JP6631852B2 - 臓器障害を診断するための方法および装置 - Google Patents

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関連案件
本出願は、2014年11月12日に出願された米国仮出願シリアル番号62/078,810号の利益を主張し、その開示の全体が、本明細書の一部を構成するものとして援用される。
分野
本開示のいくつかの実施形態は、体液からバイオマーカーを単離するように構成された装置および方法、ならびに、このようなバイオマーカーの発現プロファイルを疾患の診断および治療に用いる方法に関する。いくつかの実施形態は、尿サンプルからのエキソソームおよび微小胞のmRNAプロファイルを特徴づけて急性腎障害(AKI)の発症機序を明らかにすることに関する。
関連技術の詳細
AKIは、世界中で何百万という患者が罹患している、いくつかの疾患および環境(setting)における主要な合併症としてよく認識されている。リスク、障害、不全、機能喪
失,末期疾患(Risk, Injury, Failure, Loss of Function, End-stage disease)(RIFLE)、急性腎障害ネットワーク(AKIN)、および国際腎臓病予後改善機構(Kidney Disease: Improving Global Outcomes)(KDIGO)といった診断システムの発展
に伴い、いくつかの報告書では、様々な環境におけるAKIの疫学が記載されている。これらは、管理データセット、単一および多施設コホートのレトロスペクティブ分析、ならびにプロスペクティブコホート研究に言及している。病期分類システムは、環境に関係なく、ステージが高くなると死亡率および資源利用のリスクが増加する転帰の優れた予測システムであることが示されている。リスクファクターとして、加齢と、心不全、肝不全、および慢性腎疾患(CKD)、ならびに貧血の存在と、抗生物質、NSAIDS、および造影剤を含む腎毒性薬物への暴露とが挙げられている。感染、敗血症、ショック、機械換気の必要性、および心臓手術は、AKIの発症に対する高リスクの環境としてよく認識されている。AKIに対する主な懸案事項は、CKDの発症を含む有害転帰との関連性である。いくつかの研究は、AKIからの非回復は、死亡率の上昇、機能状態の低下、および資源利用の増加を含む悪化した転帰と関連していることを示している。最近の証拠から、障害の潜在重症度およびAKIの期間は、AKIからの転帰を決定する重要な因子であることが示唆されている。例えば、Ishaniらは、退役軍人病院からの29,388人の心臓手術後患者を、血清クレアチニンのベースラインからの増加を基に分類した。彼らは、SCr分類に亘って、発生CKDのハザード比、CKDステージの進行、および長期間の死亡率において段階的な増加があることを示し、血清クレアチニンにおけるデルタの増加には、CKD発症の漸進的リスクがあることを示した。
多くの場合、医師は、患者の症候、病歴、および身体検査の結果を解釈して、初期診断を導き出す。医療検査は、初期診断の確定または修正の不可欠な部分である。現在、いくつかの診断用医療検査を、患者から採取した血液で実施して、健康な患者に存在しない、または前に得られた患者サンプルから変わっている、生化学的パターンから疾患を判定する。これらの検査は、通常、血漿または血清を利用し、例えば電解質、尿素、クレアチニン、およびグルコースを測定する。その他の検査は、アルブミン、免疫グロブリン、フィブリノーゲン、および調節タンパク質などの血漿タンパク質を測定する。さらにその他の検査は、その他の生体化合物、例えばチアミン、リボフラビン、ナイアシン、ビタミンB6、葉酸、ビタミンD、ビオチン、鉄、ならびに凝固因子第V因子および第X因子などを測
定する。
同様に、腎臓機能の評価に関連して、機能している腎臓により除去されるべき廃棄物質(クレアチニンおよび尿素など)の血漿中濃度、または電解質の濃度の測定を実施して、腎機能を判定することがよくある。しかしながら、血中尿素およびクレアチニンのレベルは、腎機能全体の相当量(例えば40%以上)が失われるまでは、正常範囲よりも高くならないことがよくある。糸球体濾過率(GFR)または薬理学的マーカー化合物のクリアランスの評価を使用して、腎機能を評価することもできる。24時間の尿サンプルの分析を使用して、腎機能を評価することもできる。腎機能に対する別の予後マーカーは、尿中でのタンパク質のレベルが上昇している、タンパク尿である。尿中のタンパク質(アルブミンなど)の量の増加は、腎臓損傷量が徐々に増加していることを示し、機能喪失に関連している。
概して、診断検査は、通常は抗体に基づいた検査であり、ELISAが一般的であるが、感度に関して限界があることがある。アッセイ対象濃度範囲が低い問題のあるアッセイの精度と疾患の早期において推定上低いレベルのクレアチニン(または他のアッセイ対象)とを組み合わせることにより、早期の疾患ステージにおける診断がなされない可能性がある。また、ある診断検査は、化学反応(例えば比色変化)を用いて、血液またはその他の体液サンプルからのマーカーを同定する。このような検査もまた、上記のような限界と同様な限界により影響を受けることがある。従って、腎機能障害の早期発見および/または診断を可能にする、感受性があり、精度がよく、再現性がある、腎機能評価用の診断検査に対する必要性が存在する。
さらに、できるだけ早期に腎臓の回復を増進することに全力を注いで、腎機能を確実に完全に回復させることが重要な必須課題である。しかしながら、病態生理学の現存知識と、AKI後の臨床経過との間には、いくらかのギャップがあり、非回復の一因となっている。ほとんどの場合において、腎臓の回復は、腎臓の尿細管機能、ホルモン機能、および代謝機能を考慮せずに、GFRの回復として定義されている。AKIとCKDとの間の疫学的関連性に関与する細胞機構は、複雑である。前臨床試験は、障害の後に誘発されて、損傷した尿細管の修復および再生を開始する、いくつかの経路を同定し、特徴づけた。しかしながら、障害および基礎をなす共存症の性質および重症度によって、不適応な修復および瘢痕化が結果として起こり得る。実験モデルの大幅な進歩にもかかわらず、ヒトにおいて、異なる腎臓セグメントの回復の時間系列、関与する細胞機構、およびこれらのイベントを決定する因子について、かなり限られた知識しかない。
機能的変化および構造的損傷を反映する特定のバイオマーカーにおける最近の進歩によって、AKI後のイベントを特徴づけるユニークなツールのセットが、現在与えられている。損傷マーカーは、血清クレアチニンの上昇前に、尿および血液に現れ(例えばNGAL、Kim‐1)、障害の部位特異性を表し(例えば、近位尿細管ではKim‐1、集合管ではクラスタリン)、関与する特定の経路を同定する(例えば、TIMP2およびIGFBP1は細胞周期停止を反映する)。いくつかのマーカーは、小規模の試験で、AKI後の予後に相関することが示されているが、非回復のリスクが高い患者を特定する特異的なマーカーは現在存在しない。
EMVは、起源細胞の機能性細胞質分子を内部に閉じ込めることにより、ネフロン中に放出されるので、尿中EMVは、腎臓疾患用の有望なバイオマーカー源である。本明細書でより詳細に論じられるように、いくつかの実施形態は、尿の上清からEMVを捕捉し、次いでmRNAの単離と定量化を行う、専売フィルター材料を利用する尿中EMV mRNAアッセイに関する。この新規のアッセイプラットフォームを使用して、AKI発症に
対するバイオマーカー、およびAKIからの自然回復を予測するバイオマーカーをスクリーニングし、発見した。
EMVは、尿、血液、および唾液などの様々な生体液から単離できる。EMVは、内部にRNAを閉じ込めてヌクレアーゼによる分解からRNAを保護することができ、そのため、EMVをバイオマーカーの潜在的非侵襲性源として使用することが可能である。いくつかの実施形態において、検出されたバイオマーカーを使用して、適当な治療レジメンを開発することができる。しかしながら、いくつかの実施形態において、治療は、さらなる措置を取らないこと(例えば、治療を開始しないこと)であり得る。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現は、単離した膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および/または微小胞からRNAを遊離させること、遊離したRNAを逆転写酵素と接触させて相補DNA(cDNA)を生成すること、ならびにcDNAを治療対象の疾患または状態のバイオマーカーに特異的なセンスおよびアンチセンスプライマーならびにDNAポリメラーゼと接触させて、増幅DNAを生成することを含む方法により検出される。いくつかの実施形態において、方法はコンピューター化されている(例えば、RNAの単離、cDNAの生成、または増幅のうち1つ以上は、全体的または部分的にコンピューターにより制御されている)。いくつかの実施形態において、バイオマーカーの検出はリアルタイムである。また、いくつかの実施形態において、方法は、検査結果を医療専門家に伝えることであって、前記伝えることを、コンピューターまたはネットワークコミュニケーションの他の形式により行うことを含む。いくつかのこのような実施形態において、発現情報の送信または受信を行うコンピューター(またはタブレット、スマートフォンなど)は、医師に対象を治療するための治療選択肢を与える動的グラフィカル・ユーザー・インターフェースを必要に応じて含み、対象に特異的な特徴に由来する治療優先度に基づいて提供される情報を、医師が選別、または改良することを可能にする。
これらの必要性に基づき、本明細書では、医療専門家が、対象の体液サンプルから得られたバイオマーカープロファイルに基づいて、対象に治療を勧める、または勧めないことを可能にする方法が与えられる。いくつかの実施形態において、尿中のエキソソームおよび微小胞を、臓器損傷の原因となっている根底にある経路を明らかにするためのバイオマーカーの源として使用する。いくつかの実施形態において、新しい診断用バイオマーカーを発見するために、様々な病態生理学環境にある入院患者の尿中のエキソソームおよび微小胞mRNAを分析する。1つ以上の実施形態において、様々なAKI環境にある患者の尿からの尿中のエキソソームおよび微小胞mRNAを特徴づけて、AKIに相関するmRNA発現プロファイルを特定する。エキソソームおよび微小胞の捕捉のための方法および装置は、2014年9月30日に出願された国際出願PCT/US2014/058404に開示されており、その内容は、本明細書の一部を構成するものとして援用される。
いくつかの実施形態において、患者の腎機能を特徴づけるための方法も与えられ、前記方法は、患者から尿の第1のサンプルを得ることであって、前記サンプルがRNAが随伴した小胞を含むこと、前記第1の尿サンプルから前記小胞を捕捉すること、前記小胞を溶解して小胞随伴RNAを放出させることであって、前記小胞随伴RNAが腎機能に関連するRNAを含むこと、前記腎機能に関連するRNAを定量化すること、前記患者からの前記腎機能に関連するRNAの量と、正常な腎機能を有する個体からの対応するRNAの量とを比較することであって、前記腎機能に関連するRNAの量における前記患者と前記個体との差が、前記患者の腎機能の変化を示し、前記腎機能に関連するRNAの量における前記患者と前記個体との差がないことが、前記患者の腎機能が正常であることを示すこと、および1)前記患者の腎機能における変化があるとき、医療専門家に知らせ、または2)前記患者の腎機能が正常であるとき、医療専門家に知らせ、それによって、前記患者の腎機能に基づいて、医療専門家が前記患者に治療を勧めること、または治療を勧めることを控えることを可能にすること、を含む。
いくつかの実施形態において、1種類以上の物理的力を用いて、EMVを生体液サンプルから単離する。いくつかの実施形態において、シリンジまたはシリンジ様装置を使用して、(例えば、吸引によって、または別の方法としては、正圧によって)材料を単離する。他の実施形態において、遠心分離、振盪、空気圧、または液体圧を使用する。いくつかの実施形態において、組み合わせも使用し得る。いくつかの実施形態において、サンプルをろ過することにより、EMVを生体液サンプルから単離する。いくつかの実施形態において、収集したサンプルをろ過することは、膜粒子、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上をフィルター上に捕捉することとする。いくつかの実施形態において、フィルターは、直径が約1.6ミクロン以上である成分を捕捉する材料を含む。いくつかの実施形態において、複数のフィルターを使用して、サイズ(例えば直径)が特に好ましい範囲内の小胞を捕捉する。例えば、いくつかの実施形態において、直径が約0.2ミクロン〜約1.6ミクロン、例えば約0.2ミクロン〜約0.4ミクロン、約0.4ミクロン〜約0.6ミクロン、約0.6ミクロン〜約0.8ミクロン、約0.8ミクロン〜約1.0ミクロン、約1.0ミクロン〜約1.2ミクロン、約1.2ミクロン〜約1.4ミクロン、約1.4ミクロン〜約1.6ミクロン(およびリストしたこれらの間にある任意のサイズ)である小胞を捕捉するフィルターを使用する。他に実施形態において、小胞捕捉材料は、サイズが約0.5ミクロン〜約1.0ミクロンに亘るエキソソームを捕捉する。
いくつかの実施形態において、フィルターは、ガラス様材料、非ガラス様材料、またはそれらの組み合わせを含む。小胞捕捉材料がガラス様材料を含むいくつかの実施形態において、小胞捕捉材料は、プラスチックまたはガラスの様に、原子スケールで無秩序であるか、または「アモルファス」である構造を有する。ガラス様材料として、ガラスビーズもしくは繊維、シリカビーズ(もしくは他の形状)、ニトロセルロース、ナイロン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)もしくは他の類似ポリマー、金属もしくはナノ金属繊維、ポリスチレン、エチレン酢酸ビニルもしくは他のコポリマー、天然繊維(例えばシルク)、アルギン酸繊維、またはこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、小胞捕捉材料は、複数の層の小胞捕捉材料を含んでなってもよい。他の実施形態において、小胞捕捉材料は、ニトロセルロースをさらに含む。
いくつかの実施形態において、フィルター装置を使用して、目的の生体成分を単離する。いくつかの実施形態において、装置は、入口、出口、および入口と出口との間の内部容積を有する第1の本体;入口、出口、入口と出口との間の内部容積を有する第2の本体;第2の本体の内部容積内に配置され、第1の本体と流体連結しているフィルター材料;ならびに入口、入口と反対側の閉端、および内部空洞を有する受け容器を含む。いくつかの実施形態において、第1の本体および第2の本体は、第2の本体の入口と第1の本体の出口との相互作用により可逆的に連結している。いくつかの実施形態において、受け容器の内部空洞は、第1および第2の本体の両方を可逆的に包み込むように、かつ、収集したサンプルが、第1の本体の内部容積からフィルター材料を通って第2の本体の内部空洞通り第2の本体の出口を出た後に、収集したサンプルを受けるように、寸法決めされている。いくつかの実施形態において、単離するステップは、収集したサンプルの少なくとも一部をこのような装置に入れること、および、装置に力を加えて、収集したサンプルを受け容器へと装置を通過させ、目的の生体成分を捕捉することを含む。いくつかの実施形態において、力を加えることは、装置の遠心分離を含む。他の実施形態において、力を加えることは、装置に正圧を加えることを含む。他の実施形態において、力を加えることは、装置に真空圧を加えることを含む。このようなフィルター装置の非限定的な例は、PCT国際公開公報第2014/182330号、およびPCT国際公開公報第2015/050891号に開示されており、これらは、ここに本明細書の一部を構成するものとして援用される。
いくつかの実施形態において、収集したサンプルを、複数のフィルターに通して、目的の生体成分を単離する。他の実施形態において、生体成分を単離することは、収集したサンプルを希釈することを含む。他の実施形態において、遠心分離を使用して、目的の生体成分を単離し得る。いくつかの実施形態において、複数の単離技術を用い得る(例えば、ろ過選別および/または密度遠心分離の組み合わせ)。いくつかの実施形態において、単離ステップ後、収集したサンプルを1つ以上のサンプルに分ける。
いくつかの実施形態において、測定のために、RNAを目的の生体成分から遊離させる。いくつかの実施形態において、RNAを目的の生体成分から遊離させることは、膜粒子、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および/または微小胞を溶解バッファーで溶解することを含む。他の実施形態において、遠心分離を用い得る。いくつかの実施形態において、膜粒子、エキソソーム、エキソソーム様小胞、微小胞、および/または他の目的の成分をフィルター上に固定化して、遊離を行う。いくつかの実施形態において、膜粒子、エキソソーム、エキソソーム様小胞、微小胞、および/または他の目的の成分を、単離するか、または収集したサンプルの他の成分から(および/または互いから−例えば、エキソソームから分離された小胞)分離する。
いくつかの実施形態において、遊離したRNAは、ALB、AQP1、AQP2、B2M、CALB1、CALM1、CFLAR、CLU、CST3、CXCL1、CXCL3、EGF、GSTA1、HIF1A、IL1B、IL18、LGALS3、LGALS3BP、MYD88、NLRP3、PKM、PPIA、RAC2、RIPK1、S100A9、SLC12A1、TNFRSF1A、およびVCAM1からなる群から選択されるマーカーをコードする1つ以上のマーカーmRNAを含む。いくつかの態様において、生体液は、血液、尿、唾液、および腸液からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、目的の生体成分から遊離したRNAは、ポリ(A)+RNAを含む。様々な実施形態によると、RNAを定量化する様々な方法が使用され、これらの方法として、ノーザンブロット分析、RNアーゼプロテクションアッセイ、PCR、RT‐PCR、リアルタイムRT‐PCR、その他の定量PCR技術、RNAシークエンシング、塩基配列に基づく増幅、分岐DNA増幅、質量分析、CHIPシークエンシング、DNAまたはRNAマイクロアレイ分析、および/またはその他のハイブリダイゼーションマイクロアレイが挙げられる。これらの実施形態または代替的な実施形態の一部において、増幅DNAを生成した後、目的のバイオマーカーの一部に相補的なプローブに増幅DNAを晒す。
いくつかの実施形態において、コンピューター化した方法を使用して、1つ以上のステップを完了する。いくつかの実施形態において、コンピューター化した方法は、単離したRNAおよび/または生成したcDNA、ポリメラーゼ、ならびに遺伝子特異的プライマーを含む反応混合物を熱サイクルに晒すことを含む。いくつかの実施形態において、反応混合物が晒される温度時間およびサイクル数を制御するように構成されたコンピューターによって、熱サイクルを発生させる。他の実施形態において、コンピューターは、反応混合物に対して、時間のみを制御するか、または温度のみを制御し、個人が1つ以上の他の変数を制御する。いくつかの実施形態において、検出ステップからデータを受け取るように、かつ、対象がAKIに罹患しているのかどうかを特定するために、バイオマーカーが所定の増幅閾値に達するために必要な熱サイクル数を検出するプログラムを実行するように、構成されているコンピューターを使用する。さらなる他の実施形態において、検査および検出方法全体が自動化されている。
例えば、いくつかの実施形態において、完全に自動化された方法、例えばコンピュータープロセッサおよび関連の自動機械によって制御される方法によって、RNAを単離する
。一実施形態において、尿などの生体サンプルを収集し、サンプル処理ユニットに置かれている受け容器にロードする。ユーザーは、サンプルの同一性、サンプルの量、および/または特定の患者の特性に関する情報をデータ入力レシーバーに入れる。いくつかの実施形態において、ユーザーは、データを入れるために、グラフィカル・ユーザー・インターフェースを用いる。他の実施形態において、データ入力は自動化されている(例えば、バーコード、QRコード、またはその他のグラフィカルな識別子による入力)。次に、ユーザーは、RNA単離プロトコルを実行することができ、このプロトコルでは、コンピューターは、アルゴリズムにアクセスし、サンプルを処理する関連の機能を実行して、小胞などの生体成分を単離し、続いて小胞を処理してRNAを遊離させるように構成されている。他の実施形態において、コンピューターが実行するプログラムは、単離したRNA量の定量化および/または評価および純度の評価ができる。このような実施形態において、量および/または純度が最小閾値を超える場合には、cDNAを生成するために、RNAを自動化された方法でさらに処理することができる。次に、例えば、ポリA RNAテールをオリゴdT分子に結合し、その後RNAポリメラーゼを使用して伸長させるなどして、cDNAを生成できる。他の実施形態において、量および/または純度が最小閾値を超えることができない場合には、コンピューターが実行するプログラムは、追加の生体サンプルを与えるようユーザーを促すことができる。
実施形態によっては、cDNAを個々のサブサンプルに分け、いくつかを後で分析するためにストックし、いくつかを直ちに分析することができる。いくつかの実施形態において、分析は、既知の量のcDNAを塩系バッファー、DNAポリメラーゼ、および1つ以上の遺伝子特異的プライマーと混合して、反応混合物を生成することを含む。次に、コンピューターシステムが実行するように構成されている、所定の熱サイクルプログラムを使用して、cDNAを増幅できる。この熱サイクルは、必要であれば、手動で制御することもできる。増幅(例えば、リアルタイムPCR)後、コンピューターシステムは、目的の遺伝子(例えばAKIのマーカー)が特定の発現閾値を超えるために必要なサイクル数を評価できる。次に、データ分析プロセッサは、この評価を使用して、元のサンプル中に存在する目的の遺伝子の量を計算することができ、異なる患者サンプル、既知のコントロール、またはそれらの組み合わせのいずれかと比較することにより、目的の遺伝子の発現レベルを計算できる。データ出力プロセッサは、検査機関に、および/または直接医療機関に、この情報を電子的に、または別の許容し得る形式で、与えることができる。この判定に基づき、医療機関は、次に、AKIの存在の判定に基づいて特定の患者を治療するかどうか、およびどう治療するかについて決定することができる。いくつかの実施形態において、発現データは、リアルタイムで生成し、必要に応じて、医療機関(または他のレシピエント)にリアルタイムで伝えられる。
いくつかの実施形態において、完全または部分的に自動化された方法は、手動の検査方法よりも、速いサンプル処理および分析を可能にする。特定の実施形態において、医師または研究所の技術者が通常の病院または研究所の環境の外部での検査を完了し得るように、機械または検査装置は、ポータブル型および/またはモバイル型であり得る。いくつかの実施形態において、ポータブルアッセイ装置は、アッセイパラメーターをアッセイ装置に入力するため、および/または完了した検査の生の結果をさらなる処理のためにアッセイ装置から受け取るため、に使用できる、携帯電話またはラップトップなどのコンピューターを含むポータブル装置と、互換性があり得る。いくつかの実施形態において、患者またはその他のユーザーは、研究所の技術者または医師の助けなく、コンピューターインターフェースを介してアッセイ装置を使用することが可能であり得る。これらの場合において、患者は、検査を「家で」行う選択を有するものとする。これらの実施形態の一部において、特殊化したソフトウェアまたはプログラミングを有するコンピューターは、患者が、適切に、アッセイ装置にサンプルを入れ、データおよびサンプルに関連する情報をコン
ピューターに入力し、その後、検査が実行するように指示するように、誘導し得る。全検査が完了した後、コンピューターソフトウェアは、アッセイ装置から受け取った生のデータに基づいて検査結果を自動的に計算し得る。コンピューターは、結果を処理することにより、いくつかの実施形態においては、保存されているデータライブラリーから、またはインターネットもしくはコンピューターに追加情報を供給する他の手段による他の源からのコントロール情報と結果を比較することにより、追加のデータを計算し得る。次に、コンピューターは、これらの結果に基づき、患者(および/または医療機関、および/または検査機関)に出力を表示し得る。
いくつかの実施形態において、医療専門家は、患者を診断、モニタリング、および/または治療するために、遺伝子検査を必要としていることがあり得る。従って、いくつかの実施形態において、医療専門家は、検査を指示し、患者のための診断または治療計画を作成するときに、その結果を使用し得る。例えば、いくつかの実施形態において、医療専門家は、患者からサンプルを収集し得、またはそうでなければ、患者に検査用サンプルを提供させ得る。次に、医療専門家は、サンプルを研究所、またはサンプルを処理し検査することができる他の第三者に送り得る。あるいは、医療専門家は、サンプルの処理および検査の一部または全部を自分自身で(例えば、院内で)実施し得る。検査は、サンプルに関する定量的および/または定性的情報、例えばAKIの存在に関するデータを与え得る。この情報が収集されると、いくつかの実施形態において、情報をコントロール情報(例えば、ベースラインまたは正常集団)と比較して、検査結果が患者のサンプルとコントロールとの間に差を示すかどうかを判定し得る。情報を比較および分析後、情報を追加の分析のために医療専門家に戻す。あるいは、検査から収集した生のデータを、医療専門家または他の病院スタッフが任意の適用可能な比較および分析を実施できるように、医療専門家に戻し得る。検査の結果および医療専門家の分析に基づき、医療専門家は、患者を治療または診断する方法(または必要に応じて治療を控えること)を決定し得る。
いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現をコントロールサンプル中のバイオマーカーの発現と比較する。いくつかの実施形態において、コントロールサンプルは、健康な個体、またはAKIに罹患していない個体におけるバイオマーカーの発現に基づいている。他の実施形態において、コントロールサンプルは、複数の健康な個体の平均バイオマーカー発現に基づいて作成された平均またはコントロールRNA発現プロファイルに基づいている。他の実施形態において、コントロールサンプルは、AKIに罹患している個体におけるバイオマーカーの発現に基づいている。他の実施形態において、コントロールサンプルは、バイオマーカーの発現レベルが分析された対象に関するデータを受信したコンピューターによって作成される。いくつかの実施形態において、同じ個体から、数日間、数週間、数ヶ月間、または数年間の異なる時点で、複数のサンプルを取る。これらの実施形態において、収集した早期のデータを使用してコントロールサンプルを作成し、後期のデータと比較し得る。また、これらの複数のサンプルを使用して、mRNAの発現が患者において経時的に変化するのかどうか(および、どのように変化するか)を追跡することができる。
いくつかの実施形態において、AKIに関連する1つ以上のmRNAまたは任意の他のバイオマーカーについて、mRNA発現プロファイルを作成する。いくつかの実施形態において、mRNA発現プロファイルを、個体におけるバイオマーカーの発現とコントロールサンプルにおけるバイオマーカーの発現との比較を含むように作成し得、この場合には、前記コントロールサンプルを、上記の方法のうち任意の方法によって、またはデータ基準点を同様に与える代替的手段によって作成する。いくつかの実施形態において、mRNA発現プロファイルは、1人の患者だけから収集されたmRNAデータに基づいていることがあり得、この場合には、発現データは、1回または複数回で収集される。
いくつかの実施形態において、バイオマーカーの発現がより高いことは、対象がAKIに罹患していることを示す。他の実施形態において、バイオマーカーの発現が低くなっていることは、対象がAKIに罹患していることを示す。マーカーおよび実施形態によっては、発現の増加または減少は、統計的に有意であり得る(例えば、業界で認められている統計解析法による0.05未満のp値)。いくつかの実施形態において、発現をコントロール値または発現プロファイルと比較して、コントロールと比較して対象がAKIに罹患しているかどうかを判定する。いくつかの実施形態において、AKIまたはAKIがないことを示す発現を、目的の細胞または組織集団の生検の組織学的評価で確証する。
いくつかの実施形態において、AKIを、経口、静脈内投与、全身投与、または局所投与薬剤で治療する。薬剤は、医療用として一般的に考えられている化合物(例えば、処方薬または市販薬)に限定されず、あらゆる健康補助食品または栄養補助食品も含み得る。従って、例えば、ビタミン、ミネラル、ハーブもしくは他の植物、アミノ酸、合計食事摂取量を増加させることによって食事を補充するために対象が使用するための食事性物質(例えば、臓器もしくは腺からの酵素もしくは組織)、または濃縮物、代謝物、成分、もしくは抽出物も、本開示の方法に適用可能であることができる。他の実施形態において、AKIを手術、または対象の他の検査、例えば超音波で治療する。いくつかの実施形態において、対象を腎代替療法、透析法、またはそれらの組み合わせを用いて治療する。いくつかの実施形態において、対象を利尿薬(例えばフロセミド)、静脈内輸液、ステロイド剤、シクロホスファミド、またはそれらの組み合わせを投与することによって、または血漿交換によって治療する。
本明細書では、腎機能を特徴づけるための方法も与えられ、前記方法は、患者から2つ以上の尿サンプルを得ることであって、前記サンプルが、RNAが随伴した小胞を含むこと、サンプルから小胞を単離すること、小胞を溶解して小胞随伴RNAを放出させることであって、小胞随伴RNAが腎機能に関連するRNAおよび腎機能に応答して変化しないRNAを含むこと、腎機能に関連するRNAおよび腎機能に応答して変化しないRNAを定量化すること、ならびに患者からの腎機能に関連するRNAの量と腎機能に応答して変化しないRNAの量との比を求めることであって、2つ以上の尿サンプル間の比の差が、患者の腎機能の変化を示すことを含む。
一実施形態において、腎機能に応答して変化しないRNAは、ベータ‐アクチンまたはベータ‐2‐ミクログロブリンのうちの1つである。
いくつかの実施形態において、腎機能は疾患によって変えられ、前記疾患は、AKI、慢性腎疾患、急性腎不全、糖尿病性腎症、糸球体腎炎、糸球体硬化症、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症、微小変化型疾患、ならびにアテローム性動脈硬化症、高血圧、心臓血管疾患、肥満、高コレステロール血症、糖尿病、肝疾患、膠原病、自己免疫疾患、および感染などの他の疾患に合併した腎疾患からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、腎機能は、患者への薬理作用のある物質の投与によって変えられる。
いくつかの実施形態において、腎機能は、腎臓損傷によって変えられる。いくつかの実施形態において、腎臓損傷は、糸球体への損傷、内皮への損傷、近位尿細管への損傷、ヘンレ係蹄への損傷、集合管への損傷、および尿管への損傷のうち1つ以上を含む。いくつかの実施形態において、腎機能は、腎臓へ入る、または腎臓を出る血流の変化によって変えられる。
いくつかの実施形態において、サンプルから小胞を単離することは、尿をろ過することを含む。いくつかの実施形態において、ろ過は、フィルター上に小胞を捕捉する。いくつかの実施形態において、小胞をフィルター上に捕捉しながら溶解を行う。いくつかの実施
形態において、方法は、サンプルを遠心分離して、細胞残屑を除去すること、および遠心分離した尿の上清をろ過することをさらに含む。一実施形態において、小胞を単離する前に、遠心分離を行う。いくつかの実施形態において、小胞の濃縮は、遠心分離した尿の上清をろ過することをさらに含む。
いくつかの実施形態において、尿の第1のサンプルの少なくとも一部を小胞捕捉装置のサンプルローディング領域にロードすること、小胞捕捉装置内で尿をサンプルローディング領域からガラス様材料を含む小胞捕捉材料に通して、上清を生成すること、上清を小胞捕捉装置のサンプル受け領域へと通すこと、および上清を捨てることを含む方法であって、通すことが、尿サンプルからの小胞を小胞捕捉材料上または中に捕捉することをもたらし、それによって小胞を捕捉する方法によって小胞を単離する。
いくつかの実施形態において、小胞捕捉材料は、複数の層の材料を含む。いくつかの実施形態において、複数の層の小胞捕捉材料は、少なくともガラス繊維の第1の層および第2の層を含む。いくつかの実施形態において、生体液をガラス繊維の第1の層に通して、直径が約1.6ミクロン以上の生体サンプルからの物質を捕捉する。いくつかの実施形態において、生体液をガラス繊維の第2の層に通して、直径が約0.6ミクロン〜約0.8ミクロンの最小サイズを有し、1.6ミクロン未満の最大サイズを有する小胞を捕捉する。
いくつかの実施形態において、微小胞mRNAを、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT‐PCR)、リアルタイムRT‐PCR、ノーザンブロッティング、蛍光標識セルソーター、ELISA、および質量分析からなる群から選択される方法によって定量化する。一実施形態において、定量化は、RT‐PCRを使用してRNAを増幅することを含む。いくつかの実施形態において、RNAは、ポリ(A)+RNAを含む。
いくつかの実施形態において、新しい診断用バイオマーカーを同定するための方法も与えられ、前記方法は、様々な既知のAKI環境を示す患者のサンプル集団を選別すること、様々な既知のAKI環境を有する患者から尿サンプルを得ること、尿サンプルからエキソソームおよび微小胞を精製すること、一群の目的遺伝子のエキソソームおよび微小胞mRNAの発現を定量化すること、各目的遺伝子のmRNAの発現レベルと源である患者の既知AKI環境とを相関づけること、受信者動作特性(ROC)曲線を目的遺伝子の様々な組み合わせについて作成すること、クロスバリデーションを使用して、ROC曲線について曲線下面積(AUC)を計算すること、ならびに目的遺伝子の組み合わせの特異度および感度を、源である患者の基礎をなすAKI環境の診断に関してランク付けすることを含む。
いくつかの実施形態において、上記の相関方法を使用して、高い感度および特異度を有する腎機能障害の発症を予測するバイオマーカーを同定する。いくつかの実施形態において、高い感度および特異度を有する腎機能の回復を予測するバイオマーカーの組み合わせを同定する。少なくとも1つの実施形態において、高い感度および特異度を有するAKIの発症を予測するバイオマーカーの組み合わせを同定する。少なくとも1つの実施形態において、高い感度および特異度を有するAKIからの腎機能の回復を予測するバイオマーカーの組み合わせを同定する。少なくとも1つの実施形態において、カルモジュリン1(CALM1)、アクアポリン2(AQP2)、およびオステオポンチン(SPP1)の尿中エキソソームおよび微小胞mRNAの発現を分析することにより、AKIを評価する。
上記で要約され、下記でさらに詳細に説明される方法は、医師により実施される特定の行為を表すが、前記方法は、他の当事者によるこれらの行為の指示も含むことができるものとして理解されるべきである。従って、「対象の疾患または状態の治療」などの行為は
、「対象の疾患または状態の治療の実施を指示すること」を含む。
図1A〜1Dは、AKI、非AKI、および健康者コントロール集団に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図1A〜1Dは、AKI、非AKI、および健康者コントロール集団に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図1A〜1Dは、AKI、非AKI、および健康者コントロール集団に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図1A〜1Dは、AKI、非AKI、および健康者コントロール集団に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図2A〜2Fは、尿中EMVからのAKI発症マーカーのROC曲線解析を示す。 図2A〜2Fは、尿中EMVからのAKI発症マーカーのROC曲線解析を示す。 図2A〜2Fは、尿中EMVからのAKI発症マーカーのROC曲線解析を示す。 図2A〜2Fは、尿中EMVからのAKI発症マーカーのROC曲線解析を示す。 図2A〜2Fは、尿中EMVからのAKI発症マーカーのROC曲線解析を示す。 図2A〜2Fは、尿中EMVからのAKI発症マーカーのROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図3A〜3Jは、尿中EMVからのAKI発症遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図4A〜4Dは、AKI集団の前、間、および後サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図4A〜4Dは、AKI集団の前、間、および後サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図4A〜4Dは、AKI集団の前、間、および後サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図4A〜4Dは、AKI集団の前、間、および後サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図5A〜5Dは、AKI集団の回復および非回復サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図5A〜5Dは、AKI集団の回復および非回復サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図5A〜5Dは、AKI集団の回復および非回復サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図5A〜5Dは、AKI集団の回復および非回復サブ群に関する尿中EMV mRNA発現プロファイルを示す。 図6A〜6Fは、尿中EMVからのAKI回復マーカーのROC曲線解析を示す。 図6A〜6Fは、尿中EMVからのAKI回復マーカーのROC曲線解析を示す。 図6A〜6Fは、尿中EMVからのAKI回復マーカーのROC曲線解析を示す。 図6A〜6Fは、尿中EMVからのAKI回復マーカーのROC曲線解析を示す。 図6A〜6Fは、尿中EMVからのAKI回復マーカーのROC曲線解析を示す。 図6A〜6Fは、尿中EMVからのAKI回復マーカーのROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図7A〜7Jは、尿中EMVからのAKI回復遺伝子分類指標のROC曲線解析を示す。 図8は、新規の診断用バイオマーカーを同定する方法の実施形態のフローチャート表示である。 図9は、疾患を治療するための新規の診断用バイオマーカーを使用する方法の実施形態の図式による表示である。
詳細な説明
一般
医師の診断は、通常、患者の病歴および現在の症候に基づく。基礎疾患の徴候を明らか
にし得る身体検査に加えて、初期診断を確定するために、診断検査が指示されることがある。腎機能の評価は、尿を作る器官の機能として、診断解析に特有の状況を表し、その結果の組成は、血液中の化合物の濃度変化が反映されている。従って、2つの体液、尿および/または血液を用いて、腎機能を評価することができる。
多くの診断検査は、体液中の特定のタンパク質を検出することを対象とする。しかしながら、タンパク質ベースのアッセイは、特定の目的濃度では有効であるが、低い目的濃度では感度が足りないという問題があり得る。核酸検出をベースとする診断技術は、多くの場合において高い程度の感度を与える、タンパク質検出に代わる検出を与える。血液または尿サンプルから得られる細胞から核酸を単離できるが、核酸は細胞外にも存在できる。本明細書で開示されるいくつかの実施形態は、患者の尿サンプル中に存在する小胞に随伴するRNAの単離を対象としているが、いくつかの実施形態において、通常の血液または血漿中に見られるRNA(および関連のマーカー)を尿サンプルから単離する。いくつかの実施形態において、これらの血液由来のマーカーは、腎臓の正常な血液ろ過機能を損なう腎臓損傷または疾患により、尿中に存在する。
腎機能喪失は、本来進行性であり、機能喪失または疾患のいくつかのマーカーは、疾患が十分に確立されるまでは、従来の診断法では検出されないことがある。このような場合、腎疾患が進行するにつれて、予後は不良になる。腎疾患を早期発見すること自体が、早期の治療体制をもたらし得、患者の転帰の著しい改善をもたらし得る。従って、早期の腎臓疾患または機能喪失の検出および特徴づけに現在使用している診断検査に代わる感度がより高い検査に対する必要性が存在する。
小胞随伴RNA
最近の研究は、様々な細胞が、血液、尿、唾液、母乳などの近くの生体液にEMVを放出することを示している。エクソサイトーシス過程中、様々なタンパク質、mRNA、およびmiRNAがEMV中に含まれる。裸のmRNAは直ちに消化され、内在性リボヌクレアーゼの存在により検出不可能になるが、mRNAは、EMV膜内部に閉じ込められることにより、EMV中に安定に存在する。血漿および尿から抽出されるEMV中の様々なmRNAは、RT‐qPCRによって定量化されている。
EMVは、EMVが由来する細胞を代表するタンパク質ならびにmiRNAおよびmRNAなどの核酸を含有するnmサイズの粒子である。例えば、核酸は、1つ以上の異なる種類の膜粒子(サイズが50〜80nmに亘る)、エキソソーム(サイズが50〜100nmに亘る)、エキソソーム様小胞(サイズが20〜50nmに亘る)、および微小胞(サイズが100〜1000nmに亘る)に随伴できる。いくつかの実施形態において、これらの小胞を単離および/または濃縮し、それによって、RNアーゼが高濃度である細胞外環境であっても、小胞随伴RNAを保持する。これらの粒子中のRNAは、機能性であることが示されており、標的細胞に対して特異的活性を与えることができる。
腎組織由来のエキソソームおよび微小胞を、正常および病的状態の対象からの尿サンプルから単離できる。AKIと診断された対象のエキソソームからのmiRNAおよびタンパク質プロファイルは、非AKI対象由来のプロファイルとは有意に異なる。従って、本明細書のいくつかの実施形態において記載されているように、エキソソームおよび微小胞ならびにそれらの内容物を、AKIのスクリーニング、検出、および/またはモニタリング(または他の処置)のための診断用マーカーとして使用できる。
いくつかの実施形態において、様々な既知の生理学的および病態生理学的環境を有する入院患者の尿におけるエキソソームおよび微小胞mRNA発現プロファイルを相関づけることによって、新規の診断用バイオマーカーを同定するための方法が与えられる。いくつ
かの実施形態において、新しい診断用バイオマーカーは、単一遺伝子である。他の実施形態において、新しい診断用バイオマーカーは、複数の遺伝子のプロファイルである。新しいバイオマーカープロファイルは、障害が顕著になる前に、臓器機能不全の診断を可能にし得る。いくつかの実施形態において、新しい診断用バイオマーカーは、より早期の検出、または転帰のより正確な予測を可能にすることによって、疾患の治療を支援する。代替的または追加的に、バイオマーカープロファイルは、治療レジメンに関する臨床的判断を誘導し得る。尿などの体液中に存在するバイオマーカーの使用は、診断法の侵襲性を最小化し、モニタリングにより患者の治療遵守を向上させ得る。好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン(NGAL)または腎障害分子‐1(KIM‐1)などのバイオマーカーは、障害の発生機序を明らかにすることに限界がある。従って、腎臓損傷の原因となっている根底にある経路をより良く明らかにし、転帰をより良く予測し、治療レジメンの選択をより良く誘導する、新しいAKIバイオマーカーを発見することに対する必要性が存在する。
図8は、新規の診断用バイオマーカーを同定する方法の実施形態のフローチャート表示である。図8のフローチャートの上部に描いているように、いくつかの実施形態の新規の診断用バイオマーカーを同定する方法は、様々な既知のAKI環境を示す患者のサンプル集団を選別するステップを含む。いくつかの実施形態において、本明細書に記載の分析は、ヒト患者に適用可能であり、一方で、いくつかの実施形態において、方法は動物(例えば、獣医診断)に適用可能である。
少なくとも1つの実施形態において、患者のサンプル集団は、AKIがない健康な提供者、AKIがない肝臓疾患を有する提供者、AKIがある肝臓疾患を有する提供者、肝臓疾患および慢性腎臓疾患を有する提供者、AKIがない心臓手術を受けた提供者、ならびにAKIがある心臓手術を受けた提供者からなる群から選択されるAKI環境を示す患者を含む。少なくとも1つの実施形態において、サンプル集団は、上記のAKI環境のそれぞれからの少なくとも1人の患者を含む。いくつかの実施形態において、患者のサンプル集団は、合計で約10〜2000メンバー、約20〜1000メンバー、約30〜500メンバー、または約50〜200メンバーを含む。
図8を再び参照すると、いくつかの実施形態の新規の診断用バイオマーカーを同定する方法は、サンプル集団の各メンバーの体液サンプルからRNAを捕捉するステップを含む。いくつかの実施形態において、サンプル集団の尿から単離したエキソソームまたは微小胞からmRNAを得る。本明細書で開示されるいくつかの実施形態において、患者の体液のサンプルからのRNAの捕捉、ならびに疾患および/または組織特異的マーカーについての前記RNAのその後の分析のための方法が与えられる。いくつかの実施形態において、方法は、患者の尿サンプルからのRNAが随伴した小胞の単離を含む。他の実施形態において、小胞を、血漿、血清、脳脊髄液、痰、唾液、粘液、涙などから得る。多くの診断検査は、少量の患者体液サンプルの使用に準じて設計され、いくつかの実施形態において、少量(例えば、15〜50mLの尿)を使用する。しかしながら、いくつかの実施形態は、患者の大量の尿をすぐに利用できるため、特に有利である。さらに、尿に見られるエキソソームは、たいがい腎臓組織が起源であるが、血液由来のエキソソームの源である臓器は不明である。
いくつかの実施形態において、新規の診断用バイオマーカーを同定する方法は、サンプル集団メンバーの体液サンプルから捕捉したRNAを特徴づけるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、微小胞mRNAを、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT‐PCR)、リアルタイムRT‐PCR、ノーザンブロッティング、蛍光標識セルソーター、ELISA、および質量分析からなる群から選択される方法によって定量化する。少なくとも1つの実施形態において、定量化は、RT‐PCRを使用してRNAを増幅することを含む。いくつかの実施形態において、RNAは、ポリ(A)+RNAを含む。いくつ
かの実施形態において、体液サンプルのmRNAプロファイルをqPCRを使用して定量化する。少なくとも1つの実施形態において、mRNAプロファイルをqPCRを使用して特徴づけて、多数の目的遺伝子の発現レベルを定量化する。少なくとも1つの実施形態において、mRNAプロファイルをqPCRを使用して特徴づけて、単一の目的遺伝子の発現レベルを定量化する。いくつかの実施形態において、qPCRによるmRNA定量値をGAPDHレベルに規格化する。いくつかの実施形態において、RNAを特徴づけるステップは、1〜1000の遺伝子、1〜500の遺伝子、1〜200の遺伝子、1〜100の遺伝子、1〜50の遺伝子、または1〜20の遺伝子の発現を定量化することを含む。
いくつかの実施形態において、新規の診断用バイオマーカーを同定する方法は、サンプル集団の源メンバーからの体液サンプルのRNAプロファイルを、サンプル集団のそれぞれの源メンバーが示す生理学的または病態生理学的環境と相関づけるステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、相関を統計解析を用いて行う。少なくとも1つの実施形態において、マン・ホイットニー・ウィルコクソン検定、次いで、ロジスティック回帰分析を使用して、1〜7の遺伝子の組み合わせに関してROCを作成し、クロスバリデーションを使用して各ROCについてAUCを計算して、目的遺伝子の組み合わせの分類方式を開発する。いくつかの実施形態において、ROCを、1〜10の遺伝子、1〜20の遺伝子、1〜50の遺伝子、または1〜100の遺伝子について作成する。
いくつかの実施形態において、新規の診断用バイオマーカーを同定する方法は、バイオマーカーをランク付けするステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、AUCをランク付けして、より高い特異度および感度を有する方式を同定する。少なくとも1つの実施形態において、方式を作成して、AKIからの回復の予測に有用なバイオマーカーを同定する。いくつかの実施形態において、方式を作成して、AKIの診断に有用なバイオマーカーを同定する。いくつかの実施形態において、方式を作成して、AKIの根本原因の診断に有用なバイオマーカーを同定する。
本開示は、AKIを検出するため、および/またはAKIを有する対象の治療(または継続的治療のモニタリング)のための尿中のEMVの使用に関する。本明細書で開示される実施形態によると、様々な方法を使用して、小胞随伴RNAを効率的に捕捉および保持できる。いくつかの実施形態において、サンプルの非細胞性部分を分画する密度勾配遠心分離を行う。いくつかの実施形態において、必要に応じて、密度遠心分離の後に、高速遠心分離を実施して、小胞の沈降またはペレット化を引き起こす。このような方法は、時間を浪費することがあり、いくつかの実施形態において高価で特殊化した装置を必要とすることがあるので、低速遠心分離を用いて小胞を収集し得る。
いくつかの実施形態において、ろ過(単独または遠心分離との組み合わせ)を使用して、様々なサイズの小胞を捕捉する。いくつかの実施形態において、タンパク質マーカーの表面発現に基づいて、小胞の特異的捕捉を行う。例えば、フィルターは、特定の表面マーカー(例えば、抗体に結合するフィルター)または特定の種類の小胞もしくは異なる起源の小胞に対して反応性であるように設計され得る。いくつかの実施形態において、ろ過と遠心分離との組み合わせは、小胞の収率増加、または純度向上を可能にする。
いくつかの実施形態において、マーカーは、ユニークな小胞タンパク質またはペプチドである。いくつかの実施形態において、特定のIBDの重症度または同一性は、ある種の小胞の修飾に関連しており、この小胞の修飾を利用して、特定の小胞の単離を可能にすることができる。修飾として、脂質の添加、炭水化物の添加、およびその他の分子の添加、例えば、アシル化、ホルミル化、リポイル化、ミリストリル化(myristolylated)、パルミトイル化、アルキル化、メチル化、イソプレニル化、プレニル化、アミド化、グリコシ
ル化、ヒドロキシル化、ヨウ素化、アデニル化、リン酸化、硫酸化、およびセレノイル化、ユビキチン化が挙げられ得るが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、小胞マーカーは、脂質、炭水化物、核酸、RNA、DNAなど非タンパク質を含む。
いくつかの実施形態において、小胞の表面マーカーに基づく小胞の特異的な捕捉は、異なる捕捉分子(例えば、異なる特異性を有する抗体)でコーティングされたプローブを患者サンプルに浸すことによって各々の異なる種類の小胞を捕捉する「ディップスティック」形式も可能にする。
いくつかの実施形態において、尿からのEMVをEMVフィルター収集管装置上に捕捉した。いくつかの実施形態において、低速スピンからの上清を、従来の超遠心を使用するさらなる単離のための出発時点とすることができるか、または、低速スピンからの上清を、次に、エキソソームおよび微小胞捕捉フィルター装置に加えることができる。いくつかの実施形態において、上清をフィルター装置に加えた後、別の低速スピンを使用して、粒子をフィルター上に濃縮し、液体を除去し得る。溶解バッファーをフィルターに添加して、RNAを放出させ得る。低速スピンを使用して、フィルター装置からの溶解物をオリゴ(dT)コーティングされたプレートのウェルに移し入れ得る。サンプルからのmRNAをプレートとハイブリダイズさせ得、捕捉したmRNAを溶離することができ、捕捉したmRNAをさらなる下流の分析に使用し得る。いくつかの実施形態において、膜粒子、細胞、エキソソーム、および微小胞を含有する生体液の収集後、DNA、タンパク質、膜表面抗原、およびmiRNAの分子解析をmRNA解析に加えて実施できる。
いくつかの実施形態において、EMV mRNAを、溶解バッファーを使用してフィルターから放出させ、オリゴ(dT)が結合したプレートで単離した。実施形態に応じて、様々な上皮性、免疫/炎症性、血球由来、ケモカイン性、および混合型のmRNAを評価する(例えば、発現レベルを評価する、場合によっては、適当なコントロールに対して評価する)。
従って、いくつかの実施形態において、本明細書で開示される方法は、AKIの検出、診断、スクリーニング、またはモニタリング用の潜在的なバイオマーカーを同定するために、エキソソームおよび/または微小胞の存在に関して生体液を分析することに関する。生体液として、血液、尿、唾液、母乳、腸液などが挙げられるが、これらに限定されない。追加的にまたは代替的に、いくつかの実施形態において、便サンプルを使用できる。
フリーの細胞外RNAは、直ちにヌクレアーゼにより分解され、このことにより、潜在的に不良な診断用マーカーとなっている。上述したように、一部の細胞外RNAは、尿などの様々な生体サンプル中に見ることできる粒子または小胞に随伴している。mRNAを含むこの小胞随伴RNAは、尿中の分解過程から保護される。微小胞は、ほとんどの細胞種から放出され、細胞膜の断片からなる。微小胞は、RNA、mRNA、マイクロRNA、およびタンパク質を含有し、放出する細胞の組成を反映する。エキソソームは、種々の哺乳類細胞により分泌される小さい微小胞であり、正常および病的状態下で分泌される。これらの小胞は、ある種のタンパク質ならびにmRNAおよびマイクロRNAを含むRNAを含有する。いくつかの実施形態は、特に、低分子干渉RNA(siRNA)、tRNA、および低分子活性化RNA(saRNA)などの核酸を評価する。
いくつかの実施形態において、患者の尿からの小胞から単離されたRNAを鋳型として使用して、例えば逆転写酵素の使用により、cDNAを生成する。いくつかの実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用してcDNAを増幅する。他の実施形態において、核酸およびRNAの増幅は、塩基配列に基づく増幅(NASBA)、または核酸のプライマー依存性連続増幅、またはリガーゼ連鎖反応などの任意の適当な増幅技術に
よっても達成され得る。また、その他の方法を使用して核酸を定量化してもよく、例えば、ノーザンブロット分析、RNアーゼプロテクションアッセイ、RNAシークエンシング、RT‐PCR、リアルタイムRT‐PCR、塩基配列に基づく増幅、分岐DNA増幅、ELISA、質量分析、CHIPシークエンシング、およびDNAまたはRNAマイクロアレイ分析が挙げられる。
いくつかの実施形態において、mRNAからのcDNAの合成およびPCRを用いるcDNAの増幅を伴う方法により、mRNAを定量化する。1つの好ましい実施形態において、マルチウェルフィルタープレートを溶解バッファーおよび洗浄バッファーで洗浄する。cDNA合成バッファーを次にマルチウェルフィルタープレートに加える。マルチウェルフィルタープレートを遠心分離できる。PCRプライマーをPCRプレートに加え、cDNAをマルチウェルフィルタープレートからPCRプレートに移す。PCRプレートを遠心分離し、リアルタイムPCRを開始する。
他の実施形態は、mRNAハイブリダイゼーション中またはcDNA合成中に、特異的なアンチセンスプライマーを加えることを含む。mRNAハイブリダイゼーション中にプライマーを加え、それにより、過剰なアンチセンスプライマーをcDNA合成前に除去して持ち越し効果を回避し得ることが好ましい。オリゴ(dT)および特異的プライマー(NNNN)は、ポリA RNA上の異なる位置で、cDNA合成を同時に始動させる。特異的プライマー(NNNN)およびオリゴ(dT)は、増幅中cDNAの形成を引き起こす。各ウェルを加熱することにより特異的プライマー由来cDNAをGenePlateから除去するときでさえ、熱変性工程(例えば、TaqMan定量PCRを使用)から得られる特異的cDNA量は、非加熱ネガティブコントロールから得られる量と同程度である。このことにより、熱変性工程を完全に省くことが可能になる。さらに、異なる標的に対して複数のアンチセンスプライマーを加えることにより、cDNAのアリコートから複数の遺伝子を増幅でき、GenePlate中のオリゴ(dT)由来cDNAを、将来使うために保存できる。
さらに別の実施形態は、尿からのmRNAのハイスループットな定量化のための装置を含む。装置は、マルチウェルフィルタープレートを含み、マルチウェルフィルタープレートは、複数のサンプルデリバリーウェル、サンプルデリバリーウェルの下のエキソソーム捕捉フィルター(または別の目的の生体成分向けのフィルター)、およびフィルターの下のmRNA捕捉ゾーンを含み、mRNA捕捉ゾーンのウェル中に固定化されたオリゴ(dT)を含む。エキソソーム収集の効率性を高めるために、数枚のろ過膜を積層できる。
いくつかの実施形態において、増幅は、エキソソーム由来RNAおよびコントロールRNAを用いてリアルタイム定量PCR(TaqMan)を行うことを含む。いくつかの実施形態において、Taqmanアッセイを用いる。Taqポリメラーゼの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性をポリメラーゼ連鎖反応生成物検出システムで用いて、増幅に伴う特異的に検出可能なシグナルを得る。3’末端で伸長不可能であり、5’末端で標識され、目的配列内でハイブリダイズするように設計されたオリゴヌクレオチドプローブを、ポリメラーゼ連鎖反応アッセイに導入する。増幅過程中にポリメラーゼ連鎖反応生成鎖の1つにプローブをアニーリングすることにより、エキソヌクレアーゼ活性に適する基質が生成する。増幅中、Taqポリメラーゼの5’〜3’エキソヌクレアーゼ活性は、プローブを、未分解プローブと区別できる小さい断片に分解する。他の実施形態において、方法は、(a)サンプルを含むPCRアッセイに、目的の核酸の領域に相補的な配列を含む少なくとも1つの標識オリゴヌクレオチドを与えることであって、前記標識オリゴヌクレオチドが、ステップ(b)のオリゴヌクレオチドプライマーに挟まれる目的の塩基配列内でアニーリングすること、(b)オリゴヌクレオチドプライマーのセットを与えることであって、第1のプライマーが、目的の塩基配列の1つの鎖のある領域と相補的な配列を含み、相
補的なDNA鎖の合成を始動させ、第2のプライマーが、目的の塩基配列の第2の鎖のある領域に相補的な配列を含み、相補的なDNA鎖の合成を始動させ、かつ、各オリゴヌクレオチドプライマーが、同じ核酸鎖とアニーリングする任意の標識オリゴヌクレオチドの上流の相補的鋳型とアニーリングするように選択されること、(c)(i)プライマーお
よび標識オリゴヌクレオチドを目的領域内に含まれる鋳型塩基配列にアニーリングさせるステップ、および(ii)プライマーを伸長させるステップを含むPCRサイクルに許容的な条件下で、5’〜3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼを鋳型依存性重合剤として用いて、目的の塩基配列を増幅することであって、前記核酸ポリメラーゼが、プライマー伸長生成物を合成する一方で、核酸ポリメラーゼの5’〜3’ヌクレアーゼ活性が、標識オリゴヌクレオチドおよびその相補的鋳型塩基配列を含むアニーリングされた二本鎖から標識断片を同時に放出し、それによって検出可能な標識断片を生成すること、ならびに(d)標識断片の放出を検出および/または測定して、サンプル中の目的配列の有無を判定することを含む。
代替的な実施形態において、Taqmanアッセイを用いる。Taqmanアッセイは、発光標識で標識された一本鎖オリゴヌクレオチドプローブの切断をもたらす反応を与え、前記反応は、標識と相互作用して標識の発光を改変するDNA結合性化合物の存在下で実施される。方法は、プローブの分解に起因する、標識プローブの発光における変化を利用する。方法は、オリゴヌクレオチドプローブの切断をもたらす反応を利用するアッセイに通常適用可能であり、ハイブリダイズされたプローブがプライマー伸長に伴って切断される均一増幅/検出アッセイに特に適用可能である。増幅した目的物の蓄積の同時検出および目的配列の配列特異的検出を可能にする均一増幅/検出アッセイが与えられる。
代替的な実施形態において、リアルタイムPCR形式も用い得る。1つの形式は、サイバーグリーン(SYBR Green)などの挿入色素を用いる。この色素は、二本鎖DNAに結合すると、強い蛍光シグナルを与えるため、このシグナルは、増幅DNAの定量化を可能にする。この形式は、増幅の配列特異的モニタリングを可能にはしないが、標識プローブを全く用いずに、増幅DNAの直接的な定量化を可能にする。同様に用いられ得る他のこのような蛍光色素は、サイバーゴールド(SYBR Gold)、YO‐PRO色素、およびYo
Yo色素である。
用いられ得る他のリアルタイムPCR形式は、アンプリコンとハイブリダイズして蛍光シグナルを発生させるリポータープローブを用いる。ハイブリダイゼーションイベントは、プローブ上のレポーター部位とクエンチャー部位を分離する、またはそれらをより近接させる。プローブ自体は分解されず、レポーター蛍光シグナル自体は、反応中に蓄積されない。PCR中の生成物の蓄積を、プローブがアンプリコンにハイブリダイズするときのレポーター蛍光シグナルの増加によりモニタリングする。このカテゴリーの形式として、分子指標、デュアルハイブ(dual-hybe)プローブ、サンライズ(Sunrise)またはアンプリフルオル(Amplifluor)、およびスコーピオン(Scorpion)リアルタイムPCRアッセイが挙げられる。
同様に用いられ得る他のリアルタイムPCR形式は、いわゆる「ポリスマン(Policeman)」システムである。このシステムにおいて、プライマーは、FAMなどの蛍光性部位
、および蛍光性部位の蛍光を消光することが可能であるTAMRAなどの消光性部位を含み、消光性部位は、プライマーの3’末端で1つ以上のヌクレオチド塩基と共有結合している。3’末端では、プライマーは、1つ以上のミスマッチ塩基を有し、従って、ミスマッチ塩基では核酸サンプルとの相補性がない。鋳型塩基配列をPCRによりPfu酵素などの3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼを用いて増幅して、PCR生成物を製造する。消光性部位に結合しているミスマッチ塩基を、3’〜5’エキソヌクレアーゼ活性により、PCR生成物の3’末端から切り出す。共有結合している消光性部
位を有するミスマッチ部位がポリメラーゼにより切断され、それによって蛍光性部位に対する消光効果を取り除いたときに生じる蛍光を、PCR中の1つ以上の時点で、検出および/または定量化する。このようにして生じる蛍光は、合成された核酸サンプルの存在を示す。
さらに別の実施形態は、尿中のmRNAのハイスループットな定量化を行うための完全に自動化されたシステムを含み、このシステムは、尿サンプル、低張バッファー、および溶解バッファーを装置に加えるロボット、自動化された陰圧吸引器および遠心分離器、ならびに自動化されたPCR装置を含む。
いくつかの実施形態において、mRNAの量をより正確に定量化するために、定量値を、AKIのマーカーをコードするmRNAの量と基準値を比較することにより計算する。いくつかの実施形態において、基準値は、健康な発病していない患者において見られるmRNA量であるとする。他の実施形態において、基準値は、ハウスキーピング遺伝子の発現レベルである。あるこのような実施形態において、ベータ‐アクチン、またはその他の適当なハウスキーピング遺伝子を基準値として使用する。当業で周知の多数のその他のハウスキーピング遺伝子も、基準値として用い得る。他の実施形態において、ハウスキーピング遺伝子を補正因子として使用し、それにより、最終的な比較を、有病患者からのマーカーの発現レベルと発病していない(コントロール)サンプルからの同じマーカーとの比較とする。いくつかの実施形態において、ハウスキーピング遺伝子は、上記で論じられたものなどの組織特異的遺伝子またはマーカーである。さらなる他の実施形態において、基準値はゼロであり、マーカーの定量値は、絶対数により表される。いくつかの実施形態において、有病患者からの1つ以上のマーカーの発現と発病していない人からの1つ以上の他のマーカーとを比較する率が作成される。いくつかの実施形態において、基準値との比較をリアルタイムで実施し、それにより、発現分析の早期でサンプルに関する判定をなすことを可能にし得る。例えば、サンプルを処理し、リアルタイムで基準値と比較する場合、完全な長さの分析を要するのではなく、ほんの数回の増幅サイクル後に、マーカーの発現は、基準値を超えることが判定され得る。いくつかの実施形態において、この早期の比較は、迅速な診断および治療計画が必要とされるときなどに(例えば、侵襲性の強いがん、または敗血症を引き起こし得る感染を治療するために)、特に価値がある。
他の実施形態において、スパイク標準RNAの既知量を使用することにより所与のサンプルの全効率を判定する能力は、用量依存性および配列依存性である実施形態から生じる。コントロールRNAの既知量の使用は、PCR測定値を元のサンプル中の目的mRNAの量に変換することを可能にする。
特定の実施形態において、尿サンプルから収集したEMV中の1つ以上のマーカーmRNAの発現の統計的に有意なアップレギュレーションまたはダウンレギュレーションとしてAKIを検出する。ここで、統計的有意性は、p≦0.05が統計的に有意な変化を表す標準的統計解析により測定される。いくつかの実施形態において、1つ以上のマーカーmRNAの発現における有意な増加は、個体がAKIに罹患していることを示す指標である。いくつかの実施形態において、1つ以上のマーカーmRNAの発現における有意な減少は、個体がAKIに罹患していることを示す指標である。いくつかの実施形態において、統計的優位性は、個体の尿から得られたEMV中の1つ以上のマーカーmRNAの発現と、AKIに罹患していない個体のプールにおけるマーカーmRNAの発現レベルとを比較することにより判定され、ここで、プールのmRNA発現の平均および分散は、プールの個体の尿から得られたEMV中のmRNA発現レベルを分析することにより求められる。いくつかの実施形態において、統計的優位性は、第1の時点で個体の尿から得られたEMV中の1つ以上のマーカーmRNAの発現と、第2の時点で個体の尿から得られたEMV中の1つ以上のマーカーmRNAの発現とを比較することにより判定される。いくつか
の実施形態において、個体のmRNA発現の平均および分散は、第1および第2の時点のそれぞれで、3回以上サンプルを分析することにより求められる。
いくつかの実施形態において、個体から得られた尿サンプルに、小胞捕捉装置上へのEMVの捕捉を促進する1つ以上の薬剤を配合できる。例えば、EMV含有尿サンプルに、サンプルのpHまたは塩濃度を変えるバッファーを配合し、それによって、EMVと小胞捕捉材料(例えばガラス繊維フィルター)の結合を促進できる。追加的にまたは代替的に、本明細書で開示される方法は、EMVが小胞捕捉材料中に保持された後に、小胞捕捉材料からのEMVの溶離を促進するために、バッファーを小胞捕捉材料に通すことを含み得る。
特定の実施形態において、小胞捕捉材料を収容するチップに可逆的に取り付けられたローディングリザーバを含む装置であって、前記ローディングリザーバが、前記チップの容積容量より2〜20倍大きい容積容量を有する、前記装置を使用して、EMVを捕捉する。いくつかの実施形態において、EMV含有サンプルをローディングリザーバにロードし、遠心分離によって、または小胞捕捉材料内に圧力差を与えることによって、小胞捕捉材料に通す。いくつかの態様において、小胞捕捉装置の取り外し可能なチップは、取り外し可能なチップを基質に近接させて維持するフレーム上に載るように構成されている。いくつかの実施形態において、装置は、複数のサンプルデリバリーウェル、ウェルの下のEMV捕捉フィルター、および固定化オリゴ(dT)を含むフィルターの下の基質を含むサンプルマルチウェルプレートを含む。いくつかの実施形態において、EMV含有サンプルを、マルチウェルプレートの遠心分離によって、サンプルデリバリーウェルから小胞捕捉材料内に通す。特定の実施形態において、装置は真空ボックスも含み、真空ボックスは、フィルタープレートを受けて、プレートとボックスの間にシールを作るように構成されており、そのため、真空圧が加えられたときに、EMV含有サンプルは、サンプルデリバリーウェルから小胞捕捉材料内に通され、それによって、EMVが捕捉され、フィルターを洗浄することにより、非EMV成分を除去することが可能になる。いくつかの実施形態において、溶解バッファーをフィルターに加えることにより、フィルターからEMV成分を放出させる。
いくつかの実施形態において、基質は、固定化オリゴ(dT)を含む。いくつかの実施形態において、基質は、固定化ヌクレオチドプライマーを含む。いくつかの実施形態において、基質は、遺伝子チップを含む。いくつかの態様において、フレームまたはプレートは、基質と実質的な液密シールを形成する。いくつかの実施形態において、方法は、EMV含有サンプルをローディングリザーバにロードすること、サンプルを小胞捕捉材料内に通し、それによってEMVを小胞捕捉材料上または中に捕捉すること、チップをローディングリザーバから外すこと、チップをフレーム内に置くこと、およびEMVを小胞捕捉材料から放出させることを含む。いくつかの実施形態において、EMVを放出させることは、溶解バッファーを小胞捕捉材料に加えることを含む。いくつかの実施形態で使用し得る溶解バッファーの組成に関するさらなる詳細は、2006年3月15日に出願された米国特許第8,101,344号に見ることができ、その全体は、本明細書の一部を構成するものとして援用される。
いくつかの実施形態において、cDNAをオリゴ(dT)固定化mRNAから合成する。特定の実施形態において、次に、AKI関連マーカーの増幅用に特別に設計されたプライマーを用いたリアルタイムPCRにより、cDNAを増幅する。いくつかの実施形態で使用するPCR反応に関するさらなる詳細は、米国特許第8,101,344号に同様に見られる。
PCR反応の完了後、1つ以上のAKIマーカーに対する(PCRで増幅したcDNA
の検出量により表される)mRNAを定量化する。特定の実施形態において、定量値を、1つ以上のAKIマーカーをコードするmRNAの量と基準値とを比較することにより計算する。いくつかの実施形態において、基準値は、AKIで誘発されない遺伝子、例えばハウスキーピング遺伝子の発現レベルである。特定の実施形態において、ベータ‐アクチンを基準値として用いる。当業で周知の多数のその他のハウスキーピング遺伝子も、基準値として用い得る。他の実施形態において、ハウスキーピング遺伝子を補正因子として使用し、それにより、最終的な比較を、1つ以上のAKIマーカーの、非AKI(コントロール)個体のプールからの同じマーカーと比べて、誘発された、またはダウンレギュレーションされた発現とする。さらなる他の実施形態において、基準値はゼロであり、1つ以上のAKIマーカーの定量値は、絶対数により表される。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の方法を使用して、AKIの継続的治療に対する個体の応答性をモニタリングする。いくつかのこのような実施形態において、第1の尿サンプルを個体から得る。いくつかの実施形態において、任意のAKI治療を個体に行う前に、第1の尿サンプルを得る。他の実施形態において、個体は、過去にAKIに対する治療を受けたことがあり、将来再び治療を受けることになる。いくつかの実施形態において、第1のサンプルを取ってからある期間後、第2の尿サンプルを個体から得る。特定の実施形態において、この期間は、数時間であるが、他の実施形態において、期間は数週間であり、いくつかの実施形態において、数ヶ月以下である。他の実施形態において、追加のサンプルを数ヶ月間に亘って連続的に取る。いくつかの実施形態において、発現分析までサンプルを凍結し、発現分析を上記のように行う。
従って、個体に実施されるAKI治療計画の進行(例えば有効性)をモニタリングするために、AKI応答性マーカーの発現レベルの評価を使用できる。いくつかの実施形態において、1つ以上のAKI応答性マーカーの発現における治療後サンプルと治療前サンプルとの有意な差は、治療法が有効であることを示す。他の実施形態において、1つ以上のAKI応答性マーカーの発現における治療後サンプルと治療前サンプルとの有意な差がないことは、治療法が有効でないことを示す。
いくつかの実施形態において、生体液サンプルから目的成分を抽出するためのキットが与えられる。いくつかの実施形態において、キットは、捕捉装置、および本明細書で開示される方法の実施に有用な追加的な物品を含む。いくつかの実施形態において、キットは、溶解バッファー、カオトロピック剤、洗浄バッファー、アルコール、洗浄剤、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上の試薬を含む。いくつかの実施形態において、キット試薬は、別々に、またはストック容器に入れられて与えられる。いくつかの実施形態において、キット試薬は、使用準備済の状態で与えられる。いくつかの実施形態において、キット試薬は、使用前に希釈されるストック溶液の形態で与えられる。いくつかの実施形態において、キットは、本明細書で開示される方法の実施に有用な(必要に応じて、滅菌されているか、または滅菌可能である)プラスチックのパーツを含む。いくつかの実施形態において、キットは、ラック、遠心管、真空マニホールド、およびマルチウェルプレートからなる群から選択されるプラスチックのパーツを含む。いくつかの実施形態において、使用説明書も与えられる。
図9は、疾患を治療するために新規の診断用バイオマーカーを使用する方法の実施形態の図式による表示である。方法のいくつかの実施形態において、エキソソーム12を含有する体液サンプル10を患者から得る(図示せず)。体液サンプル10をエキソソーム捕捉装置14に移し、エキソソーム12をフィルター16に保持し、一方で残りの体液サンプル10は、捕捉装置14を通過する。フィルター16を処理して、エキソソーム12に随伴していたRNA20を回収する。RNA20を処理して、新規の診断用バイオマーカーの発現レベルを同定する。患者の体液サンプル10のバイオマーカー発現レベルを、デ
ータ表22と比較して、臨床医に患者の診断または治療に関して報告する。
いくつかの実施形態において、RNA20を処理して、CALM1、AQP2、およびSPP1からなる群から選択される新規の診断用バイオマーカーの発現を同定する。いくつかの実施形態において、RNA20を処理して、CALM1、AQP2、およびSPP1からなる群から選択される新規の診断用バイオマーカーの発現を同定してAKIを治療する。いくつかの実施形態において、RNA20を処理して、CALM1、AQP2、およびSPP1からなる群から選択される新規の診断用バイオマーカーの発現を同定してAKIを診断する。いくつかの実施形態において、RNA20を処理して、CALM1、AQP2、およびSPP1からなる群から選択される新規の診断用バイオマーカーの発現を同定してAKIの根本原因または原因を特定する。
実施機構
一部の実施形態によると、本明細書に記載の方法を、1つ以上の専用コンピューティング装置により実行できる。専用コンピューティング装置は、技術を実行するためにハードワイヤードであり得、または技術を実行するように永続的にプログラムされている1つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)もしくはフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのデジタル電子装置を含み得、またはファームウェア、メモリ、その他のストレージ、もしくはそれらの組み合わせにあるプログラムインストラクションに従って技術を実行するようにプログラムされた1つ以上の汎用ハードウェアプロセッサを含み得る。また、このような専用コンピューティング装置は、カスタム・ハードワイヤードロジック、ASIC、またはFPGAとカスタム・プログラミングとを組み合わせて、技術を達成し得る。専用コンピューティング装置は、デスクトップコンピューターシステム、サーバーコンピューターシステム、ポータブルコンピューターシステム、ハンドヘルド装置、ネットワーク装置、もしくは任意のその他の装置、または技術を実行するようにハードワイヤードおよび/またはプログラムロジックを組み込む装置の組み合わせであり得る。
コンピューティング装置は、一般的に、iOS、Android、Chrome OS、Windows XP、Windows Vista、Windows 7、Windows 8、Windows Server、Windows CE、Unix、Linux、SunOS、Solaris、iOS、Blackberry OS、VxWorks、またはその他の互換性のオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムソフトウェアにより制御および協調される。他の実施形態において、コンピューティング装置は、専売オペレーティングシステムにより制御され得る。従来のオペレーティングシステムは、特に、実行のためのコンピューター工程を計画管理し、メモリ管理を実施し、ファイルシステム、ネットワーキング、I/Oサービスを提供し、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(「GUI」)などのユーザー・インターフェース機能を提供する。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、情報を通信するためのバスまたはその他の通信機構、および情報処理のためにバスと接続したハードウェアプロセッサまたはマルチプロセッサを含む。ハードウェアプロセッサは、例えば、1つ以上の汎用マイクロプロセッサであり得る。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、情報およびプロセッサにより実行される命令を保存するためにバスと接続している、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)などのメインメモリ、キャッシュ、および/またはその他の動的記憶装置も含み得る。また、メインメモリは、プロセッサにより実行される命令の実行中に、一時変数またはその他の中間情報を保存するためにも使用され得る。このような命令は、プロセッサ
にアクセス可能な記憶媒体に保存されているとき、コンピューターシステムを、命令に定められているオペレーションを実行するようにカスタマイズされた専用機器にする。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、静的情報およびプロセッサへの命令を保存するためにバスと接続している、リード・オンリー・メモリ(ROM)、またはその他の静的記憶装置をさらに含む。磁気ディスク、光ディスク、またはUSBサムドライブ(フラッシュドライブ)などの記憶装置が与えられ、情報および命令を保存するためにバスと接続され得る。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、コンピューターユーザーに情報を表示するために、陰極線管(CRT)またはLCDディスプレイ(またはタッチスクリーン)などのディスプレイにバスを介して接続していてもよい。英数字およびその他のキーを含む入力装置を、プロセッサに情報および命令選択を伝えるためにバスと接続する。他の種類のユーザー入力装置は、プロセッサに方向情報および命令選択を伝えるため、およびディスプレイ上のカーソル移動を制御するための、マウス、トラックボール、またはカーソル方向キーなどのカーソル制御である。この入力装置は、通常、2つの軸、第1軸(例えばx)および第2軸(例えばy)に2自由度を有し、これにより、装置は平面内の位置を指定することが可能になる。いくつかの実施形態において、カーソル制御と同じ方向情報および命令選択は、カーソルなしでタッチスクリーン上でタッチを受けることを介して実行されてもよい。
いくつかの実施形態において、コンピューティングシステムは、コンピューティング装置により実行される実行可能なソフトウェアコードとして大記憶装置に保存され得る、GUIを実装するためのユーザーインターフェースモジュールを含み得る。このモジュールおよびその他のモジュールは、例えば、ソフトウェアコンポーネント、オブジェクト指向ソフトウェアコンポーネント、クラスコンポーネントおよびタスクコンポーネント、プロセス、ファンクション、アトリビュート、プロシージャ、サブルーチン、プログラムコードのセグメント、ドライバー、ファームウェア、マイクロコード、サーキットリー、データ、データベース、データ構造、テーブル、アレイ、および変数などのコンポーネントを含み得る。
通常、語「モジュール」は、本明細書で使用される場合、ハードウェアもしくはファームウェアに埋め込まれたロジック、または一群のソフトウェアインストラクションを意味し、入口点および出口点を有し得、例えばJava、Lua、C、またはC++などのプログラミング言語で書かれている。ソフトウェアモジュールは、ダイナミックリンクライブラリにインストールされる実行可能なプログラムにコンパイルおよびリンクされ得、またはBASIC、Perl、またはPythonなどのインタプリタ形式のプログラミング言語で書かれ得る。ソフトウェアモジュールは、他のモジュールから、もしくは自身から呼び出し可能であり得、および/または検出されたイベントもしくはインタラプトに応答して呼び出され得ることが理解されるであろう。コンピューティング装置での実行用に構成されたソフトウェアモジュールは、コンパクトディスク、デジタルビデオディスク、フラッシュドライブ、磁気ディスク、または任意の他の有形媒体などのコンピューター可読媒体上で与えられるか、またはデジタルダウンロードとして与えられ得る(かつ、インストール、解凍、または実行前の暗号解読を要する圧縮形式またはインストール可能な形式で元々保存されていることがあり得る。)。このようなソフトウェアコードは、コンピューティング装置による実行のために、実行コンピューティング装置の記憶装置上に、部分的または完全に保存されていることがあり得る。ソフトウェアインストラクションは、EPROMなどのファームウェアに埋め込まれていることがあり得る。ハードウェアモジュールは、ゲートおよびフリップフロップなどの連結されたロジックユニットからなっていることがあり得、および/またはプログラム可能なゲートアレイもしくはプロセッサな
どのプログラム可能なユニットからなっていることがあり得ることがさらに理解されるであろう。本明細書に記載のモジュールまたはコンピューティング装置機能は、ソフトウェアモジュールとして実装されることが好ましいが、ハードウェアまたはファームウェアで表され得る。一般的に、本明細書に記載のモジュールは、その物理編成または記憶に関わらず、他のモジュールと組み合わせられ得るか、またはサブモジュールに分割され得るロジカルモジュールを意味する。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、本明細書に記載の方法を、カスタマイズされたハードワイヤードロジック、1つ以上のASICもしくはFPGA、ファームウェア、および/またはコンピューターシステムと組み合わされて、コンピューターシステムが専用機器になるようにする、または専用機器になるようにプログラムするプログラムロジックを使用して、実行し得る。一実施形態によると、メインメモリに含まれる1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行するハードウェアプロセッサに応答して、コンピューターシステムにより、本明細書の方法が実施される。このような命令は、記憶装置などの別の記憶媒体からメインメモリに読み込まれ得る。メインメモリに含まれる命令のシーケンスの実行により、プロセッサが本明細書に記載の方法ステップを行うようになる。代替的な実施形態において、ハードワイヤードサーキットリーを、ソフトウェアインストラクションの代わりに、またはソフトウェアインストラクションと組み合わせて使用し得る。
用語「非一時的媒体」および類似の用語は、本明細書で使用される場合、データおよび/または機器が特定の様式で作動するようにする命令を保存するあらゆる媒体を意味する。このような非一時的媒体は、不揮発性媒体および/または揮発性媒体を含み得る。不揮発性媒体として、例えば、光もしくは磁気ディスク、またはその他の種類の記憶装置が挙げられる。揮発性媒体として、メインメモリなどの動的メモリが挙げられる。非一時的媒体の一般的な形態として、例えば、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、ソリッドステートドライブ、磁気テープ、またはあらゆるその他の磁気データ記憶媒体、CD‐ROM、あらゆるその他の光データ記憶媒体、穴のパターンを備えるあらゆる物理媒体、RAM、PROM、およびEPROM、FLASH‐EPROM、NVRAM、あらゆるその他のメモリチップまたはカートリッジ、ならびにそれらのネットワーク化されたバージョンが挙げられる。
非一時的媒体は、伝送媒体とは異なるが、伝送媒体と共に使用され得る。伝送媒体は、非一時的媒体間に情報を伝えることに関与する。例えば、伝送媒体は、同軸ケーブル、銅線、および光ファイバーを含み、バスを含むワイヤを含む。また、伝送媒体は、電波および赤外線データ通信中に発生する音波または光波など、音波または光波の形態もとることができる。
様々な形態の媒体が、1つ以上の命令の1つ以上のシーケンスを実行用プロセッサに送ることに関与し得る。例えば、最初に、リモートコンピューターの磁気ディスクまたはソリッドステートドライブで命令を送り得る。リモートコンピューターが、命令をその動的メモリにロードし、モデムまたはその他のネットワークインターフェース、例えばWANまたはLANインターフェースを使用して、電話線を介して命令を送ることができる。コンピューターシステムに対してローカルなモデムが、電話線上でデータを受け取り、赤外線送信機を使用して、データを赤外線信号に変換することができる。赤外線検出器が、赤外線信号で送られるデータを受け取ることができ、適当なサーキットリーが、データをバスに載せることができる。バスが、データをメインメモリに送り、メインメモリから、プロセッサが、命令を取ってきて実行する。メインメモリが受け取った命令は、命令を取ってきて実行し得る。メインメモリが受け取った命令は、必要に応じて、プロセッサによる実行の前または後のいずれかにおいて、記憶装置上に保存され得る。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、バスに接続した通信インターフェースも含み得る。通信インターフェースは、ローカルネットワークに接続されたネットワークリンクに接続する双方向データ通信を与え得る。例えば、通信インターフェースは、統合サービスデジタル網(ISDN)カード、ケーブルモデム、衛星モデム、または対応する型の電話線とのデータ通信接続を与えるモデムであり得る。他の例として、通信インターフェースは、対応のLANとのデータ通信接続を与えるローカルエリアネットワーク(LAN)カード(またはWANと通信するWANコンポーネント)であり得る。ワイヤレスリンクも実装し得る。あらゆるこのような実装において、通信インターフェースは、様々な種類の情報を表すデジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光信号を送り、受け取る。
ネットワークリンクは、通常、1つ以上のネットワークを介した他のデータ装置とのデータ通信を与える。例えば、ネットワークリンクは、ローカルネットワークを介した、ホストコンピューター、またはインターネットサービスプロバイダー(ISP)がオペレーションするデータ装置との接続を与える。続いて、ISPは、現在「インターネット」と一般的に呼ばれているワールドワイドパケットデータ通信ネットワークを介して、データ通信サービスを提供する。ローカルネットワークおよびインターネットは、両方とも、デジタルデータストリームを運ぶ電気信号、電磁信号、または光信号を使用する。デジタルデータをコンピューターシステムへと運び、コンピューターシステムから運ぶ、様々なネットワークを通る信号、およびネットワークリンク上の信号、および通信インターフェースを通る信号は、伝送媒体の例示的な形態である。
いくつかの実施形態において、コンピューターシステムは、ネットワーク、ネットワークリンク、および通信インターフェースを介して、メッセージを送り、プログラムコードを含むデータを受け取ることができる。インターネットの例において、サーバーは、インターネット、ISP、ローカルネットワーク、および通信インターフェースを介して、アプリケーションプログラム用の要求されたコードを送信し得る。
受け取られたコードは、プロセッサが受け取ったときに、プロセッサにより実行され得、および/または後に実行するために、記憶装置、またはその他の不揮発性記憶装置に保存され得る。
具体的な実施形態を、限定的意味ではなく、例示的意味に見なされるべきである以下の実施例を参照して説明することにする。
実施例1
サンプル集団
尿サンプルを、様々な臨床環境にある、AKIを有する、および有しない63人の患者、ならびに11人の健康者コントロールから得た(表1)。以下の3つのハイリスク患者群:(門脈圧亢進および腹水の所見のある代償性および非代償性の)肝硬変を有する患者、心臓手術後の患者、ならびにICUに入れられた重症患者、からのインフォームドコンセントを有する患者を募集した。各カテゴリーにおいて、患者を、その経過に基づいて、AKIおよび非Aki群に階層化した。AKIを発症した患者では、AKIの前、間、および後の尿サンプルを得た。尿サンプルを収集し、分析まで−80℃で保存した。KDIGO基準により、AKIを、48時間以内の>0.3mg/dlの血清クレアチニン(sCr)の上昇、またはベースレインsCrに比して50%の増加として定義した。回復を、上昇したsCrが基準の15%以内へ復帰することとして定義した。
実施例2
尿中EMVのmRNA解析
尿中EMVのmRNA解析を、AKI群、非AKI群、および健康者コントロール群からの尿サンプルで実施して、AKI発症に特異的な発現プロファイルを決定した。尿サンプルを15分間、800×gで遠心分離して、尿中の細胞および尿円柱などの大粒子を最初に除去した。尿上清を収集し、1/4の体積の25×PBSとpH7.4で混合した。EMVを含む12.5mLの混合物(10mLの尿上清)を、エキソソーム収集管(カリフォルニア州マウンテンビューのHitachi Chemical Diagnostics, Inc.(HCD))に入れ、10分間、2,000×gで遠心分離した。80μLの溶解バッファーをフィルターに加え、フィルター中に捕捉したEMVを溶解した。次に、溶解物を遠心分離よってオリゴ(dT)固定化マイクロプレートに移し、mRNAハイブリダイゼーションのために、4℃で一夜インキュベーションした。洗浄バッファーで6回洗浄後、1.25mMの各dNTP、2.7U/μLのMMLV逆転写酵素、および0.13U/μLのRNasinを含有する30μLの1×逆転写酵素バッファーを加えることによって、cDNAを同じマイクロプレートで合成し、37℃で2時間インキュベートした。リアルタイムPCRを、ABI 7900HTまたはViiA7リアルタイムPCRシステム(カリフォルニア州カールスバッドのライフテクノロジーズ)を使用して、1×SsoAdvanced SYBR Green Supermixおよび500nMの各プライマーペアを含む5μLの反応液中で実施した。温度プロファイルは、10分間の95℃での最初の変性、その後に95℃で30秒間と65℃で1分間とが40サイクル、次いで、融解曲線解析であった。リアルタイムPCRデータを、測定器制御ソフトウェアおよびExcel 2007(ワシントン州レドモンドのマイクロソフト)およびR(R Foundation)により分析した。サンプル当りの遺伝子コピー数を、基準曲線およびオリゴ(dT)マイクロプレートによる10%の推定mRNA回収率を使用して、サイクル閾値を遺伝子コピー数に変換することによって得た。64のmRNAをqPCRによって定量化し、得られたmRNAデータを、デルタCt法を使用して、GAPDHにより規格化した(図1A〜1D)。統計的優位性を、マン・ホイットニー・ウィルコクソン検定により、p値<0.05で判定した。
実施例3
統計解析
AKI発症およびAKIからの自然回復を診断するための分類方式を開発するために、ロジスティック回帰分析を用いた。最初に、我々は、1〜4つの遺伝子の可能な組み合わせ全て(合計で679,120の組み合わせ)を分析した。各遺伝子の組み合わせについて、曲線下面積(AUC)を、10分割クロスバリデーションを10回繰り返すことにより計算した。遺伝子の組み合わせを平均AUCによってランク付けし、上位500の組み合わせを大規模計算用に選択し、各遺伝子の組み合わせに対する平均AUCを、10分割クロスバリデーションを100回繰り返すことにより得た。計算をRを使用して実施し、AUCの計算を「ROCR」パッケージにより行った。
実施例4
AKI発症に対するEMV mRNAマーカー
AKI発症マーカーの診断能をROC曲線によって分析した。EMV mRNAプロファイルを、以下の3つの群:AKI、非AKI,および健康者コントロール間で比較した。AKI群中の前、間、前および間、または後サブ群を、非AKI群と比較し、各AUCを求めた(表2)。同定した特異的に発現される遺伝子は、CALB1、CALM1、CFLAR、EGF、GSTA1、HIF1A、IL18、PKM、PPIA、RIPK1、およびSLC12A1であった(図1A〜1D)。これらの遺伝子の中で、特にCALM1、CFLAR、GSTA1、HIF1A、およびSLC12A1が、AKI群と非AKI群との間で特異的に発現されたので、他の患者からAKI患者を特定するためのAK
I発症のバイオマーカーとして使用できる。これらの遺伝子の診断能を、ROC曲線の曲線下面積(AUC)(図2A〜2F)により推定し、表2に要約した。表2は、これらの遺伝子がAKI発症の可述的(predicative)診断用マーカーであることを示している。
単一遺伝子よりも感度および特異度が高いAKI発症を検出するための遺伝子分類指標を開発するために、ロジスティック回帰分析およびROC曲線解析を上記のように用いた。AKI群中の前、間、前および間、または後サブ群を、比較した。上位20の分類指標を、対応するAUCと共に表3に要約する。これらの中で、表3中の分類指標#13、#290、#56、#225、#102、#266、#418、#9、#39、および#357は、AKI発症を検出する最良のAUCを示した(表3、図3A〜3J)。これらの分類指標は、AKI発症を予測し診断することができる。
実施例5
AKI進行に対するEMV mRNAマーカー
AKI患者における尿中EMV mRNA発現プロファイルを、AKI進行をモニタリングするためのマーカーを発見するために、前、間、および後サブ群間でさらに比較した。これらのサブ群を、AKI発症の時点に対するサンプリング時点によって判定した。この比較において、AQP2、CFLAR、CST3、IL1B、LGALS3、MYD88、NLRP3、RAC2、およびTNFRSF1Aを、特異的に発現される遺伝子として同定した(図4A〜4D)。AQP2、CST3、およびLGALS3は、経時的傾向を示したので、これらの遺伝子は、AKI進行をモニタリングするために使用できる。
実施例6
AKI回復に対するEMV mRNAマーカー
AKIを発症する一部の患者は、医療介入なしに自然回復する。AKI回復を検出するマーカーを発見するために、尿中EMV mRNAプロファイルを、AKI群中の回復および非回復サブ群間で比較した。AKI回復マーカーの診断能をROC曲線によって分析した。前、間、前および間、または後サブ群において、回復群を非回復群と比較した。64の遺伝子の中で、ALB、AQP1、APQ2、B2M、CST3、CXCL1、CXCL3、IL1B、LGALS3、LGALS3BP、MYD88、PKM、RAC2、S100A9、SLC12A1、TNFRSF1A、およびVCAM1は、群の中で特異的に発現されたので、これらの遺伝子は、AKI回復を検出する有望なバイオマーカーである(図5A〜5D)。特に、VCAM1、AQP1、B2M、CLU、AQP2、およびIL1Bは、高い特異度および感度で、AKIから自然回復する患者を自然回復しない患者と区別できるので、これらの遺伝子は、上記の遺伝子の中で最も有望なバイオマーカーであった(図5A〜5D)。これらの遺伝子の診断能を、ROC曲線の曲線下面積(AUC)(図6A〜6F)により推定し、表4に要約した。表4は、これらの遺伝子がAKI回復の可述的(predicative)診断用マーカーであることを示している。
単一遺伝子よりも感度および特異度が高いAKI回復を検出するための遺伝子分類指標を開発するために、ロジスティック回帰分析およびROC曲線解析を上記のように用いた。前、間、前および間、または後サブ群において、回復群を非回復群と比較し、AUCを求めた。上位20の分類指標を、対応するAUCと共に表5に要約した。これらの中で、表5中の分類指標#86、#130、#247、#298、#299、#84、#246、#339、#420、および#199は、AKI回復を検出する最良のAUCを示した(表5、図7A〜7J)。これらの分類指標は、AKI回復を予測し診断することができる。
本発明の実施形態を、以下に例示する。
[1]ヒト対象における急性腎障害(AKI)の治療法であって、
(A)前記ヒト対象から得られた小胞含有サンプルを研究所に送り、以下のステップ(1)〜(3):
(1)前記サンプルからの少なくとも一部の小胞を小胞捕捉材料上または中に捕捉し、それによって小胞サンプルを生成すること;
(2)前記小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子の発現レベルを定量化することであって、前記1つ以上の遺伝子が、CALM1、SLC12A1、CFLAR、GSTA1、HIF1A、およびALBからなる群から選択されること;
(3)前記1つ以上の遺伝子の各々の前記発現レベルが、前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象の小胞サンプル中の各遺伝子の発現レベルと有意に異なっていることにより、前記対象が前記IBDを有すると判定し、それによって前記対象をAKIを有すると診断すること
を含むアッセイを前記研究所が行うこと;ならびに
(B)有効量のAKI薬剤を、前記AKIを有するヒト対象に投与することであって、前記AKI薬剤が、利尿薬、静脈内輸液、ステロイド系薬剤、血漿交換、およびシクロホスファミドからなる群から選択され、それによって前記ヒト対象において前記AKIを治療すること
を含む、方法。
[2]前記小胞含有サンプルが尿サンプルである、[1]に記載の方法。
[3]捕捉が、ガラス繊維を含むフィルターに前記小胞含有サンプルを通すことを含む、[1]に記載の方法。
[4]前記小胞捕捉材料上または中の前記小胞サンプルを溶解することをさらに含む、[
1]に記載の方法。
[5]前記小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子の発現レベルの定量化が、3つの遺伝子の前記発現レベルの定量化を含む、[1]に記載の方法。
[6]捕捉が、
前記体液サンプルを受け取ること、および
捕捉した小胞集団を小胞捕捉材料内に取り込むように構成されている前記小胞捕捉材料に前記体液サンプルを通すこと
をさらに含む、[1]に記載の方法。
[7]定量化が、
前記小胞捕捉材料と前記捕捉した小胞集団とを、固定化オリゴ(dT)を含む基質の近傍に置くこと;
溶解バッファーを前記小胞捕捉材料に加え、それによって前記捕捉した小胞集団を溶解すること;
前記捕捉した小胞集団からの1つ以上のmRNAを前記基質とハイブリダイズさせること;
前記1つ以上のmRNAから1つ以上のcDNAを前記基質上で直接合成すること;および
前記1つ以上のcDNAのPCR分析によって、前記捕捉した小胞集団中のマーカーmRNAの発現レベルを定量化すること
を含む、[6]に記載の方法。
[8]受け取ることが、医療専門家から前記体液サンプルを受け取ることを含む、[6]に記載の方法。
[9]前記小胞捕捉材料がガラス繊維を含む、[7]に記載の方法。
[10]通すことが、チップに取り外し可能に取り付けられたローディングリザーバを含む装置に前記体液サンプルをロードすることを含み、前記小胞捕捉材料が前記チップ内に収容される、[9]に記載の方法。
[11]判定が、
前記1つ以上の遺伝子のうち2つ以上の発現レベルを合計することにより遺伝子分類指標を判定すること;および
前記遺伝子分類指標が前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象の小胞サンプル中の各遺伝子分類指標と有意に異なっているかどうかを判定すること
をさらに含む、[1]に記載の方法。
[12]前記遺伝子分類指標が、少なくともCALB1およびCALM1の発現レベルを含む、[11]に記載の方法。
[13]前記遺伝子分類指標が、GAPDHの発現レベルをさらに含む、[12]に記載の方法。
[14]尿サンプルの小胞中の1つ以上のmRNAの発現レベルを定量化するためのアッセイであって、
前記尿サンプルを小胞捕捉材料に通すことによって、前記尿サンプルからの前記小胞を前記小胞捕捉材料上に捕捉すること;
前記小胞を前記小胞捕捉材料上で溶解し、それによって溶解物を生成すること;
前記溶解物を前記小胞捕捉材料から固定化オリゴ(dT)を含む基質に送ること;
前記溶解物からの前記1つ以上のmRNAを前記基質とハイブリダイズさせること;
前記基質とハイブリダイズした前記mRNAからcDNAを前記基質上で直接合成すること;および
前記cDNAをリアルタイム定量的ポリメラーゼ連鎖反応に使用し、それによって前記尿サンプルの前記小胞中の前記1つ以上のmRNAの発現レベルを定量化すること
を含む、アッセイ。
[15]生体液を収集し、急性腎障害(AKI)の発症のバイオマーカーを同定する方法であって、
ヒト対象から尿を得ること;
膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記尿から単離し、それによって小胞サンプルを生成すること;ならびに
CALB1、CALM1、CFLAR、EGF、GSTA1、HIF1A、IL18、PKM、PPIA、RIPK1、およびSLC12A1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子からなるバイオマーカーの発現を、
(a)前記小胞サンプルからRNAを遊離させること;
(b)遊離したRNAを逆転写酵素と接触させて、相補DNA(cDNA)を生成すること;ならびに
(c)前記cDNAを、AKIのバイオマーカーに特異的なセンスおよびアンチセンスプライマーならびにDNAポリメラーゼと接触させて、増幅DNAを生成すること
を含む方法により検出すること
を含む、方法。
[16]膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記尿から単離することが、前記尿を小胞捕捉材料に通すことを含む、[15]に記載の方法。
[17]前記小胞捕捉材料が、ガラス繊維を含むフィルターを含む、[16]に記載の方法。
[18]前記小胞サンプルからRNAを遊離させることが、前記小胞捕捉材料上または中の前記小胞サンプルを溶解することを含む、[16]に記載の方法。
[19]前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の発現を検出すること、および前記3つ以上の遺伝子の発現レベルを合計することによって遺伝子分類指標を作成することをさらに含む、
[15]に記載の方法。
[20]前記遺伝子分類指標を作成することが、CALB1、CALM1、およびGAPDHの発現レベルを合計することを含む、[19]に記載の方法。
[21]生体液を収集し、急性腎障害(AKI)からの回復のバイオマーカーを同定する方法であって、
ヒト対象から尿を得ること;
膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記尿から単離し、それによって小胞サンプルを生成すること;ならびに
ALB、AQP1、APQ2、B2M、CST3、CXCL1、CXCL3、IL1B、LGALS3、LGALS3BP、MYD88、PKM、RAC2、S100A9、SLC12A1、TNFRSF1A、およびVCAM1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子からなるバイオマーカーの発現を、
(a)前記小胞サンプルからRNAを遊離させること;
(b)遊離したRNAを逆転写酵素と接触させて、相補DNA(cDNA)を生成すること;ならびに
(c)前記cDNAを、AKIからの回復のバイオマーカーに特異的なセンスおよびアンチセンスプライマーならびにDNAポリメラーゼと接触させて、増幅DNAを生成することを含む方法により検出すること
を含む、方法。
[22]膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記尿から単離することが、前記尿を小胞捕捉材料に通すことを含む、[21]に記載の
方法。
[23]前記小胞捕捉材料が、ガラス繊維を含むフィルターを含む、[22]に記載の方法。
[24]前記小胞サンプルからRNAを遊離させることが、前記小胞捕捉材料上または中の前記小胞サンプルを溶解することを含む、[22]に記載の方法。
[25]前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の発現を検出すること、および前記3つ以上の遺伝子の発現レベルを合計することによって遺伝子分類指標を作成することをさらに含む、
[21]に記載の方法。
[26]前記遺伝子分類指標を作成することが、AQP1およびVCAM1の発現レベルを合計することを含む、[25]に記載の方法。
[27]生体液を収集し、急性腎障害(AKI)の進行のバイオマーカーを同定する方法であって、
ヒト対象から尿を得ること;
膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記尿から単離し、それによって小胞サンプルを生成すること;ならびに
AQP2、CFLAR、CST3、IL1B、LGALS3、MYD88、NLRP3、RAC2、およびTNFRSF1Aからなる群から選択される1つ以上の遺伝子からなるバイオマーカーの発現を、
(a)前記小胞サンプルからRNAを遊離させること;
(b)遊離したRNAを逆転写酵素と接触させて、相補DNA(cDNA)を生成すること;ならびに
(c)前記cDNAを、AKIの進行のバイオマーカーに特異的なセンスおよびアンチセンスプライマーならびにDNAポリメラーゼと接触させて、増幅DNAを生成すること
を含む方法により検出すること
を含む、方法。
[28]膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記尿から単離することが、前記尿を小胞捕捉材料に通すことを含む、[27]に記載の方法。
[29]前記小胞捕捉材料が、ガラス繊維を含むフィルターを含む、[28]に記載の方法。
[30]前記小胞サンプルからRNAを遊離させることが、前記小胞捕捉材料上または中の前記小胞サンプルを溶解することを含む、[28]に記載の方法。
[31]前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の発現を検出すること、および前記3つ以上の遺伝子の発現レベルを合計することによって遺伝子分類指標を作成することをさらに含む、[27]に記載の方法。
[32]前記遺伝子分類指標を作成することが、AQP2、CST3、およびLGALS3の発現レベルを合計することを含む、[31]に記載の方法。
[33]急性腎障害(AKI)を有する対象の生体サンプルからエキソソームを収集して、前記対象がAKIから回復するかどうかを予測する方法であって、
前記対象から前記生体サンプルを得ること;
前記生体サンプルを小胞捕捉材料に通し、それによって小胞サンプルを生成すること;
核酸ベースの検出アッセイを実施して、前記小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子のmRNAの発現レベルを検出することであって、前記1つ以上の遺伝子の各々が、ALB、AQP1、APQ2、B2M、CST3、CXCL1、CXCL3、IL1B、LGALS3、LGALS3BP、MYD88、PKM、RAC2、S100A9、SLC12A1、TNFRSF1A、およびVCAM1からなる群から選択されること;
前記対象の前記1つ以上の遺伝子の前記mRNAの発現レベルと事前に測定した標準のレベルとを比較して、前記標準に対する前記対象における前記1つ以上の遺伝子の過剰発現または過少発現のレベルを判定すること;ならびに
前記対象がAKIから回復するかどうかを判定することであって、前記1つ以上の遺伝子の過剰発現または過少発現が、前記対象がAKIから回復することを示すこと
を含む、方法。
[34]ヒト対象における急性腎障害(AKI)の診断および治療のための方法であって

前記ヒト対象の小胞を含む生体液サンプルを小胞捕捉材料に通し、それによって小胞サンプルを生成すること;
核酸ベースの検出アッセイを実施して、前記小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子のmRNAの発現レベルを検出することであって、前記1つ以上の遺伝子が、ALB、AQP1、APQ2、B2M、CST3、CXCL1、CXCL3、IL1B、LGALS3、LGALS3BP、MYD88、PKM、RAC2、S100A9、SLC12A1、TNFRSF1A、およびVCAM1からなる群から選択されること;
前記小胞サンプルが、前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象の小胞サンプル中の各遺伝子の発現レベルと有意に異なるレベルで、前記1つ以上の遺伝子を発現することを判定し、それによって前記ヒト対象をAKIを有すると診断すること;
前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象の小胞サンプル中の各遺伝子の発現レベルと有意に異なるレベルで、前記1つ以上の遺伝子を発現する前記ヒト対象への静脈内輸液または利尿薬の投与に関する勧告を与え、それによって前記ヒト対象においてAKIを治療すること
を含む、方法。
[35]前記生体液が尿である、[34]に記載の方法。
[36]前記小胞捕捉材料がガラス繊維を含む、[34]に記載の方法。
[37]前記小胞捕捉材料上または中の前記小胞サンプルを溶解することをさらに含む、[34]に記載の方法。
[38]急性腎障害(AKI)を有する対象の生体サンプルからエキソソームを収集して、前記AKIの進行をモニタリングする方法であって、
第1の時点で、前記対象から第1の生体サンプルを得ること;
第2の時点で、前記対象から第2の生体サンプルを得ることであって、前記第2の時点が、前記第1の時点から数時間後、数日後、または数週間後であること;
前記第1および第2の生体サンプルを小胞捕捉材料に通し、それによって第1および第2の小胞サンプルを生成すること;
核酸ベースの検出アッセイを実施して、前記第1および第2の小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子のmRNAの発現レベルを検出することであって、前記1つ以上の遺伝子の各々が、AQP2、CFLAR、CST3、IL1B、LGALS3、MYD88、NLRP3、RAC2、およびTNFRSF1Aからなる群から選択されること;
前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の第1の小胞サンプル中の発現レベルを合計することによって、第1の遺伝子分類指標を作成すること;
前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の第2の小胞サンプル中の発現レベルを合計することによって、第2の遺伝子分類指標を作成すること;
第1の遺伝子分類指標と第2の遺伝子分類指標とを比較すること;ならびに
前記対象の前記AKIが進行しているかどうかを判定することであって、前記AKIの進行が、前記第2の遺伝子分類指標が前記第1の遺伝子分類指標よりも大きいAKIの進行度を示すことによって示されること
を含む、方法。
[39]急性腎障害(AKI)を有する対象の生体サンプルからエキソソームを収集して、前記AKIの回復をモニタリングする方法であって、
第1の時点で、前記対象から第1の生体サンプルを得ること;
第2の時点で、前記対象から第2の生体サンプルを得ることであって、前記第2の時点が、前記第1の時点から数時間後、数日後、または数週間後であること;
前記第1および第2の生体サンプルを小胞捕捉材料に通し、それによって第1および第2の小胞サンプルを生成すること;
核酸ベースの検出アッセイを実施して、前記第1および第2の小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子のmRNAの発現レベルを検出することであって、前記1つ以上の遺伝子の各々が、ALB、AQP1、APQ2、B2M、CST3、CXCL1、CXCL3、IL
1B、LGALS3、LGALS3BP、MYD88、PKM、RAC2、S100A9、SLC12A1、TNFRSF1A、およびVCAM1からなる群から選択されること;
前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の第1の小胞サンプル中の発現レベルを合計することによって、第1の遺伝子分類指標を作成すること;
前記1つ以上の遺伝子のうち3つ以上の第2の小胞サンプル中の発現レベルを合計することによって、第2の遺伝子分類指標を作成すること;
第1の遺伝子分類指標と第2の遺伝子分類指標とを比較すること;および
前記対象が前記AKIから回復しているかどうかを判定することであって、前記AKIの回復が、前記第2の遺伝子分類指標が前記第1の遺伝子分類指標よりも大きいAKIの回復度を示すことによって示されること
を含む、方法。
[40]急性腎障害(AKI)の症候を示す対象におけるALIの重症度の予測を与えるための
方法であって、
前記対象から生体サンプルを得ること;
前記生体サンプルを小胞捕捉材料に通し、それによって小胞サンプルを生成すること;
核酸ベースの検出アッセイを実施して、前記小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子のmRNAの発現レベルを検出することであって、前記1つ以上の遺伝子の各々が、CALB1、CALM1、CFLAR、EGF、GSTA1、HIF1A、IL18、PKM、PPIA、RIPK1、およびSLC12A1からなる群から選択されること;
前記対象の前記1つ以上の遺伝子の前記mRNAの発現レベルと事前に測定した標準のレベルとを比較して、前記標準に対する前記対象における前記1つ以上の遺伝子の過剰発現または過少発現のレベルを判定すること;および
前記対象における前記AKIの重症度を判定することであって、前記1つ以上の遺伝子の前記過剰発現または過少発現のレベルが、前記対象における前記AKIの重症度を示すこと
を含む、方法。
[41]ヒト対象における急性腎障害(AKI)の診断および治療のための方法であって、
前記ヒト対象の小胞を含む腔内液サンプルを小胞捕捉材料に通し、それによって小胞サンプルを生成すること;
核酸ベースの検出アッセイを実施して、前記小胞サンプル中の1つ以上の遺伝子のmRNAの発現レベルを検出することであって、前記1つ以上の遺伝子が、CALB1、CALM1、CFLAR、EGF、GSTA1、HIF1A、IL18、PKM、PPIA、RIPK1、およびSLC12A1からなる群から選択されること;
前記小胞サンプルが、前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象の小胞サンプル中の各遺伝子の発現レベルと有意に異なるレベルで、前記1つ以上の遺伝子を発現することを判定し、それによって前記ヒト対象をAKIを有すると診断すること;
前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象の小胞サンプル中の各遺伝子の発現レベルと有意に異なるレベルで、前記1つ以上の遺伝子を発現する前記ヒト対象への有効量の静脈内輸液または利尿薬の投与に関する勧告を与え、それによって前記ヒト対象においてAKIを治療すること
を含む、方法。
[42]心臓手術を受けること、肝臓疾患を有すること、および病院の集中治療室に入院することからなる群から選択されるリスク特性を有する対象の急性腎障害(AKI)の予測またはリスク階層化、ならびにこのような対象のモニタリングおよび治療ガイダンスのうち1つ以上のための方法であって、
(a)膜粒子、細胞、エキソソーム、エキソソーム様小胞、および微小胞のうち1つ以上を前記対象の尿から単離し、それによって小胞サンプルを生成すること;ならびに
(b)前記小胞サンプルにおけるCALB1、CALM1、CFLAR、EGF、GSTA1、HIF1A、IL18、PKM、PPIA、RIPK1、およびSLC12A1からなる群から選択される1つ以上の遺伝子の発現レベルを検出および定量化することであって、前記遺伝子の発現レベルを、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応を含む評価方法によって検出および定量化すること、ならびに
(c)前記小胞サンプル中の前記1つ以上の遺伝子の前記発現レベルと、各リスク特性を有する対象におけるAKIの予測もしくはリスク階層化と関連している範囲である、各遺伝子に関する所定の統計的に有意なカットオフ値の範囲とを比較することであって、前記小胞サンプル中の各遺伝子の前記発現レベルが前記カットオフ値の範囲内にある場合、前記対象を、AKIのリスクが増加していると予測または階層化し、前記小胞サンプル中の各遺伝子の前記レベルが前記カットオフ値の範囲外にあるとき、前記対象を、AKIのリスクが増加していないと予測または階層化し、各場合において、AKIの予測またはリスク階層化または両方に従って、モニタリング、治療、またはその両方の必要性を示すこと
を含む、方法。
本発明の様々な実施形態を上記で説明した。これらの具体的な実施形態を参照して本発明を説明してきたが、説明は、発明を例示するためのものであり、限定するためのものではない。様々な修正および応用が、添付の番号を付けた項において定義される発明の真の精神および範囲から逸脱することなく、当業者に想起され得る。
上記で開示した実施形態の具体的な特徴および態様の様々な組み合わせまたは副組み合わせが、作られ得、なおも1つ以上の本発明の範囲内にあり得ることが企図されている。さらに、任意の特定の特徴、態様、方法、特性、特徴、質、性状、要素などの実施形態に関連した本明細書における開示は、本明細書で説明された全ての他の実施形態において使用されることができる。従って、開示された実施形態の様々な特徴および態様は、開示された発明の様々な形態を形成するために、互いに組み合わされる、または置き換えられることができることが理解されるべきである。従って、本明細書で開示された本発明の範囲は、上記の特定の開示された実施形態によって限定されるべきではないことが意図されている。さらに、本発明は、様々な修正および代替形態の影響を受けやすいが、それらの具体的な実施例が、図面に示されており、本明細書で詳細に記載されている。しかしながら、本発明は、開示される特定の形態または方法に限定されるものではなく、反対に、本発明は、記載の様々な実施形態および添付の特許請求の範囲の精神および範囲に含まれる全ての修正、均等物、および代替物を包含するものであることが理解されるべきである。本明細書に開示されたあらゆる方法は、記載の順序で実施される必要はない。本明細書に開示された方法は、医師によって実施される特定の行為を含むが、明示または黙示を問わない、これらの行為のあらゆる第三者の指示も含むことができる。例えば、「対象の疾患または状態の治療」などの行為は、「対象の疾患または状態の治療の実施を指示すること」を含む。
条件的な言葉、特に「できる(can)」「できる(could)」「得る(might)」、また
は「得る(may)」などは、別段の定めがない限り、その反対で使用される文脈の中で理
解される場合、通常、特定の特徴、要素、および/またはステップを特定の実施形態が含み、一方で他の実施形態が含まないことを伝えることが意図されている。従って、このような条件的な言葉は、特徴、要素、および/またはステップが、1つ以上の実施形態にとにかく必要であることを含蓄することを通常意図していない。
「第1」、「第2」、「第3」、「第4」、「第5」、「第6」、「第7」、「第8」、「第9」、「第10」、または「第11」などの用語は、別段の定めがない限り、その反対で使用される文脈の中で理解される場合、通常、任意の順序を意味することが意図されており、対応する序数のそのままの意味に基づく順序を必ずしも意味しない。従って、序数を使用する用語は、単に、別々の個々を示し得、それらの間の順序を意味するとは限らない。従って、例えば、本出願で用いられる第1および第2のバイオマーカーは、単に2つのセットのバイオマーカーがあることを意味し得る。言い換えると、あらゆる態様において、データの「第1」および「第2」のセットの間に、順序に関する何らかの意図があるとは限らない。
本明細書で開示される範囲は、あらゆる全ての重複、部分範囲、およびそれらの組み合わせも包含する。「以下」、「以上」、「超える」、「未満」、「間」などの言葉は、記載された数値を含む。「約」または「およそ」などの用語が前に付く数値は、記載された数値を含む。例えば、「約10ナノメーター」は、「10ナノメーター」を含む。
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Claims (5)

  1. ヒト対象における急性腎障害(AKI)の判定方法であって、
    ヒト対象から得た小胞含有サンプルからの少なくとも一部の小胞を小胞捕捉材料上または中に捕捉し、それによって小胞サンプルを生成すること;
    前記小胞サンプル中の2つ以上の遺伝子の発現レベルを定量化することであって、前記2つ以上の遺伝子が、CALB1、CALM1、GAPDH、SLC12A1、CFLAR、NLRP1、TFF3、RBP4、NAPSAおよびSLC23A3からなる群から選択されること;
    記2つ以上の遺伝子の発現レベルの組み合わせである遺伝子分類指標を作成することであって、前記遺伝子分類指標が、
    CALB1+CALM1+GAPDH+CFLAR;
    CALB1+CALM1+GAPDH+SLC12A1;
    CALB1+CALM1+GAPDH+NLRP1;
    CALB1+CALM1+GAPDH+TFF3;
    CALB1+CALM1+GAPDH+RBP4;
    CALB1+CALM1+GAPDH+NAPSA;および
    CALB1+CALM1+GAPDH+SLC23A3;
    からなる群から選択されるいずれかの指標であることならびに
    前記2つ以上の遺伝子の発現レベルを組み合わせることで得た遺伝子分類指標が、前記AKIに罹患していない健康ヒトコントロール対象から得た小胞サンプル中の対応する遺伝子分類指標比較して有意に増加していることにより、前記対象が前記AKIを有すると判定されること
    を含む、方法。
  2. 前記小胞含有サンプルが尿サンプルである、請求項1に記載の方法。
  3. 前記小胞捕捉材料が、ガラス繊維を含むフィルターである、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記定量化が、
    前記捕捉した小胞の集団を含む前記小胞捕捉材料を、固定化オリゴ(dT)を含む基質の近傍に置くこと;
    溶解バッファーを前記小胞捕捉材料に加え、それによって前記小胞の集団を溶解すること;
    前記溶解した小胞からの1つ以上のmRNAを前記基質とハイブリダイズさせること;
    前記1つ以上のmRNAから1つ以上の相補DNA(cDNA)を前記基質上で直接合成すること;および
    前記1つ以上のcDNAのPCR分析によって、前記小胞の集団中の各遺伝子の発現レベルを定量化すること
    を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
  5. 前記捕捉が、前記小胞捕捉材料を収容するチップに取り外し可能に取り付けられたローディングリザーバを含む装置に、前記小胞含有サンプルをロードすることを含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
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