(過給機付き自動二輪車)
図1は本発明の鞍乗型車両の実施形態である過給機付き自動二輪車を示している。図1では、説明の便宜上、過給機付き自動二輪車1の車体フレーム211およびエンジンユニット11以外の部分を二点鎖線で示している。また、図2ないし図5は車体フレーム211およびエンジンユニット11の正面図、左側面図、右側面図および平面図であり、図6はエンジンユニット11からラジエータ33を取り除いた状態を示す正面図である。また、図7はエンジンユニット11の上部の背面を示している。また、以下の実施形態の説明において、前、後、左、右、上および下の方向は、過給機付き自動二輪車のシートに座した運転者を基準とする。
図1において、過給機付き自動二輪車1の車体フレーム211は、例えば複数の鋼鉄製パイプを接合することにより形成されている。具体的には、車体フレーム211は、自動二輪車1の前部上側に配置されたヘッドパイプ212と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がヘッドパイプ212の上部に接続され、後端側が下方に傾斜しつつ後方へ伸長する一対のメインフレーム213と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がヘッドパイプ212の下部に接続され、後端側がメインフレーム213よりも大きく下方に傾斜しつつ後方へ伸長する一対のダウンチューブ214と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がダウンチューブ214の中間部にそれぞれ接続され、後端側が後方へ伸長する一対のサイドフレーム215と、メインフレーム213の後端側にそれぞれ接合された一対のピボットフレーム216とを備えている。また、メインフレーム213、ダウンチューブ214およびサイドフレーム215間には補強フレーム217が設けられている。なお、メインフレーム213およびサイドフレーム215がフレーム部材の具体例である。
また、図5に示すように、一対のメインフレーム213はヘッドパイプ212から左、右にそれぞれ拡開しつつ後方へ伸長している。すなわち、自動二輪車1の左右方向(車幅方向)の中心を自動二輪車1の前後方向に貫く直線を基準線Sとすると、右側のメインフレーム213の前端部は、自動二輪車1の左右方向中心に配置されたヘッドパイプ212から、右後方に斜めに伸長している。その後、この右側のメインフレーム213は、エンジン12のシリンダヘッド15の後部右方付近で緩やかに湾曲した後、基準線Sと平行に後方へ伸長している。その後、この右側のメインフレーム213は、シリンダヘッド15の後面を超えた付近で僅かに湾曲し、基準線Sに徐々に接近するように若干左方に傾斜しつつ後方へ伸長している。一方、左側のメインフレーム213は、基準線Sを基準として、右側のメインフレーム213と略左右対称の形状を有している。また、一対のダウンチューブ214も、一対のメインフレーム213とほぼ同様に、ヘッドパイプ212から左、右にそれぞれ拡開しつつ後方へ伸長している。また、右側のサイドフレーム215は、その前端部がエンジン12の右前方の位置で右側のダウンチューブ214に接続され、後端側はエンジン12の右方を基準線Sと平行に後方へ伸長している。また、この右側のサイドフレーム215は、シリンダヘッド15の後面を超えた付近で僅かに湾曲し、基準線Sに徐々に接近するように若干左方に傾斜しつつ後方へ伸長している。一方、左側のサイドフレーム215は、基準線Sを基準として、右側のサイドフレーム215と略左右対称の形状を有している。
また、図1に示すように、ヘッドパイプ212には、ステアリングシャフト(図示せず)が挿入され、ステアリングシャフトの上端部および下端部にはそれぞれステアリングブラケット225が設けられている。また、上側のステアリングブラケット225にはハンドル226が設けられている。また、上側および下側のステアリングブラケット225には左右一対のフロントフォーク227の上部がそれぞれ支持され、これらフロントフォーク227の下端側には前輪228が支持されている。
また、左右一対のピボットフレーム216間にはピボット軸231を介してスイングアーム232の前端側が支持され、スイングアーム232の後端側には後輪233が支持されている。また、後輪233の車軸にはドリブンスプロケット234が設けられ、ドリブンスプロケット234には、後述するエンジン12の動力を伝達するチェーン235が巻回されている。
また、自動二輪車1の前輪228と後輪233との間にはエンジンユニット11が設けられている。エンジンユニット11は、主に、左側のメインフレーム213、左側のダウンチューブ214および左側のサイドフレーム215と、右側のメインフレーム213、右側のダウンチューブ214および右側のサイドフレーム215との間に配置され、これらのフレームに支持されている。また、エンジンユニット11の上方には燃料タンク241が設けられ、燃料タンク241の後方にはシート242が設けられている。また、自動二輪車1の前部上側にはアッパーカウル244が設けられている。さらに、自動二輪車1には、エンジンユニット11の主に前部下側を覆うアンダーカウル245が設けられている。
(エンジンユニット)
図3に示すように、エンジンユニット11は、エンジン12と、エンジン12の動力を後輪233へ伝達する一次減速機構、クラッチ、トランスミッション等の駆動系の一部と、エンジン12の可動部を潤滑する潤滑系と、空気と燃料の混合気をエンジン12へ供給する吸気系(過給機121を含む)と、混合気の燃焼により発生する排気ガスをエンジン12から排出する排気系の一部と、エンジン12等を冷却する冷却系と、クランクシャフトの回転を利用して発電するACジェネレータ等を備えている。
エンジン12は、本実施形態においては水冷式並列2気筒の4サイクルガソリンエンジンである。エンジン12には、クランクシャフトを収容するクランクケース13が設けられ、クランクケース13の上にはシリンダ14が設けられ、シリンダ14の上にはシリンダヘッド15が設けられ、シリンダヘッド15の上にはシリンダヘッドカバー16が設けられている。また、クランクケース13の下方にはオイルパン17が設けられている。また、エンジン12のシリンダ軸線は上側が下側よりも前に位置するように傾斜している。また、エンジン12には、ピストンの運動により生じる振動を軽減するバランスシャフトが設けられている。バランスシャフトはクランクシャフトの前方に配置されており、エンジン12のクランクケース13の前部に形成されたバランサ室18内に設けられている。また、クランクケース13の左部にはマグネト室19が設けられ、マグネト室19にはACジェネレータが収容されている。
また、図4に示すように、一次減速機構、クラッチ、トランスミッション等の駆動系の一部は、エンジンユニット11の後部に配置されている。すなわち、クランクケース13およびシリンダ14の後ろ側にはトランスミッションケース21が一体形成され、トランスミッションケース21内には一次減速機構およびトランスミッションが収容されている。また、トランスミッションケース21の右部にはクラッチカバー22が取り付けられ、トランスミッションの右方に配置されたクラッチはクラッチカバー22により覆われている。また、図3に示すように、トランスミッションケース21の左部にはスプロケットカバー23が設けられ、トランスミッションの左方に配置されたドライブスプロケットはスプロケットカバー23により覆われている。また、ドライブスプロケットには、図1に示すように、エンジン12の動力を後輪233へ伝達するチェーン235が巻回されている。
また、図6に示すように、潤滑系は、エンジン12のオイルパン17内に貯留されたエンジンオイルを汲み上げてエンジン12の各所へ供給するオイルポンプ、エンジンオイルを濾過するオイルフィルタ25、およびエンジンオイルを冷却する水冷式のオイルクーラ26を備えている。オイルフィルタ25およびオイルクーラ26はエンジン12の前部下側に取り付けられている。
また、図4に示すように、冷却系は、クランクケース13の右側に配置され、冷却水を吐出するウォータポンプ30と、シリンダ14およびシリンダヘッド15に設けられ、シリンダ14およびシリンダヘッド15を冷却水により冷却するウォータジャケット(図示せず)と、エンジン12の前方に配置され、走行風を受け、またはラジエータファン40を駆動し、冷却水の熱を大気に放出することによって冷却水を冷却するラジエータ33とを備えている。また、図2に示すように、ラジエータ33は、上ラジエータ34および下ラジエータ35を備えており、上ラジエータ34と下ラジエータ35との間は一対のコネクティングホース36を介して接続されている。
さらに、冷却系は、冷却水の温度に応じてラジエータ33を流通させる冷却水量を調整し、冷却水の温度を適温に保つ冷却水流制御ユニット41を備えている。図8は、エアクリーナ115、インタークーラ131、サージタンク154等を取り除いたエンジンユニット11の前部を上側から見た図である。図8では、冷却水流制御ユニット41、シリンダアウトレットホース52、ラジエータインレットホース53、ラジエータアウトレットホース54およびウォータポンプインレットホース55等を目立たせるために、エンジン12、ラジエータ33等を二点鎖線で示している。
図8に示すように、冷却水流制御ユニット41はシリンダヘッドカバー16の上方の右前側に配置されている。また、冷却水流制御ユニット41の左部内部には、ウォータジャケットから流出した冷却水をラジエータ33へ供給する通路P1が形成されている。そして、通路P1の流入側とウォータジャケットの流出側との間にはシリンダアウトレットホース52が接続され、通路P1の流出側とラジエータ33のラジエータ流入口37との間にはラジエータインレットホース53が接続されている。
また、冷却水流制御ユニット41の右部内部には、ラジエータ33から流出した冷却水をウォータポンプ30へ戻す通路P2が形成されている。そして、ラジエータ33のラジエータ流出口38と通路P2の流入側との間にはラジエータアウトレットホース54が接続され、通路P2の流出側とウォータポンプ30の冷却水吸込口31との間にはウォータポンプインレットホース55が接続されている。
また、冷却水流制御ユニット41内部には、通路P1と通路P2とを接続する冷却水バイパス通路Pbが形成されている。
さらに、冷却水流制御ユニット41の内部にはサーモスタット43が設けられている。サーモスタット43は、冷却水の温度に応じ、ラジエータ33を流通させる冷却水量を調整する。すなわち、冷却水の温度が所定の基準温度T1以下のときには、サーモスタット43は、冷却水がウォータポンプ30、ウォータジャケット、シリンダアウトレットホース52、通路P1、冷却水バイパス通路Pb、通路P2およびウォータポンプインレットホース55により形成される第1の循環経路を流通するように冷却水の流れを制御し、冷却水がラジエータ33を流通しないようにする。一方、冷却水の温度が所定の基準温度T2(T2>T1)よりも高いときには、サーモスタット43は、冷却水がウォータポンプ30、ウォータジャケット、シリンダアウトレットホース52、通路P1、ラジエータインレットホース53、ラジエータ33、ラジエータアウトレットホース54、通路P2およびウォータポンプインレットホース55により形成される第2の循環経路を流通するように冷却水の流れを制御し、冷却水がラジエータ33を流通するようにする。他方、冷却水の温度が基準温度T1よりも高く、基準温度T2以下のときには、サーモスタット43は、冷却水が第1の循環経路および第2の循環経路の双方を流通するように冷却水の流れを制御し、冷却水の一部がラジエータ33を流通するようにする。
また、図4に示すように、ラジエータ33の右上方には、冷却水注水口57を有する冷却水注水部58が設けられ、冷却水注水部58は、注水ホース56を介して、上ラジエータ34の後面の右下側に形成された冷却水供給口39に接続されている。また、下ラジエータ35の後方には冷却水を貯えるリザーバタンク59が設けられており、リザーバタンク59はオーバーフロー管路(図示せず)を介して例えば上ラジエータ34に接続されている。
(吸気系、排気系の構造)
また、図3または図6に示すように、吸気系は、エアクリーナ115、過給機121、インタークーラ131、排風ダクト141、サージタンク154、電子制御スロットル装置171、およびインジェクタ177を備えている。
エアクリーナ115は、外部から取り込まれた燃料燃焼用の空気を濾過して浄化する装置である。図6に示すように、エアクリーナ115は、エンジン12の上方左側、具体的にはシリンダヘッドカバー16の上方左側に配置されている。また、図3に示すように、エアクリーナ115は、外気をエアクリーナ115内に取り込むエア吸入口118を備えている。また、エアクリーナ115のエア吸入口118には外気をエア吸入口118に導くエアダクトが設けられているが、エアダクトについては図示を省略している。また、図6に示すように、エアクリーナ115は、濾過後の空気をエアクリーナ115内から流出させるエア流出口119を備えている。
過給機121は、図3に示すように、エンジン12の前方、具体的にはシリンダ14の前方に配置されている。また、過給機121は、エンジン12のバランサ室18の上方に配置されている。過給機121は、図6に示すように、タービンを有するタービン部122、およびコンプレッサ部123を備えている。過給機121は、エンジン12からの排気ガスによりタービン部122のタービンを駆動し、このタービンの動力によりコンプレッサ部123を駆動し、エアクリーナ115を介して供給された空気をコンプレッサ部123により圧縮する。また、過給機121は、タービン部122が右側となり、コンプレッサ部123が左側となるように配置されている。また、エアクリーナ115のエア流出口119と過給機121のコンプレッサ部123との間はエアインテークパイプ181により接続されている。
インタークーラ131は、過給機121のコンプレッサ部123の圧縮により高温となった空気を冷却する熱交換器である。図6に示すように、インタークーラ131はエンジン12の上方右側、具体的にはシリンダヘッドカバー16の上方右側に配置されている。すなわち、エアクリーナ115とインタークーラ131とは、エンジン12の上方において左右方向に並んで配置されている。また、インタークーラ131は、左右方向において、過給機121のコンプレッサ部123の反対側の位置に配置されている。インタークーラ131は空冷式であり、コンプレッサ部123により圧縮された空気を流通させる通路132Aと、外気を受けることでコンプレッサ部123により圧縮された空気の熱を放熱するフィン132Bを有する放熱部132を備えている。また、放熱部132は、放熱のための外気を受ける受け面132Cを有している。また、インタークーラ131の前部には、過給機121のコンプレッサ部123から供給された空気を放熱部132の通路132Aへ流入させるエア流入口133が形成されている。また、図4または図5に示すように、インタークーラ131の後部には、放熱部132の通路132Aを流通して冷却された空気をサージタンク154へ供給するエア流出口134が形成されている。また、過給機121のコンプレッサ部123とインタークーラ131のエア流入口133との間はエアアウトレットパイプ182により接続されている。
また、インタークーラ131の前方には、外気を冷却風としてインタークーラ131の放熱部132に導く導風ダクトが設けられているが、導風ダクトについては図示を省略している。
また、図5に示すように、インタークーラ131の後方には、インタークーラ131から排出された冷却風を外部に排出する排風ダクト141が設けられている。排風ダクト141は、導風ダクトに導かれてインタークーラ131の放熱部132に当たり、放熱部132のフィン132B間を通過した後の冷却風を外部に排出する。放熱部132を通過した冷却風は、インタークーラ131の通路132Aを流通する空気を冷却することにより高温となる。排風ダクト141は、このように高温となった冷却風を外部へ排出する位置および方向を定める。また、排風ダクト141は、その前部がエンジン12の右上方に位置し、後部がエンジン12の後方に位置するように配置されている。また、排風ダクト141は、自動二輪車1の上面視において、一対のメインフレーム213間に配置されている。また、排風ダクト14は、図4に示すように、自動二輪車1の側面視において、右側のサイドフレーム215に沿ってエンジン12の後方へ伸長している。また、排風ダクト141は自動二輪車1の左右方向中心に向かって緩やかに湾曲し、後方に行くに従って左右方向中心に接近するように伸長している。
サージタンク154は、過給機121により圧縮され、インタークーラ131により冷却された空気の流れを整流する装置である。図5に示すように、サージタンク154はエンジン12の上方後ろ側に配置されている。また、サージタンク154の上部右側には、インタークーラ131から供給された空気をサージタンク154内に流入させるエア流入口156が形成されている。また、サージタンク154の下部には、サージタンク154に一時的に貯えられた空気を、電子制御スロットル装置171のスロットルボディ172に形成された吸気通路へ流出させるエア流出口157(図11参照)が形成されている。また、インタークーラ131のエア流出口134とサージタンク154のエア流入口156との間はコネクティングパイプ183により接続されている。
電子制御スロットル装置171は、インタークーラ131およびサージタンク154を流通してエンジン12の吸気ポート20へ供給される空気の量を調整する装置である。図7に示すように、電子制御スロットル装置171は、エンジン12の後方上側においてサージタンク154とエンジン12の吸気ポート20との間に配置されている。電子制御スロットル装置171は、エンジン12が有する2つの吸気ポート20に対応して2つのスロットルボディ172を備えている。各スロットルボディ172内には吸気通路173(図10参照)が形成され、吸気通路173の流入側はサージタンク154のエア流出口157に接続され、吸気通路173の流出側はエンジン12の吸気ポート20に接続されている。また、各スロットルボディ172の吸気通路173内にはスロットルバルブ174(図10参照)が設けられている。さらに、電子制御スロットル装置171は、各スロットルバルブ174の開度を制御する電動の駆動モータ175を備えている。自動二輪車1には、アクセル操作量を検出するセンサと、このセンサにより検出されたアクセル操作量に基づいて駆動モータ175の駆動を制御するコントローラが設けられている。駆動モータ175はこのコントローラからの制御信号に従って動作する。また、2つのスロットルボディ172は、左右方向において、エンジン12の吸気ポート20に対応する位置にそれぞれ配置されている。また、駆動モータ175は、電子制御スロットル装置171の左部に配置され、左側のスロットルボディ172の前方から左方にかけての領域に位置している(図13参照)。また、電子制御スロットル装置171には、各スロットルバルブ174のバルブ位置(開度)を検出するスロットルポジションセンサ176が設けられ、スロットルポジションセンサ176は電子制御スロットル装置171の右部に配置され、右側のスロットルボディ172の右方に位置している(図10参照)。
インジェクタ177は、エンジン12の吸気ポート20へ燃料を噴射する装置であり、インジェクタ177には、燃料タンク241からインジェクタ177へ燃料を供給するデリバリパイプ178が接続されている。具体的には、1つの吸気ポート20につき2つのインジェクタ177が設けられ、一方のインジェクタ177が吸気通路173の上流側に配置され、他方のインジェクタ177が吸気通路173の下流側に配置されている。また、2つのデリバリパイプ178が設けられ、一方のデリバリパイプ178が各吸気通路173の上流側に配置されたインジェクタ177に燃料を供給し、他方のデリバリパイプ178が各吸気通路173の下流側に配置されたインジェクタ177に燃料を供給する。
このように接続された吸気系において、外部から取り込まれた空気は、通常、エアクリーナ115、エアインテークパイプ181、過給機121のコンプレッサ部123、エアアウトレットパイプ182、インタークーラ131、コネクティングパイプ183、サージタンク154、および電子制御スロットル装置171の各スロットルボディ172(吸気通路173)を順次通り、エンジン12の各吸気ポート20に供給される。
また、図3に示すように、自動二輪車1の吸気系には、過給機121のコンプレッサ部123を介さずにエアインテークパイプ181とエアアウトレットパイプ182との間を接続するエアバイパス配管184と、エアバイパス配管184を連通、遮断を切り換えるエアバイパスバルブ185とが設けられている。エアバイパスバルブ185は、例えば減速時にスロットルバルブが全閉されたときに開弁し、エアアウトレットパイプ182とエアインテークパイプ181との間を、エアバイパス配管184を介して連通させ、過給機121のコンプレッサ部123の下流側の圧縮された空気を上流側へ逃がし、コンプレッサ部123の下流側の圧力を下げる。
また、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141およびサージタンク154は単一のユニットとして一体化されている。以下、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141およびサージタンク154を一体化したものを吸気ユニット111という。図9は電子制御スロットル装置171が取り付けられた吸気ユニット111を示している。図10は、吸気ユニット111の構成部品を電子制御スロットル装置171と共に示している。図11は、図9中の矢示XI−XI方向から見たユニットケース161の断面図であり、図12は排風ダクト141の内部を示す断面図である。
図9に示すように、吸気ユニット111は、エアクリーナ115のケースとサージタンク154の外殻とが一体形成されたユニットケース161を備えている。ユニットケース161は例えば樹脂材料により形成されている。ユニットケース161の前部にはクリーナケース部162が形成され、この部分がエアクリーナ115のケースに相当する部分である。また、ユニットケース161の後部にはタンク部163が形成され、この部分がサージタンク154の外殻を形成する部分である。また、ユニットケース161において、クリーナケース部162とタンク部163との間には両者間を結合する連結部164が形成されている。
図11に示すように、ユニットケース161において、クリーナケース部162は中空の箱状に形成され、その内部にはクリーナ室116が形成されている。クリーナ室116内には空気を濾過するエアフィルタ117が設けられている。また、クリーナケース部162の左側の壁部には、エア流入口118が形成されている。なお、エア吸入口118を二点鎖線により模式的に示している。エア吸入口118の位置は適宜設定することができる。また、クリーナケース部162の前下部にはエア流出口119が形成されている。
また、ユニットケース161において、タンク部163は中空の箱状に形成され、その内部には整流室155が形成されている。また、タンク部163の右部にはエア流入口156が形成され(図9参照)、タンク部163の下部にはエア流出口157が形成されている。また、ユニットケース161において、クリーナケース部162のクリーナ室116とタンク部163の整流室155とは互いに遮断された別々の室である。
また、図9に示すように、吸気ユニット111において、エアクリーナ115の右部には、排風ダクト141の排風導入部142を介してインタークーラ131が取り付けられている。
ここで、排風ダクト141の構造は次の通りである。図10または図12に示すように、排風ダクト14は、排風導入部142、膨張部147および排風案内部148を備えている。
排風導入部142は、排風ダクト141の前部に形成され、インタークーラ131から排出された冷却風を導入する。排風導入部142の前部には右前方に開口した排風導入口143が形成されている。また、排風導入口143の周縁部は、インタークーラ131を支持するインタークーラ支持部144が形成されている。排風導入部142内には、冷却風を排風導入口143から膨張室147内に流通させる通路が形成されている。
膨張部147は排風導入部141と排風案内部148との間に形成されている。膨張部147内には、排風導入部142から排風案内部148へ向かって冷却風を流通させる通路が形成されている。当該通路の流入側は排風導入部142内に形成された通路に接続され、当該通路の流出側は排風案内部148内に形成された通路に接続されている。また、膨張部147内に形成された通路の流入端側と流出端側との中間部分の流路面積は、当該通路の流入端側および流出端側のそれぞれの流路面積よりも大きい。すなわち、膨張部147内の通路はその前後の通路よりも広く、拡大されている。
排風案内部148は、排風ダクト141の後部に形成され、排風導入部142により導入され、膨張部147を流通した冷却風をエンジン12から後方へ離れた位置へ向けて案内する。排風案内部148内には膨張部147から流出した冷却風を流通させる通路が形成され、排風案内部148の後端部には冷却風を外部に排出する排風排出口149が形成されている。
導風ダクトにより導かれた冷却風は、排風導入部142のインタークーラ支持部144に取り付けられたインタークーラ131の放熱部132の受け面132Cに当たり、放熱部132のフィン132B間を通過して排風導入口143へ流入する。排風導入口143へ流入した冷却風は、図12中の矢示に示すように、排風導入口143から排風導入部142内の通路に流入し、膨張部147内を通り、排風案内部148内の通路を流通して排風排出口149から外部へ排出される。
図10に示すように、ユニットケース161の右面に排風ダクト141の排風導入部142が例えば溶着等により固定される。また、排風導入部142の右部に形成されたインタークーラ支持部144にインタークーラ131が取り付けられる。具体的には、インタークーラ131には固定部135および136が形成されており、排風導入部142には取付孔151が形成されており、ユニットケース161には取付部166が形成されている。インタークーラ131は、ボルト等を用いて固定部135を取付部166に固定し、ボルト等を用いて固定部136を取付孔151に固定することにより、インタークーラ支持部144に取り付けられる。
一方、排気系は、図6に示すように、エンジン12の排気ポートと過給機121のタービン部122との間を接続するエキゾーストパイプ191、過給機121のタービン部122とマフラ側とを接続するマフラージョイントパイプ192、およびマフラ(図示せず)等を備えている。これらのうち、エキゾーストパイプ191はエンジンユニット11の一部を構成する。エキゾーストパイプ191は、エンジン12の前方であって排気ポートと過給機121のタービン部122との間に配置されている。本実施形態においては、エキゾーストパイプ191は、過給機121のタービン部122のハウジングと一体形成されている。具体的には、並列2気筒のエンジン12の2つの排気ポートには2本のエキゾーストパイプ191の一端側がそれぞれ接続されているが、これらエキゾーストパイプ191の他端側は互いに結合して1本となり、さらに、この結合して1本となったエキゾーストパイプ191の他端部は過給機121のタービン部122のハウジングと一体化している。なお、エキゾーストパイプ191とタービン部122のハウジングとをそれぞれ別体として形成し、両者を接続する構成としてもよい。一方、マフラージョイントパイプ192は、その一端側が過給機121のタービン部122に接続され、他端側はエンジン12の下方右側を通過し、マフラに向かって後方へ伸長している。また、マフラはエンジン12の後方下側に配置されている。各排気ポートから排出された排気ガスはエキゾーストパイプ191を介して過給機121のタービン部122のハウジング内へ供給される。この排気ガスによりタービン部122のタービンが回転する。続いて、タービン部122から排出された排気ガスはマフラージョイントパイプ192を介してマフラへ供給され、マフラから外部へ排出される。
また、過給機121のタービン部122にはウェイストゲートバルブ193が設けられている。すなわち、タービン部122の内部には、エキゾーストパイプ191を介して供給される排気ガスの一部をタービンへ供給せずにマフラージョイントパイプ192側へ流すゲートが形成されており、ウェイストゲートバルブ193は、このゲートの開閉を行うことによりタービンへの排気ガスの流入量を調整する。
(電子制御スロットル装置の駆動モータの配置)
図13は、エンジン12の上方に配置された吸気ユニット111および電子制御スロットル装置171を自動二輪車1の上方から見た状態を示している。また、図13では、電子制御スロットル装置171においてエアクリーナ115またはサージタンク154に隠れている部分を点線で示している。また、図13では、ヘッドパイプ212およびメインフレーム213を二点鎖線で示している。また、図13中の基準線Sは、図5の基準線Sと同様に、自動二輪車1の左右方向の中心を自動二輪車1の前後方向に貫く直線である。
図13に示すように、インタークーラ131は自動二輪車1の右側、すなわち本実施形態においては基準線Sよりも右に配置されている。これに対し、電子制御スロットル装置171の駆動モータ175は、自動二輪車1の左側、すなわち本実施形態においては基準線Sよりも左に配置されている。過給機121のコンプレッサ部123により圧縮されて高温となった空気が供給されるインタークーラ131は熱を発するが、インタークーラ131と駆動モータ175とは左右方向に互いに離れているので、インタークーラ131から発せられる熱が駆動モータ175に伝わり難くい。したがって、インタークーラ131から発せられる熱により、駆動モータ175が高温となることを防止することができる。
また、図10を見るとわかる通り、インタークーラ131と駆動モータ175との間には排風ダクト141の排風導入部142が配置されており、排風導入部142がインタークーラ131から駆動モータ175へ向かう熱を遮る。これにより、インタークーラ131から発せられる熱が駆動モータ175に伝わり難くすることができる。
また、図13に示すように、排風ダクト141は、自動二輪車1の右側に配置され、排風ダクト141の排風排出口149は、自動二輪車1の右側であって、駆動モータ175よりも後ろに位置している。これにより、インタークーラ131から排出される高温の冷却風は駆動モータ175の右後方の、駆動モータ175から離れた位置で放出されるので、高温の冷却風が駆動モータ175にかかるのを防止することができ、したがって、高温の冷却風によって駆動モータ175の温度が上昇することを防ぐことができる。
また、図7を見るとわかる通り、駆動モータ175の右上方にインタークーラ131が位置しており、両者のこの位置関係に着目すると、駆動モータ175とインタークーラ131との間にはサージタンク154が配置されている。これにより、サージタンク154がインタークーラ131から駆動モータ175へ向かう熱を遮る。したがって、インタークーラ131から発せられる熱が駆動モータ175に伝わり難くすることができる。
また、図13に示すように、駆動モータ175は、エアクリーナ115およびサージタンク154の下方に配置されている。エアクリーナ115およびサージタンク154の周囲は、インタークーラ131の周囲と比較して低温であるので、駆動モータ175をエアクリーナ115およびサージタンク154の下方に配置することで、駆動モータ175の温度を低く保つことができる。
また、駆動モータ175は、左側に位置するメインフレーム213およびサイドフレーム215から離れた場所に位置している。これにより、駆動モータ175とメインフレーム213(またはサイドフレーム215)との間に走行風が流れる空間が形成されるので、駆動モータ175に走行風を当てて、駆動モータ175の熱を放散させることができ、駆動モータ175の周囲に熱がこもるのを防止することができる。
このように、本発明の鞍乗型車両の実施形態である過給機付き自動二輪車1によれば、インタークーラ131から発せられる熱、またはインタークーラ131から排出される冷却風の熱により駆動モータ175が高温となってその性能が低下することを防止することができる。
また、図13に示すように、自動二輪車1の上面視において、インタークーラ131と駆動モータ175は左右一対のメインフレーム213(または左右一対のサイドフレーム215)の間に配置されているので、インタークーラ131または駆動モータ175が自動二輪車1の側方に出っ張るのを防止することができ、自動二輪車1の車幅を小さくすることができる。
なお、上述した実施形態では、後方に行くに従って車幅方向中心に接近するように伸長する形状を有する排風ダクト141を例にあげたが、排風ダクトの形状はこれに限らない。後方に行くに従って車幅方向外側に向かうように伸長する形状を有する排風ダクトを採用してもよく、または、図5中の基準線Sに沿って後方へ伸長する形状を有する排風ダクトを採用してもよい。
また、上述した実施形態では、図6に示すように、自動二輪車1の右側にウォータポンプ30、冷却水流制御ユニット41、ウォータポンプインレットホース55等の冷却系の部品が配置され、自動二輪車1の左側にエアクリーナ115、過給機121のコンプレッサ部123、エアインテークパイプ181、エアアウトレットパイプ182等の吸気系の部品が配置されている場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、これらの部品の配置を左右逆にしてもよい。この場合、エアクリーナ115(ユニットケース161)の左部に排風導入部142およびインタークーラ131が取り付けられる。また、吸気ユニット111が自動二輪車1に組み付けられたときには、エアクリーナ115が右に位置し、インタークーラ131が左に位置し、排風ダクト141はエンジン12の左上方に配置される。また、電子制御スロットル装置171の駆動モータ175はエンジン12の右上方または右後方に配置される。
また、本発明は、上ラジエータおよび下ラジエータに分割されていない、単一化された一般的なラジエータを備えた鞍乗型車両にも適用することができる。また、本発明の鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、エンジンを搭載した三輪車やバギー車等の種々の鞍乗型車両に適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。