JP6524976B2 - 漆喰、漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法 - Google Patents

漆喰、漆喰パネル及び漆喰パネルの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、軽量で靱性に優れる漆喰、その漆喰を用いた漆喰パネル及びその製造方法に関する。
漆喰は、全て自然素材で製造されるため住環境に非常に優しく、防火性能・耐震性能・防音性能・住環境性能に優れた効果があることは過去の実験で確認されており、21世紀にふさわしい建築材料といえる。
従来の一般的な漆喰は、石灰に麻、藁等からなるスサ、草本や海藻から得る接着剤、砂、水などが加えられ、これらが混練して作られる、二酸化炭素を吸収しながら硬化する気硬性材料である。漆喰の施工は、左官が塗布して仕上げる湿式工法であるため塗布してから乾燥するまでに時間がかかる。また漆喰は、高い強度・硬度を発揮するまでに時間がかかることが課題とされている。
これらの課題を解決すべく本発明者は、強度発現性に優れ、早期に所定の強度・硬度を発揮させることができる漆喰材料を開発している(例えば特許文献1参照)。また従来の漆喰に対して、調湿機能やホルムアルデヒドの吸着分解機能など漆喰の本来の特性に着目した新たな製品の開発などを通じ、漆喰の使用範囲・用途を拡大するための試みがなされている(例えば特許文献2参照)。
特許第4843733号公報 特開2007−284294号公報
本発明者が開発した漆喰材料を使用することで早期に所定の強度・硬度を発揮させるという課題は解決できるが、漆喰の施工等に関する課題は残ったままである。漆喰を石膏ボードのようにパネル化することができれば、施工等に関する問題を解決することができ、さらに用途も広がることが期待される。
漆喰パネルは、漆喰を板状にしこれを硬化させることで製造することができるが、壁材等として使用するには剪断、曲げに対する耐性が必要である。また従来の漆喰は密度が大きいため、これを単にパネル化しただけでは重く運搬、取扱い難い。
本発明の目的は、軽量でありながら高い強度及び靱性を有する漆喰、漆喰パネル、化粧板及びそれらの製造方法を提供することである。
本発明は、生石灰及び/又は消石灰と、繊維状に粉砕された長さ3〜15mm、太さ1mm以下の竹チップとからなる漆喰材料に水が加えられ混練されてなる漆喰であって、骨材は、前記竹チップのみであり前記竹チップ含有量が、生石灰及び/又は消石灰に対して40〜110重量%である漆喰である。
本発明の漆喰において、水に代えてCaイオン濃度が〜20g/Lの高Caイオン含有水溶液を好適に使用することができる。
また本発明は、前記漆喰を硬化させてなる漆喰パネルである。
また本発明は、木ずりを下地として前記漆喰を硬化させてなる漆喰パネルである。
また本発明は、前記漆喰パネルにおいて、表面仕上げが施されていることを特徴とする化粧板である。
また本発明は、前記漆喰パネル又は前記化粧板の製造方法であって、前記漆喰を乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程後、炭酸ガス養生を行う炭酸ガス養生工程と、を含むことを特徴とする漆喰パネル又は化粧板の製造方法である。
また本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造方法において、前記乾燥工程が気中養生工程であることを特徴とする。
本発明によれば、軽量でありながら高い強度及び靱性を有する漆喰、漆喰パネル、化粧板及びそれらの製造方法を提供することができる。
本発明の木摺り101を下地材とした漆喰パネル1の構成を説明するための図である。 本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造手順を示す図である。 本発明の実施例1に記載の竹チップ漆喰の乾燥重量率測定結果である。 本発明の実施例1に記載の竹チップ漆喰の体積増減率測定結果である。 本発明の実施例1に記載の竹チップ漆喰の密度測定結果である。 本発明の実施例1に記載の竹チップ漆喰の曲げ強度及び圧縮強度測定結果である。 本発明の実施例1に記載の竹チップ漆喰の曲げ強度と圧縮強度との関係を示す図である。 本発明の実施例2に記載の竹チップ高Ca漆喰の乾燥重量率測定結果である。 本発明の実施例2に記載の竹チップ高Ca漆喰の体積増減率測定結果である。 本発明の実施例2に記載の竹チップ高Ca漆喰の密度測定結果である。 本発明の実施例2に記載の竹チップ高Ca漆喰の気中養生後の中性化進行状態を示す図である。 本発明の実施例2に記載の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度測定結果である。 本発明の実施例2に記載の竹チップ高Ca漆喰の圧縮強度測定結果である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の乾燥重量測定結果である。 発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の乾燥重量のリバウンド量及びリバウンド率と気中養生日数との関係を示す図である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の体積増減率測定結果である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の密度測定結果である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度及び圧縮強度測定結果である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度と圧縮強度との関係を示す図である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の炭酸ガス養生前の気中養生日数と強度比との関係を示す図である。 本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の中性化進行状態を示す図である。 本発明の参考例に記載の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度及び圧縮強度測定結果である。 本発明の参考例に記載の竹チップ高Ca漆喰の中性化進行状態を示す図である。 本発明の漆喰パネルの建材としての評価を行っている写真である。
本発明において各種漆喰を次のように定義する。従来の漆喰と同様に、石灰、山砂を含む漆喰材料を水を用いて混練してなるものを普通漆喰、石灰、山砂を含む漆喰材料を高Caイオンを含有する水溶液(高Caイオン含有水溶液)を用いて混練してなるものを高Ca漆喰、竹チップを含有する漆喰材料を水を用いて混練してなるものを竹チップ漆喰、竹チップを含有する漆喰材料を高Caイオン含有水溶液を用いて混練してなるものを竹チップ高Ca漆喰と呼ぶ。
本発明の第1実施形態の漆喰は、生石灰及び/又は消石灰と繊維状に粉砕された竹チップとからなる漆喰材料に水を加え混練した竹チップ漆喰(漆喰組成物)である。普通漆喰が山砂を骨材とするのに対して、第1実施形態の竹チップ漆喰は竹チップが骨材であり、山砂、川砂、石灰製砂などの骨材を含んでいない。
第1実施形態の竹チップ漆喰は、骨材に竹チップを用いる点に最大の特徴がある。普通漆喰では、石灰、骨材の他に、麻や藁などのスサ、草本や海藻から得る接着剤又は合成樹脂からなる接着剤等が添加されることが多いが、第1実施形態の竹チップ漆喰においては、生石灰及び/又は消石灰と竹チップと水のみで構成することができる。
第1実施形態の竹チップ漆喰において、石灰は、生石灰又は消石灰又は生石灰と消石灰との混合物を使用することができる。生石灰又は消石灰の素材として、カキ殻やホタテ貝などの貝殻を焼成したものを使用することもできる。
竹チップは、竹を粉砕機等で繊維状に粉砕し得られたものである。竹チップの原料である竹の種類は特に限定されるものではない。竹を粉砕する粉砕機等も特に限定されるものではないが、竹が十分に解砕され細い繊維状物が得られるものが好ましい。竹を粉砕すると繊維状物の他に塊状物、粉状物もいっしょに排出されるが、塊状物及び粉状物は、可能な限り少ない方がよい。適宜、粉砕物を篩、スクリーン等に通じ、塊状物及び/又は粉状物を取り除き、または分級し所定の大きさの繊維状物のみを得るのが好ましい。竹チップの長さは、3〜15mmのものが好ましい。竹チップの太さは、1mm以下のものが好ましい。
第1実施形態の竹チップ漆喰は、竹チップの含有量が多くなるに比例して密度がほぼ直線的に低下し、竹チップ漆喰の硬化体の密度は、後述の実施例に示すように竹チップ含有率20〜120%において、1.0g/cm以下である。普通漆喰の硬化体の密度が、約1.8〜1.9g/cmであるから、竹チップ漆喰の硬化体の密度は、普通漆喰の硬化体の56%以下であり、竹チップ含有率が80重量%以上では、普通漆喰の硬化体の50%以下である。ここで竹チップ含有率は、石灰に対する竹チップの重量割合をいう。
また竹チップ漆喰の硬化体の体積増減率は、後述の実施例に示すように竹チップ含有率20〜120%において、−2.8〜−4.0%程度であり、普通漆喰の硬化体に比較して小さく、収縮率の小さい漆喰である。
竹チップ漆喰の硬化体の曲げ強度及び圧縮強度は、後述の実施例に示すように竹チップ含有率に比例して増加する。つまり竹の繊維が強度増加に寄与していることが伺える。後述の実施例に示すように竹チップ漆喰の硬化体の曲げ強度は、普通漆喰の硬化体の曲げ強度のおおよそ1〜2.5倍、竹チップ漆喰の硬化体の圧縮強度は、普通漆喰の硬化体の圧縮強度のおおよそ1〜4倍であり、竹チップ含有率が80〜110重量%では、曲げ強度は普通漆喰の1.4〜2.5倍、圧縮強度は普通漆喰の2〜4倍となる。
上記のように竹チップ漆喰の硬化体は、竹チップ含有率が多くなるに従って密度が小さく軽量化され、さらに曲げ強度及び圧縮強度が上昇する。一方で、竹チップ含有率が極端に多くなると石灰と竹チップとの混ざりが不十分となる。以上のことから竹チップ含有率は、重量比で石灰に対して20〜120重量%、好ましくは40〜110重量%、より好ましくは50〜110重量%、さらにより好ましくは80〜110重量%である。
以上のことから、竹チップ漆喰はパネル化を進める素材として非常に有望であるといえる。特に竹チップ含有率を増加させた竹チップ漆喰は、軽量・強度・靱性の3拍子揃った漆喰であり、現在市販されている漆喰に見られない特性を備える素材といえる。
本発明の第2実施形態の漆喰は、第1実施形態の竹チップ漆喰と同様に、骨材として粉砕され繊維状となった竹チップを使用し、水の代わりに高Caイオン含有水溶液を使用する竹チップ高Ca漆喰(漆喰組成物)である。以下、第1実施形態の竹チップ漆喰との相違点を中心に説明する。
第2実施形態の竹チップ高Ca漆喰も第1実施形態の竹チップ漆喰と同様に、生石灰及び/又は消石灰と竹チップと高Caイオン含有水溶液のみで構成することができる。竹チップ高Ca漆喰で使用する石灰及び竹チップは、第1実施形態の竹チップ漆喰と同じであるので説明を省略する。
ここで高Caイオン含有水溶液とは高濃度のCaイオンを含む液体を言う。公開されているデータ(例えば、http://www.takenet-eco.co.jp/pages/jitsurei/sokai_senjo.html、http://www.questions.gr.jp/chem/odoroki1.htm)によると、生石灰(CaO)や消石灰(Ca(OH))は、重量百分率濃度で純水に0.2%程度溶解するとされる。第2実施形態の竹チップ高Ca漆喰においては、CaOやCa(OH)が0.2%よりもさらに多く溶解したものを使用する。
このため、例えば、先ずCaOを溶解させやすい酢酸水溶液などに溶解させた原液を製造する。そしてこの原液、又はこの原液を水で希釈した水溶液を製造し、これらを竹チップを含む漆喰材料に加えて混練を行う。なお、高Caイオン含有水溶液で使用する水、これを希釈する水は特に限定されず、上水、イオン水又は純水などいずれであってもよい。
高Caイオン含有水溶液は、例えば、10%酢酸水溶液を用いると重量百分率濃度でCaOを常温で、Caベースで3.2%(32g/L)程度溶解させることができる。CaOやCa(OH)の溶解が困難である場合は、炭酸水素ナトリウム(NaHCO)を添加することができる。また、酢酸水溶液以外にクエン酸水溶液、ギ酸水溶液などの酸性水溶液を用いて、CaO及び/又はCa(OH)を溶解させてもよい。但し、溶解能力等を考えれば酢酸水溶液が好ましい。また、使用に際し、高Caイオン含有水溶液のpHを調整することもできる。
高Caイオン含有水溶液の作製の際に使用するCaO及び/又はCa(OH)は、特定のCaO及び/又はCa(OH)に限定されるものではなく、後述の実施例で示すように900〜1200℃で焼成したカキ殻粉末を使用することができる。カキ殻に代え、他の貝殻を焼成し使用することもできる。
高Caイオン含有水溶液のCaイオンの量は、特定の値のものに限定されることなく使用可能であり、Caイオンが約2〜20g/Lのものを使用することができ、中でもCaイオン濃度が5〜20g/Lの高Caイオン含有水溶液を好適に使用することができる。
第2実施形態の竹チップ高Ca漆喰の硬化体は、第1実施形態の竹チップ漆喰と同様に、竹チップの含有量が多くなるに従って密度が低下する。一方、高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度に対しては、Caイオン濃度が高くなるに従って密度が増加する。これはCaイオン濃度が高い程、炭酸化反応が進みCaCOが増加するためである。
第2実施形態の竹チップ高Ca漆喰の硬化体の密度は、後述の実施例に示すように竹チップ含有率40〜120%において、約0.75〜1.05g/cmである。この値は、第1実施形態の竹チップ漆喰の硬化体の密度に比較すると10〜20%程度大きいが、普通漆喰の硬化体の密度の60%以下であり従来の漆喰に比較すれば圧倒的に小さい。
竹チップ高Ca漆喰の硬化体の体積増減率は、竹チップ含有率80%、120%では、後述の実施例に示すように竹チップ漆喰の硬化体の体積増減率と同程度である。一方、竹チップ含有率40%の場合、竹チップ漆喰に比較して体積収縮率が大きい。
竹チップ高Ca漆喰の硬化体の曲げ強度及び圧縮強度は、竹チップ漆喰の硬化体と同様に竹チップ含有量が多くなるに従って強度が上昇し、さらにCaイオン濃度が高くなるに従って曲げ強度及び圧縮強度とも上昇する。後述の実施例に示すように竹チップ高Ca漆喰の硬化体の曲げ強度は、普通漆喰の硬化体の曲げ強度のおおよそ1.0〜3.4倍、竹チップ高Ca漆喰の硬化体の圧縮強度は、普通漆喰の硬化体の圧縮強度のおおよそ1.4〜4倍であり、竹チップ含有率が80〜120重量%、Caイオン濃度が15〜20g/Lの竹チップ高Ca漆喰では、曲げ強度は普通漆喰の2〜3.4倍、圧縮強度は普通漆喰の2.3〜4倍となる。
竹チップ高Ca漆喰の竹チップ含有率については、竹チップ漆喰と同様であり、強度、密度、塗工性の点から竹チップ含有率が重量比で石灰に対して20〜120重量%、40〜110重量%が好ましく、50〜110重量%がより好ましく、80〜110重量%がさらにより好ましい。
竹チップ高Ca漆喰の硬化体は、竹チップ漆喰の硬化体に比較すると、若干密度が高くなるものの曲げ強度及び圧縮強度が大きく上昇することから、竹チップ漆喰以上にパネル化を進める素材として有望であるといえる。
次に、竹チップ漆喰又は竹チップ高Ca漆喰を用いた漆喰パネル(ボード)又は化粧板について説明する。竹チップ漆喰又は竹チップ高Ca漆喰を硬化させてなる漆喰パネル又は化粧板は、軽量でかつ強度及び靱性に優れるので壁材などの建材として好適に使用することができる。竹には、殺菌作用,減菌作用があることが知られており、この点においても当該漆喰パネル又は化粧板は、好ましい建材といえる。
当該漆喰パネル又は化粧板を建材として使用する場合には、ノコギリによる切断、ビスや釘留めが可能であり、このときひび割れが発生しないことも重要であるが、この点については実施例に示すように全く問題がない。さらに竹チップ漆喰を用いた漆喰パネルは、難燃性であり、この点においても好ましい建材といえる。
漆喰パネルの大きさは、特に限定されるものではないが、厚さを9mm、又は12mm、幅×長さを910mm×2400mm、910mm×1820mm、910mm×910mmとすれば使い勝手がよい。
化粧板は、表面がきめ細かい仕上げの漆喰ボードであり、表面を特に細かく仕上げていない一般的な漆喰パネルと異なり、表面への仕上げ材の塗布が不要である。このような化粧板の寸法は特に限定されるものではないが、厚さを9mm、12mm又は15mm、幅×長さを300mm×600mm、400mm×800mmとすれば使い勝手がよい。
漆喰パネル又は化粧板は、小舞又は木摺りを下地材として、その上に竹チップ漆喰又は竹チップ高Ca漆喰を塗布し、漆喰を硬化させ漆喰パネル又は化粧板としてもよい。
図1に木摺り101を下地材として、その上に竹チップ漆喰11を塗布し、漆喰11を硬化させてなる漆喰パネル1を示す。図1(a)、図1(c)は、漆喰パネル1の平面図及び縦断面図、図1(b)は、木摺り101の正面図である。ここでは、長さ910mm×幅30mm×厚さ15mmの杉の小幅板102を用い、これを間柱103に40mmピッチ、つまり間隔を10mmとして釘打した木摺り101を下地材とする。
この木摺り101の上に表面(おもて面)の竹チップ漆喰11の厚さtが8mm、裏面側に竹チップ漆喰が厚さtが5mm以上出るように圧力を加えて塗布し、これを気中養生し竹チップ漆喰11を硬化させることで木摺り101を下地材とした漆喰パネル1を得ることができる。なお、木摺り101を下地材とした漆喰パネルは、図1に示すものに限定されるものではない。
竹チップ漆喰又は竹チップ高Ca漆喰を用いた漆喰パネル又は化粧板、さらには小舞又は木摺りを下地材とした漆喰パネル又は化粧板は、強度及び靱性に優れると共に軽いという長所があり運搬を楽に行える。このため当該漆喰パネル又は化粧板を工場で製造し、建材等として出荷することができる。
当該漆喰パネル又は化粧板を工場で製造し、建材等として出荷する場合において、早期に所定の強度・硬度を発現させることができれば生産性が向上する。次に早期に漆喰の強度を高める方法について説明する。
図2は、本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造手順を示す図である。なお本方法は、漆喰パネル又は化粧板のような板材に限定されることなく、幅広く漆喰の硬化体の製造に利用することができる。
第1ステップとして、所定量の石灰、竹チップ及び高Caイオン含有水溶液を混練し、竹チップ高Ca漆喰(漆喰組成物)を製造する(ステップS1)。第2ステップとして竹チップ高Ca漆喰を型に充填し(ステップS2)、24時間経過後に脱型する(ステップS3)。続いて脱型した竹チップ高Ca漆喰を気中養生し、漆喰を乾燥させる(ステップS4)。
ここでの気中養生は、主として漆喰の乾燥を目的とするものであるから、気中養生期間は大気温度、湿度、漆喰パネル又は化粧板の大きさ等により適宜決定すればよい。漆喰パネル又は化粧板の大きさ等にもよるが、後述の実施例と併せて考えれば、気中養生期間は、3〜7日程度行えばよい。漆喰の乾燥が不十分な状態で次ステップである炭酸ガス養生を行うと十分な強度が発現しない。これは漆喰の表面の水膜や内部の水泡により漆喰中の水酸化カルシウムと炭酸ガスとの接触が不十分となり、炭酸化が十分に進行しないことによるものと考えられる。
ステップS4の気中養生終了後、炭酸ガス養生を行う(ステップS5)。ここでは漆喰中の水酸化カルシウム、Caイオンと炭酸ガスとで炭酸化反応が起こる。炭酸化反応は、漆喰の重量変化としても現れ、ステップS4において長く気中養生した漆喰ほど、炭酸ガス養生前後の重量増加率が大きい。また炭酸化反応の進行は、中性化試験の結果にも顕著に現れる。この点については、後述の実施例でデータを示す。
炭酸ガス養生時間は、漆喰パネル又は化粧板の大きさ等にもよるが、後述の実施例と併せて考えれば、1〜2日程度行えばよい。炭酸ガス養生終了後は、再度、気中養生を行う(ステップS6)。図2では、漆喰に竹チップ高Ca漆喰を使用したが、竹チップ漆喰にも適用可能である。また図2において養生期間等として示した数値は、代表例であり、本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造手順がこの数値に限定されるものではない。
ここに示す製造方法において最も重要な点は、炭酸ガス養生に先立ち、漆喰を十分に乾燥させる点であり、当該製造方法により短期間内に強度に優れる漆喰パネル又は化粧板を製造することができる。
以上のように本発明の竹チップ漆喰、竹チップ高Ca漆喰を用いることで軽量でありながら高い強度及び靱性を有する漆喰パネル、化粧板を製造することができる。さらに本発明の漆喰パネル又は化粧板の製造方法を用いることで、生産性に優れ、早期に漆喰の強度を発現させることができる。
以上のとおり、好適な実施形態を説明したが、当業者であれば、本明細書を見て、自明な範囲内で種々の変更及び修正を容易に想定するであろう。従って、そのような変更及び修正は、請求の範囲から定まる発明の範囲内のものと解釈される。
実施例1:竹チップ漆喰
代表的な竹チップ漆喰の作製要領を示す。表1に示す生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、長さ8mm以下の繊維状の竹チップ120重量部と、水80重量部とを十分に混合し、竹チップ漆喰を得た。この竹チップ漆喰の竹チップ含有率は120%、水石灰比は80%である。竹チップは、目開き8mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。同じ要領で竹チップ含有率20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%の竹チップ漆喰を得た。また同じ要領で竹チップの入っていない漆喰(竹チップ含有率0%)を得た。
竹チップ漆喰の試験体は、以下の要領で作製した。上記手順で得られた竹チップ漆喰を3連型枠に半分程度まで流し込み、型枠の隅々まで竹チップ漆喰が行き渡るように突き棒で万遍なく突いた後、型枠一杯まで竹チップ漆喰を流し込み、突き棒の底が前回の1/3の深さとなるまで万遍なく突いた。さらに型枠の表面が隠れるまで、竹チップ漆喰を流し込み、5時間放置した。その後、型枠の上部を平行棒でカットし、24時間気中養生後に型枠から取り出し、養生ケースに入れ、気中養生室で40日間気中養生し、試験体を得た。試験体は、40×40×160mmの角柱状である。気中養生中は、毎日、試験体の重量及び試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定した。
図3〜図5に気中養生40日後の竹チップ漆喰の試験体の乾燥重量率(重量増減率)、体積増減率、密度の測定結果を示した。重量増減率は、脱型時の試験体の重量に対する気中養生40日後の重量割合とした。体積増減率は、気中養生40日後の試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定し、これらを下に試験体の体積を求め、脱型時の体積を基準として、式(1)を用いて求めた。
体積増減率(%)=(脱型時の体積−気中養生40日後の体積)/脱型時の体積
×100 ・・・(1)
密度は、気中養生40日後の試験体の重量を測定し、上記要領で算出した体積で重量を除算し求めた。
図3に示すように乾燥重量率は、竹チップ含有率20〜50%にかけて増加傾向を示し、竹チップ含有率50〜120%の範囲では、ほぼ一定であった。竹チップ含有率80%の乾燥重量が一番小さかった。
図4に示すように体積増減率は、竹チップ含有率によらず−4%〜−2.8%で推移した。竹チップ漆喰の試験体の気中養生期間中の日々の寸法測定結果から、全試験体ともほぼ7日間で乾燥収縮が落ち着くことが分かった。
図5に示すように密度は、竹チップ含有率の増加に対してほぼ直線的に低下した。竹チップ含有率20%の密度は約0.98g/cm、竹チップ含有率120%の密度は約0.82g/cmであり、竹チップ含有率20〜120%の全範囲において密度は、1.0g/cm以下であった。特に竹チップ含有率80%以上では、密度は0.8〜0.9g/cmであり、普通漆喰の50%以下である。
強度試験の結果を図6及び図7に示した。試験体の養生期間は40日間である。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。
図6に示すように曲げ強度は、竹チップ含有率に比例して増加した。特に竹チップ含有率80〜120%にかけて曲げ強度が急激に増加している。これらのことから竹チップ含有率が増加すると竹繊維が曲げ抵抗し、強度増加につながったと考えられる。普通漆喰を40日間気中養生し得られる試験体の曲げ強度は、約0.2N/mmであるから竹チップ漆喰の曲げ強度は、普通漆喰の曲げ強度の1〜2.5倍となり、竹チップ含有率が80〜110重量%では、普通漆喰の1.4〜2.5倍となる。
圧縮強度も曲げ強度と同様の傾向を示した。普通漆喰を40日間気中養生し得られる試験体の圧縮強度は、約0.7N/mmであるから竹チップ漆喰の圧縮強度は、普通漆喰の曲げ強度の1〜4倍となり、竹チップ含有率が80〜110重量%では、普通漆喰の2〜4倍となる。曲げ強度及び圧縮強度とも竹チップ含有率110%に比較して竹チップ含有率120%では低下しているが、これは竹チップと石灰との混ざりが不十分なことによるものと考えられる。このことから強度から見た竹チップ含有率の上限値は110%程度と思われる。
図7に示すように曲げ強度と圧縮強度との関係は、2次関数で示された。
実施例2:竹チップ高Ca漆喰
竹チップ高Ca漆喰の作製要領を示す。実施例1で使用した生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、実施例1で使用した竹チップ120重量部と、高Caイオン含有水溶液110重量部とを混合し、竹チップ高Ca漆喰を得た。竹チップ含有率は120%、水石灰比は110%である。竹チップは、目開き8mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度は、0、5、15及び20g/Lとした。なおCaイオン濃度0は、竹チップ含有率120%の竹チップ漆喰である。同じ要領で竹チップ含有率40%、80%の竹チップ高Ca漆喰を作製した。
高Caイオン含有水溶液は、以下の要領で作製した。酢酸(和光純薬工業株式会社製一級、コードNo.014-00266)100gを900gの純水に加えた酢酸水溶液(10重量%濃度)に、カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末30gを数回に分けて加え完全に溶解させた。この溶液を半日放置した後に上澄み液を採取し、これを高Caイオン含有水溶液(原液)とした。上記原液に水を加え、高Caイオン含有水溶液を得た。カキ殻の焼成温度は、900〜1200℃とすることができる。カキ殻を1200℃で焼成して得られた白色の粉末の成分分析結果を表2に示す。
竹チップ高Ca漆喰の試験体は、実施例1に記載の竹チップ漆喰と同じ要領で作製した。各試験体を得るまでの養生期間は、竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca漆喰で48日間、竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca漆喰で46日間、竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰で35日間とした。
竹チップ高Ca漆喰の重量増減率、体積増減率、密度の測定結果を図8〜図10に示した。重量増減率、体積増減率、密度の定義、測定要領は、実施例1に記載の竹チップ漆喰と同じである。
図8に示すように重量増減率は、全試験体ともCaイオン濃度が高くなると重量減少率は小さくなる傾向を示した。また竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰は、Caイオン濃度にかかわらず重量減少率はおおよそ30%〜25%でほぼ同じであった。それに対して竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰は、重量減少率が小さく20%前後であった。以上のことから竹チップ含有率が高くなると、またCaイオン濃度が高くなると乾燥重量率は小さくなることが分かる。
図9に示すように体積増減率は、竹チップ含有率40%及び120%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度が高くなると体積増減率は小さくなる傾向を示した。竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度0〜15g/Lにかけて体積増減率が若干小さくなり、Caイオン濃度20g/Lで落ちる傾向を示した。また、竹チップ含有率による体積増減率は、竹チップ含有率が低い程高くなることがわかった。すなわち竹チップ含有率が高く、Caイオン濃度が低い程、体積増減率は小さくなる。全体的には、竹チップ含有率にかかわらず体積収縮率の小さい素材であるといえる。
図10に示すように密度は、Caイオン濃度にかかわらず竹チップ含有率が高くなると小さくなる傾向を示した。また各試験体ともCaイオン濃度が高くなると密度は高くなっている。これはCaイオン濃度が高くなると炭酸化反応が進み、炭酸カルシウムCaCOが増えるためである。
竹チップ高Ca漆喰の密度は、竹チップ含有率40%、Caイオン濃度5〜20g/Lにおいて0.93〜1.05g/cmであり、普通漆喰に比較して58%以下である。また竹チップ含有率120%、Caイオン濃度5〜20g/Lにおいて0.76〜0.82g/cmであり、普通漆喰に比較して46%以下である。
図11は、竹チップ高Ca漆喰の気中養生後の試験体の中性化進行状態を示す図である。この図は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の強度試験による各試験体の曲げ破断面にフェノールフタレイン液を吹きかけて得た図である。白色の部分が中性化部分であり炭酸カルシウムである。赤色の部分はまだ中性化されていない部分であり、水酸化カルシウムである。図中のBTRは、竹チップ含有率を表す。
図11から分かるように竹チップ含有率40%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度が高くなるに従って断面上下の白い部分の幅が太くなっている。竹チップ含有率80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度5g/L及び15g/Lで白い部分が見られるが、Caイオン濃度0g/L及び20g/Lの試験体については見られなかった。竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰では、全てのCaイオン濃度について白い部分が見られたが、その幅はCaイオン濃度が高い方が広いことが分かった。すなわち、全体的な傾向としてCaイオン濃度が高くなるに従って炭酸化領域は厚くなることが分かる。これは高Caイオン含有水溶液による炭酸化促進効果の影響であると考えられる。
強度試験の結果を図12及び図13に示した。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。図中のCaイオン濃度10g/Lのデータは、別途実施したデータを使用した。
図12に示すように曲げ強度は、竹チップ含有率に関係なくCaイオン濃度が高くなるに従って増加した。また竹チップ含有率が高くなるに従って曲げ強度も高くなる傾向を示した。これは、中性化進行から分かるように竹チップ含有率が高い程、中性化進行が速く炭酸カルシウム層が厚くなるためと考えられる。
竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度0g/Lに対してCaイオン濃度5g/Lで1.5〜1.9倍、Caイオン濃度10g/Lで2.2〜2.8倍、Caイオン濃度15g/Lで2.8〜5.9倍、Caイオン濃度20g/Lで3〜4倍に曲げ強度が増加している。それに対して竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度は、Caイオン濃度0g/Lにおいて竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰の2倍になり、竹チップによる竹繊維の効果が得られることが分かる。竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰においても、Caイオン濃度0g/Lに対してCaイオン濃度が5g/Lで2.2倍、Caイオン濃度が10g/Lで2.6倍、Caイオン濃度が15g/Lで2.9倍、Caイオン濃度が20g/Lで3.4倍の強度増加を示しており、Caイオン濃度の効果が非常に高いことがわかった。
また図13に示すように圧縮強度も全体的にCaイオン濃度の増加に伴って増加する傾向を示した。より詳細には、竹チップ含有率40%及び80%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度が0g/L〜15g/Lと高くなるに従って、圧縮強度はほぼ直線的に増加している。Caイオン濃度20g/LはCaイオン濃度15g/Lとほぼ同程度で強度上昇は見られなかった。それに対して、竹チップ含有率120%の竹チップ高Ca漆喰では、Caイオン濃度0g/L〜5g/Lにおいて1.4倍上昇し、Caイオン濃度5g/L〜20g/Lにおいて、Caイオン濃度の上昇に伴ってほぼ直線的に増加し、Caイオン濃度20g/LにおいてCaイオン濃度0g/Lの約1.75倍であった。
上述のように圧縮強度は、曲げ強度に比較して強度上昇倍率は低いが、圧縮強度は曲げ強度に対して低いものでも5〜8倍の強度があるため、Caイオン濃度で強度上昇を計っても3倍弱でかなりの高強度になっていると言える。以上の曲げ強度、圧縮強度の比較により、竹チップ高Ca漆喰は、竹チップ漆喰と比較して曲げ強度、圧縮強度ともに増加し、Caイオン濃度20g/Lでは、水のほぼ3倍の高強度が得られることが分かった。
竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度及び圧縮強度を普通漆喰と比較すると、普通漆喰を40日間気中養生し得られる試験体の曲げ強度及び圧縮強度が約0.2N/mm及び約0.7N/mmであるから、竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度及び圧縮強度は、普通漆喰の曲げ強度のおおよそ1.0〜3.4倍、普通漆喰の圧縮強度のおおよそ1.4〜4倍となり、竹チップ含有率が80〜120重量%、Caイオン濃度が15〜20g/Lの竹チップ高Ca漆喰では、曲げ強度は普通漆喰の2〜3.4倍、圧縮強度は普通漆喰の2.3〜4倍となる。
実施例3:炭酸ガス養生に先立ち行う乾燥操作を伴う竹チップ高Ca漆喰の試験体の作製
竹チップ高Ca漆喰の試験体の作製要領を示す。実施例1で使用した生石灰(中山石灰工業株式会社製;粒度0.15mm以下)100重量部と、長さ3mmの竹チップ40重量部と、高Caイオン含有水溶液85重量部とを電動ミキサーで十分に混合し、竹チップ高Ca漆喰を得た。竹チップ含有率は40%、水石灰比は85%である。高Caイオン含有水溶液には、Caイオン濃度10g/Lのものを使用した。竹チップは、目開き3mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。
上記手順で得られた竹チップ高Ca漆喰を3連型枠に半分程度まで流し込み、型枠の隅々まで竹チップ高Ca漆喰が行き渡るように突き棒で万遍なく突いた後、型枠一杯まで竹チップ高Ca漆喰を流し込み、突き棒の底が前回の1/3の深さとなるまで万遍なく突いた。さらに型枠の表面が隠れるまで、竹チップ高Ca漆喰を流し込み、5時間放置した。その後、型枠の上部を平行棒でカットし、24時間気中養生後に型枠から取り出した。
脱型した竹チップ高Ca漆喰を養生ケースに入れ、気中養生室で所定日数気中養生した。その後、竹チップ高Ca漆喰を炭酸ガスを充填した炭酸ガス吸収袋内に入れ、10日間炭酸ガス養生を行った。炭酸ガス養生後、再度、所定期間気中養生を行い試験体を得た。炭酸ガス養生前の気中養生期間は、0、1、2、3、4、5、6、7及び8日とした。試験体は、40×40×160mmの角柱状である。養生中は、毎日、試験体の重量及び試験体の長さと幅と高さをディジタルノギスを用いて測定した。
図14(a)は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の養生日数(経過日数)と乾燥重量との関係、図14(b)は、脱型後の39日目の各試験体の重量率と脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間との関係を示す図である。図14中の符号の説明は、脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間を表し、例えば気中−3は、脱型後炭酸ガス養生前に3日間気中養生を行ったことを示す。脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間は、炭酸ガス養生前の乾燥期間でもある。
図14(a)に示すように、炭酸ガス養生前の気中養生期間が長い方が炭酸ガス吸収量が大きく、その後の乾燥重量は小さくなる傾向を示した。そのリバウンド量及びリバウンド率を図15に示した。ここでリバンド量は、炭酸ガス養生前の重量と炭酸ガス養生1日経過後の重量との差、リバウンド率は、試験体の初期重量から炭酸ガス養生前の減少した重量に対する炭酸ガス養生後の重量変化量の割合である。
図15から脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日では、殆ど炭酸ガスを吸収しないが、気中養生期間が1日〜6日では、ほぼ比例的に炭酸ガスの吸収量が増加しており、それ以上では横ばいで推移する傾向を示した。これらのことから炭酸ガスを効率的に吸収させるには、脱型後炭酸ガス養生前に気中養生を5日以上行い、その後炭酸ガス養生を1〜2日間程度行うとよいことが分かった。
図16(a)は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の養生日数(経過日数)と体積増減率との関係、図16(b)は、脱型後の39日目の各試験体の体積増減率と脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間との関係を示す図である。図中の符号の説明は、図14と同じである。
養生日数(経過日数)と体積増減率との関係は、脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間中においては、体積減少が進行しているが、炭酸ガス養生中は、安定的に推移している。炭酸ガス養生後の気中養生期間においては、脱型後炭酸ガス養生前に気中養生を実施しなかった気中−0の試験体を除き、他の試験体はほぼ横ばいで推移した。このことから乾燥によって生じる空隙は、炭酸ガス吸収で埋まり、それが体積減少を小さくしている要因の1つと考えられる。
脱型後の39日目の各試験体の体積増減率は、脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間が長い程、体積減少は大きくなっている。しかしその差はわずかである。
図17(a)は、竹チップ高Ca漆喰の試験体の養生日数(経過日数)と密度との関係、図17(b)は、脱型後の39日目の各試験体の密度と脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間との関係を示す図である。図中の符号の説明は、図14と同じである。
養生日数(経過日数)と密度との関係は、炭酸ガス養生前の気中養生期間が長いほど、密度が高くなる傾向を示した。これは気中養生による乾燥によって各試験体中の水膜や水泡の水が蒸発し、その中にCaイオンが残るため炭酸ガス養生を行うと即、炭酸ガスと反応して炭酸カルシウムが生成しそれが水膜や水泡を埋め、また漆喰中の水酸化カルシウムと炭酸ガスが反応し、炭酸カルシウムと水が生成し、水が蒸発して炭酸カルシウムが残るためである。
これを顕著に表しているのが図17(b)であり、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日の密度が0.95g/cm前後であるのに対して、気中養生期間が2日〜8日においては、密度が1.08〜1.125g/cmであり、かなりの差があることからも推察される。
強度試験の結果を図18に示した。試験体は、脱型後の39日目の試験体である。強度試験は、JISA1171(ポリマーセメントモルタルの試験方法)に準じた方法で行った。
図18に示すように曲げ強度は、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日の試験体においては殆ど差が見られないが、気中養生期間が2日〜8日の試験体においては、気中養生期間に比例して増加する傾向を示した。脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間が3日以上で曲げ強度は、ほぼ2N/mm以上であった。これは普通漆喰の硬化体の曲げ強度の約10倍である。
図18に示す脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間に対する曲げ強度は、図14(b)に示す脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間に対する試験体の乾燥重量率と同じ傾向を示し、曲げ強度と乾燥重量との間に密接な関係があることが分かる。乾燥重量が大きいことは炭酸化が進行し、これにより重量増加さらには曲げ強度増加につながったことを示している。
図18に示すように圧縮強度も、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日又は1日の試験体においては殆ど差が見られないが、気中養生期間が2日〜8日の試験体においては、気中養生期間に比例して増加する傾向を示した。脱型後炭酸ガス養生前の気中養生期間が2日以上で圧縮強度はほぼ3N/mm以上、気中養生期間が4日以上で圧縮強度はほぼ4N/mm以上であり、気中養生期間4日以上で普通漆喰の硬化体の圧縮強度の約6倍以上となる。
図19は、本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の曲げ強度と圧縮強度との関係を示す図である。実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の試験体の曲げ強度と圧縮強度は直線関係にあり、曲げ強度が増加するに従って圧縮強度も直線的に増加した。
図20は、本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の炭酸ガス養生前の気中養生日数と強度比との関係を示す図であり、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間0日の試験体の強度に対する各試験体の強度比を示した図である。
図20から分かるように脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間1日の強度比は、曲げ強度と圧縮強度ともほぼ1.0である。これに対して脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間2日〜8日の試験体の強度比は、曲げ強度で2.0〜4.2倍、圧縮強度で2.0〜3.5倍と大きく増加している。
図21は、本発明の実施例3に記載の竹チップ高Ca漆喰の試験体の中性化進行状態を示す図である。図21(b)は、図21(a)の各試験体を積み重ねた写真であり、左下が気中養生−0日、右下が気中養生−2日、右上が気中養生−8日である。ここで気中養生−2日とは、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が2日であることを示す。この図は、各試験体の曲げ試験による各試験体の曲げ破断面にフェノールフタレイン液を吹きかけて得た図である。白色の部分が中性化部分であり炭酸カルシウムである。赤色の部分はまだ中性化されていない部分であり、水酸化カルシウムである。
図21より、脱型後炭酸ガス養生前に行う気中養生期間が0日及び1日の試験体は、殆ど中性化が進んでいないが、気中養生期間が2日の試験体は表面から1〜2mm程度中性化が進んでいる。一方、気中養生期間が3日〜8日の試験体に至っては、表面から5〜15mmの範囲で大きく中性化が進んでいることが分かる。この結果は、気中養生期間が長い程、炭酸ガス吸収量が大きくなることとも一致する。なお、図21において中性化は表面(上面)や側面よりも下側からが進行する傾向があるが、これは表面は鏝仕上げをしているため、表面に薄い仕上げ膜が形成されることによるものと考えられる。
参考例:炭酸ガス養生による竹チップ高Ca漆喰の試験体の作製
実施例3と同じ要領で、竹チップ高Ca漆喰を得た。竹チップ含有率は40%、水石灰比は85%である。高Caイオン含有水溶液には、Caイオン濃度10g/Lのものを使用した。竹チップは、目開き3mmの篩を通し、篩上を除去し使用した。
上記手順で得られた竹チップ高Ca漆喰を実施例3と同じ要領で型に充填し、24時間気中養生後に型枠から取り出した。脱型した竹チップ高Ca漆喰を炭酸ガスを充填した炭酸ガス吸収袋内に入れ、所定期間炭酸ガス養生を行い、その後気中養生を行い試験体を得た。炭酸ガス養生期間は、0、1、2、3、4、5、6、7及び28日とした。強度試験までの養生期間は、脱型後34日とした。
強度試験結果を図22に示した。また図23に試験体の中性化進行状態を示した。図22と図18との比較から分かるように脱型後直ちに炭酸ガス養生を行った試験体は、脱型後炭酸ガス養生前に気中養生を行った試験体と比較して曲げ強度、圧縮強度がかなり小さいことが分かる。これは脱型後直ちに炭酸ガス養生を行った試験体の場合、図23に示すように炭酸化反応が殆ど進行していないことによる。
実施例4:漆喰パネル
実施例1と同じ要領で作製した竹チップ含有率120%の竹チップ漆喰を用いて、厚さ9mmの漆喰パネルを製作した。当該漆喰パネルを電動ノコギリで切断し、また釘を打ち込み、さらに漆喰パネルをボイラーに投入し、建材としての可能性を評価した。
図24(a)に示すように漆喰パネルを電動ノコギリで切断しても、割れ・ひびは発生しなかった。また図24(b)に示すように釘打ちも問題なく行えた。さらに漆喰パネルをボイラーに投入すると図24(c)に示すように表面は黒くなったが、竹チップが燃えて粉々になることはなかった。以上により漆喰パネルを建材として使用可能なことが確認できた。
1 漆喰パネル
11 竹チップ漆喰
101 木摺り

Claims (7)

  1. 生石灰及び/又は消石灰と、繊維状に粉砕された長さ3〜15mm、太さ1mm以下の竹チップとからなる漆喰材料に水が加えられ混練されてなる漆喰であって、
    骨材は、前記竹チップのみであり
    前記竹チップ含有量が、生石灰及び/又は消石灰に対して40〜110重量%である漆喰。
  2. 前記水に代えて、高Caイオン含有水溶液が用いられ
    前記高Caイオン含有水溶液のCaイオン濃度が〜20g/Lであることを特徴とする請求項1に記載の漆喰。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の漆喰を硬化させてなる漆喰パネル。
  4. 木ずりを下地として請求項1又は請求項2に記載の漆喰を硬化させてなる漆喰パネル。
  5. 請求項又は請求項に記載の漆喰パネルにおいて、表面仕上げが施されていることを特徴とする化粧板。
  6. 請求項又は請求項に記載の漆喰パネル又は請求項5に記載の化粧板の製造方法であって、
    前記漆喰を乾燥させる乾燥工程と、
    前記乾燥工程後、炭酸ガス養生を行う炭酸ガス養生工程と、
    を含むことを特徴とする漆喰パネル又は化粧板の製造方法。
  7. 前記乾燥工程が気中養生工程であることを特徴とする請求項に記載の漆喰パネル又は化粧板の製造方法。
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