、好ましくは550nmであり、より好ましくは1000nmであり、上限は、5000nmであり、好ましくは3000nmであり、より好ましくは2500nmである。よって、実施例1〜5の漆喰材に含まれるNBKP−DDRは、比較的太い直径のCNFを多く含んでいる。
実施例6〜9の漆喰材に含まれるLBKP−3Passは、直径が300nm〜1000nmの範囲内に最大の山があり、この範囲内に直径の最大ピークを有している。LBKP−3Passの直径の最大ピークを有する範囲において、下限は、300nmであり、好ましくは450nmであり、より好ましくは480nmであり、上限は、1000nmであり、好ましくは550nmであり、より好ましくは520nmである。よって、LBKP−3Passは、実施例1〜5のNBKP−DDRよりも直径が細いが比較的太い直径のCNFを多く含んでいる。
実施例10〜13の漆喰材に含まれるLBKP−10Passは、直径が200nm〜1000nmの範囲内に最大の山があり、この範囲内に直径の最大ピークを有している。LBKP−10Passの直径の最大ピークを有する範囲において、下限は、200nmであり、好ましくは300nmであり、より好ましくは400nmであり、上限は、1000nmであり、好ましくは550nmであり、より好ましくは450nmである。よって、LBKP−10Passは、実施例6〜9のLBKP−3Passと最大分布の直径が同程度であるが、30nm〜200nmの範囲内に第二の山があり、実施例6〜9のLBKP−3Passよりも比較的細い直径のCNFを多く含んでいる。
実施例14〜17の漆喰材に含まれるLBKP−20Passは、直径が30nm〜300nmの範囲内に最大の山があり、この範囲内に直径の最大ピークを有している。LBKP−20Passの直径の最大ピークを有する範囲において、下限は、30nmであり、好ましくは40nmであり、より好ましくは45nmであり、上限は、300nmであり、好ましくは200nmであり、より好ましくは100nmである。よって、実施例14〜17のLBKP−20Passは、比較的細い直径のCNFを多く含んでいる。
このように、原料となる木材の種類又は処理条件を変更することによって、直径の分布が異なるCNFを得られることが分かった。
[試験1(引張強度)]
次に、図3(a)に示すように、漆喰材を型に入れて乾燥させて試験片21を作成し、引張強度試験を実施した。具体的な試験方法は、実施例1〜17で得られた各漆喰材及び比較例で得られた漆喰材をそれぞれ直径20mm×厚み5mmの型枠に流し込み、3日間放置して乾燥させた。その後脱型し、20mm(直径d)×5mm(厚みl)のコイン型の試験片21を作成した。品質の安定を図るため、温度20℃、湿度80%の恒温恒湿槽内で各試験片21を11日間養生し、その後、引張強度試験を実施した。引張強度試験は、試験片21を治具に挟む(チャッキングする)際に破損するおそれがあるため、チャッキングをする必要がない圧裂引張強度試験(ブラジリアンテスト)を採用し、JIS.M.0303「岩石の引張強さ試験方法」に準拠して実施した。
まず、専用の冶具22でコイン型の試験片21を直径方向に挟み込み、上方から一定速度で荷重Aを掛けてコイン型の試験片21が破断に至るまで圧縮する。図3(b)に示すように、本試験において、この圧縮に対する垂直方向の圧縮応力Xは、水平方向の引張応力Yに変換することができる。これにより、各漆喰材における引張強度を測定した。
引張強度は、下記の数1により算出できる。数1において、σは引張強度(MPa)を示し、Pは破断荷重(N)を示し、dは試験片の直径(mm)を示し、lは試験片の厚み(mm)を示す。
引張強度の試験結果は、上記表1及び図4のグラフに示した通りである。
漆喰材の引張強度は、各CNFの配合率の増加に比例して向上している。このように、CNFを漆喰材に含有させることにより、その原料、処理条件又は配合率にかかわらず、CNFを含有していない漆喰材に比べ、引張強度を向上させることができた。
また、図4のグラフに示すように、各CNFを含む漆喰材において、それぞれCNFの配合率が0.0重量%の状態から0.3重量%とするまでは比較的急な勾配で引張強度が上昇しているが、0.3重量%から0.5重量%までは引張強度の向上が緩やかになるか又は略フラットになっていた。そのため、実施例1〜17の漆喰材において、より少量のCNFを配合して効果的に引張強度の向上を図ろうとすると、各CNFの配合率は、0.2重量%以上とするのが好ましく、0.3重量%以上とするのがより好ましいことが分かった。
また、含有されるCNFの直径が比較的太い実施例1〜4の漆喰材は、CNF(NBKP−DDR)の配合率が少量であってもより顕著に引張強度が向上した。そのため、含有されるCNFの直径が比較的太いほど漆喰材の引張強度の向上に寄与する傾向にあることが分かった。詳細には、CNF(NBKP−DDR)を0.3重量%の配合率で含有させることにより、CNFを含有しない比較例の漆喰材に比べて、約2.4倍も引張強度が向上した。よって、CNFの直径の最大ピークを含む山が300nm〜5000nmの範囲内にある比較的太いCNFを漆喰材に含有させることにより、少量のCNFでもひび割れ抑制効果を発揮させるため、製造コストの削減にも寄与することができる。
[試験2(粘度)]
次に、実施例1〜17の漆喰材及び比較例の漆喰材について、それぞれ粘度を測定した。なお、漆喰材の粘度上昇は、漆喰材を壁面等に塗布する際のコテ滑りを悪化させる。そのため、施工性の悪化を抑制するためには、漆喰材の粘度上昇を抑制することが望ましい。
具体的な測定方法は、図5に示すように、消石灰及び各配合率で含有させた各CNFに対し、約120重量%の水を含んだ各漆喰材31について、JIS.K.7199「プラスチック−キャピラリーレオメータ及びスリットダイレオメータによるプラスチックの流れ特性試験方法」に準拠した測定を行った。各漆喰材31をシリンジ32に適量充填し、プランジャー33を一定速度で押し込んだときの荷重Wの変化を測定することにより、見かけの粘度を測定した。なお、本方法では、非ニュートン流体を測定した場合、得られる粘度はいずれも見かけの値(ニュートン流体であるとした場合の値)となる。
見かけの粘度ηapは、下記の数2、数3及び数4により算出できる。数2、数3及び数4において、Pは漆喰材にかかる圧力(MPa)を示し、Wはプランジャー33を押し込む際の荷重(N)を示し、Rはプランジャー33の半径(mm)を示し、Qは単位時間当たりの漆喰材31の押出体積(mm3/s)を示し、Vはプランジャー33の押し込み速度(mm/s)を示し、Lは射出孔34の長さ(mm)を示し、rは射出孔34の内半径(mm)を示す。
まず、数2及び数3を用いて、漆喰材31にかかる圧力P及び単位時間当たりの漆喰材31の押出体積Qを算出する。得られた漆喰材31にかかる圧力P及び単位時間当たりの漆喰材31の押出体積Qを数4に代入することにより、見かけの粘度ηapを算出することができる。
測定結果は、上記表1及び図6(a)及び(b)のグラフに示す通りである。図6(a)は、実施例1〜4及び実施例6〜17の漆喰材について、CNFの配合率を0.7重量%以下とした場合の粘度を示すグラフであり、図6(b)は、実施例1〜5の漆喰材について、CNF(NBKP−DDR)の配合率を1.0重量%以下とした場合の粘度を示すグラフである。
表1及び図6(a)のグラフに示すように、各漆喰材において、CNFの配合率を0.7重量%とするまでは、粘度は、やや上昇傾向がみられるものの略フラットのまま推移した。よって、各CNFを配合した漆喰材は、一様に施工性の悪化を抑制できることが分かった。
特に、頻度分布の最大ピークが300nm〜5000nmの範囲内にある比較的太いCNF(NBKP−DDR又はLBKP−3Pass)を含有した実施例1〜4及び6〜9の漆喰材は、粘度の上昇をより抑制できた。よって、直径が比較的太いCNFを多く含んだ漆喰材の方が、粘度の上昇を抑制することができる傾向にあることが分かった。
一方、図6(b)に示すように、CNF(NBKP−DDR)の配合率が0.7重量%を超えると、粘度が一気に上昇した。実施例6〜17の漆喰材については、実施例1〜5の漆喰材よりも、各CNFの配合率が0.7重量%を超えると粘度が一層上昇するものと推察される。粘度が上昇する要因は、固体成分(消石灰とCNF)の増量によるほか、固体成分の間に生じる摩擦力にある。固体成分の大きさが小さい場合、表面積が増すことによって摩擦力が増加し、粘度が上昇する。そのため、NBKP−DDRよりも直径が比較的細いCNFを多く含む実施例6〜17の漆喰材では、より一層粘度が上昇するものと推察される。したがって、漆喰材を壁面等に塗布する際の施工性(コテ滑り)の悪化を抑制するという観点からすれば、漆喰材に含有されるCNFは、消石灰に対して0.8重量%以下とするのが好ましく、0.7重量%以下とするのがより好ましい。
以上の通り、漆喰材は、各CNFの配合率を好ましくは0.2重量%以上、より好ましくは0.3重量%以上とし、且つ、好ましくは0.8重量%以下、より好ましくは0.7重量%以下とすることにより、効果的に引張強度を向上させ、乾燥時、ひび割れを抑制することができるとともに、漆喰材の粘度の上昇を抑制し、施工性の悪化を抑制することができる。
また、前述の通り、CNFの直径において、頻度分布の最大ピークが300nm〜5000nmの範囲内にある比較的太いNBKP−DDRを含む漆喰材は、他の種類のCNFを含む漆喰材に比べ、より顕著に引張強度を向上させることができた。さらに、このNBKP−DDRを含む漆喰材と、直径の最大ピークが300nm〜1000nmの範囲内に含まれる比較的太いLBKP−3Passを含む漆喰材とは、他の種類の漆喰材に比べ、粘度の上昇をより抑制することができた。したがって、頻度分布の最大ピークが300nm〜5000nmの範囲内にある直径が比較的太いCNFを多く漆喰材に含有させることにより、より効果的に引張強度を向上でき、且つ、粘度の上昇を抑制できる傾向にあることが分かった。
また、上述の通り、CNFの直径が細すぎると、からまった繊維同士の解繊が困難になるため、漆喰材全体にCNFが均一に分散しにくくなる。一方、漆喰材中に含まれる消石灰粒子の粒径は最大でも10000nm程度であり、セルロースナノファイバの直径が10000nm以上になると、攪拌しても消石灰とセルロースナノファイバが互いに分離して均一性が保てなくなり、消石灰粒子同士の凝集体が形成されるため、ひび割れを発生させる原因となってしまう。そのため、直径が比較的太い300nm〜5000nmのCNFを多く含有させることにより、CNFを漆喰材全体に均一に分散させることができ、漆喰材全体でひび割れの発生を抑制することができる。
なお、実施例1〜17では、CNFの原料となる木材の種類や処理方法を変えてCFN(NBKP−DDR、LBKP−3Pass、LBKP−10Pass及びLBKP−20Pass)を作成したが、これら木材の種類や処理方法にかかわらず、その作成されたCNFの配合率と、頻度分布において直径の最大ピークが含まれる範囲とにより、ひび割れ抑制の効果及びコテ滑りの悪化抑制の効果が発揮されるものと考えられる。
[試験3(実証試験)]
次に、実施例3の漆喰材と、比較例の漆喰材とを用いて、ひび割れ抑制効果の実証試験を行った。具体的には、各漆喰材をそれぞれ、石膏ボードに1.5mmの厚みで塗布し、室内で2日間乾燥させて漆喰板を作成したのち、3日目に目視によってひび割れの発生状況を観察した。
図7(a)は、写真左側に比較例の漆喰材より製造した漆喰板を示し、写真右側に実施例3の漆喰材より製造した漆喰板を示している。図7(b)は、実施例3の漆喰材より製造した漆喰板の拡大写真であり、図7(c)は、比較例の漆喰材より製造した漆喰板の拡大写真である。これら写真に示すように、実施例3の漆喰板には何らひび割れが発生せず、一方、比較例の漆喰板にはその主面全体にひび割れが発生した。このように、CNFを含有させた漆喰材について、実際に、ひび割れの発生を抑制することを実証することができた。
なお、実施例1〜2、実施例4〜5の漆喰材においても同様の実験を行ったが、いずれもCNFを配合した漆喰材にひび割れの発生を確認することはできなかった。
1 セルロースナノファイバ(CNF)
100 消石灰粒子
W 水分
C ひび割れ

Claims (3)

  1. 水と、
    消石灰と、
    セルロースナノファイバとを含む、漆喰材。
  2. 請求項1に記載の漆喰材であって、
    前記セルロースナノファイバの配合率は、前記消石灰に対して0.2〜0.8重量%である、漆喰材。
  3. 前記請求項1又は2に記載の漆喰材であって、
    前記セルロースナノファイバの直径の頻度分布は、300〜5000nmの範囲内に最大ピークを有する、漆喰材。
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