図1は本発明に係る基板搬送態様決定方法の適用対象となる部品実装機を備えた部品実装システムの構成を模式的に示す平面図である。図2は図1に示す部品実装システムの主要な電気的構成を示すブロック図である。なお、図1では、Z方向が鉛直方向であり、X方向およびY方向がそれぞれ水平方向であるXYZ直交座標軸が示されている。両図に示すように、部品実装システム1は、部品実装機10とサーバーコンピューター9とを備える。
図1に示すように、部品実装機10は、Y方向の一方側に設けられた第1部品供給部2aと、Y方向の他方側に設けられた第2部品供給部2bとを備える。各部品供給部2a、2bでは、複数のフィーダー21がX方向に並んで取り付けられており、各フィーダー21が先端の部品取出部22に部品Eを供給する。なお、部品Eには、半導体集積回路装置、トランジスタ、コンデンサおよび抵抗などの小型の電子部品が含まれる。
また、部品実装機10は、第1部品供給部2aと第2部品供給部2bとの間で並列に配列された第1搬送部3aと第2搬送部3bとを備える。こうしてY方向に隣り合う第1搬送部3aおよび第2搬送部3bのうち、第1搬送部3aは第1部品供給部2a側に配置され、第2搬送部3bは、第2部品供給部2b側に配置されている。換言すれば、第1部品供給部2aは、Y方向において第1搬送部3aを挟んで第2搬送部3bの逆側に配置され、第2部品供給部2bは、Y方向において第2搬送部3bを挟んで第1搬送部3aの逆側に配置されている。これら搬送部3a、3bのそれぞれは、基板搬送方向であるX方向にこの順で並ぶ第1コンベアユニット31、第2コンベアユニット32および第3コンベアユニット33で構成され、基板Bをほぼ水平に支持しつつX方向へ搬送する。これらコンベアユニット31、32、33のそれぞれは、Y方向に間隔を空けて並ぶ一対のコンベア35、35を有し、コンベア35、35のY方向の間隔が基板BのY方向への幅に応じて変更可能となっている。
この第1搬送部3aでは、第1コンベアユニット31がX方向の上流側から基板Bを搬入すると、第2コンベアユニット32がこの基板Bを第1コンベアユニット31から受け取って所定の作業位置(図1における基板B脳位置)に搬入・保持する。また、後述する第1ヘッドユニット4aが作業位置の基板Bへの部品実装を完了すると、第2コンベアユニット32が基板Bを作業位置からX方向の下流側へ搬送し、第3コンベアユニット33がこの基板Bを第2コンベアユニット32から受け取ってX方向の下流側へ搬出する。こうして、第1搬送部3aは、作業位置への基板Bの搬入、作業位置での基板Bの保持、および作業位置からの基板Bの搬出を実行する。同様に第2搬送部3bも、作業位置への基板Bの搬入、作業位置での基板Bの保持、および作業位置からの基板Bの搬出を実行する。
さらに、部品実装機10は、第1部品供給部2aに対応して設けられた第1ヘッドユニット4aと、第2部品供給部2bに対応して設けられた第2ヘッドユニット4bとを備える。また、部品実装機10は、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bを支持するために、それぞれX方向に延設された第1支持部5aおよび第2支持部5bを備える。第1支持部5aおよび第2支持部5bのそれぞれは、X方向に延びるボールネジ51と、ボールネジ51を回転させるX軸モーター52とを有する。そして、第1支持部5aは、X軸モーター52によりボールネジ51を回転させることでボールネジ51のナット511に取り付けられた第1ヘッドユニット4aをX方向へ駆動し、第2支持部5bは、X軸モーター52によりボールネジ51を回転させることでボールネジ51のナット511に取り付けられた第2ヘッドユニット4bをX方向へ駆動する。
また、第1支持部5aおよび第2支持部5bはY軸モーター53(リニアモータ)によってY軸レール54に沿ってY方向に移動可能である。すなわち、第1支持部5aおよび第2支持部5bの両端部には、界磁コイルがリニアモータの可動子として取り付けられている。一方、Y軸レール54では、複数の永久磁石がY方向に沿って配列されてリニアモータの固定子として機能する。そして、第1支持部5aの可動子に電流が供給されると、第1支持部5aが第1ヘッドユニット4aを伴ってY方向に移動し、第2支持部5bの可動子に電流が供給されると、第2支持部5bが第2ヘッドユニット4bを伴ってY方向に移動する。こうして、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのそれぞれは、第1搬送部3aおよび第2搬送部3bの上方をXY方向に移動可能である。
第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのそれぞれは、X方向に並ぶ8本の実装ヘッド41を有する。そして、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのうち、第1部品供給部2a側の第1ヘッドユニット4aは第1部品供給部2aが供給する部品Eを吸着して、第1搬送部3aにより作業位置に保持される基板Bに移載する。一方、第2部品供給部2b側の第2ヘッドユニット4bは第2部品供給部2bが供給する部品Eを吸着して、第2搬送部3bにより作業位置に保持される基板Bに移載する。
そして、上記の機械的構成を制御するために、部品実装機10は、装置各部を制御する制御部100を備える(図2)。この制御部100は、CPU(Central Processing Unit)やRAM(Random Access Memory)等で構成されたコンピューターである演算処理部110と、実装プログラムPmや各種データを記憶する記憶部120と、各モーターの駆動を制御するモーター制御部130と、外部との通信を行う通信制御部140とを有する。そして、演算処理部110は実装プログラムPmに従ってモーター制御部130に所定の制御動作を実行させることで、第1搬送部3aおよび第2搬送部3bのコンベアユニット31、32、33の駆動を制御したり、第1支持部5aおよび第2支持部5bのモーター52、53の駆動を制御したりする。これによって、制御部100は基板Bの部品実装を実行する。
ちなみに、第1搬送部3aが作業位置に保持する基板Bと第2搬送部3bが作業位置に保持する基板BとはY方向に互いに隣接し、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bはこうして隣接する2枚の基板Bにそれぞれ部品実装を行う。そこで、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bの相互干渉を防止するため、制御部100は、これらの基板Bの境界部分Bbに対して排他領域Reを設定し、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bの排他領域Reへの同時進入を禁止する。この排他領域Reは、第1搬送部3aにより保持される基板Bと、第2搬送部3bに保持される基板Bとの境界部分に重複するように設定される。こうして設定された排他領域Reは、第1搬送部3aに保持される基板Bの第2搬送部3b側の端部と、第2搬送部3bに保持される第2搬送部3bに保持される基板Bの第1搬送部3a側の端部とに重複する。そして、制御部100は、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのうち一方を排他領域Reに進入させている期間は他方は排他領域Reから退避させる。これによって、第1ヘッドユニット4aと第2ヘッドユニット4bとの相互干渉が防止される。
また、制御部100は、基板Bの部品の実装手順を規定する実装プログラムPmを、通信制御部140を介してサーバーコンピューター9から受信して、記憶部120に保存する。このサーバーコンピューター9は、CPUやRAM等で構成されたコンピューターである演算処理部910と、基板データDbや後述の基板搬送態様最適化プログラムPbを記憶する記憶部920と、部品実装機10の通信制御部140との間で通信を行う通信制御部930とを備える。そして、基板Bの表面の各部品実装箇所の位置や、部品実装箇所に実装する部品の種類等を示す基板データDbに基づき、サーバーコンピューター9の演算処理部910が実装プログラムPmを作成し、通信制御部930を介して部品実装機10の制御部100に送信する。
さらに、サーバーコンピューター9は、部品実装機10が備える第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによるほぼ水平な基板Bの搬送態様を適切化して、その結果をユーザーインターフェース94に表示する。これによって、ユーザーは、ユーザーインターフェース94での表示結果に応じて基板Bを部品実装システム1に搬入するための段取りを実行できる。続いては、サーバーコンピューター9による基板搬送態様の適切化処理について説明する。
図3は図1の部品実装機に対して実行可能な基板搬送態様の適切化処理の例を示すフローチャートである。このフローチャートは部品実装システム1で重複した期間に部品を実装予定の2枚の基板Bの第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる搬送態様を適切化するものであり、サーバーコンピューター9の演算処理部910が基板搬送態様最適化プログラムPbに基づく演算を行うことで実行される。なお、図3のフローチャートでは、第1搬送部3aを第1搬送レーンと示し、第2搬送部3bを第2搬送レーンと示した。
ここで、基板Bの搬送態様とは、
・第1搬送部3aが作業位置で基板Bを保持する角度(基板角度θa(m))
・第2搬送部3bが作業位置で基板Bを保持する角度(基板角度θb(n))
・第1搬送部3aおよび第2搬送部3bのうちの各基板Bの搬入先
を含む概念である。ここで、基板角度θa(m)、θb(n)は基板Bの法線に平行な軸(換言すれば、鉛直方向Zに平行となる垂直軸)回りの回転角度であり、本実施形態では、基板角度θa(m)としては、θa(1)=0度、θa(2)=90度、θa(3)=180度、およびθa(4)=270度の4通りがあり、基板角度θb(n)としては、θb(1)=0度、θb(2)=90度、θb(3)=180度、およびθb(4)=270度の4通りがある。なお、基板Bが取りうる各姿勢のうち、いずれの姿勢を基板角度θa(m)、θb(n)が0度である姿勢とするかは、例えばユーザーの作業等により予めサーバーコンピューター9に設定されている。
ステップS101では、第2搬送部3bでの基板角度θb(n)が初期角度θb(1)に設定され、ステップS102では、第1搬送部3aでの基板角度θa(m)が初期角度θa(1)に設定される。そして、部品実装システム1で重複した期間に部品を実装予定の2枚の基板Bのうち、一方の搬入先が第1搬送部3aに設定され、他方の搬入先が第2搬送部3bに設定される(ステップS103)。こうしてステップS101〜S103によって基板Bの搬送態様が設定されると、部品実装システム1が当該搬送態様で搬送された各基板Bに対して実装プログラムPmに従って部品実装を行うシミュレーションを演算処理部910が演算により実行する(ステップS104)。特に、このシミュレーションでは、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのうち一方が排他領域Reに進入している期間は他方は排他領域Reから退避する。そして、このステップS104では、2枚の基板Bの両方への部品実装を完了するのに要する予想実装時間がシミュレーション結果から求められて、記憶部920に記憶される。
こうして、一の搬送態様について予想実装時間が求まると、搬送態様を変更して同様のシミュレーションを行って予想実装時間を求める。つまり、ステップS105では、各基板Bの搬送先を第1搬送部3aと第2搬送部3bとの間で入れ換えることで、基板Bの搬送態様が変更される。これによって、ステップS103で設定された搬送先とは反対の搬送先に2枚の基板Bそれぞれが搬送されると設定される。そして、ステップS106では、上記のステップS104と同様にシミュレーションが行われ、ステップS105で変更した搬送態様で搬送された2枚の基板Bの両方の部品実装が完了するのに要する予想実装時間が求められて、記憶部920に記憶される。
ステップS107では、第1搬送部3aが基板Bを保持する際の4通りの基板角度θa(m)を識別するためのパラメーターmが最大値(=4)であるか判断され、パラメーターmが最大値未満であれば(ステップS107で「NO」)、ステップS108に進む。一方、パラメーターmが最大値であれば(ステップS107で「YES」)、ステップS109に進む。ここでは、パラメーターmは最大値未満であるため、ステップS108に進み、パラメーターmがインクリメントされる。つまり、ステップS108では、第1搬送部3aでの基板角度θa(m)を変更することで、基板Bの搬送態様が変更される。そして、パラメーターmが最大値となるまでステップS103〜S106を上記と同様に繰り返し実行することで、第1搬送部3aでの基板角度θa(m)および各基板Bの搬入先が互いに異なる複数の搬送態様について、予想実装時間が求まる。
パラメーターmが最大値となると(ステップS107で「YES」)、第2搬送部3bが基板Bを保持する4通りの基板角度θb(n)を識別するためのパラメーターnが最大値(=4)であるか判断され、パラメーターnが最大値未満であれば(ステップS109で「NO」)、ステップS110に進む。一方、パラメーターnが最大値であれば(ステップS109で「YES」)、ステップS111に進む。ここでは、パラメーターnは最大値未満であるため、ステップS110に進み、パラメーターnがインクリメントされる。つまり、ステップS110では、第2搬送部3bでの基板角度θb(n)を変更することで、基板Bの搬送態様が変更される。そして、パラメーターnが最大値となるまで、ステップS103〜S108を上記と同様に繰り返し実行することで、第1搬送部3aでの基板角度θa(m)、第2搬送部3bでの基板角度θb(n)および各基板Bの搬入先が互いに異なる複数の搬送態様について、予想実装時間が求まる(図4)。
ここで、図4は複数の搬送態様について求められた予想実装時間をテーブル形式で示す図である。以上の演算を行うことで、記憶部920には図4に示すデータが保存される。そして、パラメーターnが最大値となり(ステップS109で「YES」)、図4に示すデータが全て揃うと、ステップS111に進む。このステップS111では、複数の搬送態様それぞれについて求められた図4に示す予想実装時間のうちから最短の予想実装時間に対応する搬送態様が、部品実装機10の第1搬送部3aおよび第2搬送部3bで実際に各基板Bを搬送する際の基板搬送態様に採用される。こうして、図3のフローチャートが終了すると、サーバーコンピューター9は、ステップS111で採用した基板搬送態様で基板Bを搬送するための段取り作業を実行するようにユーザーインターフェース94に表示を行う。
図5は図3のフローチャートの実行結果の一例を模式的に示す図である。同図では、基板Bの表面のうち、部品Eを実装する予定の部品実装箇所Lが示されている。同図に示す「ワーストモード」では、第1搬送部3aに保持される基板Bの全部品実装箇所Lが排他領域Reに含まれるとともに、第2搬送部3bに保持される基板Bの全部品実装箇所Lが排他領域Reに含まれる。そのため、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bは同時には排他領域Reに入ることはできず、それぞれが時間をずらして個別に排他領域Reに進入する回数が多く、これらが排他領域Reでの部品実装を待機する時間も長くなる傾向にある。一方、同図に示す「ベストモード」では、第1搬送部3aに保持される基板Bの全部品実装箇所Lが排他領域Reの外に位置するとともに、第2搬送部3bに保持される基板Bの全部品実装箇所Lが排他領域Reの外に位置する。こうして各基板Bの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切化されているため、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのそれぞれが時間をずらして排他領域Reに進入する必要が無く、同時に全部品実装箇所Lに進入することができ、これらヘッドユニット4a、4bが排他領域Reでの部品実装を待機する時間も無い。このように図3の基板搬送態様適切化処理によれば、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの数が抑制されるように基板Bの搬送態様が決定され、さらに言えば、複数の搬送態様のうち、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの数が最少となる一の搬送態様が選択・採用される。
以上に説明した実施形態では、互いに異なる複数の搬送態様それぞれについて、各搬送態様で搬送された2枚の基板Bに部品実装を行った場合がシミュレーションされる。特にこのシミュレーションでは、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのうち一方が排他領域Reに進入している期間は他方は排他領域Reから退避する。そして、各搬送態様について行ったシミュレーション結果に基づき、予想実装時間が最短となる搬送態様で2枚の基板Bを搬送すると決定される。
つまり、かかる方法では、部品実装機10で重複した期間に部品Eを実装予定の2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係に基づき、部品実装機10の第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる当該2枚の基板Bの搬送態様が決定される。したがって、部品実装機10で搬送・保持される2枚の基板Bそれぞれ部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切となるように、2枚の基板Bの搬送態様を決定することができ、その結果、部品実装の効率化を図ることが可能となっている。
また、2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係に基づき、2枚の基板Bのそれぞれが第1搬送部3aおよび第2搬送部3bで保持される際の基板角度θa(m)、θb(n)が決定される。したがって、2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切となるように、2枚の基板Bのそれぞれが第1搬送部3a・第2搬送部3bで保持される際の基板角度θa(m)、θb(n)を決定することができ、その結果、部品実装の効率化を図ることが可能となっている。
また、図3に示した基板搬送態様適切化処理のステップS104、S106のシミュレーションでは、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bのうち一方が排他領域Reに進入している期間は他方は排他領域Reから退避する。このようなシミュレーションを行った結果に基づき採用される基板搬送態様は、2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係に基づき、第1搬送部3aおよび第2搬送部3bのうちから2枚の基板Bの一方の搬入先と他方の搬入先とを決定したものとなる。つまり、図5に具体例を示したように、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lが多いワーストモードではなく、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lが無いベストモードが選択される。こうして、2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切となるように、2枚の基板Bのそれぞれの搬送先を第1搬送部3aおよび第2搬送部3bのうちから決定することができ、その結果、部品実装の効率化を図ることが可能となっている。
ところで、上記実施形態では、1台の部品実装機10を備える部品実装システム1を例に挙げて説明を行った。しかしながら、X方向に直列に並ぶ複数の部品実装機10を備える部品実装システム1において基板Bの搬送態様を決定するに際しても、上記の基板搬送態様適切化処理を用いることができる。
図6は本発明に係る基板搬送態様決定方法の適用対象となる部品実装機を備えた部品実装システムの他の例の構成を模式的に示す平面図である。同図に示すように、この部品実装システム1では、3台の部品実装機10がX方向に直列に配置されており、3台の部品実装機10が同一の基板Bの複数の部品実装箇所Lへの部品実装を分担して行う。なお、同図では、これら3台の部品実装機10を区別するために、X方向の上流側から異なる符合10A、10B、10Cが付されている。また、部品実装機10A〜10C内に保持される基板Bの表面に示された白抜きの部品実装箇所Lは、該当する部品実装機10A〜10Cが部品実装を担当する部品実装箇所Lを示す。つまり、部品実装機10Aは部品実装箇所Laへの部品実装を担当し、部品実装機10Bは部品実装箇所Lbへの部品実装を担当し、部品実装機10cは部品実装箇所Lcへの部品実装を担当する。また、ハッチングが施された部品実装箇所Lは、X方向の上流側の部品実装機10により部品が実装済みの部品実装箇所Lを示す。
この部品実装システム1は、X方向に隣り合う2台の部品実装機10、10の間に、搬送態様調整装置7を備える。各搬送態様調整装置7は、第1搬送部71aと、Y方向で第1搬送部71aに隣り合う第2搬送部71bとを有する。こうして並列に配列された第1搬送部71aおよび第2搬送部71bのそれぞれは、Y方向に間隔を空けて配置された一対のコンベア72、72を有し、これらコンベア72、72によってX方向へ基板Bを搬送する。そして、各搬送態様調整装置7では、第1搬送部71aがX方向の上流側の部品実装機10の第1搬送部3aから受け取った基板Bを一時的に保持した後に、X方向の下流側の部品実装機10の第1搬送部3aに搬送するとともに、第2搬送部71bがX方向の上流側の部品実装機10の第2搬送部3bから受け取った基板Bを一時的に保持した後に、X方向の下流側の第2搬送部3bに搬送する。
さらに、各搬送態様調整装置7は、第1搬送部71aあるいは第2搬送部71bから基板Bをピックアップして回転可能なスカラーロボット74を有する。このスカラーロボット74は、特開2014−032989号公報(特許文献2)に記載のスカラーロボットと同様の構成を具備する。つまり、スカラーロボット74は、ベース部741と、基端部がベース部741に回転可能に取り付けられて水平方向に延びる第1アーム742と、第1アーム742の先端部に回転可能に取り付けられて水平方向に延びる第2アーム743とを有する。さらに、スカラーロボット74は第2アーム743の先端部に吸着ヘッド744を有し、第1アーム742および第2アーム743の回転角度を調整することで対象基板Bの直上に移動させた吸着ヘッド744の吸着により基板Bをピックアップする。
このような各搬送態様調整装置7は、第1搬送部71a、第2搬送部71bおよびスカラーロボット74を用いて、基板Bの回転角度を変更したり、第1搬送レーン8aと第2搬送レーン8bとの間で基板Bを入れ換えたりすることができる。つまり、基板Bの回転角度の変更は、基板Bをピックアップするスカラーロボット74の吸着ヘッド744を回転させることで基板Bを回転させた後に、基板Bを第1搬送部71aあるいは第2搬送部71bに載置することで実行できる。また、基板Bの入れ換えは、第1搬送部71aおよび第2搬送部71bのうち一方が基板Bを保持しつつ他方が空いている状態で、スカラーロボット74により一方からピックアップした基板Bを他方に移載することで実行できる。
このように部品実装システム1では、X方向に直列に配列された第1搬送部3a、71a、3a、71a、3aが第1搬送レーン8aを構成し、X方向に直列に配列された第2搬送部3b、71b、3b、71b、3bが第2搬送レーン8bを構成している。そして、部品実装システム1は、並列に配列された第1搬送レーン8aおよび第2搬送レーン8bのそれぞれで基板BをX方向に搬送しつつ各部品実装機10により基板Bに部品Eを実装する。この際、部品実装システム1は、各部品実装機10に基板Bを搬入する前に、基板Bの基板角度θa(m)、θb(n)や、搬入先となる第1搬送部3a・第2搬送部3bを搬送態様調整装置7により適宜調整できる。
そこで、この部品実装システム1が備えるサーバーコンピューター9は、各部品実装機10での基板Bの搬送態様を、図3に示した基板搬送態様適切化処理により適切化する。具体的には、各部品実装機10A〜10Cにおいて2枚の基板Bそれぞれの実装担当箇所La〜Lcと排他領域Reとの位置関係に基づき第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる2枚の基板Bの搬送態様を決定する処理(基板搬送適切化処理)を、部品実装機10A〜10Cのそれぞれに対して個別に行う。これによって、2枚の基板Bの搬送態様が部品実装機10毎に決定されて、ユーザーインターフェース94に表示される。
こうして、各部品実装機10での第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる2枚の基板Bの搬送態様が適切化された結果、部品実装機10A、10B、10Cのそれぞれでは、実装担当箇所La、Lb、Lcと排他領域Reとの位置関係が適切化されている。具体的には、部品実装機10Aでは、第1搬送部3aおよび第2搬送部3bに保持される基板Bの部品実装箇所Lのうち当該実装機10Aが実装を担当する全実装担当箇所Laが排他領域Reから外れている。同様に部品実装機10B、10Cにおいても、実装担当箇所Lb、Lcが排他領域Reから外れている。このように、図6に示す例においても、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの数が抑制されるように基板Bの搬送態様が決定され、さらに言えば、複数の搬送態様のうち、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの数が最少となる一の搬送態様が選択・採用される。
このように図6に示す例では、各部品実装機10A〜10Cにおける2枚の基板Bそれぞれの実装担当箇所La、Lb、Lcと排他領域Reとの位置関係に基づき、各部品実装機10A〜10Cの第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる基板Bの搬送態様が決定される。これによって、直列に配置された複数の部品実装機10A〜10Cを備える部品実装システム1において、部品実装機10A〜10Cで搬送・保持される2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切となるように、2枚の基板Bの搬送態様を決定することができ、その結果、部品実装の効率化を図ることが可能となっている。
図7は本発明に係る基板搬送態様決定方法の適用対象となる部品実装機を備えた部品実装システムの別の例の構成を模式的に示す平面図である。図8は図7の部品実装システムが備える部品実装機に対して実行可能な基板搬送態様の適切化処理の例を示すフローチャートである。図8では図3と共通するステップについては同じ符号が付されている。
図7の例が図6の例と異なる点は、搬送態様調整装置7を具備しない点である。このように図7の例では、搬送態様調整装置7を具備しないため、部品実装機10B、10Cへの搬入前に、基板Bの角度を変更することはできない。ただし、部品実装機10Aへの搬入前、換言すれば第1搬送レーン8aおよび第2搬送レーン8bへの搬入前であれば、基板Bの角度を変更可能である。そこで、サーバーコンピューター9は図8の基板搬送態様適切化処理を実行する。
上述と同様にステップS101、S102を実行することで、第2搬送レーン8bに搬入・保持される基板Bの基板角度θb(n)と、第1搬送レーン8aに搬入・保持される基板Bの基板角度θa(m)とが設定される。こうして基板Bの搬送態様が設定されると、当該搬送態様で第1搬送レーン8aおよび第2搬送レーン8bにより基板Bを搬送しつつ部品実装機10A〜10Cのそれぞれで部品実装を行った場合がシミュレーションされる(ステップS201)。こうしてステップS201では、ステップ部品実装機10A〜10Cそれぞれの予想実装時間が求められて、記憶部920に記憶される。そして、ステップS202では、部品実装システム1全体における予想サイクルタイムがステップS201で求めた部品実装機10A〜10Cの予想実装時間から算出される。
そして、基板角度θa(m)が最大値となるまでパラメーターmをインクリメントしながらステップS201、S202を繰り返し(ステップS107、S108)、さらに基板角度θb(n)が最大値となるまでパラメーターnをインクリメントしながらステップS201、S202、S107、S108を繰り返す(ステップS109、S110)。これによって、第1搬送レーン8aでの基板角度θa(m)、および第2搬送レーン8bでの基板角度θb(n)が互いに異なる複数の搬送態様について、予想サイクルタイムが求まる。そして、ステップS203では、複数の搬送態様それぞれについて求められた予想サイクルタイムのうちから最短の予想サイクルタイムに対応する搬送態様が、部品実装システム1の第1搬送レーン8aおよび第2搬送レーン8bで実際に各基板Bを搬送する際の基板搬送態様に採用される。こうして、図8のフローチャートが終了すると、サーバーコンピューター9は、ステップS203で採用した基板搬送態様で基板Bを搬送するための段取り作業を実行するようにユーザーインターフェース94に表示を行う。
このように図7の部品実装システム1は、第1搬送レーン8aおよび第2搬送レーン8bは、それぞれに搬入された基板Bを相互の間で入れ換えず、さらにそれぞれに搬入された基板Bの基板角度θa(m)、θb(n)を維持するとの制約条件を有する。そこで、図8の基板搬送態様適切化処理では、この制約条件の下で、各部品実装機10A、10B、10Cでの2枚の基板Bの実装担当箇所La、Lb、Lcと排他領域Reとの位置関係に基づき各部品実装機10A、10B、10Cの第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる2枚の基板Bの搬送態様が決定される。
こうして第1搬送レーン8aおよび第2搬送レーン8bによる2枚の基板Bの搬送態様が適切化された結果、部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切化されている。つまり、図7に示すように、部品実装機10A、10Bでは、第1搬送部3aおよび第2搬送部3bに保持される基板Bの部品実装箇所Lのうち当該実装機10A、10Bが実装を担当する全実装担当箇所Laが排他領域Reから外れている。ただし、上述の制約条件が存在するため、部品実装機10Cでは、当該実装機10Cが実装を担当する実装担当箇所Lcが排他領域Reに含まれている。ただし、部品実装システム1全体では、排他領域Re内に位置する部品実装箇所Lの数が抑えられており、サイクルタイムの短縮化が図られている。つまり、図7および図8に示す例では、部品実装システム1全体、換言すれば全ての部品実装機10A〜10Bにおいて、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの数が抑制されるように基板Bの搬送態様が決定され、さらに言えば、複数の搬送態様のうち、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの数が最少となる一の搬送態様が選択・採用される。
このように図7および図8に示す例では、各部品実装機10A〜10Cにおける2枚の基板Bそれぞれの実装担当箇所La、Lb、Lcと排他領域Reとの位置関係に基づき、各部品実装機10A〜10Cの第1搬送部3aおよび第2搬送部3bによる基板Bの搬送態様が決定される。これによって、直列に配置された複数の部品実装機10A〜10Cを備える部品実装システム1において、部品実装機10A〜10Cで搬送・保持される2枚の基板Bそれぞれの部品実装箇所Lと排他領域Reとの位置関係が適切となるように、2枚の基板Bの搬送態様を決定することができ、その結果、部品実装の効率化を図ることが可能となっている。
このように上記実施形態では、部品実装機10が本発明の「部品実装機」の一例に相当し、第1搬送部3aおよび第2搬送部3bが本発明の「2個の搬送部」の一例に相当し、第1ヘッドユニット4aおよび第2ヘッドユニット4bが本発明の「2個の実装部」の一例に相当し、制御部100が本発明の「制御部」の一例に相当し、図6あるいは図7に示した部品実装システム1が本発明の「部品実装システム」の一例に相当し、第1搬送部3aが本発明の「一方搬送部」の一例に相当し、第2搬送部3bが本発明の「他方搬送部」の一例に相当し、第1搬送レーン8aが本発明の「第1搬送レーン」の一例に相当し、第2搬送レーン8bが本発明の「第2搬送レーン」の一例に相当し、基板搬送態様最適化プログラムPbが本発明の「基板搬送態様決定プログラム」の一例に相当し、サーバーコンピューター9が本発明の「コンピューター」の一例に相当し、基板Bが本発明の「基板」の一例に相当し、X方向が本発明の「基板搬送方向」の一例に相当し、境界部分Bbが本発明の「境界部分」の一例の相当し、排他領域Reが本発明の「排他領域」の一例に相当し、部品Eが本発明の「部品」の一例に相当し、部品実装箇所Lが本発明の「部品実装箇所」の一例に相当し、実装担当箇所La、Lb、Lcのそれぞれが本発明の「実装担当箇所」の一例に相当し、図中に適宜示したZ軸が本発明の「垂直軸」の一例に相当する。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したものに対して種々の変更を加えることが可能である。例えば図3の基板搬送態様適切化処理では、基板角度θa(m)、θb(n)および基板Bの搬入先のそれぞれが異なる複数の搬送態様を設定し、これらの搬送態様のうちから最適な一の搬送態様が選択・採用されていた。しかしながら、複数の搬送態様を設定するにあたり、基板角度θa(m)、θb(n)および基板Bの搬入先の両方の組み合わせる必要は必ずしも無く、これらのうちの一方を変更しつつ他方を固定しても良い。つまり、基板角度θa(m)、θb(n)および基板Bのうち一方が互いに異なる複数の搬送態様を設定して、これらの搬送態様のうちから最適な一の搬送態様を選択・採用するように、基板搬送態様適切化処理を実行しても良い。
また、図6に示す部品実装システム1において、基板角度θa(m)、θb(n)を固定して、搬送態様の変更を基板Bの搬送先の入れ換えでのみ行う場合には、搬送態様調整装置7を図9に示すように構成しても良い。ここで、図9は搬送態様調整装置の別の例を模式的に示す図である。同図の搬送態様調整装置7では、スカラーロボット74は具備されない代わりに、第1搬送部71aおよび第2搬送部71bがそれぞれのコンベア72、72の間隔を保ったままY方向へ移動可能となっている。そして、X方向の下流側の部品実装機10の第1搬送部3aおよび第2搬送部3bのうち、基板Bの搬入先を入れ換えるにあたっては次の動作が実行される。
まず、第1搬送部71aがX方向の上流側の部品実装機10(図9では図示せず)の第1搬送部3aとX方向に一列に並び、第2搬送部71bがX方向の上流側の部品実装機10の第2搬送部3bとX方向に一列に並ぶ。そして、X方向の上流側の部品実装機10から2枚の基板Bが搬出されるのに伴って、第1搬送部71aが部品実装機10の第1搬送部3aから基板Bを受け取り、第2搬送部71bが部品実装機10の第2搬送部3bから基板Bを受け取る。
続いて、図9の(A)欄に示すように、第1搬送部71aおよび第2搬送部71bがY方向の一方側へ移動して、第2搬送部71bがX方向の下流側の部品実装機10の第1搬送部3aとX方向に一列に並び、第2搬送部71bからこの第1搬送部3aへ基板Bが受け渡される。続いて、図9の(B)欄に示すように、第1搬送部71aおよび第2搬送部71bがY方向の他方側へ移動して、第1搬送部71aがX方向の下流側の部品実装機10の第2搬送部3bとX方向に一列に並び、第1搬送部71aからこの第2搬送部3bへ基板Bが受け渡される。こうして、基板Bの搬入先を切り換えることができる。
また、基板角度θa(m)、θb(n)が異なる複数の搬送態様を設定するに際して、基板角度θa(m)、θb(n)が取りうる値は上記の4通りに限られず、4通りより少なくても多くても良い。
また、図5に示した例では、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lが無いモードがベストモードに選択されていた。しかしながら、複数の搬送態様のいずれにおいても、排他領域Reに1個以上の部品実装箇所Lが含まれる場合も生じうる。このような場合には、複数の搬送態様のうち、排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの個数が最小となるモードをベストモードに選択すれば良い。
また、上記の基板搬送態様適切化処理では、予想実装時間をシミュレーションした結果に基づき、基板Bの搬送態様が決定されていた。しかしながら、例えば複数の搬送態様のそれぞれで排他領域Reに含まれる部品実装箇所Lの個数を確認し、この個数が最少となる搬送態様を選択・採用するように基板搬送態様適切化処理を実行しても良い。