JP6685341B2 - 電子放出素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子放出素子およびその製造方法に関する。
本出願人は、大気中で動作可能な、新規な構造を有する電子放出素子を開発した(例えば特許文献1および2参照)。
特許文献2に記載の電子放出素子は、一対の電極(基板電極および表面電極)の間に配置された、導電性ナノ粒子が絶縁材料中に分散された半導電層を有する。半導電層に数十ボルト程度の電圧を印加することによって、表面電極から電子を放出することができる(電界電子放出)。したがって、この電子放出素子は、強電界下の放電現象を利用する従来の電子放出素子(例えばコロナ放電器)のようにオゾンを発生することがないという利点を有している。
この電子放出素子は、例えば、画像形成装置(例えばコピー機)における感光性ドラムを帯電させるための帯電装置として好適に用いられ得る。非特許文献1によると、特許文献2の記載の積層構造を有する表面電極を備えた電子放出素子は、約300時間(中速のコピー機で30万枚程度)以上の寿命を有し得る。
特開2009−146891号公報(特許第4303308号公報) 特開2016−136485号公報
岩松正・他、日本画像学会誌、第56巻、第1号、第16−23頁、(2017)
しかしながら、上記の電子放出素子の特性の向上(例えば低消費電力化)および/または長寿命化が望まれている。そこで、本発明は、上記の電子放出素子の特性の向上(例えば低消費電力化)および/または長寿命化が可能な、新規な構造を有する電子放出素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明のある実施形態による電子放出素子の製造方法は、アルミニウム基板または基板に支持されたアルミニウム層を用意する工程Aと、前記アルミニウム基板の表面または前記アルミニウム層の表面を陽極酸化することによって、複数の細孔を有するポーラスアルミナ層を形成する工程Bと、前記複数の細孔内に銀ナノ粒子を付与することによって、前記複数の細孔内に銀ナノ粒子を担持させる工程Cと、前記工程Cの後に、前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層の表面の実質的に全面に、シロキサン結合を含む重合体を7質量%以上20質量%未満含む絶縁層形成溶液を付与する工程Dと、前記工程Dの後に、前記絶縁層形成溶液に含まれる溶媒を少なくとも減少させることによって、絶縁層を形成する工程Eと、前記工程Eの後に、前記絶縁層上に、電極を形成する工程Fとを包含する。
ある実施形態において、前記絶縁層形成溶液は、前記シロキサン結合を含む重合体を約10質量%含む。
ある実施形態において、前記工程Dは、前記絶縁層形成溶液を塗布または印刷する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程Dは、前記絶縁層形成溶液をスピンコート法によって塗布する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程Fは、前記絶縁層上に導電膜を堆積する工程F1と、前記導電膜をパターニングすることによって前記電極を形成する工程F2とを包含する。
ある実施形態において、前記電極は、金属を含む。
ある実施形態において、前記工程Aで用意される前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層は、前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層の表面を部分的に覆うように形成された電極間絶縁層を有する。
ある実施形態において、前記工程Aは、アルミニウム基板または基板に支持されたアルミニウム層を用意する工程A1と、前記電極間絶縁層を形成する工程A2であって、前記工程A1で用意した前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層の表面の一部を陽極酸化することによって形成される陽極酸化層を含む前記電極間絶縁層を形成する工程A2とを包含する。
ある実施形態において、前記工程Eは、前記絶縁層形成溶液を焼成する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程Eは、前記絶縁層形成溶液を220℃以下で焼成する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程Eは、前記絶縁層形成溶液を前記溶媒の沸点以上で焼成する工程を包含する。
ある実施形態において、前記工程Bは、前記陽極酸化工程の後に行われるエッチング工程をさらに包含する。
ある実施形態において、前記工程Bは、前記エッチング工程の後に、さらなる陽極酸化工程を包含する。
本発明のある実施形態による電子放出素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導電層とを有し、前記第1電極は、アルミニウム基板またはアルミニウム層から形成されており、前記半導電層は、前記アルミニウム基板の表面または前記アルミニウム層の表面に形成された、複数の細孔を有するポーラスアルミナ層と、前記複数の細孔内に担持された銀ナノ粒子とを有し、前記ポーラスアルミナ層上および前記複数の細孔内に形成された、シロキサン結合を含む重合体を含む絶縁層をさらに有し、前記複数の細孔の深さは約1000nm以上であって、前記銀ナノ粒子は、前記深さの半分以上に渡って分布し、前記絶縁層によって前記複数の細孔の壁面に固定されている。
ある実施形態において、前記絶縁層は、実質的に炭素を含まない。
本発明の他の実施形態による電子放出素子は、第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導電層とを有し、前記半導電層は、複数の細孔を有するポーラスアルミナ層と、前記ポーラスアルミナ層の前記複数の細孔内に担持された銀とを有し、前記第1電極は、アルミニウムの含有量が99.00質量%以上99.99質量%未満のアルミニウム基板から形成されており、前記ポーラスアルミナ層は前記アルミニウム基板の表面に形成された陽極酸化層である。
ある実施形態において、前記アルミニウム基板のアルミニウムの含有量は、99.98質量%以下である。
ある実施形態において、前記ポーラスアルミナ層の厚さは10nm以上5μm以下である。
ある実施形態において、前記複数の細孔は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさが50nm以上3μm以下の開口を有する。
ある実施形態において、前記ポーラスアルミナ層が有する前記複数の細孔の深さは10nm以上5μm以下である。前記ポーラスアルミナ層が有する前記複数の細孔の深さは、50nm以上500nm以下であってもよい。
ある実施形態において、前記ポーラスアルミナ層が有するバリア層の厚さは1nm以上1μm以下である。前記ポーラスアルミナ層が有するバリア層の厚さは、100nm以下であってもよい。
ある実施形態において、前記ポーラスアルミナ層が有する前記複数の細孔は、階段状の側面を有する。前記複数の細孔は、深さ方向において細孔径が異なる2以上の細孔部分を有し、より深い位置にある細孔部分ほど細孔径が小さい。
ある実施形態において、前記銀は、平均粒径が1nm以上50nm以下の銀ナノ粒子である。前記銀は、平均粒径が3nm以上10nm以下の銀ナノ粒子であってもよい。
ある実施形態において、前記第2電極は、金層を含む。前記第2電極は、特許文献2に記載の積層構造を有する。
本発明の他の実施形態による電子放出素子の製造方法は、上記のいずれかの電子放出素子の製造方法であって、アルミニウムの含有量が99.00質量%以上99.99質量%未満のアルミニウム基板を用意する工程と、前記アルミニウム基板の表面を陽極酸化することによってポーラスアルミナ層を形成する工程と、前記ポーラスアルミナ層が有する複数の細孔内に、銀ナノ粒子を付与する工程とを包含する。
ある実施形態において、前記アルミニウム基板のアルミニウムの含有量は、99.98質量%以下である。
ある実施形態において、前記ポーラスアルミナ層を形成する工程は、陽極酸化工程と、前記陽極酸化工程の後に行われるエッチング工程とを包含する。
ある実施形態において、前記ポーラスアルミナ層を形成する工程は、前記エッチング工程の後に、さらなる陽極酸化工程を包含する。
本発明のある実施形態によると、上記従来技術の特性の向上(例えば低消費電力化)および/または長寿命化が可能な、新規な構造を有する電子放出素子およびその製造方法が提供される。
本発明の実施形態による電子放出素子100の模式的な断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施形態による、電子放出素子100の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 (a)〜(c)は、電子放出素子100の半導電層に用いられるポーラスアルミナ層の例を示す模式的な断面図である。 (a)〜(c)は、本発明の実施形態による電子放出素子における半導電層30A内の銀ナノ粒子の状態の違いを示す模式的な断面図である。 (a)および(b)は、銀ナノ粒子を含む半導電層の断面STEM像を示す図である。 (a)〜(c)は、半導電層の断面(図5(b)中の白丸6a、6bおよび6c内)におけるEDX分析結果を示す図である。 電子放出素子100の電子放出特性の測定系を模式的に示す図である。 実施例の電子放出素子の通電試験結果を示す図である。 比較例の電子放出素子200の模式的な断面図である。 比較例の電子放出素子の通電試験結果を示す図である。 比較例の電子放出素子の銀ナノ粒子を含む半導電層の断面STEM像を示す図である。 比較例の電子放出素子の半導電層の断面(図11中の白丸2aで示す領域)におけるEDX分析結果を示す図である。 (a)〜(e)は、本発明の実施形態による、電子放出素子の他の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 (a)〜(d)は、本発明の実施形態による、電子放出素子の他の製造方法を説明するための模式的な断面図である。 (a)は、本発明の他の実施形態による電子放出素子100A1の模式的な断面図であり、(b)は、本発明のさらに他の実施形態による電子放出素子100A2の模式的な断面図である。 電子放出素子の試料サンプルNo.4の通電試験結果を示す図である。 電子放出素子の試料サンプルNo.4の、銀ナノ粒子を含む半導電層の断面STEM像を示す図である。 電子放出素子の試料サンプルNo.5の、銀ナノ粒子を含む半導電層の断面STEM像を示す図である。 電子放出素子の試料サンプルNo.6の、銀ナノ粒子を含む半導電層の断面STEM像を示す図である。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による電子放出素子およびその製造方法を説明する。本発明の実施形態は、例示する実施形態に限定されるものではない。なお、以下の説明において、同様の機能を有する構成要素には共通の参照符号を付し、説明の重複を避ける。
図1に本発明の実施形態による電子放出素子100の模式的な断面図を示す。
電子放出素子100は、第1電極12と、第2電極52と、第1電極12と第2電極52との間に設けられた半導電層30とを有している。第1電極12は、例えば、アルミニウム基板(例えば、厚さ0.5mm)12から形成されており、第2電極52は、例えば、金(Au)層(例えば、厚さ40nm)で形成されている。絶縁層22は、アルミニウム基板上に複数の電子放出素子100を作製する場合に、素子分離層として機能し得る。1つの電子放出素子100の大きさ(絶縁層22で包囲された領域の大きさ)は、例えば、約5mm×約5mm(5mm□)であり、絶縁層22の幅は約5mmである。単一の電子放出素子100を形成する場合、絶縁層22を省略してもよい。ただし、絶縁層22を有することによって、電界が集中すること、および第1電極12と第2電極52との間にリーク電流が発生することを抑制できるという利点が得られ得る。
半導電層30は、複数の細孔34を有するポーラスアルミナ層32と、ポーラスアルミナ層32の複数の細孔34内に担持された銀(Ag)42とを有している。
複数の細孔34は、例えば、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさ(Dp)が約50nm以上約3μm以下の開口を有している。複数の細孔34は、表面の法線方向から見たときの2次元的な大きさ(Dp)が約500nm未満の開口を有していてもよい。なお、本明細書において、開口は、細孔34の最上部を指す。細孔34が深さ方向において細孔径が異なる2以上の細孔部分を有するとき、細孔径の内、最上部の細孔径を開口径と呼ぶ。「2次元的な大きさ」とは、表面の法線方向から見たときの開口(細孔34)の面積円相当径を指す。以下の説明において、2次元的な大きさ、開口径または細孔径は、面積円相当径をいう。ポーラスアルミナ層32の詳細は図3を参照して後述する。
細孔34内に担持されている銀は、例えば、銀ナノ粒子(以下、「Agナノ粒子」と表記する。)である。Agナノ粒子は、例えば、平均粒径が1nm以上50nm以下であることが好ましい。Agナノ粒子は、例えば、平均粒径が3nm以上10nm以下であることがさらに好ましい。Agナノ粒子は、有機化合物(例えばアルコール誘導体および/または界面活性剤)で被覆されていてもよい。
第1電極12は、例えば、アルミニウム基板(例えば厚さ0.5mm)から形成されており、ポーラスアルミナ層32は、アルミニウム基板の表面に形成された陽極酸化層である。なお、アルミニウム基板に代えて、基板(例えばガラス基板)上に形成されたアルミニウム層を用いてもよい。すなわち、ポーラスアルミナ層32は、基板に支持されたアルミニウム層の表面に形成された陽極酸化層であってもよい。このとき、基板がガラス基板のような絶縁基板であるとき、アルミニウム層と基板との間に、導電層を形成し、アルミニウム層と導電層とを電極として用いてもよい。電極として機能するアルミニウム層(陽極酸化後に残存する部分)の厚さは、例えば、10μm以上であることが好ましい。
第2電極52は、例えば、金(Au)層で形成される。Au層の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、例えば40nmである。この他、白金(Pt)を用いてもよい。さらに、特許文献2に記載のように、Au層とPt層との積層構造としてもよい。このとき、Au層を下層、Pt層を上層の積層構造(Pt層/Au層)とすることが好ましい。積層構造におけるPt層の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、例えば20nmであり、Au層の厚さは、10nm以上100nm以下であることが好ましく、例えば20nmである。第2電極52をAu層だけで形成する場合に比べて、Pt層/Au層の積層構造とすることによって、寿命を約5倍に延ばすことができる。
次に、図2を参照して、電子放出素子100の製造方法を説明する。図2(a)〜(c)に、本発明の実施形態による、電子放出素子100の製造方法を説明するための模式的な断面図を示す。
まず、図2(a)に示す様に、部分的に絶縁層22が形成されたアルミニウム基板12を用意する。アルミニウム基板12は、例えば、JIS A1050(厚さ:0.5mm)を用いることができる。絶縁層22は、例えば、アルミニウム基板12の表面の素子形成領域をマスクした状態で、陽極酸化(アルマイト処理)および封孔処理を行うことによって形成される。絶縁層22は、例えば、硫酸(15wt%、20℃±1℃)、電流密度1A/dmで、250秒〜300秒間、陽極酸化することによって、厚さ2μm〜4μmのポーラスアルミナ層を形成した後、蒸留水(pH:5.5〜7.5、90℃)で、約30分間、ポーラスアルミナ層の封孔処理を行うことによって形成される。
必要に応じて、アルミニウム基板12の表面に前処理を施してもよい。例えば、マイクロブラスト処理を施してもよい。あるいは、一旦陽極酸化してポーラスアルミナ層を形成した後、エッチングによってポーラスアルミナ層を除去してもよい。最初に形成されるポーラスアルミナ層の細孔は不規則(ランダム)に分布しやすいので、規則正しく配列した細孔を有するポーラスアルミナ層を形成する場合には、最初に形成されたポーラスアルミナ層を除去することが好ましい。
次に、図2(b)に示す様に、アルミニウム基板12の表面を陽極酸化することによってポーラスアルミナ層32を形成する。図3を参照して後述するように、必要に応じて、陽極酸化後にエッチングを行ってもよい。陽極酸化とエッチングとを交互に複数回繰り返してもよい。陽極酸化およびエッチングの条件を調整することによって、種々の断面形状およびサイズを有する細孔34を形成することができる。
次に、図2(c)に示す様に、ポーラスアルミナ層32の細孔34内に銀(Ag)42を担持させる。AgとしてAgナノ粒子を用いる場合、Agナノ粒子を有機溶媒(例えばトルエン)に分散させた分散液をポーラスアルミナ層32上に付与する。分散液中のAgナノ粒子は、有機化合物(例えばアルコール誘導体および/または界面活性剤)で被覆されていてもよい。分散液におけるAgナノ粒子の含有率は、例えば0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、例えば2質量%である。分散液を付与する方法は、特に限定されない。例えば、スピンコート法、スプレーコート法などを用いることができる。
次に、図3を参照して、電子放出素子100のポーラスアルミナ層32の構造を説明する。ポーラスアルミナ層32は、例えば、図3(a)、(b)および(c)に示すポーラスアルミナ層32A、32Bおよび32Cのいずれであってもよい。また、ポーラスアルミナ層32は、ポーラスアルミナ層32A、32Bおよび32Cに限られず、以下に説明するように、種々改変され得る。
ポーラスアルミナ層は、例えば、酸性の電解液中でアルミニウム基板(陽極酸化されなかった部分が第1電極12となる。)の表面を陽極酸化することによって形成される。ポーラスアルミナ層を形成する工程で用いられる電解液は、例えば、蓚酸、酒石酸、燐酸、クロム酸、クエン酸、リンゴ酸からなる群から選択される酸を含む水溶液である。陽極酸化条件(例えば、電解液の種類、印加電圧)を調整することにより、開口径Dp、隣接間距離Dint、細孔の深さDd、ポーラスアルミナ層の厚さtp、バリア層の厚さtbを制御できる。陽極酸化によって得られるポーラスアルミナ層は、例えば、図3(b)に示すポーラスアルミナ層32Bのように、円柱状の細孔34Bを有する。
陽極酸化の後で、ポーラスアルミナ層をアルミナのエッチャントに接触させることによって所定の量だけエッチングすることにより細孔の径を拡大することができる。ここで、ウェットエッチングを採用することによって、細孔壁およびバリア層をほぼ等方的にエッチングすることができる。エッチング液の種類・濃度、およびエッチング時間を調整することによって、エッチング量(すなわち、開口径Dp、隣接間距離Dint、細孔の深さDd、バリア層の厚さtb、等)を制御することができる。エッチング液としては、例えば燐酸の水溶液や、蟻酸、酢酸、クエン酸などの有機酸の水溶液やクロム燐酸混合水溶液を用いることができる。陽極酸化後にエッチングを1回のみ行うことによって得られるポーラスアルミナ層は、図3(b)のポーラスアルミナ層32Bのように、円柱状の細孔34Bを有する。ただし、細孔34Bの開口径Dpおよびバリア層32bの厚さtbは、エッチングによって変化している。
例えば、蓚酸(0.05M、5℃)、化成電圧80Vで、約25分間、陽極酸化した後、燐酸(0.1M、25℃)で20分間、エッチングすることによって、深さDdが約2000nm、開口径Dpが100nm、隣接間距離Dintが200nm、バリア層の厚さtbが約30nmのポーラスアルミナ層32Bを得ることができる。
また、別の例として、例えば、蓚酸(0.05M、5℃)、化成電圧80Vで、約10分間、陽極酸化した後、燐酸(0.1M、25℃)で20分間、エッチングすることによって、深さDdが約700nm、開口径Dpが100nm、隣接間距離Dintが200nm、バリア層の厚さtbが50nmのポーラスアルミナ層32Bを得ることができる。
エッチング工程の後で、さらに陽極酸化することによって、細孔を深さ方向に成長させるとともに、ポーラスアルミナ層を厚くすることができる。細孔の成長は、既に形成されている細孔の底部から始まるので、細孔の側面は階段状になる。その結果、図3(a)に示す細孔34Aの様に、階段状の側面を有する細孔34Aが得られる。細孔34Aは、深さ方向において細孔径が異なる2つの細孔部分を有し、より深い位置にある細孔部分ほど細孔径が小さい。例えば、図3(a)に示すように、より深い位置にある細孔部分(深さDd1、細孔径Dp1)は、開口径Dpよりも小さい細孔径Dp1を有する。階段状の側面を有する細孔34Aは、階段の段差部分にAgナノ粒子を捉えることができるので、細孔34A内に多くのAgナノ粒子を担持できるという利点を有し得る。例えば、複数の細孔34の内、開口径が約100nm以上約3μm以下の細孔は、より深い位置に50nm以上500nm以下の細孔径を有する細孔部分を含むことが好ましい。
ポーラスアルミナ層32Aは、例えば、以下の様にして形成され得る。蓚酸(0.05M、5℃)、化成電圧80Vで、約10分間、陽極酸化した後、燐酸(0.1M、25℃)で20分間、エッチングし、その後、蓚酸(0.05M、5℃)、化成電圧80Vで、約20分間、再び陽極酸化することによって、深さDdが約1500nm、開口径Dpが100nm、隣接間距離Dintが200nm、バリア層の厚さtbが50nmのポーラスアルミナ層32Aを得ることができる。ここで、細孔34Aは、深さ方向において細孔径が異なる2つの細孔部分を有し、より深い位置に、深さDd1が500nm、細孔径Dp1が約20nmの細孔部分を有する。
さらにこの後、必要に応じて、ポーラスアルミナ層をアルミナのエッチャントに接触させることによってさらにエッチングすることにより細孔径をさらに拡大してもよい。エッチング液としては、ここでも上述したエッチング液を用いることが好ましい。
陽極酸化工程およびエッチング工程を繰り返すことによって、例えば、深さ方向において細孔径が異なる2以上の細孔部分を有し、より深い位置にある細孔部分ほど細孔径が小さくなる細孔を形成することができる。さらに、図3(c)に示すポーラスアルミナ層32Cのように、傾斜した側面(階段の段差が十分に小さいと傾斜面に見える)を有する細孔34Cを形成することができる。細孔34Cの全体の形状は、ほぼ円錐(ただし上下逆)である。本出願人は、円錐状の細孔を有するポーラスアルミナ層を型と用いて、モスアイ構造を有する反射防止膜を量産する技術を確立した。
上述したように、ポーラスアルミナ層32は、図3(a)、(b)および(c)に示したポーラスアルミナ層32A、32Bおよび32Cのいずれであってもよいし、これらに限られず、種々改変され得る。ポーラスアルミナ層32の形状を問わず、ポーラスアルミナ層32の厚さtpは、例えば、約10nm以上約5μm以下である。10nmよりも薄いと、十分な銀(たとえばAgナノ粒子)を担持することができず、所望の電子放出効率を得られないことがある。ポーラスアルミナ層32の厚さtpに特に上限はないものの、厚くしても電子放出効率が飽和する傾向があるので、製造効率の観点から、5μmよりも厚くする必要がない。
ポーラスアルミナ層32が有する複数の細孔34の深さDdは、例えば10nm以上5μm以下である。複数の細孔34の深さDdは、例えば50nm以上500nm以下であってもよい。複数の細孔34の深さDdは、ポーラスアルミナ層32の厚さに応じて適宜設定され得る。
ポーラスアルミナ層32が有するバリア層32bの厚さtbは1nm以上1μm以下であることが好ましい。バリア層32bの厚さtbは100nm以下であることがさらに好ましい。バリア層32bは、ポーラスアルミナ層32の底部を構成する層である。バリア層32bが1nmよりも薄いと電圧印加時に短絡が起こることがあり、逆に、1μmよりも厚いと半導電層30に十分な電圧を印加できないことがある。ポーラスアルミナ層32が有するバリア層32bの厚さtbは、一般に、細孔34の隣接間距離Dintおよび開口径(二次元的な大きさ)Dpとともに、陽極酸化条件に依存する。
以下、実験例を示しながら、本発明の実施形態による電子放出素子100をさらに詳細に説明する。
図4(a)〜(c)は、本発明の実施形態による電子放出素子における半導電層30A内の銀ナノ粒子の状態の違いを示す模式的な断面図である。図4(a)は、半導電層30Aが形成された直後の状態を示し、図4(b)はフォーミング後、駆動前の状態を示し、図4(c)は安定動作中の構造を示す。いずれも試作素子の断面を走査型透過電子顕微鏡(以下、「STEM」という。)で観察した結果に基づいて、模式化したものである。
半導電層30Aは、例えば、上述のようにして形成されたポーラスアルミナ層32Aに、Agナノ粒子42nを担持させることによって半導電層30Aが得られる。
Agナノ粒子としては、例えば、アルコール誘導体で被覆されたAgナノ粒子を有機溶媒に分散させたAgナノ粒子分散液(アルコール誘導体で被覆されたAgナノ粒子の平均粒径:6nm、分散溶媒:トルエン、Ag濃度:1.3質量%)を用いることができる。例えば、約5mm×約5mmの領域に形成されたポーラスアルミナ層32A上に、上記Agナノ粒子分散液を200μL(マイクロリットル)滴下し、例えば、500rpmで5秒間、その後1500rpmで10秒間の条件でスピンコートする。その後、例えば、150℃で1時間、焼成する。Agナノ粒子は、分散性を向上させるために、例えばアルコキシドおよび/またはカルボン酸、ならびにこれらの誘導体を末端に有する有機物で被覆されている。焼成工程は、上記有機物を除去または減少させることができる。
形成された直後の半導電層30Aでは、図4(a)に示す様に、Agナノ粒子42nは細孔34A内の下部に多く存在している。
フォーミングを行うと、図4(b)に示す様に、いくつかの細孔34A内で、Agナノ粒子42nが細孔34Aの深さ方向に配列し、細孔34Aの開口付近にまで分布するようになる。開口付近にまでAgナノ粒子42nが分布している細孔34A(図4(b)中の左から3番目の細孔34A)から電子が放出される。なお、フォーミングは、電子放出を安定化させるための通電処理のことをいう。フォーミングは、半導電層30Aの構造に依存するが、電子放出素子100に印加する電圧(例えば図7に示す駆動電圧Vd)を、例えば、周波数2kHz、デューティ比0.5の矩形波とし、この電圧を0.1V/secの速度で約20Vまで昇圧することによって行う。本明細書において、電子放出素子100に印加する電圧は、第1電極12の電位を基準にした第2電極52の電位で表す。電子放出素子100に印加する電圧が20Vである場合、例えば、第1電極12および第2電極52の電位は、例えば、それぞれ、−20Vおよび0Vである。ただし、この例に限られず、第1電極12の電位をグランド電位とし、第2電極52の電位を正の値としてもよい。
安定に電子を放出している間は、図4(c)に示す様に、Agナノ粒子42nが開口付近まで分布する細孔34Aが順次形成されていると考えられる。
その後、ポーラスアルミナ層32が局所的に破壊される現象が起こる。これは、電子放出に伴う発熱に起因していると考えられる。
図5(a)および(b)に試作素子の半導電層(未通電)の断面STEM像の例を示す。図5(b)は、図5(a)中の破線5bで包囲した領域の拡大像を示している。また、図5(b)中の白丸6a、6bおよび6cで示した領域内(Agナノ粒子と思われる黒い点の近傍)をエネルギー分散型X線分析(以下、「EDX」という。)で分析した結果を図6(a)、(b)および(c)に示す。STEMには、日本FEI製DB−Strata237を用い、EDXには、EDAX社製Genesis2000を用いた。以下においても、特に断らない限り同様である。
図5(a)から分かるように、細孔は表面に対して法線方向に伸びている。また、図6(a)、(b)および(c)において、Agの存在が確認されていることから、図5(b)中の黒い点は、Agナノ粒子と思われる。そうすると、Agナノ粒子は、細孔内にまばらに分散して担持されている。図5(a)および(b)に示す半導電層は、ポーラスアルミナ層32Aを有する。すなわち、ポーラスアルミナ層32Aが有する細孔34Aは、階段状の側面を有し、深さ方向において細孔径が異なる2つの細孔部分を有している。図5(a)および(b)では、より深い位置にある細孔部分について、より暗い像が得られていると考えられる。
図7および図8を参照して、実施例の電子放出素子の寿命を評価した結果について説明する。図7に、電子放出素子100の電子放出特性の測定系を模式的に示し、図8に、図5(a)および(b)に示した半導電層を有する電子放出素子100の通電試験結果(電子放出特性)を示す。
図7に示すように、電子放出素子100の第2電極52側に、第2電極52と対向するように対向電極110を配置し、電子放出素子100から放出される電子に起因して対向電極110に生じる電流を測定した。電子放出素子100に印加する駆動電圧をVd、素子内電流をId、対向電極110に印加する電圧(「回収電圧」ということがある。)をVe、対向電極110に生じる放出電流をIeとする。対向電極110と第2電極52との間の距離は0.5mm、対向電極110に印加する電圧Veは600Vとした。ここでは、図7に示すように、第2電極52の電位をグランド電位とし、第1電極12に負の電圧を印加した。ただし、この例に限られず、第2電極52から電子を放出させるためには、第2電極52の電位が第1電極12の電位よりも高ければよい。
図8には、素子内電流Id、放出電流Ie、および放出効率ηを、通電時間に対してプロットしている。放出効率ηは、η=Ie/Idで与えられる。放出効率ηは0.01%以上が必要で、0.05%以上有することが好ましい。
作製した電子放出素子100の構成を以下に示す。
第1電極12:JIS A1050(厚さ0.5mm)の内、陽極酸化された部分を除く部分
ポーラスアルミナ層(32A):開口径Dp 約100nm、深さDd 約2200nm、隣接間距離Dint 200nm、ポーラスアルミナ層の厚さtp 2200nm、バリア層の厚さtb 約50nm
深い方の細孔部分:細孔径Dp1 約20nm、深さDd1 約1500nm
浅い方の細孔部分:細孔径(開口径Dp) 約100nm、深さ 約700nm
Agナノ粒子42n:上記Agナノ粒子分散液に含まれているアルコール誘導体で被覆されたAgナノ粒子の平均粒径 6nm
第2電極52:Au層(厚さ40nm)
素子サイズ(第2電極52のサイズ):5mm×5mm
図5(a)および(b)に示すポーラスアルミナ層32Aは、蓚酸(0.05M、5℃)、化成電圧80Vで、約27分間、陽極酸化した後、燐酸(0.1M、25℃)で20分間、エッチングし、その後、蓚酸(0.05M、5℃)、化成電圧80Vで、約27分間、再び陽極酸化することによって形成した。
電子放出素子100の通電試験は、上記のフォーミングを行った後、ON時間16秒、OFF時間4秒の間欠駆動によって行った。駆動条件を以下に示す。第1電極12と第2電極52との間に印加する駆動電圧Vd(パルス電圧)を周波数2kHz、デューティ比0.5の矩形波とし、駆動電圧Vdを、0.1V/secの速度で、放出電流Ieが規定値(ここでは4.8μA/cm)以上に到達するまで昇圧した。その後は、対向電極110でモニターされる放出電流Ieが一定になるように駆動電圧Vdを調整するフィードバック制御を行った。駆動環境は、25℃、相対湿度RHが30%〜40%であった。
図8から分かるように、実施例の電子放出素子100の寿命は約50時間であった。ここで、電子放出素子の寿命は、放出電流Ieが一定の値を維持できた時間とする。ここでは、中速のコピー機の帯電装置として用いられることを想定し、放出電流Ieが4.8μA/cmを維持できる時間の長さを電子放出素子の寿命として調べた。この値(4.8μA/cm)は、中速のコピー機の感光性ドラムの回転速度を285mm/secとし、この感光性ドラムを帯電させるために必要な放出電流として見積もられた値である。図8から分かるように、電子放出素子100の放出電流Ieは、4.8μA/cm(図8中の点線で示している値)を約50時間維持した。
なお、これまでの検討から、図9を参照して後述する比較例の電子放出素子200の第2電極74(Au層厚さ40nm単層)をPt層/Au層(20nm/20nm)の積層構造体とすることによって、寿命を約5倍(約160時間)にできることがわかっている(例えば特許文献2参照)。したがって、作製した電子放出素子100の第2電極52を上記の積層構造体に置換すれば、寿命は約250時間まで延び得る。
比較のために、図9に示す参照用の電子放出素子200を作製し、同様の評価を行った。図10に、比較例の電子放出素子200の通電試験結果(電子放出特性)を示す。図10には、素子内電流Id、放出電流Ie、および放出効率ηを、通電時間に対してプロットしている。
作製した電子放出素子の構成を以下に示す。
第1電極71:JIS A1050(厚さ:0.5mm)
絶縁層72:陽極酸化アルミナ層(封孔処理されたポーラスアルミナ層)、厚さ4μm
半導電層73:厚さ1μm〜2μm
絶縁体73m:シリコーン樹脂
Agナノ粒子73n:上記Agナノ粒子分散液に含まれているアルコール誘導体で被覆されたAgナノ粒子の平均粒径 6nm、シリコーン樹脂に対して1.5質量%
第2電極74:Au層(厚さ40nm)
素子サイズ(第2電極74のサイズ):5mm×5mm
絶縁層72は、図2(a)を参照して説明した電子放出素子100の絶縁層22と同様の方法で形成した。
図10から分かるように、比較例として作製した上記の電子放出素子200の寿命は約50時間であった。比較例の電子放出素子200の寿命は、実施例の電子放出素子100と同様に評価した。
図11に、比較例の電子放出素子200(未通電)の断面STEM像の例を示し、図12に、図11の断面(図11中の白丸2aで示す領域)をEDXで分析した結果を示す。
図11から分かるように、Agナノ粒子は、例えば、図11中の丸で示した領域内に存在している。シリコーン樹脂中に、Agナノ粒子が凝集した箇所(例えば図11中の白丸2a内)が複数形成されている。Agナノ粒子が凝集した箇所は、シリコーン樹脂中に不均一に分布している。
Agナノ粒子の分布状態(電界印加時のマイグレーションを含む)と、電子放出特性および/または素子寿命が関係していると考えられるが、具体的な相関関係を見出すには至っていない。しかしながら、本発明の実施形態による電子放出素子は、ポーラスアルミナ層の細孔にAgナノ粒子を担持するので、細孔の開口径、細孔の深さ、細孔の隣接間距離等を制御することによって、Agナノ粒子の分布状態を制御することできる。従って、電子放出素子の特性の向上および/または長寿命化を達成し得る。
次に、下記の表1に示す3種類の電子放出素子の試料サンプルNo.1〜No.3の評価を行った。
ここで例示するように、アルミニウムの純度が99.00質量%以上99.99質量%未満である比較的剛性の高いアルミニウム基板(厚さ0.2mm以上)を用いて第1電極を形成すると、アルミニウム基板は支持基板として利用できるので、電子放出素子を効率よく製造することができる。
試料サンプルNo.1〜No.3は、第1電極12を形成するために用いたアルミニウム基板12の組成(例えばアルミニウムの含有量)において、互いに異なる。試料サンプルNo.1(厚さ:0.5mm)の構成および製造方法は、図7および図8を参照して説明した電子放出素子100と基本的に同じである。ただし、ここでは、ポーラスアルミナ層32A(約5mm×約5mmの領域)上に、上記Agナノ粒子分散液を200μL(マイクロリットル)滴下する工程と、その後、500rpmで5秒間、続いて1500rpmで10秒間の条件でスピンコートする工程とを交互に3回ずつ繰り返した。その後、150℃で1時間、加熱した。試料サンプルNo.2(厚さ:0.5mm)およびNo.3(厚さ:0.2mm)は、アルミニウム基板12の組成を除いて試料サンプルNo.1と同じである。
表1には、試料サンプルNo.1〜No.3の第1電極12を形成するアルミニウム基板の組成の主な成分を示している。
試料サンプルNo.1は、アルミニウム基板12としてJIS A1050を用いて作製した。JIS A1050は、下記の組成(質量%)を有している。
Si:0.25%以下、Fe:0.40%以下、Cu:0.05%以下、Mn:0.05%以下、Mg:0.05%以下、Zn:0.05%以下、V:0.05%以下、Ti:0.03%以下、その他:個々は0.03%以下、Al:99.50%以上
試料サンプルNo.2は、アルミニウム基板12としてJIS A1100を用いて作製した。JIS A1100は、下記の組成(質量%)を有している。
Si+Fe:0.95%以下、Cu:0.05%〜0.20%、Mn:0.05%以下、Zn:0.10%以下、その他:個々は0.05%以下で、全体は0.15%以下、Al:99.00%以上
試料サンプルNo.3は、アルミニウム基板12としてアルミニウムを99.98質量%以上含むアルミニウム基材を用いて作製した。試料サンプルNo.3のアルミニウム基板12は、下記の組成(質量%)を有している。
Si:0.05%以下、Fe:0.03%以下、Cu:0.05%以下、Al:99.98%以上
試料サンプルNo.1〜No.3の通電試験は、図8を参照して説明した通電試験と基本的に同様に行った。ただし、ここでは、簡単のために、駆動電圧Vdのフィードバック制御を行わなかった。具体的には、上記のフォーミングを行った後、駆動電圧Vd(周波数2kHz、デューティ比0.5の矩形波)を、1サイクルにつき0.05Vの速度で26Vまで昇圧し、その後は26Vを維持した。ここで、間欠駆動のON時間16秒およびOFF時間4秒を1サイクルとする。駆動環境は20〜25℃、相対湿度RHが30%〜40%であった。
試料サンプルNo.1〜No.3のいずれにおいても、駆動電圧Vdがおよそ10V以上になると放出電流Ieが徐々に増加した。駆動電圧Vdの増大とともに放出電流Ieが増大することを確認することによって、電子放出素子として駆動していると判断した。このように、試料サンプルNo.1〜No.3のいずれも電子放出素子として駆動することが確かめられた。
表2に、各試料サンプルについて、放出電流Ieの平均値を求めた結果を示す。表2中、「△」は、放出電流Ieの平均値が0.001μA/cm以上0.01μA/cm未満であったことを示し、「○」は、放出電流Ieの平均値が0.01μA/cm以上0.1μA/cm未満であったことを示し、「◎」は、放出電流Ieの平均値が0.1μA/cm以上4.8μA/cm未満であったことを示している。
アルミニウム基板の純度(アルミニウム含有率)が試料サンプルNo.1よりも低い試料サンプルNo.2において、放出電流Ieの平均値は、試料サンプルNo.1よりも大きかった。一方で、アルミニウム基板の純度(アルミニウム含有率)が試料サンプルNo.1よりも高い試料サンプルNo.3において、放出電流Ieの平均値は、試料サンプルNo.1よりも小さかった。このように、アルミニウム基板の純度(アルミニウム含有率)が低いほど放出電流Ieの平均値が大きかった。
ただし、上記の通電試験は駆動条件の一例であり、電子放出素子の駆動条件によって、放出電流Ieの値は変化し得る。また、放出電流Ieの平均値(すなわち単位時間当たりの電子放出量)が大きい状態で駆動すると、電子放出素子として駆動できる時間が短くなり得る。なお、ここでの「電子放出素子として駆動できる時間」は、電子放出素子として駆動することが確認できた時から、同じ駆動電圧Vdに対して放出電流Ieの値が低下する時までをいい、例えば図8を参照して説明した「寿命」(放出電流Ieが一定の値を維持できた時間)とは異なる定義で用いられている。
電子放出素子に求められる放出電流の値および駆動できる時間の長さは、用途(すなわち駆動条件)によって変化し得るものの、例えば、大きい放出電流値が求められる用途では、アルミニウムの純度が比較的低い(99.00質量%以上99.50質量%以下)アルミニウム基材を用いることが好ましい。また、例えば、長時間駆動できることが重視される用途では、アルミニウムの純度が比較的高い(99.50質量%以上99.98質量%以下)アルミニウム基材を用いることが好ましい。
このアルミニウムの純度がどのようなメカニズムで電子放出素子の特性に影響を与えているのかは現時点では明らかではないが、表1から分かるように、ここで用いたアルミニウム基板に不純物として含まれている元素は、Mgを除いて、アルミニウムよりも標準電極電位が高い(いわゆる「貴」な)元素である。したがって、アルミニウムよりも貴な不純物元素(例えば鉄)が電子放出素子の特性に影響を与えている可能性がある。
本発明者が、上述の方法で電子放出素子を試作したところ、正常に駆動しないことがあった。電子放出素子の種々の構造および製造方法を検討したところ、以下の方法で製造した電子放出素子ではそのような問題の発生が抑制されることが分かった。
図13(a)〜(e)および図14(a)〜(d)を参照して、本発明の実施形態による電子放出素子の他の製造方法およびそれによって製造される電子放出素子100Aの構造を説明する。図13(a)〜(e)および図14(a)〜(d)は、本発明の実施形態による、電子放出素子の他の製造方法を説明するための模式的な断面図である。以下では、図2(a)〜(c)を参照して説明した製造方法と異なる点を主に説明する。
まず、図13(a)に示すように、アルミニウム基板12を用意する。
次に、図13(b)に示すように、アルミニウム基板12の表面12sを部分的に覆うマスク(絶縁性部材)90を形成する。マスク90は、アルミニウム基板12の表面12sの素子形成領域を覆うように形成される。
アルミニウム基板12の表面12sのうち、マスク90で覆われていない部分を陽極酸化することによって、図13(c)に示すように、陽極酸化層22を形成する。陽極酸化層22は、アルミニウム基板12の表面12sを部分的に覆うように形成された絶縁層(「電極間絶縁層」ということがある。)22を構成する。陽極酸化層22は例えばポーラスアルミナ層を含む。陽極酸化層22に対してさらに封孔処理を行ってもよい。
次に、図13(d)に示すように、アルミニウム基板12の表面12sを陽極酸化することによって、複数の細孔34を有するポーラスアルミナ層32を形成する。ここで、アルミニウム基板12のうちで陽極酸化されずに残ったアルミニウム残存層によって、第1電極12が形成される。
続いて、図13(e)に示すように、複数の細孔34内に銀ナノ粒子42nを付与することによって、ポーラスアルミナ層32と複数の細孔34内に担持された銀ナノ粒子42nとを含む半導電層30を形成する。
次に、図14(a)に示すように、アルミニウム基板12の実質的に全面に絶縁層形成溶液36を付与(例えば塗布または印刷)する。ここで、「実質的に全面」とは、少なくともアルミニウム基板12の素子形成領域を含む。アルミニウム基板12が、例えば、間隔を空けて並べられた複数の素子形成領域を含む場合は、少なくともそれぞれの素子形成領域に絶縁層形成溶液36が付与されればよい。素子形成領域は、例えば第2電極52が形成される領域によって画定される。図14(a)に示すように、絶縁層形成溶液36は、例えば、ポーラスアルミナ層32上および複数の細孔34の側面に付与される。
続いて、絶縁層形成溶液36に含まれる溶媒を少なくとも減少させることによって、図14(b)に示すように、絶縁層37を形成する。つまり、絶縁層形成溶液36に含まれる溶媒を減少または除去することによって、絶縁層37を形成する。ここで形成される絶縁層37は、絶縁層形成溶液36に含まれていた溶媒を含んでもよい。ただし、絶縁層37に含まれる溶媒は、絶縁層形成溶液36に含まれていた溶媒よりも減少している。
なお、絶縁層37が溶媒を含む場合は、第2電極52を形成した後に、例えばフォーミングを行うことによって、絶縁層37に含まれる溶媒をさらに減少させてもよい。例えば、フォーミングを行うことによって、絶縁層37の焼成が行われてもよい。
次に、図14(c)に示すように、絶縁層37上に導電膜52’を例えばスパッタ法などによって堆積する。
その後、図14(d)に示すように導電膜52’をパターニングすることによって、第2電極52を形成する。
このようにして、電子放出素子100Aが製造される。
上述したように、以上の方法で製造した電子放出素子においては、正常に駆動しないという問題の発生が抑制された。本発明者の検討によると、試作した電子放出素子が正常に駆動しない理由として、半導電層30の導電性の上昇および/または第1電極12と第2電極52との間に形成された絶縁層22の絶縁性の低下が考えられることが分かった。例えば、電子放出素子の製造プロセスにおいて、ポーラスアルミナ層32に導電性微粒子であるAgナノ粒子が過剰に添加されると、半導電層30の導電性が過度に上昇し、電子が放出されないことがある。また、例えば絶縁層22が封孔処理を施されていない陽極酸化層22である場合、絶縁層(陽極酸化層)22の内部に、第2電極52を形成するための導電膜を堆積する際の蒸着材料および/またはAgナノ粒子が付着・拡散することによって、陽極酸化層22の絶縁性の低下が生じ得ることが考えられる。第2電極52が金属を含む場合、第2電極52を形成するための導電膜は、金属を含む。なお、第2電極52の形成方法は、この例に限られない。なお、以上は本発明者の考察であり、本発明を限定するものではない。
これに対して、図13および図14を参照して説明した製造方法では、第2電極52を形成する前に、絶縁層形成溶液36をアルミニウム基板12の実質的に全面に付与する。この方法によって製造された電子放出素子100Aは、ポーラスアルミナ層32上および複数の細孔34内に形成された絶縁層37をさらに有する点において、例えば図1に示した電子放出素子100と異なる。電子放出素子100Aは、絶縁層形成溶液36によって形成された絶縁層37を有することによって、半導電層30の導電性の上昇および/または絶縁層22の絶縁性の低下が生じても、第1電極12と第2電極52との間を適切に絶縁することができる。これにより、正常に駆動しないという問題の発生を抑制することができる電子放出素子が得られる。
絶縁層形成溶液36は、例えば、シロキサン結合を有する重合体(「ポリシロキサン系化合物」ということがある。)と、溶媒とを含む。ポリシロキサン系化合物は、例えば、ポリシロキサンのシラノール基等の反応性基を架橋点としてシロキサン結合が3次元的に形成されている重合体であってもよい。
絶縁層形成溶液36として、例えば、東京応化工業株式会社製のOCD T−12 1200Vを用いることができる。OCD T−12 1200Vは、(HSiO1.5で表され、加熱(焼成)によって末端−OH基が縮合し、3次元の網目構造を形成することができる。OCD T−12 1200Vの化学構造式を[化1]に示す。絶縁層形成溶液36としてOCD T−12 1200Vを用いると、絶縁層形成溶液36および絶縁層37は、シロキサン結合を有する重合体を含み、絶縁層37は、実質的に炭素を含まない。
あるいは、絶縁層形成溶液36として、無機材料と有機材料のハイブリッド材料を用いてもよい。無機材料と有機材料のハイブリッド材料として、例えば、シロキサン(例えば、メルク株式会社製のS03シリーズ、S05シリーズ、S06シリーズ、)またはシラザンを用いることができる。
絶縁層形成溶液36は、例えばスピンコート法によって、アルミニウム基板12上に塗布される。スピンコート法の条件によって、アルミニウム基板12上に付与する絶縁層形成溶液36の厚さを調整することができる。また、絶縁層形成溶液36を溶媒で希釈することによって、形成される絶縁層37の厚さを小さくすることができる。
なお、図13および図14を参照して説明した製造方法においても、アルミニウム基板に代えて、基板(例えばガラス基板)上に形成されたアルミニウム層を用いてもよい。
図15(a)および図15(b)を参照して、図13および図14を参照して説明した方法によって製造された電子放出素子の構造の他の例を説明する。図15(a)および図15(b)は、それぞれ、電子放出素子100A1および100A2を模式的に示す断面図である。
図14(c)に示したように、電子放出素子100Aの絶縁層37は、ポーラスアルミナ層32上および複数の細孔34の側面に形成されている。これに対して、図15(a)に示すように、電子放出素子100A1の絶縁層37は、ポーラスアルミナ層32上に形成されているのに加えて、複数の細孔34をほぼ完全に埋めるように形成されている。
図15(b)に示すように、電子放出素子100A2の絶縁層37は、ポーラスアルミナ層32上および複数の細孔34の側面に形成されているのに加えて、複数の細孔34を部分的に(すなわち深さ方向の途中まで)埋めるように付与されている。
なお、本発明の実施形態は図示する例に限られない。例えば、図面では、絶縁層37は細孔34の側面を全て覆うように形成されているが、本発明の実施形態はこれに限定されるものではない。
図13および図14を参照して説明した方法によって電子放出素子を作製し、評価を行った。ここでは、電子放出素子の製造は、以下のように行った。なお、下記以外の条件は、図7および図8を参照して説明した電子放出素子100と同じである。
絶縁層形成溶液36:東京応化工業株式会社製のOCD T−12 1200V((HSiO1.5をPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)で5倍に希釈したもの)をPGMEA(溶媒)で3倍に希釈したもの
絶縁層形成溶液36の付与方法:スピンコート法(3000rpmで30秒間)
絶縁層37の形成方法:絶縁層形成溶液36を自然乾燥させる
絶縁層37の厚さ:500nm
図13および図14を参照して説明した方法によって製造された電子放出素子においては、図7および図8を参照して説明した電子放出素子100に比べて、正常に駆動しないという問題の発生が抑制されていた。
次に、絶縁層形成溶液36中の、シロキサン結合を含む重合体の含有率を変えて電子放出素子の試料サンプルNo.4〜No.6を作製し、評価を行った。
試料サンプルNo.4〜No.6は、図13および図14を参照して説明した方法を用いて、下記表3の条件で作製した。なお、下記以外の条件は、特に断らない限り、図7および図8を参照して説明した電子放出素子100と同じである。
絶縁層形成溶液36は、上記の東京応化工業株式会社製のOCD T−12 1200VをPGMEAで適宜希釈することによって得た。
表3の「絶縁層の厚さ」は、平らな面上に、絶縁層形成溶液36を試料サンプルと同じ条件で付与し、その後、100℃で5分間加熱することによって溶媒を除去した後に得られた絶縁層の厚さを指す。従って、付与した絶縁層形成溶液36の量が同じであれば、「絶縁層の厚さ」は、絶縁層形成溶液36の固形分濃度に比例する。ここでは、「絶縁層の厚さ」は断面SEM像から求めた。
試料サンプルNo.4〜No.6のいずれにおいても、絶縁層形成溶液36を付与した後、絶縁層形成溶液36を自然乾燥させることによって、絶縁層形成溶液36中の溶媒を少なくとも減少させ、その後、下記のフォーミングを行うことによって、絶縁層37を形成した。フォーミング中にも、絶縁層形成溶液36中の溶媒はさらに減少し得る。なお、電子放出素子の試料サンプルを駆動している間においても、絶縁層37中の溶媒が減少することもある。
試料サンプルNo.4〜No.6の通電試験は、図8を参照して説明した通電試験と基本的に同様に行った。具体的には、まずフォーミングを以下のように行った。第1電極12と第2電極52との間に印加する駆動電圧Vdを、周波数2kHz、デューティ比0.5の矩形波とし、この電圧を0.1V/secの速度で、放出電流Ieが規定値(ここでは4.8μA/cm)以上に到達するまで昇圧し、6分間通電させる操作を3回繰り返した。フォーミング時は、印加する駆動電圧Vdを最大で20Vまでとした。その後、以下のように駆動電圧Vdおよびデューティ比をフィードバック制御しながら、試料サンプルを駆動した。駆動電圧Vd(周波数2kHzの矩形波)の初期値を0V、デューティ比0.3とし、放出電流Ieが規定値(ここでは4.8μA/cm)以上に到達するまで、駆動電圧Vdの値およびデューティ比を、26Vおよびデューティ比0.5を最大として増加させた。放出電流Ieが規定値(ここでは4.8μA/cm)に達した後は、対向電極110でモニターされる放出電流Ieが一定になるように駆動電圧Vdの値およびデューティ比を調整した。駆動環境は、25℃、相対湿度RHが55%であった。
試料サンプルNo.4〜No.6の寿命、放出効率η(平均値)、素子内電流Id(平均値)および抵抗率ρ(平均値)を求めた結果を表4に示す。ここで、試料サンプルの寿命は、放出電流Ieが規定値(4.8μA/cm)を維持できた時間の長さを調べた。放出効率η、素子内電流Idおよび抵抗率ρは、放出電流Ieが規定値(4.8μA/cm)を維持できた期間における平均値を求めた。各試料サンプルの抵抗率ρとは、各試料サンプルの半導電層の電気抵抗率であり、以下の式から求めた。試料サンプルNo.4〜No.6においては、ポーラスアルミナ層32および銀ナノ粒子42nを含む半導電層30と、絶縁層37とが、この抵抗率ρに寄与していると考えられる。以下では、半導電層30と絶縁層37との寄与を含めて半導電層の抵抗率ということがある。
ρ[Ωcm]=(Vd[V]/Id[A/cm])×DR/tp[cm]
ここで、駆動電圧Vdのデューティ比をDRとし、ポーラスアルミナ層32の厚さtpを半導電層30の厚さとして用いた。試料サンプルNo.4〜No.6のポーラスアルミナ層32の厚さtpは、2.5[μm]=2.5×10−4[cm]であった。ポーラスアルミナ層32の平坦部分の上に形成された絶縁層37の厚さは、ポーラスアルミナ層32の厚さtpに比べて無視できるほど小さかった。
図16に、試料サンプルNo.4の通電試験結果(電子放出特性)を示す。図17〜図19に、試料サンプルNo.4〜No.6の半導電層(通電後)の断面STEM像の例を示す。
表4に示すように、試料サンプルNo.4〜No.6のうち、絶縁層形成溶液36中のシロキサン結合を含む重合体((HSiO1.5)の含有率が最も高い(10質量%)試料サンプルNo.4において、放出効率ηの平均値が最も高かった。放出効率ηの平均値は、絶縁層形成溶液36中のシロキサン結合を含む重合体((HSiO1.5)の含有率が高いほど高かった。試料サンプルの寿命は、絶縁層形成溶液36中のシロキサン結合を含む重合体((HSiO1.5)の含有率が低いほど長かった。
電子放出素子の放出効率ηは、上述したように、素子内電流Idに対する放出電流Ieの比(η=Ie/Id)で与えられる。すなわち、放出効率ηが高い場合、放出電流Ieに対して素子内電流Idが小さいので、消費電力を低下させ、発熱を抑えることができる。さらに、これにより、電子放出素子周辺への発熱の影響も抑制することができる。本実施形態の電子放出素子の製造方法は、ポーラスアルミナ層に絶縁層形成溶液を付与し、絶縁層を形成することによって、高い放出効率を有し、消費電力が抑制された電子放出素子を得ることができる。本実施形態の電子放出素子は、例えば、放出効率が寿命よりも重視される用途(すなわち駆動条件)に好適に用いられる。電子放出素子の駆動条件は、その用途(求められる性質)によって適宜調整されればよいが、低消費電力化にメリットがある場合は多いと考えられる。
放出効率を向上させることが好ましい用途では、絶縁層形成溶液中のシロキサン結合を含む重合体の含有率がある程度高い(例えば7質量%以上20質量%未満である)ことが好ましい。絶縁層形成溶液中のシロキサン結合を含む重合体の含有率は例えば約10質量%である。
絶縁層形成溶液中のシロキサン結合を含む重合体の含有率がどのようなメカニズムで電子放出素子の特性に影響を与えているのかは現時点では明らかではないが、例えば本発明者は以下のように考察した。ただし、以下は本発明者の考察であり、本発明を限定するものではない。
表4に示したように、絶縁層形成溶液36の固形分濃度によって、半導電層の電気抵抗率が異なる。半導電層の抵抗率ρは、絶縁層形成溶液36中のシロキサン結合を含む重合体((HSiO1.5)の含有率が高いほど、高かった。半導電層の抵抗率ρが高いと、素子内電流Idが小さくなる傾向にあるので、放出効率ηを高くすることができる。高効率化の観点からは、上記の試料サンプルの例では、試料サンプルNo.4の半導電層の抵抗率が最も好ましく、試料サンプルNo.4の絶縁層形成溶液36の固形分濃度が最も好ましかったと考えられる。
なお、本発明者は、上記の試料サンプルNo.4〜No.6以外にも、絶縁層形成溶液36として東京応化工業株式会社製のOCD T−12 1200Vを溶媒で希釈せずに用いた試料サンプル(すなわち、絶縁層形成溶液中のシロキサン結合を含む重合体((HSiO1.5)の含有率は20質量%)を作製したが、この試料サンプルの放出電流Ieは規定値(4.8μA/cm)まで到達しなかった。原因の1つとして、絶縁層形成溶液36の固形分濃度が高かったために、半導電層の抵抗率が高すぎたことが考えられる。電子が安定に放出されるためには、素子内電流Idの値がある程度以上大きいことが好ましいので、半導電層の抵抗率が高過ぎないことが好ましいと考えられる。
絶縁層37を有することによって、以下のような利点も得られ得る。図17の断面STEM像に示すように、試料サンプルNo.4においては、銀ナノ粒子が、ポーラスアルミナ層32の細孔34の深さの全体に渡って分布している様子が確認される。銀ナノ粒子は、絶縁層37によって細孔34の壁面に固定されていると考えられる。
なお、半導電層の抵抗率は、上記の計算式から分かるように、駆動電圧Vdおよびそのデューティ比によっても変化し得る。本実施形態の電子放出素子は、絶縁層37を有することによって、半導電層の抵抗率を制御しやすくなる。これにより、高い放出効率を有する電子放出素子を得やすくなるというメリットがある。
本発明の実施形態は、例えば、画像形成装置の帯電装置に用いられる電子放出素子およびその製造方法として好適に用いられる。
12 :第1電極(アルミニウム基板)
22 :絶縁層
30、30A :半導電層
32、32A、32B、32C :ポーラスアルミナ層
32b :バリア層
34、34A、34B、34C :細孔
36 :絶縁層形成溶液
37 :絶縁層
42 :細孔34内に担持された銀(Ag)
42n :Agナノ粒子
52 :第2電極
71 :第1電極
72 :絶縁層
73 :半導電層
73m :絶縁体
73n :Agナノ粒子
74 :第2電極
100、100A、100A1、100A2、200 :電子放出素子

Claims (15)

  1. アルミニウム基板または基板に支持されたアルミニウム層を用意する工程Aと、
    前記アルミニウム基板の表面または前記アルミニウム層の表面を陽極酸化することによって、複数の細孔を有するポーラスアルミナ層を形成する工程Bと、
    前記複数の細孔内に銀ナノ粒子を付与することによって、前記複数の細孔内に銀ナノ粒子を担持させる工程Cと、
    前記工程Cの後に、前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層の表面の実質的に全面に、シロキサン結合を含む重合体を7質量%以上20質量%未満含む絶縁層形成溶液を付与する工程Dと、
    前記工程Dの後に、前記絶縁層形成溶液に含まれる溶媒を少なくとも減少させることによって、絶縁層を形成する工程Eと、
    前記工程Eの後に、前記絶縁層上に、電極を形成する工程Fと
    を包含する、電子放出素子の製造方法。
  2. 前記絶縁層形成溶液は、前記シロキサン結合を含む重合体を約10質量%含む、請求項1に記載の電子放出素子の製造方法。
  3. 前記工程Dは、前記絶縁層形成溶液を塗布または印刷する工程を包含する、請求項1または2に記載の電子放出素子の製造方法。
  4. 前記工程Dは、前記絶縁層形成溶液をスピンコート法によって塗布する工程を包含する、請求項1から3のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  5. 前記工程Fは、前記絶縁層上に導電膜を堆積する工程F1と、前記導電膜をパターニングすることによって前記電極を形成する工程F2とを包含する、請求項1から4のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  6. 前記電極は、金属を含む、請求項1から5のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  7. 前記工程Aで用意される前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層の表面、電極間絶縁層によって部分的に覆われている、請求項1から6のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  8. 前記工程Aは、アルミニウム基板または基板に支持されたアルミニウム層を用意する工程A1と、前記電極間絶縁層を形成する工程A2であって、前記工程A1で用意した前記アルミニウム基板または前記アルミニウム層の表面の一部を陽極酸化することによって形成される陽極酸化層を含む前記電極間絶縁層を形成する工程A2とを包含する、請求項7に記載の電子放出素子の製造方法。
  9. 前記工程Eは、前記絶縁層形成溶液を焼成する工程を包含する、請求項1から8のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  10. 前記工程Eは、前記絶縁層形成溶液を220℃以下で焼成する工程を包含する、請求項1から9のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  11. 前記工程Eは、前記絶縁層形成溶液を前記溶媒の沸点以上で焼成する工程を包含する、請求項1から10のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  12. 前記工程Bは、前記陽極酸化工程の後に行われるエッチング工程をさらに包含する、請求項1から11のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  13. 前記工程Bは、前記エッチング工程の後に、さらなる陽極酸化工程を包含する、請求項12に記載の電子放出素子の製造方法。
  14. 第1電極と、第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に設けられた半導電層とを有し、
    前記第1電極は、アルミニウム基板またはアルミニウム層から形成されており、
    前記半導電層は、前記アルミニウム基板の表面または前記アルミニウム層の表面に形成された、複数の細孔を有するポーラスアルミナ層と、前記複数の細孔内に担持された銀ナノ粒子とを有し、
    前記ポーラスアルミナ層上および前記複数の細孔内に形成された、シロキサン結合を含む重合体を含む絶縁層をさらに有し、
    前記複数の細孔の深さは約1000nm以上であって、前記銀ナノ粒子は、前記深さの半分以上に渡って分布し、前記絶縁層によって前記複数の細孔の壁面に固定されている、電子放出素子。
  15. 前記絶縁層は、実質的に炭素を含まない、請求項14に記載の電子放出素子。
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