JP6644604B2 - ワッシャ - Google Patents

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Description

本発明は、他の部材と摺動するワッシャに関する。
自動車のエンジンなどで利用される摺動部材には、他の部材(相手部材)と摺動する摺動面でスラスト荷重を受けるものがある。この摺動部材において低速回転時でも油膜圧力を向上させることが求められている。
例えば、特許文献1には、放射状に形成された給油溝によりスラスト受面が扇形の複数のスラストパッド面に分割されており、スラストパッド面には、周縁に沿って所定幅および一定の所定高さに突出し、前側の給油溝に向けて開口するコ字状の第1凸部が形成されたスラストすべり軸受が開示されている。
特開2013−148136号公報
特許文献1に記載のスラストパッド面構造は、多くても3段までの階段形状であり、傾斜した面を有する摺動部材に比べて潤滑油を滑らかに流動させることはできなかった。
これに対し本発明は、摺動面が階段形状の被覆層で覆われたものに比べて油膜圧力を向上させたワッシャを提供する。
本発明は、環状に形成され、軸方向両側の端面でそれぞれ他の部材と摺動するワッシャ本体と、前記端面をそれぞれ被覆する、樹脂が含まれた被覆層と、を有し、前記被覆層は、周方向の一方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第1テーパ部と、該周方向の他方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第2テーパ部と、互いに隣接する前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との境界に、前記ワッシャ本体の径方向に沿った稜線と、互いに隣接しない前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との間に、該第1テーパ部または該第2テーパ部に向けて潤滑油を供給する油溝と、を有し、前記各端面のうち一方の端面に設けられた前記被覆層は、他方の端面に油溝が設けられた前記周方向の位置に前記稜線を有することを特徴とするワッシャを提供する。
また、本発明は、環状に形成され、軸方向両側の端面でそれぞれ他の部材と摺動するワッシャ本体と、前記端面をそれぞれ被覆する、樹脂が含まれた被覆層と、を有し、前記端面は、周方向の一方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第1斜面と、該周方向の他方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第2斜面と、を有し、前記被覆層は、前記第1斜面を被覆する第1テーパ部と、前記第2斜面を被覆する第2テーパ部と、互いに隣接する前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との境界に、前記ワッシャ本体の径方向に沿った稜線と、互いに隣接しない前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との間に、該第1テーパ部または該第2テーパ部に向けて潤滑油を供給する油溝と、を有し、前記各端面のうち一方の端面に設けられた前記被覆層は、他方の端面に油溝が設けられた前記周方向の位置に前記稜線を有することを特徴とするワッシャを提供する。
本発明によれば、摺動面が階段形状の被覆層で覆われたものに比べて油膜圧力を向上させることができる。
本発明の実施形態に係るワッシャ1の一例を示す分解斜視図。 ワッシャ1を第1面10aの側から見た図。 軸Oを中心とした円に沿ってワッシャ1を切断した断面Scを示す図。 摺動による被覆層15aの変形を説明するための概略図。 変形例7における被覆層15aの被覆されたワッシャ本体16の領域を示す図。
1.実施形態
図1は、本発明の実施形態に係るワッシャ1の一例を示す分解斜視図である。ワッシャ1は、環状に形成された平板の部材であるワッシャ本体16を有する。ワッシャ本体16は平板であるため、表裏に互いに平行な端面を有する。ワッシャ本体16の一方の端面を第1面10aと呼び、他方の端面を第2面10bと呼ぶ。
ワッシャ1は、これら2つの端面で他の部材(相手部材という)と摺動し、その相手部材のスラスト荷重(軸方向に沿った荷重)を受ける。ワッシャ本体16は、環の内側の面である内周面17と、外側の面である外周面18とを有する。なお、ワッシャ本体16の材質には、スチールやブロンズ(例えばリン青銅)など様々な金属が好適に用いられる。
また、図1に示す通り、ワッシャ本体16の第1面10aの一部は、樹脂を含む被覆層15aによって被覆されている。そして図1には示されていないが、ワッシャ本体16の第2面10bの一部も、第1面10aと同様に、樹脂を含む被覆層15bによってコーティング(被覆)されている。被覆層15aおよび被覆層15b(以下、これらを区別しない場合、単に「被覆層15」という)はワッシャ本体16の2つの端面に設けられているので、上述した通り、相手部材と摺動し、そのスラスト荷重を受ける。なお、被覆層15の材質には、摩擦係数の低いPTFE(polytetrafluoroethylene)、PAI(polyamide-imide)、PI(Polyimide)などの樹脂が好適に用いられる。また、被覆層15の材質には、硬質物や固体潤滑剤が含まれた複合部材を用いてもよい。
図2は、ワッシャ1を第1面10aの側から見た図である。図2において、ワッシャ1が配置される空間をxyz右手系座標空間として表し、座標記号のうち、円の中に点を描いた記号は、紙面奥側から手前側に向かう矢印を表す。空間においてx軸に沿う方向をx軸方向という。また、x軸方向のうち、x成分が増加する方向を+x方向といい、x成分が減少する方向を−x方向という。y、z成分についても、上記の定義に沿ってy軸方向、+y方向、−y方向、z軸方向、+z方向、−z方向を定義する。
図2に示す通り、ワッシャ本体16の環の軸Oはz軸方向に沿って配置されている。第1面10aはワッシャ本体16の+z方向の側であり、第2面10b(図2において図示せず)はワッシャ本体16の−z方向の側である。内周面17は、軸Oから半径r0の距離にある面である。外周面18は、軸Oから半径r3の距離にある面である。
ワッシャ本体16の内周面17には、複数の切欠部19が設けられている。図2に示すワッシャ1では、内周面17の6箇所に切欠部19が設けられている。切欠部19のうち最も軸Oから遠い部分は軸Oから距離r1だけ離れている。
第1面10aは、油溝13aを有する。油溝13aは、内周面17から外周面18にわたって潤滑油を通す溝である。第1面10aのうち油溝13aを除く領域は、軸Oに垂直な平面であり、被覆層15aがコーティングされている。
図2に示す被覆層15aは3箇所に分割されており、そのそれぞれに第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとを有する。第1テーパ部12aおよび第2テーパ部14aは、いずれも+z方向に、軸Oに垂直な面、すなわち、第1面10aに対して傾斜した面を有し、この面によって相手部材と摺動する。ただし、第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとでは傾斜の方向が異なる。
図2に示す位相θは、xy平面上において軸Oを中心とした円周上の点の位置を示す値であり、軸Oからその点へ向いたベクトルと、+x方向のベクトルとが成す角度で表される。したがって、位相θは0度のときに+x方向を示し、90度のときに+y方向を示し、180度のときに−x方向を示し、270度のときに−y方向を示す。
図3は、軸Oを中心としてxy平面上に描いた円に沿ってワッシャ1を切断した断面Scを示す図である。ワッシャ1を切断した断面Sはxy平面上において軸Oを中心とする半径r2の円に沿っている。ここで、半径r2の円とは、図1に示すように、軸Oを中心とする放射方向において「切欠部19のうち最も軸Oから遠い部分」と「外周面18」とを結ぶ線分の中間点を通る円である。したがって、半径r2は、以下の式(1)によって算出される。
r2=(r1+r3)/2 …(1)
なお、切欠部19のうち最も軸Oから遠い部分と外周面18との距離は、(r3−r1)であり、上述した円はこの中間点を通るので、この距離の半分を距離r4とすると半径r2は、以下の式(2)によっても表される。
r2=r1+r4 …(2)
半径r0,r2,r3、および距離r1は、ワッシャ1が支える相手部材の大きさなどに応じて決められるが、例えば、r0=24.5mm、r1=26.5mm、r2=29.5mm、r3=32.5mm、r4=3.0mmなどである(この例は図2のワッシャ1の寸法を示すものではない)。
図3には、z軸方向の位置を示す「z」と、位相θを示す「θ」とで構成されるzθ座標でこの断面Scを表した形状が示されている。第1テーパ部12aは、周方向の一方側(図3で位相θが増加する側)に沿って進むほど+z軸方向の高さが減少するように傾斜する部分である。第2テーパ部14aは、周方向の他方側(図3で位相θが減少する側)に沿って進むほど+z軸方向の高さが減少するように傾斜する部分である。
複数に分割された被覆層15aが有する第1テーパ部12aおよび第2テーパ部14a(以下、これらを区別しない場合、単に「テーパ部」という)は稜線Pを介して隣接している。この稜線Pはワッシャ1の径方向に沿って延びており、被覆層15aのうち、最も+z方向に突出した部分である。
稜線Pは、+z方向の高さ、つまりz=0の平面F0からの+z方向の高さが高さd1である。また、被覆層15aのz軸方向の厚みは、ワッシャ本体16の第1面10aのうち、被覆層15aが被覆する領域の+z方向の位置から稜線Pの+z方向の位置までの距離に相当する厚みd2である(厚みd2≪高さd1)。なお、厚みd2は正の値であり、0mmおよび負の値にはならない。
油溝13aは、被覆層15aの最も薄い部分に隣接していて、稜線Pの位置を基準としたその深さは深さd3である。深さd3は、厚みd2よりも大きい(厚みd2≪深さd3)。第1テーパ部12aまたは第2テーパ部14aは油溝13aに隣接しているため、ワッシャ1の回転方向に応じて、少なくとも油溝13aからいずれかのテーパ部に向けて潤滑油が供給される。すなわち、油溝13aは、隣接する第1テーパ部12aまたは第2テーパ部14aに向けて潤滑油を供給する。
なお、図3において示される位置は相対的である。実際には高さd1>深さd3≫厚みd2である。例えば、高さd1=1.0mm(ミリメートル)、深さd3=0.2mm、厚みd2=0.025mmである。
また、第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとは、稜線Pおよび軸Oを含む平面を鏡面として鏡像対称である。すなわち、稜線Pおよび軸Oを含む平面を鏡面としたときに、第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとは互いに鏡像となる。
この構成により、ワッシャ1と摺動する相手部材の回転方向が正逆いずれもあり得る場合であっても、摺動によって潤滑油が誘導される隙間の形状は同じになる。
厚みd2は、0.04mm以下であることが望ましく、0.01mm程度(例えば0.005mm以上0.015mm未満)であることが最も望ましい。
被覆層15は、樹脂を含むため相手部材からのスラスト荷重を受けて弾性変形し易く、また、相手部材との摺動により稜線Pがなじんで消失し易い。図4は、摺動による被覆層15aの変形を説明するための概略図である。第1面10aには、第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとを有する被覆層15aがコーティングされている。第1面10aの側には相手部材8aが配置されており、相手部材8aはワッシャ1と第1面10aで摺動する。ワッシャ1の使用を開始した時点では、図4(a)に示す通り、相手部材8aに最も近い位置に被覆層15aの稜線Pがある。そのため、稜線Pは、相手部材8aから図4(a)に矢印で示した−z方向のスラスト荷重や、周方向のせん断応力を受ける。
稜線Pが−z方向のスラスト荷重や周方向のせん断応力を受けると、摩耗や摩擦熱などの影響によってこの稜線Pが相手部材8aに「なじみ」、消失するとともに第1面10aに沿ったランド部11aが形成される。形成されたこのランド部11aは、+θ側の稜線P1で第1テーパ部12aと隣接し、−θ側の稜線P2で第2テーパ部14aと隣接する。また、このランド部11aにおける被覆層15aの厚みは稜線Pが存在したときの被覆層15aの厚みd2よりも小さい厚みd20である(d20<d2)。
このように、ワッシャ1の被覆層15が相手部材となじむことにより、被覆層15は傾斜角度の異なる2つのテーパ部の境界にワッシャ本体の端面に沿ったランド部が形成されて、図4(b)に示すように「テーパ/ランド構造」になるため、例えば相手部材8aと第1テーパ部12aとの隙間に誘導された潤滑油は、くさび効果で発生した油膜圧力をランド部が支えるため、油膜圧力が増大する。
図3に戻り、第2面10bの構成について説明する。第2面10bにも、第1テーパ部12b、第2テーパ部14b、および油溝13bが設けられている。第1テーパ部12b、第2テーパ部14b、および油溝13bは、大きさ、すなわち、周方向の長さとz軸方向の深さ、およびこれらの周方向における並び方、鏡像関係などがそれぞれ、第1テーパ部12a、第2テーパ部14a、および油溝13aと共通である。
つまり、ワッシャ1の第1面10aには、周方向の一方側に沿って進むほど+z軸方向の高さが減少するように傾斜する第1テーパ部12aと、周方向の他方側に沿って進むほど+z軸方向の高さが減少するように傾斜する第2テーパ部14aと、これら2つのテーパ部のいずれか一方に隣接した1つの油溝13aからなる組が、第1面10aにおいて120度ごとに3つ設けられている。
そして、ワッシャ1の第2面10bには、周方向の一方側に沿って進むほど−z軸方向の高さが減少するように傾斜する第1テーパ部12bと、周方向の他方側に沿って進むほど−z軸方向の高さが減少するように傾斜する第2テーパ部14bと、これら2つのテーパ部のいずれか一方に隣接した1つの油溝13bからなる組が、第2面10bにおいて120度ごとに3つ設けられている。
一方、被覆層15aと被覆層15bとは周方向において異なる位相で設けられている。例えば、図3に示す被覆層15aは、30度や150度に稜線Pが配置されるように設けられているが、被覆層15bは、90度に稜線Pが配置されるように設けられている。したがって、被覆層15aと被覆層15bとは周方向において60度の位相差がある。切欠部19は、ワッシャ1の内周面17において、3つの被覆層15aおよび3つの被覆層15bの稜線Pに相当する合計6箇所にそれぞれ重ねて設けられている。
この構成において、ワッシャ1に相手部材からz軸方向の荷重がかかると、上述した第1面10aの構成と第2面10bの構成との位相差により、ワッシャ1は弾性変形する。
特に、図3に示す被覆層15aは、第2面10bに油溝13bが設けられた周方向の位置に稜線Pを有し、被覆層15bは、第1面10aに油溝13aが設けられた周方向の位置に稜線Pを有する。+z方向で摺動する相手部材からスラスト荷重を受ける稜線Pの被覆層15aにおける周方向の位置は、反対側の端面である第2面10bのうち−z方向で摺動する相手部材から最も遠い油溝13bのある位置であるから、被覆層15aが受ける−z方向のスラスト荷重は、正反対の抗力を第2面10bから受けておらず、ワッシャ1の弾性変形に寄与し易い。
ワッシャ1が弾性変形すると、被覆層15aおよび被覆層15bの軸方向の高さが低くなり、それぞれのテーパ部の軸方向の高低差が縮まるので、相手部材とテーパ部との隙間が狭くなり、この隙間に潤滑油が誘導されることで生じる「くさび効果」が増大する。
2.変形例
以上が実施形態の説明であるが、この実施形態の内容は以下のように変形し得る。また、以下の変形例を組み合わせてもよい。
2−1.変形例1
上述した実施形態において、被覆層15aは油溝13a以外の領域の全部を覆っていたが、一部を覆っていてもよい。例えば、ワッシャ1は、油溝13aと第1テーパ部12aとの間や、油溝13aと第2テーパ部14aとの間に、被覆層15aが被覆されていない部分を有していてもよい。また、被覆層15aは、油溝13aも含めて第1面10aの全体を覆ってもよい。
この構成であっても、テーパ部は、周方向に傾斜しているため、テーパ部と相手部材との成す角は比較的鋭角であり、テーパ部の表面を流れる潤滑油がこの傾斜に沿って相手部材との隙間が狭くなる方に誘導されて、くさび効果を奏する。
2−2.変形例2
上述した実施形態において、ワッシャ1の第1面10aには、周方向の一方側に沿って進むほど+z軸方向の高さが減少するように傾斜する第1テーパ部12aと、周方向の他方側に沿って進むほど+z軸方向の高さが減少するように傾斜する第2テーパ部14aと、これら2つのテーパ部のいずれか一方に隣接した1つの油溝13aからなる組が、第1面10aにおいて120度ごとに3つ設けられていたが、これらの組が端面に設けられる数は3つに限られない。これらの組は複数であれば、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
2−3.変形例3
上述した実施形態において、ワッシャ1の第1面10aには油溝13aが、第2面10bには油溝13bがそれぞれ設けられていたが、油溝はいずれか一方の端面にだけ設けられていてもよい。また、油溝は、いずれの端面にも設けられなくてよい。
また、上述したテーパ部は、被覆層15がコーティングされることによって、いずれか一方の端面にだけ設けられていてもよい。この場合、ワッシャ1は、テーパ部が設けられている側の端面だけで相手部材と摺動してもよい。
2−4.変形例4
上述した実施形態において、第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとは、稜線Pおよび軸Oを含む平面を鏡面として鏡像対称であったが、非対称であってもよい。例えば相手部材の回転方向が一方向に限定されている場合、潤滑油が誘導される方のテーパ部が、誘導されない側のテーパ部に比べて、軸Oに垂直な面に対する角度が浅いように設計されていればよい。
2−5.変形例5
上述した実施形態において、第1面10aに設けられた被覆層15aは、第2面10bに設けられた被覆層15bと、周方向におけるランド部11a、ランド部11bの位置が異なっていたが、これらの位置が同じであってもよい。
2−6.変形例6
上述した実施形態において、切欠部19は、ワッシャ1の内周面17において、3つのランド部11aおよび3つのランド部11bに相当する合計6箇所にそれぞれ重ねて設けられていたが、ワッシャ1は切欠部19を有していなくてもよい。例えば、内周面17に収容される軸との隙間を通って潤滑油が第1面10aと第2面10bとを行き来するように構成されていてもよい。また、油溝13aやテーパ部12aなどに、軸Oに沿った方向の孔が設けられていてもよい。これらの孔は、潤滑油を通す孔であるため、潤滑油は第1面10aと第2面10bとを行き来する。
2−7.変形例7
上述した実施形態において、第1面10aのうち油溝13aを除く、軸Oに垂直な平面には、被覆層15aがコーティングされていたが、被覆層15aが被覆するワッシャ本体16の端面は、軸Oに垂直な平面に限られない。被覆層15aがコーティングされる第1面10aには、例えば、軸Oに垂直な平面に対して傾斜した斜面を有していてもよい。
図5は、変形例7における被覆層15aの被覆されたワッシャ本体16の領域を示す図である。ワッシャ本体16の+z方向の端面には、周方向の一方側(図5で位相θの増加する側)に沿って進むほど+z方向の高さが減少するように傾斜する第1斜面102aと、周方向の他方側(図5で位相θの減少する側)に沿って進むほど+z方向の高さが減少するように傾斜する第2斜面104aと、が設けられている。
図5(a)に示す通り、被覆層15aは、第1斜面102aを被覆する部分により第1テーパ部12aを形成し、第2斜面104aを被覆する部分により第2テーパ部14aを形成する。そして、第1テーパ部12aと第2テーパ部14aとの境界には、径方向に沿った稜線Pが形成される。
この場合であっても、相手部材8aと摺動することによって被覆層15aがなじむと、稜線Pが消失するとともに、新たにランド部11aが形成される。ランド部11aとその周方向の両側に残存する第1テーパ部12aおよび第2テーパ部14aは、ワッシャ1に正逆両方向の回転に対して、いずれもくさび効果を発生させる「テーパ/ランド構造」を構成するため、上述した通り、潤滑油による油膜圧力が増大する。
1…ワッシャ、
10a…第1面
10b…第2面
11a、11b…ランド部
12a、12b…第1テーパ部
13a、13b…油溝
14a、14b…第2テーパ部
15a、15b…被覆層
16…ワッシャ本体
17…内周面
18…外周面
19…切欠部
8a…相手部材
O…軸
P…稜線

Claims (2)

  1. 環状に形成され、軸方向両側の端面でそれぞれ他の部材と摺動するワッシャ本体と、
    前記端面をそれぞれ被覆する、樹脂が含まれた被覆層と、を有し、
    前記被覆層は
    周方向の一方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第1テーパ部と
    該周方向の他方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第2テーパ部と、
    互いに隣接する前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との境界に、前記ワッシャ本体の径方向に沿った稜線と、
    互いに隣接しない前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との間に、該第1テーパ部または該第2テーパ部に向けて潤滑油を供給する油溝と、を有し、
    前記各端面のうち一方の端面に設けられた前記被覆層は、他方の端面に油溝が設けられた前記周方向の位置に前記稜線を有する
    ことを特徴とするワッシャ。
  2. 環状に形成され、軸方向両側の端面でそれぞれ他の部材と摺動するワッシャ本体と、
    前記端面をそれぞれ被覆する、樹脂が含まれた被覆層と、を有し、
    前記端面は、周方向の一方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第1斜面と、該周方向の他方側に沿って進むほど前記軸方向の高さが減少するように傾斜する第2斜面と、を有し、
    前記被覆層は
    前記第1斜面を被覆する第1テーパ部と
    前記第2斜面を被覆する第2テーパ部と、
    互いに隣接する前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との境界に、前記ワッシャ本体の径方向に沿った稜線と、
    互いに隣接しない前記第1テーパ部と前記第2テーパ部との間に、該第1テーパ部または該第2テーパ部に向けて潤滑油を供給する油溝と、を有し、
    前記各端面のうち一方の端面に設けられた前記被覆層は、他方の端面に油溝が設けられた前記周方向の位置に前記稜線を有する
    ことを特徴とするワッシャ。
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