(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係るインクジェット記録装置について説明する。
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置(記録装置)を示す模式図である。図1(a)は記録装置の斜視図を示す図であり、図1(b)は記録装置の断面図を示す図である。
記録装置1は、記録媒体を給送する給送部、記録媒体(シート)を搬送する搬送部、記録媒体に画像を記録する記録部、画像が記録された記録媒体を排出する排出部、記録部の記録性能を回復する回復部を備える。
給送部は、複数枚の記録媒体を積載する給送トレイと、給送トレイに積載された記録媒体を1枚ずつ記録装置内部に給送する給送ローラとを有する。
搬送部は、給送部から給送された記録媒体を搬送する搬送ローラ400と、搬送ローラ400と共に記録媒体を挟持するピンチローラ401とを有する。
記録部は、インクを吐出可能な吐出口が設けられた吐出口面102が形成された記録ヘッド101と、記録ヘッド101を着脱自在に搭載するキャリッジ100とを有する。キャリッジ100は、キャリッジモータ110の駆動により、シャーシ111に取り付けられたタイミングベルト112を介して、ガイドシャフト113に沿ってX方向(キャリッジの移動方向)に往復移動可能に構成されている。記録ヘッド101と対向する位置には、記録媒体を下方より支持するプラテン300が設けられている。プラテン300には、記録媒体外に吐出されたインクを吸収するプラテン吸収体(インク吸収体)301が設けられている。
排出部は、画像が記録された記録媒体を装置外へ排出する排出ローラ402と、排出ローラと対向する位置に配され記録媒体を押さえる拍車ローラ403とを有する。
回復部は、キャリッジ100の移動方向における記録領域外において、記録ヘッド101の吐出口面102を覆うことができるキャップ500を有する。また回復部は、キャップ500が記録ヘッド101の吐出口面102を覆った状態においてチューブを介してキャップ500と接続された吸引ポンプ503を駆動することによって記録ヘッド101からインクを吸引する吸引機構を有する。また回復部は、記録ヘッドの吐出口面を拭払するワイパ506を有する。
給送部から給送されてきた記録媒体Pは、Y方向における記録ヘッド101の上流側において搬送ローラ400とピンチローラ401とで構成される第1搬送ローラ対によって挟持して搬送される。また、記録媒体Pは、Y方向における記録ヘッド101の下流側において排出ローラ402と拍車ローラ403とで構成される第2搬送ローラ対によっても挟持して搬送される。このように記録媒体Pは、下方をプラテン300により支持されながら、記録ヘッド101と対向する位置において、第1搬送ローラ対と第2搬送ローラ対とによって所定の張力が与えられた状態で搬送される。
記録ヘッド101は、搬送が停止している記録媒体Pに対して、キャリッジ100がX方向に移動している間にインク滴を吐出することによって、記録媒体Pに1バンド分(1改行分)の画像を形成する。記録媒体Pに1バンド分の画像が形成されると、記録媒体Pは、不図示の搬送モータにより搬送ローラ400が駆動されることによって、Y方向へ所定量搬送される。このように、キャリッジ100がX方向に移動している間の記録ヘッド101によるインク滴の吐出と、搬送ローラ400による記録媒体Pの所定量ずつの搬送(間欠搬送)とが交互に繰り返されることにより、記録媒体P全体に1ページ分の画像が形成される。
次に本実施形態に係る記録装置の記録部について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る記録部の構成を示す斜視図である。キャリッジ100には、記録ヘッド101が着脱自在に搭載される。さらに、記録ヘッド101に対して9種類のインクタンク(インクカートリッジ)103が着脱自在に装着される。本実施形態に係る記録装置は9種類のインクによって画像を記録するものであり、記録ヘッド101に対して各々独立した9個のインクタンク103が装着される。本実施形態では、これら9種類のインクタンクは、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、レッド、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレイ、クリアの9種類の顔料インクを内部に収容(貯留)している。
また、キャリッジ100には、光を発する発光部(発光素子)201と、発光部より発光され正反射した光を受光する受光部(受光素子)202とを有する検出センサ(検出部、検知センサ)200が設けられている。検出センサ200は、キャリッジ100の移動方向における所定位置の検査対象に対して発光部201より所定角度をもって光を発し、受光部202によりその検査対象からの正反射光を受光する。検出センサ200の詳細については後述する。
次に本実施形態に係る記録装置の制御部の構成について詳細に説明する。図3は、本実施形態に係る制御構成を示すブロック図である。図3において、CPU1000はメインバスライン1013を介して装置各部の制御およびデータ処理を実行する。CPU1000は、ROM1001に格納されているプログラムに従い、データ処理、記録ヘッド駆動およびキャリッジ駆動の制御、記録動作、及び予備吐出を含むメンテナンス動作等を実行する。
CPU1000は、インターフェース1004を介してホスト装置との通信処理が可能である。RAM1002は、CPU1000によるデータ処理等のワークエリアとして用いられる。RAM1002は、記録動作に用いる記録データ、記録装置の回復動作、及びインク供給動作に係るパラメータ等を一時的に保存する。画像入力部1003は、インターフェース1004を介してホスト装置から入力された画像を一時的に保持する。
また、CPU1000は、回復部による吸引動作等によるインクの消費量をカウントし廃インクを収容する廃インク収容部(廃インクパック、メンテナンスカートリッジ)504に収容されている廃インク量を算出する。CPU1000は、インターフェース1004を介して廃インク収容部504が満杯(所定量以上)になった等の警告をホスト装置等に通知することができる。不揮発性メモリ1005は、廃インク収容部504に収容されているインク量や、プラテン吸収体301に吐出されたインク量、吐出時刻、インクの種類等に関する情報を記憶し保存する。不揮発性メモリ1005は、記録装置の電源がOFFにされても情報を保持することができる。
回復系制御回路1008は、RAM1002に格納された回復処理プログラムに従って回復系モータ1009の駆動を制御する。回復系制御回路1008は、回復系モータ1009の駆動を制御することによって、キャップ500の昇降動作、ワイパ506の拭払動作、吸引ポンプ503の吸引動作等の回復動作(クリーニング動作)を制御する。ヘッド駆動制御回路1010は、記録ヘッド101のインク吐出用の駆動を制御し、予備吐出や記録動作のためのインク吐出を記録ヘッド101に行わせる。キャリッジ駆動制御回路1011は、画像信号処理部1006で処理された記録データに従ってキャリッジ100の往復移動を制御し、また回復動作を行う際にキャリッジ100の回復部への移動を制御する。搬送制御回路1012は、RAM1002に格納されたプログラムに従って搬送モータの駆動を制御する。搬送制御回路1012は、記録ヘッド101による1バンド分の画像データの記録が終了した後、次の1バンド分の画像データを記録するために記録データに従って記録媒体を所定量搬送する制御を行う。
センサ制御部1007は、検出センサ200を制御する。センサ制御部1007は、検出センサ200に発光部201よりインク吸収体に対して光を発光させ、その正反射光を受光部202により受光させ、その正反射光の強度(光量)を電圧値として出力する。またセンサ制御部1007は、温湿度センサ322を制御する。センサ制御部1007は、温湿度センサ322により、記録装置が設置された環境の温度・湿度に関する情報を取得する。時刻計測部325は、タイマーにより現在時刻を計測する。時刻計測部325は、電池により電力が供給される電池式であるため、ハード電源がOFFになっても個別駆動されて時刻を計測することができる。
図4は、本実施形態において縁なし記録を行う際の記録媒体とプラテン吸収体の関係を示す模式図である。プラテン300は、搬送される記録媒体Pを下方より支持するために、キャリッジ100の移動方向に延在して設けられている。記録ヘッド101は、縁なし記録を行う際、記録媒体Pの端部を超えた位置(記録媒体外)に対してもインクを吐出する。また、記録ヘッド101は、内部の増粘インクを排出するために、記録媒体外に対して記録に寄与しないインクを吐出する予備吐出(予備吐出動作)を行う。プラテン300には、記録媒体外に対してはみ出して吐出されたインクを収容するプラテン吸収体301が設けられている。プラテン吸収体301に収容されたインクは、その後、プラテン300の下方より排出され、記録装置本体の下部に設けられた廃インク収容部504に排出(回収)されるように構成されている。なお、本実施形態において縁なし記録を行う際は、記録媒体の大きさよりも3mm程外側にはみ出した領域まで、記録ヘッド101によりインクが吐出される。
プラテン吸収体に固着し易いインクが所定量以上吐出されると、プラテン吸収体上においてインクが固着し堆積してしまうおそれがある。本実施形態では、9種類の顔料インクのうち、マゼンタインク、シアンインク、イエローインク、ブラックインク、レッドインクのような色が濃いインクは、固形成分を多く含み、固着し易くインク吸収体に吸収され難い。これらのインクをインク吸収体に堆積しやすい「堆積インク」(第1のインク)と分類する。一方、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、グレイインク、クリアインクのようなインクは、固形成分が少なく、固着し難くインク吸収体に吸収され易い。これらのインクは、堆積インクの吸収を促進する作用もあることから、インク吸収体への堆積を抑制する「堆積抑制インク」(第2のインク)と分類する。なお、ここでは固形成分の量に応じて堆積インクと堆積抑制インクとに分類したが、インクに含まれる溶剤や保湿剤の量に応じて堆積インクと堆積抑制インクとを分類しても良い。堆積抑制インクが溶剤等を多く含む場合、堆積インクの粘性の上昇を抑えて、堆積インクをインク吸収体により吸収しやすくすることができる。よって、顔料インクにおいて溶剤・保湿剤を多く含むものを堆積抑制インクとして分類しても良い。
図5は、本実施形態において縁なし記録を行う際に記録媒体外へインクが吐出される領域を説明するための模式図である。本実施形態では、上述したように、縁なし記録を行う際には、記録媒体Pから先端部、後端部、右端部および左端部にそれぞれ3mmずつはみ出した領域に対してもインクを吐出する。図5では、このような領域を斜線で示し、それぞれ、先端部はみ出し領域、後端部はみ出し領域、右端部はみ出し領域、左端部はみ出し領域に分類している。右端部はみ出し領域および左端部はみ出し領域に対して吐出されたインクは、図4に示したプラテン吸収体301の右端部領域と左端部領域とにそれぞれ吸収される。また、先端部はみ出し領域および後端部はみ出し領域に吐出されたインクは、図4に示したプラテン吸収体301の先後端部領域に吸収される。
また記録ヘッド101は、記録動作の実行中にも、吐出口からのインクの吐出不良を防止するため、プラテンにおける記録媒体の外側の位置に予備吐出を行う。図6は、記録装置を記録部の上方から見たときの模式図である。図6において、301A,301Bは、記録動作の実行中に予備吐出が行われるプラテン吸収体301上の予備吐出位置を示す。記録動作の実行中の予備吐出位置301A,301Bは、上述した縁なし記録においてインクが吐出される記録媒体Pの右端部および左端部の外側の領域よりもさらに外側に位置する。記録ヘッド101は、記録動作中において、1バンド分の記録完了毎に、予備吐出位置301Aまたは301Bに対して、所定発数(所定量)のインクを吐出する予備吐出を行う。本実施形態では、記録動作の実行中には、各色各ノズルから各々16発ずつの予備吐出を行う。
次に本実施形態に係る記録装置の検出部(検出センサ)について詳細に説明する。図7は、本実施形態に係る検出センサを説明するための模式図である。検出センサ200は、キャリッジ100に設けられている。検出センサ200は、発光部201と受光部202とを有する。本実施形態では、発光部201は、光源であるLEDを有し、プラテン吸収体301に対して所定の入射角(角度θ0)で光を発する。受光部202は、プラテン吸収体301から反射した光を受光する。発行部201と受光部202は、入射角と反射角とがθ0でほぼ等しくなるような位置に配置されている。受光部202が有するフォトトランジスタは、プラテン吸収体301からの正反射光を多く伝達する。受光部202に受光された光の光量は、検出センサ200の内部で演算される。検出センサ200は、光量が多いほど高い電圧値として出力する。
図8は、本実施形態に係る検出センサの出力結果を説明するための図である。プラテン吸収体301上でインクの堆積が発生する際、まずプラテン吸収体301の内部でインクが固着し、徐々にプラテン吸収体301の表面が埋まってくる(堆積兆候)。この堆積兆候が現れた後、プラテン吸収体301がインクを吸収できなくなると、インクの堆積が始まる。図8(a)は、プラテン吸収体301上において、ある所定位置Eでインクの堆積(堆積兆候)が現れている様子を示す模式図であり、図8(b)は、図8(a)に対応した各位置での検出センサ200の出力結果を示すグラフである。グラフは、検出センサ200の受光部がプラテン吸収体301上の各位置からの正反射光を受光した際の検出センサ200の出力値である電圧値を示している。グラフでは、所定位置Eにおいて電圧値にピークが見られ、電圧値が閾値X(v)よりも大きな値になっている。これはインクの堆積(堆積兆候)が現れている位置では、インク吸収体の表面の凸凹が固着インクで埋まり、プラテン吸収体301の表面の滑らかさが変わって光沢度が上がり、周囲と比較して正反射光の強度が高くなるためである。このように、プラテン吸収体301上のインクの堆積(堆積兆候)は、正反射光の強度(光量)を検出することによって判別することができる。このように、検出センサによりプラテン吸収体の光沢度を測定することによって、プラテン吸収体上のインクの堆積を検知することができる。
次に、本実施形態において、検出センサを用いてインク吸収体におけるインクの堆積を検知する制御についてフローチャートを用いて説明する。図9は、本実施形態における堆積検知制御(検知動作)を示すフローチャートである。
まずステップS11において、キャリッジ100は縁なし記録によりインクが吐出されたプラテン吸収体上の位置または予備吐出位置(吸収体上の所定位置)へ移動する。そして、ステップS12では、検出センサ200による検出動作を行う。すなわち、プラテン吸収体301上の所定位置に対して、発光部201は所定角度θ0で光を発し、受光部202はその正反射光を受光する。ステップS13では、受光部202が受光した光量を電圧値に変換して出力し、その電圧値が閾値X(v)以上であるか否かを判断する。なお、このときの電圧値が閾値X(v)以上か否かの判断は、初期に検出した出力値と今回検出した出力値とを比較して両者の差分が閾値以上か否かを判断しても良い。また、予め測定し誤差評価されたプラテン吸収体の検出値と今回検出した出力値とを比較して判断しても良い。
ステップS13において、出力値(電圧値)が所定位置において閾値X(v)以上であると判断された場合、当該所定位置においてインクの堆積(堆積兆候)が見られると判断し、ステップS14へ進む。ステップS14では、インクの堆積を検知した旨を示す堆積検知フラグFLGを1に設定し(ONにセットし)、不揮発性メモリに記憶し、本フローを終了する。堆積検知フラグFLGは初期状態では0に設定(OFFにセット)されているため、ステップS13において、出力値(電圧値)が閾値X(v)以上であると判断されなかった場合は、堆積検知フラグFLGが0のまま、本フローを終了する。
なお本実施形態では、検出センサによる1回の検知結果に基づいてインクの堆積の有無を判断しているが、検知誤差を考慮して複数回の検知結果に基づいてインクの堆積の有無を判断しても良い。
次に、本実施形態におけるインクの堆積を抑制する制御(堆積抑制制御)について説明する。図10は、本実施形態における堆積抑制制御である後がけ制御(吐出制御)を示すフローチャートである。以降、後がけ制御で使用するインクを、後がけインクとも称する。本実施形態では、後がけインクとしてクリアインクを用いる。なお、後がけインクは堆積し難いインク(堆積抑制インク)であればよく、クリアインク以外にも、ライトシアン、ライトマゼンタ、グレイなどのインクを用いても良い。
図10において、ステップS21では、検出センサにより電圧値が閾値X(v)以上であると判断されたインク吸収体上の所定位置にキャリッジ100を移動させる。ステップS22では、当該所定位置で吐出する後がけインクの吐出量(後がけ量)X_afを取得する。後がけ量X_afの算出方法などの詳細については後述する。ステップS23では、当該所定位置に対して後がけ量X_af分の後がけインク(堆積抑制インク、ここではクリアインク)の吐出を行う。ここで、後がけインクの吐出は、キャリッジが移動しているときに行っても良いし、インクの堆積が検知された位置で停止して行っても良い。例えば、プラテン吸収体上の広い範囲に亘ってインクの堆積が検知された場合には、キャリッジの移動中に後がけインクを吐出し、狭い領域においてインクの堆積が検知された場合には、キャリッジの停止中に後がけインクを吐出するようにしても良い。後がけインクの吐出が終了すると、本フローは終了する。
次に、本実施形態において、記録動作の開始からインクの堆積検知、インクの堆積抑制を行うまでの一連の制御について説明する。図11は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。
ホスト装置より縁なし記録の指令(命令)を受けると、記録装置は記録動作を開始する。ステップS101では、記録媒体Pに1バンド分(1改行分)の画像を記録する。1バンド分の記録が終了すると、キャリッジは図6に示す予備吐出位置301Aまたは302Bへ移動し、記録ヘッド101による予備吐出を行う。そして、ステップS103では、インク吸収体上のインクが吐出された位置にキャリッジを移動し、検知センサによりインクの堆積を検知する、図9を用いて説明した堆積検知制御(検知動作)を実行する。ステップS104では、検知動作による検知結果の判断を行う。インク吸収体においてインクの堆積が検知されていた場合(堆積検知フラグ=1)は、ステップS105へ進む。ステップS105では、時刻計測部325により計測された、検知動作が行われたときの検知時刻T1を不揮発性メモリに記憶し(書き込み)、次のステップS106へ進む。ステップS104で、インク吸収体においてインクの堆積が検知されていなかった場合(堆積検知フラグFLG=0)は、そのままステップS106へ進む。
ステップS106では、記録動作が終了したか否かの判断を行う。記録動作が終了していない場合は、ステップS101へ戻り、次の1バンド分の記録を行う。ステップS106において記録動作が終了したと判断されるまで、ステップS101〜S106を繰り返す。記録動作が終了すると、次のステップS107へ進む。ステップS107では、堆積検知フラグFLGのチェックを行う。堆積検知フラグFLG=0である場合は、そのまま本フローを終了する。一方、堆積検知フラグFLG=1である場合は、次のステップS108へ進む。ステップS108では、時刻計測部325により計測された現在時刻T0を取得する。ステップS109では、不揮発性メモリに記憶された検知時刻T1を参照し、検知時刻T1と現在時刻T0との差分から、検知センサによる検知動作を行ってからの経過時間T=T1−T0を算出する。
ステップS110では、次の後がけ制御で吐出する後がけインクの吐出量(後がけ量X_af)を算出する。まず、経過時間Tの関数であるK(T)を計算する。K(T)はインクの増粘度合い(増粘特性)を示す関数であり、経過時間と共に増加していく。図12は、経過時間Tとインクの増粘度合いに関する関数K(T)の関係を示している。K(T)はこのような曲線の近似式から計算しても良いし、予め記憶されたテーブルを参照して求めても良い。例えば、図11によると、T=2(分)の場合、K(T)=4である。またT=20(分)の場合、K(T)=40である。またT<=1(分)の場合は、K(T)=1で固定されている。インクの増粘特性は、温度・湿度やインク物性、吐出量によっても変化するため、関数Kにこれらのパラメータを含ませても良い。
K(T)を求めた後、後がけ量X_afは以下の式により算出する。
X_af=K(T)×X_ini
ここで、X_ini=10,000発であり、検知動作を行ってからの経過時間Tが1分を経過していないときの後がけ量X_afはこの10,000発である(初期後がけ量)。そして、例えば、上述したように、経過時間T=2(分)の場合は、K(T)=4であるので、後がけ量X_afは、4×10,000=40,000発となる。このように本実施形態では、経過時間Tが所定時間より大きい場合の後がけ量を当該経過時間Tが当該所定時間より小さい場合の後がけ量よりも多くしている。なお、上述した初期後がけ量X_iniは、ここでは固定値(10,000発)としているが、吐出されたインク量や温度・湿度といった環境等によって変わる変数としても良い。
ステップS111では、図10を用いて説明した後がけ制御を実行する。後がけ制御では、ステップS110で算出した後がけ量X_af分の堆積抑制インクであるクリアインクを所定位置に吐出する。ステップS112では、堆積検知フラグFLGを0に戻す。そして、本フローは終了する。
以上、本実施形態によれば、後がけ制御において、検知動作を行ってからの経過時間が所定時間よりも大きい場合に吐出する堆積抑制インクの量を、当該経過時間が当該所定時間よりも小さい場合に吐出する堆積抑制インクの量よりも多くする。これによって、検知動作を行ってから時間が経過してしまっているときに後がけ制御を行う場合であっても、インクの堆積を確実に抑制することができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本実施形態に係る記録装置は、第1実施形態に係る記録装置と同じ構成である。本実施形態に係る記録装置は、第1実施形態に係る記録装置と制御において異なる。
図13は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。
ホスト装置により縁なし記録のジョブ(記録ジョブ)を受けると、記録装置は記録動作を開始する。ここでのジョブは、複数枚の記録媒体に対して連続して記録を行う連続記録動作を行う旨の指令を含んでいる。ステップS201では、1ページ分の記録が終了するまで記録動作を行う。1ページ分の記録が終了すると、ステップS202で堆積検知フラグFLG=2であるか否かを判断する。第1実施形態でも述べたように、堆積検知フラグFLGは、初期状態では0に設定されている。堆積検知フラグFLG=2である場合とは、後述するように、検知時刻T1を不揮発性メモリに書き込んでいるときの設定であり、「連続記録中であり堆積検知後の後がけ制御が実行できない状況」に対応している。堆積検知フラグFLG=2である場合は、ステップS207まで進み、ジョブが終了したか否かを判断する。ジョブが終了していない場合は、ジョブが終了するまで記録動作を繰り返す(ステップS201,S202,S207)。すでに堆積検知フラグFLG=2である場合は、ステップS203のような再度の検知動作は行わない。
ステップS202で堆積検知フラグFLG=2でなかった場合は、ステップS203へ進み、インク吸収体上のインクが吐出された位置にキャリッジを移動し、検知センサにより検知動作を行う、上述した堆積検知制御(検知動作)を実行する。ステップS204では、検知動作による検知結果の判断を行う。堆積検知フラグFLG=1である場合は、ステップS205へ進む。ステップS205では、時刻計測部325により計測された、検知動作が行われたときの検知時刻T1を不揮発性メモリに記憶し、次のステップS206へ進む。ステップS206では、検知時刻T1を不揮発性メモリに書き込んだことを示すために堆積検知フラグFLG=2に設定し、ステップS207へ進む。堆積検知フラグFLG=2に設定されると、既にインクの堆積は検知された状態であるため、以降はジョブが終了するまで検知動作は行わない。このようにすることで、以降の1ページ終了後において検知動作に要する時間を削減することができる。
ステップS207でジョブが終了したと判断されるまで、上述したステップS201〜S206の処理を繰り返す。ステップS207でジョブが終了したと判断されると、ステップS208へ進み、堆積検知フラグFLG=2であるか否かを判断する。堆積検知フラグFLG=2でない場合は、本フローは終了する。一方、堆積検知フラグFLG=2である場合は、次のステップS209へ進む。ステップS209では、時刻計測部325により計測された現在時刻T0を取得する。ステップS210では、不揮発性メモリに記憶された検知時刻T1を参照し、検知時刻T1と現在時刻T0との差分から、検知センサによる検知動作を行ってからの経過時間T=T1−T0を算出する。
ステップS211では、次の後がけ制御で吐出する後がけインクの吐出量(後がけ量X_af)を算出する。まず、経過時間Tの関数であるK(T)を計算する。K(T)の算出方法は、第1実施形態と同様である。
K(T)を求めた後、後がけ量X_afも同様に以下の式により算出する。
X_af=K(T)×X_ini
ここで、X_ini=10,000発であり、検知動作を行ってからの経過時間Tが1分を経過していないときは後がけ制御における後がけ量はこの10,000発である(初期後がけ量)。そして、例えば、図11から、経過時間T=20(分)の場合、K(T)=40であるので、後がけ制御における後がけ量X_afは、40×10,000=400,000発となる。
ステップS212では、図10を用いて説明した後がけ制御を実行する。後がけ制御では、ステップS211で算出した後がけ量X_af分の堆積抑制インクであるクリアインクを所定位置に吐出する。ステップS213では、堆積検知フラグFLGを0に戻す。そして、本フローは終了する。
以上、本実施形態によれば、連続記録終了後に行う後がけ制御において、記録中に検知動作を行ってからの経過時間が所定時間よりも大きい場合、当該経過時間が当該所定時間よりも小さい場合よりも吐出する堆積抑制インクの量を多くする。これによって、連続記録時においてスループットを優先させるために後がけ制御をジョブが終了してから行い、検知動作を行ってから時間が経過してしまっている場合であっても、その後の後がけ制御により、インクの堆積を確実に抑制することができる。
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と同じ構成である。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と制御において異なる。以下、本実施形態に係る記録装置の制御について説明する。なお、上記実施形態と重複する部分についてはその説明を省略する。
図14は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。
ホスト装置より縁なし記録の指令(命令)を受けると、記録装置は記録動作を開始する。ステップS301で記録動作が終了すると、ステップS302へ進み、上述した堆積検知制御を実行する。ステップS302では、検知動作による検知結果として堆積検知フラグFLG=1であるか否かを判断する。堆積検知フラグFLG=1でない場合は、本フローは終了する。堆積検知フラグFLG=1である場合は、次のステップS304へ進む。
ステップS304では、所定の後がけ量X_ini(初期後がけ量)と不揮発性メモリに記憶されたインクタンク内のクリアインクの残量Y_remとを比較する。クリアインクの残量Y_remが、所定の後がけ量X_iniよりも多い場合、ステップS305へ進み、後がけ制御における後がけ量X_afを初期後がけ量X_iniに設定する。次にステップS306へ進み、図10を用いて説明した後がけ制御を実行する。後がけ制御では、ステップS305で算出した後がけ量X_af分の堆積抑制インクであるクリアインクを吐出する。そして、ステップS307で堆積検知フラグFLGを0に戻し、本フローは終了する。
一方、ステップS304において、クリアインクの残量Y_remが、初期後がけ量X_iniよりも少なかった場合、ステップS308へ進む。ステップS308では、検知時刻T1を不揮発性メモリに記憶し(書き込み)、ステップS309で、インターフェースを通してホスト装置によりユーザーに対してクリアインクのインクタンクの交換が必要である旨の表示(タンク交換表示)を行う。ステップS310において、インクタンクの交換がなされ、クリーニング等の必要な回復処理が終了すると、ステップS311へ進み、堆積検知フラグFLGのチェックを行う。ステップS311において、堆積検知フラグFLG=1でない場合、本フローは終了する。一方、堆積検知フラグFLG=1である場合は、ステップS312へ進む。
ステップS312では、時刻計測部325により計測された、インクタンクの交換終了後の現在時刻T0を取得する。ステップS313では、検知時刻T1と現在時刻T0との差分から経過時間Tを算出する。ステップS314では、上述した実施形態と同様に、経過時間Tに応じた後がけ量X_afを算出する。ステップS315では、ステップS314で算出した後がけ量X_af分の後がけインクを吐出する後がけ制御を実行する。そして、ステップS316で堆積検知フラグFLGを0に戻して、本フローは終了する。
本実施形態では、後がけ制御で用いるクリアインクの量と、不揮発性メモリに記憶されたインクタンク内のクリアインクの残量とを比較して、クリアインクの残量が多い場合は、検知動作の直後に後がけ制御を実行する。一方、クリアインクの残量が少ない場合は、ユーザーに対してクリアインクのインクタンクの交換を報知し、インクタンクの交換後に後がけ制御を実行する。その際、インクタンクの交換に伴い、検知動作を行ってからの経過時間が大きくなってしまっているので、当該経過時間に応じて後がけ制御において吐出するクリアインクの量を多くする。これによって、インクタンクの交換により検知動作を行ってからの時間が経過してしまった場合でも、その後の後がけ制御により、インクの堆積を確実に抑制することができる。
なお、本実施形態では、後がけ制御に用いる堆積抑制インクの量と、インクタンク内の堆積抑制インクの残量とを比較して、インクタンクの交換を報知する構成とした。しかし、後がけ制御に用いる堆積抑制インクの量と、廃インク収容部に収容可能な廃インク量とを比較して、廃インクパック等の交換を報知する構成としても良い。そして、その交換に要した時間に応じて、後がけ制御において吐出する堆積抑制インクの量を多くしても良い。本発明は、廃インクパック等の交換により検知動作を行ってからの時間が経過してしまった場合でも、その後の後がけ制御により、インクの堆積を確実に抑制することができる。
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について説明する。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と同じ構成である。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と制御において異なる。以下、本実施形態に係る記録装置の制御について説明する。なお、上記実施形態と重複する部分についてはその説明を省略する。
図15は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。本実施形態における制御は、記録装置の起動中(動作中)において、堆積抑制制御を行ってから後がけ制御を行うまでの間に、電源プラグが抜かれる等して、いわゆるハード電源が強制的にOFFになった場合等を想定したものである。本記録装置は、小容量の蓄電池を搭載しており、ハード電源が強制的にOFFになった場合でも、わずかな動作や制御を実行することが可能である。
図15(a)において、記録動作が終了すると、ステップS401で堆積検知制御(検知動作)を実行する。その後、ステップS402では、ハード電源がOFF(オフ)になっている否かを判断する。ステップS402でハード電源がOFFになっていない場合は、通常の後がけ制御を行う。すなわち、ステップS403で、堆積検知フラグFLGのチェックを行い、堆積検知フラグFLG=1であった場合は、ステップS404へ進む。ステップS404では、所定量の後がけ量(初期後がけ量)を設定し、ステップS405で、当該後がけ量分の後がけインクの吐出を行う後がけ制御を実行する。そして、ステップS406で堆積検知フラグFLGを0に戻して、本フローは終了する。
ステップS402で、ハード電源がOFFになっていると判断された場合、ステップS407へ進み、堆積検知フラグFLGのチェックを行う。ステップS407で、堆積検知フラグFLG=1であった場合は、ステップS408へ進み、時刻計測部325により計測された、検知動作を行ったときの検知時刻T1を不揮発性メモリに記憶し(書き込み)、本フローは終了する。
次に、図15(b)において、ハード電源がON(オン)にされると、堆積検知フラグFLG=1であるか否かを判断する。堆積検知フラグFLG=1でない場合は、後がけ制御は不要であるため、本フローは終了する。一方、堆積検知フラグFLG=1であった場合は、インクの堆積が検知されたにも関わらず、未だ後がけ制御が実行されていない状態であるため、ステップS412へ進む。ステップS412では、時刻計測部325により計測されたハード電源ON後の現在時刻T0を取得する。ステップS413では、検知時刻T1と現在時刻T0との差分から経過時間Tを算出する。ステップS414では、上述した実施形態と同様に、経過時間Tに応じた後がけ量X_afを算出する。ステップS415では、ステップS414で算出した後がけ量X_af分の後がけインクを吐出する後がけ制御を実行する。ステップS416では、堆積検知フラグFLGを0に戻して、本フローは終了する。
なお、ハード電源のON時に、記録ヘッドの回復処理や不吐検知を実行しても良く、その場合、現在時刻T0は、当該回復処理等の終了後に取得することとしても良い。
以上、本実施形態によれば、検知動作を行ってから後がけ制御を行うまでの間に電源プラグが抜かれる等して装置本体の電源がOFFになった場合でも、装置本体の電源ON時に、経過時間に応じて後がけ量を多くした後がけ制御を行う。これにより、装置本体の電源ONまでに時間を要していたとしても、その後の後がけ制御により、インクの堆積を確実に抑制することができる。
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について説明する。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と同じ構成である。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と制御において異なる。以下、本実施形態に係る記録装置の制御について説明する。なお、上記実施形態と重複する部分についてはその説明を省略する。
図16は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。本実施形態における制御は、第2実施形態における図13で説明した制御とほぼ同じであるが、ステップS507において、記録動作中に図6の予備吐出位置301A,301Bに対して行う予備吐出のパラメータを変更する点で異なる。また、ステップS511,S512における後がけ量の算出方法において異なる。
本実施形態では、連続記録時にインクの堆積が検知された場合、ステップS507において、記録動作中に行う予備吐出における堆積抑制インクの吐出量(吐出発数)を変更する。これにより、プラテン吸収体におけるインクの堆積を効果的に抑制することができる。
図17(a)に、変更する予備吐出発数の例を示す。検知動作によりインクの堆積が検知された場合、記録動作中の予備吐出において、ライトシアンインク、ライトマゼンタインク、グレイインク、クリアインクといった堆積抑制インクの予備吐発数を、各ノズル16発から各ノズル24発に増やす。記録動作中に行われる予備吐出は上述したように、プラテン吸収体上の予備吐出位置301A,301Bに対して行われる。よって、このように、ジョブの終了後に後がけ制御を実行する場合でも、記録動作中の予備吐出において堆積抑制インクをより多く吐出するようにしておくことで、より効果的にインクの堆積を抑制することができる。
またジョブの終了後、ステップS512では、予備吐出パラメータ変更後の予備吐出による堆積ドット数X_cptを算出する。堆積ドット数とは、インクの堆積量をドット数により示す指標であり、インク吸収体に吐出された堆積インクのドット数から、インク吸収体に吐出された堆積抑制インクのドット数を差し引くことによって算出する。すなわち、堆積ドット数X_cptは以下の式により算出する。
堆積ドット数=シアンドット数+マゼンタドット数+イエロードット数+ブラックドット数+レッドドット数−(ライトシアンドット数+ライトマゼンタドット数+グレイドット数+クリアインクドット数)
ここで、例えば、図17(a)のように予備吐発数を変更し、インクの堆積を検知した検知動作後の残りの記録枚数が5枚、1枚当たり100バンド分の記録動作を行う場合、堆積ドット数X_cptは、以下のように求まる。
X_cpt=(16+16+16+16+16−24−24−24−24)×100×5=−8000
このように、予備吐出パラメータ変更後の堆積ドット数X_cptは、堆積抑制インクの予備吐発数を多くしているため、負の値となる。
ステップS514では、後に実行する後がけ制御において吐出する後がけインク(堆積抑制インク)の吐出量(後がけ量)X_afを算出する。本実施形態では、後がけ量X_afの算出において、堆積検知後の経過時間だけでなく、予備吐出パラメータ変更後の堆積ドット数X_cptも加味する。すなわち、後がけ量X_afは、以下のように算出される。
X_af=K(T)×(X_ini+X_cpt)
ここで、K(T)は、第1実施形態で説明したものと同様、インクの増粘度合いを示す関数であり、経過時間と共に増加していくものである。X_iniも、第1実施形態で説明したものと同様、初期後がけ量を示しており、ここでは、X_ini=10,000発である。
本実施形態では、上記計算式において、初期後がけ量X_iniに堆積ドット数X_cptを加算している。上述したように、堆積ドット数X_cptは負の値であるため、(X_ini+X_cpt)はX_iniよりも小さな値となる。すなわち、後がけ量X_afは、第2実施形態の場合よりも小さくなる。例えば、上記例の場合のように、K(T)=40,X_ini=10,000,X_cpt=−8,000である場合、後がけ量X_af=40×(10,000−8,000)=80,000発となる。これは、堆積ドット数X_cptを加味しない場合の後がけ量X_af=40×10,000=400,000発よりも小さくなっている。
すなわち、本実施形態では、検知動作によりインクの堆積を検知した後の連続記録中の予備吐出において、堆積抑制インクの予備吐発数を多くしていることから、ジョブ終了後に行う後がけ制御における後がけ量を少なくすることができる。
なお、ジョブの終了後に再度インクの堆積を検知するための検知動作を行い、上記予備吐出によってもインクの堆積が解消してないことが検知された場合に、後がけ制御を実行することとしても良い。また、堆積ドット数X_cptの算出に当たり、検知動作を行ってからの経過時間や、温度・湿度等の環境の影響を加味しても良い。
また、予備吐出位置301A,301Bではなく、縁なし記録におけるはみ出し領域におけるインクの堆積を抑制する場合には、図17(B)に示すように、縁なし記録において使用するインクの色を、インクの堆積の検知前後で変更しても良い。例えば、縁なし記録において使用するインクの色を、シアンはライトシアンに、マゼンタはライトマゼンタに、ブラックはグレイに変更する等、堆積インクをそれと似た色の堆積抑制インクに変更する。これにより、プラテン吸収体に吐出される堆積インクのインク量が減少し、吐出される堆積抑制インクのインク量が増えるため、後がけ制御を実行するまでのプラテン吸収体上におけるインクの堆積を応急処置的に抑制することができる。そして、その後の後がけ制御における後がけ量の算出においては、その吐出された堆積インクと堆積抑制インクの差分を加味して後がけ量を算出しても良い。
以上、本実施形態によれば、連続記録時において検知動作によりインクの堆積が検知された場合、後がけ制御が実行されるまでの間、インク吸収体に吐出される堆積インクおよび堆積抑制インクの少なくともいずれか一方の量を変更する。また、その後に実行される後がけ制御において、その吐出された堆積インクと堆積抑制インクとの差分を加味して後がけ量を決定する。これにより、廃インク量を低減しつつ、インクの堆積をより効果的に抑制することができる。
(第6実施形態)
次に、本発明の第6実施形態について説明する。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と同じ構成である。本実施形態に係る記録装置は、上記実施形態に係る記録装置と制御において異なる。以下、本実施形態に係る記録装置の制御について説明する。なお、上記実施形態と重複する部分についてはその説明を省略する。
図18は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。本実施形態における制御は、第3実施形態における図14で説明した制御とほぼ同じである。ただし、ステップS609,S610において、インクタンク内のクリアインクの残量が所定の後がけ量よりも少なかった場合に、その残量分のクリアインクを吐出する後がけ制御を実行する点で異なる。また、ステップS616でのインクタンク交換後に実行する後がけ制御における後がけ量の算出において、そのインクタンク交換前の後がけ制御における後がけ量を加味する点で異なる。
図18において、ステップS604で、インクタンク内のクリアインクの残量Y_remが所定の後がけ量X_iniよりも少ないと判断された場合、ステップS608で、検知時刻T1を不揮発性メモリに記憶し(書き込み)、ステップS609へ進む。ステップS609では、次に実行する後がけ制御における後がけ量X_afをクリアインクの残量Y_remに設定する。次にステップS610へ進み、残量Y_rem分のクリアインクを吐出する後がけ制御を実行する。これによりクリアインクのインク残量をほぼ空(所定量未満)にしてから、ステップS612へ進み、インターフェースを通してホスト装置によりユーザーに対してクリアインクのインクタンクの交換が必要である旨の表示(タンク交換表示)を行う。
ステップS616では、インクタンク交換後に実行する後がけ制御において吐出する後がけインク(堆積抑制インク)の吐出量(後がけ量)X_afを算出する。本実施形態では、後がけ量X_afの算出において、堆積検知後の経過時間だけでなく、インクタンク交換前の後がけ制御において吐出した後がけ量を加味する。すなわち、後がけ量X_afは以下のように算出する。
X_af=K(T)×(X_ini−Y_rem)
ここで、K(T),X_iniは、上記実施形態で説明したものと同様である。
以上、本実施形態によれば、後がけ制御において吐出する堆積抑制インクの残量が所定量より少なかった場合、その残量分の堆積抑制インクを吐出する後がけ制御を実行してから、そのインクタンクの交換を報知する。また、そのインクタンク交換前に吐出された後がけ量を加味して、インクタンク交換後に実行する再度の後がけ制御における堆積抑制インクの量を決定する。これにより、廃インク量を低減しつつ、インクの堆積をより効果的に抑制することができる。
(第7実施形態)
次に、本発明の第7実施形態について説明する。なお本実施形態の説明において、上記実施形態と重複する部分についてはその説明を省略する。
まず図19(a)に、記録ヘッドからインク滴を吐出した際のインク滴の飛翔距離と吐出速度の関係を実測したグラフを示す。この図によれば、インク滴の飛翔距離が長くなるほど吐出速度が遅くなることが分かる。この関係からインク滴の運動エネルギー(=1/2mv^2)を計算すれば、飛翔距離と飛翔時の吐出エネルギーの関係を求めることができる。図19(b)に、記録ヘッドとインク吸収体の間の距離(単にヘッド高さ、ヘッド吸収体間隔とも称する)と上記方法により計算したインク吸収体に着弾するインク滴の吐出エネルギーの関係のグラフを示す。この図によれば、上記距離が短いほどインク吸収体に着弾するインク滴の吐出エネルギーは大きいことが分かる。本発明者らは、後がけ制御を実行する際に、記録ヘッドとインク吸収体の間の距離が短いほど、インク吸収体に着弾するインク滴の吐出エネルギーも大きくなり、後がけ制御の堆積抑制効率も上がることを見出した。本実施形態では、後がけ制御の実行時における記録ヘッドとインク吸収体の間の距離を、記録動作や検知動作の実行時における当該距離よりも短くする構成とする。
図20は、本実施形態における堆積抑制制御である後がけ制御(吐出制御)を示すフローチャートである。図20において、ステップS31では、検知センサにより電圧値が閾値X(v)以上であると判断された所定位置にキャリッジ100を移動させる。ステップ32では、ガイドシャフト113を回転・駆動することにより、記録ヘッドとインク吸収体の間の距離(ヘッド高さ)を第1の距離H_sdから当該第1の距離よりも短い第2の距離H_lowに変更する。図21(a)に記録ヘッドとインク吸収体の間の距離が第1の距離H_sdの場合、図21(b)に記録ヘッドとインク吸収体の間の距離が第2の距離H_lowの場合の模式図をそれぞれ示す。通常の記録動作を行う際や検知動作を行う際は、図21(a)に示すように、記録ヘッドとインク吸収体の間の距離は第1の距離H_sdである。一方、本実施形態における後がけ制御を実行する際は、図21(b)に示すように、記録ヘッドとインク吸収体の間の距離は第2の距離H_sdとなる。
ステップS33では、吐出する堆積抑制インクの量(後がけ量)X_lowを取得する。ステップS34では、当該所定位置に対して後がけ量X_af分の堆積抑制インク(クリアインク)の吐出を行う。ステップ35では、記録ヘッドとインク吸収体の間の距離を第2の距離H_lowから第1の距離H_sdに戻し、本フローを終了する。
記録動作を行う際は、記録ヘッドとプラテンの間を記録媒体が通過するため、記録ヘッドとプラテン吸収体の間には所定の距離が必要となる。また、検知動作を行う際は、特に正反射光を受光するためには、図7に示すように発光部201と受光部202が所定の角度θ0を持って発光・受光する必要があるため、装置の構成上、記録ヘッドとプラテン吸収体の間に所定の距離が必要となる。一方、後がけ制御を実行する際は、そのような制約はない。そこで、後がけ制御を実行する際に記録ヘッドとプラテン吸収体の間を短くすることで、堆積抑制効率が上がり、より廃インクを低減することができる。
図22は、本実施形態における制御を示すフローチャートである。本実施形態における制御は、第2実施形態における図13で説明した制御とほぼ同じである。ただし、ステップS711のジョブの終了後に実行する後がけ制御における後がけ量の算出方法において異なる。なお、図22において、記録動作時および検知動作時の記録ヘッドとプラテン吸収体の間は上述した第1の距離H_sdである。
ステップS711では、後がけ制御において吐出する後がけ量X_lowを算出する。後がけ量X_lowは、以下の式により算出する。
X_low=K(T)×X_ini×E_sd/E_low
ここで、K(T),X_iniは、上記実施形態で説明したものと同様である。E_sdは、記録ヘッドとプラテン吸収体の間の距離が第1の距離H_sdである場合の、インク吸収体に着弾するインク滴の吐出エネルギーである。E_lowは、記録ヘッドとプラテン吸収体の間の距離が第2の距離H_lowである場合の、インク吸収体に着弾するインク滴の吐出エネルギーである。これらの吐出エネルギーは、図19(a),(b)に示す関係から導くことができる。
ここで、E_sd<E_lowであるから、X_lowは、K(T)×X_iniよりも小さくなる。すなわち、後がけ制御を実行する際に記録ヘッドとプラテン吸収体の間の距離を短くした場合、記録ヘッドとプラテン吸収体の間の距離を短くしなかった場合よりも、後がけ制御における後がけ量を少なくすることができる。このように、後がけ制御実行時の記録ヘッドとプラテン吸収体の間の距離を短くすることで、上記実施形態の場合よりも廃インク量をさらに低減することができている。
なお、本実施形態では、記録ヘッドとプラテン吸収体の間の距離を変更するのに、インク吸収体に対する記録ヘッドの高さを変更する構成としたが、本発明はこれに限定されず、記録ヘッドに対するインク吸収体の高さを変更する構成としても良い。
以上、本実施形態では、後がけ制御を実行するときの記録ヘッドとインク吸収体の間の距離を、記録動作および検知動作の少なくともいずれか一方を実行するときの記録ヘッドとインク吸収体の間の距離よりも短くする。これにより、廃インク量を低減しつつ、インクの堆積をより効果的に抑制することができる。