JP6647804B2 - 貝又はホヤの調味ソースの製造方法 - Google Patents
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オイスターソースなどの調味ソースは、料理の味を決める重要な役割を果たしているが、例えば、オイスターソースは、中国を発祥の地とする塩漬けした牡蠣を発酵させた上澄み液であるが、現在では、牡蠣の煮汁を煮詰めたものや牡蠣の抽出液を濃縮したエキスに糖類、糊料などを加えて作られるのが一般的になっている。
従来より、このような調味ソースは、材料を加熱した煮汁や、濃縮した抽出エキスが用いられている。
しかしながら、このような牡蠣やホヤのむき身を加熱した煮汁や、濃縮した抽出エキスを用いたソースでは、特定成分の味が強調されて、生で食べた時の牡蠣やホヤの本来の旨味、風味をそのままソースにしたような深みのある味わいは得られなかった。
しかしながら、特許文献3に記載された乾燥粉末は、単にホヤを粉末化したものであるため、ホヤの旨みを引き出すために料理の段階で煮出す工程が必要となり、ソース材料としては使い勝手が悪いものとなっている。
そのため、生で食べた時の牡蠣やホヤの旨味、風味を強く感じながら、貝類やホヤをそのまま調味ソースとしたような深みのある味わいの調味物が求められている。
以下、本発明による貝又はホヤの調味ソースの製造方法を実施するための形態の具体例を、図を参照しながら詳細に説明する。
本発明に係る貝又はホヤの調味ソースの製造方法に用いる貝又はホヤは、食用に供することのできるものであれば、特に種類、産地、季節を問うものではないが、例えば、貝としては、牡蠣、あさり、ハマグリ、ツブ、タイラギ、ホッキ、ホタテなどが挙げられ、ホヤとしては、マボヤ、アカボヤ、シロボヤ、イタボヤなどが挙げられるが、貝としては牡蠣が好ましく、ホヤとしてはマボヤが好ましい。
牡蠣は、オイスターソースとして和洋中いずれの料理にも用いることができるので好ましく、特に、三陸海岸などで3〜4月に採れる、完熟牡蠣と呼ばれる産卵を控え栄養をたっぷりと蓄えた牡蠣を用いることは、特に風味豊かなオイスターソースとすることができるので好ましい。
また、夏場のホヤは甘みと旨みが増して、風味豊かな調味ソースとすることができるので好ましい。
殻を除去した貝又はホヤのむき身は、洗浄(ステップ2)後に、急速冷凍される(ステップ3)。
ステップ1の貝又はホヤの殻の除去からステップ3の急速冷凍までの工程は、貝又はホヤが水揚げされた即日に行なわれることが貝又はホヤのむき身の鮮度を保つ上で好ましい。
急速冷凍するための冷凍機の機種及びその運転条件は、貝又はホヤのむき身が十分な凍結状態になる条件であれば、特に特定するものではないが、−40℃〜−20℃で行うことが、貝又はホヤの鮮度と風味を保つ上で好ましい。
貝又はホヤのむき身を冷凍状態で粉砕することにより、粉砕直後の粉砕物は粒状となるが、この貝又はホヤのむき身の粉砕物は、1mm以下程度の大きさまで粉砕することが、次工程の酵素分解工程を効率的に進めるうえで好ましい。
貝又はホヤのむき身の粉砕物は、30℃を越える温度になると鮮度が低下し易くなるため、冷凍物粉砕工程においては、貝又はホヤのむき身の粉砕物の温度を30℃以下にすることを要す。
温度上昇の激しい粉砕装置を用いる場合には、内容物の温度が30℃を越える温度となることを抑止するため、内容物の冷却設備を備えることや、ドライアイス等の冷却剤と共に粉砕するなどを行うことが好ましい。
熟成工程は、更なる酵素分解とソース主材料を熟成し、内容物の混合状態を安定化させてコクを出すための主材料の熟成のための工程であり、15℃〜25℃の温度で12時間〜24時間の間行うことが好ましい。
熟成工程は、上記温度範囲を維持できれば、無攪拌の静置状態でもよく、低速撹拌を行ってもよい。
分解を終了した貝又はホヤのむき身の粉砕物は、流動性を有する固液混合物となるが、分解が不十分で形状の大きな固形物や原料の貝又はホヤから混入した貝又はホヤの殻片、異物等を含む。
これらの大形状物を除くための分離工程は、メッシュフィルター等の濾過装置を用いることができ、メッシュフィルターを用いる場合のスクリーンは150メッシュ〜250メッシュであることが好ましく、特には200メッシュとすることが、貝又はホヤの調味ソースとしたときの舌触り感の点で特に好ましい。
酵素分解工程の途中に分離工程を設けることによって、分解工程で分解しきれずに残った大型固形分を除去できるので、貝又はホヤのむき身の粉砕物は、メッシュを通過できる程度の小型の固形分のみとなり、次の熟成工程においてそれが更に酵素分解され、良好な食感を与える貝又はホヤのむき身流動化物となる。
製造過程で混入した異物や金属を除くための異物除去工程は、メッシュストレーナー及びマグネチックストレーナーを備え、貝又はホヤのむき身流動化物から異物や金属を除去する。
主材料殺菌工程における加熱により、酵素分解工程において添加された分解酵素の失活もなされる。殺菌と分解酵素の失活を同時に行うことで、貝又はホヤのむき身流動化物を加熱する時間が短縮され、貝又はホヤの風味を損なうことをなくすことができる。
調理工程は、殺菌を終えた貝又はホヤのむき身流動化物に味、粘度、色調等を調整するための副材料を添加し調理する工程である。
調理工程では、調味、粘度調整のために、通常、50〜90℃の温度で5〜20分間の加熱調理が行われる。
気仙沼湾で水揚げした牡蠣を、水揚げした日のうちに牡蠣打ち(殻の除去)、洗浄を行い、牡蠣のむき身を−30℃で急速冷凍した。次いで、凍結させた牡蠣のむき身を凍結状態のまま粉砕機にかけて牡蠣のむき身の粉砕物を作製した。粉砕後の牡蠣のむき身の粉砕物の温度は10℃であった。
作製した牡蠣のむき身の粉砕物を攪拌機、温度調節用ジャケット付きの分解槽に投入し、投入量に対し1重量%相当のプロテアーゼを添加して、低速で撹拌しながら内温を15℃〜25℃の温度に調整し、15時間酵素分解反応を行わせ、牡蠣のむき身流動化物を得た。
次に、分解槽の牡蠣のむき身流動化物を200メッシュスクリーンのメッシュフィルターにかけて大形固形分を除き熟成槽に移送し、20〜30℃の温度で20時間の間、間欠的に低速撹拌混合して熟成した。熟成槽での熟成工程を終了した牡蠣のむき身の流動化物は、60メッシュストレーナー及び11000ガウスのマグネットフィルターを通過させて大形異物及び金属異物を除去した後、プレート式殺菌装置に移送し、殺菌温度130℃で10秒間の殺菌処理を行った。殺菌処理を行った主材料の牡蠣のむき身流動化物に副材料として、醤油、魚醤、マヨネーズを添加して、90℃で10分間の加熱調理を行ってオイスターソースを調製し、ガラス製の容器に詰め、殺菌機で112℃、80分間加熱殺菌して試作品Aを得た。
実施例同様にして牡蠣打ち、洗浄した牡蠣のむき身を80℃の熱水で15分間煮だした後、煮だし液を100メッシュスクリーンで濾過し、100℃、20分間常圧濃縮して牡蠣エキスを作製した。得られた牡蠣エキスを実施例同様に異物除去、殺菌処理を行い、実施例と同量の副材料を用いてオイスターソースを調製して容器に充填し、実施例と同様の条件で殺菌処理を行い、比較品Bを得た。
上記試作品A、比較品Bのオイスターソースを用いて、タコとアスパラガスのペペロンチーノ(パスタ料理の味付け)、鳥もも肉と野菜のグリル(グリル料理の肉の下処理)、牛肉とクレソンのサラダ(サラダ料理のドレッシング材料)筑前煮(和食料理の味付け)の4種の料理を調理し、高度に訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。
項目 マッチング:オイスターソースが料理の旨味を引き立たせているか
旨味:牡蠣の旨味が感じられるか
風味:牡蠣の風味が感じられるか
評点 3点:非常に良い
2点:良い
1点:やや良い
0点:良くない
結果を下表に示した。
これにより、本発明の貝又はホヤの調味ソースの製造方法によるオイスターソースは、従来からの製造方法によるオイスターソースに比べ、牡蠣の旨味・風味に優れ、各種料理と優れた相性を有することが分かる。
気仙沼湾で採れたホヤを、水揚げした日のうちに殻剥き(殻の除去)、洗浄を行い、ワタを付けたままのホヤのむき身を−30℃で急速冷凍した。次いで、凍結させたホヤのむき身を凍結状態のまま粉砕機にかけてホヤのむき身の粉砕物を作製した。粉砕後のホヤのむき身の粉砕物の温度は5℃であった。
作製したホヤのむき身の粉砕物を攪拌機、温度調節用ジャケット付きの分解槽に投入し、投入量に対し1重量%相当のプロテアーゼを添加して、低速で撹拌しながら内温を15℃〜25℃の温度に調整し、15時間酵素分解反応を行わせ、ホヤのむき身流動化物を得た。
次に、分解槽のホヤのむき身流動化物を200メッシュスクリーンのメッシュフィルターにかけて大形固形分を除き熟成槽に移送し、20〜30℃の温度で20時間の間、間欠的に低速撹拌混合して熟成した。熟成槽での熟成工程を終了したホヤのむき身の流動化物は、60メッシュストレーナー及び11000ガウスのマグネットフィルターを通過させて大形異物及び金属異物を除去した後、プレート式殺菌装置に移送し、殺菌温度130℃で10秒間の殺菌処理を行った。殺菌処理を行った主材料のホヤのむき身流動化物に副材料として、醤油、魚醤、マヨネーズを添加して、90℃で10分間の加熱調理を行ってホヤの調味ソースを調製し、ガラス製の容器に詰め、殺菌機で112℃、80分間加熱殺菌して試作品Cを得た。
上記試作品Cのホヤの調味ソースを用いて、アスパラガスのペペロンチーノ(パスタ料理の味付け)、炊き込みご飯(和食料理の味付け)の2種の料理を調理し、高度に訓練されたパネラー10名による官能評価を行った。
その結果、試作品Cのホヤの調味ソースは、ホヤの調味ソースが料理の旨味を引き立たせているかのマッチングチェック、ホヤの旨味が感じられるかの旨味チェック、ホヤの風味が感じられるかの風味チェックのいずれにおいても、各パネラーの平均点が2.8以上となり、ホヤの旨味・風味に優れ、各種料理と優れた相性を有することが分かった。
Claims (3)
- 殻から外したむき身の貝又はホヤを急速冷凍する急速冷凍工程と、
前記急速冷凍工程で得られたむき身の貝又はホヤの冷凍物を粉砕する冷凍物粉砕工程と、
前記冷凍物粉砕工程で得られたむき身の貝又はホヤの粉砕物に分解酵素を添加して、10℃〜30℃の温度で酵素分解する酵素分解工程と、
前記酵素分解工程で得られたむき身の貝又はホヤの流動化物から製造過程で混入した異物や金属を除くために60メッシュストレーナー及びマグネチックストレーナーを備える異物除去工程と、
前記異物除去工程を通過したむき身の貝又はホヤの流動化物を殺菌する主材料殺菌工程と、
前記主材料殺菌工程後のむき身の貝又はホヤの流動化物に副材料を添加して調理する調理工程と、
前記調理工程後の調理物を容器に充填し、殺菌する充填殺菌工程と、を有し、
前記酵素分解工程は、分解酵素としてプロテアーゼを用い、10℃〜30℃の温度で撹拌しながら酵素分解を行う、むき身の貝又はホヤの均一酵素分解のための分解工程と、15℃〜25℃の温度で行う、内容物の食感を高めるための熟成工程を有し、
前記分解工程と熟成工程の間に、前記分解工程で得られたむき身の貝又はホヤの流動化物を150メッシュ〜250メッシュのスクリーンを用いて大形固形分を除くための濾過を行う分離工程を有し、前記分離工程後のむき身の貝又はホヤの流動化物が、前記150メッシュ〜250メッシュのスクリーン通過可能な大きさのむき身の貝又はホヤの固形分を含有するものであることを特徴とする貝又はホヤの調味ソースの製造方法。 - 前記主材料殺菌工程は、プレート式殺菌装置を用い、殺菌温度130℃、10秒間で行うことを特徴とする請求項1に記載の貝又はホヤの調味ソースの製造方法。
- 前記分解工程と熟成工程の間に行う分離工程は、200メッシュのスクリーンを用いて濾過するものであることを特徴とする請求項1に記載の貝又はホヤの調味ソースの製造方法。
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