JP6644546B2 - セルロースナノファイバー担持水硬性成形体用補強繊維およびそれを含む水硬性組成物、水硬性成形体 - Google Patents

セルロースナノファイバー担持水硬性成形体用補強繊維およびそれを含む水硬性組成物、水硬性成形体 Download PDF

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本発明は、セメントペースト、モルタル、コンクリートなどの水硬性成形体を補強するために用いられる、セルロースナノファイバー(CNF)を担持する補強繊維、およびそれを含む水硬性組成物、ならびに水硬性成形体に関する。
セメント等の水硬性無機物質は、例えば、セメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料の形成に広く用いられている。これらの水硬性材料から形成される水硬性成形体は、土木資材、建築資材として、広く使用されている。これらの成形体の曲げ強度、靭性等の性能の改善やひび割れ抑制を目的として、コンクリート、セメントモルタルなどの水硬性材料のマトリックスに補強繊維を配合することが従来知られている。
また近年では水硬性成形体にCNFを添加することで強度が増す以外に保水性の向上、断熱性の向上、水分凍結時の膨張圧の吸収、スランプ値の改善など新たな機能を付加する検討がなされており、例えば特許文献1では、ナノ繊維としてCNFを含むモルタルまたはコンクリート組成物が開示されている。しかしCNFを添加する場合、抄造法のように大量の水中で分散させて使用するには問題はないが、高濃度のスラリーを使用する方式や射出成形などの場合、CNFが絡みあい凝集するなどして分散性が低下し、成形体の強度低下を引き起こすなどの問題があった。
特許文献2ではCNFの分散性を改善するためCNFの低濃度水溶液を担持粉体と混合することでCNF含有組成物を製造する検討がなされているが、CNF水溶液の濃度が低く粉体との混合後に脱水や乾燥、粉砕といった作業が必要で、製造に多大なエネルギーを要す他、粒径や担持量の均一化が困難で品質安定性を欠く問題があった。
また特許文献3においてもCNFの分散性を改善するためにポリエステル系樹脂を用いたCNF含有マスターバッチを含むセメント混和剤が検討されているが、既に微細化したCNFを用いることが出来ずポリエステル系樹脂中でセルロースを微細化しマスターバッチを製造する必要があるなど工程が煩雑になり時間を要すほか、製造コストの面でも問題があった。
特開2015−48276号公報 特開2013−188864号公報 特開2015−155357号公報
そこで本発明の目的は、CNFを水硬性組成物中に均一に分散性させることができるCNF担持水硬性成形体用補強繊維を提供することにある。
本発明の別の目的は、このような補強繊維を含む水硬性組成物を提供することにある。
本発明のさらに別の目的は、このような水硬性組成物から形成され、優れた強度を有する水硬性成形体を提供することにある。
本発明には以下の好適な実施態様が含まれる。
[1]繊維の表面に繊維重量に対して0.1重量%以上のCNFが担持されている水硬性成形体用補強繊維。
[2]前記水硬性成形体用補強繊維がポリビニルアルコール系繊維である、[1]に記載の水硬性成形体用補強繊維。
[3][1]または[2]のいずれかに記載の水硬性成形体用補強繊維および水硬性無機物質を含む、水硬性組成物。
[4]前記水硬性無機物質がセメントである、[3]に記載の水硬性組成物。
[5][1]または[2]のいずれかに記載の水硬性成形体用補強繊維、水硬性無機物質、および水を含む混合物を練り混ぜて水硬性組成物を得る工程、および水硬性組成物を成形した後硬化する工程、を含む水硬性成形体の製造方法。
本発明の水硬性成形体用補強繊維は、水硬性材料に添加し混合することで、補強繊維表面からCNFが徐々に脱離し水硬性材料中に拡散するため、CNFの良好な分散性を簡便に達成することができる。
本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維は、その繊維表面に、繊維重量に対して0.1重量%以上のCNFを担持することを特徴とする。CNFの担持量は、好ましくは0.2〜40質量%であり、より好ましくは、0.3〜35質量%であり、さらに好ましくは0.5〜30質量%である。CNFの担持量が前記範囲内にあると、水硬性成形体の補強効果に優れると同時に、水硬性組成物の流動性低下を抑制可能であり、また、CNF担持補強繊維の生産性の点からも有利である。
またCNFを添加した水硬性成形体は強度が優れるため成形体の薄物化など軽量化が達成でき、原材料の節約にも寄与する。
また一般的に、曲げ強度、靭性等の性能の改善やひび割れ抑制を目的に水硬性材料に補強繊維を添加すると、補強繊維とマトリックス間で摩擦抵抗が生じマトリックスの流動性(スランプ値、またはフロー値)が低下し施工性などに問題を来すことがあるが、本発明のCNF担持繊維を用いることで流動性の低下を抑制する効果も得られる。流動性の低下が抑制される原理は定かでないが、CNFの保水性能により補強繊維界面付近の水分率が増し、マトリックスとの摩擦抵抗を抑制する効果と考えられる。
(CNF)
本発明に用いられるCNFは繊維径が1〜500nm、アスペクト比が50〜200000のセルロース繊維であることが好ましい。繊維径は、より好ましくは直径が1〜300nmであり、さらに好ましくは1〜100nmである。アスペクト比は、より好ましくは60〜180000であり、さらに好ましくは80〜150000であり、特に好ましくは100〜120000である。繊維径は小さい方が単位重量あたりの表面積が大きくなるため好ましいが、特に上記範囲であれば、保水性や接着性の面で好ましい。また、アスペクト比は大きい方が水硬性成形体における強度向上の面で好ましいが、特に上記範囲であれば、強度向上と施工性を両立させることができる点で好ましい。アスペクト比が大きすぎると、CNFが水硬性組成物中で絡まってしまうおそれがある。
CNFの原料となるセルロースとしては、例えばパルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジックレーヨン等の再生セルロース繊維、バクテリア産出セルロース、ホヤ等の動物由来セルロースなどが挙げられる。またこれらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理したものであってもよい。
またセルロースを破砕したセルロース粉末を用いても良い。セルロース粉末としては、例えば日本製紙株式会社製「KCフロック」、旭化成ケミカルズ株式会社製「セオラス」、FMCバイオポリマー社製「アビセル」等の市販品が挙げられる。
(水硬性成形体用補強繊維)
本発明においてCNFを担持させる水硬性成形体用補強繊維は、有機繊維、無機繊維いずれも制限なく用いることができるが、セメント等がアルカリ性であることから、耐アルカリ性であることが好ましく、例えば、無機繊維としては、耐アルカリ性ガラス繊維、鋼繊維(スチールファイバー)、ステンレスファイバー、炭素繊維などが、また、有機繊維としては、ポリビニルアルコール系繊維(以下、PVA系繊維と称することがある)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、超高分子量ポリエチレン繊維、ポリアミド系繊維(ポリアミド6、ポリアミド6,6、ポリアミド6,10など)、アラミド繊維(特にパラアラミド繊維)、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール系繊維(PBO繊維)、アクリル繊維、レーヨン系繊維(ポリノジック繊維、溶剤紡糸セルロース繊維等)、ポリフェニレンサルファイド繊維(PPS繊維)、ポリエーテルエーテルケトン繊維(PEEK繊維)などが挙げられる。
これらのうち、耐アルカリ性ガラス繊維、炭素繊維、PVA系繊維、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、アクリル繊維、アラミド繊維などが、コンクリート補強性を有しつつ、低コストで製造できる観点から有利に使用できる。
また、硬化後のセメントと良好に接着し水硬性成形体における補強性をより一層向上させる観点から、PVA系繊維が特に好ましい。PVA系繊維を用いた場合、CNFの有する水酸基とPVAの有する水酸基との間に水素結合が生じるため、繊維表面にCNFを担持しやすくなる。
本発明に用いられるPVA系繊維を構成するPVA系ポリマーの重合度は、目的に応じて適宜選択でき特に限定されるものではないが、得られる繊維の機械的特性等を考慮すると30℃水溶液の粘度から求めた平均重合度が500〜20000であることが好ましく、800〜15000であることがより好ましく、1000〜10000であることがさらに好ましい。特に強度の観点から1000以上であることが好ましく、1200以上であることがより好ましく、1500以上であることがさらに好ましく、1750以上であることが特に好ましい。
本発明に用いられるPVA系繊維を構成するPVA系ポリマーのけん化度は、目的に応じて適宜選択でき特に限定されるものではないが、得られる繊維の力学物性の点から、好ましくは95モル%以上であり、より好ましくは98モル%以上であり、さらに好ましくは99モル%以上であり、特に好ましくは99.8モル%以上である。PVA系ポリマーのけん化度が低すぎると、得られる繊維の機械的特性や工程通過性、製造コストなどの面で好ましくない場合が多い。また、本発明に用いられるPVA系繊維を構成するPVA系ポリマーのけん化度の上限は、通常100モル%である。
補強繊維の繊維径は水硬性材料として使用される砂や砂利など骨材のサイズによって適宜選択でき特に限定されるものではない。PVA系繊維を用いる場合は、強度、生産性等の点から、例えば100〜700μmのものを用いることができる。
補強繊維のアスペクト比は、水硬性組成物中の繊維の分散性と硬化後の補強性を両立させる観点から、好ましくは30〜500であり、より好ましくは35〜470であり、さらに好ましくは40〜450である。アスペクト比が500より大きい場合には繊維同士が絡むなどして繊維の分散性が著しく悪化することがある。アスペクト比が30より小さい場合には、繊維が抜けやすくなり十分な補強性を発揮できないおそれがある。なお、アスペクト比とは、繊維長(L)と繊維径(D)との比(L/D)を意味している。
補強繊維の繊維強度 は、好ましくは6cN/dtex以上であり、より好ましくは7cN/dtex以上であり、さらに好ましくは8cN/dtex以上である。繊維強度の上限は、繊維に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、30cN/dtex程度であってもよい。なお、繊維強度は、JIS L1015「化学繊維ステープル試験方法(8.5.1)」の破断強伸度により測定可能である。
(製造方法)
本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維は、例えば、CNF分散液を調整する工程と、CNF分散液を用いて水硬性成形体用補強繊維にCNFを担持させる工程、を含む方法によって得ることができる。
[(1)CNF分散液の調製]
セルロース繊維のナノファイバー化は、前記セルロースより得られたセルロース繊維に機械的にせん断力を与えることによって行うことができる。せん断力を与える方法としては、例えば、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダー、2本ロール等の混練機などを用いる方法が挙げられる。
CNF分散液はCNFを分散媒に分散させたものであり、分散媒としてはCNFが分散する溶媒であれば、特に制限なく使用することができ、例えば水、メタノールやエタノール等のアルコール等の有機溶媒、又はこれらの混合物を用いることができる。
CNF分散液中のCNF濃度は特に限定されないが、好ましくは0.5重量%〜40重量%であり、より好ましくは1重量%〜35重量%であり、さらに好ましくは2重量%〜30重量%である。濃度が高すぎると分散液の粘度が高くなり補強繊維への均一担持が困難になる場合がある。また濃度が低すぎると補強繊維に担持させた後の分散媒の乾燥に要するエネルギーや時間が大きくなるほか、補強繊維に対するCNFの担持量が相対的に低下しやすく、最終的に得られる水硬性成形体で強度向上などの効果が得られにくくなる場合がある。
CNFは水等に分散させた液状物でも入手可能であり、例えば、ダイセル化学工業株式会社製「セリッシュ」等の市販品を用いることができる。
本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維の製造工程において、CNFの担持量や脱離性を調整するなどの目的で、バインダー樹脂をCNF分散液に添加することができる。バインダー樹脂としてはポリビニアルアルコール系、アクリル系、ポリエチレングルコール系などの水溶性樹脂を用いることができる。CNFの担持量や脱離性を調整することによって、水硬性成形体の強度を一層向上させることができるだけでなく、補強繊維と水硬性組成物中のマトリックスとの界面の状態を調節することによって、水硬性組成物の流動性の低下を抑制することも可能となる。
また本発明の効果を損なわない範囲であれば、CNFの分散液中の分散安定性や粘度安定性を高めるなど、目的に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、分解抑制剤、凍結防止剤、pH調整剤、隠蔽剤、着色剤、油剤などの添加剤などを用いてもよい。
[(2)水硬性成形体用補強繊維へのCNFの担持]
水硬性成形体用補強繊維を紡糸あるいは紡糸乾燥した後、例えば上述した方法によって得られたCNF分散液を用いて水硬性成形体用補強繊維の表面にCNFを担持させる。CNFを担持させる方法としては、例えば、CNF分散液に繊維を浸漬してCNF分散液を繊維表面に付着させる方法、CNF分散液をローラーなどを用いて繊維表面に塗布する方法、スプレーなどを用いて繊維表面に噴霧する方法、などが挙げられる。このような処理は、複数の繊維からなる繊維トウに対して行ってもよい。水硬性成形体用補強繊維は、紡糸後、CNF分散液を適応する前に、必要に応じ、延伸および/または切断してもよい。なお、炭素繊維の場合は、紡糸乾燥後、さらに焼成工程を経た繊維トウに対して、CNF分散液を適応してもよい。
水硬性成形体用補強繊維は、CNF分散液を適応した後、乾燥工程前に、必要に応じ、切断してもよい。
続いて、水硬性成形体用補強繊維の表面から分散媒を乾燥除去する。
乾燥温度は水硬性成形体用補強繊維が有機繊維の場合、水硬性成形体用補強繊維を構成するポリマーの軟化点未満の温度であって、分散媒が蒸発し得る温度であれば特に限定されない。
CNFは少なくとも水硬性成形体用補強繊維の表面の一部に担持されていればよく、特に繊維の長さ方向に対する側面の一部に担持されていればよいが、側面全体に担持されていることが好ましい。繊維端面には必ずしも担持されている必要はない。
このようにして得られたCNF担持水硬性成形体用補強繊維は、その繊維表面に、繊維重量に対して0.1重量%以上のCNFを担持することを特徴とする。
また、本発明によるCNF担持水硬性成形体用補強繊維は、水硬性材料中に添加され混合されることでCNFの一部が補強繊維から脱離しマトリックス中に徐々に分散するため、CNFによる水硬性成形体の補強効果が得られることから、成形体の薄物化など軽量化が達成でき、原材料の節約にも寄与する。
また一般的に、曲げ強度、靭性等の性能の改善やひび割れ抑制を目的に水硬性材料に補強繊維を添加すると、補強繊維とマトリックス間で摩擦抵抗が生じ水硬性組成物の流動性(スランプ値、またはフロー値)が低下し施工性などに問題を来すことがあるが、本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維は、表面にCNFを担持することによって、水硬性組成物の流動性の低下を抑制する効果も得られる。流動性の低下が抑制される原理は定かでないが、CNFの保水性能により補強繊維界面付近の水分率が増し、マトリックスとの摩擦抵抗を抑制する効果と考えられる。
水硬性成形体用補強繊維がCNFを担持する力は、水素結合やイオン結合などの化学的相互作用、ファンデルワールス力などの物理的相互作用、補強繊維表面の凹凸へのアンカー効果などによる機械的結合などがあるが、水硬性マトリックスに添加した際、マトリックス中の水分により担持力が低下するものが好ましく、具体的には水素結合によるものがより好ましい。
また、前述のとおり、本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維の製造工程において、CNFの担持量や脱離性を調整するなどの目的で、CNF分散液にバインダー樹脂を添加することができるが、バインダー樹脂を用いたり、繊維の表面状態を工夫するなどして、CNFの担持量や脱離性を調整することによって、水硬性成形体の強度を一層向上させることができるだけでなく、補強繊維と水硬性組成物中のマトリックスとの界面の状態を調節することも可能となり、水硬性組成物の流動性の低下を抑制することができる。
CNFによる水硬性成形体の補強性向上と水硬性組成物の流動性低下抑制の効果を両立させるためには、CNF担持水硬性成形体用補強繊維を水中で撹拌した後の補強繊維表面上でのCNF残存率が0.1〜50重量%であることが好ましく、0.5〜40重量%であることがより好ましい。CNF残存率が50重量%を超える場合には担持したCNFが水硬性組成物中へ拡散しにくくなり、CNFによる補強効果が得られにくい場合がある。またCNF残存率が0.1重量%に満たない場合には水硬性材料に添加後の撹拌初期にCNFが塊状に剥離しCNFの良好な分散が得られない場合があるほか流動性低下抑制の効果が得られにくい場合がある。
[水硬性組成物]
本発明の水硬性組成物は少なくとも水硬性無機物質および上記のCNF担持水硬性成形体用補強繊維を含む。本発明の水硬性組成物を硬化させることによって、繊維で補強された水硬性成形体を得ることができる。
本発明の水硬性組成物に用いられる水硬性材料としては、セメントを含むものや石膏を含むものなどが挙げられる。セメントを含む水硬性材料として、セメントペースト、モルタル、コンクリートなどを挙げることができる。セメントペーストは、セメントと水を含み、モルタルは、セメントと水と細骨材を含み、コンクリート(フレッシュコンクリート)は、通常、セメントと水と細骨材と粗骨材を含む。これらの材料には、必要に応じ、各種の混和材料(混和材・混和剤)が含まれてもよく、本発明においては、CNF担持水硬性成形体用補強繊維が含まれ、これが本発明の水硬性組成物である。また水添加前の固形分の混合物からなるセメント組成物、モルタル用組成物、コンクリート用組成物も本発明に係る水硬性材料として挙げることができる。これらの組成物に水を添加して練り混ぜることにより、セメントペースト、モルタル、コンクリートなど、水を含有する状態の水硬性材料を形成することができる。
上記水硬性材料に含まれる水硬性無機物質としては、セメント、石膏などが挙げられる。セメント(水硬性セメント)としては、例えば、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、低熱セメント、中庸熱ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、アルミナセメント、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメントなどが挙げられる。また、石膏としては、2水石膏、α型又はβ型半水石膏、無水石膏等が挙げられる。これらの水硬性無機物質は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。これらの水硬性無機物質は、通常粉末(微粒子)の状態で用いられ、添加された水と反応して凝結し、水硬性材料を硬化させる。
上述のとおり、水硬性材料には、必要に応じて、各種の混和材料を混入してもよい。ここで、混和材料は、水硬性無機物質と水と骨材以外に、水硬性材料に混入される物質である。混和材料としては、例えば、シリカフューム、フライアッシュ、高炉スラグ微粉末、石灰石粉末、石英粉末などの混和材、またAE剤、流動化剤、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、増粘剤、保水剤、撥水剤、膨張剤、硬化促進剤、凝結遅延剤などを挙げることができる。これらの混和材料は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用してもよい。
補強繊維、水硬性無機物質、骨材、混和材料等の配合量及び水の添加量は、所望とする成形体に応じて、適宜調整でき、適宜公知の配合量を用いてもよい。本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維は、CNFの働きにより高い流動性を水硬性材料に対して与えることができるため、減水剤や流動化剤などの使用量を低減し、水硬性成形体の強度を向上することができる。
以上のとおり、本発明の好適な実施態様を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の追加、変更または削除が可能であり、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
[CNFの担持量]
CNFを担持させる前の15mあたりの繊維試料の重量を、CNF担持後の15mあたりの繊維試料の重量から引いた値をCNF担持量(B)とした。CNFを担持させる前の15mあたりの繊維試料の重量と、CNF担持量(B)から、下記式により繊維重量に対するCNF担持量(重量%)を求めた。
[水中撹拌後のCNF残存率]
水中撹拌後のCNF残存率は以下の方法により求めた。前項で用いた15mのCNF担持補強繊維を15mmに切断し、CNF担持補強繊維/水比を10g/1リットルとしTAPPI離解機で1000カウント撹拌した。離解機から取り出し、乾燥した後のCNF担持補強繊維の重量から水中撹拌後のCNF担持量(A)を測定し、(A)と前項で求めたCNF担持量(B)からCNFの残存率を求めた
[水硬性組成物の流動性]
水硬性組成物の流動性を表す指標としてフロー値で評価を行った。測定はJISR 5201セメントの物理試験方法に記載の方法に準じて行った。水硬性組成物をフローコーンに充填した。次いでフローコーンを取り去った後120秒後の時点で、広がった水硬性組成物の径を最大と認める方向(ヨコ)と、これに直角な方向(タテ)とで測定し、その平均値をmmを単位とする整数で示した。
[CNFの分散性]
流動性測定の際に、広がった水硬性組成物の表面を観察し、CNFの分散性を目視で判定した。
<判定基準>
○:最大直径が10mm以上の塊状のCNFが認められず、均一に分散している
△:前記塊状のCNFが5個以下認められる
×:前記塊状のCNFが6個以上認められる
なお、CNFが凝集して形成された塊状物と、CNF担持水硬性成形体用補強繊維が凝集して形成された塊状物は、それぞれの繊維径の違いにより目視で判別することができる。
[水硬性成形体の強度]
JIS A 1108 コンクリートの圧縮強度試験方法に準じて行った。ミキサーで混練されたモルタルを直径50mm、高さ100mmの型枠に流し込んだ後、20℃の室内で48時間封緘養生し脱型したものを湿布で包み温度90℃・湿度98%の恒温恒湿槽で48時間湿熱養生して強度試験に供した。圧縮強度試験は最大容量2000kNの万能試験機にて行った。
[実施例1]
[CNF担持繊維の製造]
水硬性成形体用補強繊維として、ポリビニルアルコール繊維(PVA繊維)「RF1000」((株)クラレ製/繊維径:約310μm)を用いた。また、CNF分散液として、「セリッシュKY100S」(ダイセル化学工業(株)製/CNF濃度25重量%、分散媒:水)を使用した。切断前の「RF1000」を「セリッシュKY100S」を入れた処理槽に10秒間浸漬させた後、120℃の熱風下で乾燥を行い分散媒(水)を蒸発させることで、PVA繊維の表面にCNFを担持させた。CNF担持量は、25.5重量%であった。その後このCNF担持PVA繊維を繊維長15mmに切断し、アスペクト比50のCNF担持PVA短繊維を得た。水中撹拌後のCNF残存率は3.2%であった。
ホバートミキサーに、普通セメント(太平洋セメント(株)製)600重量部、シリカフューム(EFACO社製)400重量部、細骨材(6.5号硅砂:最大径約1mm)900重量部、水150重量部、ポリカルボン酸系高性能AE減水剤(竹本油脂(株)製「SSP−104」)25重量部を約2L容量になる容積で12分間混練し、出来上がったプレーンモルタルに、上記CNF担持PVA繊維を25重量部添加し、2分間の追加混練を行い、水硬性組成物として繊維補強モルタルを作製した。
次いでフロー値を測定した後、前記繊維補強モルタルを直径50mm、高さ100mmの型枠に流し込んだ後、20℃の室内で48時間封緘養生し、脱型したものを湿布で包み温度90℃・湿度98%の恒温恒湿槽で48時間湿熱養生し、水硬性成形体を作製した。
[実施例2]
20重量部の「セリッシュKY100S」に分散媒として水を80重量部加え、ミキサーにて室温で約10分撹拌混合することで、CNF濃度5重量%のCNF水分散液を調整した。このCNF分散液を使用したこと以外は実施例1と同様にして、CNF担持PVA繊維を得た。CNF担持量は、4.5重量%であった。水中撹拌後のCNF残存率は8.3%であった。前記CNF担持PVA繊維を用い、実施例1と同様の手順によって水硬性組成物および水硬性成形体を作製した。
[実施例3]
水溶性バインダー樹脂として「PVA205」((株)クラレ製/ポリビニルアルコール樹脂)5重量部を予め水80重量部に溶解させたPVA水溶液85重量部を20重量部の「セリッシュKY100S」に加え、ミキサーにて室温で約10分撹拌混合することでCNF水分散液を調整した。
鋼繊維「CW2215」(東京製綱(株)製/直径220μm、繊維長15mm)に前記CNF分散液を塗し、乾燥することでCNF担持鋼繊維を作製した。CNF担持量は、4.5重量%であった。水中撹拌後のCNF残存率は5.3%であった。CNF担持鋼繊維を120重量部添加する以外は実施例1と同様の手順で、水硬性組成物および水硬性成形体を作製した。
[比較例1]
CNF分散液を担持させることなく、PVA繊維を得たこと以外は、実施例1と同様にして、PVA繊維、水硬性組成物および水硬性成形体を作製した。
[比較例2]
プレーンモルタルにCNF分散液(CNF濃度12.5重量%/分散媒:水)を40重量部(CNF乾燥重量で5重量部)添加してからPVA繊維を添加する以外は実施例1と同様にして、水硬性組成物を調整した。2分の追加混練を行っても塊状のCNFが解れず、さらに5分追加で混練を行ったが塊状のCNFは解消されずCNFが分離した状態であった。
CNFは水硬性組成物に均一に分散させることにより成形体の圧縮強度の向上に寄与するとされているが、本発明のCNF担持水硬性成形体用補強繊維を用いることにより、CNFが水硬性組成物中に均一に分散したため、実施例1〜3はいずれも比較例1、2に比べて高い圧縮強度を示し、その効果は、同種の繊維を用いた場合(実施例1と実施例2)、CNF担持量に依存する傾向にあった。
本発明の水硬性成形体用補強繊維を配合したセメントペースト、モルタル、コンクリート等の水硬性材料の用途は特に限定されるものではなく、各種建設資材、土木資材として利用することができる。

Claims (5)

  1. 繊維の表面に、繊維重量に対して0.1重量%以上のCNFが担持されてなり、水中撹拌後のCNF残存率が0.1〜50重量%である水硬性成形体用補強繊維。
  2. 記繊維がポリビニルアルコール系繊維である、請求項1に記載の水硬性成形体用補強繊維。
  3. 請求項1または2のいずれかに記載の水硬性成形体用補強繊維および水硬性無機物質を含む、水硬性組成物。
  4. 前記水硬性無機物質がセメントである、請求項3に記載の水硬性組成物。
  5. 請求項1または2のいずれかに記載の水硬性成形体用補強繊維、水硬性無機物質、および水を含む混合物を練り混ぜて水硬性組成物を形成する工程、および前記水硬性組成物を成形した後硬化する工程、を含む水硬性成形体の製造方法。
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