JP6642096B2 - 不燃シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、不燃シートに関し、特に、広い空間を有する建築物を構築する際にテント膜として使用される建築用膜材に好適な、不燃シート及びその製造方法に関する。
従来から、広い空間を有する建築物を構築する際にテント膜として使用され得る建築用膜材として、例えば、特許文献1に開示されている材料がある。
特許文献1に開示されている材料は、ガラス繊維からなる耐熱性織布(不燃シート)に、含フッ素樹脂を数回含浸し、焼成を繰り返して形成された膜構造材(シート材)である。なお、含フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂を用いる。
特許第3274078号公報
特許文献1に記載されている技術では、印刷層の印刷幅が広い建築用膜材の製造が困難である。そこで、印刷幅が広い建築用膜材では、インクジェット印刷による加飾で印刷層を形成することが望ましい。
しかしながら、インクジェット印刷による加飾で印刷層を形成すると、インキ密着及び耐候性に優れた不燃シートを得ることが困難であるという問題点があった。
本発明は、上記のような問題点に着目してなされたもので、インキ密着及び耐候性を向上させることが可能な、不燃シート及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、フッ素樹脂を含浸させて形成した基材上に、カチオン重合型紫外線硬化インキで形成した印刷層を積層して、不燃シートを製造する。
本発明の一態様によれば、基材に含浸したフッ素樹脂が有するフッ素と、印刷層を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキが有するカチオンとの結合力により、不燃シートのインキ密着及び耐候性を向上させることが可能となる。
本発明の第一実施形態の不燃シートの構成を表す断面図である。 本発明の第一実施形態における第二のフッ素樹脂の特徴を示すグラフである。
以下の詳細な説明では、本発明の実施形態について、完全な理解を提供するように、特定の細部について記載する。しかしながら、かかる特定の細部が無くとも、一つ以上の実施形態が実施可能であることは明確である。また、図面を簡潔なものとするために、周知の構造及び装置を、略図で表す場合がある。
(第一実施形態)
以下、本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
(構成)
図1を参照して、不燃シート1の構成について説明する。
なお、第一実施形態では、一例として、不燃シート1を、各種テント、倉庫用テント、屋根材、天井材、娯楽施設用簡易ドーム、スポーツ施設、ドーム球場、農業用・花壇用ハウス、学校・公園施設、運送用幌シート等の天井材として用いる場合について説明する。
図1中に表すように、不燃シート1は、基材2と、印刷層4を備える。
基材2は、ガラス繊維6と、樹脂層8を備える。
ガラス繊維6は、縦糸6aと横糸6bを平織りして形成されている。
ガラス繊維6としては、例えば、厚さが0.1[μm]以上0.19[μm]以下の範囲内程度であり、単位面積当たりの質量が100[g/m]以上220[g/m]以下の範囲内程度に設計した材料を用いる。
第一実施形態では、一例として、ヤーン(糸)の直径が約7[μm]または約9[μm]であり、縦密度が62[本/25mm]、横密度が58[本/25mm]、平織りで厚さが0.1[mm]、質量が108.5[g/cm]のガラスクロス(有沢製作所(株)製:「1031NT」他)を、ガラス繊維6として用いた場合を説明する。
樹脂層8は、ガラス繊維6の表面(図1中では上側の面)と、裏面(図1中では下側の面)に、それぞれ、形成されている。
樹脂層8は、ガラス繊維6にフッ素樹脂を含浸させて形成する。
したがって、基材2は、ガラス繊維6に、フッ素樹脂を含浸して形成されている。
なお、フッ素樹脂に関する説明は、後述する。
第一実施形態では、一例として、樹脂層8を、基材2の厚さが100[μm]以上200[μm]以下の範囲内程度となるように形成した場合について説明する。
印刷層4は、基材2上に積層されており、カチオン重合型紫外線硬化インキ(カチオン重合型の紫外線硬化型インキ)で形成されている。なお、「基材2上」とは、図1中において、基材2の上側の面を表す。
印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキには、無機顔料が含有されているインキを用いる。
また、印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキとしては、例えば、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成したインキを用いる。
また、印刷層4は、例えば、文字等、不燃シート1を用いる状況に応じた絵柄が印刷されている。
(フッ素樹脂)
第一実施形態では、一例として、ガラス繊維6に含浸するフッ素樹脂を、第一のフッ素樹脂と第二のフッ素樹脂を、所定の比率(例えば、第一のフッ素樹脂:第二のフッ素樹脂=1:1)で調整し、これを水で薄めて所定の粘度(例えば、1500cps)として形成した場合について説明する。
第一のフッ素樹脂は、フッ化ビニリデン共重合物と、アクリル共重合物と酸化チタンとを有するものを用いる。なお、第一のフッ素樹脂は、水、または、含水ケイ酸を含んでいてもよい。なお、第一のフッ素樹脂に関する詳細な説明は、後述する。
第二のフッ素樹脂は、フッ化ビニリデン系ポリマーと、シロキサン系ポリマーと、架橋型アクリルポリマーとを有するものを用いる。なお、第二のフッ素樹脂に関する詳細な説明は、後述する。
したがって、第一実施形態では、一例として、ガラス繊維6に含浸させるフッ素樹脂として、アクリル共重合物及びアクリルポリマーを有するフッ素樹脂(アクリルフッ素樹脂)を用いる場合について説明する。
(第一のフッ素樹脂に関する詳細な説明)
第一のフッ素樹脂は、具体的には、フッ化ビニリデン共重合物と(メタ)アクリル共重合体とからなるゼッフル(ダイキン工業株式会社、商標)と、酸化チタンと、を含有する組成物とする。
また、第一のフッ素樹脂は、含フッ素シード重合体粒子の水性分散液とされ、工程(I)と及び工程(II)を含む製造方法により製造される。
以下、工程(I)について説明する。
工程(I)は、下記の式(1)で示される化合物(1)の存在下に、少なくとも1種のフルオロオレフィンを含む単量体を水性分散重合して、含フッ素重合体(A)粒子の水性分散液を製造する工程である。
CH=CHCH−O−R … (1)
(式(1)中、Rは酸素原子、窒素原子及び/または極性基を有していてもよい炭化水素基)で示される化合物(1)の存在下に、少なくとも1種のフルオロオレフィンを含む単量体を水性分散重合して、含フッ素重合体(A)粒子の水性分散液を製造する。
式(1)で示される化合物(1)のRは酸素原子、窒素原子及び/または極性基を有していてもよい炭化水素基である。
炭化水素基Rは、酸素原子、窒素原子、極性基を2種以上含んでいてもよい。また、炭化水素基Rは、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。分子量は、45以上5000以下の範囲内であることが好ましい。
極性基は、炭化水素基Rの末端にあっても、分岐鎖の末端にあってもよい。
極性基としては、例えば、−L(LはSO 、OSO 、PO 、OPO 、COO等;Mは1価のカチオン、例えば、リチウムイオン、カリウムイオン、ナトリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン、アンモニウムイオン等)で示される基が、例示できる。
式(1)で示される化合物としては、式(1)において、Rが式(2):
Figure 0006642096
(式中、XはHまたはSOY(YはNH、または、アルカリ金属原子、例えば、Na、K);nは0〜19の整数)で示される化合物(2)、Rが式(3):
−(AO)−X (3)
(式中、AOは、炭素数2〜4の直鎖状、または、分岐鎖状のオキシアルキレン基;pは、正の整数;Xは、HまたはSOY(YはNH、または、アルカリ金属原子、例えば、Na、K);AOが複数個存在する場合は、同一でも互いに異なっていてもよく、また、2種以上のブロック構造を形成していてもよい)で示される化合物(3)、または、Rが式(4):
Figure 0006642096
(式中、AOは、炭素数2〜4の直鎖状または分岐鎖状のオキシアルキレン基;Xは、HまたはSOY(YはNHまたはアルカリ金属原子、例えば、Na、K);rは、0〜20の整数;sは、正の整数;AOが複数個存在する場合は、同一でも互いに異なっていてもよく、また、2種以上のブロック構造を形成していてもよい)で示される化合物(4)が、好ましくあげられる。
式(2)で示されるRを有する化合物(2)としては、
Figure 0006642096
(式中、nは11、または、12;Xは式(2)と同じ)で示される化合物が好ましい。また、市販品としては、例えば、三洋化成(株)製のエレミノールJS−20等があげられる。
また、式(3)で示されるRを有する化合物(3)としては、
CH=CR−R−O−(AO)−X
(式中、Rは、水素原子、または、アルキル基;Rは、炭素数2以上のアルキレン基;AOは、炭素数2〜4の直鎖状、または、分岐鎖状のオキシアルキレン基;pは、正の整数;Xは、HまたはSOY(YはNH、または、アルカリ金属原子);AOが複数個存在する場合は、同一でも互いに異なっていてもよく、また、2種以上のブロック構造を形成していてもよい)で示される化合物が好ましい。
は、水素原子、または、アルキル基であり、得られる分散液の安定性が良好な点から、炭素数1〜10のアルキル基、特に、メチル基が好ましい。
は、炭素数2以上のアルキレン基であり、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。なかでも、分散液の安定性が良好な点から、炭素数2〜10のアルキレン基、特に、炭素数2〜4の直鎖状のアルキレン基が好ましい。
AOは、エチレンオキサイド(−CHCHO−)、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、−CH(CH)O−等の炭素数2〜4の直鎖状、または、分岐鎖状のオキシアルキレン基であり、アルキレンオキシドを付加重合する等の方法により得ることができる。
AOがアルキレンオキシドの付加重合により形成される場合は、付加されるアルキレンオキシド等により、AOが決定される。付加されるアルキレンオキシド等の重合形態は限定されず、1種のアルキレンオキシドの単独重合、2種以上のアルキレンオキシドのランダム共重合、ブロック共重合またはランダム/ブロック共重合であってもよい。
pは、正の整数であり、例えば、0〜1,000、さらには、1〜200、特に、10〜40が好ましい。
特に、化合物(3)としては、
CH=CR−R−O−(BO)−(EO)−X
(式中、Rは、炭素数1〜10のアルキル基;Rは、炭素数2〜10の直鎖状のアルキレン基;Xは、式(1)と同じ;BOは、ブチレンオキサイド単位;EOは、CHCHO、または、CH(CH)O単位;mは、0〜50の整数;nは、0〜100の整数;m+nは、0〜150の整数)で示される化合物であることが好ましい。
化合物(3)の具体例としては、つぎのものが例示できるが、これらに限定されるものではない。
CH=C(CH)CHCH−O−(BO)−(EO)−H、
CH=C(CH)CHCH−O−(BO)−(EO)−SONH
(式中、BO、EO、n及びmは、前記と同じ)で示される化合物が好ましい。
市販品としては、例えば、花王(株)製のラテムルPD−104や、PD−420等があげられる。
また、式(4)で示されるRを有する化合物(4)としては、
Figure 0006642096
(式中、AO、X、r及びsは、式(4)と同じ)で示される化合物が好ましい。また、AOについての説明及び例示は、式(3)と同じである。
市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製のアクアロンKH−10等があげられる。
第一のフッ素樹脂が含むフッ化ビニリデン共重合物としては、VDF/TFE共重合物、VDF/TFE/CTFE共重合物、VDF/HFP共重合体物VDF/TFE/HFP共重合物、VDF/CTFE共重合物等を挙げることができる。
本発明の製造方法で重合するフルオロオレフィンは、特に限定されず、1種または2種以上が使用できる。フルオロオレフィンとしては、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、非パーフルオロオレフィンがあげられる。
非パーフルオロオレフィンは、
Figure 0006642096
等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、フッ化ビニリデン(VdF)、トリフルオロエチレン、トリフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブテン、2,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,3,3,3−テトラフルオロプロペン、1,1,3,3,3−ペンタフルオロプロペン等である。
PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)等があげられる。
また、官能基含有フルオロオレフィンモノマーも使用できる。官能基含有フルオロオレフィンとしては、例えば、式(5):
CX =CX−(Rf)−Y (5)
(式中、Yは−OH、−COOH、−SOF、−SO(Mは水素原子、NH基、または、アルカリ金属)、アルコキシカルボニル基、カルボン酸塩、カルボキシエステル基、エポキシ基、または、シアノ基;X及びXは同じか、または異なり、いずれも水素原子またはフッ素原子;Rfは、炭素数1〜40の2価の含フッ素アルキレン基または炭素数1〜40のエーテル結合を含有する2価の含フッ素アルキレン基;mは、0または1)で示される化合物があげられる。
具体例としては、例えば、
Figure 0006642096
Figure 0006642096
等があげられる。
非パーフルオロオレフィンとしては、ヨウ素含有モノマー、例えば、特公平5−63482号公報や、特開昭62−12734号公報に記載されているパーフルオロ(6,6−ジヒドロ−6−ヨード−3−オキサ−1−ヘキセン)、パーフルオロ(5−ヨード−3−オキサ−1−ペンテン)等のパーフルオロビニルエーテルのヨウ素化物も使用できる。
なお、第一実施形態においては、フルオロオレフィンと共重合可能な非フッ素系単量体を併用してもよい。
第一実施形態では、化合物(1)(界面活性剤)の存在下で水性分散重合を行なう。
水性分散重合としては、乳化重合または懸濁重合が例示でき、特に、粒子径の小さい重合体粒子を多数生成させる点から、乳化重合が好適である。また、特に、得られた含フッ素重合体中の界面活性剤が同量であっても、粒子数を多くできる点で、シード重合の初期、すなわち、シード粒子の製造に適用する乳化重合が好適である。
化合物(1)の使用量は、例えば、乳化重合の場合、水の全量に対し、10〜5000ppmが好ましく、20〜4000ppmがより好ましい。
これは、化合物(1)の使用量が、10ppm未満であると、界面活性能が小さくなり、発生粒子数が少なくなる傾向にあるためである。
また、化合物(1)は、単独で使用しても十分に乳化重合が安定して進むが、他の界面活性剤と併用してもよい。
他の界面活性剤としては、含フッ素界面活性剤でも、非フッ素(炭化水素)界面活性剤(ただし、式(1)の化合物は除く)でもよい。
含フッ素界面活性剤としては、含フッ素アニオン性界面活性剤が好ましい。
含フッ素アニオン性界面活性剤としては、公知のものが使用できる。すなわち、例えば、米国特許出願公開第2007/0015864号明細書、米国特許出願公開第2007/0015865号明細書、米国特許出願公開第2007/0015866号明細書、米国特許出願公開第2007/0276103号明細書、米国特許出願公開第2007/0117914号明細書、米国特許出願公開第2007/142541号明細書、米国特許出願公開第2008/0015319号明細書、米国特許第3250808号明細書、米国特許第3271341号明細書、特開2003−119204号公報、国際公開第2005/042593号パンフレット、国際公開第2008/060461号パンフレット、国際公開第2007/046377号パンフレット、国際公開第2007/119526号パンフレット、国際公開第2007/046482号パンフレット、国際公開第2007/046345号パンフレットに記載されたものが例示できる。
併用できる、具体的な含フッ素界面活性剤としては、例えば、F(CFCOOM、CFCFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、CFCFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、CFOCF(CF)CFOCF(CF)COOM、H(CFCFCHOCF(CF)COOM、H(CFCOOM、C13CHCHSOM、F(CFCFCHCHSOM、F(CFCFCHCHSOM(式中、Mは1価のカチオン;nは2〜5の整数;mは2〜10の整数;pは2〜10の整数;qは2〜10の整数)等があげられる。
上記の中でも、炭素数6以下の含フッ素界面活性剤、特に、炭素数6以下の含フッ素アニオン性界面活性剤が、得られる重合生成液中の含フッ素重合体の濃度を高くでき、かつ安定な分散液とすることができる点から好ましい。
また、非フッ素(炭化水素)界面活性剤としては、例えば、CH(CHSOM、CH(CHSOM、CH(CHCOOM、H(CHCOO(CHCHO)H、(NaSO)CH((CHCH)((CHCH)(式中、Mは1価のカチオン;rは2〜16の整数;sは2〜16の整数;tは2〜16の整数;uは2〜40の整数;vは2〜45の整数;w+x=10〜20)等の炭化水素界面活性剤があげられる。
併用可能な他の界面活性剤の使用量は、例えば、乳化重合の場合、化合物(1)との合計量が、水の全量に対し、10〜5000ppmが好ましく、20〜4000ppmがより好ましい。これは、化合物(1)と他の界面活性剤の合計量が、10ppm未満であると、界面活性能が小さくなり、発生粒子数が少なくなる傾向となるためである。
また、併用できる界面活性剤として、分子中にラジカル重合性不飽和結合と親水基とを有する含フッ素化合物からなる含フッ素反応性界面活性剤もあげることができる。含フッ素反応性界面活性剤は、重合時に反応系に存在させた場合、重合体のポリマー鎖の一部分を構成することができる。
反応性界面活性剤としては、例えば、特開平8−67795号公報に記載されている含フッ素化合物を用いることができる。
重合温度は、特に制限はなく、重合開始剤の種類にしたがって最適な温度が採用される。ただ、高くなりすぎると気相部分でのモノマー密度が容易に低下したり、ポリマーの分岐反応が生じたりし、目的とする共重合体が得られないことがある。好ましくは、40〜120℃、さらに好ましくは、50〜100℃とする。
単量体の供給は、連続的であっても逐次供給してもよい。
重合開始剤としては、油溶性の過酸化物も使用できるが、これらの代表的な油溶性開始剤であるジイソプロピルパーオキシジカーボネート(IPP)や、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート(NPP)等のパーオキシカーボネート類は、爆発等の危険性があるうえ、高価であり、しかも、重合反応中に重合槽の壁面等にスケールの付着を生じやすいという問題がある。
フルオロポリマーの圧縮永久歪みをよりいっそう低下させるためには、水溶性ラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。水溶性ラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸、過ホウ酸、過塩素酸、過リン酸、過炭酸のアンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩等が好ましくあげられ、特に、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウムが好ましい。
重合開始剤の添加量は、特に限定されないが、重合速度が著しく低下しない程度の量(例えば、数ppm対水濃度)以上を、重合の初期に一括して、または逐次的に、または連続して添加すればよい。上限は、装置面から重合反応熱を除熱できる範囲である。
本発明の製造方法において、さらに、分子量調整剤等を添加してもよい。分子量調整剤は、初期に一括して添加してもよいし、連続的または分割して添加してもよい。
分子量調整剤としては、例えば、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、コハク酸ジメチル等のエステル類のほか、イソペンタン、イソプロパノール、アセトン、各種メルカプタン、四塩化炭素、シクロヘキサン、モノヨードメタン、1−ヨードメタン、1−ヨードプロパン、ヨウ化イソプロピル、ジヨードメタン、1,2−ジヨードメタン、1,3−ジヨードプロパン等があげられる。
そのほか、緩衝剤等を適宜添加してもよいが、その量は、本発明の効果を損なわない範囲で用いることが好ましい。
重合圧力は、0.1〜10MPa、さらには、0.2〜8MPaの範囲で適宜選択すればよく、この範囲内であれば、低圧(0.1〜1MPa)でも高圧(1〜10MPa)でもよい。
撹拌手段としては、例えば、アンカー翼、タービン翼、傾斜翼等も使用できるが、モノマーの拡散とポリマーの分散安定性が良好な点から、フルゾーンやマックスブレンドと呼ばれる大型翼による撹拌が好ましい。
撹拌装置としては、横型撹拌装置でも縦型撹拌装置でもよい。
本発明の工程(I)では、重合生成液中の含フッ素重合体濃度を高くしても、安定して得ることができる。例えば、式(1)の化合物を単独で使用した場合では、含フッ素重合体濃度が約45質量%においても、安定した含フッ素重合体の水性分散液を得ることができるが、含フッ素界面活性剤、特に、炭素数6以下の含フッ素アニオン性界面活性剤を併用するときは、45質量%を超えた高濃度、例えば、45〜55質量%の濃度の含フッ素重合体の水性分散液を安定した状態で得ることができる。
工程(I)で得られる含フッ素重合体(A)粒子は、数平均粒子径が100〜200nm程度であり、数平均分子量が1.0×10〜1.0×10程度で、分子量分布(Mw/Mn)も2〜5程度と、シャープなものである。水性分散液中の粒子数は、1×1014〜1×1015個/水1gである。
次に、工程(II)について説明する。
工程(II)は、含フッ素重合体(A)粒子の水性分散液中でエチレン性不飽和単量体を含フッ素重合体(A)粒子にシード重合して含フッ素シード重合体(B)粒子の水性分散液を製造する工程である。
工程(II)では、工程(I)で得られた含フッ素重合体(A)粒子の水性分散液をそのまま、または、水で希釈して粒子数を調整した水性分散液中で、エチレン性不飽和単量体を含フッ素重合体(A)粒子にシード重合する。
工程(II)で行うシード重合は、従来公知の重合方法であり(例えば、特開平8−67795号公報等)、重合体粒子の水性分散液にエチレン性不飽和単量体を加え、重合体粒子(シード粒子)を核として、エチレン性不飽和単量体を水性分散重合させる方法である。
水性分散重合としては、工程(I)と同様に、乳化重合または懸濁重合が例示でき、特に重合体粒子の均一化が容易な点から、乳化重合が好適である。本発明の工程(II)におけるシード重合の条件等は、従来公知の条件が採用できる。
また、化合物(1)は、単独で使用しても十分に乳化重合が安定して進むが、他の界面活性剤と併用してもよい。使用する他の界面活性剤としては、工程(I)で例示した化合物と量が、工程(II)でも採用できる。
工程(II)における化合物(1)の使用量は、例えば、乳化重合の場合、水の全量に対し、10〜5000ppmが好ましく、20〜4000ppmがより好ましい。これは、化合物(1)の使用量が、10ppm未満であると、界面活性能が小さくなり、安定な水性分散液が得られにくくなる傾向にあるためである。
工程(II)でシード重合するエチレン性不飽和単量体としては、ラジカル重合性のエチレン性不飽和結合をもつ単量体であればよいが、アクリル酸またはメタクリル酸のエステル類、不飽和カルボン酸類、水酸基含有アルキルビニルエーテル類、カルボン酸ビニルエステル類、α−オレフィン類等が好ましくあげられる。
アクリル酸またはメタクリル酸のエステル類の具体例としては、含フッ素重合体(A)との相溶性が良好な点から、炭素数1〜10のアルキルエステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−エチルへキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の、(メタ)アクリル酸等の1種または2種以上が例示できる。
不飽和カルボン酸類の具体例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニル、ウンデシレン酸等があげられる。それらのなかでも、単独重合性の低いビニル酢酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸、ウンデシレン酸が、単独重合性が低く単独重合体ができにくい点、カルボキシル基の導入を制御しやすい点から好ましい。
水酸基含有アルキルビニルエーテル類の具体例としては、例えば、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等があげられる。これらのなかでも、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが、重合反応性が優れる点で好ましい。
カルボン酸ビニルエステル類の具体例としては、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニル等があげられ、塗膜に対し、光沢の向上、ガラス転移温度の上昇等の特性を付与できる。
α−オレフィン類としては、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等があげられ、塗膜に対し、可撓性の向上等の特性を付与できる。
シード重合に供するエチレン性不飽和単量体は、含フッ素重合体粒子(A)(固形分)100質量部に対して5〜400質量部、さらには10〜150質量部が好ましい。
工程(I)及び(II)を経て得られる含フッ素シード重合体(B)粒子は、平均粒子径が110〜300nm程度であり、数平均分子量が1.0×10〜1.0×10程度で、分子量分布(Mw/Mn)も1.5〜4.0程度とシャープなものである。水性分散液中の粒子数は、1×1012〜1×1015個/水1gである。
第一のフッ素樹脂は、種々の用途にそのまま、または、適宜修正して適用することができる。
また、第一のフッ素樹脂は、水性塗料組成物の膜形成材として含フッ素シード重合体(B)粒子を用いるほかは、従来公知の添加剤や配合割合が採用できる。例えば、含フッ素シード重合体(B)粒子の濃度としては、例えば、10〜60質量%程度の範囲から選定すればよい。
また、第一のフッ素樹脂を、顔料入りの水性塗料組成物として調製する場合は、含フッ素シード重合体(B)粒子の水性分散液に、予め、サンドミル等の顔料分散機で、水、酸化チタン等の顔料、消泡剤、顔料分散剤、pH調整剤等を分散した顔料分散体の所定量と造膜補助剤の所定量を撹拌混合した後、増粘剤を所定量加えて混合し、その他必要な添加剤を適宜加えればよい。
顔料を加えない水性塗料組成物を調製する場合は、含フッ素シード重合体(B)粒子の水性分散液に、必要に応じ、水、造膜補助剤、消泡剤、増粘剤、pH調整剤、その他所要の添加剤を加えて公知方法で撹拌混合すればよい。
第一のフッ素樹脂の添加剤としては、必要に応じ、造膜補助剤、凍結防止剤、顔料、充填剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、つや消し剤、潤滑剤、加硫剤等を添加することもできる。
以下、第一のフッ素樹脂の特性について説明するが、特性の評価に使用した装置及び測定条件は、以下のとおりである。
(1)平均粒子径
測定装置:HONEYWELL社(株)製のマイクロトラックUPA
測定方法:動的光散乱法
測定する乳濁液を純水で計測可能な濃度に希釈して試料とし、室温にて測定を行う。得られたデータの個数平均径を粒子径とする。
(2)粒子数
計算方法:(1)で求めた平均粒子径と固形分含有量から、重合体比重を1.8として計算する。
(3)NMR分析:
NMR測定装置:VARIAN社(株)製
H−NMR測定条件:400MHz(テトラメチルシラン=0ppm)
19F−NMR測定条件:376MHz(トリクロロフルオロメタン=0ppm)
(4)分子量分析:
昭和電工(株)製Shodex GPC−104を使用し、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量及び数平均分子量を求めた。
測定条件
キャリア:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/min
カラム温度:40℃
試料:測定する樹脂の3%THF溶液
(5)メルトフローレート(MFR)値
安田精機製作所(株)製Dyniscoメルトインデックステスターを用い、約6gの樹脂を250℃±0.5℃に保たれた0.376インチIDシリンダーに投入し、5分間放置して温度が平衡状態に達した後、10Kgのピストン荷重のもとで、直径0.0825インチ、長さ0.315インチのオリフィスを通して押し出した同時期に採取する3回の平均値とした。単位はg/10分とした。
(6)発泡性
被験塗板を23℃で1日間乾燥した後、23℃の水1kgに被験塗板2枚を3日間浸漬し、浸漬した水を100mlのガラス瓶に50g秤取り、手で上下に50回振り混ぜ、直後及び30分後の液面からの泡の高さを測定する。
(7)耐温水性試験
被験塗板を23℃で7日間乾燥した後、JIS K5600−6−2に従って60℃の水中に7日間浸漬し、その後23℃で1日間乾燥し、膨れ(JIS K5600−8−2)、割れ(JIS K5600−8−4)、はがれ(JIS K5600−8−5)の等級を評価する。
・膨れの等級(JIS K5600−8−2)の評価基準
密度を0〜5の等級(小さい方が0)に、大きさをS1〜S5の等級(S1の方が小さい)に分け、例えば、2(S1)のように記載する。
・割れの等級(JIS K5600−8−4)の評価基準
密度を0〜5の等級(小さい方が0)に、大きさをS0〜S5の等級(S0の方が小さい)に、深さをa〜cの等級(aの方が浅い)に分け、例えば、2(S1)bのように記載する。
・はがれの等級(JIS K5600−8−5)の評価基準
密度を0〜5の等級(小さい方が0)に、大きさをS1〜S5の等級(S1の方が小さい)に、深さをa〜bの等級(aの方が浅い)に分け、例えば、2(S1)aのように記載する。
(8)耐凍結融解性試験
被験塗板を23℃で7日間乾燥した後、−20℃の空気中に2時間静置し、その後10℃の水中に2時間浸漬する。このサイクルを100回繰り返した後、23℃で1日間乾燥し、耐温水性試験と同様に、膨れ(JIS K5600−8−2)、割れ(JIS K5600−8−4)、はがれ(JIS K5600−8−5)の等級を評価する。
(9)低温造膜性試験
JIS 5663 7.7.3に従って試験板を5±1℃で4時間乾燥した後、さらに5±2℃で16時間水中に浸漬し、その後、5±1℃で3時間乾燥し、膨れ(JIS 5600−8−2)、割れ(JIS 5600−8−4)、はがれ(JIS 5600−8−5)の等級を評価する。
(10)光沢(60°鏡面光沢)
JIS K5600−4−7に従い、変角光沢計(日本電色工業(株)VGS(商品名))を用いて、被験塗板の表面光沢を測定する。
例1(含フッ素シード重合体(B−1)粒子の水性分散液の製造)
・工程(I)
2Lのステンレススチール製のオートクレーブに、イオン交換水500g、パーフルオロヘキサン酸アンモニウム(C6)の50質量%水溶液2.2g(パーフルオロヘキサン酸アンモニウムの濃度2200ppm/水。重合溶媒としての水。以下同様)、式(2−1):
Figure 0006642096
(式中、nは11と12の混合物)で示される化合物(2−1)の38質量%水溶液0.789g(化合物(2−1)の濃度600ppm/水)を仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換後、減圧にした。続いて、重合槽内を、系内圧力が0.75〜0.8MPaとなるようにVdF/TFE/CTFE(=72.2/16.0/11.8モル%)混合単量体を圧入し、70℃に昇温した。
ついで、過硫酸アンモニウム(APS)1.00gを、4mlのイオン交換水に溶解した重合開始剤溶液及び酢酸エチル0.75gを窒素ガスで圧入し、600rpmで撹拌しながら、反応を開始した。
重合の進行に伴い内圧が降下し始めた時点で、VdF/TFE/CTFE混合単量体(=72.2/16.0/11.8モル%)を、内圧が0.75〜0.8MPaを維持するように供給した。重合開始から7時間30分後に、未反応単量体を放出し、オートクレーブを冷却して、固形分濃度46.1質量%の含フッ素重合体の水性分散液を得た。
NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/CTFE=72.1/14.9/13(モル%)であった。また、得られた含フッ素重合体の平均粒径は112.4nmであり、上記水性分散液中の粒子数は、5.0×1014(個/水1g)であった。
この水性分散液200gを−10℃で24時間凍結させ、凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、含フッ素重合体(A−1)を得た。
この含フッ素重合体(A−1)のMFRは4.96g/10minであった。また、この含フッ素重合体(A−1)をGPCにより測定した数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ9.12×10及び4.03×10であり、分子量分布Mw/Mnは4.42であった。
・工程(II)
工程(I)で得られた含フッ素重合体(A−1)粒子の水性分散液(固形分濃度46.2質量%)2409.3gに、式(2−1)の化合物43.94g(12900ppm/水)を加えて充分に混合して、水性分散液を調製した。
次に、0.5L容のフラスコに、メチルメタクリルレート(MMA)467.5g、ブチルアクリレート(BA)4.8g、アクリル酸(Ac)4.8g、メルカプタン2.4g、水159.0gを加え、乳化機により充分に混合して、予備乳化液を調製した。
この予備乳化液の全量を、先ほどの含フッ素重合体の水性分散液に徐々に添加し、充分に混合し、その後、さらに界面活性剤としてポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(日本乳化剤(株)製:「RMA-450」)を15.9g(12300ppm/水)、メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩(三洋化成(株)製:「RS−3000」)50%水溶液を95.4g(36800ppm/水)加えて、充分に混合した。
さらに、内温を75℃にまで昇温し、過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)75.15gを40分ごとに4回に分けて添加しながら、重合を進めた。
そして、重合開始から2時間後に、反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、含フッ素シード重合体(B−1)の水性分散液を得た(得量3046.7g、固形分濃度51.7質量%)。得られたシード重合体の平均粒径は、159.4nmであった。
例2(含フッ素シード重合体(B−2)粒子の水性分散液の製造)
・工程(I)
2Lのステンレススチール製のオートクレーブに、イオン交換水500g、式(2−1):
Figure 0006642096
(式中、nは11と12の混合物)で示される化合物(2−1)の38質量%水溶液0.789g(化合物(2−1)の濃度600ppm/水)を仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換後、減圧にした。続いて、重合槽内を系内圧力が0.75〜0.8MPaとなるようにVdF/TFE/CTFE(=72.2/16.0/11.8モル%)混合単量体を圧入し、70℃に昇温した。
ついで、過硫酸アンモニウム(APS)1.00gを、4mlのイオン交換水に溶解した重合開始剤溶液及び酢酸エチル0.75gを窒素ガスで圧入し、600rpmで撹拌しながら反応を開始した。
重合の進行に伴い内圧が降下し始めた時点で、VdF/TFE/CTFE混合単量体(=72.2/16.0/11.8モル%)を、内圧が0.75〜0.8MPaを維持するように供給した。重合開始から7時間30分後に、未反応単量体を放出し、オートクレーブを冷却して、固形分濃度46.1質量%の含フッ素重合体の水性分散液を得た。
NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/CTFE=70.2/12.8/17.0(モル%)であった。また、得られた含フッ素重合体の平均粒径は143nmであり、上記水性分散液中の粒子数は、7.43×1014(個/水1g)であった。
この水性分散液200gを、−10℃で24時間凍結させ、凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、含フッ素重合体(A−2)を得た。
この含フッ素重合体(A−2)のMFRは、6.51g/10minであった。また、この含フッ素重合体(A−2)をGPCにより測定した数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、2.36×10及び7.48×10であり、分子量分布Mw/Mnは3.18であった。
・工程(II)
工程(I)で得られた含フッ素重合体(A−2)粒子の水性分散液(固形分濃度46.2質量%)2409.3gに、式(2−1)の化合物43.94g(12900ppm/水)を加えて充分に混合して、水性分散液を調製した。
次に、0.5L容のフラスコに、メチルメタクリルレート(MMA)467.5g、ブチルアクリレート(BA)4.8g、アクリル酸(Ac)4.8g、メルカプタン2.4g、水159.0gを加え、乳化機により充分に混合して、予備乳化液を調製した。
この予備乳化液の全量を、先ほどの含フッ素重合体の水性分散液に徐々に添加し、充分に混合し、その後、さらに、界面活性剤として、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(日本乳化剤(株)製「RMA-450」)を15.9g(12300ppm/水)、メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩(三洋化成(株)製:「RS−3000」)50%水溶液を95.4g(36800ppm/水)加えて充分に混合した。
そして、内温を75℃にまで昇温し、過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)75.15gを40分ごとに4回に分けて添加しながら重合を進めた。重合開始から2時間後に反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、含フッ素シード重合体(B−2)の水性分散液を得た(得量3078.8g、固形分濃度51.0質量%)。得られたシード重合体の平均粒径は、166.6nmであった。
例3(含フッ素シード重合体(B−3)粒子の水性分散液の製造)
・工程(I)
2Lのステンレススチール製のオートクレーブに、イオン交換水500g、パーフルオロオクタン酸アンモニウム(C8)50%水溶液0.5g(パーフルオロオクタン酸アンモニウムの濃度1000ppm/水)と、モノステアリン酸ポリエチレングリコール(日光ケミカルズ(株)製:「MYS−40」)0.75g(150ppm/水)を仕込み、系内を窒素ガスで充分に置換後、減圧にした。続いて、重合槽内を、系内圧力が1.00〜1.10MPaとなるようにVdF/TFE/CTFE(=74/14/12モル%)混合単量体を圧入し、60℃に昇温した。
ついで、過硫酸アンモニウム(APS)0.20g(400ppm/水)を、4mlのイオン交換水に溶解した重合開始剤溶液を窒素ガスで圧入し、600rpmで撹拌しながら反応を開始した。
重合の進行に伴い内圧が降下し始めた時点で、VdF/TFE/CTFE混合単量体(=74/14/12モル%)を、内圧が1.00〜1.10MPaを維持するように供給した。また、3時間が経過した時点で、APS0.20g(400ppm/水)を窒素ガスで圧入した。重合開始から8時間後に未反応単量体を放出し、オートクレーブを冷却して、固形分濃度25.5質量%の含フッ素重合体の水性分散液を得た。
NMR分析により共重合組成を調べたところ、VdF/TFE/CTFE=78.5/11.4/10.1(モル%)であった。また、得られた含フッ素重合体の平均粒径は、115nmであり、上記水性分散液中の粒子数は、2.23×1014(個/水1g)であった。
この水性分散液200gを、−10℃で24時間凍結させ、凝析を行った。得られた凝析物を水洗、乾燥して、含フッ素重合体(A−3)を得た。
この含フッ素重合体(A−3)のMFRは、5.15g/10minであった。また、この含フッ素重合体(A−3)は、THFに溶解しないため、GPCを用いての分子量は測定できなかった。
・工程(II)
工程(I)で得られた含フッ素重合体(A−3)粒子の水性分散液(固形分濃度46.2質量%)2409.3gに、式(2−1)の化合物43.94g(12900ppm/水)を加えて充分に混合して、水性分散液を調製した。
次に、0.5L容のガラス製セパラブルフラスコに、メチルメタクリルレート(MMA)467.5g、ブチルアクリレート(BA)4.8g、アクリル酸(Ac)4.8g、メルカプタン2.4g、水159.0gを加え、乳化機により充分に混合して、予備乳化液を調製した。
この予備乳化液の全量を、先ほどの含フッ素重合体の水性分散液に徐々に添加し、充分に混合し、その後、さらに、界面活性剤として、ポリエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート(日本乳化剤(株)製:「RMA-450」)を15.9g(12300ppm/水)、メタクリロイルオキシポリオキシアルキレン硫酸エステルナトリウム塩(三洋化成(株)製:「RS−3000」)50%水溶液を95.4g(36800ppm/水)加えて、充分に混合した。そして、内温を75℃にまで昇温し、過硫酸アンモニウム(APS)(1質量%水溶液)75.15gを、40分ごとに4回に分けて添加しながら重合を進めた。重合開始から2時間後に、反応溶液を室温まで冷却して反応を終了し、含フッ素シード重合体(B−3)の水性分散液を得た(得量3014.7g、固形分濃度51.5質量%)。得られたシード重合体の平均粒径は、169.5nmであった。
例4〜例6
例1〜3でそれぞれ製造した含フッ素シード重合体(B)の水性分散液をそのまま用い、かつ、以下の処方で、建築用の耐候性水性塗料組成物(白塗料組成物)を調製した。
得られた白塗料組成物を、スレート板(予め下塗り塗料(ニチゴー・モビニール(株)製:「DK7151」)を乾燥膜厚が150g/mとなるように塗装し、室温で1日間乾燥させたもの)に、膜厚が150g/mとなるように刷毛塗りし、室温で1日間乾燥させ、被験塗板を作製した。
この被験塗板について、耐凍結融解性、耐温水性、低温造膜性、発泡性及び光沢(60°)を調べた。その結果を、表1に示す。
・白塗料組成物の処方
含フッ素シード重合体(B)の水性分散液 65.00質量部
水 9.12質量部
酸化チタン 31.39質量部
顔料分散剤 2.35質量部
凍結防止剤 1.79質量部
pH調整剤 0.04質量部
消泡剤 0.11質量部
増粘剤1 0.38質量部
増粘剤2 0.40質量部
造膜助剤 2.35質量部
また、使用した各成分は次のものである。
酸化チタン:石原産業(株)製:「タイペークCR−97」
顔料分散剤:サンノプコ(株)製:「ノプコスパースSN−5027」
凍結防止剤:エチレングリコール
pH調整剤:アンモニア水
消泡剤:ダウコーニング社製:「FSアンチフォーム013A」
増粘剤1:旭電化工業(株)製:「アデカノールUH−420」
増粘剤2:ローム・アンド・ハーツ・ジャパン(株)製:「プライマルASE−60」
造膜助剤:アジピン酸ジエチル
Figure 0006642096
表1中の耐凍結融解性、耐温水性及び低温造膜性において、「0」は、膨れ、割れ、はがれがいずれも全くなかったことを示している。
(第二のフッ素樹脂に関する詳細な説明)
第二のフッ素樹脂は、具体的には、フッ化ビニリデンポリマーとアクリルポリマーが分子レベルで相溶されているシフクリア(SIFCLEAR:JSR株式会社、商標)とし、ブチルセロソルブを添加する。
第一実施形態における第二のフッ素樹脂は、第一に、(イ)水系媒体中で、下記(A)成分、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)乳化剤及び(D)(A)成分の加水分解触媒を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで(E)ラジカル重合開始剤を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより得られる複合重合体粒子、並びに(ロ)ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子及び/または含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子を含有することを特徴とする水系分散体とする。
(A):下記一般式(3−1)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物及び該加水分解物の部分縮合物の群から選ばれる少なくとも1種。
Figure 0006642096
(式中、R1は炭素数1〜8の1価の有機基を示し、2個存在するR1は相互に同一でも異なってもよく、R2は炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、2個存在するRは相互に同一でも異なってもよく、nは0〜2の整数である。)からなる。
上記の(イ)成分は、下記(A)成分、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)乳化剤及び(D)(A)成分の加水分解触媒を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで(E)ラジカル重合開始剤を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより得られる複合重合体粒子(以下、「(イ)複合重合体粒子」という。)からなる。以下に、(イ)複合重合体粒子の製造に使用される各成分及び(イ)複合重合体粒子の製造方法について説明する。
−(A)成分−
本発明に用いられる(A)成分は、前記一般式(1)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(1)」という。)、オルガノシラン(1)の加水分解物及び該加水分解物の縮合物との群から選ばれる少なくとも1種からなる。
一般式(3−1)において、R1の炭素数1〜8の1価の有機基としては、例えば、フェニル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基等のアシル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、これらの基の置換誘導体のほか、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基等を挙げることができる。
の前記置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基等を挙げることができる。但し、これらの置換誘導体からなるR1の合計炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。
また、Rの炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基等を挙げることができる。
オルガノシラン(1)の具体例としては、テトラアルコキシシラン類、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類のほか、メチルトリアセチルオキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン等を挙げることができる。
テトラアルコキシシラン類は、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等である。
トリアルコキシシラン類は、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等である。
ジアルコキシシラン類は、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン等である。
これらのオルガノシラン(1)うち、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類が好ましい。また、トリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましく、ジアルコキシシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
前記オルガノシラン(1)は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
また、(A)成分におけるオルガノシラン(1)の加水分解物は、オルガノシラン(1)中のSi−OR基が加水分解して、シラノール(Si−OH)基を形成したものであるが、ここでは、オルガノシラン(1)が有するOR基のすべてが加水分解されている必要はなく、例えば、1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
また、(A)成分におけるオルガノシラン(1)の加水分解物の部分縮合物(以下、単に「部分縮合物」という。)は、該加水分解物中のシラノール基が縮合してシロキサン(Si−O−Si)結合を形成したものであるが、本発明では、これらの基がすべて縮合している必要はなく、一部の基のみが縮合したものや、異なる縮合度のものの混合物をも包含する概念である。
第一実施形態における(A)成分としては、オルガノシラン(1)と部分縮合物とが混合されている状態で用いることが好ましい。このようにオルガノシラン(1)と部分縮合物とを共縮合することにより、最終の水系分散体から諸特性に優れた塗膜を形成することができる。また、後述する(E)成分を添加してラジカル重合性モノマーを重合する際の重合安定性が向上して、高固形分の状態でも容易に重合できるため、工業化の面で有利になるという利点もある。
オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合には、オルガノシラン(1)としてジアルコキシシラン類、特にジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を用いることが好ましい。ジアルコキシシラン類を用いることにより、オルガノポリシロキサン分子鎖に直鎖状部分が加わり、得られる複合重合体粒子の可撓性が大きくなる。さらに、得られる水系分散体を用いて塗膜を形成した際に、透明性に優れた塗膜が得られるという効果も奏する。
さらに、オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合には、該部分縮合物は、特に、トリアルコキシシラン類のみ、あるいはトリアルコキシシラン類40〜95モル%とジアルコキシシラン類60〜5モル%との組み合わせから得られるものが好ましい。この割合でトリアルコキシシランとジアルコキシシラン類とを用いることにより、得られる塗膜が柔軟化し、また、耐候性を向上させることができる。
オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合には、オルガノシラン(1)を予め加水分解・縮合させて、オルガノシラン(1)の部分縮合物を調製して使用することが好ましい。部分縮合物を調製する際には、オルガノシラン(1)に適量の水、必要に応じてさらに有機溶剤を添加して、オルガノシラン(1)を加水分解・縮合させることが好ましい。
この場合の水の使用量は、オルガノシラン(1)1モルに対して、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル程度である。
また、必要に応じて用いられる前記有機溶剤としては、得られる部分縮合物や後述する(B)成分と均一に混和できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を挙げることができる。
これらの有機溶剤のうち、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール等を挙げることができる。
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等を、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、炭酸プロピレン等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
なお、部分縮合物中に有機溶剤を含む場合には、後述する縮合・重合反応に先立って、該有機溶媒を除去しておくこともできる。
部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量(以下「Mw」という。)は、通常、800〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。
また、部分縮合物の市販品には、三菱化学(株)製:「MKCシリケート」、コルコート(株)製:「エチルシリケート」、東レ・ダウコーニング(株)製:「シリコンレジン」、東芝シリコーン(株)製:「シリコンレジン」、信越化学工業(株)製:「シリコンレジン」、ダウコーニング・アジア(株)製:「ヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン」、日本ユニカ(株)製:「シリコンオリゴマー」等があり、これらをそのまま、または、さらに縮合させて使用してもよい。
(A)成分として、オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合、両者の混合割合は、オルガノシラン(1)が95〜5重量%(但し、完全加水分解縮合物として換算)、好ましくは90〜10重量%、部分縮合物が5〜95重量%(但し、完全加水分解縮合物として換算)、好ましくは10〜90重量%〔ただし、オルガノシラン(1)とその部分縮合物との合計が100重量%〕である。部分縮合物が5重量%未満では、得られる塗膜の表面にべとつきを生じたり、塗膜の硬化性が低下したりするおそれがあり、一方95重量%を超えると、オルガノシラン(1)成分の割合が少なくなり、(A)成分を含有する混合物を乳化させ難くなるおそれがあり、また(B)成分の重合安定性や重合時のエマルジョンの安定性が低下したり、得られる水系分散体の成膜性が低下したりするおそれがある。
ここで、前記「完全加水分解縮合物」とは、オルガノシラン(1)中のSi−OR2基が100%加水分解してシラノール基となり、さらに完全に縮合してシロキサン結合を形成したものをいう。
−(B)ラジカル重合性モノマー−
第一実施形態の台2のフッ素樹脂に用いられるラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合が可能である限り、特に限定されるものではない。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミノ基含有(メタ)アクリルエステル類、エポキシ基含有不飽和化合物、含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和カルボン酸類、不飽和カルボン酸無水物類、芳香族ビニル化合物、不飽和アミド化合物、不飽和イミド化合物、シアン化ビニル化合物、アミンイミド基含有ビニル系化合物、不飽和エーテル化合物、アルド基含有不飽和化合物、ケト基含有不飽和化合物、共役ジエン類、ジカプロラクトン、シロキサン結合を形成し得る基を有するラジカル重合性モノマー等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル類は、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等である。
水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドランダム共重合体のモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体のモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等である。
アミノ基含有(メタ)アクリルエステル類は、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等である。
エポキシ基含有不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等である。
含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類は、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロ−n−オクチル(メタ)アクリレート等である。
多官能性(メタ)アクリル酸エステル類は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドランダム共重合体のジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体のジ(メタ)アクリレート等である。
不飽和カルボン酸類は、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等である。
不飽和カルボン酸無水物類は、無水マレイン酸、無水イタコン酸等である。
芳香族ビニル化合物は、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等である。
不飽和アミド化合物は、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド等である。
不飽和イミド化合物は、マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等である。
シアン化ビニル化合物は、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等である。
アミンイミド基含有ビニル系化合物は、1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−フェニル−2−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−2−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド等である。
不飽和エーテル化合物は、エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等である。
アルド基含有不飽和化合物は、(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ホルミルスチレン、ホルミル−α−メチルスチレン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、3−(メタ)アクリルアミドメチル−アニスアルデヒド、下記一般式(3−2)
Figure 0006642096
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜3のアルキル基を示し、Rは炭素数1〜4のアルキル基を示す。)で表されるβ−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類等である。
ケト基含有不飽和化合物は、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル−n−プロピルケトン、ビニル−i−プロピルケトン、ビニル−n−ブチルケトン、ビニル−i−ブチルケトン、ビニル−t−ブチルケトン等)、ビニルフェニルケトン、ビニルベンジルケトン、ジビニルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−(メタ)アクリレート−アセチルアセテート等である。
共役ジエン類は、1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等である。
シロキサン結合を形成し得る基を有するラジカル重合性モノマーは、
CH=CHSi(CH)(OCH、CH=CHSi(OCH
CH=CHSi(CH)Cl、CH=CHSiCl
CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
CH=CHCOO(CHSi(OCH
CH=CHCOO(CHSi(CH)(OCH
CH=CHCOO(CHSi(OCH
CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
CH=CHCOO(CHSiCl
CH=CHCOO(CHSi(CH)Cl
CH=CHCOO(CHSiCl
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(OCH
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
CH=C(CH)COO(CHSiCl
CH=C(CH)COO(CHSi(CH)Cl
CH=C(CH)COO(CHSiCl
等である。
前記β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類の具体例としては、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジメチルプロパナール〔即ち、β−(メタ)アクリロキシピバリンアルデヒド〕、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジエチルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジプロピルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α−メチル−α−ブチルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α,α,β−トリメチルプロパナール等を挙げることができる。
ラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、不飽和アミド類、ケト基含有不飽和化合物であり、特に好ましくは、メチルメタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等である。
水系分散体における(A)成分と(B)成分との使用割合は、(A)成分が、通常、1〜99重量部(但し、完全加水分解縮合物として換算)、好ましくは5〜95重量部であり、(B)成分が、通常、99〜1重量部、好ましくは95〜5重量部〔但し、(A)+(B)=100重量部〕である。これは、(B)成分の使用割合が、1重量部未満では、成膜性、耐クラック性が低下する傾向があり、一方、99重量部を超えると、耐候性が低下する傾向があるためである。
−(C)乳化剤−
乳化剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤や水溶性重合体等のいずれでも使用可能である。
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステル塩等のほか、以下、商品名で、ラテムルS−180A(花王(株)製)、エレミノールJS−2(三洋化成(株)製)、アクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業(株)製)等の反応性の陰イオン性界面活性剤を挙げることができる。
また、前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のほか、以下、商品名で、アクアロンRS−20(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−20(旭電化工業(株)製)等の反応性の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
また、前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニルクロライド類、アルキルアミンアセテート類、アルキルアンモニウムクロライド類等のほか、特開昭60−235631号公報に記載されているようなジアリルアンモニウムハロゲン化物等の反応性の陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。
また、前記両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型、ベタイン酸型等のカルボン酸型両性界面活性剤や、スルホン酸型両性界面活性剤等が適当である。
さらに、前記水溶性重合体としては、例えば、公知のアルカリ可溶性重合体等を使用することができる。
これらの界面活性剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
乳化剤の使用量は、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは、0.2〜5重量部である。これは、乳化剤の使用量が0.1重量部未満では、反応成分を十分乳化させることが困難となったり、加水分解・縮合時及びラジカル重合時のエマルジョンの安定性が低下したりする傾向があり、一方、10重量部を超えると、泡立ちが多くなって作業性が悪くなるおそれがあるためである。
−(D)加水分解触媒−
第一実施形態の第二のフッ素樹脂においては、(A)成分の加水分解触媒(以下、単に「加水分解触媒」という)を使用することにより、(A)成分の縮合反応をより促進させ、生成されるオルガノポリシロキサンの分子量が大きくなり、得られる水系分散体から、強度、長期耐久性等に優れた塗膜形成が可能となる。
加水分解触媒としては、例えば、酸性化合物、アルカリ性化合物、塩化合物、アミン化合物、有機金属化合物及び/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物及び/またはその部分加水分解物をまとめて「有機金属化合物等」という)等を挙げることができる。
酸性化合物としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、アルキルチタン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸や、(B)成分でもある(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。これらの酸性化合物のうち、酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸が好ましい。
なお、加水分解触媒として(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸を用いると、(B)成分として重合することから、得られる塗膜の耐候性や耐水性が劣化することがないという利点が得られる。このような場合、(B)成分中のラジカル重合性不飽和カルボン酸の含有率は、通常、5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%程度である。
また、アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。これらのアルカリ性化合物のうち、水酸化ナトリウムが好ましい。また、前記塩化合物としては、例えば、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸等のアルカリ金属塩等を挙げることができる。
また、前記アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシランや、アルキルアミン塩類、四級アンモニウム塩類のほか、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等を挙げることができる。
これらのアミン化合物のうち、3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリメトキシシランが好ましい。
また、前記有機金属化合物等としては、例えば、有機ジルコニウム化合物、有機チタン化合物、有機アルミニウム化合物、これらの有機金属化合物の部分加水分解物のほか、カルボン酸型有機錫化合物、メルカプチド型有機錫化合物、スルフィド型有機錫化合物、クロライド型有機錫化合物、有機錫オキサイド、これらの有機錫オキサイドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物等を挙げることができる。
有機ジルコニウム化合物は、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等である。
有機チタン化合物は、テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等である。
有機アルミニウム化合物は、トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等である。
カルボン酸型有機錫化合物は、
(CSn(OCOC1123
(CSn(OCOCH=CHCOOCH
(CSn(OCOCH=CHCOOC
(C17Sn(OCOC17
(C17Sn(OCOC1123
(C17Sn(OCOCH=CHCOOCH
(C17Sn(OCOCH=CHCOOC
(C17Sn(OCOCH=CHCOOC17
(C17Sn(OCOCH=CHCOOC1633
(C17Sn(OCOCH=CHCOOC1735
(C17Sn(OCOCH=CHCOOC1837
(C17Sn(OCOCH=CHCOOC2041
Figure 0006642096
(C)Sn(OCOC1123
(C)Sn(OCONa)
等である。
メルカプチド型有機錫化合物は、
(CSn(SCHCOOC17
(CSn(SCHCHCOOC17
(C17Sn(SCHCOOC17
(C17Sn(SCHCHCOOC17
(C17Sn(SCHCOOC1225
(C17Sn(SCHCHCOOC1225
(C)Sn(SCOCH=CHCOOC17
(C17)Sn(SCOCH=CHCOOC17
Figure 0006642096
等である。
スルフィド型有機錫化合物は、
(CSn=S、(C17Sn=S、
Figure 0006642096
等である。
クロライド型有機錫化合物は、
(C)SnCl、(CSnCl、(C17SnCl
Figure 0006642096
等である。
有機錫オキサイドは、
(CSnO、(C17SnO等である。
これらの有機金属化合物等のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいは、これらの化合物の部分加水分解物が好ましい。
加水分解触媒は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができ、また、亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
加水分解触媒の使用量は、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。これは、加水分解触媒の使用量が0.01重量部未満では、(A)成分の加水分解・縮合反応が不十分となるおそれがあり、一方、5重量部を超えると、水系分散体の保存安定性が低下したり、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向があるためである。
−(E)ラジカル重合開始剤−
第一実施形態に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、2,2′−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩等の水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系開始剤等を挙げることができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部である。これは、ラジカル重合開始剤の使用量が0.01重量部未満では、(B)ラジカル重合性モノマーの重合反応が途中で失活するおそれがあり、一方、5重量部を超えると、塗膜の耐候性が低下するおそれがあるためである。
−(イ)複合重合体粒子の製造方法−
(イ)複合重合体粒子は、水系媒体中で、前記(A)〜(D)成分を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで前記(E)成分を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより製造され、それにより、(イ)複合重合体粒子が水系媒体中に分散した水系分散体が得られる。なお、前記の混合、乳化して(A)成分の加水分解を進行させる段階では、加水分解物の縮合反応が進行する場合もある。
(イ)複合重合体粒子の製造方法において、エマルジョンの微細化後の(B)成分の重合は、1種のミニエマルジョン重合といえるものである。前記ミニエマルジョン重合は、(B)成分を水系媒体中に、通常、0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、特に好ましくは0.1〜0.2μmの平均粒子径となるように微細に乳化分散させ、その分散状態を維持しつつ重合するエマルジョン重合である。この(イ)複合重合体粒子の製造に際して、エマルジョンを微細化させる処理は、(A)成分の加水分解・縮合反応がある程度進行したのちに行なう。
水は、(イ)複合重合体粒子を製造する際の媒体の主体成分であり、その使用量は、(A)成分に予め添加された水と、各成分を混合乳化する際に添加される水との合計量として、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、50〜2,000重量部、好ましく100〜1,000重量部である。水の使用量が50重量部未満では、乳化が困難となったり、乳化後のエマルジョンの安定性が低下したりするおそれがあり、一方、2,000重量部を超えると、生産性が低下するため好ましくない。
(イ)複合重合体粒子を製造する際の各成分の混合乳化は、通常の攪拌手段を用いて実施することができ、また、この混合乳化及びエマルジョンの微細化は、例えば、高圧ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波分散機等を用いて実施することができる。
(A)成分の加水分解・縮合反応及び(B)成分の重合反応の条件は、反応温度が、通常、25〜90℃、好ましくは40〜80℃、反応時間が、通常、0.5〜15時間、好ましくは1〜8時間である。
この加水分解・縮合反応及び重合反応の過程では、乳化状態で、(A)成分中のオルガノシラン(1)の加水分解・縮合反応が先に進行し、(B)成分の重合反応は、エマルジョンが微細化され、(E)成分が加えられてから進行する。なお、(A)成分がオルガノシラン(1)と部分縮合物とを含む場合の縮合反応は、オルガノシラン(1)の加水分解物や部分縮合物単独での縮合反応のほか、オルガノシラン(1)の加水分解物と部分縮合物との共縮合反応も同時に進行する場合がある。
このような加水分解・縮合反応及び重合反応によると、得られる複合重合体粒子内に、(A)成分に由来するオルガノポリシロキサン成分と(B)成分に由来するビニル系ポリマー成分とが相互に貫入した網目構造(IPN)を形成する。また、(B)成分がシロキサン結合を形成し得る基を有するラジカル重合性モノマーを含有する場合は(A)成分に由来するオルガノポリシロキサン成分と(B)成分に由来するビニル系ポリマー成分とが化学的に結合し、さらには(B)成分の重合時に反応性ラジカルの連鎖移動が生じて、オルガノポリシロキサン鎖にビニル系ポリマー成分がグラフトして化学的に結合する場合もある。さらに、この加水分解・縮合反応及び重合反応では、100℃未満の低沸点有機溶媒やトルエン等の芳香族有機溶剤を実質的に含まないため、良好な作業環境が確保される。
なお、この加水分解・縮合反応及び重合反応において、(A)成分や(B)成分がカルボキシル基やカルボン酸無水物基等の酸性基を有する場合には、加水分解・縮合反応及び重合反応後に、塩基性化合物を添加してpHを調節することが好ましく、また、これらの各成分がアミノ基やアミンイミド基等の塩基性基を有する場合には、加水分解・縮合反応及び重合反応後に、酸性化合物を添加してpHを調節することが好ましい。
さらに、これらの各成分が酸性基と塩基性基の両方を有する場合で、いずれか一方の基の割合が多いときは、加水分解・縮合反応及び重合反応後に、これらの基の割合に応じて、塩基性化合物あるいは酸性化合物を添加して、pHを調節することが好ましい。それにより、得られる複合重合体粒子の親水性を高めて、分散性を向上させることができる。
前記pH調節に使用される塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類;カセイカリ、カセイソーダ等のアルカリ金属水酸化物等を挙げることができ、また、酸性化合物としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、クエン酸、アジピン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。
前記pH調節後の水系分散体のpHは、通常、6〜10、好ましくは7〜8である。
(イ)複合重合体粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.3μmである。
このようにして、(イ)複合重合体粒子が水系媒体中に分散した水系分散体が得られるが、この水系分散体は、そのまま、あるいは濃度を調整してから、最終の水系分散体の調製に使用することが好ましい。
(イ)複合重合体粒子の水系分散体の固形分濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。この固形分濃度は、通常、水の量によって調整される。
(イ)複合重合体粒子の水系分散体における媒体は、本質的に水からなるが、場合により、アルコール等の有機溶媒を数重量%程度まで含まれていてもよい。
(イ)複合重合体粒子の水系分散体が、前記(A)成分の調製時に用いられた有機溶媒を含む場合には、この有機溶媒を除去してから使用することもできる。
さらに、(イ)複合重合体粒子の水系分散体には、必要に応じて有機溶媒、例えば(A)成分の調製時に用いられるものを添加することもできる。
・(ロ)成分
第一実施形態の第二のフッ素樹脂における(ロ)成分は、ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子及び/または含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子からなる。
以下では、ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子を「重合体粒子(i)」といい、含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子を「重合体粒子(II)」といい、重合体粒子(i)と重合体粒子(II)とをまとめて「(ロ)重合体粒子」という。
重合体粒子(ii)における含フッ素系重合体は、ラジカル重合性含フッ素モノマーの単独重合体、あるいは、共重合体からなる。
重合体粒子(i)におけるラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体及び重合体粒子(ii)における含フッ素系重合体に使用されるラジカル重合性含フッ素モノマーとしては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンレン、トリフルオロクロロエチレンレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン等のフルオロオレフィン類や、(パー)フルオロ(メタ)アクリル酸、(パー)フルオロ(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類や、前記(イ)複合重合体粒子における(B)ラジカル重合性モノマーについて例示した含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。
これらのラジカル重合性含フッ素モノマーのうち、フルオロオレフィン類が好ましく、さらに好ましくは、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンレン、ヘキサフルオロプロピレン等であり、特に好ましくはフッ化ビニリデンである。
前記ラジカル重合性含フッ素モノマーは、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
また、重合体粒子(i)におけるラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体及び重合体粒子(ii)における(メタ)アクリル系重合体に使用される(メタ)アクリル系モノマーは、ラジカル重合性のものであり、その例としては、前記(イ)複合重合体粒子における(B)ラジカル重合性モノマーについて例示した、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和アミド類中の(メタ)アクリルアミド、あるいは、その誘導体類と同様の化合物や、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
これらの(メタ)アクリル系モノマーのうち、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルアクリレート類、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキルメタクリレート類、(メタ)アクリル酸等が好ましく、特に、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、(メタ)アクリル酸等が好ましい。
前記(メタ)アクリル系モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
さらに、重合体粒子(i)におけるラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体並びに重合体粒子(ii)における含フッ素系重合体及び(メタ)アクリル系重合体は、前記した化合物以外のラジカル重合性モノマー(以下、「他のラジカル重合性モノマー」という)を含有することができる。
他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、前記(イ)複合重合体粒子における(B)ラジカル重合性モノマーについて例示した化合物のうち、重合体粒子(i)及び重合体粒子(ii)について例示した前記(メタ)アクリル系モノマー以外の化合物を挙げることができる。
これらの他のラジカル重合性モノマーのうち、アルド基含有不飽和化合物、ケト基含有不飽和化合物等が好ましく、特に、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等が好ましい。
前記他のラジカル重合性モノマーは、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
(ロ)重合体粒子としては、重合体粒子(ii)が好ましい。
重合体粒子(ii)の構造としては、含フッ素系重合体をコアとし、(メタ)アクリル系重合体をシェルとするコア・シェル型、(メタ)アクリル系重合体をコアとし、含フッ素系重合体をシェルとするコア・シェル型、含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体とが単一粒子中で均一に相溶した均質型等を挙げることができるが、特に耐候性を重視する場合は、均質型であることが好ましい。
重合体粒子(ii)が均質型であることは、示差走査型熱量分析において、単一のガラス転移点を示すことにより、あるいは、重合体粒子(ii)をフィルム状にした場合に、光学的に透明なフィルムを形成することにより、容易に判別することができる。
重合体粒子(ii)において、含フッ素系重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと他のフルオロオレフィンとの共重合体が好ましく、さらに好ましくは、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等であり、特に好ましくは、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等である。
前記含フッ素系重合体は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
前記好ましいフッ化ビニリデンと他のフルオロオレフィンとの共重合体において、フッ化ビニリデンの含有率は、通常、50重量%以上である。
また、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体の場合、各モノマーの含有率は、好ましくは、フッ化ビニリデンが50〜90重量%、テトラフルオロエチレンが50〜10重量%であり、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の場合、各モノマーの含有率は、好ましくは、フッ化ビニリデンが50〜90重量%、ヘキサフルオロプロピレンが50〜10重量%であり、さらに、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の場合、各モノマーの含有率は、好ましくは、フッ化ビニリデンが50〜80重量%、テトラフルオロエチレンが10〜40重量%、ヘキサフルオロプロピレンが5〜40重量%である。
本発明において、含フッ素系重合体の重量平均分子量は、通常、100,000〜500,000である。
また、(メタ)アクリル系重合体としては、好ましくは、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルアクリレート類及び/またはアルキル基の炭素数が1〜6のアルキルメタクリレート類と、アルド基含有不飽和化合物及び/またはケト基含有不飽和化合物とを含有する共重合体であり、さらに好ましくは、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート及びシクロヘキシルメタクリレートの群の少なくとも1種と、アクロレイン、ビニルメチルケトン及びジアセトン(メタ)アクリルアミドの群の少なくとも1種との、場合により不飽和カルボン酸をさらに含有する共重合体である。
これらの(メタ)アクリル系重合体は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
(メタ)アクリル系重合体において、各モノマーの含有率は、アルキル(メタ)アクリレートが、好ましくは40〜99.1重量%、さらに好ましくは50〜80重量%であり、アルド基含有不飽和化合物及びケト基含有不飽和化合物の合計量が、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは2〜7重量%であり、不飽和カルボン酸が、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは1〜15重量%であり、これら以外のラジカル重合性モノマーが、好ましくは0〜59.9重量%、さらに好ましくは0〜30重量%である。
(メタ)アクリル系重合体においては、特に、アルド基含有不飽和化合物及びケト基含有不飽和化合物の合計量が0.1重量%未満では、後述するヒドラジン系架橋剤により架橋させても架橋点が少なくなり、耐温水性や耐溶剤性が低下する傾向があり、一方20重量%を超えると、耐候性や耐温水性が低下する場合がある。
また、(メタ)アクリル系重合体において、アルキルアクリレート類とアルキルメタクリレート類とを併用する場合は、アルキルアクリレート類とアルキルメタクリレート類との合計量に対し、アルキルアクリレート類を30〜50重量%使用することが好ましい。
また、(メタ)アクリル系重合体がアルド基及び/またはケト基を有するときには、該(メタ)アクリル系重合体を含フッ素系重合体と均一に相溶させるために、アルキルアクリレート類とアルキルメタクリレート類との合計量に対し、アルキルメタクリレート類を、50重量%以上使用することが好ましい。
本発明において、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、通常、50,000〜100,000である。
重合体粒子(ii)を製造するに当たっては、水系媒体中に分散した含フッ素系重合体粒子100重量部(固形分換算)の存在下に、(メタ)アクリル系重合体を与えるラジカル重合性モノマー20〜500重量部、好ましくは40〜300重量部を乳化重合することが望ましい。これは、ラジカル重合性モノマーの使用量が、20重量部未満では、加工性(特に成膜性)、基体との密着性等が低下する傾向があり、一方500重量部を超えると、含フッ素系重合体の有する耐候性、耐薬品性等が損なわれるおそれがあるためである。
重合体粒子(ii)の製造に使用される含フッ素系重合体は、乳化重合、溶液重合、沈殿重合等の適宜の方法により製造することができるが、特に乳化重合によって製造することが、得られた含フッ素系重合体の水系分散体をそのまま、あるいは濃度を調整して、(メタ)アクリル系重合体を与えるラジカル重合性モノマーの乳化重合に使用することができる点で好ましい。
含フッ素系重合体を乳化重合以外の方法により製造した場合、含フッ素系重合体を水性媒体中に分散させる方法は特に限定されるものではなく、その方法としては、例えば、含フッ素系重合体の溶液を水系分散体に転相する方法、沈澱重合により得た含フッ素系重合体粒子を水系媒体中に分散させる方法等を挙げることができる。
重合体粒子(ii)を製造する際の含フッ素系重合体の水系分散体における平均粒径は、好ましくは0.03〜0.3μm、さらに好ましくは0.03〜0.2μmである。
含フッ素系重合体粒子の存在下におけるラジカル重合性モノマーの乳化重合は、1種のシード重合と考えることができる。その反応挙動は必ずしも明確ではないが、添加されたラジカル重合性モノマーが主に含フッ素系重合体粒子中に吸収あるいは吸着され、該粒子を膨潤させながら重合が進行していくものと考えられる。
この乳化重合の反応条件は特に制約されるものではなく、例えば、水系媒体中、乳化剤及び重合開始剤の存在下で、例えば30〜100℃程度の温度で、1〜30時間程度反応を行う。また、必要に応じて、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤、溶媒等を添加してもよい。
前記乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせ等が使用され、場合により、両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を用いることもできる。
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等を挙げることができる。
これらの陰イオン性界面活性剤のうち、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等が好ましい。
また、前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、通常、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が使用される。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルナトリウム塩、イミダゾリンスルホン酸ナトリウム塩等を挙げることができる。
前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
また、乳化剤として、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルポリオキシエチレン、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素系界面活性剤を使用することもできる。
さらに、乳化重合においては、ラジカル重合性モノマーと共重合可能な、いわゆる反応性乳化剤、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、アリルアルキルスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル等を使用することができ、特に、2−(1−アリル)−4−ノニルフェノキシポリエチレングリコール硫酸エステルアンモニウム塩と2−(1−アリル)−4−ノニルフェノキシポリエチレングリコールとを併用することが好ましい。
乳化剤の使用量は、含フッ素系重合体粒子とラジカル重合性モノマーとの合計量100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部である。
また、前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性重合開始剤や、これらの水溶性重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系等を挙げることができる。
前記還元剤としては、例えば、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、またはその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、グルコース等を挙げることができる。
これらの還元剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
また、油溶性重合開始剤を、ラジカル重合性モノマーあるいは溶媒に溶解して使用することもできる。
前記油溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビスイソカプロニトリル、2,2’−アゾビス(フェニルイソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキシド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等を挙げることができる。
これらの油溶性重合開始剤のうち、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキシド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノーエート)等が好ましい。
第一実施形態の第二のフッ素樹脂において、水溶性重合開始剤及び油溶性重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とを併用することもできる。
重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常、0.1〜3重量部である。
また、前記連鎖移動剤としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム等のハロゲン化炭化水素類;n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ジペンテン、ターピノーレン等のテンペン類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチルチウラムジスルフィド等のチウラムスルフィド類等を挙げることができる。
これらの連鎖移動剤は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常、0〜10重量部である。
また、前記キレート化剤としては、例えば、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸等を、前記pH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等を挙げることができる。
これらのキレート化剤及びpH調整剤は、それぞれ単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
キレート化剤及びpH調整剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、それぞれ、通常、0〜0.1重量部及び0〜3重量部である。
油溶性重合開始剤を使用する際に用いる前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トリクロロトリフルオロエタン、メチルイソブチルケトン、ジメチルスルホキシド、トルエン、ジブチルフタレート、メチルピロリドン、酢酸エチル等を挙げることができる。
これらの溶媒は、単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
溶媒の使用量は、作業性、防災安全性、環境安全性及び製造安全性を損なわない範囲内の少量であることが好ましく、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常、0〜20重量部程度である。
乳化重合に際して、含フッ素系重合体粒子及びラジカル重合性モノマーは、種々の方法で添加することができる。
それらの添加方法としては、例えば、1)含フッ素系重合体粒子の水系分散体にラジカル重合性モノマーの全量を一括して添加する方法、2)含フッ素系重合体粒子の水系分散体にラジカル重合性モノマーの一部を仕込んで反応させたのち、残りのラジカル重合性モノマーを連続または分割して仕込む方法、3)含フッ素系重合体粒子の水系分散体にラジカル重合性モノマーの全量を連続または分割して添加する方法、4)水系媒体中におけるラジカル重合性モノマーの乳化重合時に、含フッ素系重合体粒子を連続または分割して添加する方法等を挙げることができる。
これらの添加方法のうち、特に、1)の方法や、2)の方法において、含フッ素系重合体粒子の水系分散体に最初に仕込むラジカル重合性モノマーの量が全体の50重量%以上である方法が好ましい。
このような含フッ素系重合体粒子の存在下でのラジカル重合性モノマーの乳化重合より得られる重合体粒子(ii)の平均粒径は、通常、0.06〜3μm、好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.3μmである。前記平均粒径が0.04μm未満では、水系分散体の粘度が上昇して高固形分とすることが困難となって生産性が低下したり、また使用条件により大きな機械的剪断力が作用する場合では、凝固物が発生しやすくなったりする傾向があり、一方、3μmを超えると、水系分散体の貯蔵安定性がやや低下する傾向がある。
重合体粒子(ii)の平均粒径は、含フッ素系重合体粒子の大きさを適宜選択することによって、容易に調整することができる。
また、重合体粒子(i)も、前述したような重合体粒子(ii)の水系分散体の製造方法と同様にして、製造することができる。
(ロ)重合体粒子の水系分散体の固形分濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。この固形分濃度は、通常、水の量によって調整される。
(ロ)重合体粒子の水系分散体における媒体は、本質的に水からなるが、場合により、アルコール等の有機溶媒を数重量%程度まで含まれていてもよい。
第一実施形態の第二のフッ素樹脂における水系分散体は、(イ)複合重合体粒子と(ロ)重合体粒子とを含有するものである。
また、第一実施形態の水系分散体における(イ)複合重合体粒子と(ロ)重合体粒子との比率は、通常、90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70、特に好ましくは60/40〜40/60である。
また、第一実施形態の第二のフッ素樹脂の水系分散体における(イ)複合重合体粒子及び(ロ)重合体粒子の合計濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは30〜50重量%である。
第一実施形態の第二のフッ素樹脂の特徴としては、この第二のフッ素樹脂をコート剤として形成した塗膜においては、予め形成した水滴に、さらに一定流量で水を加えていき、水滴を膨張させ接触角変化を経時測定する手法である水の動的接触角(拡張法)によって、塗膜上における水接触角を測定すると、図2中に表すように、水滴膨張時の水接触角は、(b)が100°以上に増加するのに対し、(a)は95°以下と変化幅が小さく、例えば降雨のように継続的に水がかかる条件下で(a)
第一実施形態の第二のフッ素樹脂は膜表面で水が濡れ広がりやすく、表面が洗われやすいことに対応している。
表2に、第一実施形態の第二のフッ素樹脂の一般物性を示す。
Figure 0006642096
第二のフッ素樹脂の添加剤としては、必要に応じ、造膜補助剤、凍結防止剤、顔料、充填剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、レオロジー調整剤、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、つや消し剤、潤滑剤、加硫剤等を添加することもできる。
第一実施形態における不燃シート1は、樹脂層8において、酸化チタン他に起因すると思われる遮熱性を有し、フッ素・シリコン由来の、高い耐候性を呈することができ、表面での疎水性と親水性のバランスを制御することで、高い耐汚染性を有し、遮熱用途では、耐汚染性により遮熱性能の保持率を向上することができ、アクリルを含有することで成膜温度を常温として焼成することなく乾燥工程のみで製造可能であり、溶剤を使用しない水系樹脂なので、環境への影響を低減することができる。
(不燃シート1の製造方法)
次に、図1を参照して、第一実施形態の不燃シート1の製造方法を説明する。
第一実施形態の不燃シート1は、ガラス繊維6にアクリルフッ素樹脂を含浸して形成された基材2上に、無機顔料を含有したカチオン重合型紫外線硬化インキで形成された印刷層4を積層して製造する。
具体的には、まず、ガラス繊維6にアクリルフッ素樹脂を含浸させて、基材2を形成する。
次に、ガラス繊維6にアクリルフッ素樹脂を含浸して形成した基材2上に、無機顔料を含有したカチオン重合型紫外線硬化インキで形成された印刷層4を積層して製造する。
基材2上に、無機顔料を含有したカチオン重合型紫外線硬化インキで形成された印刷層4を積層する際には、まず、インクジェット方式を用いて、基材2上にカチオン重合型紫外線硬化インキを塗布する。その後、カチオン重合型紫外線硬化インキに対して紫外線を照射して硬化させる。
ここで、印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキは、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成する。
また、ガラス繊維6に含浸させるアクリルフッ素樹脂は、アクリル共重合物及びアクリルポリマーを有するフッ素樹脂とする。
なお、上述した第一実施形態は、本発明の一例であり、本発明は、上述した第一実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
(第一実施形態の効果)
第一実施形態の不燃シート1であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(1)不燃シート1が、フッ素樹脂(第一のフッ素樹脂、第二のフッ素樹脂)を含浸した基材2と、基材2上に積層され、且つカチオン重合型紫外線硬化インキで形成された印刷層4とを備える。
その結果、基材2に含浸したフッ素樹脂が有するフッ素と、印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキが有するカチオンとの結合力により、不燃シート1のインキ密着及び耐候性を向上させることが可能となる。
(2)印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキに、無機顔料が含有されている。
その結果、有機顔料が含有されているカチオン重合型紫外線硬化インキで、印刷層4を形成した場合と比較して、不燃シート1の耐候性を向上させることが可能となる。
(3)印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキが、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成されている。
その結果、入手が容易な化合物を用いて、カチオン重合型紫外線硬化インキを形成することが可能となる。
(4)基材2に含浸するフッ素樹脂が、アクリル共重合物及びアクリルポリマーのうち少なくとも一方を有する。
その結果、入手が容易なフッ素樹脂を用いて、基材2を形成することが可能となる。
(5)基材2が、ガラス繊維6にフッ素樹脂を含浸して形成されている。
その結果、不燃性及び透過性を有する基材2を、容易に形成することが可能となる。
また、第一実施形態の不燃シート1の製造方法であれば、以下に記載する効果を奏することが可能となる。
(6)フッ素樹脂を含浸させて形成した基材2上に、カチオン重合型紫外線硬化インキで形成した印刷層4を積層して、不燃シート1を製造する。
その結果、基材2に含浸したフッ素樹脂が有するフッ素と、印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキが有するカチオンとの結合力により、不燃シート1のインキ密着及び耐候性を向上させることが可能となる。
(7)無機顔料を含有させたカチオン重合型紫外線硬化インキを用いて、印刷層4を形成する。
その結果、有機顔料が含有されているカチオン重合型紫外線硬化インキで、印刷層4を形成した場合と比較して、不燃シート1の耐候性を向上させることが可能となる。
(8)エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成したカチオン重合型紫外線硬化インキを用いて、印刷層4を形成する。
その結果、入手が容易な化合物を用いて、カチオン重合型紫外線硬化インキを形成することが可能となる。
(9)アクリル共重合物及びアクリルポリマーのうち少なくとも一方を有するフッ素樹脂を含浸させて、基材2を形成する。
その結果、入手が容易なフッ素樹脂を用いて、基材2を形成することが可能となる。
(10)ガラス繊維6にフッ素樹脂を含浸させて、基材2を形成する。
その結果、不燃性及び透過性を有する基材2を、容易に形成することが可能となる。
(変形例)
(1)第一実施形態では、印刷層4を形成するカチオン重合型紫外線硬化インキとして、無機顔料が含有されているインキを用いたが、カチオン重合型紫外線硬化インキの構成は、これに限定するものではない。すなわち、カチオン重合型紫外線硬化インキとして、有機顔料が含有されているインキを用いてもよい。
(2)第一実施形態では、カチオン重合型紫外線硬化インキとして、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成されているインキを用いたが、印刷層4を形成するインキは、カチオン重合型紫外線硬化インキであれば、用いられる化合物は、限定されるものではない。
(3)第一実施形態では、基材2に含浸させるフッ素樹脂の構成を、アクリル共重合物及びアクリルポリマーのうち少なくとも一方を有する構成としたが、これに限定するものではなく、基材2に含浸させるフッ素樹脂の構成を、アクリル共重合物及びアクリルポリマーを有していない構成としてもよい。
(4)第一実施形態では、基材2を、ガラス繊維6にフッ素樹脂を含浸して形成したが、これに限定するものではなく、基材2を、アラミド繊維、カーボン繊維、金属繊維等、ガラス繊維6以外の繊維にフッ素樹脂を含浸して形成してもよい。
第一実施形態の図1を参照して、以下に記載する実施例により、本発明例の不燃シート1と、比較例1から4の不燃シートについて説明する。
(本発明例の構成)
本発明例の不燃シート1は、上述した第一実施形態と同様、ガラス繊維にアクリルフッ素樹脂を含浸して形成された基材2上に、無機顔料を含有したカチオン重合型紫外線硬化インキで形成された印刷層4を積層して製造した。
さらに、本発明例の不燃シート1は、印刷層4を、解像度が600[dpi]×600[dpi]となるように絵柄を印刷して形成した。
(比較例1の構成)
比較例1の不燃シートは、印刷層を形成するインキとして、有機顔料を含有したインキであるラジカル重合型紫外線硬化型インキ(例えば、東洋インキ(株)製:「FV03」)を用いた点を除き、本発明例の不燃シート1と同様の構成とした。
(比較例2の構成)
比較例2の不燃シートは、印刷層を形成するインキとして、有機顔料を含有したインキであるラテックスインキ(例えば、HP(株)製:「Latexインキ」)を用いた点を除き、本発明例の不燃シート1と同様の構成とした。
(比較例3の構成)
比較例3の不燃シートは、印刷層を形成するインキとして、有機顔料を含有したインキである溶剤系インキ(例えば、ローランド(株)製:「ECO SOL MAX2」)を用いた点を除き、本発明例の不燃シート1と同様の構成とした。
(比較例4の構成)
比較例4の不燃シートは、印刷層を形成するインキとして、無機顔料を含有したインキであるラジカル重合型紫外線硬化型インキ(例えば、東洋インキ(株)製:「FV03」)を用いた点を除き、本発明例の不燃シート1と同様の構成とした。
(性能評価)
本発明例の不燃シート1と、比較例1から4の不燃シートに対し、インキ密着性の評価と、耐候性の評価を行った。その結果を、表3中に表す。
(インキ密着性の評価)
インキ密着性の評価は、JIS‐K5400に準拠した方法を用い、1mm基盤目剥離試験で行った。
その際、剥離試験に使用するセロテープ(登録商標)に、印刷層を形成するインキが取られなかった(インキが基材から剥離しなかった)場合を合格(表中では、「○」で表す)と評価し、印刷層を形成するインキが取られた(インキが基材から剥離した)場合を不合格(表中では、「×」で表す)と評価した。
(耐候性の評価)
耐候性の評価は、500時間の試験を行った後の色差(ΔE)を、耐候試験フェードメーターを用いて計測して行った。
その際、色差(ΔE)が1.5未満である場合を合格(表中では、「○」で表す)と評価し、色差(ΔE)が1.5以上である場合を不合格(表中では、「×」で表す)と評価した。
Figure 0006642096
表3中に表されるように、本発明例の不燃シート1は、比較例1から4の不燃シートよりも、インキ密着及び耐候性が高いことが確認された。
1…不燃シート、2…基材、4…印刷層、6…ガラス繊維、6a…縦糸、6b…横糸、8…樹脂層

Claims (6)

  1. アクリルフッ素樹脂を含浸した基材と、
    前記基材上に積層され、且つカチオン重合型紫外線硬化インキで形成された印刷層と、を備え、
    前記アクリルフッ素樹脂は、フッ化ビニリデン共重合物と、アクリル共重合物と、酸化チタンと、を有する第一のフッ素樹脂、及びフッ化ビニリデン系ポリマーと、シロキサン系ポリマーと、架橋型アクリルポリマーと、を有する第二のフッ素樹脂のうち少なくとも一方を有し、
    前記カチオン重合型紫外線硬化インキは、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成されていることを特徴とする不燃シート。
  2. 前記カチオン重合型紫外線硬化インキには、無機顔料が含有されていることを特徴とする請求項1に記載した不燃シート。
  3. 前記基材は、ガラス繊維に前記アクリルフッ素樹脂を含浸して形成されていることを特徴とする請求項1または請求項に記載した不燃シート。
  4. フッ化ビニリデン共重合物と、アクリル共重合物と、酸化チタンと、を有する第一のフッ素樹脂、及びフッ化ビニリデン系ポリマーと、シロキサン系ポリマーと、架橋型アクリルポリマーと、を有する第二のフッ素樹脂のうち少なくとも一方を有するアクリルフッ素樹脂を含浸させて形成した基材上に、エポキシ化合物、オキセタン化合物、ビニルエーテル化合物のうちいずれか一つの化合物を用いて形成されているカチオン重合型紫外線硬化インキで形成した印刷層を積層して不燃シートを製造することを特徴とする不燃シートの製造方法。
  5. 無機顔料を含有させた前記カチオン重合型紫外線硬化インキを用いて前記印刷層を形成することを特徴とする請求項に記載した不燃シートの製造方法。
  6. ガラス繊維に前記アクリルフッ素樹脂を含浸させて前記基材を形成することを特徴とする請求項4または請求項に記載した不燃シートの製造方法。
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