JP2005113061A - 光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物および構造体 - Google Patents

光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物および構造体 Download PDF

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太郎 金森
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啓介 八島
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Abstract

【課題】有機基材への密着性(有機的性質)と光触媒に対する耐ラジカル性(無機的性質)という相反する要求を満足でき、その結果、基材と光触媒層である上塗り層との密着性を高め、基材の長期耐久性に優れ、また上塗り層における光触媒能を損なうことなく、長期耐久性を有し、さらに柔軟性が向上した光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物を提供する。
【解決手段】(A)(a)(R1n(Si)(OR24-nで表されるオルガノシラン、その加水分解物およびその縮合物の群から選ばれた少なくとも1種、(b)ラジカル重合性モノマー、(c)乳化剤、(d)水、および必要に応じて(e)上記(a)成分の加水分解・縮合触媒を混合して、エマルジョンの平均粒子径を0.5μm以下に微細化し、次いで、(f)ラジカル重合開始剤を加えてラジカル重合を行なうことによって得られる水系分散体を含有する光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
【選択図】なし

Description

本発明は、光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物に関し、さらに詳細には、光触媒による基材の劣化を防止でき、親水性、長期耐久性、密着性に優れた塗膜が得られる、光触媒含有塗膜の下塗り用に好適なコーティング組成物に関する。
近年、耐候性、耐汚染性、耐薬品性に優れ、しかも硬度の高い塗膜を形成させることのできるコーティング組成物が求められており、さらに今後は汎用性の高いものが求められる。これまでには、シリル基含有ビニル系樹脂とオルガノシラン化合物からなる組成物として、特許文献1(特開平01−69673号公報)や特許文献2(特開平01−69674号公報)があるが、いずれも、基材が限定されている。また、特許文献3(特開平04−108172号公報)や特許文献4(特開平04−117473号公報)などがあるが、いずれも、対象基材は広いが、具体的に塗装仕様については述べられていない。
一方、オルガノシラン系コーティング材は、耐候(光)性、耐汚染性などに優れたメンテナンスフリーのコーティング材として技術開発が進められている。このようなオルガノシラン系コーティング材に対する要求性能はますます厳しくなっており、近年では、塗膜外観、密着性、耐候性、耐熱性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐湿性、耐(温)水性、耐絶縁性、耐摩耗性、耐汚染性などに優れ、硬度の高い塗膜を形成することのできるコーティング材が求められている。
特に、耐汚染性を改善するためには、塗膜表面を親水性化するとよいことが認められており、例えば、親水性物質や水溶性物質を添加する方法が提案されている。しかし、このような方法では、親水性物質や水溶性物質が次第に光により劣化したり、水により洗い流されたりして、塗膜表面の親水性を充分なレベルに長期にわたり持続することが困難である。
また近年、光触媒成分を配合したコーティング組成物が数多く提案されており、その例として、チタン酸化物、加水分解性ケイ素化合物(アルキルシリケートまたはハロゲン化ケイ素)の加水分解物、および溶媒(水またはアルコール)からなる光触媒用酸化チタン塗膜形成性組成物(特許文献5:特開平8−164334号公報)、少なくとも2個のアルコキシ基を有するケイ素化合物、少なくとも2個のアルコキシ基を有するチタン化合物またはジルコニウム化合物、およびグアニジル基を有するアルコキシシランおよび/またはポリシロキサンで処理された酸化チタンなどの親水性無機粉末からなる、抗菌・防カビ性を付与するための表面処理組成物(特許文献6:特開平8−176527号公報)のほか、テトラアルコキシシラン20〜200重量部、トリアルコキシシラン100重量部およびジアルコキシシラン0〜60重量部を原料とし、該原料から調製されるポリスチレン換算重量平均分子量が900以上の無機塗料と光触媒機能を有する粉末との混合液から得られる塗膜を酸またはアルカリで処理する無機塗膜の形成方法(特許文献7:特開平8−259891号公報)などが知られている。
しかしながら、これらの塗膜形成用の組成物や混合液は、本質的に光触媒成分あるいはグアニジル基を有するアルコキシシランおよび/またはポリシロキサン成分に基づく抗菌・防カビ、脱臭や有害物質の分解を意図したものであり、これらの作用に加えて、オルガノシラン系コーティング材に求められる硬度、密着性、耐アルカリ性、耐有機薬品性、耐候性、耐汚染性などを含めた塗膜性能が総合的に検討されてはいない。
一方、オルガノシラン系コーティング材に対する要求性能をある程度満たすコーティング用組成物として、オルガノシランの部分縮合物、コロイダルシリカの分散液およびシリコーン変性アクリル樹脂を配合した組成物(特許文献8:特開昭60−135465号公報)、オルガノシランの縮合物、ジルコニウムアルコキシドのキレート化合物および加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂を配合した組成物(特許文献9:特開昭64−1769号公報)、オルガノシランの縮合物、コロイド状アルミナおよび加水分解性シリル基含有ビニル系樹脂を配成した組成物(特許文献10:米国特許第4,904,721号明細書)などが提案されている。
しかしながら、上記特許文献8(特開昭60−135465号公報)および特許文献10(米国特許第4,904,721号明細書)に記載されている組成物から得られる塗膜は、長時間の紫外線照射により光沢が低下するという欠点がある。また、上記特許文献9(特開昭64−1769号公報)に記載されている組成物は、保存安定性が充分ではなく、固形分濃度を高くすると、短期間でゲル化し易いという問題を有している。
さらに、本願特許出願人は、既にオルガノシランの加水分解物および/またはその部分縮合物、加水分解性および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を有するビニル系樹脂、金属キレート化合物ならびにβ-ジケトン類および/またはβ-ケトエステル類を含有するコーティング組成物(特許文献11:特開平5−345877号公報)を提案しており、該組成物は、オルガノシラン系コーティング材に求められている上記塗膜性能のバランスに優れているが、これらの性能についても、さらなる改善が求められている。
ところで、上記のような光触媒成分を含有するコーティング組成物を基材に直接塗布すると、基板がプラスチックなどの有機物の場合には、光触媒の酸化作用によって、基材自体が劣化しやすく、基材の耐候性、耐久密着性に劣るという問題がある。また、基材がガラスや金属などの無機物の場合には、金属イオンの移行による光触媒能の低下が起こったり、密着性に劣るなどの問題がある。さらに、基材にあらかじめ下塗りを施す場合でも、上塗り層(光触媒層)と基板との密着性が不充分な場合がある。
また、光触媒専用の下塗り用コーティング組成物として、特許文献12(特許第3038599号)があるが、特に柔軟性の要求される有機基材に適用する場合、光触媒含有塗膜に対する耐ラジカル劣化性、および有機基材に対する長期密着性のバランスが取れない場合がある。
特開平01−69673号公報 特開平01−69674号公報 特開平04−108172号公報 特開平04−117473号公報 特開平8−164334号公報 特開平8−176527号公報 特開平8−259891号公報 特開昭60−135465号公報 特開昭64−1769号公報 米国特許第4,904,721号明細書 特開平5−345877号公報 特許第3038599号公報
本発明は、光触媒含有塗膜に由来する耐ラジカル劣化性(無機的な性質が必要)と、有機系基材への長期密着性(有機的性質が必要)という相反する要求性能を満足させることのできる光触媒含有塗膜の下塗り層(中間層)を提供することを目的とする。
換言するならば、本発明は、有機基材に対する密着性に優れ、かつ光触媒由来の耐ラジカル性に優れ、ラジカル劣化しやすい有機基材と光触媒層である上塗り層との密着性を高め、さらに上塗り層における光触媒能を損なうことなく、親水性、長期耐久性を有する、光触媒含有塗膜の下塗り用として有用なコーティング組成物を提供することを目的とする。
本発明は、(A)(a)(R1n(Si)(OR24-n(式中、R1は2個存在するときは同一または異なり、1〜8の1価の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは0〜2の整数である)で表されるオルガノシラン、その加水分解物およびその縮合物の群から選ばれた少なくとも1種、(b)ラジカル重合性モノマー、(c)乳化剤、(d)水、および必要に応じて(e)上記(a)成分の加水分解・縮合触媒を混合して、エマルジョンの平均粒子径を0.5μm以下に微細化し、次いで、(f)ラジカル重合開始剤を加えてラジカル重合を行なうことによって得られる水系分散体(以下「(A)水系分散体」ともいう)
を含有する光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物(以下「コーティング組成物」または「組成物(I)」ともいう)に関する。
本発明のコーティング組成物は、有機基材への密着性(有機的性質)と光触媒に対する耐ラジカル性(無機的性質)という相反する要求を満足でき、光触媒による基材の劣化を防止でき、長期耐久性に優れるとともに、基材および光触媒層との密着性に優れ、さらに上記(A)水系分散体を用いているので、柔軟性が向上した硬化体を得ることができる。
本発明のコーティング組成物は、有機基材への密着性(有機的性質)と光触媒に対する耐ラジカル性(無機的性質)という相反する要求を満足でき、また、上記(A)水系分散体を用いているので、柔軟性が向上した、耐候性、耐酸化性に優れ、シラノール基を多く含有することで、上塗り層(光触媒含有塗膜)と基板との密着性を高め、長期耐久性に優れるという効果が得られ、光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物として有用である。
本発明のコーティング組成物は、基材に対し、この組成物を複数回塗装してもよいし、本発明のコーティング組成物と基材との間に他の下塗り用コーティング組成物を塗装するなどして用いてもよい。
以下、本発明のコーティング組成物について説明し、次いで、光触媒含有塗膜などについても説明する。
本発明のコーティング組成物
本発明のコーティング組成物は、上記(A)水系分散体を主成分とする。
(A)水系分散体;
本発明の水系分散体を構成する(a)成分におけるオルガノシラン(以下「オルガノシラン(1)」ともいう)は、一般に、下記一般式(1)で表される。
(R1nSi(OR24-n ・・・・・(1)
(式中、R1は、2個存在するときは同一または異なり、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、R2は、同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは0〜2の整数である。)
上記オルガノシラン(1)の加水分解物は、オルガノシランに2〜4個含まれる上記一般式(1)でいうところのOR2基がすべて加水分解されている必要はなく、例えば、1個だけが加水分解されているもの、2個以上が加水分解されているもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
また、上記オルガノシラン(1)の縮合物は、オルガノシランの加水分解物のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成したものであるが、本発明では、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、僅かな一部のシラノール基が縮合したもの、縮合の程度が異なっているものの混合物などをも包含した概念である。
一般式(1)において、R1の炭素数1〜8の1価の有機基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアナート基などのほか、これらの基の置換誘導体などを挙げることができる。
1の置換誘導体における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などを挙げることができる。ただし、これらの置換誘導体からなるR1 の炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8以下である。一般式(1)中に、R1が2個存在するときは、相互に同一でも異なってもよい。
また、R2の炭素数1〜5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などを挙げることができる。一般式(1)中に複数個存在するR2は、相互に同一でも異なっていてもよい。
このようなオルガノシランの具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類のほか、メチルトリアセチルオキシシラン、ジメチルジアセチルオキシシランなどを挙げることができる。
これらのうち、好ましく用いられるのは、トリアルコキシシラン類、ジアルコキシシラン類であり、また、トリアルコキシシラン類としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが好ましく、さらに、ジアルコキシシラン類としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランが好ましい。
(a)成分は、オルガノシラン(1)、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物から選ばれる少なくとも1種である。すなわち、(a)成分は、これら3種のうちの1種だけでもよいし、任意の2種の混合物であってもよいし、3種類すべてを含んだ混合物であっても良い。ただし、テトラアルコキシシランおよびこの加水分解物・縮合物のみでは、耐クラック性に劣る。
本発明においては、オルガノシランと、オルガノシランの縮合物(以下「ポリオルガノシロキサン」ともいう)とが混合されて用いられることが好ましい。
本発明の水系分散体においては、オルガノシランとポリオルガノシロキサンとを共縮合することにより、硬度、耐薬品性、耐候性、成膜性、透明性、耐クラック性などの特性に優れた被膜を形成するものである。また、乳化後にビニル化合物が重合する際の重合安定性が著しく向上し、高固形分で重合できるために工業化が容易であるという利点もある。
オルガノシランとポリオルガノシロキサンの2種類を用いる場合には、オルガノシランとしてはジアルコキシシラン類が好ましい。ジアルコキシシラン類を用いると、分子鎖として直鎖状成分が加わり、得られる粒子の可撓性が増す。さらに、得られる水系分散体を用いて塗膜を形成した際に、透明性に優れた塗膜が得られるという効果を奏する。上記ジアルコキシシラン類としては、特にジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシランなどが好ましい。
さらに、オルガノシランとポリオルガノシロキサンの2種類を用いる場合には、ポリオルガノシロキサンは、特に、トリアルコキシシランのみ、あるいは、トリアルコキシシラン40〜95モル%とジアルコキシシラン60〜5モル%との組み合わせの縮合物であることが好ましい。ジアルコキシシランをトリアルコキシシランと併用することにより、得られる塗膜を柔軟化し、耐アルカリ性を向上させることができる。
ポリオルガノシロキサンは、オルガノシランを予め加水分解・縮合させて、オルガノシランの縮合物として使用する。この際、ポリオルガノシロキサンを調製する際に、オルガノシランに適量の水、および必要に応じて、有機溶剤を添加することにより、オルガノシランを加水分解・縮合させることが好ましい。ここで、水の使用量は、オルガノシラン1モルに対して、通常、1.2〜3.0モル、好ましくは1.3〜2.0モル程度である。
また、この際、必要に応じて用いられる有機溶剤としては、ポリオルガノシロキサンや後記(b)成分を均一に混合できるものであれば特に限定されないが、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤のうち、アルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどを挙げることができる。
また、芳香族炭化水素類の具体例としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどを、エーテル類の具体例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを、ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどを、エステル類の具体例としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレンなどを挙げることができる。これらの有機溶剤は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。なお、ポリオルガノシロキサン中に有機溶剤を含む場合には、後記する縮合・重合反応の前に、この有機溶剤を水系分散体から除去しておくこともできる。
ポリオルガノシロキサンのポリスチレン換算重量平均分子量(以下「Mw」という)は、好ましくは、800〜100,000、さらに好ましくは、1,000〜50,000である。
また、(a)成分の加水分解・縮合物の市販品には、三菱化学社製のMKCシリケート、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング社製のシリコンレジン、東芝シリコーン社製のシリコンレジン、信越化学工業社製のシリコンレジン、ダウコーニング・アジア社製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、日本ユニカー社製のシリコンオリゴマーなどがあり、これらをそのまま、または縮合させて使用してもよい。
(a)成分として、オルガノシランとポリオルガノシロキサンとを用いる場合、両者の混合割合は、オルガノシラン(完全加水分解縮合物換算)が95〜5重量%、好ましくは90〜10重量%、ポリオルガノシロキサン(完全加水分解縮合物換算)が5〜95重量%、好ましくは10〜90重量%〔ただし、オルガノシラン+ポリオルガノシラン=100重量%〕である。ポリオルガノシロキサンが5重量%未満では、(a)成分を含有する混合物の乳化が難しく、また乳化後に(b)ラジカル重合性ビニルモノマーの重合安定性が低下し、さらに乳化後のエマルジョンの安定性が低下する場合があり好ましくない。一方、95重量%を超えると、オルガノシラン成分の割合が少なくなりすぎて、得られる有機無機複合体の成膜性が低下し好ましくない。
ここで、上記完全加水分解縮合物とは、オルガノシランのR2O−基が100%加水分解してSiOH基となり、さらに完全に縮合してシロキサン構造になったものをいう。
次に、(b)ラジカル重合性モノマーとしては、ラジカル重合可能な不飽和二重結合を有するモノマーであれば特に限定されるものではない。
(b)成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸;メチル(メタ)アクリレート、 エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリルリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリル酸のエステル類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、 テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリル酸エステル類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有(メタ)アクリルエステル類;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、などのアミノ基含有(メタ)アクリルエステル類;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類などの(メタ)アクリル化合物が挙げられる。
そのほか、(b)成分としては、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;ジビニルベンゼンなどの上記以外の多官能性単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N′−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドなどの酸アミド化合物;アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系モノマー;そのほかジカプロラクトンなどが挙げられる。
さらに、官能基を有する(b)成分として、例えば、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの上記以外の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの上記以外の水酸基含有ビニル系単量体;2−アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系単量体;1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2'−フェニル−2'−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2'−ヒドロキシ−2'−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミドなどのアミンイミド基含有ビニル系単量体;アリルグリシジルエーテルなどの上記以外のエポキシ基含有ビニル系単量体などを挙げることができる。
以上の(b)成分のうちでは、(メタ)アクリル化合物が好ましく、なかでも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類が特に好ましい。さらに好ましくは、メチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、2−ヒドロキシエチルメタクリレートである。
なお、(b)成分中に、不飽和カルボン酸を含むラジカル重合性モノマーを使用すると、重合安定性が向上するとともに、塗料配合の際の配合安定性が向上し、さらに後述する(e)成分としても優れた効果を示すため好ましい。なお、(b)成分として、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸を使用すると、(e)成分と同様に加水分解・縮合触媒として作用するとともに、(b)成分として共重合することから、耐候性、耐水性を劣化させることがないという効果が得られる。
(b)成分中における不飽和カルボン酸含有ラジカル重合性モノマーの含有量は、通常、5重量%以下、好ましくは0.1〜3重量%程度である。
本発明の水系分散体における(a)成分と(b)成分との割合は、(a)成分の合計量(完全加水分解縮合物換算)が、1〜99重量部、好ましくは1〜95重量部、さらに好ましくは10〜90重量部、(b)成分が99〜1重量部、好ましくは99〜5重量部、さらに好ましくは90〜10重量部〔ただし、(a)+(b)=100重量部〕である。
(b)成分の割合が、1重量部未満では、成膜性、耐クラック性が低下し好ましくない。一方、99重量部を超えると、耐候性の悪化が顕著となり好ましくない。
次に、(c)乳化剤として用いられる界面活性剤としては、例えばアルキル硫酸エステル塩、アルキルアリール硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、脂肪酸塩などのアニオン系界面活性剤;アルキルアミン塩、アルキル四級アミン塩などのカチオン系界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ブロック型ポリエーテルなどのノニオン系界面活性剤;カルボン酸型(例えば、アミノ酸型、ベタイン酸型など)、スルホン酸型などの両性界面活性剤、商品名で、ラテムルS−180A〔花王社製〕、エレミノールJS−2〔三洋化成社製〕、アクアロンHS−10〔第一工業製薬社製〕、アデカリアソープSE−10N〔旭電化工業社製〕〕、Antox MS−60〔日本乳化剤社製〕などの反応性乳化剤などのいずれでも使用可能である。特に、反応性乳化剤を用いると、耐候性、耐水性に優れ好ましい。
これらの乳化剤は、1種単独であるいは2種以上を併用することができる。
乳化剤の使用量は、(a)成分(完全加水分解縮合物換算)と(b)成分の合計量100重量部に対し、通常、0.1〜5重量部、好ましくは0.2〜4重量部、さらに好ましくは0.5〜2重量部である。0.1重量部未満では、乳化が充分でなく、また、加水分解・縮合およびラジカル重合時の安定性が低下し好ましくない。一方、5重量部を超えると、泡立ちが問題となり好ましくない。
次に、本発明の水系分散体の製造に用いられる(d)水は、あらかじめ添加された(a)成分の水系の混合液中に存在する水であってもよく、あるいは、(a)成分の混合物にさらに(c)乳化剤とともに添加される水であってもよい。
(d)水の使用量は、(a)成分(完全加水分解縮合物換算)および(b)成分の合計量100重量部に対し、通常、50〜2,000重量部、好ましくは80〜1,000重量部、さらに好ましく100〜500重量部である。50重量部未満では、乳化が困難であったり、乳化後のエマルジョンの安定性が低下したりするため、好ましくない。一方、2,000重量部を超えると、生産性が低下するため好ましくない。
次に、(e)加水分解・縮合触媒は、(a)成分の加水分解・縮合反応を促進する触媒であり、必要に応じて用いられる。
(e)成分を使用することにより、得られる塗膜の硬化速度を高めるとともに、使用される(a)成分の重縮合反応により生成されるポリシロキサン樹脂の分子量が大きくなり、強度、長期耐久性などに優れた塗膜を得ることができ、かつ塗膜の厚膜化や塗装作業も容易となる。
このような(e)成分としては、酸性化合物、アルカリ性化合物、塩化合物、アミン化合物、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて「有機金属化合物等」という)が好ましい。
上記酸性化合物としては、例えば、(酢酸、塩酸、硫酸、リン酸、アルキルチタン酸、p−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フタル酸などを挙げることができ、好ましくは、上記酢酸、ドデシルベンゼンスルホン酸である。
また、上記アルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを挙げることができ、好ましくは、水酸化ナトリウムである。また、上記塩化合物としては、例えば、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩などを挙げることができる。
また、上記アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ピペリジン、ピペラジン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、エタノールアミン、トリエチルアミン、3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・メチル・ジメトキシシラン、3−アニリノプロピル・トリメトキシシランや、アルキルアミン塩類、四級アンモニウム塩類のほか、エポキシ樹脂の硬化剤として用いられる各種変性アミンなどを挙げることができ、好ましくは、3−アミノプロピル・トリメトキシシラン、3−アミノプロピル・トリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピル・トリメトキシシランである。
また、上記有機金属化合物等としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物(以下「有機金属化合物(2)」という)、同一のスズ原子に結合した炭素数1〜10のアルキル基を1〜2個有する4価スズの有機金属化合物(以下「有機スズ化合物」という)、あるいは、これらの化合物の部分加水分解物などを挙げることができる。
M(OR3 r (R4COCHCOR5s ・・・(2)
〔式中、Mはジルコニウム、チタンまたはアルミニウムを示し、R3およびR4は、同一または異なって、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6の1価の炭化水素基を示し、R5は、R3およびR4と同様の炭素数1〜6の1価の炭化水素基のほか、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16のアルコキシル基を示し、rおよびsは0〜4の整数で、(r+s)=(Mの原子価)である。〕
有機金属化合物(2)の具体例としては、(イ)テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
(ロ)テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどの有機チタン化合物;
(ハ)トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物;などを挙げることができる。
これらの有機金属化合物(2)およびその部分加水分解物のうち、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいは、これらの化合物の部分加水分解物が好ましい。
また、有機スズ化合物の具体例としては、(C4 9 2 Sn(OCOC11232 、(C4 9 2 Sn(OCOCH=CHCOOCH3 2 、(C4 9 2 Sn(OCOCH=CHCOOC4 9 2 、(C8 172 Sn(OCOC8 172 、(C8 172 Sn(OCOC11232 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOCH3 2 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC4 9 2 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC8 172 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC16332 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC17352 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC18372 、(C8 172 Sn(OCOCH=CHCOOC20412
(C492SnOCOCH3



(C492SnOCOCH3
(C492Sn(OCOC11233
(C492Sn(OCONa)3
などのカルボン酸型有機スズ化合物;
(C4 9 2 Sn(SCH2 COOC8 172
(C4 9 2 Sn(SCH2 CH2 COOC8 172
(C8 172 Sn(SCH2 COOC8 172
(C8 172 Sn(SCH2 CH2 COOC8 172
(C8 172 Sn(SCH2 COOC12252
(C8 172 Sn(SCH2 CH2 COOC12252
(C4 9 )Sn(SCOCH=CHCOOC8 173
(C8 17)Sn(SCOCH=CHCOOC8 173
(C492Sn(SCH2COOC817



(C492Sn(SCH2COOC817
などのメルカプチド型有機スズ化合物;
(C4 9 2 Sn=S、(C8 172 Sn=S、
(C492Sn=S



(C492Sn=S
などのスルフィド型有機スズ化合物;
(C4 9 )SnCl3 、(C4 9 2 SnCl2 、(C8 172 SnCl2
(C492Sn−Cl



(C492Sn−Cl
などのクロライド型有機スズ化合物;(C4 9 2 SnO、(C8 172 SnOなどの有機スズオキサイドや、これらの有機スズオキサイドとシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物;
などを挙げることができる。
なお、(e)成分は、本発明の(A)水系分散体を調製する際に配合されるが、さらに(A)成分の調製と塗膜の形成(本発明の組成物の調製)の両方の段階で配合してもよい。
(e)成分の使用量は、上記(a)成分(完全加水分解縮合物換算)および(b)成分の合計100重量部に対して、通常、5重量部以下、好ましくは0.01〜5重量部、さらに好ましくは0.1〜5重量部、特に好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では、(a)成分の加水分解、縮合反応が不充分な場合があり、一方、5重量部を超えると、水系分散体の保存安定性が低下したり、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
次に、縮合・重合反応に際しては、(f)ラジカル重合開始剤が用いられる。
(f)ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシマレイン酸、コハク酸パーオキサイド、2,2'−アゾビス〔2−N−ベンジルアミジノ〕プロパン塩酸塩などの水溶性開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカノエート、クミルパーオキシオクトエート、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性開始剤;酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリット、アスコルビン酸などの還元剤を併用したレドックス系開始剤などが使用できる。
これらの(f)成分のなかでも、重合安定性の面から、水溶性開始剤が好ましい。
これらのラジカル重合開始剤の使用量は、(a)成分(完全加水分解縮合物換算)および(b)成分の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.05〜4重量部、さらに好ましくは0.1重量部〜3重量部である。0.01重量部未満では、ラジカル重合反応が途中で失活することがあり、一方、5重量部を超えると、耐候性に劣る場合がある。
水系分散体の製造;
本発明の水系分散体は、上記(a)〜(d)成分、さらに必要に応じて(e)成分を加えて、これらを混合してエマルジョン化するとともに、(e)成分を加える場合には、(a)成分の加水分解を進めたのち(以下「エマルジョン化」ともいう)、エマルジョンの平均粒子径を0.5μm以下に微細化し(以下「微細化」ともいう)、次いで、上記(f)成分を加えて、ラジカル重合(以下「ラジカル重合反応」ともいう)を行なうことによって得られる。
ここで、エマルジョン化の条件としては、(a)〜(d)成分、あるいは(a)〜(e)成分の混合物が、液体状の温度、圧力下に、目視上、均一な混合状態で撹拌されていればよい。このエマルジョン化によって、(a)〜(d)成分、あるいは(a)〜(e)成分が均一化されて、乳化されるとともに、(e)成分を加える場合には、(a)成分の加水分解が進行する。また、微細化は、高圧ホモジナイザー、超音波、ホモミキサーなどの機械的手段を用いて、水系をミニエマルジョン化する。この際、エマルジョンの平均粒子径を0.5μm以下、好ましくは0.05〜0.2μmとする。0.5μmを超えると、耐水性が劣り好ましくない。
さらに、ラジカル重合反応では、乳化状態下で、(a)成分(好ましくはオルガノシランとポリオルガノシロキサンとの混合物)の(共)縮合と、(b)ラジカル重合性モノマーのラジカル重合とが同時に進行する。
なお、(a)成分がオルガノシランとポリオルガノシロキサンとの混合物である場合の反応は、上記2種の共縮合のほか、オルガノシランやポリオルガノシランがそれぞれ単独で縮合反応する場合も含む。その結果、(a)成分からなるシロキサン成分と(b)成分からなるビニルポリマーが相互貫入網目構造を形成する。また、エマルジョン粒子中で、ポリマーどうしが無溶剤状態で絡み合うため、シロキサン成分中の縮合活性に富むシラノール基の自由度が制限され、その縮合が抑制され、良好な保存安定性が得られる。
また、この際のラジカル重合反応の反応条件は、温度が、通常、25〜80℃、好ましくは40〜70℃、反応時間は、通常、0.5〜15時間、好ましくは1〜8時間である。
なお、ラジカル重合反応において、(a)成分や(b)成分がカルボキシル基やカルボン酸無水物基などの酸性基を有する場合には、縮合・重合反応後に、少なくとも1種の塩基性化合物を添加してpHを調節することが好ましい。一方、上記各成分が、アミノ基やアミンイミド基などの塩基性を有する場合には、縮合・重合反応後に、少なくとも1種の酸性化合物を添加してpHを調節することが好ましい。さらに、上記各成分が酸性基と塩基性基とを有する場合には、縮合・重合反応後に、これらの基の割合に応じて、少なくとも1種の塩基性化合物あるいは酸性化合物を添加して、pHを調節することにより、いずれも、得られる水系分散体の親水性を高めて、分散性を向上させることができる。
上記塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノールなどのアミン類;カセイカリ、カセイソーダなどのアルカリ金属水酸化物などが挙げられる。また、上記酸性化合物としては、例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの無機酸類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、シュウ酸、くえん酸、アジピン酸、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの有機酸類が挙げられる。上記pH調節時の水系分散体のpH値は、通常、5〜10、好ましくは6〜7である。
本発明の水系分散体は、有機無機複合体が水系媒体中に分散しているが、その分散状態は、粒子状あるいは水性ゾル状であることができる。
この場合、本発明の有機無機複合体の平均粒子径は、通常、0.01〜0.5μm、好ましくは0.05〜0.2μmである。
また、本発明の水系分散体の固形分濃度は、通常、10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%である。この固形分濃度は、通常、上記水の量によって調整される。
なお、本発明の水系分散体における水系媒体は、本質的に水からなるが、場合により、アルコールなどの有機溶剤を数重量%程度まで含まれていてもよい。
また、本発明の水系分散体中に、上記(a)成分の調製時に必要に応じて用いられる有機溶剤を含む場合には、この有機溶剤を水系分散体から除去しておくこともできる。
さらに、本発明の水系分散体中には、必要に応じて、(a)成分の調製時に用いられる上記のような各種有機溶剤を添加することもできる。
なお、引火性を持たないようにするために、引火性有機溶剤は、加熱・蒸留などの手段で低減させておくことが望ましい。
なお、本発明の(A)水系分散体には、(g)シランカップリング剤が配合されていてもよい。
(g)シランカップリング剤は、(b)ラジカル重合性モノマーとラジカル重合可能な重合性不飽和基、および(a)成分と共縮合可能なアルコキシシリル基などのシロキサン結合を形成し得る基を有する化合物である。
本発明の(A)水系分散体中に、この(g)シランカップリング剤を含有させると、本発明の水系分散体の有機成分と無機成分のハイブリッド性が向上するため成膜時の耐クラック性、透明性、耐候性が向上する。
この(g)シランカップリング剤を配合するには、乳化前に上記(a)成分および(b)成分の混合液に添加しても良く、また、上記縮合・重合時に添加してもよく、さらにまた、本発明の水系分散体の調製後に添加してもよい。好ましくは、乳化前に上記(a)成分および(b)成分の混合液に添加するのが好ましい。
(g)シランカップリング剤の具体例としては、CH2=CHSi(CH3) (OCH3) 2 、CH2=CHSi(OCH3) 3 、CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSiCl3 、CH2=CHCOO(CH2)2Si(CH3)(OCH3) 2 、CH2=CHCOO(CH2) 2Si(OCH3) 3 、CH2=CHCOO(CH2) 3Si(CH3)(OCH3)2 、CH2=CHCOO(CH2) 3Si(OCH3)3 、CH2=CHCOO(CH2) 2Si(CH3)Cl2 、CH2=CHCOO(CH2) 2SiCl3 、CH2=CHCOO(CH2) 3Si(CH3)Cl2 、CH2=CHCOO(CH2)3SiCl3 、CH2=C(CH3)COO(CH2)2Si(CH3)(OCH3) 2 、CH2=C(CH3) COO(CH2)2Si(OCH3) 3 、CH2=C(CH3) COO(CH2)3Si(CH3)(OCH3)2 、CH2=C(CH3) COO(CH2)3Si(OCH3)3 、CH2=C(CH3) COO(CH2)2Si(CH3)Cl2 、CH2=C(CH3) COO(CH2)2SiCl3 、CH2=C(CH3) COO(CH2)3Si(CH3)Cl2 、CH2=C(CH3) COO(CH2)3SiCl3 などが挙げられる。
(g)シランカップリング剤の配合量は、(a)成分(完全加水分解縮合物換算)および(b)成分の合計量100重量部に対し、通常、20重量部以下、好ましくは10重量部である。
本発明のコーティング組成物には、さらに、下記の(B)無機充填剤、(C)紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤、(D)有機溶剤、(E)加水分解・縮合触媒、(F)成分などを配合することができる。
以下、これらの成分について、説明する。
(B)無機充填剤;
(B)無機充填剤としては、無機化合物の、粉体および/またはゾルもしくはコロイドが挙げられ、塗膜の所望の特性に応じて配合される。(B)成分がゾルもしくはコロイド状の場合には、その平均粒径は、通常、0.005〜100μm程度である。
(B)成分をなす化合物の具体例としては、SiO2 、Al2 3 、AlGaAs、Al(OH)3 、Sb2 5 、Si3 4 、Sn−In2 3 、Sb−In2 3 、MgF、CeF3 、CeO2 、3Al2 3 ・2SiO2 、BeO、SiC、AlN、Fe、Co、Co−FeOx 、CrO2 、Fe4 N、BaTiO3 、BaO−Al2 3 −SiO2 、Baフェライト、SmCO5 、YCO5、CeCO5 、PrCO5 、Sm2 CO17、Nd2 Fe14B、Al4 3 、α−Si、SiN4 、CoO、Sb−SnO2 、Sb2 5 、MnO2 、MnB、Co3 4 、Co3 B、LiTaO3 、MgO、MgAl2 4 、BeAl2 4、ZrSiO4 、ZnSb、PbTe、GeSi、FeSi2 、CrSi2 、CoSi2 、MnSi1.73、Mg2 Si、β−B、BaC、BP、TiB2 、ZrB2 、HfB2 、Ru2 Si3 、TiO2 (ルチル型)、TiO3 、PbTiO3 、Al2 TiO5 、Zn2 SiO4 、Zr2 SiO4 、2MgO2 −Al2 3 −5SiO2 、Nb2 5 、Li2 O−Al2 3 −4SiO2 、Mgフェライト、Niフェライト、Ni−Znフェライト、Liフェライト、Srフェライトなどを挙げることができる。
これら(B)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(B)成分の存在形態には、粉体、水に分散した水系のゾルもしくはコロイド、イソプロピルアルコールなどの極性溶媒や、トルエンなどの非極性溶媒中に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドがある。溶媒系のゾルもしくはコロイドの場合、半導体の分散性によってはさらに水や溶媒にて希釈して用いてもよく、また分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。
(B)成分が水系のゾルもしくはコロイド、あるいは溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合、固形分濃度は40重量%以下が好ましい。
本発明の(B)成分としては、特に好ましくはコロイド状シリカである。コロイド状シリカとしては、水を分散溶媒とした水性コロイダルシリカのほか、イソプロパノールやメチルエチルケトンを分散溶媒とした有機溶剤系コロイダルシリカが挙げられる。
(B)成分を組成物中に配合する方法としては、組成物の調製後に添加してもよく、あるいは、組成物の調製時に添加して、(B)成分を、上記(A)成分などと共加水分解・縮合させてもよい。
(B)成分の使用量は、固形分換算で、(A)成分(固形分換算)100重量部に対し、好ましくは900重量部以下、さらに好ましくは10〜400重量部である。900重量部を超えると、バインダー成分が少なくなり製膜性に劣る場合がある。
(C)紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤;
本発明のコーティング組成物は、光触媒含有塗膜の下塗り(中間層)用として用いられるが、塗膜全体の耐候性、耐久密着性を向上させる目的で、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などを配合してもよい。
紫外線吸収剤としては、ZnO、TiO2 (光触媒機能を示さないもの)、CeO2 などの無機系半導体;サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系などの有機系紫外線吸収剤が挙げられる。また、紫外線安定剤としては、ピペリジン系などが挙げられる。
紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤の使用量は、本発明の効果を阻害しなければ特に限定されないが、固形分換算で本発明の組成物100重量部に対し、0.01〜30重量部である。
(D)有機溶剤;
本発明のコーティング組成物に用いられる(A)水系分散体は、分散媒が本質的に水からなるが、場合により、アルコールなどの有機溶剤を数重量%程度まで含まれていてもよい。また、本発明の水系分散体中に、上記(a)成分の調製時に必要に応じて用いられる有機溶剤を含む場合には、この有機溶剤を水系分散体から除去しておくこともできる。
さらに、本発明の組成物には、必要に応じて、(a)成分の調製時に用いられる上記のような各種有機溶剤を添加することもできる。
(D)有機溶剤は、主として、(A)成分、上記(B)〜(C)成分などを均一に混合させ、組成物の全固形分濃度を調整すると同時に、種々の塗装方法に適用できるようにし、かつ組成物の分散安定性および保存安定性をさらに向上させるために使用される。
なお、上記有機溶剤は、上記(A)成分や、上記(B)〜(C)成分に含有されることのある有機溶剤を包含するものである。
(E)加水分解・縮合触媒;
(E)成分は、(A)水系分散体に用いられる(e)成分と同様である。
(E)成分を使用することにより、得られる塗膜の硬化速度を高めるとともに、使用されるオルガノシラン成分の重縮合反応により生成されるポリシロキサン樹脂の分子量が大きくなり、強度、長期耐久性などに優れた塗膜を得ることができ、かつ塗膜の厚膜化や塗装作業も容易となる。
(E)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
(E)成分は、組成物を調製する際に配合してもよく、また、塗膜を形成する段階で組成物に配合してもよく、さらには、組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
(E)成分の使用量は、上記有機金属化合物等以外の場合、上記(a)成分におけるオルガノシラン(1)100重量部に対して、通常、0〜100重量部、好ましくは、0.01〜80重量部、さらに好ましくは、0.1〜50重量部であり、有機金属化合物等の場合、上記(a)成分におけるオルガノシラン(1)100重量部に対して、通常、0〜100重量部、好ましくは、0.1〜80重量部、さらに好ましくは、0.5〜50重量部である。この場合、(E)成分の使用量が100重量部を超えると、組成物の保存安定性が低下したり、塗膜にクラックが発生しやすくなる傾向がある。
(F)成分;
(F)成分は、下記一般式(3)
4COCH2 COR5 ・・・(3)
〔式中、R4およびR5は、有機金属化合物(2)における上記各一般式のそれぞれR4およびR5と同義である〕で表されるβ−ジケトン類およびβ−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合物、アミン化合物、およびオキシアルデヒド化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。
このような(F)成分は、特に、上記(E)成分として有機金属化合物等を使用する場合に併用することが好ましい。
(F)成分は、組成物の安定性向上剤として作用するものである。すなわち、(F)成分が上記有機金属化合物等の金属原子に配位して、該有機金属化合物等による上記(a)成分の縮合反応を促進する作用を適度にコントロールすることにより、得られる組成物の保存安定性をさらに向上させる作用をなすものと推定される。
(F)成分の具体例としては、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、アミノ酢酸、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコール、カテコール、エチレンジアミン、2,2−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ジエチレントリアミン、2−エタノールアミン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、メチオニン、サリチルアルデヒドなどを挙げることができる。これらのうち、アセチルアセトン、アセト酢酸エチルが好ましい。
(F)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
(F)成分の使用量は、上記有機金属化合物等における有機金属化合物1モルに対して、通常、2モル以上、好ましくは3〜20モルである。この場合、(F)成分の使用量が2モル未満では、得られる組成物の保存安定性の向上効果が不充分となる傾向がある。
他の添加剤;
また、本発明の組成物には、得られる塗膜の着色、厚膜化などのために、別途充填材を添加・分散させることもできる。このような充填材としては、例えば、非水溶性の有機顔料や無機顔料、顔料以外の、粒子状、繊維状もしくは鱗片状のセラミックス、金属あるいは合金、ならびにこれらの金属の酸化物、水酸化物、炭化物、窒化物、硫化物などを挙げることができる。
上記他の充填材の具体例としては、鉄、銅、アルミニウム、ニッケル、銀、亜鉛、フェライト、カーボンブラック、ステンレス鋼、二酸化ケイ素、顔料用酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化ジルコニウム、酸化コバルト、合成ムライト、水酸化アルミニウム、水酸化鉄、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、ケイソウ土、消石灰、石膏、タルク、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、雲母、亜鉛緑、クロム緑、コバルト緑、ビリジアン、ギネー緑、コバルトクロム緑、シェーレ緑、緑土、マンガン緑、ピグメントグリーン、群青、紺青、ピグメントグリーン、岩群青、コバルト青、セルリアンブルー、ホウ酸銅、モリブデン青、硫化銅、コバルト紫、マルス紫、マンガン紫、ピグメントバイオレット、亜酸化鉛、鉛酸カルシウム、ジンクエロー、硫化鉛、クロム黄、黄土、カドミウム黄、ストロンチウム黄、チタン黄、リサージ、ピグメントエロー、亜酸化銅、カドミウム赤、セレン赤、クロムバーミリオン、ベンガラ、亜鉛白、アンチモン白、塩基性硫酸鉛、チタン白、リトポン、ケイ酸鉛、酸化ジルコン、タングステン白、鉛、亜鉛華、バンチソン白、フタル酸鉛、マンガン白、硫酸鉛、黒鉛、ボーン黒、ダイヤモンドブラック、サーマトミック黒、植物性黒、チタン酸カリウムウィスカー、二硫化モリブデンなどを挙げることができる。
これらの他の充填材は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
他の充填材の使用量は、組成物の全固形分100重量部に対して、通常、300重量部以下である。
さらに、本発明の組成物には、所望により、オルトギ酸メチル、オルト酢酸メチル、テトラエトキシシランなどの公知の脱水剤;ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリカルボン酸型高分子界面活性剤、ポリカルボン酸塩、ポリリン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリアミドエステル塩、ポリエチレングリコールなどの分散剤;メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース類や、ひまし油誘導体、フェロけい酸塩などの増粘剤;炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、カルシウムアジドなどの無機発泡剤や、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ化合物、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホヒドラジンなどのヒドラジン化合物、セミカルバジド化合物、トリアゾール化合物、N−ニトロソ化合物などの有機発泡剤のほか、界面活性剤、シランカップリング剤(後添加)、チタンカップリング剤、染料などの他の添加剤を配合することもできる。
また、本発明の組成物のコーティング性をより向上させるためにレベリング剤を配合することができる。このようなレベリング剤のうち、フッ素系のレベリング剤(商品名。以下同様)としては、例えば、ビーエムヘミー(BM−CHEMIE)社のBM1000、BM1100;エフカケミカルズ社のエフカ772、エフカ777;共栄社化学社製のフローレンシリーズ;住友スリーエム社のFCシリーズ;東邦化学社のフルオナールTFシリーズなどを挙げることができ、シリコーン系のレベリング剤としては、例えば、ビックケミー社のBYKシリーズ;シュメグマン(Sshmegmann)社のSshmegoシリーズ;エフカケミカルズ社のエフカ30、エフカ31、エフカ34、エフカ35、エフカ36、エフカ39、エフカ83、エフカ86、エフカ88などを挙げることができ、エーテル系またはエステル系のレベリング剤としては、例えば、日信化学工業社のカーフィノール;花王社のエマルゲン、ホモゲノールなどを挙げることができる。
このようなレベリング剤を配合することにより、塗膜の仕上がり外観が改善され、薄膜としても均一に塗布することができる。レベリング剤の使用量は、全組成物に対して、好ましくは、0.01〜5重量%、さらに好ましくは0.02〜3重量%である。
レベリング剤を配合する方法としては、組成物を調製する際に配合してもよく、また塗膜を形成する段階で組成物に配合してもよく、さらには組成物の調製と塗膜の形成との両方の段階で配合してもよい。
なお、本発明のコーティング組成物には、他の樹脂をブレンドしてもよい。他の樹脂としては、アクリル−ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンなどが挙げられる。
本発明の組成物を調製するに際しては、(E)成分と(F)成分とを使用しない場合は、各成分の混合方法は特に限定されないが、(E)成分と(F)成分とを使用する場合は、好ましくは、(A)〜(F)成分のうち(F)成分を除いた混合物を得たのち、これに(F)成分を添加する方法が採用される。
本発明のコーティング組成物用の全固形分濃度は、通常、50重量%以下、好ましくは、40重量%以下であり、基材の種類、塗装方法、塗装膜厚なに応じて適宜調整される。
光触媒含有塗膜
本発明のコーティング組成物から得られる塗膜の上部に設けられる光触媒含有塗膜は、通常、光触媒を含有するコーティング組成物を塗布し、乾燥することにより得られる。このコーティング組成物は、光触媒を含有するコーティング組成物であれば特に制限はなく、例えば、オルガノシラン系の化合物(および/またはその縮合物)や、シリル基含有重合体などの従来のコーティング組成物に光触媒を含有させた組成物や、従来提案されている光触媒成分を配合したコーティング組成物などが挙げられる。これらの具体例としては、本発明の「従来技術」に列挙した各種の組成物が挙げられる(段落番号「0002」〜「0009」参照)。
特に、以下の組成からなる(II) または(III)のコーティング組成物が好ましい。
(II)
(a)下記一般式(1)
(R1n(Si)(OR24-n・・・・・(1)
(式中、R1は2個存在するときは同一または異なり、炭素数1〜8の1価の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは0〜2の整数である)で表されるオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物の群から選ばれた少なくとも1種、
(G)加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を有するシリル基を含有する重合体(シリル基含有重合体)、ならびに
(H)光触媒
を含有するコーティング組成物(以下「組成物(II) 」ともいう)。
(III)上記(a)成分および(H)光触媒を含有するコーティング組成物(以下「組成物(III)」ともいう)。
組成物(II) および組成物(III)から得られる塗膜中では、通常、(H)光触媒が上記(a)成分などと結合を有しており、塗膜の親水性、耐汚染性が長期にわたり持続される。
ここで、組成物(II) および組成物(III)における(a)成分の種類や組成割合は、本発明のコーティング組成物(I)と同様であるので、省略する。
また、組成物(II)における(G)シリル基含有重合体については、例えば、特開2002−226507号公報の段落「0061」〜「0082」に詳述されており、その使用量は、(a)成分(完全加水分解縮合物換算)100重量部に対し、通常、95重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
また、組成物(II) および組成物(III)には、上記(B)〜(F)成分が配合されていてもよい。(B)〜(F)成分の種類や組成割合は、本発明のコーティング組成物(I)と同様である。
(H)光触媒;
光触媒塗膜に用いられる好ましい光触媒としては、光触媒能を有する半導体が挙げられる。光触媒能を有する半導体としては、例えば、TiO2 、TiO3 、SrTiO3 、FeTiO3 、WO3 、SnO2 、Bi2 3 、In2 3 、ZnO、Fe2 3 、RuO2 、CdO、CdS、CdSe、GaP、GaAs、CdFeO3 、MoS2 、LaRhO3 、GaN、CdP、ZnS、ZnSe、ZnTe、Nb2 5 、ZrO2 、InP、GaAsP、InGaAlP、AlGaAs、PbS、InAs、PbSe、InSbなどを挙げることができ、このうち、好ましいものは、TiO2 、ZnOであり、特に好ましいものはアナターゼ型のTiO2 である。
また、上記半導体は、粉体および/またはゾルの態様で使用されることが望ましい。詳細には、粉体、水に分散した水系ゾル、イソプロピルアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒に分散した溶媒系ゾルの3種類のうちのいずれかの態様をとることが望ましい。溶媒系ゾルの場合、半導体の分散性によっては、さらに水や溶媒で希釈して用いてもよい。これらの存在形態における半導体の平均粒子径は、光触媒能の観点では小さいほど好ましい。この場合、半導体の平均粒子径が0.3μm以上であると、半導体の光隠ぺい作用により、塗膜が不透明となる。また、0.3μm未満であると、塗膜が透明となる。したがって、半導体の平均粒子径は、組成物の用途に応じて適宜選択することができる。
組成物(II) および組成物(III)において、(H)成分が水系ゾルあるいは溶媒系ゾルである場合の固形分濃度は、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、40重量%以下である。
(H)成分を組成物(II) および組成物(III)中に配合する方法としては、上記(a)成分および(H)成分と上記(B)〜(F)成分などからなる組成物の調製後に添加してもよく、あるいは、この組成物の調製時に添加して、(H)成分の存在下で、(a)成分などを加水分解・縮合させることもできる。(H)成分を組成物の調製時に添加すると、(H)成分中の半導体化合物を(a)成分などと共縮合させることができ、得られる塗膜の長期耐久性が特に改善される。また、(H)成分が水系ゾルである場合は、組成物の調製時に添加するのが好ましく、さらに、上述の(F)成分の配合により、系内の粘性が上昇する場合にも、(H)成分を組成物の調製時に添加する方が好ましい。
さらに、本発明に用いられる上記組成物が着色成分を含有するエナメルとして用いられる場合は、(H)成分を組成物に添加したのち、調色を行ってもよく、また、(H)成分と着色成分とを同時に組成物に添加してもよい。
本発明において、(H)成分は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
光触媒含有塗膜中における(H)成分の使用量は、固形分換算で、通常、10〜90重量%、好ましくは20〜80重量%である。10重量%未満では、光触媒反応による防汚効果が不足する場合があり、一方、90重量%を超えると、成膜性が低下する場合がある。
また、組成物(II) および組成物(III)の全固形分濃度は、好ましくは、50重量%以下であり、使用目的に応じて適宜調整される。例えば、薄膜形成基材への含浸を目的とするときには、通常、0.1〜10重量%であり、また厚膜形成を目的で使用するときには、通常、10〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。組成物の全固形分濃度が50重量%を超えると、保存安定性が低下する傾向がある。
構造体
本発明のコーティング組成物を用いて得られる構造体の構成としては、基材/本発明のコーティング組成物(下塗り用コーティング組成物)からなる塗膜/光触媒含有塗膜、あるいは、基材/プライマー/本発明のコーティング組成物(下塗り用コーティング組成物)からなる塗膜/光触媒含有塗膜などからなる。
本発明の組成物を基材に塗布する際には、刷毛、ロールコーター、フローコーター、遠心コーター、超音波コーターなどを用いたり、ディップコート、流し塗り、スプレー、スクリーンプロセス、電着、蒸着などが挙げられ、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜20μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜40μm程度の塗膜を形成させることができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは、30〜200℃程度の温度で、通常、1〜60分程度加熱して乾燥することにより、塗膜を形成することができる。
また、光触媒含有塗膜は、乾燥膜厚として、1回塗りで厚さ0.05〜20μm程度、2回塗りでは厚さ0.1〜40μm程度の塗膜を形成することができる。その後、常温で乾燥するか、あるいは、30〜200℃程度の温度で、通常、1〜60分程度加熱して乾燥することにより、下塗り層の上に、塗膜を形成することができる。なお、下塗り層と上塗り層の総計膜厚は、乾燥膜厚で、通常、0.1〜80μm、好ましくは、0.2〜60μm程度である。
なお、本発明の構造体において、本発明のコーティング組成物からなる塗膜や光触媒含有塗膜は、組成が膜厚方向に順次変化する、いわゆる傾斜材料とすることもできる。
傾斜材料は、例えば、(1)本発明のコーティング組成物や光触媒含有塗膜を多層塗りとし、各層の組成を順次変化させる方法や、(2)本発明のコーティング組成物あるいは光触媒含有組成物をスピンコートなどで基材に塗装後、塗装された基材を地上に対して平行に載置するか、180度逆転させて、一定時間静置して、例えば、(B)成分である無機充填剤を重力方向に沈降させるなどの方法により、形成させることができる。
基材
本発明の組成物を適用しうる基材としては、例えば、鉄、アルミニウム、ステンレスなどの金属;セメント、コンクリート、ALC、フレキシブルボード、モルタル、スレート、石膏、セラミックス、レンガなどの無機窯業系材料;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂)などのプラスチック成型品;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリイミドなどのプラスチックフィルムや、木材、紙(以上、有機基材)、ガラスなどを挙げることができる。また、本発明の組成物は、劣化塗膜の再塗装にも有用である。
これらの基材には、下地調整、密着性向上、多孔質基材の目止め、平滑化、模様付けなどを目的として、予め表面処理を施すこともできる。金属系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、脱脂、メッキ処理、クロメート処理、火炎処理、カップリング処理などを挙げることができ、プラスチック系基材に対する表面処理としては、例えば、ブラスト処理、薬品処理、脱脂、火炎処理、酸化処理、蒸気処理、コロナ放電処理、紫外線照射処理、プラズマ処理、イオン処理などを挙げることができ、無機窯業系基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、模様付けなどを挙げることができ、木質基材に対する表面処理としては、例えば、研磨、目止め、防虫処理などを挙げることができ、紙質基材に対する表面処理としては、例えば、目止め、防虫処理などを挙げることができ、さらに劣化塗膜に対する表面処理としては、例えば、ケレンなどを挙げることができる。
本発明の組成物による塗布操作は、基材の種類や状態、塗布方法によって異なる。例えば、金属系基材の場合、防錆の必要があれば、本発明のコーティング組成物以外に、プライマーを用い、無機窯業系基材の場合、基材の特性(表面荒さ、含浸性、アルカリ性など)により塗膜の隠ぺい性が異なるため、プライマーを用いる場合がある。また、劣化塗膜の再塗装の場合、旧塗膜の劣化が著しいときはプライマーを用いる。それ以外の基材、例えば、プラスチック、木材、紙、ガラスなどの場合は、用途に応じてプライマーを用いても用いなくてもよい。
プライマーの種類は特に限定されず、基材と組成物との密着性を向上させる作用を有するものであればよく、基材の種類、使用目的に応じて選択する。プライマーは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、また顔料などの着色成分を含むエナメルでも、該着色成分を含まないクリヤーでもよい。
プライマーの種類としては、例えば、アルキド樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、アクリルシリコン樹脂、アクリル樹脂エマルジョン、エポキシ樹脂エマルジョン、ポリウレタンエマルジョン、ポリエステルエマルジョンなどを挙げることができる。また、これらのプライマーには、厳しい条件での基材と塗膜との密着性が必要な場合、各種の官能基を付与することもできる。このような官能基としては、例えば、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基、アミド基、アミン基、グリシジル基、アルコキシシリル基、エーテル結合、エステル結合などを挙げることができる。さらに、プライマーには、紫外線吸収剤、紫外線安定剤などが配合されていてもよい。
また、本発明の組成物から形成した塗膜の表面には、塗膜の耐摩耗性や光沢をさらに高めることを目的として、例えば、米国特許第3,986,997号明細書、米国特許第4,027,073号明細書などに記載されたコロイダルシリカとシロキサン樹脂との安定な分散液のようなシロキサン樹脂系塗料などからなるクリア層を形成することもできる。
以下、実施例を挙げて、本発明の実施の形態をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例に何ら制約されるものでない。
なお、実施例および比較例中の部および%は、特記しない限り重量基準である。
また、実施例および比較例における各種の測定・評価は、下記の方法により行った。
(1)貯蔵安定性
40℃で3ヶ月保管した後の液外観、粘度により評価した。液外観を下記基準で評価し、○のサンプルについて、粘度評価を実施した。
液外観評価基準;目視で観察し○、×にて評価。
○:初期と変化なし
×:分離、沈降あり
粘度評価基準;B型粘度計にて評価
◎:粘度変化率が初期値±20%未満
○:粘度変化率が初期値±20〜50%
△:粘度変化率が初期値±50%超え
×:ゲル化
(2)透明性
各組成物を、石英ガラス上に、乾燥膜厚2μmになるように塗布したのち、可視光の透過率を測定して、下記基準で評価した。
◎;透過率が80%を超える。
○;透過率が60〜80%
△;透過率が60%未満
(3)温水密着性
各組成物を塗布したサンプルを60℃温水に浸漬し、密着性をテープ剥離試験により評価した。評価基準を下記に示す。
◎:1週間浸漬後、テープ剥離なし
○:4日間浸漬後ではテープ剥離しないが、1週間浸漬後にテープ剥離
△:1日間浸漬後ではテープ剥離しないが、4日間浸漬後にテープ剥離
×:1日間浸漬後にテープ剥離
(4)親水性
サンプルに、1.0mW/cm2 のブラックライト蛍光灯を1week照射したのち、水の接触角(単位:度)を測定した。
(5)耐候性
JIS K5400により、サンシャインウエザーメーター(スガ試験機社製、S80B−BR)で3,000時間照射試験を実施し、目視外観、密着性を評価した。
目視外観:目視観察を行い、下記基準で評価した。
○:膜の剥がれも無く、初期と変化なし
×:膜が剥がれあり
密着性:テープ剥離試験を行い、下記基準で評価した。
◎:テープ貼り付け部全面にて膜の剥がれなし。
○:テープ貼り付け部にて、5%未満の剥がれあり
△:テープ貼り付け部にて、5以上、50%以下の剥がれあり
×:テープ貼り付け部にて、50%を超える剥がれあり
実施例1〜3(本発明の組成物の調製)
撹拌機、環流冷却器を備えた反応器に、表1に示す配合処方で、(a)成分としてメチルトリメトキシシラン7部、ジメチルジメトキシシラン6部、SX101を18部、(b)成分としてメチルメタクリレート4.7部、n−ブチルアクリレート3.3部、シクロヘキシルメタクリレート2.7部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート0.8部、ジアセトンアクリルアミド(純度20%)6.7部、(c)成分としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(純度10%)2.5部、(d)成分として水46部、(g)成分としてγ−メタクリロキシトリメトキシシラン0.3部を加え、室温条件下で10分間撹拌乳化し、ここに(b)成分としてアクリル酸(純度80%)を0.7部加え、攪拌を続けながら室温条件下で2時間加水分解反応を行ったのち、70MPaの圧力で高圧ホモジナイザー〔みずほ工業社製、マイクロフルイダイザーM110Y〕で乳化した。このとき得られたエマルジョン(乳化物)の平均粒子径は、0.12μmであった。この乳化物をセパラブルフラスコに投入し、撹拌しながら、窒素置換後に、(f)成分として過硫酸カリウム(純度3.5%)を2.0部(過硫酸カリウム水溶液)を加え、75℃で4時間重合した。重合後、アンモニア水溶液を用いて、系のpH=7.0に調整した。重合結果を併せて表1に示す(実施例1)。実施例2〜3の組成物も、実施例1と同様にして調製した。
Figure 2005113061
SX101;東レ・ダウコーニングシリコーン社製、ジメチルジメトキシシラン2分子とメチルトリメトキシシラン2分子の部分加水分解部分縮合物
X40-9220;信越化学工業社製、メチルトリメトキシシラン10〜15分子の部分加水分解部分縮合物
X40-9225;信越化学工業社製、メチルトリメトキシシラン15〜30分子の部分加水分解部分縮合物
比較例1〜3
各成分を表2とした以外は、実施例1と同様に合成した。結果を表2にまとめた。
Figure 2005113061
調製例1[上塗り用組成物(光触媒含有層を形成するコート材)の調製]
撹拌機、環流冷却器を備えた反応器に、固形分濃度約24%の水分散酸化チタン157部、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシ8部、末端アルコキシシリル基/ポリ(オキシエチレン/オキシプロピレン)基含有ジメチルジメトキシシランオリゴマー(Mw約10,000)11部、i−プロピルアルコール22部を加え混合し、室温で1時間撹拌した。その後、メチルトリメトキシシラン60部、固形分濃度約35%の(b−B)成分23部を加えて、室温で1時間攪拌した。次いで、i−プロピルアルコール36部を加え混合し、30゜Cで1時間撹拌した。その後、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム:2部をi−プロピルアルコール18部に溶解したものを加えて混合し、撹拌下、60゜Cで4時間共縮合反応させた。室温に冷却した後、i−プロピルアルコール600部を加え、固形分濃度約10%の組成物i−1を得た。
調製例2
固形分濃度30%の水分散体酸化チタンを13部、コルコート社製エチルシリケート48を6部、固形分濃度約10%のi−プロパノール分散コロイダルシリカを30部にi−プロパノールを51部加え、固形分濃度約10%の上塗り用組成物i−2を得た。
実施例4〜6
本発明のコーティング組成物100部に表3に示した硬化剤を添加し、良く撹拌したものを変性アクリル樹脂(帝人デュポン社製、メリネックス505、以下同じ)で表面処理したPETフィルム上に乾燥塗膜1μmとなるように塗布、乾燥し(80℃、30分)硬化体とした。得られたサンプルの温水密着性を評価した。結果を表3に示した。
比較例3〜4
比較例1〜2にて調製した組成物100部に表3に示した硬化剤を添加し、良く撹拌したものを変性アクリルで表面処理したPETフィルム上に乾燥塗膜1μmとなるように塗布、乾燥し(80℃、30分)、硬化体とした。得られたサンプルの温水密着性を評価した。結果を表3に示した。
Figure 2005113061
実施例7〜12
表4に記載した各基材に、本発明の下塗り用コーティング組成物(I−1〜I−3)100部に、表4に記載した硬化剤を添加、良く撹拌したものを乾燥膜厚1μmとなるように塗布、乾燥(80℃×30分)した。その上に、上塗り用コーティング組成物100部にジブチルスズジアセテートのi-プロピルアルコール溶液(固形分15%)を3部添加、良く撹拌したものを乾燥塗膜0.1μmとなるように塗布、乾燥(80℃×60分)し、硬化体とした。
得られた硬化体に対して、親水性および耐候性(長期耐久性)の評価を行った。結果を表4〜5に併せて示す。
















Figure 2005113061
z−1)アジピン酸ジヒドラジド(10%水溶液)
z−2)ジブチルスズジラウレート(10%水分散体)
比較例5〜6
表5に記載した各基材に、比較例1にて調製した(a−1)100部にアジピン酸ジヒドラジド(10%水溶液)17部、ジブチルスズジラウレート(10%水分散体)0.02部を添加、良く撹拌したものを乾燥膜厚1μmとなるように塗布、乾燥(80℃×30分)した。その上に、上塗り用コーティング組成物100部にジブチルスズジアセテートのi-プロピルアルコール溶液(固形分15%)を3部添加、良く撹拌したものを乾燥塗膜0.1μmとなるように塗布、乾燥(80℃×60分)し、硬化体とした。
得られた硬化体に対して、親水性と耐候性の評価を行った。結果を表5に示した。
Figure 2005113061
z−1)アジピン酸ジヒドラジド(10%水溶液)
z−2)ジブチルスズジラウレート(10%水分散体)
本発明のコーティング組成物は、光触媒含有塗膜の下塗り用(基材と光触媒含有塗膜との中間層)として有用であり、有機基材への密着性(有機的性質)と光触媒に対する耐ラジカル性(無機的性質)という、相反する要求を満足でき、光触媒による基材の劣化を防止でき、親水性、長期耐久性、密着性に優れ、さらに上記(A)水系分散体を用いているので、柔軟性が向上したコート材が得られ、光触媒含有塗膜の下塗り用として好適である。

Claims (9)

  1. (A)(a)(R1n(Si)(OR24-n(式中、R1は2個存在するときは同一または異なり、炭素数1〜8の1価の有機基、R2は同一または異なり、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示し、nは0〜2の整数である)で表されるオルガノシラン、その加水分解物およびその縮合物の群から選ばれた少なくとも1種、(b)ラジカル重合性モノマー、(c)乳化剤、(d)水、および必要に応じて(e)上記(a)成分の加水分解・縮合触媒を混合して、エマルジョンの平均粒子径を0.5μm以下に微細化し、次いで、(f)ラジカル重合開始剤を加えてラジカル重合を行なうことによって得られる水系分散体
    を含有する光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  2. (b)ラジカル重合性モノマーとして、不飽和カルボン酸を含む請求項1記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  3. (c)乳化剤が反応性乳化剤である請求項1または2記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  4. (f)ラジカル重合開始剤が水溶性開始剤を含有する請求項1〜3いずれかに記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  5. 組成物中に、さらに、(B)無機充填剤を含有する請求項1〜4いずれかに記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  6. 組成物中に、さらに、(C)紫外線吸収剤および/または紫外線安定剤を含有する請求項1〜5いずれかに記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  7. 組成物中に、さらに、(D)有機溶剤を含有する請求項1〜6いずれかに記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  8. 組成物中に、さらに、(E)加水分解・縮合触媒を含有する請求項1〜7いずれかに記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物。
  9. 基材上に請求項1〜8いずれかに記載の光触媒含有塗膜の下塗り用コーティング組成物から得られる塗膜を設け、その上に、光触媒を含む塗膜を形成した構造体。
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