以下、添付図面を参照しつつ、本発明における炊飯器の好ましい実施例を説明する。
炊飯器全体の構成を図1〜図6に基づいて説明すると、1は有底状の本体、2は本体1の上面開口を開閉自在に覆う蓋で、これらの本体1と蓋2により炊飯器の外郭が形成される。蓋2の後部には本体1との連結部となるヒンジ3が設けられており、蓋2の前部上面に設けたフックボタン4を押動操作することで、蓋2と本体1との係合が解除され、蓋2がヒンジ3を回転中心として自動的に開く構成となっている。
本体1には、有底筒状で非磁性材料などからなる収容体5が形成され、この収容体5に
は、被調理物を収容する有底筒状の容器としての内釜6が着脱自在に設けられる。また内釜6の上端周囲には、外周側に延出する円環状のフランジ部7が形成される。フランジ部7は、収容体5に内釜6を収容したときに収容体5の上面に載置され、収容体5と内釜6との間に隙間を形成した状態で、内釜6が収容体5に吊設されるようになっている。ここでの内釜6は、図示しないものの、熱伝導性の良いアルミニウムを主材料とした母材の外面に、フェライト系ステンレスなどの磁性金属材料からなる発熱体を接合して構成され、内釜6を収容体5に収容すると、内釜6の外面が本体1の内部に配設された加熱コイル8(図12を参照)に対向して配置される。これにより、内鍋6の加熱手段となる加熱コイル8に高周波電流を供給すると、加熱コイル8から発生する交番磁界によって内釜6の発熱体が発熱し、炊飯時や保温時に内釜6ひいては内釜6内の被調理物が加熱される。
図3や図5は、内釜6の内部に被調理物となる米Rや水Wを入れた状態を示している。これらの各図において、被調理物が接する内釜6の内面には、内釜6内に投入した液体すなわち水Wの量の目安となる液位表示部として、好ましくは数字や文字が併記される水位線6Aが印刷形成される。水位線6Aは、刻印により内釜6の内面に凹凸が形成されたもの、および/または内釜6の内表面とは異なる色で印刷されたものなどからなる。なお図5では、内釜6の内部に米Rとして白米R1と玄米R2を混合して入れたものを示している。
蓋2の上面には、蓋開操作体としてのフックボタン4の他に、被調理物への加熱に伴い内釜6内部で発生した蒸気を、炊飯器の外部に放出するための蒸気口11が着脱可能に配設される。また、蓋2の下側には、蓋2の下部部材としての内蓋組立体12が配設される。内蓋組立体12は、内鍋6の上方開口部とほぼ同径の円盤状を有する金属材料からなる内蓋13と、内釜6と内蓋13との間をシールするために、当該内蓋13の外側全周に設けられる弾性部材としての蓋パッキン14と、内釜6の内圧力を調整する調圧部15とを備えている。環状に形成された蓋パッキン14は、蓋体2を閉じた蓋閉時に、内釜6の上面開口部に当接して、この内釜6と内蓋13との間の隙間を塞ぎ、内釜6から発生する蒸気を密閉する。また、蒸気口11と調圧部15は蓋体2の内部で連通しており、これらの蒸気口11や調圧部15により、内釜6内で発生した蒸気を蒸気口11から外部へ放出する蒸気排出機構が形成される。
ヒンジ3を取り囲む蓋2の収納凹部21には、内釜6内部を撮影する撮影手段22と、内釜6内部に向けて照明する照明手段23が、蓋体2と共に回動可能に配設される。撮影手段22は、被撮影物の形状や色を認識できる撮像素子のカメラなどから構成され、先端部にレンズ(図示せず)を備えているものである。また撮影手段22は、蓋2を開けた状態で内釜6内部の被撮影物を撮影できる位置に配置されるが、内釜6の内部を長期に亘り安定して撮影するために、蓋2の開閉に支障がなく、且つ加熱される内釜6からの熱影響を受けにくいように、設置する位置や仕組みや構造を選定することが望ましい。
図2には、撮影手段22から内釜6内部に向けての撮影方向となる視線軸Aが図示されている。本実施例の撮影手段22は、水位線6A全体を含む内釜6の上部から中心底部にかけての内面を撮影できる画角を有している。
照明手段23は、撮影手段22の各種動作や作用を補助するために、蓋2を開けた状態で、撮影手段22の撮影時に内釜6の内面、特に水位線6A付近を照明して、内釜6内部の明るさを確保できる位置に配置される。ここでは、照明手段23として指向性の高い白色LEDを用いているが、内釜6内部の被調理物をより自然光に近付けて撮影するには、内釜6の内部に向けて白色光を照射できる照明手段23とするのが好ましい。これにより、電球色などの照明手段23よりも内釜6に入れられた米Rや水Wを容易に識別できる。また、撮影手段22の視線軸Aとほぼ水平な方向から、照明手段23の光を照射するようにすれば、内鍋6の内面6Aに当たった光が反射して、水面を識別し易くなる効果が得られる。
31は、本体1の前部に配設した表示操作ユニットである。表示操作ユニット31は、撮影手段22で撮影した映像を表示する他に、時刻などの各種情報を表示する表示手段32と、この表示手段32を取り囲むように、複数の押動操作可能なキー33A〜33Hからなる操作手段33とを備えて構成される。本実施例では、切状態から予約炊飯を含む炊飯の開始を指示するための炊飯キー33Aと、切状態から保温の開始を指示するための保温キー33Bと、炊飯や保温を中止しして切状態にするための切キー33Cと、予約時刻の呼出しを指示するための予約キー33Dと、各種設定を選択するための選択キー33Eと、時刻などを進める進むキー33Fと、時刻などを戻す戻りキー33Gと、表示手段32の表示を、撮影手段22で撮影したライブ映像を含む映像モードとそれ以外のモードに切換えるカメラキー33Hと、により操作手段33を構成しているが、キー33A〜33Hの種類はこれに限定されず、また表示手段32に重ね合わせた透明なタッチパッドを操作手段33としてもよい。
図6は、表示手段32の表示形態として、カメラキー33Hの押動操作による映像モードとそれ以外の時刻表示モードとの切換わりを図示したものである。同図上段に示す映像モードの画面G1では、撮影手段22で撮影したライブ映像を背景画面として、その上に後述の画像処理により推定された米Rと内釜6の内面との境界を示す線状の米量表示部41や、水Wと内釜6の内面との境界を示す線状の水量表示部42の他に、現時点での水Wおよびと米Rの量をカップ数で示す共に、その量で炊飯を行なった場合の炊上がり状態を文字で示す炊上がり状態表示部43を重ね合わせて表示手段32に表示される。また、同図下段に示す時刻表示モードの画面G2では、例えば現在時刻や炊飯の予約時刻などの各種時刻を示す時刻表示部45が表示手段32にセグメント表示される。なお、ここに示す表示手段32の表示形態はあくまでも一例であり、例えば時刻表示モードの画面G2で、炊飯中に炊上がりまでの残時間を表示させたり、設定した炊飯コースや炊き方を表示させたりすることも可能である。
次に、上記表示手段32の詳細な構成を、図7〜図11に基づき説明する。図7は、表示手段32全体の構成を示すもので、51は前述の時刻表示モードの画面G2を表示する第1層の液晶表示ディスプレイ(LCD)であり、52は映像モードの画面G1を表示する第2層のLCDである。これらのLCD51,52は、何れも図示しないが上下のガラス基板に液晶を挟んで構成され、平板状のLCD51,52からなる積層体53の表面側と背面側に偏光板54,55をそれぞれ積層し、偏光板55の背面側に平板状のバックライト56を積層することで、少なくとも2層以上の複数のLCD51,52を積層した表示手段32が構成される。なお、各層のLCD51,52にどのような画面を割り当てるのかは特に制限されず、炊飯器としての仕様や使い勝手などを適宜考慮して割り当てればよい。
バックライト56は、積層体53の背面に向けて光を照射するために、複数のLED57を格子状に配列して構成される。図7に示す例では、全てのLED57が同一色の白色LEDで構成され、個々のLED57は、後述する制御手段61(図12を参照)からの制御信号を受けて、周期的に点灯時間を制御するPWM制御により、その明るさが調整すなわち調光される。したがってこの場合は、バックライト56からLED51,52に照射される光の明暗を変化させることが可能になる。
また別な例として、図8の表示手段32は、バックライト56のLED57を全て同一色にするのではなく、白色LED57Aと白色以外の例えば橙色LED57Bを混在させている。これにより、白色LED57Aだけを点灯させたときには、バックライト56がLCD51,52に白色の光を照射させる一方で、橙色LED57Bだけを点灯させたときには、バックライト56がLCD51,52にオレンジ色の光を照射させることが可能になる。さらに、前述したPWM制御によるLED57A,57Bへの調光機能を付加することで、バックライト56からLCD51,52に照射される白色光やオレンジ色光の明暗を変化させることが可能になる。
図9は、図7の表示手段32を用いた画面表示の一例を示している。この例では、炊飯器への給電用の電源プラグ(図示せず)をコンセントから外した「電源OFF中」や、電源プラグをコンセントに差し込んだ後に、操作手段33からの操作を待機する「電源ON 待機時」には、何れか一方のLCD51,52により現在時刻の時計表示を行なうと共に、LED57への通電を停止してバックライト56を消灯させる。一方、電源プラグをコンセントに差し込んだ後に、操作手段33からの何らかの操作が行われる「電源ON、操作時」になると、制御手段57は第1層のLCD51を表示させる場合に、バックライト56がLCD51に通常の明るさの白色光(「ホワイト」)を照射し、第2層のLCD52を表示させる場合に、バックライト56がLCD51に通常よりも明るい白色光(「シャインホワイト」)を照射するように、LED57をPWM制御で調光する。こうして、表示手段32に表示させるLCD51,52に応じてバックライト56の明るさを変化させているので、使用者はどの層のLCD51,52が表示されているのかを、バックライト56の明るさの違いから容易に認識できる。
図10は、図8の表示手段32を用いた画面表示の一例を示している。この例でも、前述した「電源OFF中」や「電源ON 待機時」には、何れか一方のLCD51,52により現在時刻の時計表示を行なうと共に、LED57への通電を停止してバックライト56を消灯させる。それに対して、「電源ON、操作時」になると、制御手段57は第1層のLCD51を表示させる場合に、バックライト56がLCD51に白色光(「ホワイト」)を照射し、第2層のLCD52を表示させる場合に、バックライト56がLCD51に橙色光(「オレンジ」)を照射するように、LED57A,57Bの点灯/消灯を切換える。こうして、表示手段32に表示させるLCD51,52に応じてバックライト56の色を変化させているので、使用者はどの層のLCD51,52が表示されているのかを、バックライト56の色の違いから容易に認識できる。
なお、図9や図10では、LCD51,52の何れかを表示させたときに、バックライトの明るさや色を2段階に変化させる例を示しているが、LCD51,52を同時に表示させてもよく、その場合にバックライトの明るさや色を3段階に変化させてもよい。
図11は、図8の表示手段32を用いた画面表示の別な例を示している。この例でも、前述した「電源OFF中」や「電源ON 待機時」には、何れか一方のLCD51,52により現在時刻の時計表示を行なうと共に、LED57への通電を停止してバックライト56を消灯させる。また、電源プラグをコンセントに差し込んだ後、炊飯や保温を行なわない切状態中(「切中」)に、操作手段33からの何らかの操作が行われると、制御手段57は第1層のLCD51を表示させる場合に、バックライト56がLCD51に通常の明るさの白色光(「ホワイト」)を照射し、第2層のLCD52を表示させる場合に、バックライト56がLCD51に通常よりも明るい白色光(「シャインホワイト」)を照射するように、LED57Bを消灯させつつ、LED57AをPWM制御で調光する。
さらにこの例では、制御手段51が炊飯器の動作に応じてバックライト56の色や明るさを変化させており、例えば切状態から予約キー33Dや、進むキー33Fや、戻りキー33Gを操作して、予約時刻を設定した後に、炊飯キー33Aを操作して、その設定した予約時刻に被調理物を炊き上げる予約炊飯で、炊飯が開始するまでの「タイマ中」の動作では、バックライト56がLCD51および/またはLCD52に通常の明るさの白色光(「ホワイト」)を照射し、前述の予約炊飯や、予約時刻を設定することなく切状態から最初に炊飯キー33Aを操作して被調理物を炊き上げる通常炊飯において、被調理物に対する炊飯加熱が開始した後の「炊飯中」の動作では、バックライト56がLCD51および/またはLCD52に通常よりも明るい橙色光(「シャインオレンジ」)を照射し、炊飯加熱が終了した後の、或いは切状態から保温キー33Bを操作して、被調理物となるご飯を保温する「保温中」の動作では、バックライト56がLCD51および/またはLCD52に通常の明るさの橙色光(「オレンジ」)を照射するように、LED57A,57Bの点灯/消灯を切換えつつ、点灯したLED57AまたはLED57BをPWM制御で調光する。
なお、図9〜図11に示す表示手段32の表示形態はあくまでも一例であり、例えば第1層のLCD51と第2層のLCD52を同じ時刻表示モードの画面G2にすることに限定されない。また、バックライト56から照射する光の色は、白やオレンジ以外でも構わない。
図12は、本実施例における炊飯器の電気的構成を示したものである。同図において、本体1の内部に組み込まれた制御手段61は、マイクロコンピュータ(マイコン)などを基板に搭載して構成されるもので、ここでは前述の加熱コイル8や、撮影手段22や、照明手段23や、表示手段32や、操作手段33の他に、内釜6や内蓋13の温度を検知する温度検知手段62と、蓋2の開閉を検知する蓋開閉検知手段63と、有線や無線の通信手段64を介して、使用者が保有する携帯端末65との送受信を可能にする送受信手段66と、蓋2の内部に組み込まれ、内蓋13を主に加熱する内蓋13の加熱手段としての蓋ヒータ67と、各種の情報やデータを記憶する読み出しおよび書き込みが可能な記憶手段68がそれぞれ電気的に接続される。ここでの携帯端末65は、タッチ操作や表示を行なうためのタッチパネル69を備えた無線通信が可能なスマートフォンであるが、使用者が普段携帯する携帯電話や携帯情報端末(PDA)などであっても構わない。
制御手段61は、操作手段33からの操作信号と、温度検知手段62や蓋開閉検知手段63からの検知信号を受けて、内蔵する計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、加熱コイル8と、撮影手段22と、照明手段23と、表示手段32を構成するLCD51,52やバックライト56と、蓋ヒータ67に、制御信号を各々出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての前記記憶手段68に記録したプログラムを、制御手段61が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、炊飯器としての映像処理手段71と、加熱制御手段72と、表示制御手段73として、制御手段61を機能させるプログラムを備えている。
映像処理手段71は、撮影手段22との間で前記制御信号を含むデータのやり取りを行なうことで、撮影手段22から取り込んだ内釜6内部の静止画や動画による映像データを適宜処理するものである。特に本実施例の映像処理手段71は、蓋開閉検知手段63からの検知信号を受けて、蓋2が閉じられる直前に撮影手段22から取り込んだ映像を記憶手段68に記憶させ、その後で携帯端末65のタッチパネル69を操作することにより、当該携帯端末65から通信手段64を経て送受信手段66に要求信号が送出されると、記憶手段68に記憶された映像を読み出して、その要求信号を送出した携帯端末65に転送する映像転送手段75と、撮影手段22から取り込んだ内釜6内部の映像の中で、被調理物となる米Rの位置を認識して、内釜6に入れられた米量を推定し、さらに認識された米Rの位置を手掛かりに、被調理物となる水Wの位置(水面)を認識して、内釜6に入れられた水量を推定する被調理物認識手段76と、被調理物認識手段76で認識された米Rの位置に基づき、その中で白米R1と玄米R2の比率がどの程度であるかを、白米R1と玄米R2の色の違いから判断して検知する検知手段としての白米/玄米比率検知手段77と、を備えている。
加熱制御手段72は、温度検知手段62からの検知信号を受けて、炊飯時や保温時に内釜6の底部を加熱する加熱コイル8と、内蓋13を加熱する蓋ヒータ67を各々制御するものである。特に本実施例では、被調理物認識手段76で推定された米Rや水Wの量に加えて、白米/玄米比率検知手段77で検知された白米R1と玄米R2の比率に応じて、加熱コイル8や蓋ヒータ67の加熱量を加減調整し、内釜6内の被調理物を操作手段33で設定された好ましい炊上がり状態に仕上げるように、加熱制御手段72が被調理物に対する炊飯制御を行なう構成となっている。
表示制御手段73は、前述した映像モードの画面や時刻表示モードの画面を、適切なタイミングで表示手段32に表示させるために、当該表示手段32のLCD51,52やバックライト56を制御するもので、これは前述のように、積層された複数のLCD51,52の中で、表示されるLCD51および/またはLCD52に応じて、バックライト56の発光色および/または明るさを変化させたり、さらには炊飯器の現在動作している状況に応じて、バックライト56の発光色および/または明るさを変化させたりする機能を有する。また、本実施例の表示制御手段73は、被調理物認識手段76で推定された内釜6に入れられた米量に、白米/玄米比率検知手段77で得られた白米R1と玄米R2の比率を加味して、内釜6内に投入する適正な水量を算出し、その算出した適正水量と、被調理物認識手段76で推定された実際に内釜6に入れられた水量との比較結果を、例えば前述した映像モードの画面G1上で、炊上がり状態表示部43のような液量ガイド情報として、表示手段32に表示出力させる機能を備えている。
次に、上記構成の炊飯器について、その作用を説明する。予約炊飯や通常炊飯を行なう場合、先ず蓋2を開けた後に、本体1の収容体5から内釜6を取り出して洗い場に持っていき、図示しない計量カップで計量した所定量の米Rを、内釜6の内部に投入する。次に洗い場で洗米を行ない、水位線6Aを参考にして米Rの投入量に見合う量の水Wを内釜6に入れて水加減を行ない、洗い場から本体1の収容体5に米Rと水Wを入れた内釜6を再びセットする。
この後に、炊飯器の電源プラグをコンセントに差し込んで切状態にすると、制御手段61は蓋開閉検知手段63からの検知信号により、蓋2が開いているか否かを判断する。ここで蓋2が開いていると判断されれば、映像処理手段71からの制御信号により撮影手段22が起動すると共に照明手段23が点灯し、図2に示す視線軸Aの方向で、照明手段23により明るく照らされた内釜6内の水位線6Aや米Rと水Wを含む映像が、撮影手段22から映像処理手段71に取込まれる。また、表示制御手段73は、映像処理手段71が撮影手段22からの取り込んだ映像を含む映像モードの画面G1を表示手段32に表示させる。それに対して、蓋2が開いていないと判断されれば、照明手段23は消灯したまま撮影手段22は起動せず、表示制御手段73は時刻表示モードの画面G2を表示手段32に表示させる。なお、蓋2が開いている状態では、カメラキー33Hを押動操作する毎に、表示手段32の表示を映像モードの画面G1と時刻表示モードの画面G2に切換えることが可能になる。
図13は、表示手段32に表示される映像モードの画面G1の別な一例を示している。同図において、図6で示した映像モードの画面G1と異なるのは、炊上がり状態表示部43に代わり、被調理物認識手段76で推定された現在の水量をカップ数で表示すると共に、表示制御手段73で算出された適正水量と、調理物認識手段76で推定された現在の水量との比較結果を、炊上がり状態表示部43のような炊上がり状態としてではなく、適正水量と現在の水量との差として容積(ミリリットル)で表示する水位合わせ表示部91を、液量ガイド情報として備えている、ということである。またここでは、被調理物認識手段76で推定された米量をカップ数で表示する米量設定表示部92と、その推定された米量を増減補正するための米量−表示部93および米量+表示部94と、背景の撮影手段22で撮影したライブ映像を拡大表示させるための拡大表示部95が、それぞれ付加される。
図13に示す表示手段32の表面には、透明なタッチパッド33Iが配設される。このタッチパッド33Iは、前述した各種のキー33A〜33Hと共に操作手段33を構成するもので、米量−表示部93や米量+表示部94の表面でタッチパッド33Iをタッチ操作すると、被調理物認識手段76で推定された米量を手動で増減させることが可能になる。この補正した米量は米量設定表示部92に表示され、表示制御手段73が適正水量を算出する場合や、加熱制御手段72が内釜6内の被調理物を炊飯する場合に、被調理物認識手段76で推定された米量に代わり、ここで補正された米量が利用される。
また、拡大表示部95の表面でタッチパッド33Iをタッチ操作すると、映像処理手段71から撮影手段22に対し、ズーム動作を行なうための制御信号が送出され、それにより拡大変倍された映像が撮影手段22から映像処理手段71に取り込まれて、水位線6Aを含む内釜6内部の映像を、拡大した状態で映像モードの画面G1に表示させることができる。このように、撮影手段22からの映像を拡大させる機能を映像処理手段71に組み込むことで、細部が見えにくい使用者であっても、拡大表示部95上でタッチ操作を行なうだけで、映像モードの画面G1に表示される内釜6内部の映像を簡単に拡大して、楽に水位合わせを行なうことが可能になる。
映像処理手段71は、撮影手段22から内釜6内部の映像を所定の時間間隔(例えば0.1秒)で取り込む毎に、被調理物認識手段76で内釜6Aに入れられた米量と水量を推定する。ここで重要なのは、先ず撮影手段22から取り込んだ内釜6内部の映像の中で、内釜6Aの内面と米Rとの境界を、米Rの位置として認識してから、その認識された米Rの位置を手掛かりに、水Wの位置となる水面の高さを認識させる、ということである。つまり、黒色系の内釜6Aの内面と白色に近い米Rは、色の違いによりその境界が認識しやすいので、先に認識しやすい米Rの位置を基準として、そこから水Wの位置を認識させる方が、これらの認識率が高くなる。なお、被調理物認識手段76で認識された米Rの位置と水Wの位置は、それぞれ米量表示部41と水量表示部42として表示手段32に表示される。
また、上述した被調理物認識手段76による水面高さの認識は、撮影手段22から取込んだ複数回の映像を測定することにより、それらのデータの中央値付近を使用するのが好ましい。これは、米Rや水Wを入れた内釜6をセットした後も、暫くは水面が揺れてその位置が確定しないためであり、上述したデータの中央値付近を使用することで、移動平均処理よりも早く水面の高さを確定させることができる。例として被調理物認識手段76は、10回の水面高さの測定データを大小順に並べ替え、そこから4〜6番目のデータの平均値を、最終的な水面の高さとして確定させることで、映像モードの画面G1に素早く水量表示部42を表示させることが可能となる。
図14は、米Rの位置や水Wの位置を認識させる際の手順を模式的に示したものである。同図において、被調理物認識手段76は、撮影手段22から取込んだ映像を、米Rの位置や水Wの位置となる円弧の中心点Cから、左右等角度でスキャンした画像に変換し、そこから米Rの位置や水Wの位置を認識するのが好ましい。つまり、米Rの位置や水Wの位置は、何れも扇形の画像として撮影されるため、そのままではX−Yの二次元処理で位置を認識しなければならず、制御手段61として低い能力のマイクロプロセッサでは処理に時間がかかる。しかし、撮影手段22から取込んだ扇形の画像を、矩形画像(図14上段の符号41’と符号42’)に変換すれば、Y方向だけの一次元処理に単純化して位置を認識でき、少ない処理での画像処理が可能となって、低い能力のマイクロプロセッサでも
短時間で処理が可能になる。この後、矩形画像を元の扇形画像に戻すことで、映像モードの画面G1で、撮影手段22から取込んだ映像上に、円弧状の米量表示部41と水量表示部42を正しく表示させることができる(図14下段の符号41と符号42)。
本実施例の被調理物認識手段76は、内釜6に入れられた米量や水量を、カップ数(1カップ、2カップ)の米Rの位置と水Wの位置としてそれぞれ憶えさせて推定する。その際、中間のカップ数の量は補間計算により算出する。また、映像処理手段71から撮影手段22への制御信号により、内蔵するカメラの露出やゲイン(感度)を自動調整して、内釜6の内面と水面との境界をくっきりと明瞭に撮影できるようにする。
また本実施例では、被調理物認識手段76が米Rの位置を認識すると、そこで認識された米Rの中で、白米R1と玄米R2の比率がどの程度であるかを、白米R1と玄米R2の色の違いから白米/玄米比率検知手段77が判断して検知する。
図13に示す映像モードの画面G1では、正しい水位合わせを行なうのに、適正水量に対して内釜6内に投入する水量を50ml増やしてほしい旨のメッセージが、水位合わせ表示部91に表示される。したがって、使用者はこの表示を参考として、内釜6に入れる水Wの量を適正に加減調整でき、表示手段32を通して同じ視点で、正しい水位合わせを正確かつ容易に行なうことができる。また、ここでの適正水量は、単に被調理物認識手段76で推定された米量だけでなく、そこに白米/玄米比率検知手段77で得られた白米R1と玄米R2の比率を加味して算出されることから、白米R1と玄米R2を混合して内釜6に入れた場合や、玄米R2だけを内釜6に入れた場合であっても、白米R1だけの場合と同じように、内釜6に入れる水Wの量を適正に加減調整できる。
こうして、表示手段32に表示される映像モードの画面G1を水加減ガイドとして、内釜6に入れる水Wの量を正しく調整した後、内釜6を本体1の収容体5に入れたまま蓋2を閉じると、炊飯を開始するまでの一連の炊飯準備が完了する。この後、選択キー33Eや、進むキー33Fや、戻りキー33Gを押動操作して、希望する炊上がり状態(しゃっきり、おすすめ、もちもち)を設定した後、炊飯キー33Aを最終的に押動操作して、予約炊飯を含む炊飯の開始を制御手段61に指示すると、加熱制御手段72により加熱コイル8と蓋ヒータ67が各々制御され、内釜6内の被調理物をご飯に炊き上げる炊飯と、その後で炊き上がったご飯を所定の温度に保温する保温が続けて行なわれる。加熱制御手段72は、被調理物認識手段76で推定された米Rや水Wの量に加えて、白米/玄米比率検知手段77で検知された白米R1と玄米R2の比率に応じて、内釜6内の被調理物が設定した炊上がり状態に仕上がるように、加熱コイル8や蓋ヒータ67の加熱量を最適に調整するので、白米R1と玄米R2を混合して内釜6に入れた場合や、玄米R2だけを内釜6に入れた場合であっても、炊飯の開始前に操作手段33で米の種類をわざわざ選択することなく、白米R1だけと同じような望ましい炊き上がりを得ることができる。
また、映像処理手段71に組み込まれた映像転送手段75は、炊飯準備の蓋2を開けている間、撮影手段22から内釜6内部の映像を取込む毎に、その映像を記憶手段68に上書き更新して記憶させている。これにより、炊飯準備が完了して蓋2を閉じると、映像処理手段71は蓋2が開いていないと判断して、撮影手段22の動作を停止させるので、記憶手段68には、蓋2を閉める直前の撮影手段22から取込んだ内釜6内部の映像だけが自ずと記憶保持される。その後に使用者が携帯端末65のタッチパネル69を操作して、通信手段64を経由して送受信手段66に要求信号を送出すると、映像転送手段75により記憶手段68に記憶された蓋2を閉じる直前の映像が、その要求信号を送出した携帯端末65に転送され、タッチパネル69の表示部に表示される。したがって使用者は、わざわざ炊飯器に戻って蓋2を開けなくても、自身が保有する携帯端末65を通してどこでも内釜6の内部の状況を確認できる。
同様にして映像転送手段75は、内釜6内にご飯が炊き上がった後の保温時に、蓋2が開けられている間にも、撮影手段22から内釜6内部の映像を所定の時間間隔で取込んで、その映像を記憶手段68に上書き更新して記憶させている。したがって、使用者はわざわざ炊飯器に戻って蓋2を開けなくても、携帯端末65のタッチパネル69を同じように操作して、蓋2を閉じる直前の炊上がったご飯の映像を、タッチパネル69の表示部に表示させることができる。
以上のように、本実施例の炊飯器は、有底状の容器となる内釜6と、その内釜6の上部開口を開閉する蓋2と、蓋2が開いた状態で、内釜6の内部を撮影する撮影手段22とを備えたものにおいて、特に蓋2の開閉を検知する蓋開閉検知手段63と、撮影手段22から取り込んだ内釜6内部の映像を記憶する記憶手段68と、蓋開閉検知手段63からの検知信号により、蓋2が開いていると判断した間は、撮影手段22からの映像を取り込む毎に、その映像を記憶手段68に記憶させ、蓋2が閉じていると判断したら、記憶手段68に記憶された蓋2を閉じる直前の映像を、炊飯器と通信が可能な携帯端末65に転送する映像転送手段71と、を備えている。
この場合、蓋2を開けている間に内釜6の内部の映像を撮影手段22から取り込む毎に、その映像を記憶手段68に記憶させておけば、記憶手段68に記憶された蓋2を閉じる直前の映像を、使用者が保有する携帯端末65に転送することで、使用者がわざわざ炊飯器に戻って蓋2を開けることなく、携帯端末65のタッチパネル69に表示される映像を通して、どこでも内釜6内部の最新の状況を確認することができ、安心感を得ることが可能になる。
本実施例の炊飯器は、有底状の容器となる内釜6と、内釜6を加熱する加熱手段となる加熱コイル8と、内釜6に入れられた被調理物を撮影する撮影手段22と、撮影手段か22らの映像を取り込んで、被調理物としての白米R1と玄米R2の比率を検知する検知手段としての白米/玄米比率検知手段77と、白米/玄米比率検知手段77で得られた白米R1と玄米R2の比率に応じて、加熱手段の加熱量を調整して炊飯制御を行なう制御手段61の中の加熱制御手段72と、を備えている。
この場合、撮影手段22で撮影された被調理物の収容状態から、白米/玄米比率検知手段77が白米と白米以外の玄米の比率を検知し、その比率に応じて制御手段61の中の加熱制御手段72が炊飯の際に加熱コイル8の加熱量を最適に調整することで、白米R1と玄米R2を混合して容器に入れた場合や、玄米R2だけを容器に入れた場合であっても、白米R1だけと同じような望ましい炊き上がりを得ることができる。
また好ましくは、白米/玄米比率検知手段77で得られた白米R1と玄米R2の比率に応じた適正液量となる適正水量を算出し、被調理物として撮影手段22で撮影した水Wの水量と、算出された適正水量との比較結果を、液量ガイド情報として例えば表示手段32に表示出力させるように、制御手段61の中の表示制御手段73を構成してもよい。
この場合、白米/玄米比率検知手段77で検知された白米R1と玄米R2の比率を利用して、内釜6に入れる水Wの適正水量を算出し、この適正液量を撮影手段22で撮影した実際の水Wの液量と比較して、その比較結果を液量ガイド情報として、例えば表示や音声などで出力することで、白米R1と玄米R2を混合して容器に入れた場合や、玄米R2だけを内釜6に入れた場合であっても、白米R1だけと同じように適正な水量合わせを行なうことが可能になる。
本実施例の炊飯器は、複数の液晶ディスプレイとなるLCD51,52を積層し、その積層体53の背面にバックライト56を配設してなる表示手段32と、複数のLCD51,52の中で表示されるLCD51および/またはLCD52に応じて、バックライト56の発光色および/または明るさを変化させる表示制御手段73と、を備えている。
この場合、複数のLCD51,52を積層した表示手段32であっても、表示されるLCD51および/またはLCD52に対応して、バックライト56の発光色および/または明るさを変化させるので、どの層のLCD51,52が表示されているのかを容易に認識できる。
また好ましくは、炊飯器の動作に応じて、バックライト56の発光色および/または明るさを変化させるように、表示制御手段73を構成してもよい。
この場合の表示制御手段73は、炊飯器の動作に対応して、バックライト56の発光色および/または明るさを変化させるので、炊飯器としてどのような動作が行われているのかを、表示手段32の表示内容を注視することなく直感的に認識できる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。本実施例では、上述した液量ガイド情報を表示手段32から表示出力させる構成を示したが、図示しないスピーカなどの報知手段を制御手段61に接続し、液量ガイド情報を報知手段から報知出力させてもよい。ヒューマンインターフェースとしての報知音ガイドの例として、内釜6に入れた水量が少ない場合は、短音で長時間の例えば「ピッピッピッ」という音を繰り返し報知させ、そこから水量が増えて適正量に近付くにしたがって、次第に時間を短くして例えば「ピッピッ」という音を繰り返し報知させ、適正な水量になったら別な音で例えば「ピロロ」という音を報知させる。逆に、内釜6に入れた水量が少ない場合は、長音で長時間の例えば「ピーピーピー」という音を繰り返し報知させ、そこから水量が減って適正量に近付くにしたがって、次第に時間を短くして例えば「ピーピー」という音を繰り返し報知させてもよい。