(過給機付き自動二輪車)
図1は本発明の過給機付きエンジン用吸気装置の実施形態である吸気ユニットを搭載した過給機付き自動二輪車を示している。図1では、説明の便宜上、過給機付き自動二輪車1の車体フレーム211およびエンジンユニット11以外の部分を二点鎖線で示している。また、図2ないし図5は車体フレーム211およびエンジンユニット11の正面図、左側面図、右側面図および平面図であり、図6はエンジンユニット11からラジエータ33を取り除いた状態を示す正面図である。また、以下の実施形態の説明において、前、後、左、右、上および下の方向は、過給機付き自動二輪車のシートに座した運転者を基準とする。
図1において、過給機付き自動二輪車1の車体フレーム211は、例えば複数の鋼鉄製パイプを接合することにより形成されている。具体的には、車体フレーム211は、自動二輪車1の前部上側に配置されたヘッドパイプ212と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がヘッドパイプ212の上部に接続され、後端側が下方に傾斜しつつ後方へ伸長する一対のメインフレーム213と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がヘッドパイプ212の下部に接続され、後端側がメインフレーム213よりも大きく下方に傾斜しつつ後方へ伸長する一対のダウンチューブ214と、自動二輪車1の左部および右部にそれぞれ配置され、前端部がダウンチューブ214の中間部にそれぞれ接続され、後端側が後方へ伸長する一対のサイドフレーム215と、メインフレーム213の後端側にそれぞれ接合された一対のピボットフレーム216とを備えている。また、メインフレーム213、ダウンチューブ214およびサイドフレーム215間には補強フレーム217が設けられている。
また、図5に示すように、一対のメインフレーム213はヘッドパイプ212から左、右にそれぞれ拡開しつつ後方へ伸長している。すなわち、自動二輪車1の左右方向(車幅方向)の中心を自動二輪車1の前後方向に貫く直線を基準線Sとすると、右側のメインフレーム213の前端部は、自動二輪車1の左右方向中心に配置されたヘッドパイプ212から、右後方に斜めに伸長している。その後、この右側のメインフレーム213は、エンジン12のシリンダヘッド15の後部右方付近で緩やかに湾曲した後、基準線Sと平行に後方へ伸長している。その後、この右側のメインフレーム213は、シリンダヘッド15の後面を超えた付近で僅かに湾曲し、基準線Sに徐々に接近するように若干左方に傾斜しつつ後方へ伸長している。一方、左側のメインフレーム213は、基準線Sを基準として、右側のメインフレーム213と略左右対称の形状を有している。また、一対のダウンチューブ214も、一対のメインフレーム213とほぼ同様に、ヘッドパイプ212から左、右にそれぞれ拡開しつつ後方へ伸長している。また、右側のサイドフレーム215は、その前端部がエンジン12の右前方の位置で右側のダウンチューブ214に接続され、後端側はエンジン12の右方を基準線Sと平行に後方へ伸長している。また、この右側のサイドフレーム215は、シリンダヘッド15の後面を超えた付近で僅かに湾曲し、基準線Sに徐々に接近するように若干左方に傾斜しつつ後方へ伸長している。一方、左側のサイドフレーム215は、基準線Sを基準として、右側のサイドフレーム215と略左右対称の形状を有している。
また、図1に示すように、ヘッドパイプ212には、ステアリングシャフト(図示せず)が挿入され、ステアリングシャフトの上端部および下端部にはそれぞれステアリングブラケット225が設けられている。また、上側のステアリングブラケット225にはハンドル226が設けられている。また、上側および下側のステアリングブラケット225には左右一対のフロントフォーク227の上部がそれぞれ支持され、これらフロントフォーク227の下端側には前輪228が支持されている。
また、左右一対のピボットフレーム216間にはピボット軸231を介してスイングアーム232の前端側が支持され、スイングアーム232の後端側には後輪233が支持されている。また、後輪233の車軸にはドリブンスプロケット234が設けられ、ドリブンスプロケット234には、後述するエンジン12の動力を伝達するチェーン235が巻回されている。
また、自動二輪車1の前輪228と後輪233との間にはエンジンユニット11が設けられている。エンジンユニット11は、主に、左側のメインフレーム213および左側のダウンチューブ214と、右側のメインフレーム213および右側のダウンチューブ214との間に配置され、これらのフレームに支持されている。また、エンジンユニット11の上方には燃料タンク241が設けられ、燃料タンク241の後方にはシート242が設けられている。また、自動二輪車1の前部上側にはアッパーカウル244が設けられている。さらに、自動二輪車1には、エンジンユニット11の主に前部下側を覆うアンダーカウル245が設けられている。
(エンジンユニット)
図3に示すように、エンジンユニット11は、エンジン12と、エンジン12の動力を後輪233へ伝達する一次減速機構、クラッチ、トランスミッション等の駆動系の一部と、エンジン12の可動部を潤滑する潤滑系と、空気と燃料の混合気をエンジン12へ供給する吸気系(過給機121を含む)と、混合気の燃焼により発生する排気ガスをエンジン12から排出する排気系の一部と、エンジン12等を冷却する冷却系と、クランクシャフトの回転を利用して発電するACジェネレータ等を備えている。
エンジン12は、本実施形態においては水冷式並列2気筒の4サイクルガソリンエンジンである。エンジン12には、クランクシャフトを収容するクランクケース13が設けられ、クランクケース13の上にはシリンダ14が設けられ、シリンダ14の上にはシリンダヘッド15が設けられ、シリンダヘッド15の上にはシリンダヘッドカバー16が設けられている。また、クランクケース13の下方にはオイルパン17が設けられている。また、エンジン12のシリンダ軸線は上側が下側よりも前に位置するように傾斜している。また、エンジン12には、ピストンの運動により生じる振動を軽減するバランスシャフトが設けられている。バランスシャフトはクランクシャフトの前方に配置されており、エンジン12のクランクケース13の前部に形成されたバランサ室18内に設けられている。また、クランクケース13の左部にはマグネト室19が設けられ、マグネト室19にはACジェネレータが収容されている。
また、図4に示すように、一次減速機構、クラッチ、トランスミッション等の駆動系の一部は、エンジンユニット11の後部に配置されている。すなわち、クランクケース13およびシリンダ14の後ろ側にはトランスミッションケース21が一体形成され、トランスミッションケース21内には一次減速機構およびトランスミッションが収容されている。また、トランスミッションケース21の右部にはクラッチカバー22が取り付けられ、トランスミッションの右方に配置されたクラッチはクラッチカバー22により覆われている。また、図3に示すように、トランスミッションケース21の左部にはスプロケットカバー23が設けられ、トランスミッションの左方に配置されたドライブスプロケットはスプロケットカバー23により覆われている。また、ドライブスプロケットには、図1に示すように、エンジン12の動力を後輪233へ伝達するチェーン235が巻回されている。
また、図6に示すように、潤滑系は、エンジン12のオイルパン17内に貯留されたエンジンオイルを汲み上げてエンジン12の各所へ供給するオイルポンプ、エンジンオイルを濾過するオイルフィルタ25、およびエンジンオイルを冷却する水冷式のオイルクーラ26を備えている。オイルフィルタ25およびオイルクーラ26はエンジン12の前部下側に取り付けられている。
また、図4に示すように、冷却系は、クランクケース13の右側に配置され、冷却水を吐出するウォータポンプ30と、シリンダ14およびシリンダヘッド15に設けられ、シリンダ14およびシリンダヘッド15を冷却水により冷却するウォータジャケット(図示せず)と、エンジン12の前方に配置され、走行風を受け、またはラジエータファン40を駆動し、冷却水の熱を大気に放出することによって冷却水を冷却するラジエータ33とを備えている。また、図2に示すように、ラジエータ33は、上ラジエータ34および下ラジエータ35を備えており、上ラジエータ34と下ラジエータ35との間は一対のコネクティングホース36を介して接続されている。
さらに、冷却系は、冷却水の温度に応じてラジエータ33を流通させる冷却水量を調整し、冷却水の温度を適温に保つ冷却水流制御ユニット41を備えている。図7は、エアクリーナ115、インタークーラ131、サージタンク154等を取り除いたエンジンユニット11の前部を上側から見た図である。図7では、冷却水流制御ユニット41、シリンダアウトレットホース52、ラジエータインレットホース53、ラジエータアウトレットホース54およびウォータポンプインレットホース55等を目立たせるために、エンジン12、ラジエータ33等を二点鎖線で示している。
図7に示すように、冷却水流制御ユニット41はシリンダヘッドカバー16の上方の右前側に配置されている。また、冷却水流制御ユニット41の左部内部には、ウォータジャケットから流出した冷却水をラジエータ33へ供給する通路P1が形成されている。そして、通路P1の流入側とウォータジャケットの流出側との間にはシリンダアウトレットホース52が接続され、通路P1の流出側とラジエータ33のラジエータ流入口37との間にはラジエータインレットホース53が接続されている。
また、冷却水流制御ユニット41の右部内部には、ラジエータ33から流出した冷却水をウォータポンプ30へ戻す通路P2が形成されている。そして、ラジエータ33のラジエータ流出口38と通路P2の流入側との間にはラジエータアウトレットホース54が接続され、通路P2の流出側とウォータポンプ30の冷却水吸込口31との間にはウォータポンプインレットホース55が接続されている。
また、冷却水流制御ユニット41内部には、通路P1と通路P2とを接続する冷却水バイパス通路Pbが形成されている。
さらに、冷却水流制御ユニット41の内部にはサーモスタット43が設けられている。サーモスタット43は、冷却水の温度に応じ、ラジエータ33を流通させる冷却水量を調整する。すなわち、冷却水の温度が所定の基準温度T1以下のときには、サーモスタット43は、冷却水がウォータポンプ30、ウォータジャケット、シリンダアウトレットホース52、通路P1、冷却水バイパス通路Pb、通路P2およびウォータポンプインレットホース55により形成される第1の循環経路を流通するように冷却水の流れを制御し、冷却水がラジエータ33を流通しないようにする。一方、冷却水の温度が所定の基準温度T2(T2>T1)よりも高いときには、サーモスタット43は、冷却水がウォータポンプ30、ウォータジャケット、シリンダアウトレットホース52、通路P1、ラジエータインレットホース53、ラジエータ33、ラジエータアウトレットホース54、通路P2およびウォータポンプインレットホース55により形成される第2の循環経路を流通するように冷却水の流れを制御し、冷却水がラジエータ33を流通するようにする。他方、冷却水の温度が基準温度T1よりも高く、基準温度T2以下のときには、サーモスタット43は、冷却水が第1の循環経路および第2の循環経路の双方を流通するように冷却水の流れを制御し、冷却水の一部がラジエータ33を流通するようにする。
また、図4に示すように、ラジエータ33の右上方には、冷却水注水口57を有する冷却水注水部58が設けられ、冷却水注水部58は、注水ホース56を介して、上ラジエータ34の後面の右下側に形成された冷却水供給口39に接続されている。また、下ラジエータ35の後方には冷却水を貯えるリザーバタンク59が設けられており、リザーバタンク59はオーバーフロー管路(図示せず)を介して例えば上ラジエータ34に接続されている。
(吸気系、排気系の構造)
また、図3または図6に示すように、吸気系は、エアクリーナ115、過給機121、インタークーラ131、排風ダクト141、サージタンク154、電子制御スロットル装置171、およびインジェクタ174を備えている。
エアクリーナ115は、外部から取り込まれた燃料燃焼用の空気を濾過して浄化する装置である。図6に示すように、エアクリーナ115は、エンジン12の上方左側、具体的にはシリンダヘッドカバー16の上方左側に配置されている。また、エアクリーナ115の前部は、過給機121の上方に位置している。また、図3に示すように、エアクリーナ115は、外気をエアクリーナ115内に取り込むエア吸入口118を備えている。また、エアクリーナ115のエア吸入口118には外気をエア吸入口118に導くエアダクトが設けられているが、エアダクトについては図示を省略している。また、図6に示すように、エアクリーナ115は、濾過後の空気をエアクリーナ115内から流出させるエア流出口119を備えている。
過給機121は、図3に示すように、エンジン12の前方、具体的にはシリンダ14の前方に配置されている。また、過給機121は、エンジン12のバランサ室18の上方に配置されている。過給機121は、図6に示すように、タービンを有するタービン部122、およびコンプレッサ部123を備えている。過給機121は、エンジン12からの排気ガスによりタービン部122のタービンを駆動し、このタービンの動力によりコンプレッサ部123を駆動し、エアクリーナ115を介して供給された空気をコンプレッサ部123により圧縮する。また、過給機121は、タービン部122が右側となり、コンプレッサ部123が左側となるように配置されている。また、エアクリーナ115のエア流出口119と過給機121のコンプレッサ部123との間はエアインテークパイプ181により接続されている。
インタークーラ131は、過給機121のコンプレッサ部123の圧縮により高温となった空気を冷却する熱交換器である。図6に示すように、インタークーラ131はエンジン12の上方右側、具体的にはシリンダヘッドカバー16の上方右側に配置されている。また、インタークーラ131の前部は、過給機121の上方に位置している。また、インタークーラ131は、左右方向において、過給機121のコンプレッサ部123の反対側の位置に配置されている。また、インタークーラ131はエアクリーナ115の右側に隣接して配置されている。インタークーラ131は空冷式であり、コンプレッサ部123により圧縮された空気を流通させる通路132Aと、外気を受けることでコンプレッサ部123により圧縮された空気の熱を放熱するフィン132Bを有する放熱部132を備えている。また、放熱部132は、放熱のための外気を受ける受け面132Cを有している。また、インタークーラ131の前部には、過給機121のコンプレッサ部123から供給された空気を放熱部132の通路132Aへ流入させるエア流入口133が形成されている。また、図4または図5に示すように、インタークーラ131の後部には、放熱部132の通路132Aを流通して冷却された空気をサージタンク154へ供給するエア流出口134が形成されている。また、過給機121のコンプレッサ部123とインタークーラ131のエア流入口133との間はエアアウトレットパイプ182により接続されている。
また、インタークーラ131の前方には、外気を冷却風としてインタークーラ131の放熱部132に導く導風ダクトが設けられているが、導風ダクトについては図示を省略している。また、インタークーラ131には、導風ダクトを接続するための導風ダクト取付部138(図8参照)が設けられている。
また、図5に示すように、インタークーラ131の後方には、インタークーラ131から排出された冷却風を外部に排出する排風ダクト141が設けられている。排風ダクト141は、導風ダクトに導かれてインタークーラ131の放熱部132に当たり、放熱部132のフィン132B間を通過した後の冷却風を外部に排出する。放熱部132を通過した冷却風は、インタークーラ131の通路132Aを流通する空気を冷却することにより高温となる。排風ダクト141は、このように高温となった冷却風を外部へ排出する位置および方向を定める。また、排風ダクト141は、その前部がエンジン12の右上方に位置し、後部がエンジン12の後方に位置するように配置されている。また、排風ダクト141は、自動二輪車1の上面視において、一対のメインフレーム213間に配置されている。また、排風ダクト14は、図4に示すように、自動二輪車1の側面視において、右側のサイドフレーム215に沿ってエンジン12の後方へ伸長している。また、排風ダクト141は車幅方向中心に向かって緩やかに湾曲し、後方に行くに従って車幅方向中心に接近するように伸長している。なお、排風ダクト141についてはさらに後述する。
サージタンク154は、過給機121により圧縮され、インタークーラ131により冷却された空気の流れを整流する装置である。図5に示すように、サージタンク154はエンジン12の上方後ろ側に配置されている。また、サージタンク154はエアクリーナ115の後方に隣接して配置されている。また、サージタンク154の上部右側には、インタークーラ131から供給された空気をサージタンク154内に流入させるエア流入口156が形成されている。また、サージタンク154の下部には、サージタンク154に一時的に貯えられた空気を、電子制御スロットル装置171のスロットルボディ172に形成された吸気通路へ流出させるエア流出口157(図13参照)が形成されている。また、インタークーラ131のエア流出口134とサージタンク154のエア流入口156との間はコネクティングパイプ183により接続されている。また、インタークーラ131のエア流出口134とサージタンク154のエア流入口156とは互いに接近しており、それゆえ、両者間を接続するコネクティングパイプ183の長さは短い。
図3に示す電子制御スロットル装置171は、インタークーラ131およびサージタンク154を流通してエンジン12の吸気ポートへ供給される空気の量を調整する装置である。電子制御スロットル装置171は、スロットルボディ172と、スロットルボディ172の内部に設けられ、スロットルボディ172内に形成された吸気通路を開閉するスロットルバルブと、スロットルバルブを駆動する電動の駆動モータ173を備えている。電子制御スロットル装置171のスロットルボディ172は、エンジン12の後方上側においてサージタンク154とエンジン12の吸気ポートとの間に配置されている。
インジェクタ174は、エンジン12の吸気ポートへ燃料を噴射する装置であり、インジェクタ174には、燃料タンク241からインジェクタ174へ燃料を供給するデリバリパイプ175が接続されている。
このように接続された吸気系において、外部から取り込まれた空気は、通常、エアクリーナ115、エアインテークパイプ181、過給機121のコンプレッサ部123、エアアウトレットパイプ182、インタークーラ131、コネクティングパイプ183、サージタンク154、および電子制御スロットル装置171のスロットルボディ172を順次通り、エンジン12の吸気ポートに供給される。
また、図3に示すように、自動二輪車1の吸気系には、過給機121のコンプレッサ部123を介さずにエアインテークパイプ181とエアアウトレットパイプ182との間を接続するエアバイパス配管184と、エアバイパス配管184を連通、遮断を切り換えるエアバイパスバルブ185とが設けられている。エアバイパスバルブ185は、例えば減速時にスロットルバルブが全閉されたときに開弁し、エアアウトレットパイプ182とエアインテークパイプ181との間を、エアバイパス配管184を介して連通させ、過給機121のコンプレッサ部123の下流側の圧縮された空気を上流側へ逃がし、コンプレッサ部123の下流側の圧力を下げる。
また、図6に示すように、排気系は、エンジン12の排気ポートと過給機121のタービン部122との間を接続するエキゾーストパイプ191、過給機121のタービン部122とマフラ側とを接続するマフラージョイントパイプ192、およびマフラ(図示せず)等を備えている。これらのうち、エキゾーストパイプ191はエンジンユニット11の一部を構成する。エキゾーストパイプ191は、エンジン12の前方であって排気ポートと過給機121のタービン部122との間に配置されている。本実施形態においては、エキゾーストパイプ191は、過給機121のタービン部122のハウジングと一体形成されている。具体的には、並列2気筒のエンジン12の2つの排気ポートには2本のエキゾーストパイプ191の一端側がそれぞれ接続されているが、これらエキゾーストパイプ191の他端側は互いに結合して1本となり、さらに、この結合して1本となったエキゾーストパイプ191の他端部は過給機121のタービン部122のハウジングと一体化している。なお、エキゾーストパイプ191とタービン部122のハウジングとをそれぞれ別体として形成し、両者を接続する構成としてもよい。一方、マフラージョイントパイプ192は、その一端側が過給機121のタービン部122に接続され、他端側はエンジン12の下方右側を通過し、マフラに向かって後方へ伸長している。また、マフラはエンジン12の後方下側に配置されている。各排気ポートから排出された排気ガスはエキゾーストパイプ191を介して過給機121のタービン部122のハウジング内へ供給される。この排気ガスによりタービン部122のタービンが回転する。続いて、タービン部122から排出された排気ガスはマフラージョイントパイプ192を介してマフラへ供給され、マフラから外部へ排出される。
また、過給機121のタービン部122にはウェイストゲートバルブ193が設けられている。すなわち、タービン部122の内部には、エキゾーストパイプ191を介して供給される排気ガスの一部をタービンへ供給せずにマフラージョイントパイプ192側へ流すゲートが形成されており、ウェイストゲートバルブ193は、このゲートの開閉を行うことによりタービンへの排気ガスの流入量を調整する。
(吸気ユニットおよび排風ダクト)
上記吸気系の部品のうち、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141の排風導入部142、およびサージタンク154は単一のユニットとして一体化されている。以下、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141の排風導入部142およびサージタンク154を一体化したものを吸気ユニット111という。吸気ユニット111が、本発明の過給機付きエンジン用吸気装置の実施形態である。
図8ないし図12は吸気ユニット111および電子制御スロットル装置171の正面図、左側面図、右側面図、平面図および背面図である。図13は、図8中の矢示A−A方向から見た吸気ユニット111のユニットケース161の断面図である。
図9に示すように、吸気ユニット111において、エアクリーナ115の後部にサージタンク154が結合されている。具体的には、吸気ユニット111は、エアクリーナ115のケースとサージタンク154の外殻とが一体形成されたユニットケース161を備えている。ユニットケース161の前部にはクリーナケース部162が形成され、この部分がエアクリーナ115のケースに相当する部分である。また、ユニットケース161の後部にはタンク部163が形成され、この部分がサージタンク154の外殻を形成する部分である。また、ユニットケース161において、クリーナケース部162とタンク部163との間には両者間を結合する連結部164が形成されている。
図13に示すように、ユニットケース161において、クリーナケース部162は中空の箱状に形成され、その内部にはクリーナ室116が形成されている。クリーナ室116内には空気を濾過するエアフィルタ117が設けられている。また、クリーナケース部162の左側の壁部には、エア流入口118が形成されている。なお、エア吸入口118を二点鎖線により模式的に示している。エア吸入口118の位置は適宜設定することができる。また、クリーナケース部162の前下部にはエア流出口119が形成されている。
また、ユニットケース161において、タンク部163は中空の箱状に形成され、その内部には整流室155が形成されている。また、タンク部163の右部にはエア流入口156が形成され(図11または図14参照)、タンク部163の下部にはエア流出口157が形成されている。また、ユニットケース161において、クリーナケース部162のクリーナ室116とタンク部163の整流室155とは互いに遮断された別々の室である。
また、ユニットケース161は、当該ユニットケース161の上部を形成するケース蓋部161Aと、当該ユニットケース161の下部を形成するケース本体部161Bとを備えている。図14(1)はケース蓋部161Aを示し、図14(2)はケース本体部161Bを示している。図14に示すように、ケース蓋部161Aとケース本体部161Bとは互いに別部材である。ケース蓋部161Aおよびケース本体部161Bはそれぞれ樹脂成形により形成されている。
図14(1)に示すように、ケース蓋部161Aには、クリーナケース部162の上部、タンク部163の上部、および連結部164の上部が形成されている。また、ケース蓋部161Aの右面には、排風ダクト141の排風導入部142のアッパー部142Aを固定するダクト取付面165Aが形成されている。
ケース本体部161Bには、クリーナケース部162の下部、タンク部163の下部、および連結部164の下部が形成されている。また、ケース本体部161Bの右面には、排風ダクト141の排風導入部142のロワー部142Bを固定するダクト取付面165Bが形成されている。
また、吸気ユニット111において、エアクリーナ115の右部には、排風ダクト141の排風導入部142を介してインタークーラ131が取り付けられている。
ここで、排風ダクト141の構造は次の通りである。図15(1)は排風ダクト141の右側面図であり、図15(2)は排風ダクト141の平面図であり、図15(3)は図15(1)中の矢示B−B方向から見た排風ダクト141の断面図である。図15(1)に示すように、排風ダクト14は、排風導入部142、膨張部147および排風案内部148を備えている。
排風導入部142は、排風ダクト141の前部に形成され、インタークーラ131から排出された冷却風を導入する。排風導入部142の前部には右前方に開口した排風導入口143が形成されている。また、排風導入口143の周縁部は、インタークーラ131を支持するインタークーラ支持部144が形成されている。例えば、インタークーラ支持部144は、インタークーラ131の形状に合うように四角形状に形成されている。また、排風導入部142の後部には、後方に開口した排風連通孔145が形成されている。排風導入部142内には、排風導入口143から排風連通孔145へ冷却風を流通させる通路が形成されている。
膨張部147は、排風ダクト141の前後方向中間部、すなわち、排風導入部141と排風案内部148との間に形成されている。膨張部147内には、排風導入部142から排風案内部148へ向かって冷却風を流通させる通路が形成され、当該通路の流入側は排風連通孔145に接続され、当該通路の流出側は排風案内部148内に形成された通路に接続されている。また、膨張部147内に形成された通路の流入端側と流出端側との中間部分の流路面積は、当該通路の流入端側および流出端側のそれぞれの流路面積よりも大きい。すなわち、膨張部147内の通路はその前後の通路よりも広く、拡大されている。
排風案内部148は、排風ダクト141の後部に形成され、排風導入部142により導入され、膨張部147を流通した冷却風をエンジン12から後方へ離れ、自動二輪車1の車幅方向中心に接近した位置へ向けて案内する。排風案内部148内には膨張部147から流出した冷却風を流通させる通路が形成され、排風案内部148の後端部には冷却風を外部に排出する排風排出口149が形成されている。
導風ダクトにより導かれた冷却風は、排風導入部142のインタークーラ支持部144に取り付けられたインタークーラ131の放熱部132の受け面132Cに当たり、放熱部132のフィン132B間を通過して排風導入口143へ流入する。排風導入口143へ流入した冷却風は、図15(3)中の矢示に示すように、排風導入口143から排風導入部142内の通路に流入し、排風連通孔145を通って膨張部147内に流入し、排風排風案内部148内の通路を流通して排風排出口149から外部へ排出される。
また、排風ダクト141において、膨張部147と排風案内部148とを合わせた部分と、排風導入部142とは互いに別部材により形成されている。以下、膨張部147と排風案内部148とを合わせた部分をダクト部150という。また、排風導入部142は、当該排風導入部142の上部を形成するアッパー部142Aと当該排風導入部142の下部を形成するロワー部142Bとを有し、アッパー部142Aとロワー部142Bとは互いに別部材により形成されている。図16(1)は排風導入部142のアッパー部142Aを示し、図16(2)は排風導入部142のロワー部142Bを示し、図16(3)はダクト部150を示している。
図17ないし図19は、吸気ユニット111の組立方法を示している。吸気ユニット111は次の手順で組み立てられる。まず、図17(1)に示すように、ケースユニット161のケース蓋部161Aのダクト取付面165A(図14(1)参照)に、排風導入部142のアッパー部142Aを溶着、ボルト止めまたは係止等の手段により固定する。また、図17(2)に示すように、ケースユニット161のケース本体部161Bのダクト取付面165B(図14(2)参照)に、排風導入部142のロワー部142Bを溶着、ボルト止めまたは係止等の手段により固定する。次に、図18に示すように、アッパー部142Aが固定されたケース蓋部161Aを、ロワー部142Bが固定されたケース本体部161Bに取り付け、ボルトまたは接着剤等を用いて両者を固定する。このようにケース蓋部161Aをケース本体部161Bに取り付けて固定することで、同時に、排風導入部142のアッパー部162Aとロワー部162Bとが互いに結合され、固定される。次に、排風導入部142のインタークーラ支持部144に、図19に示すようにインタークーラ131を取り付ける。次に、ボルト等を用いてインタークーラ131をユニットケース161および排風導入部142に固定する。次に、インタークーラ131のエア流出口134とサージタンク154のエア流入口156との間にコネクティングパイプ183を取り付ける。次に、排風ダクト141のダクト部150を排風導入部142に取り付ける。
インタークーラ131をユニットケース161および排風導入部142に固定する構造は、例えば次の通りである。すなわち、図11に示すように、インタークーラ131には固定部135および136が形成されており、図15(2)に示すように、排風導入部142には取付孔151が形成されており、図14(1)に示すように、ユニットケース161のアッパー部161Aには取付部166が形成されている。インタークーラ131は、ボルト等を用いて固定部135を取付部166に固定し、ボルト等を用いて固定部136を取付孔151に固定することにより、インタークーラ支持部144に取り付けられる。このようにインタークーラ131が取り付けられることにより、排風導入部142は、エアクリーナ115とインタークーラ131との間に配置される。なお、インタークーラ131およびインタークーラ支持部144に係止機構をそれぞれ形成し、インタークーラ131をインタークーラ支持部144に当該係止機構により係止した上で、固定部135および136を取付部166および取付孔151に固定する構成としてもよい。これにより、インタークーラ131を吸気ユニット111に強固に固定することができる。
図3または図4に示すように、吸気ユニット111は、例えばメインフレーム213に取り付けられ、エンジン12の上方に配置される。ここで、吸気ユニット111のメインフレーム213への取付は、排風導入部142にダクト部150が取り付けられていない状態、すなわち図19に示す状態で行うことが好ましい。すなわち、ダクト部150が取り付けられていない吸気ユニット111をメインフレーム213に取り付けた後、当該吸気ユニット111の排風導入部142にダクト部150を取り付ける。そして、ダクト部150を例えば右側のサイドフレーム215に支持部材(図示せず)を介して支持することが好ましい。
吸気ユニット111は、図5に示すように、自動二輪車1の上面視においてメインフレーム213間に配置される。吸気ユニット111がメインフレーム213に取り付けられたとき、エアクリーナ115とインタークーラ131とは、エンジン12の上方において左右方向に並んで配置され、具体的には、エアクリーナ115が左に配置され、インタークーラ131が右に配置される。また、サージタンク154はエアクリーナ115の後方に配置される。また、吸気ユニット111がメインフレーム213に取り付けられた状態において、エアクリーナ115、インタークーラ131およびサージタンク154は、エンジン12の上方の領域において三角形に配置される(例えばこれら3つの部品の重心をそれぞれ直線で結ぶと、エンジン12の上方の領域に三角形が形成される)。
また、吸気ユニット111がメインフレーム213に取り付けられ、当該吸気ユニット111の排風導入部142にダクト部150が取り付けられることにより、排風ダクト141はメインフレーム213間に配置される。また、排風ダクト141の膨張部147はエンジン12の右上方に配置され、排風案内部148は、エンジン12の右上方から後方へ、右側のサイドフレーム215に沿って、車幅方向中心に向かって伸長する。その結果、排風排出口149は、エンジン12から後方へ離れた位置であって、車幅方向中心に近い位置に配置される。
以上、説明した通り、本発明の過給機付きエンジン用吸気装置の実施形態である吸気ユニット111によれば、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141の排風導入部142、およびサージタンク154が単一のユニットとして一体化されているので、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141およびサージタンク154を自動二輪車1の車体に容易に組み付けることができる。すなわち、これら複数の吸気系部品を車体に組み付ける工数を減らすことができる。また、複数の吸気系部品を別々にそれぞれ異なる位置にそれぞれ異なる方向から組み付ける作業が不要となるので、吸気系部品の組付性を高めることができる。
また、吸気ユニット111において、クリーナケース部162およびタンク部163を有するユニットケース161を形成したことにより、エアクリーナ115およびサージタンク154の製造を簡単化することができ、また、これらの部品の製造コストを下げることができる。
また、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141の排風導入部142、およびサージタンク154を一体化することで、エアクリーナ115、インタークーラ131、排風ダクト141およびサージタンク154をコンパクトに集約して配置することができる。また、エアクリーナ115、インタークーラ131およびサージタンク154を集約配置することで、エアインテークパイプ181、エアアウトレットパイプ182およびコネクティングパイプ183を短くすることができる。したがって、自動二輪車1の車幅および車長を小さくし、自動二輪車1を小型化することができる。また、エアインテークパイプ181、エアアウトレットパイプ182およびコネクティングパイプ183を短くすることで、これらのパイプ内を流れる空気が受ける抵抗が小さくすることができ、スロットル操作に対するエンジンのレスポンスを高め、またはターボラグを小さくすることができる。また、エアクリーナ115、インタークーラ131およびサージタンク154を一体化し、自動二輪車1の上面視において、これら3つの部品がエンジン12の上方の領域において三角形に配置されるようにすることで、これら3つの部品の集約の度合いを高めることができ、コネクティングパイプ183の一層の短縮化、および自動二輪車1の一層の小型化を図ることができる。
また、吸気ユニット111によれば、エアクリーナ115の後方にサージタンク154が一体形成され、エアクリーナ115の右部にインタークーラ131が取り付けられているので、吸気ユニット111を、メインフレーム213に取り付けてエンジン12の上方に配置させたとき、過給機121とエアクリーナ115とを近づけ、かつ過給機121とインタークーラ131とを近づけることができる。これにより、エアインテークパイプ181およびエアアウトレットパイプ182をそれぞれ一層短くすることができ、かつこれらのパイプをエンジン12の前方に集約することができる。また、サージタンク154をエンジン12の吸気ポートに近づけることができ、サージタンク154と吸気ポートとの間の吸気通路を短くすることができる。
また、吸気ユニット111を、ユニットケース161のケース蓋部161Aに排風導入部142のアッパー部162Aを固定し、ユニットケース161のケース本体部161Bに排風導入部142のロワー部162Bに固定し、その後、アッパー部162Aが固定されたケース蓋部161Aを、ロワー部162Bが固定されたケース本体部161Bに取り付けるといった手順で組み立てることにより、吸気ユニット111を簡単に組み立てることができる。
一方、排風ダクト141の排風案内部148は、冷却風を案内するための長い管路を有するため、吸気ユニット111を自動二輪車1の車体に組み付ける前に、ダクト部150を排風導入部142に取り付けてしまうと、吸気ユニット111が前後方向に長くなり、吸気ユニット111の車体への組付作業が却ってやり難くなるおそれがある。それゆえ、吸気ユニット111を車体に組み付けた後に排風導入部142にダクト部150を取り付けることで、吸気ユニット111の車体への組付作業を簡単化することができる。
なお、上述した実施形態では、後方に行くに従って車幅方向中心に接近するように伸長する形状を有する排風ダクト141を例にあげたが、排風ダクトの形状はこれに限らない。後方に行くに従って車幅方向外側に向かうように伸長する形状を有する排風ダクトを採用してもよく、または、図5中の基準線Sに沿って後方へ伸長する形状を有する排風ダクトを採用してもよい。
また、上述した実施形態では、図6に示すように、自動二輪車1の右側にウォータポンプ30、冷却水流制御ユニット41、ウォータポンプインレットホース55等の冷却系の部品が配置され、自動二輪車1の左側にエアクリーナ115、過給機121のコンプレッサ部123、エアインテークパイプ181、エアアウトレットパイプ182等の吸気系の部品が配置されている場合を例にあげたが、本発明はこれに限らず、これらの部品の配置を左右逆にしてもよい。この場合、エアクリーナ115(ユニットケース161)の左部に排風導入部142およびインタークーラ131が取り付けられる。また、吸気ユニット111が自動二輪車1に組み付けられたときには、エアクリーナ115が右に位置し、インタークーラ131が左に位置し、排風ダクト141はエンジン12の左上方に配置される。
また、本発明は、上ラジエータおよび下ラジエータに分割されていない、単一化された一般的なラジエータを備えた鞍乗型車両にも適用することができる。また、本発明の鞍乗型車両は自動二輪車に限定されず、エンジンを搭載した三輪車やバギー車等の種々の鞍乗型車両に適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う過給機付きエンジン用吸気装置および鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。