JP6669309B2 - ハット形鋼矢板の設計方法、及びハット形鋼矢板の製造方法 - Google Patents
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Description
本願は、2017年10月2日に、日本に出願された特願2017−193111号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
ハット形鋼矢板は、ウェブ部と、ウェブ部に対して傾斜して延びる一対のフランジ部と、一対のフランジ部それぞれに接続された一対のアーム部と、を備えている。
このハット形鋼矢板は、例えば岸壁等に幅方向に複数連なって施工されることにより、長手方向から見た平面視で幅方向と直交する断面高さ方向からの外力を支持する壁体を構成する。このハット形鋼矢板を施工する方法として、例えば下記特許文献1および下記特許文献2に示されるようなチャック方法や挟持方法による起振機を用いた打設方法が知られており、これは一般にバイブロハンマ工法と呼ばれる。バイブロハンマ工法では、ハット形鋼矢板の一対のフランジ部を施工用重機の把持部で把持した状態で、ハット形鋼矢板を地面に打設する。
その他の工法として、圧入工法が知られている。圧入工法では、ハット形鋼矢板全体をハット形鋼矢板の外側から囲繞しながら、ハット形鋼矢板における一対のアーム部それぞれを、施工用重機の挟持部で挟持した状態で、ハット形鋼矢板を地面に打設する。
特許文献2に記載の挟持方法(把持方法)では、一対のフランジ部同士がなす角度に合わせて異なった位置決め部材が必要となる。
一方で、様々な形状の鋼矢板断面に適応できるように鋼矢板断面に応じて個々に異なるバイブロハンマを用いることは、バイブロハンマの生産性悪化やコスト増大をもたらす。施工現場においても複数形状の断面を混在して取り扱う場合など、バイブロハンマ交換に伴う施工時間の増大や施工コストアップに繋がり、施工性が低下してしまう。そのため、バイブロハンマとしては、同一の型式で複数の鋼矢板断面に適応し得ることが有効であり、既存のバイブロハンマにおいても複数の鋼矢板型式を網羅できるよう設計され、汎用的に使用されている。
ただし、バイブロハンマの振動をハット形鋼矢板に伝達して土中を掘進する打設エネルギーを、ハット形鋼矢板の長手方向におけるバイブロハンマで把持する側と反対の先端部に効率的に生じさせるには、バイブロハンマの駆動部からハット形鋼矢板を掴む把持部へのエネルギー伝達がスムーズになるよう機械設計がなされる。かつ打設時の施工誤差やハット形鋼矢板断面そのものの製造誤差を吸収し得るよう、把持部の可動範囲を狭めて強固に把持することが求められる。そのため、より経済性に優れた新たなハット形鋼矢板を提供する場合においては、バイブロハンマ製造の生産性や、施工現場での施工性を損なうことがないよう、最適設計された既存のバイブロハンマに適応し得ることが有利となる。特に、従来の400mm幅や600mm幅のU形鋼矢板よりも有効幅が大きくなる900mm幅のハット形鋼矢板においては、バイブロハンマの振動に伴う矢板断面方向に発生する横ブレが大きくなり、打設効率が低下してしまう。そのため、フランジの2箇所を把持することで横ブレ振動を抑制する、ダブルチャック方式のバイブロハンマが最適仕様に設計され使用されている。これにより、当該施工用重機に適応し得るハット形矢板断面を提供することは経済性向上に直結することができる。
また、圧入工法においても、施工用重機の挟持部の形状の制約や、ハット形鋼矢板全体の大きさにより、適用できる断面形状が限られるという問題があった。
(1)本発明の参考例の一態様に係るハット形鋼矢板は、複数配置されて壁体を構成し、長手方向に延びるハット形鋼矢板であって、前記長手方向から見た平面視で前記壁体が延在する幅方向に延びるウェブ部と、前記ウェブ部における前記幅方向の外端部に接続され、前記平面視で前記ウェブ部に対して傾斜して延びる一対のフランジ部と、前記一対のフランジ部それぞれにおける前記幅方向に沿う前記ウェブ部の反対側の端部に接続され、前記平面視で前記幅方向に延びる一対のアーム部と、を備え、前記ハット形鋼矢板における前記幅方向の大きさ1m当たりにおいて、断面積A(cm2/m)と、前記平面視で前記幅方向に延びる断面重心線まわりの断面二次モーメントI(cm4/m)と、の関係が式(1)を満たし、かつ前記平面視における前記一対のフランジ部それぞれの延長線の第1交点P1をフランジ角θと前記ハット形鋼矢板の各部寸法を用いて求め、前記P1と、前記断面重心線との間の距離をD1(mm)、前記一対のフランジ部それぞれにおける前記断面重心線との第2交点2箇所をP2とし、前記P2同士の間の距離をD2(mm)としたとき、前記D1及び前記D2が、
式(2A)且つ式(2B)、
式(3A)且つ式(3B)、
式(4A)且つ式(4B)、又は、
式(5A)且つ式(5B)
を満たす。
A<0.00252I+94.4…(1)
262.6<D1<281.0…(2A)
496.9<D1<520.9…(3A)
621.5<D1<650.9…(4A)
625.2<D1<654.8…(5A)
484.0<D2<499.0…(2B)
474.0<D2<489.0…(3B)
476.0<D2<491.0…(4B)
474.0<D2<489.0…(5B)
これらにより、現行の各種サイズのハット形鋼矢板を施工する際に用いていた施工用重機の把持部により、本発明のハット形鋼矢板をそのまま把持することができ、従来の施工用重機による施工作業を円滑に行うことができる。
876≦W≦932…(6)
H<400…(7)
L>H−C…(8)
(8)本発明の参考例の一態様に係るハット形鋼矢板の設計方法は、ウェブ部と一対のフランジ部と一対のアーム部とを有し、且つ複数配置されて壁体を構成して長手方向に延びるハット形鋼矢板の設計方法であって、前記長手方向から見た平面視で前記壁体が延在する方向を幅方向としたとき、前記ハット形鋼矢板における前記幅方向の大きさ1m当たりにおいて、断面積A(cm2/m)と、前記平面視で前記幅方向に延びる断面重心線まわりの断面二次モーメントI(cm4/m)と、の関係が式(1)を満たすように設定し、かつ前記平面視における前記一対のフランジ部それぞれの延長線の第1交点P1をフランジ角θと前記ハット形鋼矢板の各部寸法を用いて求め、前記P1と、前記断面重心線との間の距離をD1(mm)、前記一対のフランジ部それぞれにおける前記断面重心線との第2交点2箇所をP2とし、前記P2同士の間の距離をD2(mm)としたとき、前記D1及び前記D2が、
式(2A)且つ式(2B)、
式(3A)且つ式(3B)、
式(4A)且つ式(4B)、又は、
式(5A)且つ式(5B)
を満たすように設定する。
A<0.00252I+94.4…(1)
262.6<D1<281.0…(2A)
496.9<D1<520.9…(3A)
621.5<D1<650.9…(4A)
625.2<D1<654.8…(5A)
484.0<D2<499.0…(2B)
474.0<D2<489.0…(3B)
476.0<D2<491.0…(4B)
474.0<D2<489.0…(5B)
(9)上記(8)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記D1及び前記D2が、前記式(2A)且つ前記式(2B)を満たすように設定してもよい。
(10)上記(8)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記D1及び前記D2が、前記式(3A)且つ前記式(3B)を満たすように設定してもよい。
(11)上記(8)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記D1及び前記D2が、前記式(4A)且つ前記式(4B)を満たすように設定してもよい。
(12)上記(8)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記D1及び前記D2が、前記式(5A)且つ前記式(5B)を満たすように設定してもよい。
(13)上記(8)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記一対のアーム部それぞれにおける前記幅方向の外端部同士の間の有効幅W(mm)が、式(6)を満たし、かつ前記ウェブ部における幅方向に沿う断面重心線と反対側を向く面と前記アーム部における幅方向に沿う断面重心線と反対側を向く面との間における、前記平面視で前記幅方向と直交する断面高さ方向の距離H(mm)が式(7)を満たすように設定してもよい。
876≦W≦932…(6)
H≦400…(7)
(14)上記(8)から(13)のいずれか1項に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記一対のフランジ部それぞれにおける前記断面重心線との第2交点P2を通り、前記一対のフランジ部それぞれに直交する垂線同士の第3交点P3と、前記断面重心線と、の間の距離L(mm)、前記ウェブ部における幅方向に沿う断面重心線と反対側を向く面と前記アーム部における幅方向に沿う断面重心線と反対側を向く面との間における、前記平面視で前記幅方向と直交する断面高さ方向の距離H(mm)、および前記ウェブ部における幅方向に沿う断面重心線と反対側を向く面と前記断面重心線との間の距離C(mm)が、式(8)を満たすように設定してもよい。
L>H−C…(8)
(15)本発明の参考例の一態様に係るハット形鋼矢板の製造方法は、上記(8)から(14)のいずれか1項に記載の設計方法を用いてハット形鋼矢板を製造する。
(16)本発明の一態様に係るハット形鋼矢板の設計方法は、既存のハット形鋼矢板に基づいて新たなハット形鋼矢板を設計するハット形鋼矢板の設計方法であって、前記既存のハット形鋼矢板および前記新たなハット形鋼矢板はいずれも、ウェブ部と一対のフランジ部と一対のアーム部とを有し、且つ複数配置されて壁体を構成して長手方向に延び、且つ前記長手方向から見た平面視で前記壁体が延在する方向を幅方向としたとき、前記平面視で前記幅方向に延びる断面重心線と、前記一対のフランジ部それぞれとの交点である2箇所の第2交点P2が、バイブロハンマ工法のダブルチャック方式の施工用重機の一対の把持部により把持された状態で地面に打設され、前記新たなハット形鋼矢板における前記幅方向の大きさ1m当たりにおいて、断面積A(cm2/m)と、前記断面重心線まわりの断面二次モーメントI(cm4/m)と、の関係が式(1)を満たすように設定し、かつ前記新たなハット形鋼矢板において、前記平面視における前記一対のフランジ部それぞれの延長線の第1交点P1と前記断面重心線との間の距離をD1(mm)とし、前記2箇所の第2交点P2同士の間の距離をD2(mm)とし、前記ウェブ部のうち前記断面重心線と反対側を向く面と前記アーム部のうち前記断面重心線と反対側を向く面との間における、前記平面視で前記幅方向に直交する断面高さ方向の距離をH(mm)としたとき、前記D1が式(11)を満たし、且つ前記D2が式(12)を満たすように設定する。
A<0.00252I+94.4…(1)
D1MAX<D1<D1MIN…(11)
D2MAX<D2<D2MIN…(12)
ただし、D1MAXは式(21)を満たし、D1MINは式(22)を満たし、D2MAXは式(23)を満たし、D2MINは式(24)を満たす。
D1MAX=D1’+0.04×H’…(21)
D1MIN=D1’−0.04×H’…(22)
D2MAX=D2’+10…(23)
D2MIN=D2’−5…(24)
D1’:前記既存のハット形鋼矢板において前記D1に対応する距離(mm)
H’:前記既存のハット形鋼矢板において前記Hに対応する距離(mm)
D2’:前記既存のハット形鋼矢板において前記D2に対応する距離(mm)
(17)上記(16)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記新たなハット形鋼矢板は、バイブロハンマ工法および圧入工法のいずれの工法によっても地面に打設され、前記新たなハット形鋼矢板は、圧入工法の施工用重機によって挟持されていない状態で、バイブロハンマ工法のダブルチャック方式の施工用重機によって把持され、かつ、バイブロハンマ工法のダブルチャック方式の施工用重機によって把持されていない状態で、圧入工法の施工用重機によって挟持され、前記新たなハット形鋼矢板において、前記一対のアーム部が圧入工法の施工用重機により挟持され、かつ前記一対のアーム部それぞれにおける前記幅方向の外端部同士の間の有効幅W(mm)が、式(6)を満たし、かつ前記距離H(mm)が式(7)を満たすように設定してもよい。
876≦W≦932…(6)
H≦400…(7)
(18)上記(16)または(17)に記載のハット形鋼矢板の設計方法において、前記新たなハット形鋼矢板において、前記一対のフランジ部それぞれにおける前記第2交点P2を通り前記一対のフランジ部それぞれに直交する垂線同士の第3交点P3と、前記断面重心線と、の間の距離L(mm)、前記距離H(mm)、および前記ウェブ部のうち前記断面重心線と反対側を向く面と前記断面重心線との間の距離C(mm)が、式(8)を満たすように設定してもよい。
L>H−C…(8)
(19)本発明の一態様に係るハット形鋼矢板の製造方法は、上記(16)から(18)のいずれか1項に記載の設計方法を用いてハット形鋼矢板を製造する。
A<0.00252I+94.4…(1)
ハット形鋼矢板における幅方向の大きさ1m当たりの断面積Aおよび断面二次モーメントIは、鋼矢板1枚当たりの断面積および断面二次モーメントを鋼矢板の有効幅Wで除したものである。以下の説明では、「ハット形鋼矢板における幅方向の大きさ1m当たりの」を省略し、単に断面積または断面二次モーメントをいう。
ハット形鋼矢板1は、断面高さ方向からの外力を支持するため、例えば断面二次モーメントや断面係数等といった断面性能が高いことが求められる。このため、現行のハット形鋼矢板の断面形状における断面性能を確保又は変化させながら、幅方向および断面高さ方向の両方向に沿う断面積をより小さくして、コスト削減に資する断面形状に変更することが求められる。
そこで本発明者らは、現行のハット形鋼矢板の型式毎に断面特性、および主要寸法を整理した。その結果を表1に示す。なお、表1中の距離Cとは、ウェブ部10における幅方向に沿う断面重心線Mと反対側を向く面と、断面重心線Mとの間の距離(mm)である。
必要に応じて、断面積A(cm4/m)の上限を、0.00252I+94.0または0.00252I+93.6としてもよい。断面積A(cm4/m)の下限を特に定める必要はないが、40としてもよく、必要に応じて、0.00252I+40としてもよい。
後述するように、本発明の一実施形態に係るハット形鋼矢板は、型式10H対応品、型式25H対応品、型式45H対応品および型式50H対応品の4種類に分類することができる。なお、本実施形態のこれら4種類の対応品は、全て式(1)を満たす。
断面二次モーメントIが10,500(cm4/m)程度のハット形鋼矢板を指す型式10Hのハット形鋼矢板1を例に、式(1)以外の構成要件について説明する。
断面高さ方向の距離D1(mm)および幅方向の距離D2(mm)の両方を組み合わせて適切に設定したハット形鋼矢板断面とすることで、既存の型式10Hのハット形鋼矢板用の施工用重機をそのまま適用でき、バイブロハンマで生じる打設エネルギーをハット形鋼矢板へ効率的に伝達できることを見出した。ここで、距離D1とは、平面視における一対のフランジ部11それぞれの延長線の第1交点P1と、断面重心線Mと、の間の距離を指す。距離D2とは、平面視における一対のフランジ部11それぞれにおける断面重心線Mとの第2交点P2同士の間の距離を指す。
262.6<D1<281.0…(2A)
以下に、式(2A)の技術的意義について説明する。
ハット形鋼矢板1を、図5(a)に示すように、バイブロハンマ工法で地面に打設するためには、現行の型式10Hのハット形鋼矢板に対応している施工用重機をそのまま転用できると、経済的である。そこで、ハット形鋼矢板1の一対のフランジ部11の断面重心線Mとの第2交点P2を把持する把持部30を使用するために、現行のハット形鋼矢板に対して、前記距離D1がほぼ同等であることが求められる。前記距離D1がほぼ同等であることで、現行の型式10Hのハット形鋼矢板の施工用重機の把持部30が、ハット形鋼矢板1の一対のフランジ部11を容易に把持することができるからである。
D1=(B/2)×tanθ+C−tw/2…(20)
ここで、B:ウェブ部10の幅方向の寸法(mm)、θ:フランジ角(°)、C:ウェブ部10における幅方向に沿う断面重心線Mと反対側を向く面と、断面重心線Mとの間の距離(mm)、tw:ウェブ部10の厚み寸法(mm)をそれぞれ示す。
D1MAX=(B/2)×tanθ+C−(tw/2)+0.04×H…(21)
D1MIN=(B/2)×tanθ+C−(tw/2)−0.04×H…(22)
すなわち、ハット形鋼矢板1のD1の値が、現行のハット形鋼矢板の各部の寸法についての式(21)におけるD1MAXから、式(22)におけるD1MINまでの範囲内であれば、効率的な打設を実現できる。
484.0<D2<499.0…(2B)
以下に、式(2B)の技術的意義について説明する。
前述したように、ハット形鋼矢板1を、現行の型式10Hのハット形鋼矢板用の施工用重機を採用してバイブロハンマ工法で圧入する際には、施工用重機の把持部30により、ハット形鋼矢板1の断面重心線M上の部分を把持することで、安定した状態で作業を行うことができる。このため、現行のハット形鋼矢板に対して、前記距離D2がほぼ同等であることが求められる。前記距離D2がほぼ同等であることで、現行の型式10Hのハット形鋼矢板用の施工用重機の把持部30が、そのままハット形鋼矢板1を把持することができるからである。
D2MAX=D2+10…(23)
D2MIN=D2−5…(24)
すなわち、ハット形鋼矢板1のD2の値が、式(23)におけるD2MAXから、式(24)におけるD2MINまでの範囲であれば、効率的な打設を実現できる。
ここで、前記有効幅Wとは、幅方向における一方側の連結継手13の嵌合中心から、幅方向における他方側の連結継手13の嵌合中心までの距離である。
なお、連結継手13同士の嵌合状態には、圧縮嵌合、中立嵌合、および引張嵌合等がある。すなわち、互いに隣り合う連結継手13同士が、幅方向に互いに圧縮された状態の圧縮嵌合、互いに隣り合う連結継手13同士が、幅方向に互いに引っ張られた状態の引張嵌合、圧縮嵌合と引張嵌合との中間の状態であって、互いに隣り合う連結継手13同士が、互いに圧縮も引っ張りも受けていない状態の中立嵌合である。本実施形態における有効幅Wは、中立嵌合状態における継手中心の間の距離に相当する。
876≦W≦932…(6)
以下に、式(6)の技術的意義について説明する。
ハット形鋼矢板1を、例えばバイブロハンマ工法ではなく、図5(b)に示すように、圧入工法で圧入するためには、現行の型式10Hのハット形鋼矢板用に使用している圧入工法用の施工用重機を転用することが経済的である。このため、ハット形鋼矢板1の一対のアーム部12における両端部を挟持する挟持部40を使用するために、現行のハット形鋼矢板に対して、前記有効幅Wがほぼ同等であることが好ましい。前記有効幅Wがほぼ同等であることで、型式10Hのハット形鋼矢板用の現行の圧入工法における施工用重機の挟持部40が、一対のアーム部12における両端部を挟持することができるからである。
H≦400…(7)
以下に、式(7)の技術的意義について説明する。
前述したように、ハット形鋼矢板1を、型式10Hのハット形鋼矢板用の現行の圧入工法における施工用重機を採用する場合には、施工用重機の挟持部40が、ハット形鋼矢板1全体をハット形鋼矢板1の外側から囲繞するため、前記距離Hが現行のハット形鋼矢板とほぼ同等であることが好ましい。前記距離Hがほぼ同等であることで、現行の施工用重機の挟持部40により、ハット形鋼矢板1全体をハット形鋼矢板1の外側から囲繞することができるからである。
L>H−C…(8)
ハット形鋼矢板1をバイブロハンマ工法又は圧入工法により地面に打設する際、幅方向に対向する一対のフランジ部11から、幅方向の内側に向かう一対の排土圧(土圧)が、互いに対抗して作用する。このため、ウェブ部10および一対のフランジ部11で囲まれた土壌が、排土圧により締め固められて、ハット形鋼矢板1を施工するための施工荷重が増大したり、ハット形鋼矢板1が土壌からの反力により変形したりすることがある。
次に、本実施形態の型式25H対応のハット形鋼矢板2について、図3を参照して説明する。型式25H対応のハット形鋼矢板2においては、前述した構成と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
また、型式25H対応のハット形鋼矢板2では、式(2A)に代えて、式(3A)を満たしている。
496.9<D1<520.9…(3A)
ここで、型式25Hとは、断面二次モーメントが24,400(cm4/m)程度のハット形鋼矢板を指す。
474.0<D2<489.0…(3B)
型式25H対応のハット形鋼矢板2では、現行の型式25Hのハット形鋼矢板の各寸法、式(23)および式(24)から、式(3B)を得た。
次に、本実施形態の型式45H対応のハット形鋼矢板3について、図4を参照して説明する。型式45H対応のハット形鋼矢板3においては、前述した構成と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。
また、型式45H対応のハット形鋼矢板3では、式(2A)に代えて、式(4A)を満たしている。
621.5<D1<650.9…(4A)
ここで、型式45Hとは、断面二次モーメントが45,000(cm4/m)程度のハット形鋼矢板を指す。
476.0<D2<491.0…(4B)
型式45H対応のハット形鋼矢板3では、現行の型式45Hのハット形鋼矢板の各寸法、式(23)および式(24)から、式(4B)を得た。
次に、本実施形態の型式50H対応のハット形鋼矢板4について説明する。型式50H対応のハット形鋼矢板4においては、前述した構成と同一の部位には同一の符号を付してその説明は省略し、異なる点についてのみ説明する。なお、型式50H対応のハット形鋼矢板の断面形状は、型式45Hのものとほぼ同じであり、図示を省略した。
型式50H対応のハット形鋼矢板4では、式(5A)および式(5B)を満たしている。式(5A)および式(5B)は、型式50Hの各寸法、式(21)、式(22)、式(23)および式(24)から得られる。
ここで、型式50Hとは、断面二次モーメントが51,100(cm4/m)程度のハット形鋼矢板を指す。
625.2<D1<654.8…(5A)
474.0<D2<489.0…(5B)
実施例7〜12は、式(3A)および式(3B)を満たしている。このため、実施例7〜12のハット形鋼矢板は、型式25H対応品に分類できる。つまり、現行の型式25Hのハット形鋼矢板用の施工用重機を用いた施工が可能である。
実施例13〜18は、式(4A)、式(5A)、式(4B)、式(5B)を全て満たしている。このため、実施例13〜18のハット形鋼矢板は、型式45H対応品にも、更には型式50H対応品にも分類できる。つまり、実施例13〜18のハット形鋼矢板は、現行の型式45Hまたは型式50Hの双方のハット形鋼矢板用の施工用重機を用いた施工が可能である。
実施例19は、式(4A)および式(4B)を満たしている。このため、実施例19のハット形鋼矢板は、型式45H対応品に分類できる。つまり、実施例19のハット形鋼矢板は、現行の型式45Hのハット形鋼矢板用の施工用重機を用いた施工が可能である。
実施例20は、式(5A)および式(5B)を満たしている。このため、実施例20のハット形鋼矢板は、型式50H対応品に分類できる。つまり、実施例20のハット形鋼矢板は、現行の型式50Hのハット形鋼矢板用の施工用重機を用いた施工が可能である。
10 ウェブ部
11 フランジ部
12 アーム部
M 断面重心線
Claims (4)
- 既存のハット形鋼矢板に基づいて新たなハット形鋼矢板を設計するハット形鋼矢板の設計方法であって、
前記既存のハット形鋼矢板および前記新たなハット形鋼矢板はいずれも、
ウェブ部と一対のフランジ部と一対のアーム部とを有し、
且つ複数配置されて壁体を構成して長手方向に延び、
且つ前記長手方向から見た平面視で前記壁体が延在する方向を幅方向としたとき、前記平面視で前記幅方向に延びる断面重心線と、前記一対のフランジ部それぞれとの交点である2箇所の第2交点P2が、バイブロハンマ工法のダブルチャック方式の施工用重機の一対の把持部により把持された状態で地面に打設され、
前記新たなハット形鋼矢板における前記幅方向の大きさ1m当たりにおいて、断面積A(cm2/m)と、前記断面重心線まわりの断面二次モーメントI(cm4/m)と、の関係が式(1)を満たすように設定し、
かつ前記新たなハット形鋼矢板において、前記平面視における前記一対のフランジ部それぞれの延長線の第1交点P1と前記断面重心線との間の距離をD1(mm)とし、前記2箇所の第2交点P2同士の間の距離をD2(mm)とし、前記ウェブ部のうち前記断面重心線と反対側を向く面と前記アーム部のうち前記断面重心線と反対側を向く面との間における、前記平面視で前記幅方向に直交する断面高さ方向の距離をH(mm)としたとき、前記D1が式(11)を満たし、且つ前記D2が式(12)を満たすように設定する、
ことを特徴とするハット形鋼矢板の設計方法。
A<0.00252I+94.4…(1)
D1MAX<D1<D1MIN…(11)
D2MAX<D2<D2MIN…(12)
ただし、D1MAXは式(21)を満たし、D1MINは式(22)を満たし、D2MAXは式(23)を満たし、D2MINは式(24)を満たす。
D1MAX=D1’+0.04×H’…(21)
D1MIN=D1’−0.04×H’…(22)
D2MAX=D2’+10…(23)
D2MIN=D2’−5…(24)
D1’:前記既存のハット形鋼矢板において前記D1に対応する距離(mm)
H’:前記既存のハット形鋼矢板において前記Hに対応する距離(mm)
D2’:前記既存のハット形鋼矢板において前記D2に対応する距離(mm) - 前記新たなハット形鋼矢板は、バイブロハンマ工法および圧入工法のいずれの工法によっても地面に打設され、
前記新たなハット形鋼矢板は、
圧入工法の施工用重機によって挟持されていない状態で、バイブロハンマ工法のダブルチャック方式の施工用重機によって把持され、
かつ、バイブロハンマ工法のダブルチャック方式の施工用重機によって把持されていない状態で、圧入工法の施工用重機によって挟持され、
前記新たなハット形鋼矢板において、前記一対のアーム部が圧入工法の施工用重機により挟持され、かつ前記一対のアーム部それぞれにおける前記幅方向の外端部同士の間の有効幅W(mm)が、式(6)を満たし、かつ前記距離H(mm)が式(7)を満たすように設定することを特徴とする請求項1に記載のハット形鋼矢板の設計方法。
876≦W≦932…(6)
H≦400…(7) - 前記新たなハット形鋼矢板において、前記一対のフランジ部それぞれにおける前記第2交点P2を通り前記一対のフランジ部それぞれに直交する垂線同士の第3交点P3と、前記断面重心線と、の間の距離L(mm)、前記距離H(mm)、および前記ウェブ部のうち前記断面重心線と反対側を向く面と前記断面重心線との間の距離C(mm)が、式(8)を満たすように設定することを特徴とする請求項1または2に記載のハット形鋼矢板の設計方法。
L>H−C…(8) - 請求項1から3のいずれか1項に記載の設計方法を用いてハット形鋼矢板を製造することを特徴とするハット形鋼矢板の製造方法。
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