JP4016689B2 - 水系分散体および塗装体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水系分散体および塗装体に関わり、さらに詳細には、オルガノシランとラジカル重合性モノマーとの特定の縮合・重合プロセスを経て得られる複合重合体粒子、並びにフッ素系重合体粒子を含有する、塗料等として有用な水系分散体、および該水系分散体を含有する塗料により塗装された塗装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、コーティング材は様々な分野で使用されており、その適用範囲は拡大の一途をたどっているが、それに伴い、コーティング材に対する要求性能もますます高度化しており、近年では、密着性、耐有機溶剤性、耐湿性、耐候性、耐(温)水性、耐汚染性などの性能バランスに優れ、かつ硬度の高い塗膜を形成し得るコーティング材が求められている。
このような要求の一部を満たすコーティング材として、オルガノシランの部分縮合物、コロイダルシリカの分散液およびシリコーン変性アクリル樹脂からなる組成物(特開昭60−135465号公報)、あるいはオルガノシランの縮合物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物および加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂からなる組成物(特開昭64−1769号公報)などが提案されている。
しかしながら、これらのコーティング材は、いずれも溶剤型であり、近年における低公害、省資源、安全衛生などの観点から、脱溶剤化への要請が強く、水系コーティング材への切替えが進められるとともに、その用途も拡大しており、それに伴って水系コーティング材に対する要求性能もますます高度となっている。
【0003】
そのような中で、水系コーティング材としての耐水性、耐有機溶剤性などの性能の向上を期待できるものとして、反応型樹脂エマルジョンの開発が鋭意検討され、その一つに加水分解性シリル基を有する樹脂エマルジョンが提案されている。その例として、特開平7−26035号公報に、加水分解性シリル基とアミンイミド基とを有するビニル系重合体を含有する反応型樹脂エマルジョンが、また特開平7−91510号公報に、アルコキシシリル基を有するビニル系重合体の水分散体とスズ化合物の水分散体からなる水性塗料組成物が開示されている。
しかしながら、これらの加水分解性シリル基含有樹脂エマルジョンは、保存安定性に劣り、特にこのエマルジョンを長期間保存した場合、ゲル化したり、また長期保存後のエマルジョンから得られる塗膜の性能が、製造直後のエマルジョンから得られる塗膜とは異なり、安定した品質を確保できないという欠点があり、実用性の面で問題があり、また保存安定性が比較的良好な場合にも、密着性、耐候性、耐汚染性などを含めた性能バランスの面では満足できないものである。
また、特開平11−255846号公報には、シラノール基含有シリコーン樹脂とラジカル重合性モノマーを含有する溶液を乳化重合して得られるシリコーン樹脂含有エマルジョン組成物が提案されているが、この方法では、重合中に凝縮物が多量に析出したり、重合性が低下したりするため、工業的に利用するのは困難である。
【0004】
一方、従来からコーティング材に使用されている重合体成分のうち、(メタ)アクリル系重合体は優れた透明性、造膜性を有することから、水系分散体としてコーティング材に広く使用されており、またポリシロキサンは優れた耐汚染性、撥水性、無機質基材に対する密着性を有し、これらの(メタ)アクリル系重合体とポリシロキサンの優れた性能の相乗効果を狙って、例えば特開平3−45628号公報や特開平4−261454号公報に、両重合体成分を複合化して、コーティング材等に使用することが提案されている。しかし、これらの(メタ)アクリル系重合体とポリシロキサンとの複合体は、有機質基材に対する密着性や雨筋などに対する耐汚染性の点で満足できるものはなく、また塗膜に重要な耐候性の面でも必ずしも十分とはいえなかった。
【0005】
また、含フッ素系(共)重合体は耐候性、耐熱性、気体不透過性、電気絶縁性等に優れており、従来からコーティング材の重合体成分として用いられているが、近年では、ポリシロキサンや(メタ)アクリル系重合体と組み合わせて水系コーティング材に使用することも提案されている。例えば、特開平11−209475号公報には、加水分解性シリル基および酸基を併有するフッ素共重合体とポリシロキサンとを縮合させたフッ素樹脂成分を含有する水性硬化性樹脂組成物が、特開平11−172200号公報には、アルコキシシラン縮合物と、加水分解性シリル基含有含フッ素共重合体あるいは加水分解性シリル基含有アクリル共重合体とを含有し、媒体が有機溶媒と水とからなる無機・有機複合型水系被覆用組成物がそれぞれ記載され、また特開平7−268163号公報には、含フッ素系重合体とカルボニル基含有単量体成分を含むアクリル系重合体との複合重合体粒子、およびヒドラジン誘導体からなる架橋剤を含有する水性フッ素樹脂組成物が、特開平6−329962号公報、特開平8−100138号公報および特開平8−325488号公報には、カルボキシル基および水酸基を有する水性含フッ素共重合体と、アルコキシシラン基および他の官能基を有するアクリル共重合体とを含有する艶消し電着塗料組成物がそれぞれ記載されている。しかし、これらの含フッ素系(共)重合体を含有する水系コーティング材も、耐アルカリ性、耐有機溶剤性、耐湿性、耐候性、耐水性、耐汚染性等を含めた塗膜の総合性能の面で未だ満足できるレベルにあるとはいえない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記従来技術の問題点を背景になされたものであり、その課題は、ビニル系重合体とオルガノポリシロキサンとの複合重合体粒子および含フッ素系モノマー成分と(メタ)アクリル系モノマー成分とを含む重合体粒子を含有し、水系分散体として、密着性、耐アルカリ性、耐有機溶剤性、耐湿性、耐候性、耐水性、耐汚染性等を含めた塗膜の性能バランスに優れ、しかも透明で硬度の高い塗膜を形成しうる水系分散体、および該水系分散体を含有する塗料で塗装した塗装体を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、第一に、
(イ)水系媒体中で、下記(A)成分、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)乳化剤および(D)(A)成分の加水分解触媒を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで(E)ラジカル重合開始剤を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより得られる複合重合体粒子、並びに(ロ)ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子および/または含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子を含有することを特徴とする水系分散体、
(A): 下記一般式(1)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該加水分解物の部分縮合物の群から選ばれる少なくとも1種。
【0008】
【化2】
【0009】
(式中、R1 は炭素数1〜8の1価の有機基を示し、2個存在するR1 は相互に同一でも異なってもよく、R2 は炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、2個存在するR2 は相互に同一でも異なってもよく、nは0〜2の整数である。)
からなる。
【0010】
本発明は、第二に、
前記水系分散体を含有する塗料を基材に適用してなる塗装体、
からなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
(イ)成分
本発明の(イ)成分は、下記(A)成分、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)乳化剤および(D)(A)成分の加水分解触媒を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで(E)ラジカル重合開始剤を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより得られる複合重合体粒子(以下、「(イ)複合重合体粒子」という。)からなる。
以下に、(イ)複合重合体粒子の製造に使用される各成分および(イ)複合重合体粒子の製造方法について説明する。
−(A)成分−
本発明に用いられる(A)成分は、前記一般式(1)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(1)」という。)、オルガノシラン(1)の加水分解物および該加水分解物の縮合物との群から選ばれる少なくとも1種からなる。
【0012】
一般式(1)において、R1 の炭素数1〜8の1価の有機基としては、例えば、フェニル基;メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基等のアシル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基や、これらの基の置換誘導体のほか、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基等を挙げることができる。
【0013】
R1 の前記置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリロイルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基等を挙げることができる。但し、これらの置換誘導体からなるR1 の合計炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。
【0014】
また、R2 の炭素数1〜5の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基等を挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基等を挙げることができる。
【0015】
オルガノシラン(1)の具体例としては、
テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン等のテトラアルコキシシラン類;
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のトリアルコキシシラン類;
【0016】
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシドキシプロピルジエトキシメチルシラン等のジアルコキシシラン類のほか、
メチルトリアセチルオキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシラン
等を挙げることができる。
【0017】
これらのオルガノシラン(1)うち、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類が好ましい。また、トリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましく、ジアルコキシシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
前記オルガノシラン(1)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0018】
また、(A)成分におけるオルガノシラン(1)の加水分解物は、オルガノシラン(1)中のSi−OR2 基が加水分解して、シラノール(Si−OH)基を形成したものであるが、本発明では、オルガノシラン(1)が有するOR2 基のすべてが加水分解されている必要はなく、例えば、1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
また、(A)成分におけるオルガノシラン(1)の加水分解物の部分縮合物(以下、単に「部分縮合物」という。)は、該加水分解物中のシラノール基が縮合してシロキサン(Si−O−Si)結合を形成したものであるが、本発明では、これらの基がすべて縮合している必要はなく、一部の基のみが縮合したものや、異なる縮合度のものの混合物をも包含する概念である。
【0019】
本発明における(A)成分としては、オルガノシラン(1)と部分縮合物とが混合されている状態で用いることが好ましい。このようにオルガノシラン(1)と部分縮合物とを共縮合することにより、最終の水系分散体から諸特性に優れた塗膜を形成することができる。また、後述する(E)成分を添加してラジカル重合性モノマーを重合する際の重合安定性が向上して、高固形分の状態でも容易に重合できるため、工業化の面で有利になるという利点もある。
【0020】
オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合には、オルガノシラン(1)としてジアルコキシシラン類、特にジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等を用いることがが好ましい。ジアルコキシシラン類を用いることにより、オルガノポリシロキサン分子鎖に直鎖状部分が加わり、得られる複合重合体粒子の可撓性が大きくなる。さらに、得られる水系分散体を用いて塗膜を形成した際に、透明性に優れた塗膜が得られるという効果も奏する。
【0021】
さらに、オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合には、該部分縮合物は、特に、トリアルコキシシラン類のみ、あるいはトリアルコキシシラン類40〜95モル%とジアルコキシシラン類60〜5モル%との組み合わせから得られるものが好ましい。この割合でトリアルコキシシランとジアルコキシシラン類とを用いることにより、得られる塗膜が柔軟化し、また耐候性を向上させることができる。
【0022】
オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合には、オルガノシラン(1)を予め加水分解・縮合させて、オルガノシラン(1)の部分縮合物を調製して使用することが好ましい。部分縮合物を調製する際には、オルガノシラン(1)に適量の水、必要に応じてさらに有機溶剤を添加して、オルガノシラン(1)を加水分解・縮合させることが好ましい。
この場合の水の使用量は、オルガノシラン(1)1モルに対して、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル程度である。
【0023】
また、必要に応じて用いられる前記有機溶剤としては、得られる部分縮合物や後述する(B)成分と均一に混和できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類等を挙げることができる。
これらの有機溶剤のうち、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコール等を挙げることができる。
【0024】
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等を、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン等を、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等を、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、炭酸プロピレン等を挙げることができる。
これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
なお、部分縮合物中に有機溶剤を含む場合には、後述する縮合・重合反応に先立って、該有機溶媒を除去しておくこともできる。
【0025】
部分縮合物のポリスチレン換算重量平均分子量(以下「Mw」という。)は、通常、800〜100,000、好ましくは1,000〜50,000である。 また、部分縮合物の市販品には、三菱化学(株)製のMKCシリケート、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング社製のシリコーンレジン、東芝シリコーン(株)製のシリコーンレジン、信越化学工業(株)製のシリコーンレジン、ダウコーニング・アジア(株)製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、日本ユニカー(株)製のシリコーンオリゴマーなどがあり、これらをそのまま、またはさらに縮合させて使用してもよい。
【0026】
(A)成分として、オルガノシラン(1)と部分縮合物とを併用する場合、両者の混合割合は、オルガノシラン(1)が95〜5重量%(但し、完全加水分解縮合物として換算)、好ましくは90〜10重量%、部分縮合物が5〜95重量%(但し、完全加水分解縮合物として換算)、好ましくは10〜90重量%〔ただし、オルガノシラン(1)とその部分縮合物との合計が100重量%〕である。部分縮合物が5重量%未満では、得られる塗膜の表面にべとつきを生じたり、塗膜の硬化性が低下したりするおそれがあり、一方95重量%を超えると、オルガノシラン(1)成分の割合が少なくなり、(A)成分を含有する混合物を乳化させ難くなるおそれがあり、また(B)成分の重合安定性や重合時のエマルジョンの安定性が低下したり、得られる水系分散体の成膜性が低下したりするおそれがある。
ここで、前記「完全加水分解縮合物」とは、オルガノシラン(1)中のSi−OR2 基が100%加水分解してシラノール基となり、さらに完全に縮合してシロキサン結合を形成したものをいう。
【0027】
−(B)ラジカル重合性モノマー−
本発明に用いられるラジカル重合性モノマーは、ラジカル重合が可能である限り特に限定されるものではない。
ラジカル重合性モノマーとしては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、 エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、n−ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、p−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
【0028】
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドランダム共重合体のモノ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体のモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリルエステル類;
グリシジル(メタ)アクリレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有不飽和化合物;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロ−n−オクチル(メタ)アクリレート等の含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類;
【0029】
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドランダム共重合体のジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイドブロック共重合体のジ(メタ)アクリレート等の多官能性(メタ)アクリル酸エステル類;
【0030】
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸類;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸無水物類;
スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、3,4−ジメチルスチレン、4−エチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、4−メトキシスチレン、4−エトキシスチレン、4−ヒドロキシメチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;
(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、マレイン酸アミド等の不飽和アミド化合物;
【0031】
マレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド等の不飽和イミド化合物;
(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;
1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−フェニル−2−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシ−2−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド等のアミンイミド基含有ビニル系化合物;
エチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、2−アミノエチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル等の不飽和エーテル化合物;
(メタ)アクロレイン、クロトンアルデヒド、ホルミルスチレン、ホルミル−α−メチルスチレン、(メタ)アクリルアミドピバリンアルデヒド、3−(メタ)アクリルアミドメチル−アニスアルデヒド、下記一般式(2)
【0032】
【化3】
(式中、R3 は水素原子またはメチル基を示し、R4 は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を示し、R5 は炭素数1〜3のアルキル基を示し、R6 は炭素数1〜4のアルキル基を示す。)
【0033】
で表されるβ−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類等のアルド基含有不飽和化合物;
ジアセトン(メタ)アクリルアミド、炭素数4〜7のビニルアルキルケトン類(例えば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニル−n−プロピルケトン、ビニル−i−プロピルケトン、ビニル−n−ブチルケトン、ビニル−i−ブチルケトン、ビニル−t−ブチルケトン等)、ビニルフェニルケトン、ビニルベンジルケトン、ジビニルケトン、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニトリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート−アセチルアセテート、ブタンジオール−1,4−(メタ)アクリレート−アセチルアセテート等のケト基含有不飽和化合物;
1,3−ブタジエン、イソプレン、クロロプレン等の共役ジエン類;
ジカプロラクトンや、
【0034】
CH2 =CHSi(CH3)(OCH3)2 、CH2 =CHSi(OCH3)3 、
CH2 =CHSi(CH3)Cl2 、CH2 =CHSiCl3 、
CH2 =CHCOO(CH2)2 Si(CH3)(OCH3)2 、
CH2 =CHCOO(CH2)2 Si(OCH3)3 、
CH2 =CHCOO(CH2)3 Si(CH3)(OCH3)2 、
CH2 =CHCOO(CH2)3 Si(OCH3)3 、
CH2 =CHCOO(CH2)2 Si(CH3)Cl2 、
CH2 =CHCOO(CH2)2 SiCl3 、
CH2 =CHCOO(CH2)3 Si(CH3)Cl2 、
CH2 =CHCOO(CH2)3 SiCl3 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 Si(CH3)(OCH3)2 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 Si(OCH3)3 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 Si(CH3)(OCH3)2 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 Si(OCH3)3 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 Si(CH3)Cl2 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)2 SiCl3 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 Si(CH3)Cl2 、
CH2 =C(CH3)COO(CH2)3 SiCl3
等のシロキサン結合を形成し得る基を有するラジカル重合性モノマー
等を挙げることができる。
【0035】
前記β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジアルキルプロパナール類の具体例としては、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジメチルプロパナール〔即ち、β−(メタ)アクリロキシピバリンアルデヒド〕、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジエチルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α,α−ジプロピルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α−メチル−α−ブチルプロパナール、β−(メタ)アクリロキシ−α,α,β−トリメチルプロパナール等を挙げることができる。
【0036】
本発明におけるラジカル重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル系化合物が好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、(メタ)アクリル酸、不飽和アミド類、ケト基含有不飽和化合物であり、特に好ましくは、メチルメタクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等である。
【0037】
本発明の水系分散体における(A)成分と(B)成分との使用割合は、(A)成分が、通常、1〜99重量部(但し、完全加水分解縮合物として換算)、好ましくは5〜95重量部であり、(B)成分が、通常、99〜1重量部、好ましくは95〜5重量部〔但し、(A)+(B)=100重量部〕である。(B)成分の使用割合が、1重量部未満では、成膜性、耐クラック性が低下する傾向があり、一方99重量部を超えると、耐候性が低下する傾向がある。
【0038】
−(C)乳化剤−
本発明に用いられる乳化剤としては、例えば、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、両性界面活性剤や水溶性重合体等のいずれでも使用可能である。
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステルのアルカリ金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸のアルカリ金属塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸のアルカリ金属塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルのリン酸エステル塩等のほか、以下商品名で、ラテムルS−180A(花王(株)製)、エレミノールJS−2(三洋化成(株)製)、アクアロンHS−10(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープSE−10N(旭電化工業(株)製)等の反応性の陰イオン性界面活性剤を挙げることができる。
【0039】
また、前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等のほか、以下商品名で、アクアロンRS−20(第一工業製薬(株)製)、アデカリアソープNE−20(旭電化工業(株)製)等の反応性の非イオン性界面活性剤を挙げることができる。
また、前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニルクロライド類、アルキルアミンアセテート類、アルキルアンモニウムクロライド類等のほか、特開昭60−235631号公報に記載されているようなジアリルアンモニウムハロゲン化物等の反応性の陽イオン性界面活性剤を挙げることができる。
また、前記両性界面活性剤としては、例えば、アミノ酸型、ベタイン酸型等のカルボン酸型両性界面活性剤や、スルホン酸型両性界面活性剤等が適当である。
さらに、前記水溶性重合体としては、例えば、公知のアルカリ可溶性重合体等を使用することができる。
これらの界面活性剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0040】
乳化剤の使用量は、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、0.1〜10重量部、好ましくは0.2〜5重量部である。乳化剤の使用量が0.1重量部未満では、反応成分を十分乳化させることが困難となったり、加水分解・縮合時およびラジカル重合時のエマルジョンの安定性が低下したりする傾向があり、一方10重量部を超えると、泡立ちが多くなって作業性が悪くなるおそれがある。
【0041】
−(D)加水分解触媒−
本発明においては、(A)成分の加水分解触媒(以下、単に「加水分解触媒」という。)を使用することにより、(A)成分の縮合反応をより促進させ、生成されるオルガノポリシロキサンの分子量が大きくなり、得られる水系分散体から強度、長期耐久性等に優れた塗膜を形成することができる。
【0042】
加水分解触媒としては、例えば、酸性化合物、アルカリ性化合物、塩化合物、アミン化合物、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて「有機金属化合物等」という。)等を挙げることができる。
前記酸性化合物としては、例えば、酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、アルキルチタン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸や、(B)成分でもある(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。これらの酸性化合物のうち、酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、(メタ)アクリル酸が好ましい。
なお、加水分解触媒として(メタ)アクリル酸等のラジカル重合性不飽和カルボン酸を用いると、(B)成分として重合することから、得られる塗膜の耐候性や耐水性が劣化することがないという利点が得られる。このような場合、(B)成分中のラジカル重合性不飽和カルボン酸の含有率は、通常、5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%程度である。
【0043】
また、前記アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。これらのアルカリ性化合物のうち、水酸化ナトリウムが好ましい。
また、前記塩化合物としては、例えば、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸等のアルカリ金属塩等を挙げることができる。
【0044】
また、前記アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシランや、アルキルアミン塩類、四級アンモニウム塩類のほか、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミン等を挙げることができる。これらのアミン化合物のうち、3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリメトキシシランが好ましい。
【0045】
また、前記有機金属化合物等としては、例えば、
テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム等の有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウム等の有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム等の有機アルミニウム化合物や、
これらの有機金属化合物の部分加水分解物のほか、
【0046】
(C4 H9)2 Sn(OCOC11H23)2、
(C4 H9)2 Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、
(C4 H9)2 Sn(OCOCH=CHCOOC4 H9)2 、
(C8 H17)2Sn(OCOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(OCOC11H23)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOCH3)2 、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC4 H9)2 、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC16H33)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC17H35)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC18H37)2、
(C8 H17)2Sn(OCOCH=CHCOOC20H41)2、
【0047】
【化4】
【0048】
(C4 H9)Sn(OCOC11H23)3、
(C4 H9)Sn(OCONa)3
等のカルボン酸型有機錫化合物;
(C4 H9)2 Sn(SCH2 COOC8 H17)2、
(C4 H9)2 Sn(SCH2 CH2 COOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 COOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 CH2 COOC8 H17)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 COOC12H25)2、
(C8 H17)2Sn(SCH2 CH2 COOC12H25)2、
(C4 H9)Sn(SCOCH=CHCOOC8 H17)3、
(C8 H17)Sn(SCOCH=CHCOOC8 H17)3、
【0049】
【化5】
等のメルカプチド型有機錫化合物;
(C4 H9)2 Sn=S、(C8 H17)2Sn=S、
【0050】
【化6】
等のスルフィド型有機錫化合物;
(C4 H9)SnCl3 、(C4 H9)2 SnCl2 、(C8 H17)2SnCl2 、
【0051】
【化7】
等のクロライド型有機錫化合物;
【0052】
(C4 H9)2 SnO、(C8 H17)2SnO等の有機錫オキサイドや、これらの有機錫オキサイドとエチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等のエステル化合物との反応生成物
等を挙げることができる。
【0053】
これらの有機金属化合物等のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの化合物の部分加水分解物が好ましい。
前記加水分解触媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
【0054】
加水分解触媒の使用量は、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜3重量部である。加水分解触媒の使用量が0.01重量部未満では、(A)成分の加水分解・縮合反応が不十分となるおそれがあり、一方5重量部を超えると、水系分散体の保存安定性が低下したり、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
【0055】
−(E)ラジカル重合開始剤−
本発明に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩や、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、2,2′−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩等の水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリル等の油溶性開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸等の還元剤を併用したレドックス系開始剤等を挙げることができる。
【0056】
ラジカル重合開始剤の使用量は、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部である。ラジカル重合開始剤の使用量が0.01重量部未満では、(B)ラジカル重合性モノマーの重合反応が途中で失活するおそれがあり、一方5重量部を超えると、塗膜の耐候性が低下するおそれがある。
【0057】
−(イ)複合重合体粒子の製造方法−
(イ)複合重合体粒子は、水系媒体中で、前記(A)〜(D)成分を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで前記(E)成分を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより製造され、それにより(イ)複合重合体粒子が水系媒体中に分散した水系分散体が得られる。なお、前記の混合乳化して(A)成分の加水分解を進行させる段階では、加水分解物の縮合反応が進行する場合もある。
【0058】
(イ)複合重合体粒子の製造方法において、エマルジョンの微細化後の(B)成分の重合は、1種のミニエマルジョン重合といえるものである。
前記ミニエマルジョン重合は、(B)成分を水系媒体中に、通常、0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、特に好ましくは0.1〜0.2μmの平均粒子径となるように微細に乳化分散させ、その分散状態を維持しつつ重合するエマルジョン重合である。
この(イ)複合重合体粒子の製造に際して、エマルジョンを微細化させる処理は、(A)成分の加水分解・縮合反応がある程度進行したのちに行なう。
【0059】
水は、(イ)複合重合体粒子を製造する際の媒体の主体成分であり、その使用量は、(A)成分に予め添加された水と、各成分を混合乳化する際に添加される水との合計量として、(A)成分(但し、完全加水分解縮合物として換算)と(B)成分との合計100重量部に対して、通常、50〜2,000重量部、好ましく100〜1,000重量部である。水の使用量が50重量部未満では、乳化が困難となったり、乳化後のエマルジョンの安定性が低下したりしたりするおそれがあり、一方2,000重量部を超えると、生産性が低下するため好ましくない。
【0060】
(イ)複合重合体粒子を製造する際の各成分の混合乳化は、通常の攪拌手段を用いて実施することができ、またこの混合乳化およびエマルジョンの微細化は、例えば、高圧ホモジナイザー、ホモミキサー、超音波分散機等を用いて実施することができる。
(A)成分の加水分解・縮合反応および(B)成分の重合反応の条件は、反応温度が、通常、25〜90℃、好ましくは40〜80℃、反応時間が、通常、0.5〜15時間、好ましくは1〜8時間である。
【0061】
この加水分解・縮合反応および重合反応の過程では、乳化状態で、(A)成分中のオルガノシラン(1)の加水分解・縮合反応が先に進行し、(B)成分の重合反応は、エマルジョンが微細化され、(E)成分が加えられてから進行する。なお、(A)成分がオルガノシラン(1)と部分縮合物とを含む場合の縮合反応は、オルガノシラン(1)の加水分解物や部分縮合物単独での縮合反応のほか、オルガノシラン(1)の加水分解物と部分縮合物との共縮合反応も同時に進行する場合がある。
このような加水分解・縮合反応および重合反応によると、得られる複合重合体粒子内に、(A)成分に由来するオルガノポリシロキサン成分と(B)成分に由来するビニル系ポリマー成分とが相互に貫入した網目構造(IPN)を形成する。また、(B)成分がシロキサン結合を形成し得る基を有するラジカル重合性モノマーを含有する場合は(A)成分に由来するオルガノポリシロキサン成分と(B)成分に由来するビニル系ポリマー成分とが化学的に結合し、さらには(B)成分の重合時に反応性ラジカルの連鎖移動が生じて、オルガノポリシロキサン鎖にビニル系ポリマー成分がグラフトして化学的に結合する場合もある。さらに、この加水分解・縮合反応および重合反応では、100℃未満の低沸点有機溶媒やトルエンなどの芳香族有機溶剤を実質的に含まないため、良好な作業環境が確保される。
【0062】
なお、この加水分解・縮合反応および重合反応において、(A)成分や(B)成分がカルボキシル基やカルボン酸無水物基などの酸性基を有する場合には、加水分解・縮合反応および重合反応後に、塩基性化合物を添加してpHを調節することが好ましく、またこれらの各成分がアミノ基やアミンイミド基などの塩基性基を有する場合には、加水分解・縮合反応および重合反応後に、酸性化合物を添加してpHを調節することが好ましい。さらに、これらの各成分が酸性基と塩基性基の両方を有する場合で、いずれか一方の基の割合が多いときは、加水分解・縮合反応および重合反応後に、これらの基の割合に応じて、塩基性化合物あるいは酸性化合物を添加して、pHを調節することが好ましい。それにより、得られる複合重合体粒子の親水性を高めて、分散性を向上させることができる。
【0063】
前記pH調節に使用される塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール等のアミン類;カセイカリ、カセイソーダ等のアルカリ金属水酸化物等を挙げることができ、また酸性化合物としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸等の無機酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、くえん酸、アジピン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等を挙げることができる。
前記pH調節後の水系分散体のpHは、通常、6〜10、好ましくは7〜8である。
【0064】
(イ)複合重合体粒子の平均粒子径は、好ましくは0.01〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.3μmである。
このようにして、(イ)複合重合体粒子が水系媒体中に分散した水系分散体が得られるが、この水系分散体はそのまま、あるいは濃度を調整してから、最終の水系分散体の調製に使用することが好ましい。
(イ)複合重合体粒子の水系分散体の固形分濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。この固形分濃度は、通常、水の量によって調整される。
(イ)複合重合体粒子の水系分散体における媒体は、本質的に水からなるが、場合により、アルコールなどの有機溶媒を数重量%程度まで含まれていてもよい。
(イ)複合重合体粒子の水系分散体が、前記(A)成分の調製時に用いられた有機溶媒を含む場合には、この有機溶媒を除去してから使用することもできる。
さらに、(イ)複合重合体粒子の水系分散体には、必要に応じて有機溶媒、例えば(A)成分の調製時に用いられるものを添加することもできる。
【0065】
(ロ)成分
本発明の(ロ)成分は、ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子および/または含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子からなる。
以下では、ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子を「重合体粒子(i)」といい、含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子を「重合体粒子(ii)」といい、重合体粒子(i)と重合体粒子(ii)とをまとめて「(ロ)重合体粒子」という。
重合体粒子(ii)における含フッ素系重合体は、ラジカル重合性含フッ素モノマーの単独重合体あるいは共重合体からなる。
【0066】
重合体粒子(i)におけるラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体および重合体粒子(ii)における含フッ素系重合体に使用されるラジカル重合性含フッ素モノマーとしては、例えば、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンレン、トリフルオロクロロエチレンレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン等のフルオロオレフィン類や、(パー)フルオロ(メタ)アクリル酸、(パー)フルオロ(メタ)アクリル酸のアルキルエステル類や、前記(イ)複合重合体粒子における(B)ラジカル重合性モノマーについて例示した含フッ素(メタ)アクリル酸エステル類等を挙げることができる。
これらのラジカル重合性含フッ素モノマーのうち、フルオロオレフィン類が好ましく、さらに好ましくはフッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレンレン、ヘキサフルオロプロピレン等であり、特に好ましくはフッ化ビニリデンである。
前記ラジカル重合性含フッ素モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0067】
また、重合体粒子(i)におけるラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体および重合体粒子(ii)における(メタ)アクリル系重合体に使用される(メタ)アクリル系モノマーは、ラジカル重合性のものであり、その例としては、前記(イ)複合重合体粒子における(B)ラジカル重合性モノマーについて例示した、(メタ)アクリル酸エステル類、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類、アミノ基含有(メタ)アクリル酸エステル類、多官能性(メタ)アクリル酸エステル類、不飽和アミド類中の(メタ)アクリルアミドあるいはその誘導体類と同様の化合物や、(メタ)アクリル酸等を挙げることができる。
これらの(メタ)アクリル系モノマーのうち、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルアクリレート類、アルキル基の炭素数が1〜6のアルキルメタクリレート類、(メタ)アクリル酸等が好ましく、特に、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、(メタ)アクリル酸等が好ましい。
前記(メタ)アクリル系モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0068】
さらに、重合体粒子(i)におけるラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体並びに重合体粒子(ii)における含フッ素系重合体および(メタ)アクリル系重合体は、前記した化合物以外のラジカル重合性モノマー(以下、「他のラジカル重合性モノマー」という。)を含有することができる。 他のラジカル重合性モノマーとしては、例えば、前記(イ)複合重合体粒子における(B)ラジカル重合性モノマーについて例示した化合物のうち、重合体粒子(i)および重合体粒子(ii)について例示した前記(メタ)アクリル系モノマー以外の化合物を挙げることができる。
これらの他のラジカル重合性モノマーのうち、アルド基含有不飽和化合物、ケト基含有不飽和化合物等が好ましく、特に、アクロレイン、ビニルメチルケトン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等が好ましい。
前記他のラジカル重合性モノマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0069】
本発明における(ロ)重合体粒子としては、重合体粒子(ii)が好ましい。
重合体粒子(ii)の構造としては、含フッ素系重合体をコアとし、(メタ)アクリル系重合体をシェルとするコア・シェル型、(メタ)アクリル系重合体をコアとし、含フッ素系重合体をシェルとするコア・シェル型、含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体とが単一粒子中で均一に相溶した均質型等を挙げることができるが、特に耐候性を重視する場合は、均質型であることが好ましい。
重合体粒子(ii)が均質型であることは、示差走査型熱量分析において、単一のガラス転移点を示すことにより、あるいは重合体粒子(ii)をフィルム状にした場合に光学的に透明なフィルムを形成することにより、容易に判別することができる。
【0070】
重合体粒子(ii)において、含フッ素系重合体としては、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデンと他のフルオロオレフィンとの共重合体が好ましく、さらに好ましくは、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等であり、特に好ましくは、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体等である。
前記含フッ素系重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0071】
前記好ましいフッ化ビニリデンと他のフルオロオレフィンとの共重合体において、フッ化ビニリデンの含有率は、通常、50重量%以上である。
また、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体の場合、各モノマーの含有率は、好ましくは、フッ化ビニリデンが50〜90重量%、テトラフルオロエチレンが50〜10重量%であり、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の場合、各モノマーの含有率は、好ましくは、フッ化ビニリデンが50〜90重量%、ヘキサフルオロプロピレンが50〜10重量%であり、さらにフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体の場合、各モノマーの含有率は、好ましくは、フッ化ビニリデンが50〜80重量%、テトラフルオロエチレンが10〜40重量%、ヘキサフルオロプロピレンが5〜40重量%である。
本発明において、含フッ素系重合体の重量平均分子量は、通常、100,000〜500,000である。
【0072】
また、(メタ)アクリル系重合体としては、好ましくは、アルキル基の炭素数が4〜12のアルキルアクリレート類および/またはアルキル基の炭素数が1〜6のアルキルメタクリレート類と、アルド基含有不飽和化合物および/またはケト基含有不飽和化合物とを含有する共重合体であり、さらに好ましくは、n−ブチルアクリレート、i−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートの群の少なくとも1種と、アクロレイン、ビニルメチルケトンおよびジアセトン(メタ)アクリルアミドの群の少なくとも1種との、場合により不飽和カルボン酸をさらに含有する共重合体である。
これらの(メタ)アクリル系重合体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0073】
(メタ)アクリル系重合体において、各モノマーの含有率は、アルキル(メタ)アクリレートが、好ましくは40〜99.1重量%、さらに好ましくは50〜80重量%であり、アルド基含有不飽和化合物およびケト基含有不飽和化合物の合計量が、好ましくは0.1〜20重量%、さらに好ましくは2〜7重量%であり、不飽和カルボン酸が、好ましくは0〜30重量%、さらに好ましくは1〜15重量%であり、これら以外のラジカル重合性モノマーが、好ましくは0〜59.9重量%、さらに好ましくは0〜30重量%である。
(メタ)アクリル系重合体においては、特に、アルド基含有不飽和化合物およびケト基含有不飽和化合物の合計量が0.1重量%未満では、後述するヒドラジン系架橋剤により架橋させても架橋点が少なくなり、耐温水性や耐溶剤性が低下する傾向があり、一方20重量%を超えると、耐候性や耐温水性が低下する場合がある。
【0074】
また、(メタ)アクリル系重合体において、アルキルアクリレート類とアルキルメタクリレート類とを併用する場合は、アルキルアクリレート類とアルキルメタクリレート類との合計量に対し、アルキルアクリレート類を30〜50重量%使用することが好ましい。
また、(メタ)アクリル系重合体がアルド基および/またはケト基を有するときには、該(メタ)アクリル系重合体を含フッ素系重合体と均一に相溶させるために、アルキルアクリレート類とアルキルメタクリレート類との合計量に対し、アルキルメタクリレート類を50重量%以上使用することが好ましい。
本発明において、(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、通常、50,000〜100,000である。
【0075】
重合体粒子(ii) を製造するに当たっては、水系媒体中に分散した含フッ素系重合体粒子100重量部(固形分換算)の存在下に、(メタ)アクリル系重合体を与えるラジカル重合性モノマー20〜500重量部、好ましくは40〜300重量部を乳化重合することが望ましい。ラジカル重合性モノマーの使用量が、20重量部未満では、加工性(特に成膜性)、基体との密着性等が低下する傾向があり、一方500重量部を超えると、含フッ素系重合体の有する耐候性、耐薬品性等が損なわれるおそれがある。
【0076】
重合体粒子(ii) の製造に使用される含フッ素系重合体は、乳化重合、溶液重合、沈殿重合等の適宜の方法により製造することができるが、特に乳化重合によって製造することが、得られた含フッ素系重合体の水系分散体をそのまま、あるいは濃度を調整して、(メタ)アクリル系重合体を与えるラジカル重合性モノマーの乳化重合に使用することができる点で好ましい。
含フッ素系重合体を乳化重合以外の方法により製造した場合、含フッ素系重合体を水性媒体中に分散させる方法は特に限定されるものではなく、その方法としては、例えば、含フッ素系重合体の溶液を水系分散体に転相する方法、沈澱重合により得た含フッ素系重合体粒子を水系媒体中に分散させる方法等を挙げることができる。
【0077】
重合体粒子(ii) を製造する際の含フッ素系重合体の水系分散体における平均粒径は、好ましくは0.03〜0.3μm、さらに好ましくは0.03〜0.2μmである。
【0078】
含フッ素系重合体粒子の存在下におけるラジカル重合性モノマーの乳化重合は、1種のシード重合と考えることができる。その反応挙動は必ずしも明確ではないが、添加されたラジカル重合性モノマーが主に含フッ素系重合体粒子中に吸収あるいは吸着され、該粒子を膨潤させながら重合が進行していくものと考えられる。
【0079】
この乳化重合の反応条件は特に制約されるものではなく、例えば、水系媒体中、乳化剤および重合開始剤の存在下で、例えば30〜100℃程度の温度で、1〜30時間程度反応を行う。また必要に応じて、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤、溶媒等を添加してもよい。
【0080】
前記乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との組み合わせ等が使用され、場合により両性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤を用いることもできる。
前記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコール硫酸エステルナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等を挙げることができる。
これらの陰イオン性界面活性剤のうち、ラウリル硫酸エステルナトリウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム塩等が好ましい。
【0081】
また、前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等を挙げることができ、通常、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等が使用される。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルベタイン、ヒドロキシエチルイミダゾリン硫酸エステルナトリウム塩、イミダゾリンスルホン酸ナトリウム塩等を挙げることができる。
前記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルピリジニウムクロライド、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルジメチルアンモニウムクロライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0082】
また、乳化剤として、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルポリオキシエチレン、パーフルオロアルキルベタイン等のフッ素系界面活性剤を使用することもできる。
さらに、乳化重合においては、ラジカル重合性モノマーと共重合可能な、いわゆる反応性乳化剤、例えば、スチレンスルホン酸ナトリウム塩、アリルアルキルスルホン酸ナトリウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルアリルフェニルエーテル等を使用することができ、特に、2−(1−アリル)−4−ノニルフェノキシポリエチレングリコール硫酸エステルアンモニウム塩と2−(1−アリル)−4−ノニルフェノキシポリエチレングリコールとを併用することが好ましい。
【0083】
乳化剤の使用量は、含フッ素系重合体粒子とラジカル重合性モノマーとの合計量100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部である。
【0084】
また、前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素等の水溶性重合開始剤や、これらの水溶性重合開始剤と還元剤とを組み合わせたレドックス系等を挙げることができる。
前記還元剤としては、例えば、ピロ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、L−アスコルビン酸またはその塩、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート、硫酸第一鉄、グルコース等を挙げることができる。
これらの還元剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0085】
また、油溶性重合開始剤をラジカル重合性モノマーあるいは溶媒に溶解して使用することもできる。
前記油溶性重合開始剤としては、例えば、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビスシクロヘキサン−1−カルボニトリル、2,2’−アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビスイソカプロニトリル、2,2’−アゾビス(フェニルイソブチロニトリル)、ベンゾイルパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキシド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート)等を挙げることができる。
これらの油溶性重合開始剤のうち、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキシド、パラメンタンハイドロパーオキシド、t−ブチルハイドロパーオキシド、3,5,5−トリメチルヘキサノールパーオキシド、t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノーエート)等が好ましい。
本発明において、水溶性重合開始剤および油溶性重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また水溶性重合開始剤と油溶性重合開始剤とを併用することもできる。
重合開始剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常、0.1〜3重量部である。
【0086】
また、前記連鎖移動剤としては、例えば、四塩化炭素、クロロホルム、ブロモホルム等のハロゲン化炭化水素類;n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン等のメルカプタン類;ジメチルキサントゲンジスルフィド、ジエチルキサントゲンジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィド等のキサントゲン類;ジペンテン、ターピノーレン等のテンペン類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチルチウラムジスルフィド等のチウラムスルフィド類等を挙げることができる。
これらの連鎖移動剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
連鎖移動剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常、0〜10重量部である。
【0087】
また、前記キレート化剤としては、例えば、グリシン、アラニン、エチレンジアミン四酢酸等を、前記pH調整剤としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等を挙げることができる。
これらのキレート化剤およびpH調整剤は、それぞれ単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
キレート化剤およびpH調整剤の使用量は、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、それぞれ、通常、0〜0.1重量部および0〜3重量部である。
【0088】
油溶性重合開始剤を使用する際に用いる前記溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、トリクロロトリフルオロエタン、メチルイソブチルケトン、ジメチルスルホキシド、トルエン、ジブチルフタレート、メチルピロリドン、酢酸エチル等を挙げることができる。
これらの溶媒は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
溶媒の使用量は、作業性、防災安全性、環境安全性および製造安全性を損なわない範囲内の少量であることが好ましく、ラジカル重合性モノマーの合計100重量部に対して、通常、0〜20重量部程度である。
【0089】
乳化重合に際して、含フッ素系重合体粒子およびラジカル重合性モノマーは種々の方法で添加することができる。
それらの添加方法としては、例えば、1)含フッ素系重合体粒子の水系分散体にラジカル重合性モノマーの全量を一括して添加する方法、2)含フッ素系重合体粒子の水系分散体にラジカル重合性モノマーの一部を仕込んで反応させたのち、残りのラジカル重合性モノマーを連続または分割して仕込む方法、3)含フッ素系重合体粒子の水系分散体にラジカル重合性モノマーの全量を連続または分割して添加する方法、4)水系媒体中におけるラジカル重合性モノマーの乳化重合時に、含フッ素系重合体粒子を連続または分割して添加する方法等を挙げることができる。
これらの添加方法のうち、特に、1)の方法や、2)の方法において、含フッ素系重合体粒子の水系分散体に最初に仕込むラジカル重合性モノマーの量が全体の50重量%以上である方法が好ましい。
【0090】
このような含フッ素系重合体粒子の存在下でのラジカル重合性モノマーの乳化重合より得られる重合体粒子(ii) の平均粒径は、通常、0.06〜3μm、好ましくは0.05〜0.5μm、さらに好ましくは0.05〜0.3μmである。前記平均粒径が0.04μm未満では、水系分散体の粘度が上昇して高固形分とすることが困難となって生産性が低下したり、また使用条件により大きな機械的剪断力が作用する場合では、凝固物が発生しやすくなったりする傾向があり、一方3μmを超えると、水系分散体の貯蔵安定性がやや低下する傾向がある。
重合体粒子(ii) の平均粒径は、含フッ素系重合体粒子の大きさを適宜選択することによって、容易に調整することができる。
また、重合体粒子(i) も、前述したような重合体粒子(ii) の水系分散体の製造方法と同様にして、製造することができる。
【0091】
(ロ)重合体粒子の水系分散体の固形分濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。この固形分濃度は、通常、水の量によって調整される。
(ロ)重合体粒子の水系分散体における媒体は、本質的に水からなるが、場合により、アルコールなどの有機溶媒を数重量%程度まで含まれていてもよい。
【0092】
本発明の水系分散体は、(イ)複合重合体粒子と(ロ)重合体粒子とを含有するものである。
本発明の水系分散体における(イ)複合重合体粒子と(ロ)重合体粒子との比率は、通常、90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70、特に好ましくは60/40〜40/60である。
また、本発明の水系分散体における(イ)複合重合体粒子および(ロ)重合体粒子の合計濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは30〜50重量%である。
【0093】
その他の添加剤
−架橋剤−
本発明の水系分散体には、(イ)複合重合体粒子および/または(ロ)重合体粒子を構成する重合体成分中に導入された各種の官能基と反応しうる架橋剤を配合することができる。
前記架橋剤としては、例えば、メラミン系架橋剤、エポキシ系架橋剤、フェノール樹脂系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤等を挙げることができる。また、特に(イ)複合重合体粒子および/または(ロ)重合体粒子中の重合体成分がアルド基および/またはケト基を有する場合には、架橋剤として、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する化合物(以下、「ヒドラジド系架橋剤」という。)を使用することが好ましい。
【0094】
ヒドラジド系架橋剤としては、例えば、
しゅう酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、テレフタル酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジド等の合計炭素数2〜10、特に合計炭素数4〜6のジカルボン酸ジヒドラジド類;
エチレン−1,2−ジヒドラジン、トリメチレン−1,3−ジヒドラジン、テトラメチレン−1,3−ジヒドラジン等の炭素数2〜4の脂肪族ジヒドラジン;
クエン酸トリヒドラジド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、シクロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、エチレンジアミン四酢酸テトラヒドラジド等の3官能以上のヒドラジド類
これらのヒドラジド系架橋剤のうち、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド等が好ましい。
前記架橋剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0095】
ヒドラジド系架橋剤の使用量は、(イ)複合重合体粒子および(ロ)重合体粒子中の重合体成分が有するアルド基およびケト基の合計量とヒドラジド基との当量比が、通常、1:0.1〜5、好ましくは1:0.5〜1.5、さらに好ましくは1:0.7〜1.2の範囲となる量である。前記当量比がこの範囲未満では、塗膜の耐水性、耐損傷性等が低下する場合があり、一方この範囲を超えると、塗膜の耐水性、透明性等が低下する場合がある。 また、本発明の水系分散体にヒドラジド系架橋剤を配合する場合、必要に応じて、硫酸亜鉛、硫酸マンガン、硫酸コバルト等の水溶性金属塩等の触媒をさらに添加することもできる。
【0096】
ヒドラジド系架橋剤は、本発明の水系分散体の施工後の乾燥過程で重合体成分中のアルド基あるいはケト基と反応して網目構造を生成し、塗膜を架橋させる作用を有するものである。このようなヒドラジド系架橋剤を含有することにより、本発明の水系分散体は、100℃以下の低温で架橋反応が速やかに進行し、また常温で架橋させることも可能となる。しかも、この架橋反応により、塗膜の初期硬度が大幅に改善されるという特徴も有する。
【0097】
−樹脂状添加剤あるいは増粘剤−
本発明の水系分散体には、水性塗料に通常使用されている、水溶性あるいは水分散性のポリエステル樹脂、水溶性あるいは水分散性のエポキシ樹脂、ポリエーテルウレタン等の水溶性あるいは水分散性のウレタン樹脂、アクリル酸共重合体やその塩等の水溶性あるいは水分散性のアクリル樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体等の水溶性あるいは水分散性のカルボキシル基含有芳香族ビニル系樹脂、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類等の樹脂状添加剤あるいは増粘剤を配合することができる。
これらの樹脂状添加剤あるいは増粘剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
樹脂状添加剤あるいは増粘剤の配合量は、水系分散体の全固形分100重量部に対して、通常、50重量部以下、好ましくは30重量部以下である。
【0098】
−無機化合物−
本発明の水系分散体には、無機化合物を配合することができる。
前記無機化合物としては、例えば、SiO2 、Al2 O3 、Al(OH)3 、
Sb2 O5 、Si3 N4 、Sn−In2 O3 、Sb−In2 O3 、MgF、
CeF3 、CeO2 、SiO2 、Al2 O3 、3Al2 O3 ・2SiO2 、
BeO、SiC、AlN、Al2 O3 、Fe、Fe2 O3 、Co、
Co−FeOX 、CrO2 、Fe4 N、Baフェライト、SmCO5 、YCO5 、CeCO5 、PrCO5 、Sm2 CO17、Nd2 Fe14B、ZrO2 、
Al4 O3 、AlN、SiC、α−Si、SiN4 、CoO、Sb−SnO2 、
Sb2 O5 、MnO2 、MnB、Co3 O4 、Co3 B、LiTaO3 、MgO、MgAl2 O4 、BeAl2 O4 、ZrSiO4 、ZnSb、PbTe、
GeSi、FeSi2 、CrSi2 、CoSi2 、MnSi1.73、Mg2 Si、β−B、BaC、BP、TiB2 、ZrB2 、HfB2 、Ru2 Si3 、
BaTiO3 、PbTiO3 、BaO−Al2 O3 −SiO2 、Al2 TiO5 、Zn2 SiO4 、Zr2 SiO4 、2MgO2 −Al2 O3 −5SiO2 、
Li2 O−Al2 O3 −4SiO2 、Mgフェライト、Niフェライト、
Ni−Znフェライト、Liフェライト、Srフェライト等を挙げることができる。
【0099】
これらの無機化合物の存在形態には、粉体、水中に分散した水系のゾルもしくはコロイド、i−プロピルアルコール等の極性溶媒やトルエン等の非極性溶媒中に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドがある。溶媒系のゾルもしくはコロイドの場合、さらに水や溶媒にて希釈して用いてもよく、また分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。 また、無機化合物が水系のゾルもしくはコロイドおよび溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合の固形分濃度は、40重量%以下が好ましい。
前記無機化合物は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。 無機化合物の配合量(固形分)は、水系分散体中の全重合体成分100重量部に対して、通常、500重量部以下、好ましくは400重量部以下である。
【0100】
−充填材−
本発明の水系分散体には、得られる塗膜の着色、厚膜化等のために、別途充填材を配合することができる。
前記充填材としては、例えば、非水溶性の有機顔料や無機顔料、顔料以外の、粒子状、繊維状もしくは鱗片状のセラミックス、金属あるいは合金、並びにこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物等を挙げることができる。
前記充填材の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、顔料用酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデン等を挙げることができる。
これらの充填材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
充填材の配合量は、水系分散体の全固形分100重量部に対して、通常、300重量部以下である。
【0101】
−レベリング剤−
本発明の水系分散体には、水系分散体の塗布性を向上させるためにレベリング剤を配合することができる。
レベリング剤のうち、ふっ素系のレベリング剤(商品名。以下同様)としては、商品名で、例えば、ビーエムヘミー(BM-CHEMIE)社製のBM1000、BM1100;エフカケミカルズ社製のエフカ772、エフカ777;共栄社化学(株)製のフローレンシリーズ;住友スリーエム(株)製のFCシリーズ;東邦化学(株)製のフルオナールTFシリーズ等を挙げることができ、シリコーン系のレベリング剤としては、商品名で、例えば、ビックケミー社製のBYKシリーズ;シュメグマン(Sshmegmann) 社製のSshmego シリーズ;エフカケミカルズ社製のエフカ30、エフカ31、エフカ34、エフカ35、エフカ36、エフカ39、エフカ83、エフカ86、エフカ88等を挙げることができ、エーテル系またはエステル系のレベリング剤としては、商品名で、例えば、日信化学工業(株)製のカーフィノール;花王(株)製のエマルゲン、ホモゲノール等を挙げることができる。
これらのレベリング剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
レベリング剤の配合量は、全水系分散体に対して、通常、5重量%以下、好ましくは3重量%以下である。
【0102】
−前記以外の添加剤−
さらに、本発明の水系分散体には、所望により、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシラン等の脱水剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリカルボン酸塩、ポリりん酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアミドエステル塩、ポリエチレングリコール等の分散剤;ひまし油誘導体、フェロけい酸塩等の増粘剤;エタノールミン等のpH調整剤;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等の濡れ性改善剤;エチレングリコール、プロピレングリコール等の凍結防止剤;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ほう素ナトリウム、カルシウムアジド等の無機発泡剤;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ジフェニルスルホン−3,3’−ジスルホヒドラジン等のヒドラジン化合物、セミカルバジド化合物、トリアゾール化合物、N−ニトロソ化合物等の有機発泡剤や、シリコーン系消泡剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、界面活性剤、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、染料、顔料、防腐剤、防かび剤、耐水化剤、成膜助剤等を配合することもできる。
【0103】
塗装体
本発明の塗装体は、本発明の水系分散体を含有する塗料を基材に適用してなるものである。
本発明の水系分散体を基材に塗布する際には、刷毛、ロールコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーター等を用いたり、ディップコート、流し塗り、スプレー、スクリーンプロセス、電着等の塗布方法により、1回塗りで厚さ1〜40μm程度、2〜3回塗りでは厚さ2〜80μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは30〜200℃程度の温度で10〜60分程度加熱して乾燥することにより、各種の基材に塗膜を形成することができる。
【0104】
本発明の水系分散体を適用しうる基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレス等の金属;セメント、コンクリート、ALC、フレキシブルボード、モルタル、スレート、石膏、セラミックス、レンガ等の無機窯業系材料;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等のプラスチック成型品;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、PET、ポリウレタン、ポリイミド等のプラスチックフィルムや、木材、紙、ガラス等を挙げることができる。また、本発明の水系分散体は、劣化塗膜の再塗装にも有用である。
【0105】
これらの基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付け等を目的として、予め表面処理を施すこともできる。
金属系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメート処理、火炎処理、カップリング処理等を挙げることができ、プラスチック系基材に対する表面処理としては、例えば、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理等を挙げることができ、無機窯業系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、模様付け等を挙げることができ、木質基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、防虫処理等を挙げることができ、紙質基材に対する表面処理としては、例えば、目止め、防虫処理等を挙げることができ、さらに劣化塗膜に対する表面処理としては、例えば、ケレン等を挙げることができる。
【0106】
本発明の水系分散体による塗布操作は、基材の種類や状態、塗布方法によって異なる。例えば、金属系基材の場合、防錆の必要があればプライマーを用い、無機窯業系基材の場合、基材の性状(表面荒さ、含浸性、アルカリ度等)により塗膜の隠ぺい性が異なるため、通常はプライマーを用いる。また、劣化塗膜の再塗装の場合、旧塗膜の劣化が著しいときはプライマーを用いる。
それ以外の基材、例えば、プラスチック、木材、紙、ガラス等の場合は、用途に応じてプライマーを用いても用いなくてもよい。
プライマーの種類は特に限定されず、基材とコーティング用組成物との密着性を向上させる作用を有するものであればよく、基材の種類、得られる塗装体の使用目的に応じて適宜選択する。プライマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また顔料等の着色成分を含むエナメルでも、該着色成分を含まないクリヤーでもよい。
【0107】
プライマーの種類としては、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリルエマルジョン、エポキシエマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョン等を挙げることができる。また、これらのプライマーには、厳しい条件下での基材と塗膜との密着性が必要な場合、各種の官能基を付与することもできる。このような官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミン基、グリシジル基、アルコキシシリル基、エーテル結合、エステル結合等を挙げることができる。
また、本発明の水系分散体から形成した塗膜の表面には、塗膜の耐摩耗性や光沢をさらに高めることを目的として、例えば、米国特許第3,986,997号明細書、米国特許第4,027,073号明細書等に記載されたコロイダルシリカとシロキサン樹脂との安定な分散液のようなシロキサン樹脂系塗料等からなるクリア層を形成することもできる。
【0108】
本発明の水系分散体を基材に適用した塗装体の形態には、次のようなものがある。
(a)基材/水系分散体(クリアーまたはエナメル)
(b)基材/水系分散体(エナメル)/他のコーティング材(クリアー)
(c)基材/水系分散体(クリアーまたはエナメル)/他の有機塗料/水系分 散体(クリアー)
なお、前記(a)〜(c)の場合、必要に応じて基材に予めプライマー層を設けることができるのは前述したとおりである。
【0109】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらの実施例に何ら制約されるものでない。
なお、実施例および比較例中の部および%は、特記しない限り重量基準である。
実施例および比較例における各種の評価は、下記の方法により行った。
(1)密着性
JIS K5400による碁盤目テスト(ます目25個)により、テープ剥離試験を3回実施して、その平均に拠った。
(2)硬度
JIS K5400による鉛筆硬度に拠った。
(3)耐アルカリ性
試験片を、飽和水酸化カルシウム水溶液中に60日間浸漬したのち、塗膜の状態を目視により観察して、下記基準で評価した。
◎・・・変化なし
○・・・わずかに白化する
△・・・白化する
×・・・塗膜の溶解、剥離あるいは破れを生じる
【0110】
(4)耐有機溶剤性
塗膜上にイソプロピルアルコールを2cc滴下し、5分後に布で拭き取ったのち、塗膜の状態を目視により観察して、下記基準で評価した。
◎・・・変化なし
○・・・わずかにスポット跡を生じる
△・・・白化する
×・・・溶解する
(5)耐湿性
試験片を、温度50℃、湿度95%の環境下に、連続1,000時間保持したのち、塗膜の状態を目視により観察して、下記基準で評価した。
◎・・・変化なし
○・・・わずかに白化する
△・・・白化する
×・・・塗膜の溶解、剥離あるいは破れを生じる
(6)耐候性(光沢)
JIS K5400により、サンシャインウエザーメーターで3,000時間照射試験を実施したのち、塗膜の光沢保持率を測定して、下記基準で評価した。
◎・・・100〜90%
○・・・90%未満80%以上
△・・・80%未満60%以上
×・・・60%未満
【0111】
(7)耐候性(クラック)
JIS K5400により、サンシャインウエザーメーターで3,000時間照射試験を実施したのち、塗膜の状態を目視により観察して、下記基準で評価した。
◎・・・クラックなし
○・・・小さなマイクロクラックを生じる(20倍顕微鏡で観察)
△・・・やや大きなマイクロクラックを生じる(20倍顕微鏡で観察)
×・・・目視で観察できるクラックを生じる
(8)耐水性
試験片を、水道水中に常温で60日間浸漬したのち、塗膜の状態を目視により観察して、下記基準で評価した。
◎+・・・変化なし
◎ ・・・極くわずかに白化する
○ ・・・やや白化する
△ ・・・白化する
× ・・・塗膜の溶解、剥離あるいは破れを生じる
(9)耐汚染性
塗膜上に、カーボンブラック/灯油=1/2(重量比)の混合物からなるペーストを塗り付け、室温で24時間放置したのち、スポンジを用いて水洗して、塗膜の汚染状態を観察し、下記基準で評価した。
◎・・・黒い汚れが残らない
○・・・わずかに黒い汚れが残る
△・・・はっきりした黒い汚れが残る
×・・・黒い汚れが著しい
【0112】
合成例1
(A)成分としてメチルトリメトキシシランの部分加水分解・部分縮合物X40−9220〔商品名、信越化学工業(株)製〕53.8部およびジメチルジメトキシシラン39.4部、(B)成分としてメチルメタクリレート18部、n−ブチルメタクリレート18部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2.4部および(D)成分としてアクリル酸1.6部を均一に混合した溶液を氷冷したのち、(C)成分としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部、エマルゲン920〔商品名、花王(株)製〕0.5部およびレベノールWX〔商品名、花王(株)製〕0.5部、イオン交換水300部と混合して製品ホッパーに加え、攪拌しながら混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、圧力4kgf/cm2 の駆動エアーをかけて、高圧ホモジナイザー〔マイクロフルイダイザー M−110Y、みずほ工業(株)製〕によりエマルジョンを微細化させた。このときのエマルジョンの平均粒子径は0.15μmであった。次いで、得られたエマルジョンをセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら、(E)成分として過硫酸アンモニウム0.4部をイオン交換水10部に溶解した水溶液を加えて、窒素置換したのち、65℃に加熱して4時間反応させて、(A)成分の加水分解・縮合反応および(B)成分の重合反応を進行させて、(イ)複合重合体粒子の水系分散体を得た。
この水系分散体は、固形分濃度が40%、(イ)複合重合体粒子の平均粒径が0.14μmであった。
この(イ)複合重合体粒子を、重合体粒子(イ−1)とする。
【0113】
合成例2
容量7リットルのセパラブルフラスコの内部を窒素置換したのち、含フッ素系重合体粒子として、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン(重量比65/25/10)共重合体(平均粒径0.15μm)100部、ラジカル重合性モノマーとしてメチルメタクリレート60部、2−エチルヘキシルアクリレート15部、i−ブチルアクリレート10部、ジアセトンアクリルアミド10部およびアクリル酸5部、乳化剤として2−(1−アリル)−4−ノニルフェノキシポリエチレングリコール硫酸エステルアンモニウム塩0.4部および2−(1−アリル)−4−ノニルフェノキシポリエチレングリコール1.0部、イオン交換水300部を入れて、80℃に昇温させた。その後、重合開始剤として2%過硫酸カリウム水溶液1.5部を添加し、85〜95℃で3時間重合した。その後、冷却して反応を停止させ、アンモニアを用いてpH8に調整して、重合体粒子(ii) の水系分散体を得た。
この水系分散体は、固形分濃度が40%、重合体粒子(ii) の平均粒径が0.15μmであった。
この重合体粒子(ii) を、重合体粒子(ロ−1)とする。
【0114】
合成例3
容量2リットルのセパラブルフラスコに、イオン交換水70部、反応性乳化剤であるアデカリアソープSE−10N0.2部、過硫酸カリウム0.3部を仕込み、気相部を15分間窒素ガスで置換して、80℃に昇温した。
別容器で、イオン交換水30部、前記反応性乳化剤1.0部、n−ブチルアクリレート5部、2−エチルヘキシルアクリレート5部、メチルメタクリレート35部、シクロヘキシルアクリレート47部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、アクリル酸3部、ジアセトンアクリルアミド3部を混合撹拌したのち、さらに超音波ホモジナイザー((株)日本精機製作所製RUS−600)でモノマーを微分散させて、プレエマルジョンを調製した。
次いで、このプレエマルジョンを、3時間かけて前記セパラブルフラスコに連続的に滴下した。滴下中は窒素ガスを導入し、反応系の温度を80℃に保持した。滴下終了後、85〜95℃でさらに2時間熟成して、重合反応を完結させたのち、25℃に冷却し、アンモニア水でpH7に調整して、重合体粒子の水系分散体を得た。
この水系分散体は、固形分濃度が44.1%、重合体粒子の平均粒径が0.13μmであった。
この重合体粒子を、重合体粒子(ハ)とする。
【0115】
実施例1〜5
合成例1および合成例2で得た各水系分散体を表1に示す比率(固形分換算、合計100部)で混合し、これに架橋剤として、アジピン酸ジヒドラジドの10%水溶液を各重合体成分中のジアセトンアクリルアミドのモル数に対して1/2当量、ジ−n−ブチル錫ラウレートの水系分散体2%(固形分換算)およびオキサゾリン系エマルジョンK2020E〔商品名、日本触媒(株)製〕5%(固形分換算)を加えて混合して、コーティング材(クリヤー)を調製した。
次いで、溶剤系アクリル系プライマーを乾燥重量で50g/m2 塗布して乾燥したスレート基材に、各コーティング材を、乾燥重量で25g/m2 塗布したのち、80℃で6分間加熱して、試験片を作製した。得られた各試験片について、各種の評価を行なった。評価結果を、表1に示す。
【0116】
比較例1〜4
表1に示す各水系分散体を表1に示す比率(固形分換算、合計100部)で用いた以外は、実施例1〜5と同様にして、試験片を作製した。得られた各試験片について、各種の評価を行なった。評価結果を、表1に示す。
【0117】
【表1】
【0118】
【発明の効果】
本発明の水系分散体は、特に耐候性(光沢およびクラック)および耐汚染性が優れるとともに、密着性、耐アルカリ性、耐有機溶剤性、耐湿性、耐水性等を含めた塗膜の性能バランスに優れており、しかも透明で硬度の高い塗膜を形成できるものであり、特にコーティング材・塗料として有用である。
Claims (6)
- (イ)水系媒体中で、下記(A)成分、(B)ラジカル重合性モノマー、(C)乳化剤および(D)(A)成分の加水分解触媒を混合乳化して、(A)成分の加水分解・縮合反応を進行させたのち、エマルジョンを微細化させ、次いで(E)ラジカル重合開始剤を加えて反応させて、(B)成分の重合反応を進行させることにより得られる複合重合体粒子、並びに(ロ)ラジカル重合性含フッ素モノマーと(メタ)アクリル系モノマーとの共重合体粒子および/または含フッ素系重合体と(メタ)アクリル系重合体との複合重合体粒子を含有することを特徴とする水系分散体。
(A): 下記一般式(1)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該加水分解物の部分縮合物の群から選ばれる少なくとも1種。
- 一般式(1)におけるR1 の炭素数1〜8の1価の有機基が、フェニル基もしくはその置換誘導体(但し、置換誘導体からなるR1 の合計炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。);直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基もしくはその置換誘導体(但し、置換誘導体からなるR1 の合計炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。);アシル基もしくはその置換誘導体(但し、置換誘導体からなるR1 の合計炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。);アルケニル基もしくはその置換誘導体(但し、置換誘導体からなるR1 の合計炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。);エポキシ基;グリシジル基;(メタ)アクリロイルオキシ基;ウレイド基;アミド基;フルオロアセトアミド基あるいはイソシアナート基である請求項1に記載の水系分散体。
- (イ)成分の複合重合体粒子と(ロ)成分の共重合体粒子および/または複合重合体粒子との比率が90/10〜10/90である請求項1または請求項2に記載の水系分散体。
- (イ)成分中の重合体成分および/または(ロ)成分中の重合体成分がアルド基および/またはケト基を有する請求項1〜3のいずれかに記載の水系分散体。
- さらに、分子中に2個以上のヒドラジド基を有する架橋剤を含有する請求項4に記載の水系分散体。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の水系分散体を含有する塗料を基材に適用してなる塗装体。
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