JP6657968B2 - Mfi型ゼオライト - Google Patents

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Description

本発明は、MFI型ゼオライトに関するものであり、特に改良された特定のミクロ細孔分布を有するMFI型ゼオライトに関するものである。
ゼオライトは、ゼオライト構造由来の均一な細孔を利用した吸着剤、分子篩、高選択性触媒等として用いられている。そして、ゼオライトは、骨格構造内にミクロ細孔と呼ばれる細孔径が2nm以下の細孔を有することを特徴とする。分子径が2nmより小さい分子を反応基質とし、ゼオライトを触媒に用いた反応の場合、反応基質はミクロ細孔内へ拡散し、ミクロ細孔内部で反応が進行する。
ゼオライト触媒を用いた反応では、ミクロ細孔の分子篩能による形状選択性が働く。すなわち、ミクロ細孔の細孔径よりも大きな分子はミクロ細孔内に拡散できない(基質選択性)、ミクロ細孔内部空間のサイズより大きなサイズの中間体を形成することができない(中間体選択性)、ミクロ細孔内部空間のサイズより大きなサイズの生成物を生成することができない、または、ミクロ細孔外部に拡散できない(生成物選択性)。従って、ゼオライトを触媒として用い、目的の生成物を選択的に生成するために、ミクロ細孔の細孔径を制御することは重要な要素である。
ゼオライトを触媒として用いた例として、トルエンの不均化(例えば、特許文献1参照。)、キシレンの異性化(例えば、特許文献2参照。)などが挙げられる。
これら先行技術文献に記載の反応は、主にMFI型ゼオライトのミクロ細孔の細孔径に由来する形状選択性を利用したものである。つまり、MFI型ゼオライトのミクロ細孔は、入口径の理論値が約0.5nmであり、この細孔径に近接した分子径を持つ分子を生成するために、有効な反応場となると考えられる。また、ミクロ細孔内での分子の拡散性も同様に、ミクロ細孔のサイズ、すなわち、ミクロ細孔の入口径や、ミクロ細孔チャンネルの交差部位(インターセクション)の大きさに大きく依存する。そのため、ゼオライトの骨格構造の違いによって、ミクロ細孔内での分子の拡散性は異なり、反応性を決定する重要な要因となる。
ミクロ細孔の細孔径は、例えばLTA型ゼオライトのミクロ細孔入口径の理論値は約0.4nm、FAU型ゼオライトのミクロ細孔入口径の理論値は約0.7nmであるといったように、ゼオライトの骨格構造によって概ね決定される。
ゼオライトのミクロ細孔のサイズを改良する手段の一つとして、カチオン交換が挙げられる。例えば、LTA型ゼオライトのミクロ細孔入口径は、ナトリウム型で約0.4nm、カリウム型で約0.3nm、カルシウム型で約0.5nmであり、対カチオンの種類の違いにより、ミクロ細孔入口径が変化する。これにより、分子の形状選択性が異なる。
以上のことから、ゼオライトのミクロ細孔のサイズを改良することで、ゼオライト触媒の形状選択性や分子の拡散性が改良され、有益な結果が得られることが期待される。このため、ミクロ細孔のサイズが改良されたゼオライトを開発することは有益なことである。
さらに、ミクロ細孔(2nm未満)よりも大きなメソ細孔(2〜50nm)を有するMFI型ゼオライトの研究が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。なお、従来は主に10nm未満のメソ細孔の形成が試みられており、10nm以上のメソ細孔形成に関わる報告は僅かであった。そして、メソ細孔を有するMFI型ゼオライトの製造にはいくつかの方法が提案されており、例えば、アルカリ処理によってシリカ成分を溶出させ、メソ細孔を形成する方法(例えば、非特許文献2参照。)、ゼオライトの結晶化時に炭素微粒子を混在させ、それを焼成除去してメソ細孔を形成する方法(例えば、特許文献3参照。)、界面活性剤を用いてメソ細孔を形成する方法(例えば、特許文献4参照)、界面活性剤を用いて規則的なメソ細孔を形成する方法(例えば、特許文献5参照。)、微細な結晶を集合させ、集合した結晶間にメソ細孔を形成する方法(例えば、非特許文献1、特許文献6〜8参照。)等、が提案されている。
そして、メソ細孔を有したゼオライトを触媒として利用した例として、超安定Y型ゼオライト(USY)を用いた、減圧軽油の流動接触分解(FCC)が提案されている(例えば、特許文献9、10参照。)。
特許第4014279号公報 特許第2598127号公報 特開2008−19161公報 特開2009−184888公報 米国特許第6669924号公報 特公昭61−21985号公報 特許第3417944号公報 特許第4707800号公報 特許第5339845号公報 特許第4773420号公報
Microporous and Mesoporous Materials 第137巻、92頁(2011年) Microporous and Mesoporous Materials 第43巻、83頁(2001年)
しかし、非特許文献2に提案の方法により形成されるメソ細孔は10nm未満の小さいものであった。また、特許文献3に提案の方法により、得られるゼオライトの細孔分布はブロードであった。特許文献4,5の提案により得られるゼイライトは、隣接する細孔同士が壁で隔離し、物質移動の障害となる壁が存在していることから触媒としての適性に疑問が残るものである。さらに、非特許文献1、特許文献6〜8に提案の方法による場合も、形成されるメソ細孔は10nm未満の小さいものであった。
そして、特許文献9、10の提案においては、重質油を原料とした接触分解反応を進行させる際には、重質油相当の大きなサイズの分子が拡散しうる細孔を持つことが期待されるものである。
そこで、本発明は、改良されたミクロ細孔分布を有するMFI型ゼオライト、特に重質油相当の大きなサイズの分子が拡散しうる細孔を有し、触媒としての適性の期待されるゼオライトを提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、改良されたミクロ細孔分布を有するMFI型ゼオライトを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、下記(i)〜(iv)の特性を満足することを特徴とするMFI型ゼオライトに関するものである。
(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)が0.05ml/g≦pvであるメソ細孔群を有する。
(ii)回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
(iii)平均粒子径(PD)がPD≦100nmである。
(iv)細孔径0.3nmから0.8nmの範囲の微分細孔容積値(dV/d(d))−ミクロ細孔の分布曲線が、極大値を有するものであり、最も微分細孔容積値(dV/d(d))の大きい値を示す細孔径0.4〜0.5nmの範囲にある。
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のMFI型ゼオライトは上記(i)〜(iv)の特性を満足するものであり、MFI型ゼオライトとしては、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を示すものである。
本発明におけるミクロ細孔とは、IUPACで定義されたミクロ細孔であり、これは細孔直径が2nm以下の細孔を示す。また、メソ細孔とは、IUPACで定義されたメソ細孔であり、これは細孔直径が2〜50nmの細孔を示すものである。そして、ミクロ細孔およびメソ細孔は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法により測定することができる。また、窒素吸着法で得られた測定結果を解析することにより、ミクロ細孔およびメソ細孔の細孔容積の値、および細孔分布曲線を得ることができる。その解析には、例えば以下の方法を使用することができる。
ミクロ細孔については、Saito−Foley法(AIChE Journal、1991年、37巻、頁429〜436)により吸着過程を解析する。例えば、細孔直径が2nm以下に相当する範囲の窒素ガス脱着量を積算するとミクロ細孔の全細孔容積の値を得ることができる。また、最初に、縦軸が単位質量当りの窒素脱着量V(mL/g)、横軸がミクロ細孔直径d(nm)とする累積曲線を得てから、縦軸をミクロ細孔からの窒素ガス脱着量のミクロ細孔直径値での微分値(dV/d(d))とする微分細孔容積値(dV/d(d))−ミクロ細孔の分布曲線とすることにより、ミクロ細孔直径における単位質量当りの窒素脱着量の増加分のピークを得ることができる。
メソ細孔については、Barret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)により脱着過程を解析する。例えば、細孔直径が2nm以上50nm以下に相当する範囲の窒素ガス脱着量を積算するとメソ細孔の全細孔容積の値を得ることができる。また、最初に、縦軸が単位質量当りの窒素脱着量V(mL/g)、横軸がメソ細孔直径D(nm)とする累積曲線を得てから、縦軸をメソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値(d(V)/d(D))とすると、メソ細孔直径における単位質量当りの窒素脱着量の増加分のピークを得ることができる。
本発明のMFI型ゼオライトは、細孔直径がほぼ均一なメソ細孔群を有するものであり、本発明においては、細孔直径がほぼ均一であるメソ細孔群を均一メソ細孔と称する場合もある。そして、具体的には、均一メソ細孔とは、細孔分布曲線におけるメソ細孔に係るピークの内、最大のピークをガウス関数で近似し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(μ±2σ)内の細孔直径を有するメソ細孔をいう。また、均一メソ細孔の細孔容積は、μ±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めることができる。
そして、本発明のMFI型ゼオライトは、ほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトの中でも、(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)がpv≧0.05ml/gである、より均一なメソ細孔群を有するものである。
本発明のMFI型ゼオライトは、メソ細孔の細孔分布曲線がピークを有し、該ピークがhw≦20nm以下という細孔直径の大きさのバラつきの小さなほぼ均一なメソ細孔群を有することにより、例えば反応触媒とした際に反応選択性に優れるものとなり、その効果はhw≦15nmであることにより、より顕著な好ましいものとなる。そして、hwの下限としては特に設定するものではないが、より反応選択性に優れるものとなることから1nm以上のものであることが好ましい。また、該ピークをガウス関数近似した際の中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであることにより、より大きいサイズの分子をも選択的に反応することが可能となるものである。さらに、pv≧0.05ml/gであることにより、長寿命の触媒となるものであり、0.05ml/g≦pv≦0.7ml/gであることが好ましく、特に0.1ml/g≦pv≦0.7ml/gであることが好ましく、更に0.2ml/g≦pv≦0.5ml/gであることが好ましい。
また、本発明のMFI型ゼオライトは、例えば反応触媒とした際に特に選択的な反応を可能とするものとなることから、上記(i)に示されるpvの全細孔容積に占める割合(pvr)が、30%≦pvr≦100%であることが好ましく、更に40%≦pvr≦100%であることが好ましい。
本発明のMFI型ゼオライトは、(ii)回折角を2θとした紛体X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さないものである。このことは、メソ細孔間の配置には規則性がないこと、メソ細孔間を区切る壁も存在しないことを示すものであり、例えば触媒とした際にはメソ細孔間の物質移動が容易になることから反応効率に優れるものとなるものである。
本発明のMFI型ゼオライトは、(iii)PD≦100nmのものであり、特に耐熱性にも優れるものとなることから、3nm≦PDであることが好ましく、更に5nm≦PDであることが好ましい。ここで、PD>100nmのゼオライトである場合、ほぼ均一なメソ細孔群が形成されず、選択性におとるものとなる。なお、PDは、例えば外表面積から以下の式(1)を用いて算出して求めることができる。
PD=6/S(1/2.29×10+0.18×10−6) (1)
(ここで、Sは外表面積(m/g)を示すものである。)
また、式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
なお、MFI型ゼオライトの粒子径を測定する別の方法としては、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)の写真から任意の粒子を10個以上選んで、その表面積平均直径を求める方法を挙げることができる。
本発明のMFI型ゼオライトは、(iv)細孔径0.3nmから0.8nmの範囲の微分細孔容積値(dV/d(d))−ミクロ細孔の分布曲線が、極大値を有するものであり、最も微分細孔容積値(dV/d(d))の大きい値を示す細孔径0.4〜0.5nmの範囲にあるものである。該細孔径が0.4〜0.5nmの範囲にあることにより、例えば触媒として使用した際に例え重質油相当の大きなサイズの分子であっても高い活性を示すものとなるものである。
本願発明のMFI型ゼオライトは、そのSiO/Al(モル比)は制限されるものではなく、その中でも耐熱性、反応選択性、生産性に優れる触媒となることから、SiO/Al(モル比)が20以上200以下であることが好ましい。また、反応選択性、生産性に優れる触媒としての適性に優れるMFI型ゼオライトとなることから、細孔内にテトラプロピルアンモニウム塩の様な構造指向剤を含まないものであることが好ましい。
該MFI型ゼオライトを用いる際の形態としては、制限されるものではなく、例えば合成されたMFI型ゼオライト粉末をそのまま触媒として用いること、圧縮成型を行い特定の形状物として用いること、バインダー等と混合し成形を行い特定の形状物として用いること、等のいずれの形態として用いることも可能である。
本発明のMFI型ゼオライトの製造方法としては、例えば上記(i)〜(iii)の特性を満足する原料であるMFI型ゼオライトの骨格中のアルミニウムをスチーム等によって脱アルミニウム化することにより製造する方法を挙げることが可能である。その際のスチーム処理の温度は、例えば400〜900℃であることが好ましく、特に450〜800℃、更に500〜700℃であることが好ましい。また、スチームの分圧としては、0.001〜5MPaであることが好ましく、特に0.01〜0.5MPa、更に0.05〜0.2MPaであることが好ましい。スチームの濃度としては、例えば0.01〜100vol%水蒸気/希釈ガスであることが好ましい。希釈ガスは、窒素等の不活性ガス、空気、酸素、一酸化炭素、二酸化炭素、またはその混合ガス等を用いることができる。スチーム処理時間については任意に選択可能である。
また、上記(i)〜(iii)の特性を満足する原料であるMFI型ゼオライトの製造方法としては、例えば以下の方法を挙げることができる。
テトラプロピルアンモニウム(以降、「TPA」とする場合もある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させ、得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とし、得られた原料組成物を結晶化させ、焼成することによりMFI型ゼオライトを得ることができる。
本発明のMFI型ゼオライトは、改良された特定のミクロ細孔分布を有することから吸着剤、分子篩、高選択性触媒等として用いることが可能となるものである。
本発明は、ミクロ細孔サイズが改良されたMFI型ゼオライトを提供するものであり、触媒や吸着剤などの用途に適応した場合、形状選択性や拡散性などの改善が期待できるものとなり、工業的に非常に有用であるものである。
実施例により得られたMFI型ゼオライトは以下の方法により評価・測定した。
〜細孔分布、細孔直径、及び外表面積の測定〜
細孔分布、及び、細孔直径は窒素吸着測定により測定した。
窒素吸着測定には、一般的な窒素吸着装置((商品名)BELSOAP−max、日本ベル社製)を用い、吸着側は相対圧(P/P)0.025間隔で測定した。脱着側は、相対圧0.05間隔で測定した。外表面積は、t−plot法により、吸着層の厚み(t=0.6〜1.0nm)の範囲を直線近似して求めた。細孔分布曲線の解析には日本ベル社製のBELMaster(ver.2.3.1)を用いた。
窒素吸着測定の吸着過程をSaito−Foley法(AIChE Journal、1991年、37巻、頁429〜436)により解析し、横軸が細孔ミクロ直径の常数、縦軸が窒素ガスの脱着量の微分値であるミクロ細孔の細孔分布曲線を得た。
窒素吸着測定の脱着過程をBarret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)により解析し、横軸がメソ細孔直径の常数、縦軸が窒素ガスの脱着量の微分値であるメソ細孔の細孔分布曲線を得た。
メソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値(d(V)/d(D))のピークの内、最大のピークをガウス関数の強度近似で解析し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(=μ±2σ)内の直径を有するメソ細孔を均一メソ細孔とした。
均一メソ細孔の細孔容積は、中心値(μ)を基準として±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算して求めた。
〜平均粒子径の測定〜
外表面積から上記式(1)を用いて算出し、平均粒子径とした。式(1)中、Sは外表面積(m/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
〜SiO/Alモル比の測定〜
ゼオライトのSiO/Alモル比は、MFI型ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析((商品名)ICP−AES)での測定に供することにより得た。
〜凝集径の測定〜
凝集径として、動的散乱法によって試料の凝集粒子径の体積平均径(D50)を測定した。測定には(商品名)マイクロトラックHRA(Model9320−x100)(日機装製)を用いた。測定において粒子屈折率は1.66、粒子の設定は透明非球状粒子、溶媒の液体屈折率は1.33とした。
〜粉末X線回折の測定〜
(商品名)X’pert PRO MPD(スペクトリス社製)を用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。0.04〜5度の範囲を0.08度/ステップ、200秒/ステップで分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
ピークの有無の確認は目視で行うことができるほか、ピークサーチプログラムを利用してもよい。ピークサーチプログラムは、一般的なプログラムが利用できる。例えば、横軸が2θ(度)、縦軸が強度(a.u.)の測定結果をSAVITSKY&GOLAYの式とSliding Polynomialフィルターで平滑化した後、2次微分を行ったときに、3点以上連続する負の値がある場合、ピークが存在すると判断できる。
実施例1
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とし、発生したエタノールは蒸発させて除いた。その際の原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
そして、得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型の骨格構造を有するゼオライトを得た。このMFI型ゼオライトの平均粒子径は26nm、SiO/Alモル比は26、メソ細孔の全細孔容積0.42ml/gであった。また、ミクロ細孔分布曲線は、細孔径0.3875nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。そして、メソ細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、中心値は17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。
得られたMFI型ゼオライトに対して、スチーム処理を行った。スチーム処理は、固定床で600℃に保持された該MFI型ゼオライトに対して、30vol%水蒸気/空気を10分間供給した。スチーム処理後自然放冷を行い、MFI型ゼオライトを得た。
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径は26nm、SiO/Alモル比は26、メソ細孔の全細孔容積0.42ml/gであった。また、ミクロ細孔分布曲線は、細孔径0.4125nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。そして、メソ細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、中心値は17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
比較例1
スチーム処理を行わなかった以外は実施例1と同様の方法により、MFI型ゼオライトを得た。
得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は26nm、SiO/Alモル比は26、メソ細孔の全細孔容積0.42ml/gであった。また、ミクロ細孔分布曲線は、細孔径0.3875nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。そして、メソ細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、中心値は17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
実施例2
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。また、原料組成物において発生したエタノールは蒸発させて除いた。
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。そして、得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径27nm、SiO/Alモル比40、凝集径46μmであり、メソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。また、MFI型ゼオライトのミクロ細孔分布曲線は、0.3875nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。さらに、MFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。
得られたMFI型ゼオライトに対して、スチーム処理を行った。スチーム処理は、固定床で600℃に保持されたゼオライトに対して、30vol%水蒸気/空気を10分間供給した。スチーム処理後自然放冷を行い、MFI型ゼオライトを得た。
得られたMFI型ゼオライトのミクロ細孔分布曲線は、平均粒子径27nm、SiO/Alモル比40、凝集径46μmであり、メソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。また、MFI型ゼオライトのミクロ細孔分布曲線は、0.4125nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。さらに、MFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
比較例2
スチーム処理を行わなかった以外は実施例2と同様の方法により、MFI型ゼオライトを得た。
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径27nm、SiO/Alモル比40、凝集径46μmであり、メソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。また、MFI型ゼオライトのミクロ細孔分布曲線は、0.3875nmに最も大きい微分細孔容積値を有する極大値を持つものであった。さらに、MFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、中心値は16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
触媒や吸着剤などの用途に適したミクロ細孔のサイズが改良されたMFI型ゼオライトを提供するものであり、工業的にも非常に有用である。
実施例1、2、比較例1、2により得られたMFI型ゼオライトのミクロ細孔分布曲線である。

Claims (4)

  1. 下記(i)〜(iv)の特性を満足することを特徴とするMFI型ゼオライト。
    (i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)が0.05ml/g≦pvであるメソ細孔群を有する。
    (ii)回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
    (iii)平均粒子径(PD)がPD≦100nmである。
    (iv)細孔径0.3nmから0.8nmの範囲の微分細孔容積値(dV/d(d))−ミクロ細孔の分布曲線が、極大値を有するものであり、最も微分細孔容積値(dV/d(d))の大きい値を示す細孔径0.4〜0.5nmの範囲にある。
  2. 上記(i)に示す半値幅がhw≦10nmであるメソ細孔群を有するものであることを特徴する請求項1に記載のMFI型ゼオライト。
  3. 上記(i)に示すpvの全メソ細孔容積の対する細孔容積の割合(pvr)が30%≦pvr≦100%であるメソ細孔群を有するものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のMFI型ゼオライト。
  4. 上記(i)〜(iii)に記載の特性を満足するMFI型ゼオライトをスチーム処理してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のMFI型ゼオライトの製造方法
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