本発明の実施の形態を説明する。本発明の実施形態による鞍乗型車両は、クランクケース、クランクケース上に設けられたシリンダ、およびシリンダ上に設けられたシリンダヘッドを有するエンジンと、エンジンから排出された排気により駆動され、エンジンに吸入される燃料燃焼用の空気を圧縮する過給機と、一端部がシリンダヘッドの前部に設けられた排気ポートに接続され、他端部が過給機に接続され、エンジンから排出された排気を過給機へ流入させる排気管とを備え、シリンダは後方へ傾斜し、過給機はクランクケースの上方であってシリンダまたはシリンダヘッドの前方に配置され、当該鞍乗型車両の上面視において、過給機の少なくとも一部はクランクケースの一部と重なり合っていることを特徴とする。
本発明のこの実施形態によれば、シリンダが後方へ傾斜しているので、シリンダの下端部から上端部に向かうに連れて、シリンダと前輪またはラジエータとの間の隙間が大きくなる。すなわち、シリンダの後傾により、クランクケースの上方であって、シリンダまたはシリンダヘッドの前方に大きな空間を容易に形成することが可能になる。したがって、シリンダ(またはシリンダヘッド)と前輪またはラジエータとの間に過給機を配置する空間を容易に確保することができる。このようにシリンダの後傾により形成された空間に過給機を配置することにより、鞍乗型車両の車長が長くなるのを防止することができる。
また、シリンダの後傾により形成された空間に過給機を配置することにより、エンジンを後方に下げる必要がなくなるので、車両の重心位置が後方に移動して前輪の分担荷重が減少することを防止でき、良好な操縦安定性を確保することができる。
また、過給機をクランクケースの上方に配置することにより、過給機の位置を高くし、過給機を地面から離すことができる。これにより、地面からの飛び石が過給機に当たり難くすることができ、または地面からの跳ね水が過給機にかかり難くすることができる。したがって、過給機を飛び石および跳ね水から容易に保護することができる。
また、上述した本発明の実施形態による鞍乗型車両において、過給機の前後方向における中間位置がクランクケースの前端よりも後ろ側に位置する構成としてもよい。
本発明のこの実施形態によれば、過給機をクランクケースの上方、かつシリンダまたはシリンダヘッドの前方に配置しつつも、過給機を後退させることができ、過給機においてクランクケースの前端よりも前方にはみ出す部分を少なくすることができる。これにより、前輪またはラジエータとエンジンとの間の隙間を小さくすることができ、鞍乗型車両の車長を短くすることができる。
また、上述した本発明の実施形態による鞍乗型車両において、排気管は、その全体がクランクケースの前端よりも後方に位置していることが好ましい。
本発明のこの実施形態によれば、排気管の一部がクランクケースの前端よりも前方にはみ出すことを防止することができる。これにより、前輪またはラジエータとエンジンとの間の隙間を小さくすることができ、鞍乗型車両の車長を短くすることができる。
また、上述した本発明の実施形態による鞍乗型車両において、過給機に供給する燃料燃焼用の空気を浄化するエアクリーナをさらに備え、エアクリーナは、過給機の上方に配置され、当該鞍乗型車両の上面視において、エアクリーナの少なくとも一部は、過給機とクランクケースとが重なり合っている部分と重なり合っていることが好ましい。
本発明のこの実施形態では、シリンダを後傾させたことにより形成される空間において、過給機の上方にエアクリーナを配置する。これにより、過給機とエアクリーナとを互いに接近させることができる。したがって、エアクリーナと過給機とを接続する配管を短くすることができ、よって鞍乗型車両の軽量化を図ることができる。また、エアクリーナと過給機とを接続する配管を短くすることで、配管を流通する空気の圧力損失を小さくすることができ、過給機の応答性を高めることができる。
また、上述した本発明の実施形態による鞍乗型車両において、過給機により圧縮され、エンジンに吸入される空気を冷却するインタークーラと、エンジンを冷却する冷却水を冷却するラジエータとをさらに備え、インタークーラおよびラジエータは、過給機の前方に配置され、上下方向に並び、インタークーラがラジエータよりも上側に配置されていることが好ましい。
本発明のこの実施態様によれば、インタークーラを、過給機の前方であって、ラジエータよりも上側に配置することにより、過給機とインタークーラとを互いに接近させることができる。したがって、過給機とインタークーラとを接続する配管を短くすることができる。よって、鞍乗型車両の軽量化を図ることができる。また、過給機とインタークーラとを接続する配管を短くすることで、配管を流通する空気の圧力損失を小さくすることができ、過給機の応答性を高めることができる。
また、上述した本発明の実施形態による鞍乗型車両において、過給機により圧縮され、エンジンに吸入される空気を一時的に貯えるサージタンクをさらに備え、サージタンクは、シリンダまたはシリンダヘッドの後方に配置されていることが好ましい。
本発明のこの実施形態によれば、シリンダ後方の空間を有効利用することができる。また、サージタンクを過給機から離すことにより、過給機から発せられる熱がサージタンクに伝わることを抑制することができる。
図1は本発明の第1の実施例による鞍乗型車両を左側から見た図であり、図2は当該鞍乗型車両を右側から見た図である。これらはいずれも模式図であり、ハンドル、運転シート、リヤクッション、カウル等は図示を省略している。なお、以下の各実施例の説明において、前、後、上、下、左、右の方向は、鞍乗型車両に搭乗した乗員を基準とする。
図1において、本発明の第1の実施例による鞍乗型車両1は例えば自動二輪車である。鞍乗型車両1は、車両の骨組みを形成する車体フレーム2を備えている。車体フレーム2は、ヘッドパイプ3、一対のメインフレーム4および一対のダウンチューブ5を備えている。ヘッドパイプ3は、鞍乗型車両1の前上部かつ左右方向中間部に配置されている。また、一対のメインフレーム4は、ヘッドパイプ3から後方へほぼ水平方向に伸長した後、下方に向かって湾曲している。また、一対のメインフレーム4はヘッドパイプ3からそれぞれ左、右に拡開した後、互いにほぼ平行に伸長している(なお、この点については詳しい図示を省略している)。また、一対のダウンチューブ5は、ヘッドパイプ3から下方へ伸長した後、湾曲し、その後、ほぼ水平方向に伸長している。また、一対のダウンチューブ5も、一対のメインチューブとほぼ同様に、ヘッドパイプ3からそれぞれ左、右に拡開した後、互いにほぼ平行に伸長している。また、図示を省略しているが、車体フレーム2は、シートレール、ピボット軸支部、ブリッジフレーム等をさらに備えている。
また、ヘッドパイプ3にはステアリングシャフトが挿入され、ステアリングシャフトは軸受を介してヘッドパイプ3に回動可能に支持されている。また、ステアリングシャフトにはブラケットを介してフロントフォーク6が取り付けられており、フロントフォーク6の下端側には前輪7が回転可能に支持されている。一方、車体フレーム2の後部には、スイングアーム8の前端側が揺動可能に支持され、スイングアーム8の後端側には後輪9が回転可能に支持されている。
また、鞍乗型車両1の前後方向中間部において、一対のメインフレーム4および一対のダウンチューブ5で囲まれた空間にはエンジン11が設けられている。各メインフレーム4および各ダウンチューブ5の複数の箇所にはエンジンマウントが設けられ、エンジン11はこれらエンジンマウントを介して各メインフレーム4および各ダウンチューブ5に支持されている。また、ヘッドパイプ3の後方であってエンジン11の前側上方には、燃料燃焼用の空気を浄化するエアクリーナ22が設けられている。また、上下方向においてエンジン11の前部とエアクリーナ22との間には、エアクリーナ22により浄化された空気を圧縮する過給機23が設けられている。また、前後方向において前輪7とエンジン11との間には、エンジン11等を冷却する冷却水を、走行風等を利用して冷却するラジエータ18が設けられている。また、ラジエータ18の上方には、過給機23により圧縮されたことによって高温となった空気を、走行風等を利用して冷却するインタークーラ27が設けられている。また、エンジン11の上部後方には、エンジン11に吸引される空気の量を調整するスロットルバルブを内部に収容するスロットルボディ32と、インタークーラ27により冷却された空気を一時的に貯え、当該空気を整流するサージタンク33とが設けられている。また、エンジン11の上方においてエアクリーナ22の後方には燃料タンク19が設けられている。また、図2に示すように、鞍乗型車両1の後部右側には、エンジン11の排気音を低減するサイレンサ38が設けられている。
図3は、鞍乗型車両1におけるエンジン11およびその周辺の部品、すなわち、ラジエータ18、エアクリーナ22、過給機23、インタークーラ27、スロットルボディ32およびサージタンク33の配置、並びにこれらの部材間を接続する配管を示している。図4は、エンジン11とその周辺の部品を図3中の矢示IV−IV方向から見た図である。図5は、エンジン11とその周辺の部品を図3中の矢示V−V方向から見た図である。図6は、図5中のエンジン11とその周辺の部品からインタークーラ27を取り除いた状態を示している。
図3に示すように、本実施例におけるエンジン11は、例えば水冷式の2気筒エンジンであり、車両の進行方向に直交するクランクシャフトに対して2つのシリンダを直列に並べたタイプのエンジンである。エンジン11は、クランクケース12、シリンダ13、シリンダヘッド14およびシリンダヘッドカバー15を備えている。クランクケース12はエンジン11の下部に配置されている。クランクケース12内において、その前部にはクランクシャフトが設けられ、後部にはクラッチおよびトランスミッション等の駆動系の機構が設けられている。また、図3中のAは、クランクシャフトの軸心の位置を示している。
シリンダ13はクランクケース12上に設けられている。シリンダ13は、クランクケース12から、後方に傾斜しつつ上方に伸長している。具体的には、シリンダ13は、クランクシャフトの軸心Aを中心に後方に傾斜しており、シリンダ13の上端部が当該シリンダ13の下端部よりも後ろ側に位置している。例えば、図3に示す例では、シリンダ13の下端部はクランクケース12の前部に対応する箇所に位置しており、シリンダ13の上端部はクランクケース12の前後方向中間部、またはそれよりも後ろ側の部分に対応する箇所に位置している。シリンダ13内にはピストンが設けられており、ピストンが往復動する方向はシリンダ13の伸長方向と一致している。また、図3中のBはシリンダ軸(具体的にはピストンが往復動可能に挿入されたシリンダボアの軸線)を示している。
シリンダヘッド14はシリンダ13上に設けられ、シリンダヘッドカバー15はシリンダヘッド14上に設けられている。シリンダヘッド14およびシリンダヘッドカバー15は、シリンダ軸Bに沿って配置されている。この結果、全体的に見て、シリンダヘッド14はシリンダ13よりも後ろ側に位置し、シリンダヘッドカバー15はシリンダヘッド14よりも後ろ側に位置している。また、シリンダ13の後壁部には吸気ポート16が形成され、シリンダ13の前壁部には排気ポート17が形成されている(図2参照)。
本実施例による鞍乗型車両1では、シリンダ13が後斜しているので、シリンダ13の下端部から上端部に向かうに連れて、前輪7、ラジエータ18またはインタークーラ27とシリンダ13との間の隙間が大きくなる。このように、本実施例の鞍乗型車両1によれば、シリンダ13を後傾させたことにより、シリンダ13を前傾させた場合、またはシリンダ13を直立(垂直方向に伸長)させた場合と比較して、前輪7、ラジエータ18またはインタークーラ27と、シリンダ13またはシリンダヘッド14との間に大きな空間を容易に確保することができる。また、本実施例の鞍乗型車両1によれば、シリンダ13を後傾させたことにより、前輪7またはラジエータ18とクランクケース12との間の空間を小さくし、かつ、前輪7、ラジエータ18またはインタークーラ27とシリンダ13またはシリンダヘッド14との間の空間を大きくすることができる。
過給機23は、図3に示すように、クランクケース12の上方であって、シリンダ13またはシリンダヘッド14の前方に配置されている。具体的には、過給機23は、クランクケース12の上方であって、インタークーラ27またはラジエータ18と、後傾したシリンダ13またはシリンダヘッド14との間に形成された空間に配置されている。
すなわち、図3中のP1はクランクケース12の上端位置(最も上の位置)を示しており、過給機23はクランクケース12の上端位置P1よりも上側に位置している。本実施例においては、過給機23は、シリンダ13の前面とシリンダヘッド14の前面との境界線の前方に位置している。
また、図4に示すように、鞍乗型車両1の上面視において、過給機23の少なくとも一部はクランクケース12の一部と重なり合っている。具体的には、過給機23の前後方向の中間位置が、クランクケースの前端よりも後ろ側に位置している。すなわち、過給機23において、その前端位置(最も前の位置)をQ1とし、後端位置(最も後ろの位置)をQ4とし、前端位置Q1と後端位置Q4との中間位置をQ3とする。また、クランクケース12の前端位置をQ2とする。この場合、過給機23の中間位置Q3がクランクケース12の前端位置Q2よりも後ろ側に位置している。
また、過給機23は、エンジン11から排出される排気の有するエネルギーを利用してコンプレッサを動作させて空気を圧縮するターボチャージャであり、図6に示すように、タービン部24およびコンプレッサ部25を備えている。本実施例において、過給機23は、鞍乗型車両1の左右方向中間部に、コンプレッサ部25が右側となり、タービン部24が左側となるように配置されている。コンプレッサ部25は空気を圧縮する部分である。コンプレッサ部25内にはコンプレッサインペラが設けられている。また、コンプレッサ部25は、コンプレッサ部25内に空気を流入させる吸気流入口25A、およびコンプレッサ部25により圧縮された空気をコンプレッサ部25から流出させる吸気流出口25Bを備えている。吸気流入口25Aはコンプレッサ部25の中心部に位置し、右方に開口している。また、吸気流出口25Bはコンプレッサ部25の周部の上部に位置し、前方に開口している。タービン部24は、エンジン11から排出される排気のエネルギーを利用してコンプレッサ部25を動作させるための動力をつくり出す部分である。タービン部24にはタービンホイールが設けられている。また、タービン部24は、タービン部24内に排気を流入させる排気流入口24A、およびタービン部24から排気を流出させる排気流出口24Bを備えている。排気流入口24Aはタービン部24の周部の上部に位置し、ほぼ上方に開口している。排気流出口24Bはタービン部24の中心部に位置し、左方に開口している。また、タービンホイールはコンプレッサインペラと例えば共通の回転軸を介して接続されており、タービンホイールの回転に伴ってコンプレッサインペラが回転するように構成されている。
本実施例による鞍乗型車両1によれば、シリンダ13を後傾させたことにより形成された大きな空間に過給機23を配置することにより、過給機23をシリンダ13またはシリンダヘッド14の前方に配置しながらも、前輪7またはラジエータ18とエンジン11との間隔が大きくなることを防止することができる。これにより、鞍乗型車両1の車長が長くなることを防止することができ、鞍乗型車両1の小型化を図ることができる。また、シリンダ13の後傾により確保された大きな空間に過給機23を配置することにより、エンジン11を後方に下げる必要がなくなるので、鞍乗型車両1の重心位置が後方に移動して前輪7の分担荷重が減少することを防止でき、鞍乗型車両1の良好な操縦安定性を確保することができる。また、シリンダ13の後傾により確保された空間に過給機23を配置することにより、過給機23の位置を高くし、過給機23を地面から離すことができる。これにより、地面からの飛び石が過給機23に当たり難くすることができ、または地面からの跳ね水が過給機23にかかり難くすることができる。したがって、過給機23を飛び石および跳ね水から容易に保護することができる。例えば、過給機23を保護するために堅牢なガード機構を不要とすることができ、鞍乗型車両1の軽量化および製造コストの削減を図ることができる。
また、過給機23をシリンダ13またはシリンダヘッド14の前方に配置することにより、排気マニホールド37を構成する各排気管を短くすることができ、それゆえ、過給機23の応答性を高めることができ、かつ排気でタービン部24を駆動する際のエネルギー効率を良くすることができる。さらに、過給機23をクランクケース12よりも高い位置に配置することにより、過給機23においてタービンホイールおよびコンプレッサインペラの回転軸を回転可能に支持する軸受に供給する潤滑油を、自由落下によりクランクケース12内のオイル貯留部(例えばオイルパン)に戻すことができる。したがって、潤滑油を戻すためのポンプを不要とすることができ、鞍乗型車両1を構成する部品点数を減らすことができる。
また、エアクリーナ22は、図3に示すように、過給機23の上方に配置されている。また、エアクリーナ22は、インタークーラ27またはラジエータ18と、後傾したシリンダ13またはシリンダヘッド14との間に形成された空間の上部、または当該空間の上方に配置されている。また、本実施例において、エアクリーナ22は、インタークーラ27よりも高い位置に配置され、また、シリンダヘッドカバー15の前隅部と同等の高さ位置に配置されている。
また、図4に示すように、鞍乗型車両1の上面視において、エアクリーナ22は、その一部が、過給機23とクランクケース12とが重なり合っている部分と重なり合うように配置されている。すなわち、過給機23とクランクケース12とが重なり合っている部分は、クランクケース12の前端位置Q2から過給機23の後端位置Q4までの間に存在している。エアクリーナ22は、鞍乗型車両1の上面視において、クランクケース12の前端位置Q2から過給機23の後端位置Q4までの部分と重なり合っている。また、本実施例においては、エアクリーナ22は、鞍乗型車両1の上面視において、過給機23の全体と重なり合っており、また、クランクケース12の前部と重なり合っている。
また、エアクリーナ22はクリーナケースを備え、クリーナケース内には、空気を浄化するエアフィルタが設けられている。また、エアクリーナ22の前方には、外部の空気をエアクリーナ22へ導くダクト部21が設けられており、ダクト部21は、クリーナケースの前部に形成された吸入口22Aに接続されている。また、クリーナケースの底部には、クリーナケース内においてエアフィルタを通過した後の空気をクリーナケースから流出させる排出口22Bが形成されている。また、当該排出口22Bと、過給機23のコンプレッサ部25の吸気流入口25Aとの間はインレット配管26により接続されている。
本実施例による鞍乗型車両1によれば、シリンダ13を後傾させたことにより確保される空間に過給機23を配置し、その上方にエアクリーナ22を配置することにより、過給機23とエアクリーナ22とを互いに接近させることができる。したがって、エアクリーナ22と過給機23とを接続するインレット配管26を短くすることができ、よって鞍乗型車両1の軽量化を図ることができる。また、インレット配管26を短くすることで、インレット配管26を流れる空気の圧力損失を小さくすることができ、過給機23の応答性を良くすることができる。また、インレット配管26を直線状の配管とすることができ、インレット配管26を流れる空気の圧力損失を小さくして過給機23の応答性を良くする効果を高めることができる。
また、インタークーラ27およびラジエータ18は、図3に示すように、エンジン11の前方で、かつ過給機23の前方に配置されている。また、インタークーラ27およびラジエータ18は、上下方向に並び、インタークーラ27がラジエータ18よりも上側に配置されている。本実施例において、インタークーラ27は、過給機23とほぼ同じ高さ位置、または過給機23よりも高い位置に配置されている。
また、インタークーラ27は、図5に示すように、コア28、流入側チューブ29および流出側チューブ30を備えている。コア28は空気を冷却する部分であり、コア28には、複数の空気通路が設けられ、空気通路間には放熱フィンが設けられている。なお、コア28の構造については周知の構造を採用することができるゆえ、詳細な図示を省略する。また、流入側チューブ29は、コンプレッサ部25から送られた空気をコア28へ供給する部分であり、コア28の右側に設けられている。また、流入側チューブ29の後ろ面には吸入口29Aが形成されている。また、流出側チューブ30は、コア28を通って冷却された空気をスロットルボディ32へ排出する部分であり、コア28の左側に設けられている。また、流出側チューブ30の後ろ面には排出口30Aが形成されている。また、過給機23のコンプレッサ部25の吸気流出口25Bと、インタークーラ27の流入側チューブ29の吸入口29Aとの間はコンプレッサアウト配管31により接続されている。
本実施例による鞍乗型車両1によれば、インタークーラ27を、過給機23の前方であって、ラジエータ18よりも上側に配置することにより、インタークーラ27と過給機とをほぼ同じ高さ位置で隣り合うように配置することができ、インタークーラ27と過給機23とを互いに接近させることができる。したがって、過給機23とインタークーラ27とを接続するコンプレッサアウト配管31を短くすることができる。これにより、鞍乗型車両1の軽量化を図ることができる。また、コンプレッサアウト配管31を短くすることにより、コンプレッサアウト配管31を流れる空気の圧力損失を小さくすることができ、過給機23の応答性を高めることができる。また、インタークーラ27をエンジン11の前方の走行風が当たり易い箇所に配置することにより、インタークーラ27による冷却効果を高めることができる。また、インタークーラ27を過給機23の前方に配置することにより、インタークーラ27を、過給機23を保護する防護壁として機能させることができ、前方からの飛び石等が過給機23に当たることをインタークーラ27により抑制することができる。
また、スロットルボディ32およびサージタンク33は、図3に示すように、シリンダ13またはシリンダヘッド14の後方に配置されている。また、インタークーラ27とスロットルボディ32との間にはインタークーラアウト配管34が設けられている。また、図4に示すように、スロットルボディ32とサージタンク33との間には接続配管35が設けられている。具体的には、スロットルボディ32は、シリンダ13またはシリンダヘッド14の後方領域の右側に配置されている。また、スロットルボディ32は、その吸入口32Aが左側に位置し、排出口32Bが右側に位置するように配置されている。また、インタークーラアウト配管34は、その一端部がインタークーラ27の流出側チューブ30に設けられた排出口30Aに接続され(図5参照)、他端部がスロットルボディ32の吸入口32Aに接続されている。また、インタークーラアウト配管34はエンジン11の左方、具体的にはシリンダヘッド14の左方を通って前後方向に伸長している。また、サージタンク33は、シリンダ13またはシリンダヘッド14の後方領域の左右方向中間部に配置されている。また、サージタンク33の左壁部には吸入口33Aが形成されている。そして、スロットルボディ32の排出口32Bとサージタンク33の吸入口33Aとの間は接続配管35により接続されている。また、サージタンク33の下壁部または前壁部には排出口33Bが形成されている。そして、サージタンク33の排出口33Bと、シリンダヘッド14に形成された2つの吸気ポート16との間は吸気管36により接続されている。また、図示しないが、各吸気管36において吸気ポートの近傍にはインジェクタが設けられている。
スロットルボディ32およびサージタンク33をシリンダ13またはシリンダヘッド14の後方に配置することにより、シリンダ13の後方の空間を有効利用することができる。また、スロットルボディ32およびサージタンク33を過給機23から離すことにより、過給機23から発せられる熱がスロットルボディ32またはサージタンク33に伝わることを抑制することができる。また、インタークーラ27の排出口30Aおよびスロットルボディ32の吸入口32Aをそれぞれ鞍乗型車両1の左部に配置し、両者間を接続するインタークーラアウト配管34をシリンダヘッド14の左方を通るように配管することにより、インタークーラアウト配管34を、湾曲部分の少ない直線に近い形状とすることができ、それゆえ、配管長を短くすることができる。これにより、インタークーラアウト配管34を流れる空気の圧力損失を小さくすることができ、吸気系の応答性を高めることができる。
一方、図6に示すように、シリンダヘッド14に形成された2つの排気ポート17と、過給機23のタービン部24の排気流入口24Aとの間には排気マニホールド37が設けられている。排気マニホールド37は、2つの排気ポート17のうち、一方の排気ポート17とタービン部24の排気流入口24Aとの間を接続する排気管と、他方の排気ポート17とタービン部24の排気流入口24Aとの間を接続する排気管とを集合させたものである。排気マニホールド37の一端側は排気ポート17ごとに2本の管部が形成されているが、排気マニホールド37の他端側は、これら2本の管部が結合した1本の管部が形成されている。排気マニホールド37の一端側の各端部は、排気ポート17にそれぞれ接続され、排気マニホールド37の他端部は、タービン部24の排気流入口24Aに接続されている。
ここで、排気マニホールド37は、その全体が、図3に示すように、クランクケース12の前端位置Q2よりも後方に位置している。本実施例においては、排気マニホールド37の他端部が排気マニホールド37の前端に位置するので、排気マニホールド37の他端部がクランクケース12の前端位置Q2よりも後方に位置している。これにより、排気マニホールド37の一部がクランクケース12の前端よりも前方にはみ出すことを防止することができる。したがって、前輪7またはラジエータ18とエンジン11との間の隙間を小さくすることができ、鞍乗型車両1の車長を短くすることができる。
また、図1に示すように、過給機23のタービン部24とサイレンサ38との間には排気送出配管39が設けられている。排気送出配管39の一端部は、図6に示すように、タービン部24の排気流出口24Bに接続されている。また、排気送出配管39の他端部は、図2に示すようにサイレンサ38に接続されている。排気流出配管39は、タービン部24の左側からクランクケース12の前方左部を下方に伸長した後、クランクケース12の下側を右後方へ伸長し、その後、後輪9の右方をやや上向きに後方へ伸長してサイレンサ38に到達している。
以上のような構成を有する鞍乗型車両1の吸気および排気に関する動作は次の通りである。すなわち、外部からダクト部21を介してエアクリーナ22に取り込まれた空気は、エアクリーナ22により浄化される。浄化された空気はインレット配管26を通って過給機23のコンプレッサ部25へ送られ、コンプレッサ部25により圧縮される。圧縮された空気はコンプレッサアウト配管31を通り、さらにインタークーラ27の流入側チューブ29を通ってインタークーラ27のコア28へ送られ、コア28により冷却される。冷却された空気は、インタークーラ27の流出側チューブ30、インタークーラアウト配管34、およびスロットルボディ32を通ってサージタンク33へ送られ、サージタンク33において一時的に貯えられる。さらに、サージタンク33に一時的に貯えられることにより整流された空気は、吸気管36を通ってシリンダ13へ供給される。また、シリンダ13から排出された排気は、排気マニホールド37を通って過給機23のタービン部24へ送られた後、タービン部24から排気送出配管39を通ってサイレンサ38へ送られ、サイレンサ38から外部へ排出される。また、過給機23において、タービン部24に設けられたタービンホイールは、排気マニホールド37を通ってタービン部24へ送られた排気のエネルギーにより回転する。これに伴い、コンプレッサ部25に設けられたコンプレッサインペラが回転する。これにより、インレット配管26を通ってコンプレッサ部25に送られた空気の圧縮が行われる。
図7は、本発明の第2の実施例による鞍乗型車両におけるエンジン11およびその周辺の部品、すなわち、ラジエータ18、エアクリーナ51、過給機23、インタークーラ27、スロットルボディ32およびサージタンク52の配置、並びにこれらの部材間を接続する配管を示している。図8は、エンジン11とその周辺の部品を図7中の矢示VIII−VIII方向から見た図である。なお、図7および図8に示す第2の実施例において、上述した第1の実施例と同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
図7に示すように、本発明の第2の実施例による鞍乗型車両では、インタークーラ27とスロットルボディ32との間を接続するインタークーラアウト配管53がエンジン11の上側を通っている。具体的には、インタークーラアウト配管53の一端部は、図8に示すように、インタークーラ27の流出側チューブ30に形成された排出口30Aに接続されている。また、インタークーラアウト配管53は、インタークーラ27の排出口30Aから右上方へ伸長し、鞍乗型車両の左右方向のほぼ中間部に到達し、その箇所からエアクリーナ51のクリーナケースの下部に形成された凹部51A内に入る。続いて、インタークーラアウト配管53は、図7に示すように、クリーナケースの下部に形成された凹部51A内を後方へ伸長し、続いて、燃料タンク54の下部に形成された凹部54A内に入り、当該凹部54A内(シリンダヘッドカバー15と燃料タンク54との間)を下方に傾斜しつつ、後方へ伸長している。そして、インタークーラアウト配管53の他端部は、シリンダヘッドカバー15をほぼ超えた箇所でスロットルボディ32の吸入口に接続されている。インタークーラアウト配管53は、エアクリーナ51のクリーナケースの下部に形成された凹部51Aに入り始めた箇所からスロットルボディ32の吸入口32Aに至るまでの間、鞍乗型車両の左右方向のほぼ中間部を、鞍乗型車両の上面視において直線状に伸長している。このような経路を通るインタークーラアウト配管53の他端部と位置を合わせるべく、スロットルボディ32は、シリンダヘッド14またはシリンダヘッドカバー15の後方の領域において鞍乗型車両の左右方向のほぼ中間部に配置されている。さらに、このようなスロットルボディ32の位置に合わせるべく、スロットルボディ32の排出口と接続配管を介して接続されるサージタンク52の吸入口は、鞍乗型車両の左右方向のほぼ中間部に配置されている。
このような構成を有する本発明に第2の実施例による鞍乗型車両によっても、上述した本発明の第1の実施例による鞍乗型車両1と同様の作用効果を得ることができる。また、インタークーラアウト配管53がエンジン11の上方を通るので、鞍乗型車両の車幅を小さくすることができる。
なお、図7には、インタークーラアウト配管53を、エアクリーナ51に形成された凹部51A内、および燃料タンク54に形成された凹部54A内に配管する場合を示した。しかし、エアクリーナ51または燃料タンク54の配置や形状、大きさを調整して、インタークーラアウト配管53をエアクリーナ52の下方、またはエンジン11と燃料タンク54との間の隙間に配管することができる場合には、凹部51Aまたは凹部54Aを形成しなくてもよい。
また、上述した第1の実施例による鞍乗型車両1においては、図5に示すように、エアクリーナ22の排出口22Bを、クリーナケースの下面における右側に形成し、この排出口22Bと、コンプレッサ部25の吸気流入口25Aとをインレット配管26により接続する構成とした。この構成によれば、インレット配管26における湾曲部分を少なくすることができ、インレット配管26を流れる空気の圧力損失を減少させることができる。しかし、例えば、エアクリーナ22の下方における右側の領域をメインフレーム4が通過するため、この領域にインレット配管26を配管することが困難である等の事情がある場合には、図9に示すように、エアクリーナ61のクリーナケースの下面における左右方向中間部に排出口61Aを形成し、当該排出口61Aとコンプレッサ部25の吸気流入口25Aとの間をインレット配管62により接続してもよい。
また、上述した各実施例による鞍乗型車両においては、図5に示すように、インタークーラ27において、流入側チューブ29をコア28の右部に設け、流出側チューブ30をコア28の左部に設ける構成とした。この構成では、コア28内に設けられた各空気通路は左右方向に伸長しており、空気はコア28の右側から左側へ流れる。しかしながら、この構成に代えて、図10に示すインタークーラ71のように、流入側チューブ73をコア72の下部に設け、流出側チューブ74をコア72の上部に設ける構成を採用してもよい。この場合、コンプレッサアウト配管は、流入側チューブ73に形成された吸入口73Aに接続される。また、流出側チューブ74に形成された排出口74Aには、インタークーラアウト配管が接続される。また、この構成では、コア72内に設けられた各空気通路は上下方向に伸長し、空気はコア72の下側から上側へ流れる。
また、上述した各実施例による鞍乗型車両では、図5に示すように、コンプレッサ部25が右側となり、タービン部24が左側となるように過給機23を配置する場合を例にあげたが、図11に示すように、タービン部24が右側となり、コンプレッサ部25が左側となるように過給機23を配置してもよい。この場合には、過給機23の配置に合わせ、インレット配管26の配管、コンプレッサアウト配管31の配管、インタークーラ27の構成、インタークーラアウト配管34、スロットルボディ32の配置、排気マニホールド37の配管等を左右逆にする。
また、上述した各実施例による鞍乗型車両では、エンジン11が、車両の進行方向に直交するクランクシャフトに対して2つのシリンダを直列に並べたタイプのエンジンである場合を例にあげたが、エンジンの型式やシリンダの本数はこれに限定されない。本発明は、例えば、車両の進行方向に直交するクランクシャフトに対して4つのシリンダを直列に並べたタイプのエンジンを採用した鞍乗型車両にも適用することができる。また、本発明は単気筒のエンジンにも適用することができる。また、本発明は、自動二輪車に限らず、自動三輪車、四輪バギーといった他のタイプの鞍乗型車両にも適用することができる。
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鞍乗型車両もまた本発明の技術思想に含まれる。