JP6629555B2 - 歩行補助装置 - Google Patents

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Description

本発明は、使用者の股関節を挟んで腰側と膝側との間に跨って取り付けられることにより装用されて、使用者の自発的な動作を過度に妨げることなく、使用者の歩行運動を補助することができる、歩行補助装置に関するものである。
従来から、高齢者や身体障害者、傷病者などの歩行動作を補助するために、使用者が体に装着することで歩行動作に必要なアシスト力を使用者に付与することができる歩行補助装置が提案されている。例えば、特開2012−120789号公報(特許文献1)には、使用者の脚部の側方に硬質のフレームを配して、脚部に取り付けられたフレームをモータなどの駆動源で動かすことにより、使用者の脚部がフレームとともに運動せしめられるようになっている。ところが、特許文献1のような硬質のフレームを用いた外骨格タイプの歩行補助装置では、使用者の自発的な動作が過度に拘束されてしまうことから、例えば歩行時のつまづきや側方からの押力などに際して使用者が自発的且つ突発的に対応しようとする動きが阻害されてしまい、転倒にいたるおそれもある。
そこで、本出願人は、特開2012−192013号公報(特許文献2)や特開2014−018536号公報(特許文献3)などにおいて、使用者の股関節を挟んだ腰側に装着される第一の装着部と、使用者の股関節を挟んだ膝側に装着される第二の装着部との間に跨って、柔軟性を有する補助力伝達部を配して、第一の装着部で支持される駆動源による引張方向のアシスト力を当該補助力伝達部を介して及ぼす柔軟構造の歩行補助装置を提案した。これら特許文献2,3で開示した歩行補助装置では、脚を持ち上げる動作を柔軟な紐やテープ、リボンなどを用いた伝力構造で補助することから、例えば側方への脚の動きを過度に制限することがなく、側方への転倒なども自発的な脚部動作で回避することが可能になる。
ところで、特許文献2,3に記載の柔軟構造の歩行補助装置では、継続的な歩行運動に際して、使用者の膝部を持ち上げる補助力が、膝側に装着された第二の装着部に対して上方への引き上げ力として繰り返し作用することから、第二の装着部を使用者の脚部に対してしっかりと位置決めして固定的に装着することが必要となる。第二の装着部が上方にずれてしまうと、膝部を持ち上げる方向の力が有効に及ぼされ難くなり、目的とする歩行補助の効果を得難くなるからである。
しかしながら、第二の装着部を膝側の脚部に強く巻き付けてしっかりと固定すると、歩行に際しての膝側の装着部の動きが比較的に大きいこととも相俟って、第二の装着部の装着に痛さを伴うこととなり、快適な使用ができなくなることが判った。
また、本発明者は、かかる問題に対して、クッション性のある柔らかい素材で第二の装着部を形成することも検討したが、そうすると、歩行補助力の作用に伴って第二の装着部が変形したりずれたりすることが避けられず、十分な大きさの歩行補助力を長時間に亘って安定して作用させることが困難であった。
特開2012−120789号公報 特開2012−192013号公報 特開2014−018536号公報
本発明は、上述の事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、使用者の自発的な運動を阻害しない柔軟構造を採用しながら、第二の装着部における膝側への正しい装着状態を良好に且つ安定して保つことが可能とされた、新規な構造の歩行補助装置を提供することにある。
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。
本発明の第一の態様は、柔軟性を有しており使用者の大腿部の前側に配される補助力伝達部と、該補助力伝達部の上側端部に設けられて使用者の股関節を挟んだ腰側に装着される第一の装着部と、該補助力伝達部の下側端部に設けられて使用者の股関節を挟んだ膝側に装着される第二の装着部と、該第一の装着部によって支持されて該補助力伝達部に対して引張方向のアシスト力を及ぼす駆動源とを、含んで構成された歩行補助装置において、前記第二の装着部が厚さ方向に重ね合わされて相互に連結された内層および外層の少なくとも二つの異なる生地層からなる複合構造とされて使用者の脚部の膝側に対して周方向に巻き付けられて装着されるようになっており、人体側の該内層が該外層よりも伸縮性の大きい高伸縮性の生地層とされていると共に、該外層が使用者の膝部において全周に亘って装着されるようになっており、前記補助力伝達部によるアシスト力が該外層に及ぼされるようになっている一方、該第二の装着部の少なくとも一方の周方向端部で該内層と該外層が相互に独立とされており、該内層の周方向端部を人体への巻き付け状態で固定する内層用固定具と、該外層の周方向端部を人体への巻き付け状態で固定する外層用固定具とが、設けられていることを特徴とする。
本態様に従う構造とされた歩行補助装置によれば、アシスト力が及ぼされる外層と人体表面との間に、高伸縮性の生地層からなる内層が介在されることとなり、かかる内層が人体表面に追従して伸縮変形することで、外層による人体への巻付固定力ひいては補助力の伝達性を確保しつつ、外層の人体に対する擦れや局所的に集中した力の作用が軽減されて苦痛が抑えられることで装着感が向上される。
しかも、内層と外層は、内層用固定具と外層用固定具によって、各別に人体へ巻き付けて装着することが可能とされている。それ故、例えば外層を比較的強い力で巻き付けて補助力伝達部による膝側へのアシスト力の伝達効率を確保しつつ、内層を緩めに巻き付けることで内層の伸縮作用により人体表面への負担の一層の軽減を図るなどといった、使用者毎の個人的な状況にも柔軟に対応することが可能になる。
なお、本態様において、内層用固定具および外層用固定具は、内層および外層を人体への巻き付け状態で解除可能に固定し得るものであれば良く、例えば面ファスナーの他、フックやボタンなどが好適に採用される。
また、内層および外層の伸縮性の具体的程度は、補助力伝達部に作用する駆動力の大きさや使用する個人の状態や嗜好などを考慮して設定されるものであって限定されるものでないが、好ましくは、内層の伸縮性は20Nの力で引っ張ったときの延び率が5%以上とされる一方、外層の伸縮性は20Nの力で引っ張ったときの延び率が5%未満とされる。より好ましくは、20Nの力で引っ張ったときの延び率が10%以上の生地が内層として採用される。
更にまた、内層および外層としては、織物や編物からなる生地層が好適に採用されることとなり、繊維自体が伸縮性を有していることは必須でなく、例えば織編構造によって適切な伸縮性を設定したものが採用可能である。
本発明の第二の態様は、第一の態様に係る歩行補助装置において、前記内層と前記外層とが分離可能に連結されているものである。
本態様の歩行補助装置においては、例えば内層と外層を面ファスナーや止め金(hook)などで分離可能に固定されていることにより、補修や保守を容易に行うことができるし、また、使用者の嗜好や状況などに応じて複数種類の内層や外層の組み合わせを適宜に変更することも可能となる。例えば、人体側に配される内層だけを取り外して洗濯等することも容易となる。
本発明の第三の態様は、第一の態様に係る歩行補助装置において、前記内層と前記外層とが分離不能に連結されているものである。
本態様の歩行補助装置においては、例えば内層と外層を縫い合わせたり接着などで一体的に固定することにより、一体的な取り扱いが容易となると共に、内層と外層が不用意に外れたり相互の位置合わせが不良になるなどの不具合も防止される。
本発明の第四の態様は、第一〜三の何れか一つの態様に係る歩行補助装置において、前記補助力伝達部が前記外層に対して固定されているものである。
本態様の歩行補助装置においては、伸縮性の小さい外層に対して補助力伝達部が固定されていることにより、補助力伝達部から膝側に及ぼされるアシスト力の伝達効率をより効率的に確保することが可能になる。なお、補助力伝達部の外層への固定構造としては、縫い付けの他、面ファスナーなども採用され得る。また、補助力伝達部は外層に対してアシスト力を及ぼし得る構造で固定されていれば良く、例えば補助力伝達部を外層と内層の両方に固定することも可能であり、補助力伝達部を内層に縫い付けると共に外層に対して面ファスナーで着脱可能に固定することなども可能である。
本発明の第五の態様は、第一〜四の何れか一つの態様に係る歩行補助装置において、前記第二の装着部が使用者の膝下に巻き付けられて装着されるようになっていると共に、前記補助力伝達部の下側端部が前記第二の装着部に向かって二股形状とされているものである。
本態様の歩行補助装置においては、第二の装着部が使用者の膝下に装着されることで、膝下の下腿部に対して膝を中心とした前方に振り出す運動に対してもサポート力を及ぼすことが可能になる。これにより、前記特許文献3に記載されているように、下腿部の振子状の運動を活用して大腿部を持ち上げる運動と組み合わせた歩行補助も、効率的に実現可能となる。
また、その際に、第二の装着部の上方で二股形状とされた補助力伝達部の下側端部において、膝頭を前方に露出させることができるから、膝部への拘束が軽減されると共に、膝頭の擦れによる装用時の不快感や痛みなども回避され得る。
本発明の第六の態様は、前記第一〜五の何れか一つの態様に係る歩行補助装置において、前記内層と前記外層との間には補助層が重ね合わされて該内層と該外層の少なくとも一方に連結されており、該補助層の伸縮性が該外層より大きく且つ該内層より小さいものである。
本態様の歩行補助装置においては、内層と外層の間に補助層を設けたことにより、伸縮性が大きい内層の最大伸び量を制限する等して耐久性の向上を図ることができる。また、内層と外層の間に補助層を設けることで、内層と外層を直接に重ね合わせて固定する場合に比して、内層と外層の伸縮性差が大きい場合にも、内層の伸縮性が外層によって過度に損なわれることを防止しつつ、外層によるサポート力の伝達効率や使用者への巻付固定力の向上などを図ることが可能になる。
なお、内層をより効率的に補強して耐久性を向上させる目的から、補助層は内層に対して直接的に連結されていることが望ましい。
本発明の第七の態様は、前記第一〜六の何れか一つの態様に係る歩行補助装置において、前記内層と前記外層との間に緩衝層が設けられており、該緩衝層が該内層と該外層の少なくとも一方に連結されているものである。
本態様の歩行補助装置においては、伸縮性が小さい外層の締め付けに伴う装用感の低下を緩衝層の緩衝作用で軽減することが可能になる。
なお、本態様における緩衝層としては、スポンジなどを採用することも可能であるが、伸縮性が外層より大きく且つ内層より小さい素材を採用することで、前記第六の態様における補助層を兼ね備えた緩衝層とすることも可能である。例えば、パイル織り構造で弾性を付与した生地層を内層の外側面に重ねて周囲などを縫い付けることにより、補助層を兼ねた緩衝層を構成することも可能である。
本発明の第八の態様は、前記第一〜七の何れか一つの態様に係る歩行補助装置において、使用者の肩部に掛けられる肩掛部を備えており、該肩掛部から下方に垂れ下がった吊り部の下端が前記第一の装着部に取り付けられて懸吊するサスペンダーが設けられているものである。
本態様の歩行補助装置においては、第一の装着部がサスペンダーを介して使用者の肩部で吊り支持されることで、アシスト力の反力によって下がることを防止することができる。それ故、本発明に従う構造とされた第二の装着部が安定した位置決め作用を発揮することと相俟って、第一の装着部と第二の装着部により、使用者の腰側と膝側との間へアシスト力が一層安定して及ぼされて目的とする歩行補助が更に効果的に達成され得ることとなる。
本発明に従う構造とされた歩行補助装置では、第二の装着部を構成する内層の伸縮性が外層よりも大きくされていることから、歩行に伴い内層が伸縮変形することで良好な装着状態が確保されるとともに、伸縮性の小さい外層により歩行補助のためのアシスト力を脚部に効率的に伝達することができる。
本発明の一実施形態としての歩行補助装置の正面図。 図1に示される歩行補助装置の背面図。 図1に示される歩行補助装置のハードウェア構成の概要を示すブロック図。 図1に示される歩行補助装置を構成する第二の装着部の展開状態での正面図。 図4に示される第二の装着部の要部を拡大して示す底面図。 図4に示される第二の装着部を構成する内側部材を展開状態で示す背面図。 図6に示される内側部材の要部を拡大して示す底面図。 図4に示される第二の装着部を構成する外側部材を展開状態で示す背面図。 図8に示される外側部材の要部を拡大して示す底面図。 本発明に係る歩行補助装置を構成する第二の装着部の別態様を説明するための説明図。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
先ず、図1,2には、本発明の一実施形態としての歩行補助装置10が示されている。この歩行補助装置10は、左右一対の補助力伝達部12,12を備えており、それぞれの補助力伝達部12,12の上側端部に共通に設けられた第一の装着部14が使用者Aの股関節を挟んだ腰側に装着される一方、それぞれの補助力伝達部12,12の下側端部に設けられた第二の装着部16,16が使用者Aの股関節を挟んだ膝側に装着されている。そして、左右の補助力伝達部12,12のそれぞれが、第一の装着部14に支持された左右一対の駆動源18,18に連結されており、これら駆動源18,18が補助力伝達部12,12に対して引張方向のアシスト力を及ぼすことにより、使用者Aの歩行が補助されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、鉛直方向となる図1中の上下方向を言う。また、前後方向とは、使用者Aの前後方向となる図1中の紙面手前奥方向を言う一方、左右方向とは、使用者Aの左右方向となる図1中の右左方向を言う。
より詳細には、補助力伝達部12,12のそれぞれは、柔軟性(可撓性)を有する帯状体であって、例えば衝撃的な荷重作用を軽減するなどの目的で弾性的な伸縮材を採用することも可能であるが、本実施形態では伸縮変形量が十分に小さく制限された実質的に非伸縮性のものとされて力の伝達効率やレスポンス性能の向上が図られている。補助力伝達部12の形成材料は特に限定されるものではなくワイヤー等も採用可能であるが、例えばポリエステル、ナイロン、麻、綿、ポリウレタンなどの繊維による織物、皮革、樹脂テープなどが好適に採用される。また、補助力伝達部12,12の中間部分には、長さを調節するための調節金具20,20が設けられており、補助力伝達部12,12の長さが体格などに応じて調節可能とされている。なお、補助力伝達部12が柔軟性(可撓性)を有するとは、補助力伝達部12が厚さ方向や幅方向に容易に曲げ変形可能とされていることを意味しており、好適にはねじれ方向にも容易に変形可能とされる。
かかる補助力伝達部12,12の下側端部には、後述するメス型バックル62,62と連結可能なオス型バックル21,21が取り付けられている一方、補助力伝達部12,12の上側端部には第一の装着部14が設けられており、当該第一の装着部14が、使用者Aの腰部に巻き付けられるベルト部22を備えている。
このベルト部22は、布や皮革などで形成された実質的に非伸縮性で柔軟な帯状とされており、両端部を相互に連結する連結手段24を備えている。この連結手段24は、例えば面ファスナーやフック、ボタン、スナップ、磁石などで構成され得て、連結手段24によってベルト部22の両端部が着脱可能に連結されるようになっている。本実施形態では、連結手段24が面ファスナーとされており、ベルト部22の両端部に設けられた面ファスナーを相互に貼り合わせることによりベルト部22の両端部が相互に連結されて、ベルト部22が環状をなすようにされている。
また、第一の装着部14のベルト部22は袋状とされて、図示しない内部空所を備えており、かかる内部空所には、図3にハードウェアの機能ブロック図が示されているように、左右一対の駆動源18,18と制御装置26および電源装置28が配されている。なお、内部空所は、例えばベルト部22を長さ方向に延びる折れ線に沿って折り曲げて、折り曲げた両側の端部を相互に縫い合わせるなどして形成される。
駆動源18,18はそれぞれ、電動モータ30,30を備えている。電動モータ30は、好適には回転位置を検出して正逆両方向の回転量を制御することができるサーボモータ等が採用される。そして、電源装置28からの通電によって駆動される電動モータ30,30の駆動軸における回転駆動力が、適宜の減速歯車列を介して、図示しない回転軸に伝達されるようになっており、電動モータ30,30と減速歯車列と回転軸とを含んで本実施形態の駆動源18,18が構成されている。この回転軸は、周方向への回転が許容されるように支持されたロッド状の部材であって、その外周面に補助力伝達部12,12の上側端部が固定されることで、回転軸の回転方向に応じて補助力伝達部12が巻取り又は送り出しされるようになっている。
また、電動モータ30の駆動力は、制御装置26によって制御されている。制御装置26は、図3に示すように、ROMやRAM等の記憶手段を備えたコントローラ32と、かかるコントローラ32からの指令値に従って電源装置28から電動モータ30,30へ電力を給電するドライバ34を含んで構成されている。なお、本実施形態では、使用者Aのそれぞれの脚部にジャイロセンサなどの関節角度センサ36,36が設けられて、使用者Aの左右脚部における股関節角度が検出可能とされているとともに、補助力伝達部12,12のそれぞれにロードセルなどの荷重センサ38,38が設けられて、補助力伝達部12,12に及ぼされる引張荷重が検出可能とされている。そして、制御装置26には、予め制御用プログラムが記憶されており、左右の関節角度センサ36,36から得られる股関節角度の検出値と、左右の荷重センサ38,38から得られる補助力伝達部12に及ぼされている引張荷重の検出値とに基づいて、使用者Aの歩行の際におけるアシスト力の大きさや作用タイミングを制御すると共に、補助力伝達部12,12に歩行動作の邪魔にならない程度の引張力を継続的に及ぼして補助力伝達部12,12の弛みの発生などを防止するようになっている。特に、本実施形態では、左右の電動モータ30,30への給電制御が各別に制御されることで、使用者Aの左右脚部に及ぼされるアシスト力が各別に独立して制御され得るようになっている。
さらに、第一の装着部14にはサスペンダー40が設けられており、当該サスペンダー40に懸架されることで第一の装着部14の下方への変位(ずり下がりなど)が防止されるようになっている。このサスペンダー40はズボン吊状のものであって、本実施形態では、二本のバンド41,41から構成されている。これらそれぞれのバンド41,41において、図1に示される正面視では、使用者Aの肩部に掛けられる肩掛部42,42の長さ方向一方の端部から下方に垂れ下がった吊り部44,44の下端が第一の装着部14の前方側に取り付けられている。一方、図2に示される背面視では、肩掛部42,42の長さ方向他方の端部から延びる吊り部44,44が相互に交差して、それらの下端が第一の装着部14の後方側に取り付けられている。なお、吊り部44,44にはアジャスタ48,48が設けられており、サスペンダー40(吊り部44,44)の長さが調節可能とされている。尤も、サスペンダーの構造は何等限定されるものではなく、本実施形態の如き、いわゆるX型のものの他、Y型やH型、ホルスター型、サイド吊り型等の各種公知の構造が採用され得る。
一方、第二の装着部16,16のそれぞれは、図4,5に示されているように、内側部材50と外側部材52とから構成されている。これら内側部材50と外側部材52とはそれぞれ帯状の部材とされており、内側部材50と外側部材52とが厚さ方向で相互に重ね合わされて連結されることで、第二の装着部16,16が、二つの異なる生地層の複合構造として構成されている。なお、図4にも示されるように、展開状態において、内側部材50と外側部材52のそれぞれの一方の端部(図4中の左方の端部)は相互に位置合わせされているとともに、内側部材50の長さ寸法(図4中の左右方向寸法)は外側部材52より短くされており、他方の端部側では内側部材50よりも外側部材52が突出している。また、内側部材50の幅寸法(図4中の上下方向寸法)は、外側部材52より大きくされている。特に本実施形態では、内側部材50と外側部材52の下端縁部が略同じとされている一方、内側部材50の上側縁部が外側部材52から上方に大きく延び出しており、例えば外側部材52が上方にずれた場合でも、内面が内側部材50で覆われた状態に維持されるようになっている。なお、図5中では、図中の下側が、第二の装着部16を使用者Aの膝部に巻き付けて装着する際に内側となる側である。
内側部材50は、図6,7にその展開状態が示されているように、全体として帯状とされており、外側部材52よりも大きな柔軟性(可撓性)を有している。この内側部材50は、第二の装着部16,16を使用者Aに装着した際に、人体側である内側(図7中の上側)に位置する内層54を含んで構成されている。内層54は、内側部材50の全長に亘って延びている。
この内層54は、後述する外層64よりも伸縮性の大きい高伸縮性の生地層とされており、例えばポリエステル、ナイロン、麻、綿、ポリウレタンなどの繊維(本実施形態ではナイロン繊維)を、編んだ生地からなっており、ニット状とされることで伸縮性の大きい高伸縮性の生地層とされている。具体的には、10〜100d(デニール)程度の細径の樹脂糸をプレーン編や交編などで編んだストッキングのような薄く柔軟で且つ伸縮性の高い生地層が好適である。また、ポリエステルやナイロンのように繊維自体が伸縮性を有している必要はないが、伸縮性のあるエラストマー繊維を用いた織物などにより高伸縮性の内層54を構成することも可能である。
そして、このような内層54は、例えば20Nの力で引っ張ったときの延び率が少なくとも上下方向で5%以上とされることが好適である。より好適には、20Nの力で引っ張ったときの延び率が何れの面方向においても10%以上の内層54が採用される。
さらに、内層54の内側面における一方(図6,7中の右方)の端部には、所定の長さに亘って、面ファスナーのオス面56が設けられている。なお、以下の説明において、面ファスナーのオス面は、面ファスナーを構成する無数の鉤状の突起を有するものとする一方、面ファスナーのメス面は、面ファスナーを構成する無数のループ状の突起を有するものとする。尤も、面ファスナーの具体的構造は限定されるものでない、また、図中では、オス面とメス面を何れも突起構造を省略した外形としての長方形状をもって示す。
一方、内層54の外側面には、当該内層54よりも伸縮性の小さい補助層58が重ね合わされて接着や縫製などにより連結されている。この補助層58は、内層54と略同形状とされており、内層54の外側面の略全面に亘って設けられている。そして、内層54に対して当該内層54よりも伸縮性の小さい補助層58が重ね合わされていることにより、内層54の過剰な伸縮を制限することも可能となっている。なお、内層54と補助層58における接着や縫製などの連結構造は、部分的、分散的、局所的等には両者を一体化するとしても、両者を全面に亘って一体化するものでないことから、補助層58の連結状態においても、内層54による伸縮性は発揮され得る。
かかる補助層58は、例えば綿などの材質によるフレンチパイルとされており、内側部材50を使用者Aの膝部に巻き付けて装着した際に、内層54の内側面における一方の端部に設けられた面ファスナーのオス面56とフレンチパイルとされた補助層58とが相互に連結されるようになっている。すなわち、内側部材50(内層54)を使用者Aに巻き付けた際に内側部材50(内層54)の周方向端部を固定する内層用固定具が、面ファスナーのオス面56と補助層58とにより構成されている。特に、補助層58は、内層54の略全長に亘って設けられており、オス面56との固定位置が任意に調節可能とされている。
また、内側部材50の補助層58には、一本の帯状のベルトを長さ方向の略中央で折り返すことにより二股形状とされた二股状ベルト60が取り付けられている。この二股状ベルト60は、一本のベルトがメス型バックル62を介して折り返されており、図6などに示される内側部材50の展開状態において、ベルトの両端部が内側部材50の長さ方向で相互に離隔するようにされることで、正面視または背面視において下方に向かって分かれて相互に離れるように広がる二股形状とされている。そして、メス型バックル62は内側部材50の上方に位置しており、二股状ベルト60が内側部材50から上方に突出するようになっているとともに、二股状ベルト60の両端部が補助層58、および必要に応じて内層54に対して、補助層58の外側から縫い付けられて、固定されている。なお、二股状ベルト60の両端部における縫製部分を、図6中において二点鎖線で示す。
一方、外側部材52は、図8,9にその展開状態が示されているように、全体として帯状とされており、柔軟性(可撓性)を有している。この外側部材52は、第二の装着部16,16を使用者Aに装着した際に、内層54よりも外側(図5中の上方および図9中の下方)に位置する外層64を含んで構成されている。外層64は、外側部材52の全長に亘って延びている。
この外層64の材質としては、内層54と同様の実質的に伸縮性を有しない繊維(本実施形態ではポリエステル繊維)を、平織や綾織などで織ることで、内層54よりも伸縮性が小さい生地層とされている。なお、かかる外層64を、不織のシート状とされた樹脂の生地層で構成することも可能であるが、繊維の織物を採用することにより柔軟性や耐久性の向上が図られ得る。特に、本実施形態では、外層64の伸縮性は補助層58よりも小さくされている。
そして、このような外層64は、例えば20Nの力で引っ張ったときの延び率が少なくとも上下方向で5%未満とされることが好適である。より好適には、20Nの力で引っ張ったときの延び率が何れの面方向においても3%未満の外層64が採用される。
また、外層64の内側面における他方(図8,9中の左方)の端部には、所定の長さに亘って、面ファスナーのメス面66が設けられている。さらに、外側部材52の一方の端部側では、所定の長さに亘って、外層64が内側に二重とされており、当該二重とされた部分の内側面の略全面に亘って面ファスナーのオス面68が設けられている。更にまた、かかるオス面68の内側には、他方の端部から所定の長さに亘って、後述する内側部材50と外側部材52との連結時に、部分的に連結を阻止する連結阻止層70が固着されている。なお、本実施形態では、かかる連結阻止層70がナイロン製の織製された布又は不織のシートからなる生地層により形成されている。
一方、外層64の外側面には、略全面に亘って、面ファスナーのオス面72が設けられているとともに、当該オス面72の一方の端部には、所定の長さに亘って、固定部74が分離可能に取り付けられている。すなわち、かかる固定部74は、外層64と同様の材質で形成された基層76の内側面に面ファスナーのメス面78が設けられるとともに、基層76の外側面に面ファスナーのオス面80が設けられた構造とされており、外層64の外側面に設けられた面ファスナーのオス面72と固定部74の内側に設けられたメス面78とが連結することにより、オス面72の一方の端部に固定部74が取り付けられている。なお、外層64に対する面ファスナーのオス面68,72およびメス面66などの取付けは縫製によってなされており、かかる縫製の部位を図8中に二点鎖線で示す。
かかる構造とされた外側部材52では、使用者Aの膝部に巻き付けて装着する際に、外側部材52の外面側の一方の端部に設けられた固定部74のオス面80と、外側部材52の内面側の他方の端部に設けられたメス面66とが連結するようになっている。すなわち、これら面ファスナーのオス面80とメス面66によって、外層64を巻き付け状態で固定する外層用固定具が構成されている。なお、固定部74は、外層64に対して取外し可能であることから、外側部材52の長さ方向における固定部74の位置を任意に調節することができて、外層用固定具による固定位置が任意に調節可能とされている。
上記の如き構造とされた内側部材50と外側部材52とを相互に重ね合わせて固定することで、本実施形態の第二の装着部16が構成されている。すなわち、内側部材50の外側に設けられたフレンチパイルの補助層58と、外側部材52の内側に設けられた面ファスナーのオス面68とが相互に重ね合わされて連結されることにより、内側部材50(内層54)と外側部材52(外層64)とが分離可能に連結されている。なお、外側部材52の内側に設けられたオス面68には、他方の端部において連結阻止層70が設けられていることから、オス面68と補助層58とは全面に亘って連結するものではなく、内側部材50(内層54)および外側部材52(外層64)の他方の端部は、相互に独立している。
また、内側部材50の補助層58に設けられた二股状ベルト60は、補助層58が外側部材52の内側に設けられたオス面68に連結していることから、間接的に外側部材52(外層64)に設けられることとなる。
以上の如き構造とされた歩行補助装置10は、第一の装着部14が使用者Aの腰部に装着されるとともに、第二の装着部16,16が使用者Aの両膝部、特に膝下に装着される。すなわち、第一の装着部14におけるベルト部22が使用者Aの腰部に巻き付けられて、連結手段24により固定される。また、第一の装着部14に取り付けられるサスペンダー40により、第一の装着部14が使用者Aの肩部から懸架される。この際、第一の装着部14に駆動源18,18を介して取り付けられる一対の補助力伝達部20,20が使用者Aの前方に位置するようになっている。
一方、第二の装着部16,16は、二股状ベルト60,60が使用者Aの前方に位置するように位置合わせされるとともに、内側部材50を内側(人体側)にして膝部において膝関節よりも下方で周方向に巻き付けられる。すなわち、第二の装着部16,16を使用者Aのそれぞれの膝下に巻き付けて、内側部材50,50を内層用固定具(内層54内側面に設けられたオス面56および内層54外側面に設けられた補助層58)により巻き付け状態で固定した後に、外側部材52,52を外層用固定具(外層64内側面に設けられたメス面66および外層64外側面に設けられたオス面80)により巻き付け状態で固定することにより、第二の装着部16,16が使用者Aの両膝部に取り付けられる。
そして、内側部材50,50から上方に突出する二股状ベルト60,60に連結されたメス型バックル62,62と補助力伝達部12,12の下端に設けられたオス型バックル21,21とが相互に連結されることで、駆動源18,18(第一の装着部14)と第二の装着部16,16とが補助力伝達部12,12を介して接続される。これにより、補助力伝達部12,12の下側端部がそれぞれ二股状ベルト60,60で構成されて、第二の装着部16,16に向かって二股形状で延びている。また、オス型バックル21,21とメス型バックル62,62が相互に連結されることで、後述するように、電動モータ26の駆動力により、補助力伝達部12,12が巻き取られて、かかる引張力が、第二の装着部16,16に対してアシスト力として及ぼされる。
なお、この際、第一の装着部14が使用者Aの腰部に装着されるとともに、第二の装着部16,16が使用者Aの両膝下に装着されることから、その間に位置する補助力伝達部12,12は、使用者Aの大腿部の前側を上下方向に延びている。そして、股関節と膝関節の二つの関節を挟んで、腰部と下腿部とに装着された第一の装着部14と第二の装着部16との間に跨がって延びるようにして、各補助力伝達部12,12が配設されている。また、二股状ベルト60,60により形成される空間が使用者Aの膝関節に相当する膝頭の上に位置して当該膝頭が露出可能とされており、使用者Aの膝の屈伸運動を阻害しないようにしつつ、膝下の下腿部に装着された第二の装着部16の前側部分に対して、上方への引張力が補助力伝達部12から効率的に及ぼされ得るようになっている。
さらに、本実施形態では、外層64と内層54とがフレンチパイルからなる補助層58を間に挟んで重ね合わされて連結されており、外層64(外側部材52)の締付けが補助層58で緩衝されて内層54に及ぼされる、または吸収されるようになっている。それ故、本実施形態では、補助層58により外層64の締付けを緩衝する緩衝層が構成されている。
このような構造とされた歩行補助装置10は、図1,2に示すような使用者Aの装着状態において、使用者Aの歩行動作を補助する。即ち、使用者Aが歩行のために脚を持ち上げて振り出す際に、歩行補助装置10のアシスト力が使用者Aの脚部に及ぼされて小さな筋力で脚(大腿部および下腿部)の持上げと振り出しの動作を行うことができる。
より詳細には、補助力伝達部12,12は、左右の関節角度センサ36,36の検出値と、左右の荷重センサ38,38の検出値とに基づいて、使用者Aの歩行動作に対して適切なタイミングで作動する電動モータ26,26によって巻き取られる。これにより、補助力伝達部12,12の自由長が短くなることから、第一の装着部14と第二の装着部16,16の間に接近方向のアシスト力(引張力)が及ぼされて、第二の装着部16,16を装着した使用者Aの左右一方の膝部が持ち上げられるとともに股関節が曲げられる。また、第二の装着部が膝下に巻き付けられていることから、補助力伝達部12からのアシスト力は、下腿部に入力されて大腿部へ及ぼされることとなる。それ故、接地脚が蹴り出されて遊脚とされた際に、大腿部を持ち上げて股関節回りで前方へ送り出す力を補助するのと同時に、下腿部を前方へ振子のように膝関節回りで振り出させる力を補助することとなる。その結果、歩行動作において使用者Aが脚部を持ち上げて接地脚を遊脚に移行させて当該遊脚を前方に送り出す動作が、歩行補助装置10のアシスト力によって小さな筋力で効率的に実行可能となる。
ここにおいて、補助力伝達部12,12によるアシスト力が第二の装着部16,16を介して脚部に及ぼされるが、第二の装着部16,16のそれぞれが伸縮性の大きい内側部材50(内層54)と伸縮性の小さい外側部材52(外層64)とから構成されていることから、アシスト力は、主に外側部材52(外層64)を介して脚部に及ぼされる。
上記の如き構造とされた本実施形態の歩行補助装置10では、使用者Aの両膝部に装着される第二の装着部16が内層54と外層64の二層構造とされており、内層54の方が外層64よりも伸縮性が大きくされていることから、補助力伝達部12に引張力が及ぼされて使用者Aの脚部が持ち上げられる際にも、使用者Aの脚部の表面側に追従して伸縮変形し易くされており、使用者Aの脚部に対する擦れの量が抑えられると共に、局所的な集中荷重の作用も軽減され得る。その結果、使用者Aの脚部と比較的に硬い第二の装着部16が繰り返し同じ部分で局所的に擦れたり局所的に大きく圧迫されたりすることで使用者Aが痛みを感じるなどのおそれが低減され得る。
それに加えて、内層54の外側からは、内層54よりも伸縮性が小さくされた外層64が巻き付けられており、伸縮性の高い内層54を含んで構成される第二の装着部16における膝部への巻付固定力が低下することが防止され得る。特に、本実施形態では、補助力伝達部12の下端に位置する二股状ベルト60が伸縮性の高い内層54に直接には固定されていないことから、補助力伝達部12の引張力が内層54の伸縮変形により吸収されることも回避される。さらに、かかる二股状ベルト60が伸縮性の小さい外層64に固定されていることから、補助力伝達部12の引張力が効率良く第二の装着部16を介して使用者Aの脚部にアシスト力として及ぼされる。
特に、内側部材50(内層54)における内層用固定具、および外側部材52(外層64)における外層用固定具は、それぞれ位置の調節が可能であることから、使用者Aがそれぞれの巻付固定力を各別に自由に調節することができる。
また、本実施形態では、内層54(内側部材50)と外層64(外側部材52)とが、面ファスナーにより分離可能に連結されていることから、例えば伸縮性の異なる複数の内層および外層から一つずつ選択して組み合わせることも可能であり、使用者Aによる巻付固定力の調節が一層容易とされ得る。さらに、内層や外層が汚れたり損傷した場合であっても、それらの洗濯や交換などが容易とされ得る。
更にまた、本実施形態では、内層54と外層64との間に補助層58が設けられており、当該補助層58の伸縮性が、内層54より小さく、且つ外層64より大きくされている。特に、補助層58が内層54に連結されることにより、内層54の耐久性が効果的に向上されるとともに、内層54の過剰な変形などが防止されて補助力伝達部12,12の巻取りに伴う使用者Aの脚部へのアシスト力の伝達効率が向上され得る。
さらに、本実施形態では、膝関節より下方に装着される第二の装着部16に対する補助力伝達部12の連結部分において、略中央に膝頭が出る窓状部分が設けられていることから、下腿部に対して膝関節回りの振子運動を補助する力を、大腿部の前方に配された第二の装着部から第二の装着部16の前部に対して効率的に伝達せしめつつ、膝の擦れなどの問題を回避することができて、良好な装用感が実現され得る。
次に、図10には、本発明に係る歩行補助装置を構成する第二の装着部の別の態様が示されている。前記実施形態では、内側部材50と外側部材52とが一方の端部側(図4,5中の左側)においてそれぞれの端部を合わせた状態で相互に連結されていたが、本態様における第二の装着部82では、展開状態において、外側部材84の長さ方向中間部分に内側部材86が連結されている。なお、これら内側部材86および外側部材84の材質などは、前記実施形態と同様のものが採用され得て、内側部材86(内層)の方が外側部材84(外層)よりも伸縮性が大きくされている。ここで、図10(a)は、第二の装着部82を装着して内層側固定具で内側部材86を使用者の脚部に固定した状態を示す正面図であり、図10(b)はその平面図である。また、図10(c)は、外側固定具で外側部材84を使用者の脚部に固定した状態を示す正面図であり、図10(d)はその平面図である。さらに、図10に示す態様において、前記実施形態と実質的に同一の部材および部位には、図中に、前記実施形態と同一の符号を付すことにより詳細な説明を省略する。更にまた、歩行補助装置における第二の装着部以外の構造は、前記実施形態と同様の構造が採用され得るため、図示を省略する。
本態様では、外側部材84の長さ方向(巻付けの周方向)中間部分に内側部材86が重ね合わされており、内側部材86の長さ方向中間部分において、内側部材86(内層)と外側部材84(外層)とが、縫製や接着などにより相互に分離不能に連結されている。すなわち、内側部材86および外側部材84の長さ方向両端部はそれぞれ相互に独立しており、例えば内側部材86の長さ方向両端部分に内層側固定具が設けられる一方、外側部材84の長さ方向両端部分に外層側固定具が設けられている。なお、二股状ベルト60の両端部(下端部)は、前記実施形態のように、内側部材に対して縫製などで分離不能に固定することも可能であるが、本態様では、内側部材86や外側部材84に対して、例えば面ファスナーなどで取外し可能に固定されており、内側部材86や外側部材84の形状などに応じて二股状ベルト60の取付位置が調節可能とされている。
前記実施形態では、第二の装着部16を膝部の周方向において一周に亘って巻き付けて、内層側固定具で内側部材50を脚部に固定した後、外層側固定具で外側部材52を脚部に固定していたが、本態様では、第二の装着部82を膝部の後方から宛がい、内側部材86の両端部を膝部の前方へ回し込むように巻き付けて、図10(a),(b)に示されているように、両端部に設けられた内層側固定具により膝部の前方で固定している。その後、外側部材84の両端部を膝部の前方へ回し込むように巻き付けて、図10(c),(d)に示されているように、両端部に設けられた外層側固定具により膝部の前方で固定することで、第二の装着部82が使用者Aの脚部に装着される。
上記の如き構造とされた本態様の第二の装着部82を採用した歩行補助装置においても、内側部材86(内層)の方が外側部材84(外層)よりも伸縮性を大きくされていることから、前記実施形態と同様の効果が発揮され得る。特に、本態様の第二の装着部82では、内側部材86および外側部材84のそれぞれの長さ方向両端部が相互に独立状態とされていることから、それぞれの両端部を前方に回し込んで半周に亘って巻き付ければよく、より確実に使用者Aの前方で固定できることから、膝部への装着が更に容易とされ得る。
また、本態様では、内側部材86と外側部材84とが、縫製などにより分離不能に連結されていることから、アシスト力の作用時に、内側部材と外側部材が分離してアシスト力が伝達されないといった不具合の発生などが回避され得る。
以上、本発明の実施形態および実施例について説明してきたが、本発明はかかる実施形態における具体的な記載によって限定的に解釈されるものでなく、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良などを加えた態様で実施可能である。
たとえば、前記実施形態では、内層用固定具および外層用固定具が面ファスナーにより構成されていたが、フックやボタンなどであってもよい。なお、内層用固定具や外層用固定具による内層および外層における周方向端部の固定位置は調節可能とされる必要はない。
また、前記実施形態では、第二の装着部16が、内層54、外層64、補助層58の三つの層を含んで構成されていたが、例えば伸縮性を段階的に異ならせた補助層を厚さ方向で複数設けるなどして、第二の装着部が四つ以上の層を含んで構成されていてもよい。かかる場合には、内側に位置する複数の層を含んで内側部材としたり、外側に位置する複数の層を含んで外側部材としたり、最も内側または外側に位置する層のみにより内側部材や外側部材が構成されてもよい。尤も、補助層は必須なものではなく、第二の装着部が内層と外層の二つの層から構成されていてもよい。
さらに、補助層や緩衝層の具体的な構成も前記実施形態のものに限定されない。緩衝層としてはスポンジなども採用可能であり、補助層と緩衝層とは相互に異なる部材が採用されてもよい。尤も、緩衝層は必須なものではない。また、内層を補助する補助層は外層の内側に連結して設けられてもよいが、内層に直接連結して設けられることが好適である。
更にまた、本発明に係る歩行補助装置を構成する第一の装着部の具体的な構造や補助力伝達部の配設態様などは何等限定されるものではなく、例えば特開2012−192013号公報や特開2014−018536号公報に記載の第二の装着部(16)や補助力伝達帯(12)と同様の構造が採用されてもよい。また、本発明において、使用者の股関節角度を検出する関節角度センサや、補助力伝達部に及ぼされる引張荷重を検出する荷重センサなどは必須なものではなく、駆動源による補助力伝達部の巻き取りまたは送り出しの量やタイミングは、例えばROMやRAMなどの記憶手段に予め記憶させて制御したり、使用者が適宜設定して制御するようにしてもよい。さらに、本発明において、サスペンダーは必須なものではない。
また、前記実施形態では、第二の装着部16が膝下に装着されていたが、第二の装着部は使用者の股関節を挟んだ膝側に装着されていればよく、例えば大腿部に装着されてもよい。
10:歩行補助装置、12:補助力伝達部、14:第一の装着部、16,82:第二の装着部、18:駆動源、40:サスペンダー、42:肩掛部、44:吊り部、54:内層、56:オス面(内層用固定具)、58:補助層(内層用固定具、緩衝層)、64:外層、66:メス面(外層用固定具)、80:オス面(外層用固定具)

Claims (10)

  1. 柔軟性を有しており使用者の大腿部の前側に配される補助力伝達部と、該補助力伝達部の上側端部に設けられて使用者の股関節を挟んだ腰側に装着される第一の装着部と、該補助力伝達部の下側端部に設けられて使用者の股関節を挟んだ膝側に装着される第二の装着部と、該第一の装着部によって支持されて該補助力伝達部に対して引張方向のアシスト力を及ぼす駆動源とを、含んで構成された歩行補助装置において、
    前記第二の装着部が厚さ方向に重ね合わされて相互に連結された内層および外層の少なくとも二つの異なる生地層からなる複合構造とされて使用者の脚部の膝側に対して周方向に巻き付けられて装着されるようになっており、人体側の該内層が該外層よりも伸縮性の大きい高伸縮性の生地層とされていると共に、該外層が使用者の膝部において全周に亘って装着されるようになっており、前記補助力伝達部によるアシスト力が該外層に及ぼされるようになっている一方、該第二の装着部の少なくとも一方の周方向端部で該内層と該外層が相互に独立とされており、該内層の周方向端部を人体への巻き付け状態で固定する内層用固定具と、該外層の周方向端部を人体への巻き付け状態で固定する外層用固定具とが、設けられていることを特徴とする歩行補助装置。
  2. 前記内層と前記外層とが分離可能に連結されている請求項1に記載の歩行補助装置。
  3. 前記内層と前記外層とが分離不能に連結されている請求項1に記載の歩行補助装置。
  4. 前記補助力伝達部が前記外層に対して固定されている請求項1〜3の何れか一項に記載の歩行補助装置。
  5. 前記第二の装着部が使用者の膝下に巻き付けられて装着されるようになっていると共に、前記補助力伝達部の下側端部が該第二の装着部に向かって二股形状とされている請求項1〜4の何れか一項に記載の歩行補助装置。
  6. 前記内層と前記外層との間には補助層が重ね合わされて該内層と該外層の少なくとも一方に連結されており、該補助層の伸縮性が該外層より大きく且つ該内層より小さい請求項1〜5の何れか一項に記載の歩行補助装置。
  7. 前記内層と前記外層との間に緩衝層が設けられており、該緩衝層が該内層と該外層の少なくとも一方に連結されている請求項1〜6の何れか一項に記載の歩行補助装置。
  8. 使用者の肩部に掛けられる肩掛部を備えており、該肩掛部から下方に垂れ下がった吊り部の下端が前記第一の装着部に取り付けられて懸吊するサスペンダーが設けられている請求項1〜7の何れか一項に記載の歩行補助装置。
  9. 前記内層が使用者の膝部において全周に亘って装着されるようになっている請求項1〜8の何れか一項に記載の歩行補助装置。
  10. 前記内層の伸縮性は20Nの力で引っ張ったときの伸び率が10%以上であり、前記外層の伸縮性は20Nの力で引っ張ったときの伸び率が5%未満である請求項1〜9の何れか一項に記載の歩行補助装置。
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