以下、添付の図面を参照して、本発明の媒体送り装置の一実施形態である記録装置10について説明する。
図1および図2に基づいて、記録装置10の概略構成について説明する。記録装置10は、ロール体RPから媒体Pを繰り出しながら、媒体Pに対してインクジェット方式により画像を印刷するものである。また、記録装置10にセットされるロール体RPは、長尺状の媒体PがコアC(例えば紙管)に巻かれたものである。ロール体RPには、媒体Pの巻始め側の端部がコアCに貼付されている貼付タイプのロール体RPと、媒体Pの巻始め側の端部がコアCに貼付されていない非貼付タイプのロール体RPとがある。なお、媒体Pとしては、例えば、紙、フィルム、布など、様々な材質のものが用いられる。記録装置10にセット可能なロール体RPの最大幅、最大径(直径)、および最大重量は、それぞれ、例えば64インチ(約1.6m)、250mm、および80kgである。
記録装置10は、ロール駆動機構30と、キャリッジ駆動機構40と、媒体送り機構50と、プラテン55と、媒体検出部60と、コントローラー100とを備えている。
ロール駆動機構30は、ロール体RPを回転させる。ロール駆動機構30は、一対の回転ホルダー31と、ロール輪列32と、ロールモーター33と、ロール回転検出部34とを備えている。
一対の回転ホルダー31は、ロール体RPのコアCの両端にそれぞれ挿入され、ロール体RPを両側から保持する。回転ホルダー31は、図示しないホルダー支持部に回転可能に支持されている。一方の回転ホルダー31には、ロール輪列32のロール出力ギア(図示省略)と噛み合うロール入力ギア32bが設けられている。
ロールモーター33は、ロール体RPを回転させるためのトルクを、回転ホルダー31を介してロール体RPに付与する。ロールモーター33としては、例えば、DC(Direct Current)モーターを用いることができる。ロールモーター33からの駆動力がロール輪列32を介して回転ホルダー31に伝達されることにより、回転ホルダー31およびこれに保持されたロール体RPが回転する。ロールモーター33が正逆一方に回転することで、媒体Pがロール体RPから繰り出されるようにロール体RPが繰出し方向D1に回転する。また、ロールモーター33が正逆他方に回転することで、媒体Pがロール体RPに巻き戻されるようにロール体RPが巻戻し方向D2に回転する。
ロール回転検出部34は、ロール体RPの回転量を検出する。ロール回転検出部34は、ロールモーター33の出力軸に設けられた円盤状スケールと、フォトインターラプターとを備えたロータリーエンコーダーである。ロール回転検出部34からの出力パルスのカウント値として、ロール体RPの回転位置が表され、ロール体RPの回転位置の変化量が、ロール体RPの回転量となる。
キャリッジ駆動機構40は、記録ヘッド44が搭載されたキャリッジ41を、移動方向D3に往復移動させる。キャリッジ駆動機構40は、キャリッジ41と、キャリッジ軸42と、キャリッジモーター45と、キャリッジ位置検出部46とを備えている。
キャリッジ41は、キャリッジ軸42に沿って移動可能なように、キャリッジ軸42に支持されている。キャリッジ41には、複数色のインクタンク43が設けられている。インクタンク43には、図示しないインクカートリッジからチューブを介してインクが供給される。また、キャリッジ41の下面には、インクジェットヘッドである記録ヘッド44が設けられている。記録ヘッド44は、媒体Pに対し、インクをノズルから吐出する。
キャリッジモーター45は、キャリッジ41を、キャリッジ軸42に沿って移動方向D3に移動させる駆動源である。キャリッジモーター45の駆動力が、図示しないベルト機構を介してキャリッジ41に伝達されることにより、キャリッジ41が移動方向D3に移動する。
キャリッジ位置検出部46は、キャリッジ41の移動方向D3における位置を検出する。キャリッジ位置検出部46は、移動方向D3に沿って設けられたリニアスケールと、フォトインターラプターとを備えたリニアエンコーダーである。
媒体送り機構50は、ロール体RPから繰り出された媒体Pを送る。媒体送り機構50は、送りローラー51と、送り輪列52と、送りモーター53と、送り回転検出部54とを備えている。
送りローラー51は、駆動ローラー51aと、従動ローラー51bとを備えている。駆動ローラー51aおよび従動ローラー51bは、相互間に挟持した媒体Pを送る。駆動ローラー51aには、送り輪列52の送り出力ギア(図示省略)と噛み合う送り入力ギア52bが設けられている。
送りモーター53は、駆動ローラー51aを回転させる駆動源である。送りモーター53は、例えば、DCモーターである。送りモーター53からの駆動力が、送り輪列52を介して駆動ローラー51aに伝達されることにより、駆動ローラー51aが回転し、それに伴って、従動ローラー51bが回転する。送りモーター53が正逆一方に回転することで、移動方向D3に対して交差する送り方向D4に媒体Pが送られる。また、送りモーター53が正逆他方に回転することで、送り方向D4とは逆方向である逆送り方向D5に媒体Pが送られる。
送り回転検出部54は、駆動ローラー51aの回転量を検出する。送り回転検出部54は、送りモーター53の出力軸に設けられた円盤状スケールと、フォトインターラプターとを備えたロータリーエンコーダーである。送り回転検出部54からの出力パルスのカウント値として、駆動ローラー51aの回転位置が表され、駆動ローラー51aの回転位置の変化量が、駆動ローラー51aの回転量となる。
プラテン55は、媒体Pの送り経路Paにおいて駆動ローラー51aよりも下流側において、記録ヘッド44と対向するように設けられている。プラテン55には、上下に貫通する吸引孔55aが複数形成されている。また、プラテン55の下方には、吸引ファン56が設けられている。吸引ファン56が作動することによって、吸引孔55a内が負圧となり、プラテン55上の媒体Pが吸引保持される。プラテン55上に吸引保持された媒体Pに対して、記録ヘッド44からインクが吐出される。
媒体検出部60は、送り経路Paにおいて送りローラー51よりも上流側の検出位置において、媒体Pの有無を検出する。媒体検出部60は、例えば反射型のフォトセンサーである。
コントローラー100は、記録装置10の各部を統括制御する。コントローラー100は、CPU101(Central Processing Unit)と、ROM102(Read Only Memory)と、RAM103(Random Access Memory)と、PROM104(Programmable ROM)と、ASIC105(Application Specific Integrated Circuit)と、モータードライバー106と、バス107とを備えている。
また、コントローラー100は、外部装置であるコンピューターCOMと通信可能に接続されている。コントローラー100は、コンピューターCOMから記録ジョブを受信すると、受信した記録ジョブに基づいて記録装置10の各部を制御する。これにより、記録装置10は、ドット形成動作と送り動作とを交互に繰り返し行う。ここで、ドット形成動作とは、キャリッジ41を移動方向D3に移動させながら、記録ヘッド44からインクを吐出させて媒体P上にドットを形成する動作であり、主走査ともいう。送り動作とは、媒体Pを送り方向D4に送る動作であり、副走査ともいう。
コントローラー100は、送り動作時に、送り回転検出部54の検出結果に基づいて、送りモーター53を制御する。また、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに掛かるテンションTが大きい場合、送りローラー51が媒体Pに対して空回りしてしまい、所望の送り量で媒体Pを送ることができない。そのため、コントローラー100は、送り動作時に、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに掛かるテンションTを減少させるトルクを、ロールモーター33に発生させる。
コントローラー100は、送り動作時にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに掛かったテンションTを取得する。コントローラー100により取得されたテンションTは、ロールモーター33の制御に用いられ、また、後述するロールエンド判定処理に用いられる。以下、コントローラー100がテンションTを算出する方法について説明する。
コントローラー100は、記録ジョブの開始前に、媒体Pを弛ませた状態で、送り動作時と同じ回転速度および同じ駆動時間で、送りモーター53を駆動し、送りモーター53に流れた電流である基準電流Ibを、所定の周期、例えば1msec周期で算出する。所定の周期でk回目に算出された基準電流Ibを、Ib(k)と表す。また、コントローラー100は、各送り動作時に、送りモーター53に流れた電流である送り時電流Iaを、基準電流Ibの算出時と同じ周期で、この場合1msec周期で、算出する。所定の周期でk回目に算出された送り時電流Iaを、Ia(k)と表す。
ここで、送りモーター53に流れた電流Iは、(1)式により算出可能である。
I=(E×Duty−Ke×ω)/RR (1)
E:電源電圧
Duty:送りモーター53に出力されたPWM制御値
Ke:送りモーター53の逆起電力定数
ω:送りモーター53の回転速度
RR:送りモーター53の抵抗
なお、送りモーター53の逆起電力定数Keや抵抗RRは、温度により変動するため、温度に応じてこれらを補正してもよい。
コントローラー100は、送り時電流Ia(k)から基準電流Ib(k)を減算したテンション電流Ic(k)を算出し、テンション電流Ic(k)の平均値である平均テンション電流Idを算出する。
コントローラー100は、(2)式により、平均テンション電流IdからテンションTを算出する。
T=Id×Kt×Z/Rk (2)
Kt:送りモーター53のトルク定数
Z:送り輪列52の減速比
Rk:駆動ローラー51aの半径
なお、テンションTの算出方法は、これに限定されるものではなく、例えば、コントローラー100は、テンション電流Ic(k)のピーク値であるピークテンション電流Ieを算出し、平均テンション電流Idおよびピークテンション電流IeからテンションTを算出してもよい。さらに、コントローラー100は、ロール体RPと送りローラー51との間に設けられたテンション測定器の測定結果に基づいて、テンションTを取得してもよい。
ところで、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった後も、記録ヘッド44がインクを吐出し続けると、インクがプラテン55上に吐出されるため、プラテン55が汚れるばかりか、吸引ファン56等の故障を招くおそれがある。また、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった後も、記録ヘッド44がインクを吐出し続けると、媒体Pの同じ箇所にインクが吐出されるため、媒体P上に溜まったインクが記録装置10内に垂れてしまい、記録装置10の故障を招くおそれがある。このため、コントローラー100は、ロール体RPがロールエンドであると判定した場合には、記録ジョブを停止するように記録装置10の各部を制御する。
具体的には、コントローラー100は、媒体検出部60により検出位置に媒体Pがないことが検出された場合に、ロール体RPがロールエンドであると判定する。非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合には、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れ、媒体検出部60の検出位置を通過するため、媒体検出部60により検出位置に媒体Pがないことが検出される。このため、コントローラー100は、ロール体RPがロールエンドであると判定する。一方、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合には、媒体Pの巻始め側端部がコアCから離れないため、媒体検出部60により検出位置に媒体Pがないことが検出されない。このため、コントローラー100は、ロール体RPがロールエンドであるとは判定しない。そこで、コントローラー100は、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合にも、ロールエンドであると判定できるように、媒体検出部60の検出結果に基づくロールエンドの判定とは別に、以下に述べるロールエンド判定処理を行っている。
まず、ロールエンド判定処理の第1参考例について説明する。第1参考例のロールエンド判定処理では、コントローラー100は、送りモーター53が所定のトルクを出力しても駆動ローラー51aが回転しないと判断した場合に、ロール体RPがロールエンドであると判定する。貼付タイプのロール体RPでは、ロール体RPがロールエンドになると、送りモーター53が所定のトルクを出力しても、媒体Pの巻始め側端部がコアCから離れず、媒体Pがそれ以上送られないため、駆動ローラー51aが回転しなくなる。このため、コントローラー100は、送りモーター53が所定のトルクを出力しても駆動ローラー51aが回転しないと判断し、ロール体RPがロールエンドであると判定する。
しかしながら、媒体Pのシワ対策等のために駆動ローラー51aと従動ローラー51bとの挟持力を弱くした場合には、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになっても、駆動ローラー51aが空回りする。このため、第1参考例のロールエンド判定処理では、コントローラー100が、送りモーター53が所定のトルクを出力しても駆動ローラー51aが回転しないとは判断せず、ロール体RPがロールエンドであると判定しないおそれがある。
続いて、ロールエンド判定処理の第1参考例を改良した第2参考例について説明する。第2参考例のロールエンド判定処理では、コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足していると判断した場合に、ロール体RPがロールエンドであると判定する。すなわち、上述したように、駆動ローラー51aと従動ローラー51bとの挟持力を弱くした場合には、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになると、駆動ローラー51aが空回りする一方、ロール体RPは回転しなくなる。このため、コントローラー100が、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足していると判断し、ロール体RPがロールエンドであると判定する。このように、第2参考例のロールエンド判定処理は、駆動ローラー51aと従動ローラー51bとの挟持力を弱くした場合のロールエンド判定方法として有効である。
ところが、第2参考例のロールエンド判定処理では、新たな課題が生じる。すなわち、ロール体RPが撓んで偏心していると、その重心位置が上方にきた際に、ロール体RPが独りでに例えば約半周分回転し、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに弛みが生じる場合がある。なお、ロール体RPが独りでに回転するとは、送りローラー51による媒体Pの送り量に相当するロール体RPの回転量を超えて、ロール体RPが回転することを意味する。この場合、ロール体RPの約半周分の弛みが解消するまでは、送りローラー51が回転して媒体Pが送られても、ロール体RPが回転しない。このため、第2参考例のロールエンド判定処理では、コントローラー100が、ロール体RPがロールエンドになっていないにも拘らず、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足していると判断し、誤ってロールエンドであると判定してしまう。
また、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになり、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れると、送りローラー51が回転しても、ロール体RPが回転しなくなる。このため、第2参考例のロールエンド判定処理では、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れた直後に実行されるロールエンド判定処理において、ロール体RPがロールエンドであると判定され、記録ジョブが停止する。しかしながら、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れた直後の時点では、媒体Pの巻始め側の端部が送りローラー51を通過しておらず、いまだ媒体Pを送りながら記録を行うことが可能である。このように、第2参考例のロールエンド判定処理では、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合に、記録を行うことが可能な時点で記録ジョブが停止してしまうため、媒体Pを有効に活用することができない。
本実施形態のロールエンド判定処理は、このような第2参考例のロールエンド判定処理の課題を解決するものである。すなわち、以下に述べるように、本実施形態のロールエンド判定処理は、送りモーター53の作動中に媒体Pが張っていると判断し、また、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足していると判断した場合に、ロール体RPがロールエンドであると判定するものである。
図3に基づいて、本実施形態のロールエンド判定処理に用いられる履歴バッファー110について説明する。履歴バッファー110は、RAM103等のメモリーに設けられている。履歴バッファー110は、複数(例えば128個)の記憶領域から成るリングバッファー構造を有している。各記憶領域には、送り位置、ロール位置および検出テンションが格納される。ここで、送り位置とは、送り回転検出部54により検出された駆動ローラー51aの回転位置である。ロール位置とは、ロール回転検出部34により検出されたロール体RPの回転位置である。検出テンションとは、コントローラー100により算出されたテンションTである。履歴カウンターの値がm(mは、ここでは0以上127以下の整数)である場合に、送り位置、ロール位置および検出テンションが格納される記憶領域を、記憶領域[m]と表す。なお、履歴カウンターの値は、記録ジョブの開始前に0クリアされ、ロールエンド判定処理ごとにカウントアップされる。
図3を参照しつつ、図4に基づいて、本実施形態のロールエンド判定処理について説明する。コントローラー100は、各送り動作の開始前に、ロールエンド判定処理を実行する。
コントローラー100は、ステップS1において、履歴バッファー110の記憶領域[s]に、現在の送り位置と、現在のロール位置と、最新の検出テンション、すなわち前回の送り動作時に取得された検出テンションとを格納する。ここで、sは、現在カウンター、すなわち現在の履歴カウンターの値を表す。以下、記憶領域[s]に格納した送り位置、ロール位置、および検出テンションを、それぞれ、現在送り位置、現在ロール位置、および現在検出テンションという。図3に示す例では、現在カウンターは「9」である。また、現在送り位置、現在ロール位置、および現在検出テンションは、それぞれ、送り値(n)、ロール位置(n)、および検出テンション(n)である。なお、送り位置(n)は、n回目の送り動作の開始前に実行されたロールエンド判定処理で履歴バッファー110に格納された送り位置を意味する。ロール位置(n)および検出テンション(n)についても同様である。
コントローラー100は、ステップS2において、履歴バッファー110の記憶領域[t]から、送り位置と、ロール位置と、検出テンションとを取得する。ここで、tは、基点カウンター、すなわち、現在の履歴カウンターからトレースカウンターを引いた差を表す。トレースカウンターとは、媒体Pが所定の長さ(例えば、記録ヘッド44のノズル列の長さ)送られるのに必要な送り動作の回数に相当し、記録ジョブごとに設定された記録モードに応じて定まる値である。以下、記憶領域[t]から取得した送り位置、ロール位置、および検出テンションを、それぞれ、基点送り位置、基点ロール位置、および基点検出テンションという。図3に示す例では、トレースカウンターは「6」であり、基点カウンターは「3」である。また、基点送り位置、基点ロール位置、および基点検出テンションは、それぞれ、送り位置(n−6)、ロール位置(n−6)、および検出テンション(n−6)である。
コントローラー100は、ステップS3において、履歴カウンターの値をカウントアップする。
コントローラー100は、ステップS4において、現在送り位置から基点送り位置を引いた差を、送り回転量として算出する。
コントローラー100は、ステップS5において、現在ロール位置から基点ロール位置を引いた差を、ロール回転量として算出する。
ここで、上述したように、ロール体RPが独りでに回転したために、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに弛みが生じると、その弛みが解消されるまでは、送りモーター53の作動中に媒体Pが張らなくなるため、コントローラー100が、誤ってロールエンドであると判定するおそれがある。そこで、本実施形態のロールエンド判定処理では、コントローラー100が、送りモーター53の作動中に媒体Pが張っているか否かを判断し、媒体Pが張っていないと判断した場合には、ロール体RPがロールエンドであると判定しないようにしている。
送りモーター53の作動中に媒体Pが張っていない場合には、基点検出テンションおよび現在検出テンションが小さくなる。そのため、基点検出テンションおよび現在検出テンションが所定のテンション閾値よりも小さい場合には、送りモーター53の作動中に媒体Pが張っていないといえる。
そこで、コントローラー100は、ステップS6において、送りモーター53の作動中に媒体Pが張っているか否かの判断として、基点検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件、および現在検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件が成立するか否かを判断する。なお、ロールエンド判定の禁止条件には、この2つに加え、履歴カウンターがトレースカウンター以下であるとの禁止条件が含まれる。履歴カウンターがトレースカウンター以下であるとの禁止条件を含めたのは、履歴カウンターがトレースカウンター以下であると、履歴カウンターからトレースカウンターを引いた差である基点カウンターの記憶領域[t]に、送り位置等が格納されていないためである。
コントローラー100は、少なくとも1つの禁止条件が成立すると判断した場合(S6;Yes)、ロールエンド判定処理を終了する。コントローラー100は、3つの禁止条件がいずれも成立しないと判断した場合(S6;No)、ステップS7に進む。
コントローラー100は、ステップS7において、ロール回転量を、送り回転量に換算した換算ロール回転量を算出する。すなわち、コントローラー100は、ロール回転量に、ロール体RPの径(ロール径)と、所定の換算係数とを乗算することにより、換算ロール回転量を算出する。ここで、ロール体RPの径は、例えば、記録ジョブの開始前に、送りモーター53のみを作動させた場合に、送り回転検出部54により検出された駆動ローラー51aの回転量と、既知である駆動ローラー51aの径と、ロール回転検出部34により検出されたロール体RPの回転量とに基づいて、算出可能である。また、換算係数は、ロール回転検出部34のロータリーエンコーダーと送り回転検出部54のロータリーエンコーダーとの分解能の違い、および駆動ローラー51aの径によって定まる値である。
ここで、上述したように、ロール体RPがロールエンドになると、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足するため、送り回転量に比べ、換算ロール回転量が小さくなる。このため、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、所定の回転量閾値よりも大きい場合には、ロール体RPの回転が不足しているといえる。
そこで、コントローラー100は、ステップS8において、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かの判断として、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、所定の回転量閾値よりも大きいか否かを判断する。コントローラー100は、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きいと判断した場合(S8;Yes)、ステップS9に進む。一方、コントローラー100は、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値以下であると判断した場合(S8;No)、ロールエンド判定処理を終了する。
コントローラー100は、ステップS9において、ロール体RPがロールエンドであると判定し、記録ジョブを停止する。その後、コントローラー100は、ロールエンド判定処理を終了する。なお、コントローラー100は、ロール体RPがロールエンドであると判定した場合に、記録ジョブを停止することに加え、操作パネル(図示省略)にエラーメッセージを表示させるなど、エラー報知処理を行うことが好ましい。
このように、本実施形態のロールエンド判定処理では、コントローラー100は、3つの禁止条件がいずれも成立しないと判断すると共に(S6;No)、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きいと判断した場合に(S8;Yes)、ロール体RPがロールエンドであると判定する。
貼付タイプのロール体RPがロールエンドになると、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張った状態となり、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足する。このため、基点検出テンションおよび現在検出テンションは、テンション閾値以上となり、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きくなる。したがって、コントローラー100は、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった際に、履歴カウンターがトレースカウンター以下であるとの禁止条件が成立しない場合には、いずれの禁止条件も成立しないと判断する。また、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きいと判断する。その結果、コントローラー100は、ロール体RPがロールエンドであると判定する。
一方、ロール体RPが独りでに回転したために、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに弛みが生じた場合には、弛みが解消するまでは、送りモーター53の作動中にロール体RPが回転しなくなるが、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張っていない状態となる。このため、基点検出テンションおよび現在検出テンションの少なくとも一方は、テンション閾値より小さくなる。したがって、コントローラー100は、基点検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件、および現在検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件、の少なくとも一方が成立すると判断する。これにより、コントローラー100は、ステップS7以降の各ステップを行うことなく、すなわち、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きいか否かを判断するステップS8を実行することなく、ロールエンド判定処理を終了する。したがって、本実施形態のロールエンド判定処理によれば、ロール体RPが独りでに回転した場合にも、コントローラー100が、誤ってロール体RPがロールエンドであると判定してしまうことを抑制することができる。
また、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになり、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れると、送りモーター53が作動してもロール体RPが回転しなくなるが、それと共に、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張っていない状態となる。このため、コントローラー100は、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れた後に実行されるロールエンド判定処理において、現在検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件が成立すると判断する(S6;Yes)。このため、コントローラー100は、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きいか否かを判断するステップS8を実行することなく、ロールエンド判定処理を終了する。これにより、非貼付タイプのロール体RPの場合、媒体Pの巻始め側の端部がコアCから離れた後に実行されるロールエンド判定処理によってはロールエンドであると判定されず、媒体Pの巻始め側の端部が媒体検出部60の検出位置を通過してはじめて、ロールエンドであると検出される。したがって、本実施形態のロールエンド判定処理によれば、媒体Pの巻始め側の端部が、媒体検出部60の検出位置を通過するまでは、媒体Pを送りながら記録を行うことができ、媒体Pを有効に活用することができる。なお、媒体Pをできるだけ有効に活用する観点から、媒体検出部60の検出位置は、送りローラー51の上流側近傍であることが好ましい。
以上のように、本実施形態の記録装置10は、回転ホルダー31と、送りローラー51と、送りモーター53と、コントローラー100とを備えている。回転ホルダー31は、媒体Pが巻かれたロール体RPを保持する。送りローラー51は、ロール体RPから繰り出された媒体Pを送る。送りモーター53は、送りローラー51を駆動する。コントローラー100は、ロール体RPがロールエンドであるか否かを判定するロールエンド判定処理を行う。コントローラー100は、ロールエンド判定処理において、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張っているか否かを判断する。また、コントローラー100は、ロールエンド判定処理において、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを判断する。そして、コントローラー100は、ロールエンド判定処理において、媒体Pが張っていると判断し、ロール体RPが不足していると判断した場合に、ロール体RPがロールエンドであると判定する。
この構成によれば、貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合には、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張り、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足する。このため、コントローラー100により、媒体Pが張っていると判断され、ロール体RPの回転が不足していると判断され、その結果、ロール体RPがロールエンドであると判定される。一方、ロール体RPが独りでに回転し、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに弛みが生じた場合には、媒体Pの弛みが解消するまでは、送りモーター53の作動中にロール体RPが回転しなくなるが、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張らなくなる。このため、コントローラー100により、媒体Pが張っていないと判断され、その結果、ロール体RPがロールエンドであると判定されない。したがって、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pに弛みが生じた場合に、誤ってロールエンドであると判定することを抑制することができ、ロール体RPがロールエンドになったことを適切に判定することができる。
また、本実施形態の記録装置10は、ロール体RPの回転量を検出するロール回転検出部34をさらに備える。コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを、送りモーター53の作動中にロール回転検出部34により検出されたロール体RPの回転量であるロール回転量に基づいて判断する。
この構成によれば、コントローラー100により、送りモーター53の作動中にロール回転検出部34により検出されたロール回転量に基づいて、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かが判断される。これにより、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを適切に判断することができる。
また、本実施形態の記録装置10は、送りローラー51を構成する駆動ローラー51aの回転量を検出する送り回転検出部54をさらに備える。コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを、送りモーター53の作動中にロール回転検出部34により検出されたロール回転量と、送りモーター53の作動中に送り回転検出部54により検出された駆動ローラー51aの回転量である送り回転量とに基づいて判断する。
この構成によれば、コントローラー100により、送りモーター53の作動中にロール回転検出部34により検出されたロール回転量に加えて、送りモーター53の作動中に送り回転検出部54により検出された送り回転量に基づいて、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かが判断される。これにより、実際の駆動ローラー51aの回転量に対して、ロール体RPの回転が不足しているか否かを判断することができる。例えば、ロール体RPの回転負荷が大きいために、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体PのテンションTが適正値よりも大きくなった場合には、ロール体RPの回転量が少なくなるが、この場合、駆動ローラー51aの回転量も少なくなる。このため、コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているとは判断せず、誤ってロールエンドであると判定することを抑制することができる。
また、本実施形態の記録装置10では、コントローラー100は、ロール回転量を送り回転量に換算した換算ロール回転量を算出し、換算ロール回転量と送り回転量との差に基づいて、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを判断する。
この構成によれば、コントローラー100により、ロール回転量を、送り回転量に換算した換算ロール回転量が算出される。これにより、ロール回転量と送り回転量とを適切に比較することができる。
なお、コントローラー100は、送り回転量をロール回転量に換算した換算送り回転量を算出し、換算送り回転量とロール回転量との差に基づいて、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを判断してもよい。
また、本実施形態の記録装置10では、送りローラー51が、媒体Pを送る送り動作を複数回行う。コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを、複数回の送り動作中にロール回転検出部34により検出されたロール回転量と、複数回の送り動作中に送り回転検出部54により検出された送り回転量とに基づいて判断する。
この構成によれば、コントローラー100により、複数回の送り動作中にロール回転検出部34により検出されたロール回転量と、複数回の送り動作中に送り回転検出部54により検出された送り回転量とに基づいて、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かが判断される。このため、1回の送り動作によるロール体RPの回転量および駆動ローラー51aの回転量が小さい場合にも、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かを適切に判断することができる。
また、本実施形態の記録装置10では、コントローラー100が、各送り動作の開始前に、ロールエンド判定処理を行う。
この構成によれば、ロール体RPがロールエンドになったことを迅速に判定することができる。
また、本実施形態の記録装置10は、媒体Pの送り経路Paにおいて送りローラー51よりも上流側の検出位置で媒体Pの有無を検出する媒体検出部60をさらに備える。コントローラー100は、ロールエンド判定処理とは別に、媒体検出部60により検出位置に媒体Pがないことが検出された場合に、ロール体RPがロールエンドであると判定する。
この構成によれば、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合には、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足するが、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張らなくなる。このため、コントローラー100により、ロールエンド判定処理において、媒体Pが張っていないと判断され、その結果、ロール体RPがロールエンドであると判定されない。一方、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合には、媒体PがコアCから離れ、媒体検出部60の検出位置を通過するため、媒体検出部60により検出位置に媒体Pがないことが検出される。このため、コントローラー100により、ロール体RPがロールエンドであると判定される。このように、非貼付タイプのロール体RPがロールエンドになった場合には、ロールエンド判定処理によってはロールエンドであると判定されず、媒体Pの巻始め側の端部が検出位置を通過してはじめて、ロールエンドであると判定される。
なお、回転ホルダー31は、「保持部」の一例である。送りローラー51は、「送り部」の一例である。送りモーター53は、「送り駆動部」の一例である。コントローラー100は、「制御部」の一例である。換算ロール回転量および換算送り回転量は、「換算回転量」の例である。
本発明は上記した実施形態に限定されず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の構成を採用可能であることは言うまでもない。例えば、本実施形態は、以下のような形態に変更することができる。
コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かの判断として、送り回転量から換算ロール回転量を引いた差が、回転量閾値よりも大きいか否かを判断するが、これに限定されるものではない。例えば、コントローラー100は、送り回転検出部54により検出された送り回転量に代えて、駆動ローラー51aの回転量の目標値を用いてもよい。また、コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPの回転が不足しているか否かの判断として、ロール回転量が、所定の閾値よりも小さいか否かを判断してもよい。
コントローラー100は、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張っているか否かの判断として、基点検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件、および現在検出テンションがテンション閾値よりも小さいとの禁止条件が成立するか否かを判断するが、これに限定されるものではない。例えば、これら2つの禁止条件のうち、いずれか一方のみを禁止条件としてもよい。また、これらの2つの禁止条件に加えて、或いは2つの禁止条件に代えて、基点検出テンションおよび現在検出テンション以外の検出テンションが、テンション閾値よりも小さいとの禁止条件が成立するか否かを判断してもよい。さらには、ロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pの弛み量を検出する弛み検出センサーを設け、弛み検出センサーの検出結果に基づいて、送りモーター53の作動中にロール体RPと送りローラー51との間の媒体Pが張っているか否かを判断してもよい。
駆動ローラー51aと従動ローラー51bとの挟持力を切替え可能な場合には、コントローラー100は、挟持力に応じて、本実施形態のロールエンド判定処理と第1参考例のロールエンド判定処理とを使い分けてもよい。すなわち、コントローラー100は、駆動ローラー51aと従動ローラー51bとの挟持力が弱い場合には、本実施形態のロールエンド判定処理を行い、挟持力が強い場合には、第1参考例のロールエンド判定処理を行ってもよい。
本発明の媒体送り装置の適用例としては、インクジェット方式の記録装置に限定されるものではなく、例えば、ドットインパクト式の記録装置、電子写真式の記録装置であってもよい。さらに、記録装置に限定されるものではなく、例えば、媒体を送りながら媒体に乾燥処理を施す乾燥装置や、媒体を送りながら媒体に表面処理を施す表面処置装置に、本発明の媒体送り装置を適用してもよい。また、媒体にそのような処理を施す装置に限定されず、単に媒体を送るだけの装置であっても構わない。