(第1の実施形態)
(鞍乗型車両の基本構成)
図1ないし図3は、本発明の第1の実施形態による鞍乗型車両を示している。具体的には、図1は本発明の第1の実施形態による鞍乗型車両を右から見た図であり、図2は、当該鞍乗型車両を左から見た図であり、図3は当該鞍乗型車両を上から見た図である。なお、以下の実施形態の説明において、前、後、左、右、上、下の各方向は、鞍乗型車両の運転シートに着座した運転者を基準にする。
図1に示すように、本発明の第1の実施形態による鞍乗型車両1は例えば自動二輪車である。鞍乗型車両1の車体フレーム2は、ヘッドパイプ3、一対のメインフレーム4、一対のダウンチューブ5、および一対のピボットフレーム6を備えている。ヘッドパイプ3は、鞍乗型車両1の前部かつ上部に配置されている。一対のメインフレーム4は、図3に示すように、ヘッドパイプ3から左右に拡開しつつ、後方へ伸長している。一対のダウンチューブ5は、図1および図2に示すように、ヘッドパイプ3から後方に傾斜しつつ下方へ伸長した後、湾曲し、その後、ほぼ水平方向に後方へ伸長している。ここで、図3、図7および図8中のSは、鞍乗型車両1の左右方向のちょうど中間を前後方向に貫く基準線を示している。一対のダウンチューブ5は、図7に示すように、この基準線Sの左側および右側にそれぞれ位置し、互いに所定距離離間し、かつ互いに平行に配置されている。また、各ピボットフレーム6は、図1および図2に示すように、メインフレーム4の後端部とダウンチューブ5の後端部との間を上下方向に伸長している。また、図示しないが、車体フレーム2は、各メインフレーム4の後端側から後方へ伸長するシートレール、並びにメインフレーム4の間、ダウンチューブ5の間、およびピボットフレーム6の間を連結するブリッジフレーム等を備えている。
また、図1に示すように、車体フレーム2のヘッドパイプ3には、ステアリングシャフト(図示せず)が挿入され、ステアリングシャフトにはブラケットを介してフロントフォーク11の上端側が支持され、フロントフォーク11の下端側には前輪12が支持されている。また、ステアリングシャフトには、ブラケットを介してハンドル13が設けられている。一方、各ピボットフレーム6には、スイングアーム15の前端側が支持され、スイングアーム15の後端側には後輪16が支持されている。また、前輪12と後輪16との間に位置し、一対のメインフレーム4、一対のダウンチューブ5、および一対のピボットフレーム6により囲まれた空間内にはエンジン31が設けられている。エンジン31は、エンジンマウントを介して、各メインフレーム4および各ダウンチューブ5等に固定されている。さらに、エンジン31の後方かつ上方には、運転者が着座する運転シート18が設けられ、運転シート18の下方には燃料タンク17が設けられている。また、運転シート18の後方には、排気音を低減するサイレンサ20が設けられている。また、エンジン31の下部後方には、図3に示すように、運転者が足をかける左右一対のステップ19が設けられている。
図4は、鞍乗型車両1に設けられたエンジン31、過給機42、インタークーラ47、サージタンク59、排気マニホールド61および送出配管65等を右から見た図であり、図5は、これらを図4中の矢示V−V方向から見た図である。また、図6は、鞍乗型車両1に設けられたエアクリーナ41、過給機42、サージタンク59、燃料タンク17およびサイレンサ20を上から見た図である。
図4に示すように、エンジン31は、前、後に配置された一対のシリンダを有する横置きV型2気筒のエンジンである。すなわち、エンジン31は、クランクケース32と、クランクケース32の上部前側に配置された前側シリンダ33と、クランクケース32の上部後ろ側に配置された後ろ側シリンダ35とを備えている。前側シリンダ33は、前方に傾斜しており、前側シリンダ33の上部にはシリンダヘッド34が設けられている。また、後ろ側シリンダ35は、後方に傾斜しており、後ろ側シリンダ35の上部にはシリンダヘッド36が設けられている。
また、クランクケース32の底部には、エンジンオイルを貯留するオイル貯留部としてのオイルパン37が設けられている。鞍乗型車両1には、クランクケース32の底側に設けられたオイルパン37にエンジンオイルを貯留し、そのエンジンオイルをポンプで汲み上げて、エンジン31の各部に圧送するウェットサンプ方式が採用されている。
エンジン31の理想状態時(例えば整備によりエンジンオイルの貯留量を整えた直後)には、所定量のエンジンオイルがオイルパン37に貯留されている。図4中のLは、理想状態時に所定量のエンジンオイルがオイルパン37に貯留された状態におけるエンジンオイルの油面の位置、すなわちオイルレベルを示している。オイルレベルLは、オイルパン37の底面よりも高く、かつエンジン31のクランクシャフトの軸線Xよりも低い。
(鞍乗型車両の吸気系)
また、鞍乗型車両1には、燃料燃焼用の空気を浄化するエアクリーナ41が設けられている。図5または図6に示すように、エアクリーナ41は、エンジン31の左方に配置されている。
また、鞍乗型車両1には、エアクリーナ41により浄化された空気を圧縮する過給機42が設けられている。過給機42は、エアクリーナ41により浄化された空気を圧縮するコンプレッサ部43と、コンプレッサ部43を駆動するタービン部44とを備えている。
図4に示すように、過給機42は、エンジン31の前側シリンダ33の左右方向一側、具体的には前側シリンダ33の右方に配置されている。より具体的には、過給機42は、鞍乗型車両1の側面視において、前側シリンダ33と重なる位置に配置されている。また、過給機42は、オイルレベルLよりも高い位置に配置されている。また、過給機42は、クランクシャフトの軸線Xよりも高い位置に配置されている。また、過給機42は、コンプレッサ部43がタービン部44よりも前側となるように配置されている。また、過給機42は、左右方向においてエアクリーナ41の反対側に配置されている。
過給機42がエンジン31の側方に配置されているので、例えば上記特許文献3の第2図に示されているような、過給機がエンジンの前方に配置された従来の鞍乗型車両と比較して、鞍乗型車両1の走行中に、例えば回転する前輪12によって巻き上げられた飛び石、砂、その他地面に散在した物が過給機42に当たり難い。したがって、過給機42を飛び石等から保護することができる。また、過給機42がエンジン31の側方に配置されているので、過給機がエンジンの前方または後方に配置された従来の鞍乗型車両と比較して、鞍乗型車両1を前後方向に小さくすることができる。
また、過給機42が、鞍乗型車両1の側面視において、前側シリンダ33と重なる位置に配置されているので、例えば上記特許文献1の第1図に示されているような、過給機がエンジンの後方に配置された従来の鞍乗型車両と比較して、運転シート18に着座した運転者の足と過給機42との間に長い距離が確保されており、過給機42が各ステップ19から大きく離れている。過給機42のタービン部44は、エンジン31の排気を利用してタービンホイールを回転させるため、排気の熱により高温となる。また、過給機42のコンプレッサ部43は空気を圧縮するので高温となる。過給機42と運転者の足との間の距離を長くすることで、過給機42から発せられる高温の熱が運転者の足に伝わることを防止でき、運転者を保護することができる。
また、過給機42は、オイルレベルLよりも高い位置に配置されているので、過給機42へ供給したエンジンオイルを自由落下によりオイルパン37へ戻すことができる。すなわち、過給機42は、タービン部44に設けられたタービンホイールを回転させると共に、コンプレッサ部43に設けられたコンプレッサインペラを回転させるためのベアリングを備えている。鞍乗型車両1は、この過給機42のベアリングを潤滑し、または冷却するために、オイルパン37に貯留されたエンジンオイルをポンプで汲み上げ、エンジン31の各部だけでなく、過給機42のベアリングへ供給する機構を備えている。過給機42が、オイルパン37に貯留されたエンジンオイルのオイルレベルLよりも高い位置に配置されているので、過給機42のベアリングに供給されたエンジンオイルを重力によりオイルパン37へ落とすことができる。したがって、過給機42へ供給したエンジンオイルを回収するポンプを別途設ける必要がないので、鞍乗型車両1の部品点数を減らして製造コストを削減することができると共に、鞍乗型車両1の軽量化を図ることができる。
また、エアクリーナ41と過給機42との間には、エアクリーナ41により浄化された空気を過給機42のコンプレッサ部43へ送るインレット配管45が設けられている。インレット配管45は、左右方向に伸長し、図5に示すように、ラジエータ46とインタークーラ47との間に形成された空間に配置されている。インレット配管45の左端はエアクリーナ41の排出口41Aに接続され、インレット配管45の右端はコンプレッサ部43の吸入口43Aに接続されている。
また、図4に示すように、鞍乗型車両1において、エンジン31の前方には、エンジン31を冷却する冷却水を、走行時に受ける風等を利用して冷却するラジエータ46、および過給機42により圧縮されて高温となった空気を、走行時に受ける風等を利用して冷却するインタークーラ47が設けられている。ラジエータ46およびインタークーラ47は、左右一対のダウンチューブ5において後方に傾斜しつつ上下方向に伸長している部分の前側に配置されている。また、ラジエータ46およびインタークーラ47は、一対のダウンチューブ5の当該部分に沿うように、上下方向に並んで配置されている。また、インタークーラ47はラジエータ46よりも上側に配置されている。また、図5に示すように、ラジエータ46およびインタークーラ47はいずれも鞍乗型車両1の左右方向中間部に配置されている。
ここで、図7は、インタークーラ47を、ダウンチューブ5、エアクリーナ41および過給機42と共に示している。図7に示すように、インタークーラ47は、複数の空気通路およびこれら空気通路間に配置された放熱フィンを有するコア48と、コア48の下側に配置され、過給機42のコンプレッサ部43から送られた空気をコア48へ供給するロワーチューブ49と、コア48の上側に配置され、コア48を通って冷却された空気をスロットルボディ54(図4参照)に向けて排出するアッパーチューブ51を備えている。
また、ロワーチューブ49には、コンプレッサ部43からの空気をロワーチューブ49内へ流入させる吸入部50が設けられている。吸入部50は、ロワーチューブ49の後部の左右方向中間部に配置されており、ダウンチューブ5間を通って後方へ張り出している。また、吸入部50とコンプレッサ部43の排出口43Bとの間には両者間を接続するアウトレット配管53が設けられている。
また、アッパーチューブ51には、コア48からアッパーチューブ51内へ流出した空気をスロットルボディ54に向けて排出する排出部52が設けられている。排出部52は、アッパーチューブ51の右部に配置されている。
また、図4に示すように、鞍乗型車両1において、エンジン31の前側シリンダ33のシリンダヘッド34の上方には、スロットルボディ54が設けられている。また、スロットルボディ54の内部にはスロットルバルブ55が設けられている。
また、インタークーラ47とスロットルボディ54との間には、インタークーラ47により冷却された空気をスロットルボディ54へ送るインタークーラアウト配管56が設けられている。ここで、図8はインタークーラアウト配管56、スロットルボディ54、サージタンク59等を示している。図8に示すように、インタークーラアウト配管56の前端は、インタークーラ47のアッパーチューブ51に設けられた排出部52に接続され、インタークーラアウト配管56の後端は、スロットルボディ54において、スロットルバルブ55よりも上流側に位置する開口部に接続されている。
また、図4に示すように、鞍乗型車両1には、スロットルバルブ55が閉じられたときにコンプレッサ部43とスロットルバルブ55との間の余剰圧力をコンプレッサ部43の上流側に逃がすためのエアバイパス配管57およびエアバイパスバルブ58が設けられている。エアバイパス配管57は、コンプレッサ部43の下流側に位置するインタークーラアウト配管56と、コンプレッサ部43の上流側に位置するインレット配管45との間を接続している。また、エアバイパスバルブ58は、エアバイパス配管57を開閉するバルブである。
また、図4に示すように、鞍乗型車両1において、エンジン31の前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35の上方には、インタークーラ47により冷却され、スロットルボディ54を通って送られた空気を一時的に貯えるサージタンク59が設けられている。また、サージタンク59はスロットルボディ54の後方に配置されている。また、サージタンク59の前端部に設けられた吸入口59Aには、スロットルボディ54において、スロットルバルブ55よりも下流側に位置する開口部がホースまたはパイプ等の配管を介して接続されている。スロットルボディ54を通って送られた空気は、吸入口59Aからサージタンク59内へ流入する。
また、サージタンク59の下部に設けられた排気口(図示せず)は、前側シリンダ33のシリンダヘッド34に設けられた吸気ポート、および後ろ側シリンダ35のシリンダヘッド36に設けられた吸気ポートに、それぞれ吸気管60を介して接続されている。サージタンク59内に一時的に貯えられた空気は、サージタンク59の排気口から吸気管60を通って2つの吸気ポートへ供給される。また、図示しないが、各吸気管60にはインジェクタが設けられている。
鞍乗型車両1における吸気系の動作は次の通りである。すなわち、外部からエアクリーナ41に取り込まれた空気は、エアクリーナ41により浄化される。浄化された空気はインレット配管45を通って過給機42のコンプレッサ部43へ送られ、コンプレッサ部43により圧縮される。圧縮された空気はアウトレット配管53を通り、さらにインタークーラ47のロワーチューブ49を通ってインタークーラ47のコア48へ送られ、コア48により冷却される。冷却された空気は、インタークーラ47のアッパーチューブ51、インタークーラアウト配管56、およびスロットルボディ54を通ってサージタンク59へ送られ、サージタンク59において一時的に貯えられる。さらに、サージタンク59に一時的に貯えられることにより整流された空気は、吸気管60を通って前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35にそれぞれ供給される。
(鞍乗型車両の排気系)
一方、鞍乗型車両1には、図4に示すように、エンジン31の前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35から排出される排気を過給機42のタービン部44に供給する排気マニホールド61が設けられている。また、鞍乗型車両1には、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35からタービン部44に供給された排気をタービン部44からサイレンサ20(図1参照)へ送り出す送出配管65が設けられている。タービン部44は、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35からの排気の熱エネルギーを利用して、タービンホイールを回転させ、コンプレッサ部43を駆動する。
ここで、図9は、過給機42、排気マニホールド61および送出配管65等を示している。図9に示すように、排気マニホールド61は、前側シリンダ33から排出される排気をタービン部44に供給する第1の排気通路を形成する前側排気管62と、後ろ側シリンダ35から排出される排気をタービン部44に供給する第2の排気通路を形成する後ろ側排気管63とを備えている。排気マニホールド61は、前側排気管62と後ろ側排気管63とを鋳造により一体に成型し、または前側排気管62と後ろ側排気管63とを溶接により結合することにより形成されている。
前側排気管62の一端は、前側シリンダ33のシリンダヘッド34の前部に設けられた排気ポートに接続されている。前側排気管62は、シリンダヘッド34の排気ポートから前方へ僅かに伸長した後、湾曲し、その後、右方へ伸長した後、湾曲し、その後、前側シリンダ33の右方を後方へ伸長している。
また、後ろ側排気管63の一端は、後ろ側シリンダ35のシリンダヘッド36の後部に設けられた排気ポートに接続されている。後ろ側排気管63は、シリンダヘッド36の排気ポートから後方へ僅かに伸長した後、湾曲し、その後、右方へ伸長した後、湾曲し、その後、後ろ側シリンダ35の右方を前方へ伸長し、さらに、前側シリンダ33の右方を前方へ伸長している。
前側排気管62の他端側と、後ろ側排気管63の他端側とは、過給機42のタービン部44の上方で出会い、互いに結合して1本の結合管部64となって下方へ伸長し、タービン部44の上部に形成された吸込口44Aに達している。そして、排気マニホールド61の結合管部64とタービン部44の吸込口44Aとは、排気マニホールド61の結合管部64の端部に設けられたフランジ64Aと、タービン部44の吸入口44Aの周囲に設けられたフランジ44Bとをボルト等により固定することにより接続されている。このように、排気マニホールド61、すなわち、前側排気管62および後ろ側排気管63は、過給機42のタービン部44よりも高い位置に配置されており、タービン部44の上方からタービン部44に接続されている。
一方、送出配管65は、過給機42のタービン部44から排出された排気をエンジン31の後方へ送出する第3の排気通路を形成する配管である。送出配管65の前端は、図9に示すように、タービン部44の排出口44Cに接続されている。具体的には、送出配管65の前端とタービン部44の排出口44Cとは、送出配管65の前端部に設けられたフランジ65Aと、タービン部44の排出口44Cの周囲に設けられたフランジ44Dとをボルト等により固定することにより接続されている。
また、送出配管65は、タービン部44の排出口44Cから、エンジン31の右方を、エンジン31の後方へ伸長している。具体的には、送出配管65の前端側は、後ろ側排気管63の直ぐ下側に位置し、後ろ側排気管63に沿って伸長している。すなわち、後ろ側排気管63と送出配管65とは、エンジン31の右方において、互いに隣接し、かつ同じ方向(前後方向)に互いに平行に伸長している。より具体的には、送出配管65は、タービン部44の排出口44Cの僅かに後方へ進んだ位置から、後ろ側シリンダ35の後部を超え、後ろ側排気管63が後ろ側シリンダ35の排気ポートに向かって左方へ湾曲し始める位置に達するまでの間、後ろ側排気管63に沿い、後ろ側排気管63に隣接している。
さらに、送出配管65の後端側は、エンジン31の右後方を、鞍乗型車両1の後部へ向かって伸長した後、サイレンサ20に接近するように湾曲し、送出配管65の後端はサイレンサ20に接続されている。
また、送出配管65には、排気に含まれる一酸化炭素、炭化水素、窒素酸化物等の有害な物質を無害な物質に変換する触媒66が設けられている。触媒66は、送出配管65の前端側であって後ろ側排気管63に隣接する部分に配置されている。
鞍乗型車両1における排気系の動作は次の通りである。すなわち、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35から排出された排気は、排気マニホールド61における前側排気管62および後ろ側排気管63を通って過給機42のタービン部44へ送られた後、タービン部44から送出配管65を通ってサイレンサ20へ送られ、サイレンサ20から外部へ排出される。また、過給機42において、タービン部44に設けられたタービンホイールは、前側排気管62および後ろ側排気管63を通ってタービン部44へ送られた排気の熱エネルギー(排気の圧力)により回転する。これに伴い、コンプレッサ部43に設けられたコンプレッサインペラが回転する。これにより、インレット配管45を通ってコンプレッサ部43に送られた空気の圧縮が行われる。
ここで、鞍乗型車両1において、過給機42のタービン部44が前側シリンダ33の右方に配置されており、タービン部44と前側シリンダ33とが互いに接近している。これにより、前側排気管62を短くすることができる。したがって、前側排気管62を流通する排気の熱エネルギーの低下を抑えることができる。
これに対し、タービン部44と前側排気管62との位置関係と比較して、タービン部44と後ろ側排気管とは互いに離れている。この結果、後ろ側排気管63は、前側排気管62と比較して長い。しかしながら、送出配管65の前端側が、後ろ側排気管63の下側を、後ろ側排気管63に沿って伸長しているので、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の熱エネルギーの低下を抑制することができる。すなわち、送出配管65にはタービン部44から排出された高温の排気が流通する。送出配管65を後ろ側排気管63に沿うように配置し、後ろ側排気管63と送出配管65とを広い範囲において互いに隣接させることにより、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑えることができ、当該排気の熱エネルギーの低下を抑制することができる。
このように、前側シリンダ33および後ろ側シリンダ35のそれぞれからタービン部44へ供給される排気の熱エネルギーの低下を抑制することができるので、タービン部44の駆動に関するエネルギー効率を良くすることができる。
また、後ろ側排気管63に送出配管65を沿わせて後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑制することにより、前側排気管62と後ろ側排気管63との長さが異なるにもかかわらず、前側シリンダ33の排気温度と後ろ側シリンダ35の排気温度との差を小さくすることができる。これにより、前側シリンダ33と後ろ側シリンダ35との間で、燃調または点火時期の設定を互いに近づけることができ、エンジン出力の低下を抑えることができる。
また、鞍乗型車両1の送出配管65において、触媒66が後ろ側排気管63に隣接する位置に配置されているので、後ろ側排気管63を流通する排気の熱を利用して触媒66の温度を迅速に高めることができる。したがって、例えば冷間始動時において触媒66の温度がその活性温度に達する時間を短くすることができる。
また、鞍乗型車両1において、排気マニホールド61、すなわち、前側排気管62および後ろ側排気管63は、上述したように、過給機42のタービン部44よりも高い位置に配置されており、タービン部44の上方からタービン部44に接続されている。ここで、図10は、鞍乗型車両1の前面視における過給機42のタービン部44、およびタービン部44に接続された排気マニホールド61を示している。図10に示すように、鞍乗型車両1の前面視において、排気マニホールド61のタービン部44への接続角度αは30度以上150度以下の範囲内であることが好ましい。
すなわち、接続角度αが30度未満である場合には、排気マニホールド61を過給機42のタービン部44に接続するために、過給機42を前側シリンダ33から右方へ離さなければならない。すなわち、過給機42と前側シリンダ33との間に排気マニホールド61を配管するスペースを確保しなければならないため、過給機42を前側シリンダ33から離さなければならない。その結果、重量物である過給機42が鞍乗型車両1の左右方向の中心から離れるので、車両の左右方向のバランスをとることが困難となり、車両の保針性が悪化する。
一方、接続角度αが150度よりも大きい場合には、排気マニホールド61が遠回りして過給機42のタービン部44に接続されることとなる。それゆえ、排気マニホールド61における前側排気管62および後ろ側排気管63が長くなり、前側排気管62および後ろ側排気管63を流通する排気の熱エネルギーが低下する。また、接続角度αが150度よりも大きい場合には、排気マニホールド61が鞍乗型車両1の右外側に張り出してしまい、車幅が大きくなる。
接続角度αを30度以上150度以下の範囲内とすることにより、過給機42を前側シリンダ33に接近させて車両の保針性を良くすることができ、また、排気マニホールド61における前側排気管62および後ろ側排気管63を短くし、前側排気管62および後ろ側排気管63を流通する排気の熱エネルギーの低下を抑えることができ、さらに、排気マニホールド61が鞍乗型車両1の外側に張り出すことを防止し、車幅を小さくすることができる。
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態による鞍乗型車両における過給機、排気マニホールドおよび送出配管を示している。なお、図11において、上述した本発明の第1の実施形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、それらの説明を省略する。この点は、後述する本発明の第3の実施形態を示す図12および図13、本発明の第4の実施形態を示す図14、本発明の第5の実施形態を示す図15および図16、および本発明の第6の実施形態を示す図17についても同様である。
図11に示すように、本発明の第2の実施形態による鞍乗型車両においては、排気マニホールド71が、前側シリンダ33から排出される排気をタービン部73に供給する第1の排気通路を形成する前側排気管74と、後ろ側シリンダ35から排出される排気をタービン部73に供給する第2の排気通路を形成する後ろ側排気管75と、過給機72のタービン部73とを、鋳造により一体に成型し、またはこれらを溶接により結合することにより形成されている。これにより、前側排気管74、後ろ側排気管75およびタービン部73の熱容量を低減することができる。また、排気系の部品点数を減らすことができ、また、鞍乗型車両1の軽量化を図ることができる。
(第3の実施形態)
図12は、本発明の第3の実施形態による鞍乗型車両における過給機、排気マニホールド、送出配管および保温カバーを示している。また、図13は、図12中の矢示XIII−XIII方向から見た後ろ側排気管、送出配管および保温カバーの断面を示している。
図12に示すように、本発明の第3の実施形態による鞍乗型車両においては、後ろ側排気管63および送出配管65の前端側が保温カバー81によりまとめて覆われている。保温カバー81は例えばステンレス等の金属により形成されている。また、保温カバー81は、後ろ側排気管63の大部分と、送出配管65において後ろ側排気管63に沿って伸長している部分を覆っている。また、保温カバー81は、図13に示すように、後ろ側排気管63と送出配管65の前端側をまとめて包み込むように、それらの全周を包囲している。また、保温カバー81は、送出配管65に設けられた触媒66をも覆っている。
本発明の第3の実施形態による鞍乗型車両によれば、後ろ側排気管63を流通する排気の熱が、後ろ側排気管63の外周面から大気へ放出されることを保温カバー81により抑えることができる。また、これと同時に、送出配管65を流通する排気の熱が、送出配管65の外周面から大気へ放出されることを保温カバー81により抑えることができる。したがって、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑える効果を高めることができる。さらに、触媒66が保温カバー81により覆われているので、冷間始動時において、触媒66の温度がその活性温度に達する時間を、より一層短くすることができる。また、後ろ側排気管63または送出配管65から運転者に伝わる熱を保温カバー81により抑えることができる。
(第4の実施形態)
図14は、本発明の第4の実施形態による鞍乗型車両における過給機、排気マニホールド、送出配管および保温カバーを示している。図14に示すように、本発明の第4の実施形態による鞍乗型車両においては、過給機42のタービン部44、前側排気管62、後ろ側排気管62、および送出配管65の前端側が保温カバー82によりまとめて覆われている。
本発明の第4の実施形態による鞍乗型車両によれば、前側排気管62を流通する排気の熱、後ろ側排気管63を流通する排気の熱、タービン部44を通る排気の熱、および送出配管65を流通する排気の熱が大気へ放出されることを保温カバー82により抑えることができる。また、保温カバー82で覆う範囲を拡張することにより、保温カバー82の保温効果を高めることができる。したがって、前側排気管62を流通する排気の温度低下を抑える効果を高めることができ、また、タービン部44を通る排気の温度低下を抑えることができる。さらに、送出配管65を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気管63を流通する排気の温度低下を抑える効果をより一層高めることができる。
(第5の実施形態)
図15は、本発明の第5の実施形態による鞍乗型車両における過給機、前側排気ユニットおよび後ろ側排気ユニットを示している。図16は、当該鞍乗型車両における前側排気ユニットおよび後ろ側排気ユニットを示している。
図15または図16に示すように、本発明の第5の実施形態による鞍乗型車両は、過給機92のタービン部93と、前側シリンダ33からの排気をタービン部93に供給する第1の排気通路を形成する前側排気管94とが鋳造により一体に成型された前側排気ユニット91を備えている。さらに、当該鞍乗型車両は、後ろ側シリンダ35からの排気をタービン部93に供給する後ろ側排気通路97(第2の排気通路)と、タービン部93から排出された排気をエンジン31の後方へ送出する送出通路98(第3の排気通路)とが鋳造により一体に成型された排気通路集合体としての後ろ側排気ユニット96を備えている。なお、図15においては、前側排気ユニット91については右側の外面を示し、後ろ側排気ユニット96については断面を示している。
前側排気ユニット91と後ろ側排気ユニット96とは、前側排気ユニット91に形成されたフランジ91Aと、後ろ側排気ユニット96に形成されたフランジ96Aとをボルト等を用いて固定することにより接続されている。また、送出通路98には触媒99が設けられている。
本発明の第5の実施形態による鞍乗型車両によれば、後ろ側排気通路97と送出通路98とを一体に成型したことにより、後ろ側排気通路97と送出通路98とを互いにより接近させ、さらには互いに密着させることができる。また、後ろ側排気通路97と送出通路98とが互いに接近する範囲を広くすることができる。また、後ろ側排気通路97と送出通路98との境界部分とその周辺部分を、後ろ側排気ユニット96の内部に形成し、外部に露出しないようにすることにより、後ろ側排気通路97と送出通路98との境界部分またはその周辺部分から排気の熱が大気へ放出されることを抑制することができる。これにより、送出通路98を流通する排気の熱を利用して、後ろ側排気通路97を流通する排気の温度低下を抑える効果を高めることができる。また、後ろ側排気通路97と送出通路98とが一体成型された後ろ側排気ユニット96の内部に触媒99を配置することにより、触媒99の温度がその活性温度に達する時間を、より一層短くすることができる。さらに、過給機92のタービン部93、前側排気管94、後ろ側排気通路97および送出通路98を、前側排気ユニット91と後ろ側排気ユニット96の2つの部品により形成することができるので、排気系の部品点数を削減することができる。
なお、後ろ側排気ユニット96において、後ろ側排気通路97と送出通路98とを一体化する方法は、鋳造による成型に限らず、後ろ側排気通路97を形成する配管と送出通路98を形成する配管とを溶接により互いに接合する方法でもよい。前側排気ユニット91において、タービン部93と前側排気管94とを一体化する方法についても同様である。
(第6の実施形態)
図17は、本発明の第6の実施形態による鞍乗型車両における過給機および排気ユニットを示している。
図17に示すように、本発明の第6の実施形態による鞍乗型車両は、前側排気通路104(第1の排気通路)と、後ろ側排気通路105(第2の排気通路)と、送出通路107(第3の排気通路)とが鋳造により一体に成型された排気通路集合体としての排気ユニット103を備えている。また、送出通路107には触媒108が設けられている。
本発明の第6の実施形態による鞍乗型車両によれば、上述した本発明の第5の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。また、前側排気通路104、後ろ側排気通路105および送出通路107を一体化することにより、部品点数のより一層の削減を図ることができる。
なお、排気ユニット103において、前側排気通路104、後ろ側排気通路105および送出通路107を一体化する方法は、鋳造による成型に限らず、前側排気通路104を形成する配管、後ろ側排気通路105を形成する配管、および送出通路107を形成する配管を溶接によりそれぞれ接合する方法でもよい。
また、上述した各実施形態では、鞍乗型車両として自動二輪車を例にあげたが、本発明は他の種類の鞍乗型車両にも適用することができる。また、本発明は、3気筒以上のV型エンジンにも適用することができる。また、本発明は、前側シリンダがクランクケースから前方へ水平方向に伸長し、後ろ側シリンダがクランクケースから上方へ垂直方向に伸長する、いわゆるL型エンジンにも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。