以下、本発明の実施の形態に係る制振装置を、添付図面に従って詳細に説明する。なお、以下の説明では、図1、図3および図5に示すように、図面のX方向(梁1A,1Bが延びる方向)を制振装置11の左,右方向とし、図面のY方向(梁1A,1Bおよび柱2A,2Bに対して直交する方向)を制振装置11の前,後方向とし、図面のZ方向(柱2A,2Bが延びる方向)を制振装置11の上,下方向とする。
図1ないし図7は第1の実施の形態を示している。図1において、制振装置11は、構造物の壁面状空間3に設けられている。壁面状空間3は、柱2A,2B、上梁1A、下梁1B、筋交いから形成される垂直な空間である。即ち、住宅等の構造物は、上梁1A、下梁1B、左柱2A、右柱2B、筋交い等を備えている。実施形態では、制振装置11は、筋交いを兼ねている。ここで、制振装置11が取付けられる構造物としては、例えば、住宅、店舗、工場、倉庫に用いられる建築物、換言すれば、新築または既に建設された木造建築物、軽量鉄骨建築物等である。
上梁1Aは、例えば構造物の一階の天井板(図示せず)を支持するように左右方向に横架されている。一方、下梁1Bは、例えば構造物の基礎(図示せず)に固定され左,右方向に延びている。また、上梁1Aと下梁1Bとの間には、左,右方向に離間して左柱2Aと右柱2Bとが起立している(上,下方向に延びている)。なお、実施形態では、構造物の1階の壁面状空間3に制振装置11を設けているが、制振装置11は、構造物の2階以上の壁面状空間に設けてもよい。
ところで、前述の特許文献1の制振装置は、シリンダ装置が複数のリンクを介して壁面状空間内に配置されている。この場合、リンクの動きによっては、シリンダ装置に曲げの力が加わる可能性がある。この場合、シリンダ装置に加わる力が分散し、シリンダ装置に対する力の伝達効率が悪くなる可能性が考えられる。そこで、第1の実施の形態では、制振装置11を次のように構成している。
即ち、制振装置11は、筋交いとして、上梁1A、下梁1B、左柱2A、右柱2Bにより形成された垂直な壁面状空間3内に位置して設けられている。この制振装置11は、第1棒状体12、第2棒状体14、上部固定部材13、下部固定部材15、第1連結部材16、第2連結部材17、第1ガイド部材18、第2ガイド部材19、上部摩擦材20、下部摩擦材21、シリンダ装置22を有している。制振装置11は、例えば、地震により水平方向(左,右方向)の振動が構造物に入力されると(上梁1Aと下梁1Bとが左右方向に相対変位する傾向となると)、シリンダ装置22を用いて構造物の振動を吸収するものである。
第1棒状体12は、構造物の壁面状空間3内に位置して、上部固定部材13と第1連結部材16との間を斜めに延びて設けられている。即ち、第1棒状体12は、右柱2Bから左柱2Aに向けて斜め下向きに延びている。第1棒状体12の上側に位置する一端は、上部固定部材13を介して上梁1Aおよび右柱2Bにボルト・ナット等の締結部材13Eを用いて揺動不能(回動不能)に固定されている。即ち、第1棒状体12は、締結部材13Eによって一端側を回転中心とした左,右方向(上,下方向も含む)の揺動(変位)が阻止されている。また、第1棒状体12の下側に位置する他端には、後述のピン16A1を用いて第1連結部材16が揺動可能(回動可能)に固定されている。第1棒状体12は、上梁1Aおよび右柱2Bを通じて構造物の水平方向の振動が入力される(上梁1Aおよび右柱2Bの上端と一緒に変位する)ものである。
上部固定部材13は、上梁1Aと右柱2Bとの間の角隅部に位置して設けられている。上部固定部材13は、鉄等の金属材料により、角隅部に嵌まる連結金具として形成されている。上部固定部材13は、上梁1Aと右柱2Bとの両方に固定されるL字状のL型部13Aと、L型部13Aに対して直交する方向に延び第1棒状体12が固定される突出部13Bと、を備えている。この上部固定部材13は、突出部13Bを介して第1棒状体12の一端を上梁1Aと右柱2Bとの間の角隅部に固定するものである。
この場合、上部固定部材13の突出部13Bには、第1棒状体12の上端を揺動可能に支持する支持部13Cと、第1棒状体12の揺動を所定範囲内で許容するための円弧状のガイド穴13Dとが設けられている。ガイド穴13Dには、第1棒状体12の揺動(支持部13Cを回転中心とする揺動)を阻止するためのボルト・ナット等の締結部材13Eが挿入されている。締結部材13Eは、第1棒状体12の一端を突出部13Bに固定(位置決めした状態で締結)することにより、第1棒状体12を任意の角度で揺動不能に固定する。即ち、ガイド穴13Dと締結部材13Eとによって、上梁1Aと下梁1Bとの間の寸法および左柱2Aと右柱2Bとの間の寸法が図1に示す構造物とは異なる構造物に対しても、汎用性をもって第1棒状体12を取付けることができる。
第2棒状体14は、構造物の壁面状空間3内に位置して、下部固定部材15と第2連結部材17との間を斜めに延びて設けられている。即ち、第2棒状体14は、左柱2Aから右柱2Bに向けて斜め上向きに延びている。第2棒状体14の上側に位置する一端には、後述のピン17A1を用いて第2連結部材17が揺動可能に固定されている。また、第2棒状体14の下側に位置する他端は、下部固定部材15を介して下梁1Bおよび左柱2Aにボルト・ナット等の締結部材15Eを用いて揺動不能に固定されている。即ち、第2棒状体14は、締結部材15Eによって他端側を回転中心とした左,右方向の揺動が阻止されている。第2棒状体14は、下梁1Bおよび左柱2Aを通じて構造物の水平方向の振動が入力されるものである。
下部固定部材15は、下梁1Bと左柱2Aとの間の角隅部に位置して設けられている。下部固定部材15は、鉄等の金属材料により、角隅部に嵌まる連結金具として形成されている。下部固定部材15は、下梁1Bと左柱2Aとの両方に固定されるL字状のL型部15Aと、L型部15Aに対して直交する方向に延び第2棒状体14が固定される突出部15Bと、を備えている。この下部固定部材15は、突出部15Bを介して第2棒状体14の他端を下梁1Bと左柱2Aとの間の角隅部に固定するものである。
この場合、下部固定部材15の突出部15Bには、第2棒状体14の下端を揺動可能に支持する支持部15Cと、第2棒状体14の揺動を所定範囲内で許容するための円弧状のガイド穴15Dとが設けられている。ガイド穴15Dには、第2棒状体14の揺動(支持部15Cを回転中心とする揺動)を阻止するためのボルト・ナット等の締結部材15Eが挿入されている。締結部材15Eは、第2棒状体14の一端を突出部15Bに固定することにより、第2棒状体14を任意の角度で揺動不能に固定する。即ち、ガイド穴15Dと締結部材15Eとによって、上梁1Aと下梁1Bとの間の寸法および左柱2Aと右柱2Bとの間の寸法が図1に示す構造物とは異なる構造物に対しても、汎用性をもって第2棒状体14を取付けることができる。
第1連結部材16は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第1棒状体12と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第1連結部材16は、第1〜第3の頂部16A〜16Cを有する三角形状に形成されている。この場合、図2に示すように、第1の頂部16Aは、第1棒状体12の他端とピン結合によりピン16A1を回転中心とした左,右方向の揺動(回動)を可能に接続されている。第2の頂部16Bは、第1,第2ガイド部材18,19の一端とピン結合によりピン16B1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第3の頂部16Cは、シリンダ装置22のピストンロッド22Bとピン結合により第1取付部としてのピン16C1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。
これにより、第1連結部材16は、構造物の振動時に、第1〜第3の頂部16A〜16Cをそれぞれ支点(回転中心)とする揺動が許容されることにより、壁面状空間3内を上,下方向および左,右方向に揺動可能(変位可能)となっている。そして、第1連結部材16は、後述の第2連結部材17とガイド部材18,19とシリンダ装置22とによりリンク機構を構成している。リンク機構は、第1棒状体12から第1連結部材16に加わる力と第2棒状体14から第2連結部材17に加わる力とを、シリンダ装置22の軸方向(伸縮方向)の力(ないし、軸方向に近い方向の力)に変換するためのものである。
第2連結部材17は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第2棒状体14と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第2連結部材17は、第1〜第3の頂部17A〜17Cを有し、第1連結部材16よりも一回り小さな三角形状に形成されている。この場合、図2に示すように、第1の頂部17Aは、第2棒状体14の一端とピン結合によりピン17C1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第2の頂部17Bは、第1,第2ガイド部材18,19の他端とピン結合によりピン17B1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第3の頂部17Cは、シリンダ装置22のシリンダ22Aとピン結合によりピン17C1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。これにより、第2連結部材17は、構造物の振動時に、第1〜第3の頂部17A〜17Cをそれぞれ支点(回転中心)とする揺動が許容されることにより、壁面状空間3内を上,下方向および左,右方向に揺動可能となっている。
第1ガイド部材18は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第1連結部材16と第2連結部材17との間を接続して設けられている。具体的には、第1ガイド部材18の上側に位置する一端は、第1連結部材16の第2の頂部16Bの一側側面と接続されている。また、第1ガイド部材18の下側に位置する他端は、第2連結部材17の第2の頂部17Bの一側側面と接続されている。即ち、第1ガイド部材18の一側は、第1連結部材16のピン16C1と離間した位置にあるピン16B1に接続され、第1ガイド部材18の他側は、第2連結部材17のピン17C1と離間した位置にあるピン17B1に接続されている。これにより、第1ガイド部材18は、シリンダ装置22と交差する位置関係になっている。この第1ガイド部材18は、構造物の振動時に、第1,第2連結部材16,17を上,下方向および左,右方向に揺動可能にガイドして、リンク機構を構成している。
即ち、第1ガイド部材18は、構造物の振動時に、第1連結部材16の第2の頂部16Bと第2連結部材17の第2の頂部17Bとの間の距離(間隔)を一定に保つためのものである。言い換えれば、第1ガイド部材18は、第1連結部材16および第2連結部材17の揺動ないし変位に拘わらず、第2の頂部16Bと第2の頂部17Bとの間(第3取付部としてのピン16B1と第4取付部としてのピン17B1との間)を、第1ガイド部材18の長さ寸法に離間させる(離間した状態を維持する)ものである。
第2ガイド部材19は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第1連結部材16と第2連結部材17との間を接続して設けられている。具体的には、第2ガイド部材19の上側に位置する一端は、第1連結部材16の第2の頂部16Bの他側側面と接続されている。また、第2ガイド部材19の下側に位置する他端は、第2連結部材17の第2の頂部17Bの他側側面と接続されている。即ち、第2ガイド部材18の一側は、第1連結部材16のピン16C1と離間した位置にあるピン16B1に接続され、第1ガイド部材18の他側は、第2連結部材17のピン17C1と離間した位置にあるピン17B1に接続されている。これにより、第2ガイド部材19は、シリンダ装置22と交差する位置関係になっている。この第2ガイド部材19は、構造物の振動時に、第1,第2連結部材16,17を上,下方向および左,右方向に揺動可能にガイドして、リンク機構を構成している。
即ち、第2ガイド部材19は、第1ガイド部材18と同様に、構造物の振動時に、第1連結部材16の第2の頂部16Bと第2連結部材17の第2の頂部17Bとの間の距離(間隔)を一定に保つためのものである。言い換えれば、第2ガイド部材19は、第1連結部材16および第2連結部材17の揺動ないし変位に拘わらず、第2の頂部16Bと第2の頂部17Bとの間(ピン16B1とピン17B1との間)を、第2ガイド部材19の長さ寸法に離間させるものである。
この場合、第2ガイド部材19は、第1ガイド部材18に対して前,後方向の反対側に設けられている。これにより、第2ガイド部材19は、第1,第2連結部材16,17の一側側面とは、前,後方向の反対側となる他側側面に接続されている。即ち、図4に示すように、第1,第2ガイド部材18,19は、第1,第2連結部材16,17およびシリンダ装置22を挟んで、前,後方向に対向して設けられている。この場合、第1,第2ガイド部材18,19は、シリンダ装置22の前後方向の両側で、シリンダ装置22に対して交差している。
そして、第1ガイド部材18の一端と第2ガイド部材19の一端は、第1連結部材16の第2の頂部16Bに対して、ピン結合によりピン16B1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。また、第1ガイド部材18の他端と第2ガイド部材19の他端は、第2連結部材17の第2の頂部17Bに対して、ピン結合によりピン17B1を回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。
上部摩擦材20は、第1連結部材16の一側側面と第1ガイド部材18との間および第1連結部材16の他側側面と第2ガイド部材19との間に、それぞれ設けられている。上部摩擦材20は、例えば樹脂材やゴム材や鉄材等を用いて筒状に形成され、ピン16B1を介して、第1連結部材16と第1ガイド部材18との間および第1連結部材16と第2ガイド部材19との間に接続されている(図4,図5参照)。この上部摩擦材20は、構造物の振動時に、第1連結部材16と第1ガイド部材18との間および第1連結部材16と第2ガイド部材19との間に摩擦抵抗を生じさせるものである。
即ち、上部摩擦材20は、第1ガイド部材18および第2ガイド部材19が第1連結部材16に対してピン16B1を中心に揺動しようとすることに対する抵抗となるものである。これにより、第1連結部材16の第2の頂部16Bと第1ガイド部材18および第2ガイド部材19との間に、上部摩擦材20による摩擦抵抗より大きい力が加わった場合に、第2の頂部16Bがピン16B1を中心に揺動し始める。言い換えれば、上部摩擦材20は、第2の頂部16Bの揺動が始まるまで、筋交いとして構造物の強度を確保する(振動を抑える)ものである。
下部摩擦材21は、第2連結部材17の一側側面と第1ガイド部材18との間および第2連結部材17の他側側面と第2ガイド部材19との間に、それぞれ設けられている。下部摩擦材21は、例えば樹脂材やゴム材や鉄材等を用いて筒状に形成され、ピン17B1を介して、第2連結部材17と第1ガイド部材18との間および第2連結部材17と第2ガイド部材19との間に接続されている(図4参照)。この下部摩擦材21は、構造物の振動時に、第2連結部材17と第1ガイド部材18との間および第2連結部材17と第2ガイド部材19との間に摩擦抵抗を生じさせるものである。
即ち、下部摩擦材21は、第1ガイド部材18および第2ガイド部材19が第2連結部材17に対してピン17B1を中心に揺動しようとすることに対する抵抗となるものである。これにより、第2連結部材17の第2の頂部17Bと第1ガイド部材18および第2ガイド部材19との間に、下部摩擦材21による摩擦抵抗より大きい力が加わった場合に、第2の頂部17Bがピン17B1を中心に揺動し始める。言い換えれば、下部摩擦材21は、第2の頂部17Bの揺動が始まるまで、筋交いとして構造物の強度を確保する(振動を抑える)ものである。
シリンダ装置22は、第1連結部材16と第2連結部材17との上,下方向の間に位置すると共に、第1ガイド部材18と第2ガイド部材19との前,後方向の間に設けられている。このシリンダ装置22は、例えばフリーピストンタイプのシリンダ装置により構成され、作動油が充填されたシリンダ22Aと、シリンダ22A内を摺動するピストン(図示せず)と、該ピストンに結合されたピストンロッド22Bを有している。このシリンダ装置22は、第1連結部材16、第2連結部材17、第1ガイド部材18、第2ガイド部材19と共に、リンク機構を構成している。
ピストンロッド22Bの端部は、第1連結部材16の第3の頂部16Cとピン16C1を介して左,右方向に揺動可能に接続されている。また、シリンダ22Aの端部は、第2連結部材17の第3の頂部17Cと第2取付部としてのピン17C1を介して左,右方向に揺動可能に接続されている。即ち、シリンダ装置22の一側(ピストンロッド22B側)は、第1連結部材16を介して第1連結部材16のピン16C1に第1棒状体12の他端と接続され、シリンダ装置22の他側(シリンダ22A側)は、第2連結部材17を介して第2連結部材17のピン17C1に第2棒状体14の一端と接続されている。これにより、シリンダ装置22は、構造物の振動による相対変位を、ピストンロッド22Bが伸長、縮小することによって(ピストンに設けた小孔(図示せず)を油が流通することによって)減衰させる。
この場合、シリンダ装置22は、第1連結部材16の第3の頂部16Cと第2連結部材17の第3の頂部17Cとの間で、左側から右側に向けて斜め上向きに延びている。一方、第1,第2ガイド部材18,19は、第1連結部材16の第2の頂部16Bと第2連結部材17の第2の頂部17Bとの間で、右側から左側に向けて斜め上向きに延びている。これにより、シリンダ装置22と第1,第2ガイド部材18,19とは、左,右方向にクロス(立体交差)して、図1に示す正面視でX字状をなしている。
ここで、リンク機構は、第1連結部材16、第2連結部材17、第1ガイド部材18、第2ガイド部材19、シリンダ装置22により構成されている。このリンク機構は、第1棒状体12と第2棒状体14との間を接続している。リンク機構は、構造物の振動時に、上梁1Aと下梁1Bとの間の左,右方向の相対変位を、シリンダ装置22に対して該シリンダ装置22の軸方向の変位(ないし、これに近い方向の変位)に変換して伝達するものである。
本実施の形態による制振装置11は、上述の如き構成を有するもので、次に、その作動について図6および図7を用いて説明する。なお、図6および図7では、構造物に振動が加わっていない中立状態を二点鎖線で示している。
制振装置11が取付けられた構造物に、例えば地震等により水平方向の振動が入力されると、上梁1Aおよび下梁1Bを介して左柱2Aと右柱2Bとの間で水平方向の相対変位が生じる。左柱2Aと右柱2Bとの間で生じた相対変位は、上部固定部材13、下部固定部材15、第1棒状体12、第2棒状体14、第1連結部材16、第2連結部材17を通じて、シリンダ装置22に入力される。
このとき、図6に示すように、上梁1Aが下梁1Bに対して、二点鎖線で示す中立位置から実線で示す左側位置に変位(相対変位)した場合は、上梁1Aと共に左柱2Aの上端および右柱2Bの上端が中立位置に対して左方向に変位することにより、第1棒状体12も左方向に向けて変位する。このとき、第1棒状体12は、上梁1Aに対して揺動不能に固定されているため、第1棒状体12は、例えば、上梁1Aとのなす角度が中立位置のときのなす角度のまま、左方向に変位する。これに伴って、第1連結部材16が左方向に変位するが、このとき、第1連結部材16は、第1,第2ガイド部材18,19によって第2連結部材17との距離(ピン16B1とピン17B1との距離)が一定に維持されるため、第1連結部材16は、左方向に変位しつつ反時計回り方向に揺動する。また、第1,第2ガイド部材18,19と接続されている第2連結部材17は、第1連結部材16が左方向に変位することに伴って、第1の頂部17Aのピン17A1を中心として反時計回り方向に揺動する。
これにより、ピストンロッド22Bが接続されている第1連結部材16の第3の頂部16Cとシリンダ22Aが接続されている第2連結部材17の第3の頂部17Cとは、シリンダ装置22の軸方向の互いに離れる方向に変位する。このため、シリンダ装置22のピストンロッド22Bが中立状態の縮小位置から伸長方向に変位する。そして、シリンダ装置22は、シリンダ22A内をピストンが変位することにより減衰力を発生して、構造物の振動エネルギを吸収する。
一方、上梁1Aが下梁1Bに対して、実線で示す左側位置から二点鎖線で示す中立位置に戻るときは、第1連結部材16が右方向に変位しつつ時計回り方向に揺動すると共に、第2連結部材17が時計回り方向に揺動する。このとき、第1連結部材16の第3の頂部16Cと第2連結部材17の第3の頂部17Cとは、シリンダ装置22の軸方向の互いに近付く方向に変位する。これにより、シリンダ装置22のピストンロッド22Bが、伸長位置から中立状態の縮小位置に戻りつつ、減衰力を発生する。
図7に示すように、上梁1Aが下梁1Bに対して、二点鎖線で示す中立位置から実線で示す右側位置に変位した場合は、上梁1Aと共に左柱2Aの上端および右柱2Bの上端が中立位置に対して右方向に変位することにより、第1棒状体12も右方向に向けて変位する。このとき、第1棒状体12は、上梁1Aに対して揺動不能に固定されているため、第1棒状体12は、例えば、上梁1Aとのなす角度が中立位置のときのなす角度のまま、右方向に変位する。これに伴って、第1連結部材16が右方向に変位するが、このとき、第1連結部材16は、第1,第2ガイド部材18,19によって第2連結部材17との距離が一定に維持されるため、第1連結部材16は、右方向に変位しつつ時計回り方向に揺動する。また、第1,第2ガイド部材18,19と接続されている第2連結部材17は、第1連結部材16が右方向に変位することに伴って、第1の頂部17Aのピン17A1を中心として時計回り方向に揺動する。
これにより、ピストンロッド22Bが接続されている第1連結部材16の第3の頂部16Cとシリンダ22Aが接続されている第2連結部材17の第3の頂部17Cとは、シリンダ装置22の軸方向の互いに離れる方向に変位する。このため、シリンダ装置22のピストンロッド22Bが中立状態の縮小位置から伸長方向に変位する。そして、シリンダ装置22は、シリンダ22A内をピストンが変位することにより減衰力を発生して、構造物の振動エネルギを吸収する。
一方、上梁1Aが下梁1Bに対して、実線で示す右側位置から二点鎖線で示す中立位置に戻るときは、第1連結部材16が左方向に変位しつつ反時計回り方向に揺動すると共に、第2連結部材17が反時計回り方向に揺動する。このとき、第1連結部材16の第3の頂部16Cと第2連結部材17の第3の頂部17Cとは、シリンダ装置22の軸方向の互いに近付く方向に変位する。これにより、シリンダ装置22のピストンロッド22Bが、伸長位置から中立状態の縮小位置に戻りつつ、減衰力を発生する。
かくして、第1の実施の形態によれば、制振装置11は、構造物の筋交いとして構成されている。この場合、制振装置11は、上梁1Aと右柱2Bとに上部固定部材13を介して固定された第1棒状体12と、下梁1Bと左柱2Aとに下部固定部材15を介して固定された第2棒状体14と、第1棒状体12の他端に第1連結部材16を介して第1連結部材16のピン16C1に一側が連結され、第2棒状体14の他端に第2連結部材17を介して第2連結部材17のピン17C1に他側が連結されたシリンダ装置22と、を含み、第1連結部材16および第2連結部材17は、揺動可能なリンク機構である構成としている。これにより、シリンダ装置22に曲げの力が加わることを低減(抑制)して、シリンダ装置22に対する力の伝達効率を高くすることができる。
ここで、図11は、比較例による制振装置101を示している。制振装置101は、第1棒状体102、上部支持部材103、第2棒状体104、下部支持部材105、シリンダ装置106を有している。制振装置101は、第1の実施の形態の制振装置11と異なり、リンク機構としての連結部材を介さずに、シリンダ装置106が第1棒状体102および第2棒状体104に直接接続されている。
このような比較例による制振装置101は、構造物の振動時に、第1棒状体102および第2棒状体104を介して直接シリンダ装置106に構造物の振動が入力される。このとき、図11中に二点鎖線で示すように、シリンダ装置106には、シリンダ装置106の中心軸線方向(伸縮方向)の力P1と、左,右方向の力P2とが加わる。即ち、左,右方向の力P2に基づいて、シリンダ装置106に曲げの力が加わる可能性がある。また、シリンダ装置106に加わる力が中心軸線方向の力P1と左,右方向の力P2とに分散してしまうので、シリンダ装置106に対する力の伝達効率が悪くなる可能性が考えられる。
これに対し、本実施の形態では、シリンダ装置22は、リンク機構を構成する第1,第2連結部材16,17を介して第1棒状体12および第2棒状体14と接続されている。これにより、構造物の振動時に、第1,第2棒状体12,14の動き(相対変位)を第1,第2連結部材16,17で受ける(第1,第2連結部材16,17が揺動する)ことにより、シリンダ装置22に加わる力を伸縮方向の力(ないし、これに近い方向の力)に変換することができる。この結果、シリンダ装置22に曲げの力が加わることを低減(抑制)して、シリンダ装置22に対する力の伝達効率を高くすることができるので、構造物の振動を効率良く制振することができる。
また、制振装置11は、第1連結部材16のピン16C1と離間した位置にあるピン16B1に一側が接続され、第2連結部材17のピン17C1と離間した位置にあるピン17B1に他側が接続される第1ガイド部材18が設けられている。これにより、第1ガイド部材18の一側をシリンダ装置22の一側(ピストンロッド22Bの一側)と離間させ、第1ガイド部材18の他側をシリンダ装置22の他側(シリンダ22Aの他側)と離間させることができる。
また、制振装置11は、第1ガイド部材18はシリンダ装置22と交差する位置に配されている。これにより、第1,第2連結部材16,17は効率的に揺動することができる。
また、制振装置11は、第1連結部材16の一側側面と第2連結部材17の一側側面とを接続する第1ガイド部材18と、第1連結部材16の他側側面と第2連結部材17の他側側面とを接続する第2ガイド部材19と、を設けている。この場合、第1,第2ガイド部材18,19と第1,第2連結部材16,17とのピン結合部を、第1,第2連結部材16,17が揺動する際の支点とすることができるので、第1,第2連結部材16,17は効率的に揺動することができる。
また、第1,第2ガイド部材18,19は、構造物の振動時に、第1連結部材16の第2の頂部16B(ピン16B1)と第2連結部材17の第2の頂部17B(ピン17B1)との間の距離(間隔)を一定に保つことができる。この結果、構造物の振動時に、第1,第2連結部材16,17が効率的に揺動して、制振装置11に加わる力をシリンダ装置22の伸縮方向の力(ないし、これに近い方向の力)に変換するので、構造物の振動を効率良く制振することができる。
また、制振装置11は、第1ガイド部材18と第2ガイド部材19との間にシリンダ装置22を配する構成としている。これにより、第1,第2ガイド部材18,19がシリンダ装置22の保護部材(ガードフレーム)となり、シリンダ装置22に対する傷や打痕を防止することができる。即ち、第1,第2ガイド部材18,19によってシリンダ装置22を覆うことにより、シリンダ装置22を保護することができる。
また、第1連結部材16は、第1ガイド部材18と第2ガイド部材19とに対して上部摩擦材20を介して接続され、第2連結部材17は、第1ガイド部材18と第2ガイド部材19とに対して下部摩擦材21を介して接続された構成としている。これにより、構造物の振動時に、上部摩擦材20は摩擦抵抗を生じさせて、第1連結部材16が揺動するのを抑制することができると共に、下部摩擦材21は摩擦抵抗を生じさせて、第2連結部材17が揺動するのを抑制することができる。この結果、上部摩擦材20および下部摩擦材21は、構造物が振動する際に構造物の変形(変位)に対する抵抗となり、構造物の変形を抑制することができる。
また、上部摩擦材20および下部摩擦材21の材質を変えることにより、摩擦抵抗の値を変更することができる。
また、制振装置11は、構造物の筋交いとして構成されているので、制振装置とは別に筋交いを設ける必要が無くなり、制振装置11を構造物に取付ける場合の施工性を向上することができる。これにより、作業性の改善、作業工数の低減、コストの抑制等を測ることができる。
次に、図8は本発明の第2の実施の形態を示している。第2の実施の形態の特徴は、第1連結部材にシリンダ装置を連結するための第5取付部を複数設けたことにある。なお、第2の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
制振装置31は、第1の実施の形態の制振装置11と同様に、第1棒状体12、第2棒状体14、上部固定部材13、下部固定部材15、第1連結部材32、第2連結部材17、第1ガイド部材18、第2ガイド部材19、上部摩擦材20、下部摩擦材21、シリンダ装置22を有している。
第1連結部材32は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第1棒状体12と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第1連結部材32は、第1〜第3の頂部32A〜32C、ピン32A1〜32C1を有する三角形状に形成されている。この場合、図8に示すように、第2の頂部32Bと第3の頂部32Cとの間には、シリンダ装置22のピストンロッド22Bを連結するための第5取付部32Dが複数(例えば、9個)設けられている。この場合、シリンダ装置22のピストンロッド22Bの先端側は、複数の第5取付部32Dのうちのいずれかに取付けられている。図8では、最も右側の第5取付部32Dに取付けられている。
かくして、第2の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第2の実施の形態によれば、第1連結部材32には、シリンダ装置22を連結する第5取付部32Dが複数設けられているため、シリンダ装置22のピストンロッド22Bは、複数の第5取付部32Dのいずれかに取付けることができる。これにより、第1連結部材32において、ピストンロッド22Bの取付位置を変更することにより、シリンダ装置22の稼働条件を可変にすることができる。例えば、取付け位置に応じて、シリンダ装置22の伸縮量、第1連結部材16の揺動量、揺動方向、リンク機構の動き等を、所望の制振性能が得られるように可変に設定することができる。この結果、構造物の振動条件(揺れ具合)等の使用用途に合わせて、シリンダ装置22を稼働させることができる。
次に、図9は本発明の第3の実施の形態を示している。第3の実施の形態の特徴は、第1連結部材および第2連結部材の形状を略小判状に形成したことにある。なお、第3の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
制振装置41は、第1の実施の形態の制振装置11と同様に、第1棒状体12、第2棒状体14、上部固定部材13、下部固定部材15、第1連結部材42、第2連結部材43、第1ガイド部材18、第2ガイド部材19、上部摩擦材20、下部摩擦材21、シリンダ装置22を有している。
第1連結部材42は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第1棒状体12と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第1連結部材42は、細長い板体により略小判状(略棒状、I字状)に形成されている。言い換えれば、第1連結部材42の両端は、円弧状に形成されている。第1連結部材42の一端は、第1棒状体12の他端とピン結合によりピン42Aを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第1連結部材42の他端は、シリンダ装置22のピストンロッド22Bとピン結合によりピン42Bを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。また、第1連結部材42の一端側中央部(中央部よりも一端側に寄った位置)は、第1,第2ガイド部材18,19の一端とピン結合によりピン42Cを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。これにより、第1連結部材42は、構造物の振動時に第1,第2ガイド部材18,19との接続点をそれぞれ支点とする揺動が許容されることにより、壁面状空間3内を上,下方向および左,右方向に揺動可能となっている。そして、第1連結部材42は、第2連結部材43とガイド部材18,19とシリンダ装置22とによりリンク機構を構成している。
第2連結部材43は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第2棒状体14と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第2連結部材43は、第1連結部材42と同様に、細長い板体により略小判状(略棒状、I字状)に形成されている。言い換えれば、第2連結部材43の両端は、円弧状に形成されている。第2連結部材43の一端は、シリンダ装置22のシリンダ22Aとピン結合によりピン43Aを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第2連結部材43の他端は、第2棒状体14の一端とピン結合によりピン43Bを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。また、第2連結部材43の他端側中央部(中央部よりも他端側に寄った位置)は、第1,第2ガイド部材18,19の他端とピン結合によりピン43Cを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。これにより、第2連結部材43は、構造物の振動時に第1,第2ガイド部材18,19との接続点をそれぞれ支点とする揺動が許容されることにより、壁面状空間3内を上,下方向および左,右方向に揺動可能となっている。
かくして、第3の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第3の実施の形態によれば、第1連結部材42は、細長い板体により略小判状に形成され、第1連結部材42の一端側中央部は、第1,第2ガイド部材18,19の一端と揺動可能に接続されている。また、第2連結部材43は、細長い板体により略小判状に形成され、第2連結部材43の他端側中央部は、第1,第2ガイド部材18,19の他端と揺動可能に接続されている。これにより、第1,第2連結部材42,43を揺動可能なリンク機構とすることができるので、シリンダ装置22に曲げの力が加わることを低減(抑制)して、シリンダ装置22に対する力の伝達効率を高くすることができる。
この場合、第1,第2連結部材42,43の長さ寸法を変更することにより、および/または、各ピン42A〜42C,43A〜43C間の寸法(離間寸法)を変更することにより、シリンダ装置22の伸縮量、第1連結部材42の揺動量、揺動方向、第2連結部材43の揺動量、揺動方向、リンク機構の動き等を、所望の制振性能が得られるように可変に設定することができる。
次に、図10は本発明の第4の実施の形態を示している。第4の実施の形態の特徴は、第1連結部材および第2連結部材の形状を略ブーメラン状に形成したことにある。なお、第4の実施の形態では、前述した第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
制振装置51は、第1の実施の形態の制振装置11と同様に、第1棒状体12、第2棒状体14、上部固定部材13、下部固定部材15、第1連結部材52、第2連結部材53、第1ガイド部材18、第2ガイド部材19、上部摩擦材20、下部摩擦材21、シリンダ装置22を有している。
第1連結部材52は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第1棒状体12と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第1連結部材52は、細長い板体により略ブーメラン状(略くの字状、略L字状)に形成されている。第1連結部材52の一端側中央部(中央部よりも一端側に寄った位置)には、湾曲部52Aが形成されている。第1連結部材52の一端は、第1棒状体12の他端とピン結合によりピン52Bを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第1連結部材52の他端は、シリンダ装置22のピストンロッド22Bとピン結合によりピン52Cを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。また、第1連結部材52の湾曲部52Aは、第1,第2ガイド部材18,19の一端とピン結合によりピン52Dを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。これにより、第1連結部材52は、構造物の振動時に湾曲部52Aを支点とする揺動が許容されることにより、壁面状空間3内を上,下方向および左,右方向に揺動可能となっている。そして、第1連結部材52は、第2連結部材53とガイド部材18,19とによりリンク機構を構成している。
第2連結部材53は、構造物の壁面状空間3内に位置して、第2棒状体14と第1,第2ガイド部材18,19およびシリンダ装置22との間に設けられている。第2連結部材53は、第1連結部材52と同様に、細長い板体により略ブーメラン状(略くの字状、略L字状)に形成され、第2連結部材53の他端側中央部(中央部よりも他端側に寄った位置)には、湾曲部53Aが形成されている。第2連結部材53の一端は、シリンダ装置22のシリンダ22Aとピン結合によりピン53Bを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。第2連結部材53の他端は、第2棒状体14の一端とピン結合によりピン53Cを回転中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。また、第2連結部材53の湾曲部53Aは、第1,第2ガイド部材18,19の他端とピン結合によりピン53Dを中心とした左,右方向の揺動を可能に接続されている。これにより、第2連結部材53は、構造物の振動時に湾曲部53Aを支点とする揺動が許容されることにより、壁面状空間3内を上,下方向および左,右方向に揺動可能となっている。
かくして、第4の実施の形態でも、第1の実施の形態とほぼ同様な作用効果を得ることができる。第4の実施の形態によれば、第1連結部材52は、細長い板体によりブーメラン状に形成され、第1連結部材52の湾曲部52Aは、第1,第2ガイド部材18,19の一端と揺動可能に接続されている。また、第2連結部材53は、細長い板体により略ブーメラン状に形成され、第2連結部材53の湾曲部53Aは、第1,第2ガイド部材18,19の他端と揺動可能に接続されている。これにより、第1,第2連結部材52,53を揺動可能なリンク機構とすることができるので、シリンダ装置22に曲げの力が加わることを低減(抑制)して、シリンダ装置22に対する力の伝達効率を高くすることができる。
この場合、第1,第2連結部材52,53の長さ寸法を変更することにより、湾曲部52A,53Aの角度(開き角度)を変更することにより、および/または、各ピン52B〜52D,53B〜53D間の寸法を変更することにより、シリンダ装置22の伸縮量、第1連結部材52の揺動量、揺動方向、第2連結部材53の揺動量、揺動方向、リンク機構の動き等を、所望の制振性能が得られるように可変に設定することができる。
なお、前記第1の実施の形態では、制振装置11を上梁1Aと右柱2Bとの間の右上角隅部から下梁1Bと左柱2Aとの間の左下角隅部に向けて配置する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制振装置を上梁と左柱との間の左上角隅部から下梁と右柱との間の右下角隅部に向けて配置する構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、第1棒状体12を上部固定部材13を介して上梁1Aおよび右柱2Bに固定する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第1棒状体を上梁のみに固定してもよいし、第1棒状体を右柱のみに固定する構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、第2棒状体14を下部固定部材15を介して下梁1Bおよび左柱2Aに固定する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2棒状体を下梁のみに固定してもよいし、第2棒状体を左柱のみに固定する構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、第1ガイド部材18は第1連結部材16の一側側面と第2連結部材17の一側側面との間を接続して設け、第2ガイド部材19は第1連結部材16の他側側面と第2連結部材17の他側側面との間を接続して設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制振装置は第1ガイド部材のみを設けてもよいし、第2ガイド部材のみを設ける構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、上部摩擦材20は、第1連結部材16の一側側面と第1ガイド部材18との間および第1連結部材16の他側側面と第2ガイド部材19との間に、それぞれ設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば上部摩擦材は第1連結部材の一側側面と第1ガイド部材との間のみに設けてもよいし、上部摩擦材は第1連結部材の他側側面と第2ガイド部材との間のみに設ける構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、下部摩擦材21は、第2連結部材17の一側側面と第1ガイド部材18との間および第2連結部材17の他側側面と第2ガイド部材19との間に、それぞれ設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば下部摩擦材は第2連結部材の一側側面と第1ガイド部材との間のみに設けてもよいし、下部摩擦材は第2連結部材の他側側面と第2ガイド部材との間のみに設ける構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、制振装置11は、フリーピストンタイプのシリンダ装置22を用いる構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば外筒と内筒との間にリザーバ室を設ける二重筒タイプのシリンダ装置を用いる構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、制振装置11は、構造物の一階の天井板と構造物の基礎との間に設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば制振装置を2階以上に設ける構成としてもよい。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第1の実施の形態では、制振装置11は、構造物に振動が加わっていない中立状態にある場合にピストンロッド22Bが縮小位置となり、構造物に振動が加わり左側位置および右側位置に変位する場合にピストンロッド22Bが伸長する構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば構造物に振動が加わっていない中立状態にある場合にピストンロッド22Bが中間位置(最縮小位置と最伸長位置との間の位置)となり、構造物に振動が加わり左側位置および右側位置の一方に変位する場合にピストンロッド22Bが縮小し、構造物に振動が加わり左側位置および右側位置の他方に変位する場合にピストンロッド22Bが伸長する構成としてもよい。この場合、第1,第2棒状体の取付角度、第1,第2連結部材の形状、各ピン間の寸法、ガイド部材の長さ寸法等により、シリンダ装置の伸縮を所望に調整することができる。このことは、第2,3,4の実施の形態についても同様である。
また、前記第2の実施の形態では、第1連結部材32には、シリンダ装置22を連結するための第5取付部32Dを9個設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第5取付部を2個以上8個以下設けてもよいし、10個以上設ける構成としてもよい。
また、前記第2の実施の形態では、第1連結部材32には、シリンダ装置22を連結するための第5取付部32Dを設ける構成とした。しかし、本発明はこれに限らず、例えば第2連結部材のみに複数の第5取付部を設けてもよいし、第1連結部材と第2連結部材との両方に複数の第5取付部を設ける構成としてもよい。この場合、第5取付部は、第1連結部材の第1取付部または第2連結部材の第2取付部を兼ねるものである。
さらに、前記各実施の形態は例示であり、異なる実施の形態で示した構成の部分的な置換または組合わせが可能であることは言うまでもない。
以上説明した実施形態に基づく制振装置として、例えば、以下に述べる態様のものが考えられる。
制振装置の第1の態様としては、構造物の柱、上梁、下梁、筋交いから形成される垂直な壁面状空間に設けられた制振装置であって、前記筋交いは、前記上梁と前記柱とのうちの少なくともいずれか一方に一端が固定された第1棒状体と、前記下梁と前記柱とのうちの少なくともいずれか一方に一端が固定された第2棒状体と、前記第1棒状体の他端に第1連結部材を介して該第1連結部材の第1取付部に一側が連結され、前記第2棒状体の他端に第2連結部材を介して該第2連結部材の第2取付部に他側が連結されたシリンダ装置と、を含み、前記第1連結部材および前記第2連結部材は、揺動可能な機構であることを特徴としている。これにより、シリンダ装置に曲げの力が加わることを低減(抑制)して、シリンダ装置に対する力の伝達効率を高くすることができる。
制振装置の第2の態様としては、第1の態様において、前記第1連結部材の前記第1取付部と離間した位置にある第3取付部に一側が接続され、前記第2連結部材の前記第2取付部と離間した位置にある第4取付部に他側が接続される第1ガイド部材が設けられることを特徴としている。これにより、第1ガイド部材の一側をシリンダ装置の一側と離間させ、第1ガイド部材の他側をシリンダ装置の他側と離間させることができる。
制振装置の第3の態様としては、第2の態様において、前記第1ガイド部材は前記シリンダ装置と交差する位置に配されることを特徴としている。これにより、第1,第2連結部材は効率的に揺動することができる。
制振装置の第4の態様としては、第2または第3の態様において、前記第1ガイド部材は、前記第1連結部材の一側側面と前記第2連結部材の一側側面とに接続され、前記第1連結部材の他側側面と前記第2連結部材の他側側面とには第2ガイド部材が接続され、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材との間に前記シリンダ装置を配することを特徴としている。これにより、第1,第2ガイド部材は、第1連結部材と第2連結部材との間の距離を一定に保つことができると共に、シリンダ装置に対する傷や打痕を防止することができる。
制振装置の第5の態様としては、第4の態様において、前記第1連結部材は、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材とのうちの少なくともいずれか一方に対して摩擦材を介して接続されたことを特徴としている。これにより、構造物が振動する際に構造物の変形に対する抵抗とすることができる。
制振装置の第6の態様としては、第4または第5の態様において、前記第2連結部材は、前記第1ガイド部材と前記第2ガイド部材とのうちの少なくともいずれか一方に対して摩擦材を介して接続されたことを特徴としている。これにより、構造物が振動する際に構造物の変形に対する抵抗とすることができる。
制振装置の第7の態様としては、第1ないし第6の態様のいずれかにおいて、前記第1連結部材と前記第2連結部材とのうちの少なくともいずれか一方には、前記シリンダ装置を連結する第5取付部が複数設けられており、前記シリンダ装置は、前記複数の第5取付部のいずれかに取付けられていることを特徴としている。これにより、構造物の振動条件等の使用用途に合わせて、シリンダ装置を稼働させることができる。
制振装置の第8の態様としては、第1ないし第7の態様のいずれかにおいて、前記第1棒状体の一端は、前記上梁に固定され、前記第2棒状体の一端は、前記下梁に固定されたことを特徴としている。これにより、制振装置を上梁と下梁とに対して固定させることができる。
尚、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
本願は、2016年11月25日付出願の日本国特許出願第2016−229303号に基づく優先権を主張する。2016年11月25日付出願の日本国特許出願第2016−229303号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書を含む全開示内容は、参照により本願に全体として組み込まれる。