図1(a)、(b)に示す本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル覆工体の構築構造10は、例えば地表面から40m以上の深さの区分地上権が不要な大深度地下に、図2に示すように、例えば道路用の本線トンネル51とランプトンネル52とを接続させるための、本線トンネル51及びランプトンネル52を囲うことが可能な、例えば直径が29m程度の大きさの大断面のインターチェンジ用の拡幅トンネル50を構築する工事において採用されたものである。すなわち、本実施形態のトンネル覆工体の構築構造10は、後述するトンネルの構築工法における、パイプルーフ12によって囲まれたこれの内部の地盤を上部から下部に向けて掘削すると共に、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面を覆って、上部から下部に向けて順次鉄筋コンクリート製の覆工体17を形成して行く、掘削及び覆工工程(図13、14参照)において、地中に埋設されるパイプルーフ材11に施工誤差がある場合でも、複数のパイプルーフ材11によるパイプルーフ12の内側に、鋼製の支保部材14を、多くの手間を要することなく容易に取り付けることを可能にすると共に、鋼製の支保部材14を挟んだ両側に連続してコンクリート16を打設することを可能にして、鉄筋コンクリート製の覆工体17を効率良く構築することができるようにするための構造として採用されたものである。
そして、本実施形態では、拡幅トンネル50を構築するためのトンネルの構築工法は、好ましくはシールド工法によって、例えば16m程度の直径の本線トンネル51が地中に形成された後に、この本線トンネル51から、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に坑内立坑20を形成して(図4及び図5(a)、(b)参照)、この坑内立坑20を介して、後述する円周シールド坑30(図6、図7(a)〜(c)参照)やパイプルーフ12(図8、図9参照)や褄部地盤改良体40(図11、図12参照)の施工を行なうようになっている。
すなわち、本実施形態では、拡幅トンネル50を構築するためのトンネルの構築工法は、本線トンネル51から薬液注入を行って、拡幅トンネル50が構築される領域の地盤及びこれの周囲の地盤を安定化させる薬液注入工程(図3参照)と、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部において、本線トンネル51から下方の地盤に向けて坑内立坑20を各々築造する立坑築造工程(図4及び図5(a)、(b)参照)と、坑内立坑20から円周シールド掘進機31を発進させると共に、当該坑内立坑20に円周シールド掘進機31を到達させて、パイプルーフ12及び褄部地盤改良体40を施工する際の作業坑となる、円周シールド坑30を各々形成する円周シールド施工工程(図6、図7(a)〜(c)参照)と、拡幅トンネル50の施工区間の一方の端部の円周シールド坑30から、他方の端部の円周シールド坑30に向けて、複数のパイプルーフ材11を地中に押し込むことによって、これらの複数のパイプルーフ材11を円周方向に並べて連設させた、円筒状のパイプルーフ12を形成するパイプルーフ施工工程(図8、図9参照)と、各々の円周シールド坑30の内方の地盤を地盤改良することによって、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に褄部地盤改良体40を各々形成する褄部改良体形成工程(図11、図12(a)、(b)参照)と、円筒状に形成されたパイプルーフ12と両側の端部の円周シールド坑30及び褄部地盤改良体40とによって周囲を囲まれる内側領域を、上部から下部に向けて掘削すると共に、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面や褄部地盤改良体40の内壁面を覆って、上部から下部に向けて順次覆工壁13,43を形成する掘削及び覆工工程(図13〜図20参照)とを含んで構成されている。
上述のトンネルの構築工法における薬液注入工程では、図3に示すように、本線トンネル51からこれの外周部分の地盤に向けて、公知の薬液注入管26を、本線トンネル51の周方向及び軸方向に所定の間隔をおいて、多数本挿入する。また、挿入した薬液注入管26を介して、例えば水ガラス系等の公知の薬液を注入することによって、拡幅トンネル50(図2参照)が構築される領域の地盤及びこれの周囲の地盤を改良して、これらの地盤を安定化させる。薬液注入工程における、薬液注入管26の挿入本数、注入する薬液の種類や注入量、注入圧、ゲルタイム等は、対象となる地盤の種類や、地下水位、透水係数、粒度分布、改良範囲等を鑑みて、適宜設計することができる。
なお、本実施形態では、拡幅トンネル50を構築するための各工程を行うのに先立って、本線トンネル51の外郭部分を構成する例えばセグメントの内周面に沿って、鋼製の補強リング27aを、本線トンネル51の軸方向に所定の間隔をおいて複数設置することで、セグメント補強支保工27を形成して、本線トンネル51を補強しておくことが好ましい(図3参照)。セグメント補強支保工27は、特に、坑内立坑20及び褄部地盤改良体40が形成される、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部や、こられの端部を挟んで本線トンネル51の軸方向に隣接する部分に、設置することが好ましい。
立坑築造工程では、図4及び図5(a)、(b)に示すように、本線トンネル51における拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部から、例えば矩形断面を有する鋼製の複数の矩形推進管21を、公知の密閉型鉛直推進工法によって、各々鉛直下方に推進させることで、これらの矩形推進管21を縦横に隣接して複数並べて配置した、全体として略六面体形状を有する、坑内立坑20となる鋼製覆工体23を形成する。
すなわち、立坑築造工程では、例えば矩形推進管21の下端部に、矩形断面を有する公知の矩形掘進機22を取り付けて下方に掘進させながら、この矩形掘進機22に後続させて矩形推進管21を連設して下方に押し込んでゆくことで、本線トンネル51から鉛直下方に向けて、矩形推進管21を所定の深さまで設置する。このように矩形推進管21を所定の深さまで設置する作業を、複数の矩形推進管21を縦横に隣接させつつ複数回繰り返すことによって、これらの複数の矩形推進管21が平面視矩形状に一体となった、例えば本線トンネル51の軸方向の長さが15〜18m程度、幅方向の長さが8〜10m程度、鉛直方向の深さが18m程度の大きさの、六面体形状の鋼製覆工体23が、本線トンネル51の下方の地盤に構築される。しかる後に、構築された鋼製覆工体23における、外周壁23aとなる部分によって4方を囲まれる内側領域を仕切って縦横に格子状に配置された、各々の矩形推進管21による仕切り壁23bの部分を切断撤去する。これによって、複数の矩形掘進機22を地中に残置したまま(図7(a)〜(c)参照)、相当の大きさの作業空間を確保した坑内立坑20が、仕切り壁23bが撤去された後の鋼製覆工体23の外周壁23aによって周囲を囲まれた状態で、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に各々築造される。築造された坑内立坑20は、円周シールド施工工程における、円周シールド掘進機31の発進坑及び到達坑として用いられる。
円周シールド施工工程では、図6及び図7(a)〜(c)に示すように、築造された各々の坑内立坑20から、公知の円周シールド掘進機31を発進させると共に、発進させた円周シールド掘進機31を同じ坑内立坑20に到達させることによって、パイプルーフ12及び褄部地盤改良体40を施工する際の作業坑となる円周シールド坑30を、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に各々形成する。
本実施形態では、円周シールド掘進機31は、例えば3〜4.5m程度のシールド高さの矩形断面を備える、好ましくは泥水式の曲率を有する公知のシールド掘進機となっている。円周シールド掘進機31は、坑内立坑20に設置した元押しジャッキ33(図7(b)参照)からの推進力を受けて、矩形断面を有すると共に曲線施工が可能な曲線部覆工セグメント32を、後方に連設させながら、拡幅トンネル50の外径よりも一回り大きな直径の円周に沿って、坑内立坑20に到達するまで掘進することができるようになっている。これによって、曲線部覆工セグメント33による、円環状に延設する円周シールド坑30が、後述するパイプルーフ施工工程でパイプルーフ12が円筒状に形成される、円形の断面に沿って、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に各々設けられることになる。
パイプルーフ施工工程では、図8及び図9に示すように、拡幅トンネル50の施工区間の一方の端部に設けられた円周シールド坑30から、他方の端部に設けられた円周シールド坑30に向けて、公知のパイプルーフ掘進工法により、複数のパイプルーフ材11を掘進させながら地中に押し込んでゆく。これによって、これらの複数のパイプルーフ材11が円周方向に間隔を置いて並べて埋設されることにより構成される、円筒状のパイプルーフ12が形成される。
すなわち、本実施形態では、パイプルーフ掘進工法として、高水圧下でも施工が可能な泥水式推進工法を採用し、パイプルーフ材11として、内部で作業員が作業できる大きさの例えばφ2.0m程度の鋼管を使用して、これらの複数のパイプルーフ材11を地中に押し込むことによって、地中に構築される拡幅トンネル50の外周部分の地盤に、複数のパイプルーフ材11を、トンネルの延設方向に延設させて各々埋設する。また、パイプルーフ掘進工法により円周シールド坑30からパイプルーフ材11を地中に押し込む作業を、円周シールド坑30の周方向に所定のピッチで複数回繰り返すことによって、地中に構築される拡幅トンネル50の外周部分の地盤に、複数のパイプルーフ材11を、弧状の断面を含む円形の断面に沿った円周方向に、所定の間隔を置いて全周に亘って並べて埋設することが可能になる。またこれによって、弧状の断面を含む円形の断面に沿った円周方向に並べて埋設された複数のパイプルーフ材11による、拡幅トンネル50の掘削時に周囲の地盤からの荷重を先受けする、円筒状のパイプルーフ12を形成することが可能になる。
そして、本実施形態では、上述のパイプルーフ施工工程において、弧状の断面を含む円形の断面に沿って地中に埋設された複数のパイプルーフ材11は、図10に示すように、連結接続鋼材34と耐圧支持地盤体35とを含んで構成されるパイプルーフの連結構造36により一体として連結されることによって、アーチ効果を発揮することが可能な円筒状のパイプルーフ12を形成する。これによって、拡幅トンネル50の横断方向(断面方向)に荷重を支持する横断方向の支保工を、複数のパイプルーフ材11を用いたパイプルーフ12によって、拡幅トンネル50の外周部分の地盤に効率良く設けることが可能になる。
すなわち、本実施形態では、パイプルーフの連結構造36は、地中に構築される拡幅トンネル50の外周部分の地盤において、図8及び図9に示すように、拡幅トンネル50の延設方向に延設すると共に、弧状の断面(本実施形態では、弧状の断面を含む円形の断面)に沿った方向に間隔を置いて並べて埋設された(図8、図9参照)、複数のパイプルーフ材11を互いに連結して、地盤からの荷重を一体として支持できるようにする連結構造であって、図10に示すように、弧状の断面に沿った方向に隣接する各一対のパイプルーフ材11に、両側の端部34aを各々固着して、これらのパイプルーフ材11を互いに接続する連結接続鋼材34と、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に介在して設けられた、耐圧支持地盤体35とを含んで構成されている。
また、本実施形態では、複数のパイプルーフ材11は、地中に構築される拡幅トンネル50の少なくとも上方部分の地盤において、弧状の断面に沿った方向に間隔を置いて並べて埋設されていると共に(図8参照)、好ましくは地中に構築される拡幅トンネル50の外周部分の地盤において、弧状の断面を含む円形の断面に沿った円周方向に、間隔を置いて全周に亘って並べて埋設されている(図9参照)。
さらに、本実施形態では、図10に示すように、連結接続鋼材34は、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分における、弧状の断面の径方向の内側部分及び外側部分に、2段に配置されて取り付けられており、耐圧支持地盤体35は、これらの2段に配置された連結接続鋼材34によって挟まれる領域に設けられている。
本実施形態では、連結接続鋼材34と耐圧支持地盤体35とを含んで構成されるパイプルーフの連結構造36は、パイプルーフ材11の内部からの作業によって、簡易に形成することが可能である。すなわち、本実施形態では、パイプルーフ材11は、例えばφ2.0m程度の大きさの鋼管からなり、作業員が立ち入って作業することができるようになっていると共に、連結接続鋼材34や耐圧支持地盤体35を施工するのに必要な、各種の資材や機材を、パイプルーフ材11の内部に搬入できるようになっている。
本実施形態では、パイプルーフの連結構造36を構成する連結接続鋼材34は、隣接する各一対のパイプルーフ材11に跨って配置することが可能な長さを有している。連結接続鋼材34は、細長い連結鋼板や鋼棒等の、端部34aを溶接や接合用の金物等によってパイプルーフ材11に接合することが可能な、種々の連結用の鋼製部材を用いることができる。本実施形態では、連結接続鋼材34として、例えば両端部に雄ネジ部が設けられた、引張強度に優れる鋼棒である、例えばφ30mm程度のPC鋼棒を好ましく用いることができる。
そして、本実施形態では、例えば隣接する各一対のパイプルーフ材11のうちの一方から、他方のパイプルーフ材11に向けて、これらのパイプルーフ材11を貫通させると共に、これらの間隔部分の地盤を穿孔して形成した挿通孔に、PC鋼棒34を、両側のパイプルーフ材11の間に跨るようにして挿通する。しかる後に、PC鋼棒34の両側の端部34aの雄ネジ部を、各々のパイプルーフ材11の内部に溶接等を介して設置した締着台37に、ナット部材38を用いて各々締着する。これによって、PC鋼棒からなる各連結接続鋼材34は、両側の端部34aを両側のパイプルーフ材11に各々締着して、これらの各一対のパイプルーフ材11に跨るようにして固着されると共に、これらの各一対のパイプルーフ材11を各々強固に連結できるようになっている。
また、本実施形態では、PC鋼棒からなる連結接続鋼材34は、パイプルーフ材11の延設方向に、例えば30〜100cmのピッチで取り付けられていることが好ましい。連結接続鋼材34が、パイプルーフ材11の延設方向に、30〜100cmのピッチで取り付けられていることにより、隣接する各一対のパイプルーフ材11を強固に連結する引張材として、より効果的に機能することが可能になると共に、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に設けられた耐圧支持地盤体35を、より効果的に拘束することが可能になる。
本実施形態では、好ましくはPC鋼棒からなる連結接続鋼材34は、上述のように、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分における、径方向の内側部分及び外側部分に、2段に配置されて取り付けられている。これによって、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に設けられた耐圧支持地盤体35を、2段に配置された連結接続鋼材34により内側及び外側から挟み込むようにして、一層強固に拘束することになるので、当該耐圧支持地盤体35を圧縮材としてさらに効果的に機能させることが可能になる。またこれによって、隣接する各一対のパイプルーフ材11が、連結接続鋼材34及び耐圧支持地盤体35を介して一体として弧状に連続することによるアーチ効果を、より安定した状態でパイプルーフ12に発揮させることが可能になる。またこれによって、周囲の地盤からの荷重を支持する拡幅トンネル50の横断方向の支保工を、これらの複数のパイプルーフ材11が周方向に一体となった円筒状のパイプルーフ12によって、さらに効率良く強固に形成することが可能になる。
本実施形態では、パイプルーフの連結構造36を構成する耐圧支持地盤体35は、地中に埋設された複数のパイプルーフ材11における、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に介在して設けられた、圧縮材として機能する間詰地盤体ある。耐圧支持地盤体35は、複数のパイプルーフ材11による円筒状のパイプルーフ12が地中に形成された後に、これの内側部分を掘削して周囲の地盤からの荷重を受けることでパイプルーフ12がアーチ効果を発揮する際に、パイプルーフ12の周方向に沿って隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に生じる圧縮力を、効果的に支持できる程度の圧縮耐力として、例えば2N/mm2程度の圧縮強度を備えるように形成されている。
本実施形態では、このような圧縮強度を備える耐圧支持地盤体35は、例えば、パイプルーフ材11の内部からの作業により、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分の地盤を地盤改良して、所定の圧縮強度を有する改良地盤を形成することによって設けることができる。改良地盤は、連結接続鋼材13として例えば外周部分に注入孔が形成された中空の鋼製パイプ部材を用い、この鋼製パイプ部材を介して、パイプルーフ材11の内部から当該鋼製パイプ部材の周囲に地盤改良材を圧入することによって、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に形成することもできる。
また、このような圧縮強度を備える耐圧支持地盤体35は、パイプルーフ材の内側からの作業により、隣接する各一対のパイプルーフ材の間隔部分の地盤を、固化後に所定の圧縮強度を有することになるグラウト材と置き替えて、固化したグラウト材によって設けることもできる。
さらに、このような圧縮強度を備える耐圧支持地盤体35は、複数のパイプルーフ材11が埋設される部分の地盤が、所定の圧縮強度を有する例えばドタン層等である場合には、このような所定の圧縮強度を有する地山の地盤をそのまま利用して、隣接する各一対のパイプルーフ材11の間隔部分に介在して設けられた、耐圧支持地盤体35とすることもできる。
なお、上述のようにして、パイプルーフの連結構造36により隣接する各一対のパイプルーフ材11を一体として連結する作業は、パイプルーフ施工工程において、周方向に間隔をおいて順次地中に押し込まれる複数のパイプルーフ材11のうちの、何本かのパイプルーフ材11が先行して埋設された段階で、後続するパイプルーフ材11を、一方の円周シールド坑30から他方の円周シールド坑30に向けて順次地中に押し込んでゆく作業と同時に、又は並行して、実施することができる。また、本実施形態のパイプルーフの連結構造10により隣接する各一対のパイプルーフ材11を一体として連結する作業は、後続して施工される褄部改良体形成工程と同時に、又は並行して実施することもできる。これらによって、工期が遅れることになるのを、効果的に抑制することが可能になる。
上述のトンネルの構築工法における褄部改良体形成工程では、図11及び図12(a)、(b)に示すように、各々の円周シールド坑30の内方の地盤を地盤改良することによって、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に、褄部地盤改良体40を形成する。すなわち、褄部改良体形成工程では、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部における、各々の円周シールド坑30の内部や、これに近接する部分のパイプルーフ材11の内部からの作業によって、例えば各円周シールド坑30の上部から下部に向けて、公知の地盤改良器42を用いた、好ましくは高圧噴射撹拌工法による地盤改良を行うことで、円柱形状の単位改良体41を、円周シールド坑30によって囲まれるこれの径方向内方の地盤に形成する。また、円周シールド坑30の内方の地盤に対して、このような高圧噴射撹拌工法による地盤改良を複数回繰り返すことによって、複数の円柱形状の単位改良体41が、その外周部分を重ね合わせつつ縦横に並べて配置されることで一体として形成された、褄部地盤改良体40(図12(a)、(b)参照)が、拡幅トンネル50の施工区間の両側の端部に、円周シールド坑30と本線トンネル51との間の間隔部分を閉塞するようにして、各々の円周シールド坑30の内方に構築されることになる。
これによって、拡幅トンネル50の施工区間の掘削領域が、円筒状に形成されたパイプルーフ12と、両側の端部の円周シールド坑30及び褄部地盤改良体40とによって、周囲を囲まれた状態になるので、これらのパイプルーフ12や褄部地盤改良体40に外周の地盤からの荷重を支持させつつ、掘削及び覆工工程において、これらの内側領域を、安定した状態で掘削してゆくことが可能になる。
掘削及び覆工工程では、図13〜図20に示すように、円筒状に形成されたパイプルーフ12と、両側の端部の円周シールド坑30及び褄部地盤改良体40とによって周囲を囲まれる内側領域を、上部から下部に向けて掘削すると共に、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面や褄部地盤改良体40の内壁面を覆って、上部から下部に向けて、いわゆる逆巻き工法によって、鉄筋コンクリート製の覆工体17,43を順次形成してゆく。
すなわち、掘削及び覆工工程では、掘削機械44として例えばバックホウやブルドーザーを用いて、パイプルーフ12の内側の掘削領域の上段部から下段部に向けて、拡幅トンネル50の掘削作業を順次行うと共に(図13、図14参照)、上段部から下段部に向けて、掘削により露出したパイプルーフ12の内壁面を覆うようにして、後述する本実施形態のンネル覆工体の構築構造10による鉄筋コンクリート製(本実施形態では、鉄筋鉄骨コンクリート製)の覆工体17を、順次構築して行く(図15〜図19参照)。また、掘削により露出した褄部地盤改良体40の内壁面を覆うようにして、例えば鉄筋コンクリート製や鉄筋鉄骨コンクリート製の褄部の覆工体43(図20参照)を、順次構築して行く。
ここで、拡幅トンネル50の掘削作業では、図13及び図14に示すように、パイプルーフ12を構成するパイプルーフ材11の大きな剛性による、トンネルの延設方向の先受け支保工としての機能によって、地山の安定性を向上させると共に、地山の変形を抑制しつつ、トンネルの延設方向に掘削作業をさらに効率良く行ってゆくことが可能になる。また、本実施形態では、上述のパイプルーフの連結構造36によって、隣接する各一対のパイプルーフ材11が一体として連結されているので、パイプルーフ12をトンネルの横断方向(断面方向)の支保工として機能させることが可能になる。
拡幅トンネル50の上段部の掘削作業では、作業空間から本線トンネル51に至る土砂排出管53(図14参照)を、例えば本線トンネル51からの鋼管推進によって設置しておき、この土砂排出管53に掘削土砂を投入することによって、本線トンネル51を介して掘削土砂を搬出することができる。掘削領域の上段部から下段部に向けた掘削作業の進行に伴って露出する本線トンネル51の不要な部分は、例えば破砕機械を用いて破砕して、掘削土砂と共に撤去することができる。
そして、本実施形態のンネル覆工体の構築構造10は、掘削及び覆工工程において、上述のパイプルーフ施工工程でトンネルの延設方向に埋設された複数のパイプルーフ材11によるパイプルーフ12の内側に、鉄筋コンクリート製(本実施形態では、鉄筋鉄骨コンクリート製)の覆工体17を形成するための構築構造であって、図1及び図15〜図19に示すように、各隣接する一対のパイプルーフ材11の間隔部分を閉塞して、トンネルの内周面に沿って取り付けられた止水板(本実施形態では、止水鉄板)13(図1、図15(a)参照)と、パイプルーフ材11に一端部が接合されて、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付けられた複数のアンカーロッド部材15a(図1、図15(b)参照)と、これらの複数のアンカーロッド部材15aに支持させて、パイプルーフ材11と離間してトンネルの内周面に沿って取り付けられた鋼製支保部材14(図1、図15(b)参照)と、鋼製支保部材14及び/又は複数のアンカーロッド部材15に支持させて、トンネルの内周面に沿って配筋された鉄筋18(図1、図15(c)参照)と、鋼製支保部材14に支持させて、鋼製支保部材14と離間してトンネルの内周面に沿って取り付けられたスキンプレート19(図1、図15(d)参照)と、スキンプレート19と止水板13との間の部分に打設されて硬化したコンクリート16(図1、図15(e)、(f)参照)とを含んで構成されている。
また、本実施形態では、鋼製支保部材14に一端部が接合されて、複数の内側アンカーロッド部材15b(図1、図14(b)参照)が、鋼製支保部材14からトンネルの内方に向けて突出させて取り付けられており、これらの複数の内側アンカーロッド部材15bを介して鋼製支保部材14に支持させて、スキンプレート19が鋼製支保部材14と離間して取り付けられている。鉄筋18は、本実施形態では、これらの内側アンカーロッド部材15bによって支持されて、鋼製支保部材14の内側にも配筋されている。
本実施形態では、各隣接する一対のパイプルーフ材11の間隔部分を閉塞して、トンネルの内周面に沿って取り付けられる止水板13は、好ましくは止水鉄板13が用いられている。止水鉄板13は、両側の側縁部を、好ましくは両側のパイプルーフ材11の外周面における最もトンネルの内方に位置する部分に、トンネルの内側からの作業によって溶接等により接合することで、図1に示すように、各隣接する一対のパイプルーフ材11の間隔部分に露出する地盤面を、トンネルの内側から覆うようにして、これらの間隔部分を閉塞した状態で取り付けられる。なお、止水鉄板13を取り付けるのに先立って、一対のパイプルーフ材11の間隔部分に露出する地盤面には、吹付けコンクリートが適宜吹き付けられて、地盤面の安定化が図られる。また、止水鉄板13を取り付けた後に、一対のパイプルーフ材11の間隔部分の地盤面や吹付けコンクリートと、止水鉄板13との間の隙間を埋めるようにして、グラウト等による裏込め充填材が適宜充填されることになる。
パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付けられた複数のアンカーロッド部材15aは、例えばφ32mm程度の太さの、両端部に雄ネジ部が形成された鋼棒からなる。各々のアンカーロッド部材15aは、パイプルーフ材11の内部での作業によってパイプルーフ材11の内周面における最もトンネルの内方に位置する部分に取り付けられた、例えば袋ナット15cに、一端部の雄ネジ部を締着して接合することで、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて、例えば1000mm程度の長さで延設させた状態で取り付けられる。
複数のアンカーロッド部材15aに支持されてトンネルの内周面に沿って取り付けられる鋼製支保部材14は、例えばH−300×300×10×15のH形鋼からなる。鋼製支保部材14は、例えば上下のフランジ部に形成した挿通孔にアンカーロッド部材15aを挿通して、アンカーロッド部材15aの他端部の雄ネジ部を、下方のフランジ部の下面にナット部材15dを用いて締着することで接合して、パイプルーフ材11と離間してトンネルの内周面に沿って周方向に延設した状態で取り付けられる。本実施形態では、鋼製支保部材14は、トンネルの延設方向に例えば2000mm程度のピッチで、間隔をおいて複数箇所に取り付けられる。
鋼製支保部材14からトンネルの内方に向けて突出させて取り付けられた複数の内側アンカーロッド部材15bもまた、例えばφ32mm程度の太さの、両端部に雄ネジ部が形成された鋼棒からなる。各々の内側アンカーロッド部材15bは、例えばこれの一端部を、鋼製支保部材14の下方のフランジ部に形成した挿通孔に挿通すると共に、下方のフランジ部の上面にナット部材15eを用いて締着することで接合して、鋼製支保部材14からトンネルの内方に向けて突出させて、例えば700mm程度の長さで延設させた状態で取り付けられる。
アンカーロッド部材15aや鋼製支保部材14や内側アンカーロッド部材15bに支持されて配筋される鉄筋18は、例えばD19〜35程度の太さの異形鉄筋からなる。鉄筋18は、止水鉄板13とスキンプレート19との間のコンクリート16が打設される空間において、例えば125〜250mm程度のピッチで、縦横に延設して配筋される。
鋼製支保部材14に支持されてトンネルの内周面に沿って取り付けられるスキンプレート19は、例えば厚さが6mm程度の鋼板からなり、トンネルの内周面に沿った形状に湾曲して形成されている。スキンプレート19の鋼製支保部材14側の外側面には、多数の補強リブ19aが、外側に突出して設けられている(図1(b)参照)。スキンプレート19は、当該スキンプレート19に形成された挿通孔に、内側アンカーロッド部材15bの他端部を挿通し、挿通された他端部を、当該スキンプレート19の内側面にナット部材15fを用いて締着することで接合して、内側アンカーロッド部材15bを介して、鋼製支保部材14から支持された状態で取り付けられる。これによって、取り付けられたスキンプレート19と止水鉄板13との間には、例えば1300mm程度の厚さの、コンクリート16が打設される空間が保持される。
また、本実施形態では、スキンプレート19の内側面に沿って、大引き部材19bが、トンネルの軸方向に延設させた状態で、周方向に間隔をおいて複数箇所に取り付けられている。大引き部材19bは、スキンプレート19の内側面に内側アンカーロッド部材15bの他端部をナット部材15fを用いて締着する際に、スキンプレート19の内側面とナット部材15fとの間に挟み込まれた状態で固定される。大引き部材19bが取り付けられていることにより、スキンプレート19と止水鉄板13との間の空間にコンクリート16が打設された際に、硬化する前のコンクリート16による荷重を、スキンプレート19によってより安定した状態で支持することが可能になる。
本実施形態では、スキンプレート19と止水板13との間の部分の空間に打設されるコンクリート16は、好ましくは高流動コンクリートが用いられる。コンクリート16として高流動コンクリ0を用いることにより、特に振動バイブレータによって締固めることが困難な、トンネルの上部の空間にコンクリート16を打設する場合でも、これらの空間に密に充填させた状態で、コンクリート16を打設することが可能になる。コンクリート16は、スキンプレート19に設けた注入管28(図15(e)、(f)参照)から注入充填して、打設することが可能である。
そして、本実施形態では、上述の構成を備えるトンネル覆工体の構築構造10は、以下に記載するトンネル覆工体の構築工法によって、トンネルの上部から下部に向けて順次構築されることで、鉄筋コンクリート製の覆工体を形成して行くことが可能になる。
すなわち、本実施形態のトンネル覆工体の構築工法は、地中に構築されるトンネルの外周部分の地盤において、トンネルの延設方向に延設させてトンネルの周方向に並べて埋設された複数のパイプルーフ材11によるパイプルーフ12の内側に、鉄筋コンクリート製の覆工体17を形成するための構築工法であって、図15(a)〜(f)に示すように、例えば最上段部の1段目の覆工体17を構築する工程として、各隣接する一対のパイプルーフ材11の間隔部分を閉塞して、トンネルの内周面に沿って止水板13を取り付ける工程(図15(a)参照)と、パイプルーフ材11に一端部を接合して、複数のアンカーロッド部材15aを、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付ける工程(図15(b)参照)と、取り付けた複数のアンカーロッド部材15aに支持させて、トンネルの内周面に沿って鋼製支保部材14をパイプルーフ材11と離間して取り付ける工程(図15(b)参照)と、鋼製支保部材14及び/又は複数のアンカーロッド部材15aに支持させて、トンネルの内周面に沿って鉄筋18を配筋する工程(図15(c)参照)と、鋼製支保部材14に好ましくは内側アンカーロッド部材15bを介して支持させて、鋼製支保部材14と離間してトンネルの内周面に沿ってスキンプレート19を取り付ける工程(図15(d)参照)と、取り付けたスキンプレート19と止水板13との間の部分にコンクリート16を打設して硬化させる工程(図15(e)、(f)参照)とを含んで構成されている。
また、本実施形態では、鋼製支保部材14及び鉄筋18の端部を突出させた状態で、スキンプレート19と止水板13との間のコンクリート16が打設される領域の下端部に、底型枠29を、好ましくは支保架台29aによって支持した状態で設置する工程(図15(d)参照)を含んでおり、コンクリート16が充填される領域を、上部から下方に移動させつつ、鋼製支保部材14及び鉄筋18を下方に継ぎ足しながら、上述の各工程を繰り返して、上部から下部に向けて覆工体を順次形成してゆくようになっている。
すなわち、本実施形態では、図15(a)〜(f)に示す工程に従って、1段目の覆工体17を構築したら、図16(a)〜(f)に示すように、底型枠29及びサポート架台29aを撤去して(図16(a)参照)、パイプルーフ12の内側の2段目の地盤を掘削する(図16(b)参照)。しかる後に、2段目の掘削によって1段目の覆工体17の下方に露出した両側の側部領域における、隣接するパイプルーフ材11の間隔部分を閉塞して、トンネルの内周面に沿って止水板13を取り付けると共に、パイプルーフ材11に一端部を接合して、複数のアンカーロッド部材15aを、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付ける(図16(c)参照)。また、1段目の覆工体17の下端部から突出する鋼製支保部材14及び鉄筋18の端部と接続して、これらの下方に、2段目の覆工体17の鋼製支保部材14、鉄筋18、及びスキンプレート19を取り付ける(図16(d)参照)。さらに、底型枠29を、好ましくは支保架台29aによって支持した状態で設置した後に(図16(d)参照)、スキンプレート19と止水板13との間の部分にコンクリート16を打設して硬化させることより(図16(e)、(f)参照)、2段目の覆工体17を構築する。
2段目の覆工体17を構築したら、図17(a)〜(d)に示すように、底型枠29及び支保架台29aを撤去して(図17(a)参照)、パイプルーフ12の内側の3段目の地盤を掘削する(図16(b)参照)。しかる後に、3段目の掘削によって2段目の覆工体17の下方に露出した両側の側部領域における、隣接するパイプルーフ材11の間隔部分を閉塞して、トンネルの内周面に沿って止水板13を取り付けると共に、パイプルーフ材11に一端部を接合して、複数のアンカーロッド部材15aを、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付ける(図17(b)参照)。また、2段目の覆工体17の下端部から突出する鋼製支保部材14及び鉄筋18の端部と接続して、これらの下方に、3段目の覆工体17の鋼製支保部材14、鉄筋18、及びスキンプレート19を取り付ける(図17(c)参照)。さらに、底型枠29を、好ましくは支保架台29aによって支持した状態で設置した後に(図17(c)参照)、スキンプレート19と止水板13との間の部分にコンクリート16を打設して硬化させることより(図17(d)参照)、3段目の覆工体17を構築する。
3段目の覆工体17を構築したら、図18(a)〜(d)に示すように、底型枠29及び支保架台29aを撤去して、パイプルーフ12の内側の最下段の4段目の地盤を掘削する(図18(a)参照)。しかる後に、4段目の掘削によって3段目の覆工体17の下方に露出した下部領域における、隣接するパイプルーフ材11の間隔部分を閉塞して、トンネルの内周面に沿って止水板13を取り付けると共に、パイプルーフ材11に一端部を接合して、複数のアンカーロッド部材15aを、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付け、さらに、3段目の覆工体17の下端部から突出する鋼製支保部材14及び鉄筋18の端部と接続して、これらの下方に、最下段の下部領域の覆工体17の鋼製支保部材14を取り付ける(図18(b)参照)。また、3段目の覆工体17の下端部から突出する鉄筋18の端部と接続して、これらの下方に、最下段の下部領域の鉄筋18を取り付けると共に(図18(c)参照)、最下段の下部領域のスキンプレート19を取り付ける(図18(d)参照)。
最下段の下部領域のスキンプレート19を取り付けたら、トンネルの下部領域における止水板13とスキンプレート19との間の、鋼製支保部材14や鉄筋18が配置された空間に、図19(a)に示すように、コンクリートを打設することによって、鋼製支保部材14を鉄骨とする鉄筋鉄骨コンクリート製の、円形の中空断面形状を有する環状に連続する覆工体50が、図19(b)に示すように、大断面のインターチェンジ用の拡幅トンネル50の内周面を覆う覆工体として構築されることになる。
本実施形態では、掘削及び覆工工程において褄部の覆工体43を構築するには、図20に示すように、例えば掘削により露出した褄部地盤改良体40の内壁面に対して、好ましくは吹付コンクリート48を吹き付けると共に、褄部地盤改良体40に向けて複数のロックボルト49を打ち込むことで、当該内壁面を補強する。しかる後に、補強された褄部地盤改良体40の内側面を覆って防水シートをさらに取り付けた状態で、これの内側部分に鉄骨や鉄筋や型枠等を組み立てて、コンクリートを打設することにより、いわゆる逆巻き工法によって、上段部から下段部に向けて、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート)構造やRC(鉄筋コンクリート)構造による褄部の覆工体43を構築してゆくことが可能になる。
これらによって、円筒部の覆工体17及び両側の褄部の覆工体43により周囲を囲まれた、本線トンネル51とランプトンネル52とを接続させるための、大断面の拡幅トンネル50(図2参照)を、区分地上権が不要な大深度地下に構築してゆくことが可能になる。また、構築された拡幅トンネル50にランプトンネル52を接続させると共に、インターチェンジの本体構造物を構築することにより、例えば道路用の本線トンネル51とランプトンネル52とを接続させるためのインターチェンジを、拡幅トンネル50の内部に設けることが可能になる。
そして、上述の構成を備える本実施形態のトンネル覆工体の構築構造10及び構築方法によれば、地中に埋設されるパイプルーフ材11に施工誤差がある場合でも、複数のパイプルーフ材11によるパイプルーフ12の内側に、鋼製支保部材14を、多くの手間を要することなく容易に取り付けることを可能にすると共に、鋼製支保部材14を挟んだ両側に連続してコンクリートを打設することを可能にして、鉄筋コンクリート製の覆工体17を効率良く構築することができる。
すなわち、本実施形態のトンネル覆工体の構築構造10及び構築方法によれば、パイプルーフ材11からトンネルの内方に向けて突出させて取り付けられたアンカーロッド部材15aは、相当の長さでトンネルの内方に延設しており、鋼製支保部材14は、アンカーロッド部材15aに支持させて、パイプルーフ材11と離間した状態で取り付けられているので、地中に埋設されるパイプルーフ材11に施工誤差がある場合でも、これらの施工誤差をアンカーロッド部材15aの部分で吸収させるようにして、アンカーロッド部材15aの両端部を、パイプルーフ材11や鋼製支保部材14に各々接合することが可能になる。これによって、例えばパイプルーフ材や鋼製支保部材に形成したボルトの定着孔を精度良く合させることを不要として、鋼製支保部材14を、多くの手間を要することなく、パイプルーフ材11に支持さて容易に取り付けることが可能になる。
また、鋼製支保部材14は、アンカーロッド部材15aに支持させて、パイプルーフ材11と離間した状態で取り付けられており、パイプルーフ材11に取り付けられた止水鉄板13と、鋼製支保部材14との間には、相当の大きさの間隔が保持されるので、この間隔部分を介してコンクリート16を流通させることにより、鋼製支保部材14を挟んだ両側に連続してコンクリートを打設することが可能になり、これによって鉄筋コンクリート製の覆工体17を効率良く構築することが可能になると共に、より品質の良い覆工体17を形成することが可能になる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、本発明のトンネル覆工体の構築構造は、大深度地下に構築されるトンネルの内周面を覆って設けられる必要は必ずしもなく、浅い部分の地中に構築されるトンネルや、トンネル以外の地中構造部の内周面を覆って設けられるものであっても良い。また、パイプルーフを構成する複数のパイプルーフ材は、円形の断面に沿った円周方向に、間隔を置いて全周に亘って並べて埋設される必要は必ずしも無く、好ましくは少なくとも弧状の断面に沿った方向に間隔を置いて並べて埋設されていてれば良く、弧状の断面に沿った方向に間隔を置いて並べて埋設されていなくても良い。パイプルーフ材は、円形の中空断面形状を備えてる必要は必ずしも無く、矩形の中空断面形状等の、その他の断面形状を備えていても良い。