JP6690435B2 - 硬化膜形成用組成物及びその製造方法、硬化膜、光拡散積層体並びに表示装置及びその製造方法 - Google Patents

硬化膜形成用組成物及びその製造方法、硬化膜、光拡散積層体並びに表示装置及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硬化膜形成用組成物及びその製造方法、硬化膜、光拡散積層体並びに表示装置及びその製造方法に関する。
液晶表示装置等の表示装置は、一般に、表示画面とは反対の背面側に、LED(Light Emitting Diode)、蛍光灯、白熱球等の光源、光拡散層を有する光拡散積層体、及び各種情報を表示する表示層などから構成されている。かかる表示装置において、ある画素を透過した光線と近傍の画素を透過した光線とが光拡散層上で重なり合う場合に表示ぼけが発生する。光拡散層は、この表示ぼけを防止するため、十分薄くして表示層と近接させることが必要であり、かつ高い光拡散特性を発揮できることが求められる。
光拡散層の光拡散特性等を向上させる技術として、シリカ等の粒子を分散させた硬化膜形成用組成物を用いる方法が提案されている(特開2015−158625号公報、特開2013−72885号公報及び特開2011−184625号公報参照)。しかし、上記従来の硬化膜形成用組成物を用いたのでは、形成される硬化膜の光拡散特性は不十分なものに留まっており、また、この硬化膜に、他のオーバーコート層を積層すると、光拡散特性が大きく低下するという不都合がある。
特開2015−158625号公報 特開2013−72885号公報 特開2011−184625号公報
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、薄くても高い光拡散特性を発揮でき、かつオーバーコート層による光拡散特性の低下が小さい硬化膜を形成できる硬化膜形成用組成物及びその製造方法、硬化膜、光拡散積層体並びに液晶表示装置及びその製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するためになされた発明は、中空有機粒子(以下、「[A]粒子」ともいう)と、架橋性基を有する化合物(以下、「[B]化合物」ともいう)と、水を主成分とする分散媒(以下、「[C]分散媒」ともいう)とを含有する硬化膜形成用組成物である。
上記課題を解決するためになされた別の発明は、[A]粒子と、[B]化合物と、[C]分散媒とを混合する工程を備える硬化膜形成用組成物の製造方法である。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、当該硬化膜形成用組成物から形成される硬化膜である。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、基材と、この基材の少なくとも一方の面側に積層される光拡散層とを備え、上記光拡散層が当該硬化膜により形成されている光拡散積層体である。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、当該光拡散積層体を備える表示装置である。
上記課題を解決するためになされたさらに別の発明は、表示部と光拡散積層体とを備える表示装置の製造方法であって、基材の少なくとも一方の面側に、[A]粒子と、[B]化合物と、[C]分散媒とを含有する硬化膜形成用組成物を塗工する工程と、上記塗工工程により得られた光拡散積層体を、上記表示部の表示側又はその反対側に配置する工程とを備えることを特徴とする。
ここで「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば含有量が50質量%以上の成分を指す。
本発明の硬化膜形成用組成物によれば、薄くても高い光拡散特性を発揮でき、かつオーバーコート層による光拡散特性の低下が小さい硬化膜を形成することができる。本発明の硬化膜形成用組成物の製造方法によれば、そのような硬化膜形成用組成物を容易かつ確実に製造することができる。本発明の硬化膜及び光拡散積層体は、薄くても高い光拡散特性を発揮でき、かつオーバーコート層による光拡散特性の低下が小さい。本発明の表示装置によれば、像のぼけを低減することができる。本発明の表示装置の製造方法によれば、そのような表示装置を容易かつ確実に製造することができる。
<硬化膜形成用組成物>
当該硬化膜形成用組成物は、[A]粒子と、[B]化合物と、[C]分散媒とを含有する。当該硬化膜形成用組成物は、例えば基材の少なくとも一方の面に塗工されて硬化膜(ハードコート層)を形成するために用いられる。
当該硬化膜形成用組成物は、薄くても高い光拡散特性を発揮でき、かつオーバーコート層による光拡散特性の低下が小さい硬化膜を形成することができる。当該硬化膜形成用組成物が上記構成を有することで上記効果を奏する理由については必ずしも明確ではないが、例えば以下のように推察することができる。すなわち、[A]中空有機粒子は、後方散乱が抑制されると考えられ、光の利用効率が高く、光拡散特性に優れている。このような[A]粒子を[C]水を主成分とする分散媒に分散させて用いることにより、有機溶媒等による[A]粒子の浸食、変形等を抑制することができ、優れた[A]粒子の光拡散特性を維持することができる。その結果、当該硬化膜形成用組成物から形成される硬化膜は、薄くても高い光拡散特性を発揮できる。また、オーバーコート層を形成する組成物等の影響を抑制することができるので、オーバーコート層による光拡散特性の低下を小さくすることができ、硬化膜の光拡散特性を高いものに維持できると考えられる。
当該硬化膜形成用組成物は、[A]〜[C]成分以外に、好適成分として、[D]乳化剤、[E]開始剤及び[F]濡れ剤を含有していてもよく、本発明の効果を損なわない範囲において、その他の任意成分を含有していてもよい。以下、各成分について詳細に説明する。なお、以下において例示される各成分は、特に記載がない限り、1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
[[A]粒子]
[A]粒子は、中空有機粒子である。「中空有機粒子」とは、有機重合体を主成分とし、内部に空間を有する粒子をいう。
「有機重合体」は、有機単量体を重合させることにより得られる重合体をいう。有機単量体としては、例えば非架橋性単量体、架橋性単量体等が挙げられる。
[A]粒子の外径の下限としては、0.1μmが好ましく、0.2μmがより好ましく、0.3μmがさらに好ましい。上記外径の上限としては、5μmが好ましく、4μmがより好ましく、3μmがさらに好ましく、2μmが特に好ましい。[A]粒子の外径を上記範囲とすることで、[A]粒子の分散性をより高めることができ、その結果、光拡散特性をより高めることができる。
[A]粒子の内径の下限としては、0.05μmが好ましく、0.1μmがより好ましく、0.15μmがさらに好ましい。上記内径の上限としては、4μmが好ましく、3μmがより好ましく、2μmがさらに好ましく、1μmが特に好ましい。[A]粒子の内径を上記範囲とすることで、[A]粒子を含む硬化膜の光拡散特性をより高めることができる。[A]粒子の外径及び内径は、例えば硬化膜形成用組成物中の場合には、[A]粒子を乾燥した後に透過型電子顕微鏡で観察することによって測定できる。硬化膜中の場合には、硬化膜を収束イオンビームで切断し、切断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって測定することができる。
[A]粒子の中空率の下限としては、10%が好ましく、15%がより好ましく、18%がさらに好ましい。上記中空率の上限としては、90%が好ましく、70%がより好ましく、60%がさらに好ましい。[A]粒子の中空率を上記範囲とすることで、光拡散特性をより向上させることができる。[A]粒子の中空率(%)は、[A]粒子の内径及び外径から、(粒子内径/粒子外径)×100で求められる値である。
[A]粒子は、通常、単一の空孔を有するが、複数の空孔を有してもよく、また、製造過程で副生する皿状の粒子が含まれていてもよい。光拡散特性の向上の観点から、皿状の粒子の含有率の上限としては、[A]粒子の全固形分に対して、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましい。
[A]粒子は、光拡散特性の向上の観点から、水を主成分とする分散媒中で取り扱われる水性分散体として用いられることが好ましい。
[A]粒子の水性分散体における固形分濃度の下限としては、5質量%が好ましく、10質量%がより好ましく、15質量%がさらに好ましい。上記固形分濃度の上限としては、65質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。
[A]粒子の含有量の下限としては、固形分換算で、0.5質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、60質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、40質量%がさらに好ましい。「固形分換算」とは、当該硬化膜形成用組成物中の[C]分散媒及び[A]粒子が含む分散媒を除いた成分の総和における含有量比をいう。
[A]粒子の製法としては、例えば(i)有機単量体を乳化重合させてポリマー粒子の水性分散体を調製し、このポリマー粒子の表層に、他の有機単量体を用いて被覆層を形成してコアシェル状粒子とし、このコアシェル状粒子を揮発性塩基等により中和膨潤させる方法(特許第5098173号参照)、(ii)ポリマー粒子中に発泡剤を含有させ、その後、この発泡剤を発泡させる方法、(iii)ポリマーにブタンなどの揮発性物質を封入し、その後、この揮発性物質をガス化膨潤させる方法、(iv)ポリマーを溶融させ、これに空気等の気体ジェットを吹きつけ、気泡を封入する方法、(v)w/o/w型モノマーエマルジョンを作製し、重合を行う方法、(vi)不飽和ポリエステル溶液中に顔料を懸濁させた懸濁液中で、モノマーを重合する方法、(vii)架橋ポリマー粒子をシードとして、相溶性の異なるポリマーをそのシード上に重合、架橋する2段階架橋方法、(viii)ポリマーの重合収縮により製造する方法(特開昭62−127336号公報参照)などが挙げられる。
これらの中で、光拡散特性をより高める観点から(i)及び(viii)の方法が好ましい。
[[B]化合物]
[B]化合物は、架橋性基を有する化合物である。「架橋性基」とは、同一又は異なる分子間に共有結合を形成することができる基をいう。[B]化合物は、加熱により自発的に重合し、得られる重合体が、当該硬化膜形成用組成物により形成される硬化膜の母材となる。
架橋性基としては、例えば
ビニル基、(メタ)アクリロイル基、スチリル基等の重合性炭素−炭素二重結合含有基;
エポキシ基、チイラニル基、オキセタニル基、ビニルエーテル基等が挙げられる。これらの中で、硬化膜の光拡散特性及び硬さの向上の観点から、重合性炭素−炭素二重結合含有基が好ましく、(メタ)アクリロイル基がより好ましい。
[B]化合物の架橋性基の数としては、特に限定されないが、硬さの向上の観点から、架橋性基の数の下限としては、2が好ましく、3がより好ましく、4がさらに好ましい。上記数の上限としては、20が好ましく、15がより好ましく、12がさらに好ましい。
[B]化合物としては、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
4官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えばペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートや、4つ以上の(メタ)アクリロイル基を有するオリゴエステル(メタ)アクリレート類、オリゴエーテル(メタ)アクリレート類、オリゴエポキシ(メタ)アクリレート類、ジペンタエリスリトール等の水酸基へのエチレンオキシド又はプロピレンオキシドの付加物のポリ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
2官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、上記化合物以外に、ウレタン基と、2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能ウレタンアクリレートを用いることもできる。上記多官能ウレタンアクリレートとしては、例えばジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの2:1付加体(10官能ウレタンアクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートとイソホロンジイソシアネートとの2:1付加体(6官能ウレタンアクリレート)等が挙げられる。上記多官能ウレタンアクリレートの市販品としては、例えば新中村化学工業社のUA−W2A(2官能ウレタンアクリレート)、U−6LPA(6官能ウレタンアクリレート)、日本化薬社のKAYARAD DPHA−40H(10官能ウレタンアクリレート)等が挙げられる。
[B]化合物の分子量の下限としては、100が好ましく、200がより好ましく、300がさらに好ましく、400が特に好ましい。上記分子量の上限としては、5,000が好ましく、3,000がより好ましく、2,000がさらに好ましく、1,500が特に好ましい。[B]化合物の分子量を上記範囲とすることで、硬さにより優れる硬化膜を形成することができる。
[B]化合物としては、上述で例示したもの以外に、例えば特開2001−233928号公報、特開2002−012651号公報、特開2009−297271号公報、特開2015−054461号公報、特開2015−146243号公報、特開2015−147828号公報、特開2015−147952号公報等に記載の2官能以上の(メタ)アクリレート化合物なども挙げられる。
[B]化合物としては、これらの中で、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールのエチレンオキシド付加物のヘキサアクリレート、変性ヘキサアクリレート、ウレタン基と2つ以上の(メタ)アクリロイル基とを有する多官能ウレタンアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートが好ましく、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの2:1付加体及びエトキシ化ビスフェノールAジアクリレートがより好ましい。
当該硬化膜形成用組成物中の[B]化合物の含有量の下限としては、固形分換算で、40質量%が好ましく、50質量%がより好ましく、60質量%がさらに好ましく、70質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、99質量%が好ましく、95質量%がより好ましく、90質量%がさらに好ましい。[B]化合物の含有量を上記範囲とすることで、硬化膜の光拡散特性及び強度をより向上できる。
当該硬化膜形成用組成物中の[B]化合物の[A]粒子(固形分)100質量部に対する含有量の下限としては、50質量部が好ましく、100質量部がより好ましく、200質量部がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、100,000質量部が好ましく、20,000質量部がより好ましく、5,000質量部がさらに好ましい。[B]化合物の含有量を上記範囲とすることで、硬化膜の光拡散特性及び強度をより向上できる。
[[C]分散媒]
[C]分散媒は、水を主成分する。[C]分散媒としては、水のみを含有する分散媒でも、水及び有機溶媒を含有する混合分散媒でもよい。[C]分散媒としては、環境負荷等の観点から、水のみを含有する分散媒が好ましい。
上記有機溶媒としては、水に可溶な有機媒体であれば特に限定されないが、例えばアルコール類、エーテル類等が挙げられる。上記アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジアセトンアルコール等が挙げられる。上記エーテル類としては、例えばエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等が挙げられる。
[C]分散媒が有機溶媒を含有する場合、有機溶媒の含有率の上限としては、例えば10質量%である。
[[D]乳化剤]
[D]乳化剤は、界面活性作用を示し、[A]粒子、[B]化合物等の[C]分散媒中での分散性を高めることができる化合物である。
[D]乳化剤としては、例えば下記式(1)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0006690435
上記式(1)中、Xは、芳香環、エチレン性二重結合又はこれらの組み合わせを有する1価の基である。Rは、炭素数2〜4のアルキレン基である。nは、5〜150の整数である。複数のRは、同一でも異なっていてもよい。Rは、水素原子、−PO(OM)、−SOM又は1価のエチレン性二重結合含有基である。Mは、それぞれ独立して、水素原子、アンモニウム基又は金属原子である。
上記Xで表される1価の基が有する芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環等を挙げることができる。なお、上記Xが芳香環を有する場合、この芳香環は非置換でもよく、アルキル基、アリール基、これらの組み合わせ等で置換されていてもよい。
上記Xで表される1価の基としては、下記式(2)で表される基、ビニル基、アリル基、3−ペンテニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、アリルエーテル基などが挙げられる。上記Xとしては、これらの中で、下記式(2)で表される基が好ましい。
Figure 0006690435
上記式(2)中、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基である。mは、1〜3の整数である。mが2又は3の場合、複数のRは、同一でも異なっていてもよい。*は、上記式(1)における酸素原子に結合する部位を示す。
上記R及びRで表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜3のアルキル基などが挙げられる。
上記mとしては、1及び2が好ましい。
上記Rで表される炭素数2〜4のアルキレン基としては、エチレン基、n−プロピレン基、i−プロピレン基、n−ブチレン基、i−ブチレン基等が挙げられる。
上記Rで表される1価のエチレン性二重結合含有基としては、例えばビニル基、アリル基、3−ペンテニル基等のアルケニル基、(メタ)アクリロイル基、アリルエーテル基、これらの基を置換基として有するアンモニウムイオン等のカチオンと−SO 等のアニオン基とにより形成されるイオン性基などが挙げられる。
上記Mで表される金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属のイオンなどが挙げられる。
[D]乳化剤としては、上記式(1)で表される化合物以外のノニオン系乳化剤、アニオン系乳化剤等も用いることができる。
上記ノニオン系乳化剤としては、例えばポリエチレングリコール又はポリアルキレングリコールのアルキルエステル、脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、アルキルエーテル、アルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
上記アニオン系乳化剤としては、ロジン酸カリウム、ロジン酸ナトリウム等のロジン酸塩、オレイン酸カリウム、ラウリン酸カリウム、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム等の脂肪酸のナトリウム塩又はカリウム塩、ラウリル硫酸ナトリウム等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルアリールスルホン酸塩などが挙げられる。
[D]乳化剤としては、反応性乳化剤を用いることもできる。上記反応性乳化剤としては、例えば上記式(1)で表される化合物のうち、上記Xで表される1価の基がエチレン性二重結合を有する化合物、上記Rが1価のエチレン性二重結合含有基である化合物、上記Xで表される1価の基がエチレン性二重結合を有し、かつ上記Rが1価のエチレン性二重結合含有基である化合物等が挙げられる。また、上記反応性乳化剤の市販品としては、例えばラテムルS−180A、ラテムルPD−104、PD−105、PD−420、PD−430(以上、花王社)、エレミノールJS−2(三洋化成社)、アクアロンKH−10、アクアロンBC−20、アクアロンRN−20、アクアロンRN−30、アクアロンRN−50(以上、第一工業製薬社)、アデカリアソープSE−10N、SR−10N(以上、ADEKA社)、Antox MS−60、RE1000(以上、日本乳化剤社)、サーフマーFP−120(東邦化学工業社)等が挙げられる。
[D]乳化剤としては、上記式(1)で表される化合物が好ましく、ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル硫酸エステル塩がより好ましい。
当該硬化膜形成用組成物が[D]乳化剤を含有する場合、当該硬化膜形成用組成物中の[D]乳化剤の含有量の下限としては、固形分換算で、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましく、1質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、30質量%が好ましく、20質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。[D]乳化剤の含有量を上記範囲とすることで、光拡散特性をより向上させることができる。
[[E]開始剤]
[E]開始剤は、光照射又は加熱によって活性種を発生し、[B]化合物等の重合を促進することで、硬化膜の強度を向上させることができる。[E]開始剤は、水溶性化合物であっても油溶性化合物であってもよい。
光照射によって活性種を発生する[E]開始剤(光開始剤)としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、3−メチルアセトフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタノン−1,4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス−(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、オリゴ(2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−(1−メチルビニル)フェニル)プロパノン)等が挙げられる。
光開始剤の市販品としては、例えばIrgacure184(以上、BASF社)等が挙げられる。
加熱によって活性種を発生する[E]開始剤(熱開始剤)としては、例えば
ハイドロパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシエステル類、ジアシルパーオキサイド類、パーオキシジカーボネート類、パーオキシケタール類、ケトンパーオキサイド類等の有機過酸化物;
過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;
1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオアミド]、1−[(1−シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド等のアゾ化合物などが挙げられる。
熱開始剤の市販品としては、例えばV−601、V−59、VF−096、VA−067、VE−073、VPS−1001、VPE−0201、VAm110(以上、和光純薬工業社)等が挙げられる。
[E]開始剤としては、上述で例示したもの以外に、例えば特開2014−806号公報、特開2014−52493号公報、特開2014−199320号公報、特開2015−071741号公報等に記載の開始剤なども挙げられる。
[E]開始剤としては、これらの中で、光開始剤が好ましい。
当該硬化膜形成用組成物が[E]開始剤を含有する場合、当該硬化膜形成用組成物中の[E]開始剤の含有量の下限としては、固形分換算で、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、1質量%がさらに好ましく、1.5質量%が特に好ましい。上記含有量の上限としては、50質量%が好ましく、30質量%がより好ましく、20質量%がさらに好ましく、10質量%が特に好ましい。[E]開始剤の含有量を上記範囲とすることで、硬化膜の硬さをより向上できる。
[[F]濡れ剤]
[F]濡れ剤は、当該硬化膜形成用組成物を塗工する際のハジキ等を抑制し、硬化膜の均一性をより向上させることができる成分である。[F]濡れ剤は、上述の[D]乳化剤とは、機能の点で異なる。[F]濡れ剤としては、例えばポリオルガノシロキサン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤、アクリルポリマー系界面活性剤等が挙げられる。
[F]濡れ剤としては、例えば特開2013−18921号公報、特開2014−133807号公報、特開2014−162889号公報等に記載の濡れ剤等が挙げられる。[F]濡れ剤は、これらの濡れ剤をそのまま用いてもよく、縮合させて用いてもよい。
当該硬化膜形成用組成物が[F]濡れ剤を含有する場合、当該硬化膜形成用組成物中の[F]濡れ剤の含有量の下限としては、固形分換算で、0.01質量%が好ましく、0.1質量%がより好ましく、0.2質量%がさらに好ましい。上記含有量の上限としては、10質量%が好ましく、5質量%がより好ましく、3質量%がさらに好ましい。[F]濡れ剤の含有量を上記範囲とすることで、当該硬化膜形成用組成物を塗工する際のハジキ等をより抑制できる。
[その他の任意成分]
当該硬化膜形成用組成物は、その他の任意成分として、例えば重合禁止剤、消泡剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、可塑剤、紫外線吸収剤、色剤等をさらに含有してもよい。
[重合禁止剤]
重合禁止剤は、保管時等の[B]化合物の重合を抑制することで当該硬化膜形成用組成物の貯蔵安定性を向上することができる。上記重合禁止剤の市販品としては、例えばp−メトキシフェノール、フェノチアジン、BHT(以上、和光純薬工業社)、IRGANOX1010、IRGANOX1035(以上、BASF社)、SumilizerGA−80(住友化学社)、キノパワーQS−30、キノパワーQS−W10(以上、川崎化成工業社)等が挙げられる。当該硬化膜形成用組成物が上記重合禁止剤を含有する場合、重合禁止剤の含有量の上限としては、固形分換算で、1質量%が好ましく、0.5質量%がより好ましい。上記重合禁止剤の含有量を上記範囲とすることで、[B]化合物の重合性と、当該硬化膜形成用組成物の貯蔵安定性とをバランスよく向上できる。
当該硬化膜形成用組成物の固形分濃度の下限としては、0.1質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、10質量%がさらに好ましい。当該硬化膜形成用組成物の固形分濃度の上限としては、50質量%が好ましく、40質量%がより好ましく、35質量%がさらに好ましい。当該硬化膜形成用組成物の固形分濃度を上記範囲とすることで、塗工性をより向上できる。
当該硬化膜形成用組成物中のアルカリ金属イオンの合計含有量の上限としては、1,000ppmが好ましく、500ppmがより好ましく、300ppmがさらに好ましく、100ppmが特に好ましい。上記含有量の下限としては、例えば10ppmである。上記当該硬化膜形成用組成物中のアルカリ金属イオンの合計含有量を上記範囲内とすることで、当該硬化膜形成用組成物から形成される硬化膜を例えば電極形成用基材等に用いる場合の絶縁性能を向上することができる。
<硬化膜形成用組成物の製造方法>
当該硬化膜形成用組成物の製造方法は、[A]粒子と、[B]化合物と、[C]分散媒とを混合する工程(混合工程)を備える。当該硬化膜形成用組成物の製造方法によれば、当該硬化膜形成用組成物を容易かつ確実に製造できる。
混合工程における[A]〜[C]の各成分の混合の順序としては、分散性向上の観点から、まず、[B]化合物と[C]分散媒とを混合し、この混合物に[A]粒子を混合することが好ましい。
当該硬化膜形成用組成物がさらに[D]乳化剤を含有する場合、混合工程における[A]〜[D]の各成分の混合の順序としては、分散性向上の観点から、まず、[B]化合物と[D]乳化剤とを混合し、この混合物に[C]分散媒を加えて[B]化合物の分散体を得、この分散体に[A]粒子を混合することが好ましい。
混合工程における混合方法としては、特に限定されないが、撹拌混合法等の一般的な方法を採用することができ、超音波分散機を用いることが好ましい。
混合工程における温度としては、各成分の変性を抑制する観点から、例えば0℃以上50℃以下である。
<硬化膜>
当該硬化膜は、上述の当該硬化膜形成用組成物から形成される。当該硬化膜は、上述の硬化膜形成用組成物から形成されているので、優れた硬さを有し、かつ光拡散特性に優れている。
上記硬化膜の平均厚みの下限としては、0.1μmが好ましく、0.5μmがより好ましく、1μmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、30μmが好ましく、20μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。上記硬化膜の平均厚みを上記範囲とすることで、硬さ及び光拡散特性を十分に発現することができる。
<積層体>
基材の少なくとも一方の面に、当該硬化膜形成用組成物を塗工し、硬化膜を積層することにより、積層体を得ることができる。すなわち、この積層体は、基材と、この基材の少なくとも一方の面に積層される硬化膜とを備え、この硬化膜が当該硬化膜形成用組成物により形成される。上記積層体の平均総厚みとしては、例えば10μm以上1,000μm以下である。
<積層体の製造方法>
当該積層体の製造方法は、基材の一方の面に当該硬化膜形成用組成物を塗工する工程(塗工工程)と、上記塗工工程により得られた塗膜を加熱する工程(加熱工程)とを備える。基材として樹脂フィルムを用いる場合、当該積層体の製造方法は、上記塗工工程後に上記樹脂フィルムを延伸する工程(延伸工程)をさらに備えるとよい。当該積層体の製造方法によれば、当該積層体を容易かつ確実に製造できる。以下、各工程について説明する。
[塗工工程]
本工程では、基材の一方の面に当該硬化膜形成用組成物を塗工する。
基材としては、ガラス板、樹脂フィルム等が挙げられる。樹脂フィルムとしては、例えば樹脂材料をシート状に成形した未延伸樹脂フィルムや、この未延伸樹脂フィルムを延伸した延伸樹脂フィルム等を用いることができる。
上記未延伸樹脂フィルムは、例えば溶融押出法、溶融流涎法、カレンダー法等により樹脂材料をシート状に成形することにより得られる。上記樹脂材料の成形方法としては、溶融押出法が好ましい。溶融押出法に使用される成形装置としては、例えば一軸押出機、二軸押出機等が挙げられる。また、溶融押出法における溶融温度としては、例えば200℃以上300℃以下である。上記樹脂材料としては、ペレット状の熱可塑性樹脂が好ましい。この場合、ペレット状の熱可塑性樹脂は、予め十分に乾燥させておくとよい。シート状に成形した未延伸樹脂フィルムは、静電印加キャスト法により例えば0℃以上50℃以下の冷却ロールに巻き付けて冷却固化させることが好ましい。
上記延伸樹脂フィルムは、上記未延伸樹脂フィルムを長手方向(流れ方向)又は短手方向に延伸することにより得られる。上記延伸樹脂フィルムとしては、上記未延伸樹脂フィルムを長手方向(流れ方向)に延伸したものが好ましい。未延伸樹脂フィルムを長手方向に延伸する方法としては、例えば加熱したロールによって2倍以上5倍以下に延伸する方法等が挙げられる。上記ロール温度の下限としては、80℃が好ましい。一方、上記ロール温度の上限としては、120℃が好ましく、100℃がより好ましい。未延伸樹脂フィルムを短手方向に延伸する方法としては、例えばクリップ止め等の適宜の方法によって端部を把持し、熱風ゾーンに導いて2.5倍以上5倍以下に延伸する方法などがあげられる。熱風ゾーンの温度の下限としては、70℃が好ましく、80℃がより好ましい。一方、熱風ゾーンの温度の上限としては、140℃が好ましく、120℃がより好ましい。
基材に当該硬化膜形成用組成物を塗工する方法としては、特に限定されないが、グラビアコート法、ダイコート法、スプレーコート法、ワイヤーバーコート法、リバースロールコート法、カーテンコート法、ディップコート法等が挙げられる。
基材の形状としては、通常、板状又はフィルム状である。基材の形状が板状又はフィルム状である場合、その平均厚みとしては、例えば1μm以上800μm以下とすることができる。
上記基材が樹脂製の場合、樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート及びポリスルホンが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
(延伸工程)
本工程では、少なくとも一方の面に上記硬化膜形成用組成物を塗工した樹脂フィルムを延伸する。樹脂フィルムを延伸する方向としては、長手方向(流れ方向)でもよく、短手方向でもよく、長手方向及び短手方向の両方でもよいが、樹脂フィルムが延伸樹脂フィルムである場合、この延伸樹脂フィルムの製造時には延伸しなかった方向が好ましい。樹脂フィルムを延伸する方法としては、例えば未延伸樹脂フィルムを延伸する方法として上述で例示した方法と同様の方法等が挙げられる。
[加熱工程]
本工程では、塗工工程により得られた塗膜を加熱する。本工程により、当該硬化膜形成用組成物の[B]化合物が重合し、その結果、上記塗膜が硬化して硬化膜が形成される。また、延伸工程で上記樹脂フィルムを延伸している場合、上記樹脂フィルムの結晶配向を促進できる。上記加熱温度としては、例えば160℃以上240℃以下である。また、上記加熱時間としては、例えば1秒以上60秒以下である。
当該硬化膜形成用組成物が光照射によって活性種を発生する[E]開始剤を含有する場合、上記加熱工程の前に、上記塗工工程により得られた塗膜に光照射するとよい。このように、上記加熱工程の前に、上記塗膜に光照射することで、当該硬化膜形成用組成物の含有する[E]開始剤からの活性種の発生を促進できる。上記光照射の方法としては、高圧水銀灯を用いた紫外線照射等が挙げられる。上記光照射の照射量としては、例えば1,000J/m以上5,000J/m以下である。
硬化膜を形成した積層体は、表面の硬さ等に優れるため、フラットパネルディスプレイ、太陽電池、タッチパネル等の表面保護フィルムや、反射防止フィルムなどとして好適に用いることができる。また、硬化膜を形成した積層体は、上述の用途以外にも、建材、車両等の様々な材料として幅広い用途で用いることができる。
<光拡散積層体>
当該硬化膜形成用組成物から形成される硬化膜は、優れた硬さを維持しつつ、オーバーコート後も光拡散特性に優れるという特性を有しているので、この硬化膜を積層した積層体は、光拡散積層体として、好適に用いることができる。
当該光拡散積層体は、基材と、この基材に積層される光拡散層とを備え、上記光拡散層が当該硬化膜により形成されている。
上記基材としては、上記積層体における基材として例示したもの等があげられる。光拡散積層体における基材としては、これらの中で、透明基材が好ましく、樹脂フィルムがより好ましい。基材が板状又はフィルム状の場合、基材の平均厚みとしては、例えば1μm以上800μm以下とすることができる。
当該光拡散積層体における光拡散層を形成する硬化膜の平均厚みの下限としては、1μmが好ましく、3μmがより好ましく、5μmがさらに好ましい。上記平均厚みの上限としては、50μmが好ましく、30μmがより好ましく、10μmがさらに好ましい。
当該光拡散積層体の曇価の下限としては、40%が好ましく、50%がより好ましく、55%がさらに好ましい。上記曇価の上限としては、99%が好ましく、95%がより好ましい。光拡散積層体の曇価は、ASTMD1003により測定される値である。
当該光拡散積層体のオーバーコート後の曇価の下限としては、40%が好ましく、50%がより好ましく、55%がさらに好ましい。上記オーバーコート後の曇価の上限としては、99%が好ましく、95%がさらに好ましい。「オーバーコート後の曇価」とは、光拡散積層体の硬化膜の基材とは反対の面に、透明部材を形成する組成物を塗工、硬化して硬化膜に積層させる透明膜を形成した場合の曇価をいう。
当該光拡散積層体のオーバーコート前後の曇価の差の上限としては、25%が好ましく、10%がより好ましく、5%がさらに好ましく、3%がさらに好ましい。上記差の下限としては、例えば0%である。当該光拡散積層体は、光拡散層が上述の当該硬化膜形成用組成物から得られる硬化膜により形成されているので、光拡散特性に優れ、かつオーバーコート後でも光拡散特性を維持することができる。
当該光拡散積層体は、例えば反射型液晶表示装置のフロントディフューザー等の表示装置に配置されるディフューザー、透過型液晶表示装置のバックライトユニット用の光拡散フィルム等として好適に用いることができる。
<表示装置>
当該表示装置は、当該光拡散積層体を備える。当該表示装置は、上述の特性を有する光拡散積層体を、ディフューザー、光拡散フィルム等として備えているので、像のぼけを低減することができる。
当該表示装置としては、液晶表示装置、EL表示装置等が挙げられる。液晶表示装置としては、フロントライト又は外部からの光を利用する反射型液晶表示装置、バックライト等の光源からの光を利用する透過型液晶表示装置、外部等からの光と光源からの光の両方を利用する半透過半反射型液晶表示装置等が挙げられる。
当該表示装置は、光拡散積層体以外に、例えば表示部(表示パネル)、偏光板、位相差板、反射防止部材、カラーフィルター、反射防止部材、ガラス基板、バックライトユニット等をさらに備えることができる。
<表示装置の製造方法>
表示部と光拡散積層体とを備える当該表示装置の製造方法は、基材の少なくとも一方の面側に、[A]粒子と、[B]化合物と、[C]分散媒とを含有する硬化膜形成用組成物(以下、「硬化膜形成用組成物(I)」ともいう)を塗工する工程(以下、「塗工工程」ともいう)と、上記塗工工程により得られた光拡散積層体を、上記表示部の表示側又はその反対側に配置する工程(以下、「配置工程」ともいう)とを備えることを特徴とする。本発明の表示装置の製造方法によれば、像のぼけが低減された表示装置を容易かつ確実に製造できる。
[塗工工程]
本工程では、基材の一方の面側に、硬化膜形成用組成物(I)を塗工する。
硬化膜形成用組成物(I)については、上述の当該硬化膜形成用組成物の項で説明した通りである。基材及び塗工方法としては、上述の積層体における基材及び塗工方法として例示したもの等が挙げられる。
[配置工程]
本工程では、上記塗工工程により得られた光拡散積層体を、上記表示部の表示側又はその反対側に配置する。表示部の表示側とは、表示装置における視認側を意味する。例えば表示装置が反射型液晶表示装置の場合、フロントディフューザーとしての光拡散積層体は、表示部の表示側に配置される。また、表示装置が透過型液晶表示装置の場合、光拡散フィルムとしての光拡散積層体は、表示部の表示側と反対側のバックライトユニット等との間に配置される。
表示部としては、例えば液晶表示パネル、EL表示パネル等が挙げられる。
配置工程においては、光拡散積層体及び表示部以外に、例えば偏光板、位相差板、カラーフィルター、反射防止部材、ガラス基板、バックライトユニット等をさらに配置することができる。
<他の実施形態>
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。例えば上記好適な実施形態では、本発明の硬化膜形成用組成物を主成分が樹脂である基材を有する積層体の製造に適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されず、金属、ガラス、セラミックス等の樹脂以外の材料を主成分とする基材を有する積層体の製造にも適用することができる。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。各種物性値の測定方法を以下に示す。
[重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)]
重合体のMw及びMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー社の「HLC−8020」)を使用し、GPCカラム(東ソー社の「ガードカラムHXL−H」、「TSKgelG7000HXL」、「TSKgelGMHXL」2本及び「TSKgelG2000HXL」を順次連結したもの)を用い、溶出溶媒:テトラヒドロフラン、流速:1mL/分、カラム温度:40℃、サンプル濃度:0.7質量%、注入量:70μLの分析条件で、単分散ポリスチレンを標準とするGPCにより測定した。
[固形分濃度]
硬化膜形成用組成物、[A]粒子の水分散体、[D]乳化剤等における固形分濃度は、試料をアルミ皿に入れ、ホットプレート上にて、140℃で30分加熱し、試料の加熱前後の質量変化から算出した。
固形分濃度(%)=(140℃で30分加熱後の試料質量/加熱前の試料重量)×100
[中空有機粒子の外径及び内径並びに中空率]
中空有機粒子の水分散液を乾燥した後、透過型電子顕微鏡(日立ハイテクフィールディング社の「H−7650」)を用いて、任意の中空粒子20個について外径と内径を測定し、平均値をそれぞれ内径、外径の値とした。中空率は、粒子体積に占める中空体積の割合であり、下記の式を用いて算出した。
中空率(%)=(粒子内径/粒子外径)×100
<[A]粒子の水分散体の製造>
[調製例1](化学的に架橋されたシェルを有する中空粒子(a)の水性分散体の製造)
特許第5181566号公報の実施例の「微粒子状の異種重合体(a)の製造」及び「中空基材粒子(A−1)の製造」に記載の方法に従い、中空基材粒子(A−1)と同様の中空粒子(a)の水性分散体を得た。中空粒子(a)は、化学的に架橋されたシェルを有している。水性分散体を乾燥し、透過型電子顕微鏡で観察したところ、中空粒子(a)は、中央部が透けている完全な球形の中空有機粒子であり、外径が0.6μm、内径が0.4μm、中空率は30%であった。
[調製例2](化学的に架橋されていないシェルを有する中空粒子(b)の水性分散体の製造)
特許第5098173号公報の比較製造例2(架橋していない中空ポリマー粒子の製造)に記載の方法に従い、中空ポリマー粒子の水性分散体(iii”−1)と同様の中空粒子(b)の水性分散体を得た。この中空粒子(b)は、化学的に架橋されていないシェルを有している。中空粒子(b)は、単一の空孔を有する球状であり、外径が1.1μm、内径が0.9μm、中空率が55%であり、中空粒子(b)の水性分散体における固形分濃度が26.5質量%であった。
[調製例3](化学的に架橋されたシェルを有する中空粒子(c)の水性分散体の製造)
特許第4281531号公報の実施例2に記載の方法に従い、実施例2の重合体粒子と同様の中空粒子(c)の水性分散体を得た。中空粒子(c)は、化学的に架橋されたシェルを有している。水性分散体を乾燥し、透過型電子顕微鏡で観察したところ、中空粒子(a)は、中央部が透けている完全な球形の中空有機粒子であり、外径が0.40μm、内径が0.30μm、中空率が42%であった。
[調製例4](化学的に架橋されたシェルを有する中空粒子(d)の水性分散体の製造)
特許第5098173号公報の製造例1(架橋中空ポリマー粒子水分散体iiiの製造)に記載の方法に従い、水性分散体(iii−1)と同様の中空粒子(d)の水性分散体を得た。中空粒子(d)は、単一の空孔を有する球形であり、外径が1.1μm、内径が0.9μm、中空率が55%であり、中空粒子(b)の水性分散体における固形分濃度が26.5質量%であった。
[調製例5](化学的に架橋されたシェルを有する中空粒子(e)の水性分散体の製造)
特許第5098173号公報の比較製造例1(架橋中空ポリマー粒子水分散体iii’の製造)の水性分散体(iii’−1)と同様の中空粒子(e)の水性分散体を得た。中空粒子(e)は、単一の空孔を有する球形であり、外径が0.35μm、内径が0.2μm、中空率が19%であり、中空粒子(e)の水性分散体における固形分濃度が20.5質量%であった。
[調製例6](空孔を有さない化学的に架橋された粒子(f)の水性分散体の製造)
特許第3275397号公報の実施例5に記載の方法に従い、実施例5のポリマー粒子と同様の粒子(f)の水性分散体を得た。水性分散体を乾燥させ、走査型電子顕微鏡で観察したところ、平均粒径1.3μmで単分散性の高い球状粒子であることが確認された。
[調製例7](シリカ粒子(g)の水性分散体の製造)
シリカ粒子(アドマテックス社の「アドマファイン SO−C2」(平均粒径0.5μm)20質量部と、水80質量部とを混合し、超音波分散機にて10分間分散処理を行い、シリカ粒子(g)の水性分散体を得た。シリカ粒子(g)の水性分散体の固形分濃度は20質量%であった。
<硬化膜形成用組成物の調製>
硬化膜形成用組成物の調製に用いた[A]成分、[B]化合物、[D]乳化剤、[E]開始剤及び[F]濡れ剤について以下に示す。
[[A]成分]
a:調製例1で製造した中空粒子(a)の水性分散体
b:調製例2で製造した中空粒子(b)の水性分散体
c:調製例3で製造した中空粒子(c)の水性分散体
d:調製例4で製造した中空粒子(d)の水性分散体
e:調製例5で製造した中空粒子(e)の水性分散体
f:調製例6で製造した粒子(f)の水性分散体
g:調製例7で製造したシリカ粒子(g)の水性分散体
[[B]化合物]
B−1:ジペンタエリスリトールポリアクリレート(新中村化学工業社の「A−9550」)
B−2:ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの2:1付加体(日本化薬社の「KAYARAD DPHA−40H」)
B−3:エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート(新中村化学工業社の「A−BPE−4」)
[[D]乳化剤]
D−1:ポリオキシエチレン多環フェニルエーテル(日本乳化剤社の「ニューコール707SF」、有効成分濃度30質量%)
[[E]開始剤]
E−1:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社の「Irgacure184」)
[[F]濡れ剤]
F−1:フッ素系界面活性剤(共栄社化学社の「フタージェント215M」)
[実施例1]
[B]化合物としての(B−1)81.0質量部と、[E]開始剤としての(E−1)3.0質量部とを混合し、均一な溶液とした。この溶液に、[D]乳化剤としての(D−1)4.0質量部と、[C]分散媒としての水100質量部とを加え、超音波分散機を用いて分散・混合することにより、[B]化合物の水性分散体を調製した。さらに、ここに[A]粒子としての中空粒子(a)15.0質量部(固形分換算)と、[F]濡れ剤としての(F−1)0.3質量部とを加え、水を固形分濃度が40質量%となるように加え、よく撹拌することにより、硬化膜形成用組成物(J−1)を調製した。
[実施例2〜12並びに比較例2及び3]
下記表1に示す組成に変更した以外は、実施例1と同様にして、硬化膜形成用組成物(J−2)〜(J−12)並びに(CJ−2)及び(CJ−3)を調製した。
[比較例1]
中空粒子(a)の水性分散体を、スプレードライヤ(大川原化工機社の「パイロットシリーズL−12型」)を用いて乾燥し、得られた中空粒子50.0質量部と、[B]化合物としての(B−1)50.0質量部と、[E]開始剤としての(E−1)3.0質量部と、分散媒としてのシクロヘキサノンを固形分濃度が35質量%となるように加え、超音波分散機を用いて分散処理を行い、硬化膜形成用組成物(CJ−1)を調製した。表1における中空粒子(a’)は、中空粒子(a)がシクロヘキサノンを主成分とする分散媒への分散体であることを示す。
[比較例4]
架橋性基を有さない化合物としての水溶性高分子であるポリアクリル酸(和光純薬工業社、平均分子量約25,000)81.0質量部と、[D]分散媒としての水160.0質量部とを混合し、均一な溶液を得た。ここに、中空粒子(a)の水性分散体15.0質量部(固形分換算)と、水とを固形分濃度が20質量%となるように加え、よく撹拌して、硬化膜形成用組成物(CJ−4)を調製した。
<光拡散積層体の作製>
[実施例1〜12並びに比較例2及び3]
下記表1に示す硬化膜形成用組成物を、ポリエチレンテレフタレート基材(東洋紡社の「コスモシャインA4300」、平均厚み50μm)に、バーコーターを用いてコートし、80℃で10分乾燥した後、高圧水銀灯(300mJ/cm)を用いて硬化させ、表1に示す平均厚みの硬化膜が積層された光拡散積層体を作製した。
[比較例1]
硬化膜形成用組成物(CJ−1)を用い、硬化膜の平均厚みを30μmとした以外は、実施例1〜12と同様にして、比較例1の光拡散積層体を作製した。
[比較例4]
硬化膜形成用組成物(CJ−4)を用い、硬化膜の平均厚みを6μmとし、高圧水銀灯を用いた硬化を行わなかった以外は、実施例1〜12と同様にして、比較例4の光拡散積層体を作製した。
<評価>
上記作製した光拡散積層体について、下記項目を下記方法により評価した。評価結果を表1に合わせて示す。
[硬化膜中の粒子濃度]
硬化膜中の粒子濃度(質量%)は、硬化膜の形成に用いた硬化膜形成用組成物中の[A]粒子の全固形分に対する質量割合として算出した値である。
[硬化膜の平均厚み]
マイクロメーターを用い、試料につき場所を変えて10回、基材及び光拡散積層体の厚みを測定し、それぞれの平均値の差を求め、硬化膜の平均厚み(μm)を算出した。
[曇価]
作製した光拡散積層体について、カラーヘーズメーター(スガ試験機社)を用いて、ASTMD1003に従い、測定した(単位:%)。
[オーバーコート後の曇価]
上記実施例及び比較例の硬化膜形成用組成物に対応する[A]粒子成分を除いた組成物を別途調製した。これを対応する実施例及び比較例の光拡散積層体に、平均厚み10μmとなるようにオーバーコートし、乾燥及び硬化させた光拡散積層体を作製した。このオーバーコート後の光拡散積層体について曇価を測定し、オーバーコート後の曇価(単位:%)とした。
[押込み弾性率]
下記表1に示す硬化膜形成用組成物を用いて形成した硬化膜の押込み弾性率を、微小硬さ試験機(Fisher社の「ピコデンターHM500」)を用いて測定した(単位:GPa)。押込み深さは、硬化膜の平均厚みの5%とした。押込み弾性率は、硬化膜の硬さ(強度)の指標である。
Figure 0006690435
表1の結果から分かるように、実施例の硬化膜形成用組成物から形成した硬化膜は、優れた強度を維持しつつ、薄くても高い光拡散特性を発揮することができ、かつオーバーコートした場合でも光拡散特性の低下が小さく、高い光拡散特性を維持することができる。
本発明の硬化膜形成用組成物によれば、薄くても高い光拡散特性を発揮でき、かつオーバーコート層による光拡散特性の低下が小さい硬化膜を形成することができる。本発明の硬化膜形成用組成物の製造方法によれば、そのような硬化膜形成用組成物を容易かつ確実に製造することができる。本発明の硬化膜及び光拡散積層体は、薄くても高い光拡散特性を発揮でき、かつオーバーコート層による光拡散特性の低下が小さい。本発明の表示装置によれば、像のぼけを低減することができる。本発明の表示装置の製造方法によれば、そのような表示装置を容易かつ確実に製造することができる。

Claims (11)

  1. 中空有機粒子と、
    架橋性基を有する化合物と、
    水を主成分とする分散媒と
    を含有し、
    上記架橋性基を有する化合物が、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む硬化膜形成用組成物。
  2. 乳化剤をさらに含有する請求項1に記載の硬化膜形成用組成物。
  3. 開始剤をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載の硬化膜形成用組成物。
  4. 上記中空有機粒子の内径が、0.05μm以上4μm以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
  5. 上記中空有機粒子の含有量が、固形分換算で0.5質量%以上60質量%以下である請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物。
  6. 中空有機粒子と、架橋性基を有する化合物と、水を主成分とする分散媒とを混合する工程
    を備え
    上記架橋性基を有する化合物が、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含む硬化膜形成用組成物の製造方法。
  7. 請求項1から請求項のいずれか1項に記載の硬化膜形成用組成物から形成される硬化膜。
  8. 基材と、
    この基材の少なくとも一方の面に積層される光拡散層と
    を備え、
    上記光拡散層が請求項に記載の硬化膜により形成されている光拡散積層体。
  9. 反射型液晶表示装置のフロントディフューザー又は透過型液晶表示装置の光拡散フィルムとして用いられる請求項に記載の光拡散積層体。
  10. 請求項又は請求項に記載の光拡散積層体を備える表示装置。
  11. 表示部と光拡散積層体とを備える表示装置の製造方法であって、
    基材の少なくとも一方の面側に、中空有機粒子と、架橋性基を有する化合物と、水を主成分とする分散媒とを含有する硬化膜形成用組成物を塗工する工程と、
    上記塗工工程により得られた光拡散積層体を、上記表示部の表示側又はその反対側に配置する工程と
    を備え
    上記架橋性基を有する化合物が、2官能以上の(メタ)アクリレート化合物を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
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