以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
〔熱可塑性樹脂組成物〕
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位を含む共重合体(A)を含んでなる。
<共重合体(A)>
本発明において、共重合体(A)を構成する芳香族ビニル単量体単位は、芳香族ビニル単量体から導かれる単量体単位である。本明細書において、芳香族ビニル単量体は、芳香環に無置換ビニル基または置換ビニル基が結合した構造を備えた単量体を意味する。芳香族ビニル単量体は、環状酸無水物単量体と容易に共重合する。
芳香族ビニル単量体単位の具体例としては、下記式(1):
(式中、R
3およびR
4は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ニトロ基または炭素数1〜12のアルキル基を表し、nは1〜3の整数を表す。)
で表される単量体単位が挙げられる。
式(1)におけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子および臭素原子が挙げられる。炭素数1〜12のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基等の直鎖状または分枝鎖状のアルキル基が挙げられ、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
R3は、好ましくは水素原子または炭素数1〜12のアルキル基(特に炭素数1〜8のアルキル基、とりわけ炭素数1〜4のアルキル基)、より好ましくは水素原子またはメチル基である。R4は、好ましくは水素原子または炭素数1〜12のアルキル基(特に炭素数1〜8のアルキル基、とりわけ炭素数1〜4のアルキル基)、より好ましくは水素原子である。nは、好ましくは1である。R3およびR4は互いに同一であってもよいし、異なっていてもよい。
芳香族ビニル単量体として、具体的には例えば、スチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、2,5−ジメチルスチレン、2−メチル−4−クロロスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン、α−メチルスチレン、cis−β−メチルスチレン、trans−β−メチルスチレン、4−メチル−α−メチルスチレン、4−フルオロ−α−メチルスチレン、4−クロロ−α−メチルスチレン、4−ブロモ−α−メチルスチレン、4−tert−ブチルスチレン、2−フルオロスチレン、3−フルオロスチレン、4−フルオロスチレン、2,4−ジフルオロスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、2−ブロモスチレン、3−ブロモスチレン、4−ブロモスチレン、2,4−ジブロモスチレン、α−ブロモスチレン、β−ブロモスチレン、2−ヒドロキシスチレンおよび4−ヒドロキシスチレンなどが挙げられる。中でも、スチレンおよびα−メチルスチレンが好ましい。2種以上の芳香族ビニル単量体を組み合わせて用いてもよい。
共重合体(A)における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、共重合体(A)を構成する全ての単量体単位100質量%に対して、好ましくは50質量%以上である。本発明の熱可塑性樹脂組成物は、芳香族ビニル単量体単位を上記下限値以上の量で含むと、溶融時の流動性が向上し、フィルム形状への成形が容易となる。重合体(A)中の芳香族ビニル単量体単位の含有量は、好ましくは50〜80質量%、より好ましくは52〜78質量%、さらに好ましくは55〜75質量%である。
本発明において、共重合体(A)を構成する環状酸無水物単量体単位は、環状酸無水物単量体から導かれるものである。環状酸無水物単量体単位の具体例としては、下記式(2):
(式中、R
1およびR
2は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキル基またはフェニル基を表し、nは0または1の整数を表す)
で表される環状酸無水物単量体単位が挙げられる。
ハロゲン原子および炭素数1〜12のアルキル基としては、上記式(2)で表される芳香族ビニル単量体単位において例示したものと同様のものが挙げられる。
R1およびR2は、好ましくは、水素原子である。R1およびR2は、互いに同一であってもよいし異なっていてもよい。
環状酸無水物単量体としては、例えば無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水シトラコン酸、ジメチル無水マレイン酸、ジクロロ無水マレイン酸、ブロモ無水マレイン酸、ジブロモ無水マレイン酸、フェニル無水マレイン酸およびジフェニル無水マレイン酸が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。2種以上の環状酸無水物単量体を組み合わせて用いてもよい。
共重合体(A)における環状酸無水物単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の透明性および耐熱性、高温環境での寸法安定性の点で、共重合体(A)を構成する全ての単量体単位100質量%に対して、好ましくは5〜35質量%、より好ましくは10〜30質量%、さらに好ましくは15〜25質量%である。
本発明の熱可塑性樹脂組成物に含まれる共重合体(A)は、芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位の他に、アクリル系単量体単位を含むことが好ましい。共重合体(A)がアクリル系単量体単位を含むと、得られる樹脂フィルムの靱性を向上させることができる。
本発明において、共重合体(A)を構成し得るアクリル系単量体単位は、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル単量体またはアクリル酸エステル単量体から導かれる単量体単位である。
メタクリル酸エステル単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸の炭素数1〜8のアルキルまたはシクロアルキルエステル単量体が挙げられる。2種以上のメタクリル酸エステル単量体を組み合わせて用いてもよい。なかでも、メタクリル酸の炭素数1〜7のアルキルエステル単量体が好ましく、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や透明性の点で、メタクリル酸メチルがより好ましい。
アクリル酸エステル単量体としては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル等のアクリル酸の炭素数1〜8のアルキルまたはシクロアルキルエステル単量体が挙げられる。2種以上のアクリル酸エステル単量体を組み合わせて用いてもよい。なかでも、アクリル酸の炭素数1〜7のアルキルエステル単量体が好ましく、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性や透明性の点で、アクリル酸メチルがより好ましい。
共重合体(A)におけるアクリル系単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の透明性の点で、共重合体(A)を構成する全ての単量体単位100質量%に対して、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは5〜35質量%、さらに好ましくは5〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。
本発明において、共重合体(A)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上述した単量体単位、すなわち芳香族ビニル単量体単位、環状酸無水物単量体単位およびアクリル系単量体単位以外の単量体単位を含んでもよい。上述した単量体単位以外の単量体単位は、上述した単量体単位を導く単量体のうち、共重合体(A)を構成する少なくとも1種の単量体と共重合しうる単量体から導かれる単量体単位であればよく、好ましくは、共重合体(A)を構成する芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位、ならびに含まれる場合にはアクリル系単量体単位を導く単量体の全てと共重合しうる単量体から導かれる単量体単位である。上述した単量体単位以外の単量体単位を含む場合、その含有量は、共重合体(A)を構成する全ての単量体単位100質量%に対して、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。上述した単量体単位以外の単量体単位の含有量の下限値は、例えば0質量%以上である。
共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物から樹脂フィルムを成形する際のハンドリング性または本発明の樹脂フィルムの延伸時のフィルムのハンドリング性の観点から、好ましくは90000〜300000、より好ましくは100000〜250000、さらに好ましくは110000〜230000である。
共重合体(A)の数平均分子量(Mn)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物から樹脂フィルムを成形する際のハンドリング性または本発明の樹脂フィルムの延伸時のフィルムのハンドリング性の観点から、好ましくは35000〜100000、より好ましくは40000〜90000、さらに好ましくは45000〜85000である。なお、本発明において、共重合体(A)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によりポリメタクリル酸メチル換算によって測定することができる。
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物から樹脂フィルムへの成形性の観点から、好ましくは1.3〜4、より好ましくは1.5〜3.5、さらに好ましくは1.7〜3である。
共重合体(A)のメルトマスフローレート(MFR)は、0.4g/10分以上、好ましくは0.5g/10分以上、より好ましくは0.6g/10分以上であり、好ましくは10g/10分以下、より好ましくは8g/10分以下、さらに好ましくは7g/10分以下である。共重合体(A)のMFRが上記下限値以上であると、溶融押出成形により熱可塑性樹脂組成物から樹脂フィルムを製造する際に、溶融混練時に環状酸無水物単量体単位に起因する脱炭酸反応を抑制することができる。また、共重合体(A)のMFRが上記上限値以下であると、溶融押出成形により樹脂フィルムを製造する際に、溶融された熱可塑性樹脂組成物の吐出量の安定性が良好である。なお、本発明において、重合体のMFRは、測定温度230℃、荷重37.3Nの条件においてJIS K7210に従い測定することができる。
共重合体(A)は、これを構成するそれぞれの単量体を、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、または注型重合法等の公知の方法により重合させることにより製造することができる。それぞれの単量体の使用量を変えることにより、共重合体(A)中のそれぞれの単量体単位の含有量を制御することができる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物中の共重合体(A)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して、通常10〜100質量%であり、好ましくは10〜80質量%であり、より好ましくは15〜65質量%であり、さらに好ましくは20〜50質量%である。熱可塑性樹脂組成物中の共重合体(A)の含有量が上記範囲内であると、耐熱性をより向上させることができ、外観のより良好な樹脂フィルムを得ることができる。
<重合体(B)>
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、例えば、熱可塑性樹脂組成物のメルトマスフローレートを調整するために、共重合体(A)の他に、アクリル系単量体単位を含み、芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位を実質的に含まない重合体(B)を含有してもよい。共重合体(A)に加えて重合体(B)を含むことにより、熱可塑性樹脂組成物の反応速度定数k(s−1)の対数lnkの調整が容易になる。また、熱可塑性樹脂組成物に適度な靱性を付与することができる。
重合体(B)を構成するアクリル系単量体単位は、メタクリル酸、アクリル酸、メタクリル酸エステル単量体またはアクリル酸エステル単量体から導かれる単量体単位であり、メタクリル酸エステル単量体またはアクリル酸エステル単量体としては、共重合体(A)において先に例示したと同様のものが挙げられる。中でも、メタクリル酸メチルおよびアクリル酸メチルが好ましい。2種以上のメタクリル酸エステル単量体および/またはアクリル酸エステル単量体を用いてもよい。特に、重合体(B)が、2種以上のアクリル系単量体から導かれる単量体単位を含む場合には、高い透明性および耐熱分解性を確保することができ、同時にメルトマスフローレートの調整が容易となる。
共重合体(A)中のアクリル系単量体単位と、重合体(B)中のアクリル系単量体単位とが同一であると、樹脂組成物の相溶性や得られる樹脂フィルムの透明性に優れる傾向にあり、好ましい。
重合体(B)におけるアクリル系単量体単位の含有量は、重合体(B)を構成する全ての単量体単位100質量%に対して、通常50質量%以上であり、好ましくは70質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、さらに好ましくは92質量%以上である。
重合体(B)は、芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位を実質的に含まない。ここで、本明細書において「実質的に含まない」とは、重合体(B)を構成する全ての単量体単位100質量%に対して、芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位が、それぞれ5質量%以下であることを意味し、本発明の好適な一実施態様において、重合体(B)に含まれる芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位は、それぞれ0質量%である。
重合体(B)は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上述したアクリル系単量体単位以外に、芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位ではない他の単量体単位を含んでいてもよい。そのような他の単量体としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等の不飽和ニトリル単量体;フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等の環状イミド単量体等が挙げられる。
重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、MFRを高くする観点から、好ましくは40000〜200000であり、より好ましくは50000〜150000であり、さらに好ましくは60000〜120000である。
重合体(B)の数平均分子量(Mn)は、MFRを高くする観点から、好ましくは20000〜100000、より好ましくは30000〜70000、さらに好ましくは35000〜60000である。なお、本発明において、重合体(B)の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、例えばゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定によりポリメタクリル酸メチル換算によって測定することができる。
重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、本発明の熱可塑性樹脂組成物から樹脂フィルムへの成形性の観点から、好ましくは1.3〜4、より好ましくは1.5〜3.5、さらに好ましくは1.7〜3である。
重合体(B)のMFRは、好ましくは1.5g/10分以上であり、より好ましくは2.0g/10分以上であり、さらに好ましくは2.5g/10分以上である。重合体(B)のMFRが上記下限値以上であると、熱可塑性樹脂組成物のMFRの制御が容易となる。なお、重合体(B)のMFRの上限値は、成形加工性の観点から、通常40g/10分以下である。
重合体(B)は、メタクリル酸エステル単量体および/またはアクリル酸エステル単量体、ならびに必要に応じて他の単量体を、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、注型重合法等の公知の方法で重合させることにより製造することができる。
熱可塑性樹脂組成物中の重合体(B)の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して、好ましくは20質量%以上であり、より好ましくは30質量%以上であり、また、好ましくは80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以下である。重合体(B)の含有量が上記下限値以上であると、熱可塑性樹脂組成物のMFRの制御が容易となる。重合体(B)の含有量が上記上限値以下であると、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性をさらに向上させることができ、外観の良好な樹脂フィルムを得ることができる。
本発明の一実施態様において、得られる樹脂フィルムの靱性、耐衝撃性や製膜性を向上させる観点から、本発明の熱可塑性樹脂組成物はさらにゴム弾性体粒子を含有していてもよい。ゴム弾性体粒子は、ゴム弾性を示すゴム弾性体層を含む粒子であり、例えば、ゴム弾性を示すゴム弾性体層のみからなる単層構成の粒子であってもよいし、ゴム弾性を示すゴム弾性体層とともに他の層を有する多層構成の粒子(コアシェル型粒子)であってもよい。
ゴム弾性体層を構成するゴム弾性体としては、例えば、オレフィン系弾性重合体、ジエン系弾性重合体、スチレン−ジエン系弾性共重合体、アクリル系弾性重合体などが挙げられる。オレフィン系弾性重合体としては、例えばポリプロピレン系重合体やポリエチレン系重合体等が挙げられる。ジエン系弾性重合体としては、例えばブタジエンゴムやイソプレンゴム等が挙げられる。スチレン−ジエン系弾性共重合体としては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられる。また、アクリル系弾性重合体としては、例えばアクリル酸エステルを主とする重合体または共重合体等が挙げられる。
ゴム弾性体粒子の粒子径は、例えば10nm以上であり、好ましくは50nm以上、より好ましくは100nm以上であり、また、例えば350nm以下であり、好ましくは320nm以下である。ゴム弾性体粒子の粒子径が上記下限値以上であると、熱可塑性樹脂組成物をフィルムへ加工する際などに、その流動性の低下が生じ難い。また、ゴム弾性体粒子の粒子径が上記上限値以下であると、熱可塑性樹脂組成物の内部ヘイズが高くなり難い。ゴム弾性体粒子の粒子径は、電子顕微鏡の観察により数平均粒子径として測定することができ、例えばゴム弾性体粒子100個の平均値として算出することができる。
熱可塑性樹脂組成物中におけるゴム弾性体粒子の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量に対して0(ゼロ)質量%でもよいが、好ましくは5〜30質量%、好ましくは7〜28質量%、より好ましくは10〜25質量%である。熱可塑性樹脂組成物中におけるゴム弾性体粒子の含有量が上記下限値以上であると、得られる樹脂フィルムの脆性を改善することができる。熱可塑性樹脂組成物中におけるゴム弾性体粒子の含有量が上記上限値以下であると、熱可塑性樹脂組成物の耐熱性がさらに良くなるため、外観の良好な樹脂フィルムを得ることができる。
ゴム弾性体粒子の1%重量減少温度は、好ましくは305℃以上、より好ましくは310℃以上、さらに好ましくは315℃以上である。ゴム弾性体粒子の1%重量減少温度が上記下限値以上であると、ゴム弾性体粒子の耐熱性が良好であり、溶融混練時にゴム弾性体粒子が分解しにくく、樹脂フィルムにおいて発泡を抑制することができる。なお、ゴム弾性体粒子の1%重量減少温度の上限値は、例えば500℃以下である。
なお、本発明において1%重量減少温度とは、あらかじめゴム弾性体粒子を80℃で12時間以上乾燥させた後、窒素雰囲気下で、10℃/分の速度で昇温したときのゴム弾性体粒子の重量減少量が全体の重量の1%となったときの温度を意味する。1%重量減少温度は、示差熱・熱重量分析(TG−DTA)により測定することができる。
ゴム弾性体粒子は、ゴム弾性体粒子を製造する過程で、金属元素を含有することがある。後述するように、この金属元素が共重合体(A)の分解反応に寄与し得ることにより、熱可塑性樹脂組成物の安定性が低下しやすくなるため、ゴム弾性体粒子に含まれる金属元素の量はできる限り少ないことが好ましい。例えば、ゴム弾性体粒子が含有するアルカリ金属元素を100ppm以下にすることが好ましい。また、アルカリ土類金属元素は、1000ppm以下であることが好ましい。ゴム弾性体粒子中の金属成分を減少させるためには、例えば洗浄工程を増やすことまたは、製造時に添加する乳化剤や重合開始剤について、金属成分を含まない材料を選択することで可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、共重合体(A)、重合体(B)およびゴム弾性体粒子以外の他の成分を含んでいてもよい。他の成分としては、例えば、光拡散剤、艶消剤、染料、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、離型剤、難燃剤、帯電防止剤、滑材およびその他の樹脂〔共重合体(A)および重合体(B)以外の樹脂〕等が挙げられる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は従来公知の方法により製造することができ、具体的には、例えば、共重合体(A)、ならびに必要に応じて重合体(B)、ゴム弾性体粒子、その他の成分を、押出機を用いて溶融混練する方法により製造することができる。本発明の熱可塑性樹脂組成物の形態は特に限定されるものではないが、取り扱いが容易である点でペレット状であることが好ましい。
本発明において、熱可塑性樹脂組成物の300℃における反応速度定数k(s−1)の対数lnkは0.05以下である。反応速度定数k(s−1)の対数lnkは、熱可塑性樹脂組成物の安定性を示す指標であり、この値が0.05を超えると、熱可塑性樹脂組成物の安定性が低くなり耐熱分解性に劣るため、このような熱可塑性樹脂組成物を高温環境下で溶融混練し、樹脂フィルムを成形した場合、得られる樹脂フィルムに着色が生じる傾向にある。着色を有する樹脂フィルムは、外観や光学特性において欠陥を有する樹脂フィルムとなる。本発明の熱可塑性樹脂組成物の反応速度定数k(s−1)の対数lnkは、好ましくは0.049以下であり、より好ましくは0.048以下であり、さらに好ましくは0.047以下である。また、反応速度定数k(s−1)の対数lnkの下限値は、例えば0.001以上である。
なお、熱可塑性樹脂組成物の300℃における反応速度定数k(s−1)の対数lnkは、後述する実施例に記載される方法に従い測定、算出することができる。
熱可塑性樹脂組成物の反応速度定数k(s−1)の対数lnkの値は、例えば、熱可塑性樹脂組成物に含まれる芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位の割合を調整することにより制御することができる。熱可塑性樹脂組成物に含まれる芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位の割合を調整する方法としては、共重合体(A)および重合体(B)の含有量、共重合体(A)に含まれるアクリル系単量体単位の含有量等を調整する方法が挙げられる。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂組成物に含まれる重合体(B)の含有量を増やしたり、共重合体(A)に含まれるアクリル系単量体単位の割合を多くしたりすることにより、対数lnkの値を小さくすることができる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物を少なくとも2種類の重合体〔すなわち、共重合体(A)と重合体(B)〕から構成することにより、所定の組成/構成からなる共重合体(A)に対して、重合体(B)の配合量を調整することで熱可塑性樹脂組成物に含まれる芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位の割合を容易に制御することができ、これにより、熱可塑性樹脂組成物の反応速度定数k(s−1)の対数lnkの値を容易に制御することが可能となる。重合体(B)をいわば希釈剤として用いることにより、同じ共重合体(A)を用いて多様な熱可塑性樹脂組成物を容易に得ることができるため、生産性、工業的な観点からも有利である。
例えば、本発明の好適な一実施態様において、熱可塑性樹脂組成物における芳香族ビニル単量体単位と環状酸無水物単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物を基準に合計で、好ましくは15〜35質量%であり、より好ましくは20〜30質量%である。熱可可塑性樹脂組成物における芳香族ビニル単量体単位と環状酸無水物単量体単位の含有量が熱可塑性樹脂組成物を基準に35質量%以下であると、より着色し難くなり好ましく、15質量%以上であると耐熱性の点で好ましい。
また、熱可塑性樹脂組成物における芳香族ビニル単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量を基準に、5〜30質量%であることが好ましく、7〜25質量%であることがより好ましく、10〜25質量%であることがさらに好ましい。さらに、熱可塑性樹脂組成物における環状酸無水物単量体単位の含有量は、熱可塑性樹脂組成物の総質量を基準に、3〜30質量%であることが好ましく、4〜25質量%であることがより好ましく、5〜20質量%であることがさらに好ましい。熱可塑性樹脂組成物における芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位の含有量がそれぞれ上記範囲内にあると、熱可塑性樹脂組成物の安定性が向上し、耐熱分解性も高くなるため、例えば230℃を超えるような高温条件下で当該熱可塑性樹脂組成物を溶融混練した場合であっても、成形して得られる樹脂フィルムの着色を抑えることができ、外観および光学特性において優れた樹脂フィルムを得ることができる。
また、高い安定性および耐熱分解性を有し、着色のない外観および光学特性に優れた樹脂フィルムを形成し得る本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るためには、熱可塑性樹脂組成物中の芳香族ビニル単量体単位および環状酸無水物単量体単位の含有量を制御することに加えて、熱可塑性樹脂組成物に含まれる金属元素の含有量をできる限り低く抑えることも有用である。すなわち、熱可塑性樹脂組成物中の金属元素の含有量を低くすることにより、熱可塑性樹脂組成物の反応速度定数k(s−1)の対数lnkの値を下げることができる。
金属元素としては、特にアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素が挙げられる。
アルカリ金属元素としては、例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、セシウム(Cs)、およびフランシウム(Fr)が挙げられ、特にナトリウム(Na)およびカリウム(K)である。熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアルカリ金属元素の濃度は、好ましくは18ppm以下、より好ましくは15ppm以下、さらに好ましくは10ppm以下である。熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアルカリ金属元素の濃度が上記上限値以下であると、得られる熱可塑性樹脂組成物は耐熱性に優れるため、着色のない外観および光学特性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。なお、熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアルカリ金属元素の濃度は、理想的には0(ゼロ)ppmであり、通常は1ppm以上である。
アルカリ土類金属元素としては、例えばベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、およびラジウム(Ra)が挙げられ、特にマグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)である。熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアルカリ土類金属元素の濃度は、好ましくは500ppm以下、より好ましくは300ppm以下、さらに好ましくは150ppm以下である。熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアルカリ土類金属元素の濃度が上記上限値以下であると、着色のない外観および光学特性に優れた樹脂フィルムを得ることができる。なお、熱可塑性樹脂組成物中に含まれるアルカリ土類金属元素の濃度は、理想的には0(ゼロ)ppmであり、通常は1ppm以上である。
熱可塑性樹脂組成物中のアルカリ金属元素およびアルカリ土類金属元素等の金属元素の含有量を低減する方法としては、例えば熱可塑性樹脂組成物を構成する成分の洗浄工程を増やすことや、金属成分を含まない原材料(例えば乳化剤や重合開始剤)を選択的に使用することで可能となる。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、安定性が高く、耐熱分解性に優れるため、例えば光学フィルムなどの樹脂フィルムの材料として好適に用いることができる。特に、本発明の熱可塑性樹脂組成物から構成される樹脂フィルムは、着色のない良好な外観を有しており、これを偏光子保護フィルムとして用いた場合には、高い視認性を発揮することができる。また、剥離フィルムとしても用いることができ、偏光子の片面または両面に本発明の樹脂フィルムを剥離可能に積層した剥離フィルム付偏光子は、偏光子の色相、透過率等の検査が容易となる。
〔樹脂フィルム〕
本発明の樹脂フィルムは、本発明の熱可塑性樹脂組成物から構成されるフィルムである。本発明の樹脂フィルムは、共重合体(A)および必要に応じて重合体(B)やゴム弾性体粒子を混合して熱可塑性樹脂組成物を得た後、例えば図1に示すように溶融押出成形法により製造することができる。具体的には、熱可塑性樹脂組成物を下記の溶融温度および/または滞留時間で溶融混練し、フィルム状に成形することにより、製造することができる。また、熱可塑性樹脂組成物を、溶液流延成膜法や熱プレス法等によりフィルム化する方法により、樹脂フィルムを製造することもできる。なかでも、樹脂フィルムの膜厚均一性、製造コストおよび環境への配慮の観点から、溶融押出成形法により、熱可塑性樹脂組成物を下記の溶融温度で溶融混練し、フィルム状に成形することにより、樹脂フィルムを製造することが好ましい。
以下、溶融押出成形法により本発明の樹脂フィルムを製造する方法について、図1を参照してさらに説明する。
まず共重合体(A)、ならびに必要に応じて重合体(B)およびゴム弾性体粒子や他の成分を加え、熱可塑性樹脂組成物を得る。次いで、得られた熱可塑性樹脂組成物を下記溶融温度において、一軸もしくは二軸押出機等の押出機(1)により溶融混練し、そして、Tダイ等のダイ(2)から連続的に溶融樹脂をフィルム状に押出す。さらに、押出されたフィルム状の溶融樹脂(3)を、冷却ユニット(4)における一対の表面が平滑な冷却ロール(第1冷却ロール(5)および第2冷却ロール(6))の間に挟み込んで、必要に応じてさらに第3冷却ロール(7)に巻き掛けて、成形・冷却することにより、未延伸状態で長尺状の樹脂フィルムAを製造することができる。共重合体(A)、重合体(B)およびゴム弾性体粒子や他の成分の混合の方法は特に限定されず、公知の方法により混合すればよく、スーパーミキサーやバンバリーミキサーを用いてもよいし、一軸もしくは二軸押出機で溶融混練してもよいし、これらを組み合わせて行ってもよい。また、第1冷却ロール、第2冷却ロールおよび第3冷却ロールは、金属ロールまたは金属弾性ロールで構成してもよく、金属ロールと金属弾性ロールとを組み合わせて構成してもよい。
熱可塑性樹脂組成物中の各成分の溶融温度は、好ましくは230℃以上280℃以下、より好ましくは235℃以上270℃以下、さらに好ましくは240℃以上260℃以下である。本発明においては、溶融温度が上記範囲内であっても、熱可塑性樹脂組成物が十分溶融され、良好な加工性を確保しながら、着色のない外観の良好な樹脂フィルムを得ることができる。
熱可塑性樹脂組成物を溶融混練する際の滞留時間、すなわち、熱可塑性樹脂組成物が押出機を通りTダイから出るまでの滞留時間は、好ましくは20分以上であり、より好ましくは25分以上であり、さらに好ましくは30分以上であり、また、好ましくは60分以下であり、より好ましくは45分以下である。本発明においては、熱可塑性樹脂組成物の滞留時間が上記範囲内であっても、熱可塑性樹脂組成物が十分溶融され、良好な加工性を確保しながら、着色のない外観の良好な樹脂フィルムを得ることができる。なお、押出機とTダイとの間にポリマーフィルターを配置させてもよく、かかる場合においても、同様の滞留時間とすることが好ましい。
本発明の樹脂フィルムの厚さは、好ましくは10μm〜1000μmであり、より好ましくは20μm〜500μmであり、さらに好ましくは20μm〜300μmである。
本発明の樹脂フィルムは、フィルムの厚さ40μmに換算した波長260nmでの光線透過率が、好ましくは2%以下であり、フィルムの厚さ40μmに換算した波長380nmでの光線透過率が、好ましくは5%以下である。波長260nmおよび380nmでの光線透過率が上記上限値以下であると、本発明の樹脂フィルムを偏光子保護フィルムとして用いた場合、液晶セルの性能低下を防ぐことができる。
本発明の樹脂フィルムは、単層構成のフィルムであることが好ましいが、本発明の効果を損なわない限りにおいて、2層以上の多層構成のフィルムであってもよい。樹脂フィルムが多層構成のフィルムである場合、各層は同じ組成の熱可塑性樹脂組成物から形成されていてもよいし、異なる組成の熱可塑性樹脂組成物から形成されていてもよい。異なる組成の熱可塑性樹脂組成物とは、含有する樹脂の種類が異なるもの、樹脂の種類は同じであるが各樹脂の含有量が異なるもの、樹脂の種類や含有量は同じであるが、その他の成分が異なるものなど、いずれの場合をも含む。
本発明の樹脂フィルムは、表面処理を施されてもよく、表面処理としては、ハードコート処理、防眩処理および防汚処理が挙げられる。
〔偏光子保護フィルム〕
本発明の樹脂フィルムは偏光子保護フィルムとして好適である。すなわち、本発明の別の実施態様においては、本発明の樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルム(以下、「本発明の偏光子保護フィルム」ともいう)が提供される。なお、偏光子保護フィルムは、偏光子の一方または両方の面に積層して偏光子を保護するために用いられるフィルムである。
〔偏光板〕
本発明の別の実施態様において、偏光子の少なくとも一方の面に、上記偏光子保護フィルムが配置された偏光板(以下、「本発明の偏光板」ともいう)が提供される。偏光子保護フィルムと偏光子とは粘着剤層または接着剤層を介して貼合されていることが好ましい。
偏光子とは、自然光などの入射光に対して、偏光を出射する機能を持つ光学フィルムである。偏光子には、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を吸収し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する直線偏光子、フィルム面に入射するある方向の振動面を有する直線偏光を反射し、それと直交する振動面を有する直線偏光を透過する性質を有する偏光分離子、偏光フィルムと位相差フィルムを積層した楕円偏光子などがある。偏光子、特に直線偏光子(偏光フィルムともいう)の好適な具体例として、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料などの二色性色素が吸着配向されているものが挙げられる。偏光子の厚みは、通常5μm〜40μmである。
偏光子の一方の面に偏光子保護フィルムを配置する場合、他方の面には、透明樹脂フィルムを配置してもよい。透明樹脂フィルムと偏光子とは貼合されていることが好ましい。透明樹脂フィルムとしては、トリアセチルセルロースフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、アクリル樹脂フィルム、アクリル樹脂とポリカーボネート系樹脂との積層フィルムおよびオレフィン系樹脂フィルムが挙げられる。
本発明の偏光子保護フィルムと偏光子とは粘着剤層または接着剤層を介して貼合されていることが好ましい。貼合に先立って、貼合面のうち、少なくとも一方には、コロナ放電処理、プラズマ照射処理、電子線照射処理またはその他の表面活性化処理を施しておくことが好ましい。本発明の偏光子保護フィルムは、アクリル酸エステル単量体単位を含み、芳香族ビニル単量体単位を含まない樹脂からなる偏光子保護フィルムと比較して、接着剤により偏光子と貼合したときに接着強度に優れる。
粘着剤層を構成する粘着剤としては、従来公知の粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系などのベースポリマーを有する粘着剤を用いることができる。また、活性エネルギー線硬化型粘着剤、熱硬化型粘着剤などであってもよい。これらの中でも、透明性、粘着力、リワーク性、耐候性、耐熱性などに優れるアクリル樹脂をベースポリマーとした粘着剤が好適である。
アクリル系粘着剤としては、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系ベースポリマーや、これらの(メタ)アクリル酸エステルなどを2種類以上含む共重合系ベースポリマーが好適に用いられる。さらに、これらのベースポリマー中に極性モノマーが共重合されている。極性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリルアミド、2−N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の、カルボキシル基、水酸基、アミド基、アミノ基、エポキシ基などを有するモノマーを挙げることができる。
これらのアクリル系粘着剤は、単独で使用することもできるが、通常、架橋剤と併用される。架橋剤としては、2価または多価金属イオンであって、カルボキシル基との間でカルボン酸金属塩を形成するもの、ポリアミン化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するもの、ポリエポキシ化合物やポリオール化合物であって、カルボキシル基との間でエステル結合を形成するもの、ポリイソシアネート化合物であって、カルボキシル基との間でアミド結合を形成するものなどが例示される。中でも、ポリイソシアネート化合物が広く使用されている。
活性エネルギー線硬化型粘着剤とは、紫外線や電子線などの活性エネルギー線の照射を受けて硬化する性質を有しており、活性エネルギー線照射前においても粘着性を有してフィルムなどの被着体に密着し、活性エネルギー線の照射により硬化して密着力を調整することができる性質を有する粘着剤である。活性エネルギー線硬化型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。活性エネルギー線硬化型粘着剤は、一般にはアクリル系粘着剤と、活性エネルギー線重合性化合物とを主成分としてなる。通常はさらに架橋剤が配合されており、また必要に応じて、光重合開始剤や光増感剤などを配合することもできる。
粘着剤層は、上記のベースポリマーおよび架橋剤のほか、必要に応じて、粘着剤の粘着力、凝集力、粘性、弾性率、ガラス転移温度などを調整するために、例えば天然物や合成物である樹脂類、粘着性付与樹脂、シラン系化合物、酸化防止剤、耐電防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、消泡剤、腐食剤、光重合開始剤、熱重合開始剤などの添加剤を含んでいてもよい。さらに、微粒子を含有させて光散乱性を示す粘着剤層とすることもできる。紫外線吸収剤には、サリチル酸エステル系化合物やベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などがある。
好適な一態様において、本発明の偏光板は、粘着剤層を介して偏光子とアクリル系樹脂フィルムが貼合されていてもよい。
接着剤層を構成する接着剤は、それぞれの部材に対して接着力を発現するものから、任意に選択して用いることができる。典型的には、水系接着剤、すなわち、接着剤成分を水に溶解または接着剤成分を水に分散させたものや、活性エネルギー線の照射により硬化する成分を含む活性エネルギー線硬化性接着剤を挙げることができる。中でも、生産性の観点から、活性エネルギー線硬化性接着剤が好ましい。
水系接着剤としては、主成分としてポリビニルアルコール系樹脂やウレタン樹脂を用いた組成物が好ましい。水系接着剤の主成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、ポリビニルアルコール系樹脂としては、部分ケン化ポリビニルアルコールや完全ケン化ポリビニルアルコールのほか、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、メチロール基変性ポリビニルアルコール、アミノ基変性ポリビニルアルコールのような、変性されたポリビニルアルコール系樹脂などが挙げられる。接着剤成分としてポリビニルアルコール系樹脂を用いる場合、その接着剤は、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液として調製されることが多い。接着剤水溶液におけるポリビニルアルコール系樹脂の濃度は、水100質量部に対して、1〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
ポリビニルアルコール系樹脂を主成分とする水系接着剤には、接着性を向上させるために、グリオキザールや水溶性エポキシ樹脂などの硬化性成分または架橋剤を添加することが好ましい。水溶性エポキシ樹脂としては、例えば、ジエチレントリアミンやトリエチレンテトラミンのようなポリアルキレンポリアミンとアジピン酸のようなジカルボン酸との反応で得られるポリアミドポリアミンに、エピクロロヒドリンを反応させて得られるポリアミドポリアミンエポキシ樹脂などが挙げられる。ポリアミドポリアミンエポキシ樹脂としては、市販品を使用してもよく、例えば、田岡化学株式会社製の「スミレーズレジン650」および「スミレーズレジン675」、星光PMC株式会社製の「WS−525」などが挙げられる。これら硬化性成分または架橋剤の添加量は、ポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは1〜50質量部である。その添加量が少ないと、接着性向上効果が小さくなり、一方でその添加量が多いと、接着剤層が脆くなることがある。
水系接着剤の主成分としてウレタン樹脂を用いる場合は、適当な接着剤組成物の例として、ポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂とグリシジルオキシ基を有する化合物との混合物が挙げられる。ここでいうポリエステル系アイオノマー型ウレタン樹脂は、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂であって、その中に少量のイオン性成分(親水成分)が導入されたものである。アイオノマー型ウレタン樹脂は、乳化剤を使用せずに直接、水中で乳化してエマルジョンとなるため、水系の接着剤として好ましい。
活性エネルギー線硬化性接着剤を用いる場合、それを構成する活性エネルギー線の照射により硬化する成分(以下、単に「硬化性成分」ということがある)としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、アクリル系化合物などが挙げられる。エポキシ化合物やオキセタン化合物のようなカチオン重合性の化合物を用いる場合には、カチオン重合開始剤が配合される。また、アクリル系化合物のようなラジカル重合性化合物を用いる場合にはラジカル重合開始剤が配合される。中でも、エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接着剤が好ましく、飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物を硬化性成分の一つとする接着剤がより好ましい。また、それにオキセタン化合物を併用してもよい。
エポキシ化合物としては、市販品を使用してもよく例えば、三菱化学株式会社製の「エピコート」シリーズ、DIC株式会社製の「エピクロン」シリーズ、新日鉄住金株式会社製の「エポトート」シリーズ、株式会社ADEKA製の「アデカレジン」シリーズ、ナガセケムテックス株式会社製の「デナコール」シリーズ、ダウ・ケミカル社製の「ダウエポキシ」シリーズ、日産化学工業株式会社製の「テピック」などが挙げられる。
飽和炭素環に直接エポキシ基が結合している脂環式エポキシ化合物としては、市販品を使用してもよく、例えば、ダイセル化学工業株式会社製の「セロキサイド」シリーズおよび「サイクロマー」シリーズ、ダウ・ケミカル社製の「サイラキュア」シリーズなどが挙げられる。
オキセタン化合物としては、市販品を使用してもよく、例えば、東亞合成株式会社製の「アロンオキセタン」シリーズ、宇部興産株式会社製の「ETERNACOLL」シリーズなどが挙げられる。
カチオン重合開始剤としては、市販品を使用してもよく、例えば、日本化薬株式会社製の「カヤキュア」シリーズ、ダウ・ケミカル社製の「サイラキュア」シリーズ、サンアプロ株式会社製の光酸発生剤である「CPI」シリーズ、ミドリ化学株式会社製の光酸発生剤である「TAZ」、「BBI」および「DTS」、株式会社ADEKA製の「アデカオプトマー」シリーズ、ローディア社製の「RHODORSIL」シリーズなどが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤は、必要に応じて光増感剤を含有することができる。光増感剤を用いることで、反応性が向上し、硬化物層の機械強度や接着強度をさらに向上させることができる。光増感剤としては、例えば、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、アントラセン系化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられる。
活性エネルギー線硬化性接着剤には、その接着性を損なわない範囲で各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、イオントラップ剤、酸化防止剤、連鎖移動剤、粘着付与剤、熱可塑性樹脂、充填剤、流動調整剤、可塑剤、消泡剤などが挙げられる。さらに、その接着性を損なわない範囲で、カチオン重合とは別の反応機構で硬化する硬化性成分を配合することもできる。
好適な一態様において、本発明の偏光板は、接着剤層を介して偏光子とアクリル系樹脂フィルムが貼合されていてもよい。
本発明において、粘着剤または接着剤を、偏光子および/または本発明の偏光子保護フィルムに塗布して塗膜を形成し、形成された塗膜を介して偏光子と本発明の偏光子保護フィルムとを重ね合わせて、活性エネルギー線を照射することにより、または乾燥させることにより粘着剤または接着剤を硬化して偏光子と本発明の偏光子保護フィルムとを接着し、本発明の偏光板を得ることができる。
偏光子および/または本発明の偏光子保護フィルムへの粘着剤または接着剤の塗布は、公知の方法で行うことができ、例えば、流延法、マイヤーバーコート法、グラビアコート法、カンマコーター法、ドクターブレード法、ダイコート法、ディップコート法、噴霧法等を用いることができる。
活性エネルギー線としては、例えば、X線、紫外線、可視光線などが挙げられる。中でも、利用の容易さ、ならびに活性エネルギー線硬化性接着剤の調製の容易さ、安定性および硬化性能の観点から、紫外線が好ましい。紫外線の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ケミカルランプ、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプなどが挙げられる。また、活性エネルギー線の光照射強度や照射量は、用いる活性エネルギー線硬化型粘着剤および接着剤の組成によって適宜決定すればよい。
乾燥処理は、例えば熱風を吹き付けることにより行なわれ、その温度は、通常40〜100℃の範囲内であり、好ましくは60〜100℃の範囲内である。また、乾燥時間は通常、20〜1200秒程度である。
粘着剤層の厚みは、通常1〜50μmであり、好ましくは5〜30μmである。また、接着剤層の厚みは、通常0.01〜10μmであり、好ましくは0.01〜5μmである。粘着剤層および接着剤層の厚みは、偏光子または本発明の偏光子保護フィルムに形成される塗膜の厚みにより調整することができる。
本発明の偏光板は、液晶セルや有機EL素子等の表示素子と組み合わせて画像表示装置に用いることができる。例えば、液晶セルに貼り合わせて、液晶表示装置に用いられる液晶パネルとすることができる。偏光板と液晶セルとは、粘着剤を用い、粘着剤層を介して貼合されることが好ましい。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、偏光子と本発明の偏光子保護フィルムとを接着させるために用い得る粘着剤として先に例示したものと同様のものが挙げられる。本発明の偏光板は、画像表示装置等に組み込んだ場合、樹脂フィルムの良好な外観に起因して高い視認性を発揮することができる。
〔剥離フィルム付偏光子〕
本発明の樹脂フィルムは、剥離フィルムとしても好適である。すなわち、本発明の別の一実施態様においては、本発明の樹脂フィルムから構成される剥離フィルムが積層された剥離フィルム付偏光子(以下、「本発明の剥離フィルム付偏光子」ともいう)が提供される。
本発明の剥離フィルム付偏光子は、偏光子の少なくとも一方の面に、本発明の樹脂フィルムから構成される剥離フィルムが隔離可能に積層されてなる。本発明において、剥離フィルムは、本発明の樹脂組成物と剥離層から構成されることが好ましい。剥離層は、例えば剥離層形成用組成物から形成することができる。剥離層形成用組成物を構成する主な成分(樹脂)としては、特に限定されるもではなく、当該分野において一般的に用いられる公知の成分から構成すればよい。
本発明の樹脂フィルムから構成される剥離フィルムは、例えば本発明の樹脂フィルムの一面に、溶剤に希釈した剥離層形成用組成物を、例えば、グラビアコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法、エアーナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ゲートロールコート法、およびダイコート法などの方法で塗布することにより作製することができる。剥離層形成用組成物の加熱・乾燥方法としては、例えば、熱風乾燥炉などで熱乾燥する方法などが挙げられる。乾燥温度は、例えば、50℃以上150℃以下である。また、乾燥時間は、例えば、10秒間〜5分間である。
本発明において、剥離フィルムの厚みは、好ましくは10〜100μmであり、より好ましくは20〜80μmである。なお、剥離フィルムの厚みは、樹脂フィルムの厚みと剥離層の厚みにより制御することができる。
本発明の剥離フィルム付偏光子に用いる偏光子としては、上述した偏光板におけるものと同様の構成が挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
実施例および比較例で使用した押出装置は、図1に示す装置であり、その構成は、以下のとおりである。
・押出機:スクリュー径65mm、一軸、ベント付きの押出機〔東芝機械(株)製〕
・Tダイ:幅800mm、リップ間隔1mmのマルチマニホールド型ダイ〔日立造船(株)製〕
・第1冷却ロール:金属弾性ロール
・第2冷却ロール:金属ロール
・第3冷却ロール:金属ロール
金属弾性ロールは、ステンレス鋼からなる軸ロールの外周部を覆うように、片面が鏡面化された厚さ2mmのステンレス鋼製薄膜を鏡面仕上げ面がロール外面になる様に配置し、軸ロールと金属性薄膜との間に熱媒油からなる流体を封入した、外径が250mmである金属弾性ロールである。金属ロールは、表面を鏡面仕上げしたステンレス鋼からなり、外径250mmであるスパイラルロールである。
[熱可塑性樹脂組成物]
実施例1〜実施例4および比較例1において使用した共重合体(A)(重合体A−1〜A−4)の単量体単位組成およびその一般物性を表1に示す。また、重合体(B)(重合体B−1およびB−2)の単量体単位組成およびその一般物性を表2に示す。
各々の重合体の重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)測定により求めた(ポリメタクリル酸メチル換算)。
また、各重合体のMFR(測定温度230℃、荷重37.3N)は、JIS K7210に従い測定した。なお、使用した共重合体(A)および重合体(B)は、全て無色で透明なペレット状であった。
実施例1〜実施例4および比較例1で使用したゴム弾性体粒子は、すべてコア−シェル型のブタジエンゴムを使用した。使用したゴム弾性体粒子は、全て白色(無着色)の粉末状であった。ゴム弾性体粒子(ゴム1および2)の特性を表3に示す。
なお、1%重量減少温度(℃)およびCa2+イオン含有量は、以下の方法に従い測定した。
〔1%重量減少温度の測定〕
ゴム1およびゴム2を約5mg、それぞれアルミニウム製のパンに入れ、試料重量を秤量し、示差熱熱重量同時測定装置SII TG/DTA6200(日立ハイテクサイエンス社)を用いて、以下の条件で重量測定を行った。
パン:アルミニウム製のφ5 円筒形の試料カップ(セイコーインスツル株式会社SSC00E030)
サンプル量:約5mg
測定温度:室温(23℃)〜400℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N2 200mL/分
〔Ca2+イオン含有量の測定〕
灰化/酸溶解/ICE AES法により測定した。
表4に示す組成(それぞれ、質量%)に従い、共重合体(A)、重合体(B)およびゴム弾性体粒子を押出機に投入し、230℃、平均滞留時間10分で溶融混練して、熱可塑性樹脂組成物の樹脂ペレットを得た。
[樹脂フィルムの作製]
押出機、Tダイおよび第1〜第3冷却ロールを、図1に示すように配置した。次いで、得られた熱可塑性樹脂組成物の樹脂ペレットを押出機にて245℃で溶融混練し、それぞれを設定温度245℃のTダイに供給した。Tダイから押し出したフィルム状の溶融樹脂を、対向配置した第1冷却ロールと第2冷却ロールとの間に挟み込み、第3冷却ロールに巻き掛けて成形・冷却し、厚み60μmの樹脂フィルムを得た。押出機からTダイを出るまでの滞留時間は、30分であった。なお、第1冷却ロールの表面温度は80℃、第2冷却ロールの表面温度80℃、第3冷却ロールの表面温度は100℃であった。これらの温度は、各冷却ロールの表面温度を実測した値である。
[反応速度定数kの算出]
実施例1〜4および比較例1の各樹脂フィルムを切り刻んだ試料(約5mg)を、それぞれアルミニウム製のパンに入れ、試料重量を秤量し、示差熱熱重量同時測定装置SII TG/DTA6200(日立ハイテクサイエンス社)を用いて、以下の条件で重量測定を行った。
パン:アルミニウム製のφ5 円筒形の試料カップ(セイコーインスツル株式会社SSC00E030)
サンプル量:約5mg
測定温度:室温(23℃)〜500℃
昇温速度:10℃/分
雰囲気:N2 200mL/分
測定時間[s]に対して重量をプロットし、TG曲線を作成し、その時間微分値DTGから反応速度定数k(s−1)を求めて、その対数値をlnkとし、温度が300℃の時に対応するlnkをlnk(300℃)とした。
[初期サンプルの作製]
実施例1〜実施例4および比較例1の樹脂ペレットを、プレス機を用いて200℃の条件下、2分間でペレットを溶融させ、その後、温度を200℃に維持したまま2MPaの圧力で3分間プレスし、さらに15MPaで2分間プレスすることにより1mmtのプレス板を作製した。得られた初期サンプルの単体b*を、日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光光度計を用いて、JIS Z8781−4に従って測定した。初期サンプルの単体b*を単体b*0として、表5に示す。
[耐久サンプル作製]
次いで、単体b*を測定後の前記初期サンプルを1cm角にカットし、プレス機を用いて1対の金型間で260℃の条件下、樹脂を溶融状態とし、引き続き2MPaの圧力下、260℃で1時間プレスすることにより1mmtのプレス板を作製した。上記初期サンプルと同様に、得られた耐久サンプルの単体b*を、日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光光度計を用いて、JIS Z8781−4に従って測定した。耐久サンプルの単体b*を単体b*1として、表5に示す。
[光学評価]
260℃、1時間の耐久試験による単体b*の変化量(Δb*)を、下記式に従い算出し、評価した。
単体Δb*=単体b*1−単体b*0
300℃における反応速度定数k(s−1)の対数lnkが0.05以下である実施例1〜4の熱可塑性樹脂組成物では、260℃、1時間のプレス条件下においても色味変化が少なかった。一方、300℃における反応速度定数k(s−1)の対数lnkが0.05を超えた比較例1の熱可塑性樹脂組成物では、260℃、1時間のプレスにより着色が生じた。