以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1,2には、本発明の第一の実施形態としての歩行補助装置10が示されている。歩行補助装置10は、左右一対の補助力伝達部12,12の一方の端部に第一の装着部14,14が設けられていると共に、他方の端部に第二の装着部16が設けられた構造を有している。なお、以下の説明において、上下とは立位の使用者Aが装着した状態での略鉛直上下方向となる図1中の上下方向を、前後とは使用者Aの前後である図1の紙面直交方向を、左右とは使用者Aの左右である図2中の左右方向を、それぞれ言う。
より詳細には、補助力伝達部12は、柔軟性(可撓性)を有する帯状体であって、本実施形態では伸縮変形量が十分に小さく制限された非伸縮性のものとされている。補助力伝達部12の形成材料は特に限定されるものではないが、例えばポリエステル、ナイロン、麻、綿、ポリウレタンなどの繊維による編み物および織物や皮革などが好適に採用される。また、本実施形態の補助力伝達部12は、下端部が左右に分岐した二股形状とされている。更に、補助力伝達部12の中間部分には、長さを調節するための調節金具18が設けられており、補助力伝達部12の長さを体格などに応じて調節することができる。なお、補助力伝達部12が柔軟性(可撓性)を有するとは、補助力伝達部12が厚さ方向や幅方向に容易に曲げ変形可能とされていることを意味する。また、補助力伝達部12が非伸縮性であるとは、ここでは20Nの力で長さ方向に引っ張った際に伸び率が5%未満であることを意味する。
また、二股形状とされた補助力伝達部12の下端部に第一の装着部14が設けられていると共に、補助力伝達部12の上端部に第二の装着部16が設けられている。第一の装着部14は、使用者Aの股関節を跨いで膝側に装着されるようになっており、本実施形態では膝部に巻き付けられる柔軟なベルト状(帯状体)とされている。更に、第一の装着部14は、ポリエステル、ナイロン、麻、綿、ポリウレタンなどの繊維による編み物および織物などで形成されており、膝関節の屈伸運動による人体表面の変形に追従し得る柔軟性(可撓性)を有していることが望ましい。更にまた、第一の装着部14の両端部には、第一の連結手段20が配されている。この第一の連結手段20は、例えば面ファスナやフック、ボタン、スナップ、磁石などで構成され得て、第一の連結手段20によって第一の装着部14の両端部分が着脱可能に相互に連結されるようになっており、これにより、本実施形態の第一の装着部14は、使用者Aが膝部に巻き付けて装着可能なベルト状とされている。本実施形態では、第一の連結手段20が面ファスナとされており、第一の装着部14の両端部に設けられた面ファスナを相互に貼り合わせることにより第一の装着部14の両端部が相互に連結されて、第一の装着部14が環状とされるようになっている。
なお、第一の装着部14は、膝関節の動きを妨げ難いように、伸縮性を有していることが望ましい。即ち、第一の装着部14は、20Nの力で長さ方向に引っ張った際に伸び率が5%以上とされている。尤も、第一の装着部14が非伸縮性とされることにより、第一の装着部14が膝部の適正な取付位置からずれ難くすることもできる。
そして、第一の装着部14は、補助力伝達部12の下端部に対して着脱不能または着脱自在に取り付けられている。本実施形態では、第一の装着部14が補助力伝達部12の下端部に対して縫い付けられて実質的に着脱不能とされており、第一の装着部14と補助力伝達部12が高強度で取り付けられている。また、補助力伝達部12は、使用者Aの膝部の前面に重ね合わされる第一の装着部14の前部である中央部分に取り付けられていると共に、下端部が左右に分岐する二股形状とされていることにより第一の装着部14に対して装着状態での脚部周りで離れた2箇所において取り付けられている。なお、図1,2に示すように、左右の補助力伝達部12,12に対して第一の装着部14,14の各1つが取り付けられている。
一方、第二の装着部16は、使用者Aの股関節を跨いで腰側に装着されるようになっており、本実施形態では腰部に巻き付けられるベルト部22を備えている。
ベルト部22は、布や皮革などで形成された柔軟な帯状とされており、両端部を相互に連結する第二の連結手段24を備えている。この第二の連結手段24は、例えば面ファスナやフック、ボタン、スナップ、磁石などで構成され得て、第二の連結手段24によってベルト部22の両端部が着脱可能に連結されるようになっている。本実施形態では、第二の連結手段24が面ファスナとされており、ベルト部22の両端部に設けられた面ファスナを相互に貼り合わせることによりベルト部22の両端部が相互に連結されて、ベルト部22が環状をなすようにされている。
また、第二の装着部16のベルト部22は、袋状とされて、図示しない内部空所を備えており、かかる内部空所には、例えば図3にハードウェアの機能ブロック図が示されているように、左右一対の駆動源25,25と制御装置28および電源装置30が配されている。なお、内部空所は、ベルト部22を長さ方向に延びる折れ線に沿って折り曲げて、折り曲げた両側の端部を相互に縫い合すなどして形成される。
駆動源25は、電動モータ26を備えている。電動モータ26は、好適には回転位置を検出して正逆両方向の回転量を制御することができるサーボモータ等が採用される。そして、電源装置30からの通電によって駆動される電動モータ26の駆動軸における回転駆動力が、適宜の減速歯車列を介して、図示しない回転軸に伝達されるようになっており、電動モータ26と減速歯車列と回転軸とを含んで本実施形態の駆動源25が構成されている。この回転軸は、周方向への回転が許容されるように支持されたロッド状の部材であって、その外周面に補助力伝達部12の上端部が固定されており、それら補助力伝達部12と回転軸の固定部分が補助力伝達部12と駆動源25の接続部分32とされている(図1参照)。
そして、上記回転軸が電動モータ26の駆動軸から及ぼされた駆動力によって周方向一方に回転させられることにより、補助力伝達部12が回転軸に巻き取られる。これにより、電動モータ26による駆動力が、補助力伝達部12の長さ方向に伝達されて、第一の装着部14と第二の装着部16に引張方向のアシスト力として及ぼされる。
また、電動モータ26の駆動力は、制御装置28によって制御されている。制御装置28は、図3に示すように、ROMやRAM等の記憶手段を備えたコントローラ34と、かかるコントローラ34からの指令値に従って電源装置30から電動モータ26,26へ電力を給電するドライバ35を含んで構成されている。即ち、制御装置28は、予め制御用プログラムが記憶されており、左右のジャイロセンサからなる関節角度センサ36,36から得られる関節角度の検出値と、左右の荷重センサ38,38から得られる補助力伝達部12に及ぼされている引張荷重の検出値とに基づいて、アシスト力の大きさや作用タイミングを制御すると共に、補助力伝達部12に歩行動作の邪魔にならない程度の引張力を継続的に及ぼして補助力伝達部12の弛みの発生を防止するようになっている。なお、本実施形態では、左右の電動モータ26,26への給電制御が各別に制御されることで、左右の脚に及ぼされるアシスト力が各別に独立して制御され得るようになっている。本実施形態において、関節角度センサ36,36は、使用者Aの左右の脚部の各一方に取り付けられると共に、荷重センサ38,38が補助力伝達部12,12の各一方に取り付けられる。
本実施形態では、駆動源25,25が第二の装着部16のベルト部22において長さ方向の両端部分に配されていると共に、制御装置28がベルト部22において長さ方向の中央部分に配されている。また、電動モータ26,26へ電力を供給する電源装置30は、ベルト部22の長さ方向中央部分に制御装置28とともに配設されており、ドライバ35,35によって電動モータ26,26への給電を制御されている。これらにより、後述する使用者Aが歩行補助装置10を装着した状態において、駆動源25,25が第二の装着部16のベルト部22の前部としての前半部分に取り付けられていると共に、制御装置28および電源装置30が第二の装着部16のベルト部22の後部としての後半部分に取り付けられている。
このような構造とされた第二の装着部16は、左右一対の補助力伝達部12,12の上端部が、一対の電動モータ26,26によって回動せしめられる一対の回転軸の各一方に固定されることにより、左右一対の補助力伝達部12,12の上端部に設けられている。本実施形態において、一対の電動モータ26,26によって回動せしめられる一対の回転軸は、何れも第二の装着部16の前部となる両端部分に配されていることから、補助力伝達部12,12が第二の装着部16の前部に取り付けられている。
そして、補助力伝達部12,12の両端部に設けられた第一の装着部14,14と第二の装着部16は、図1,2に示すように使用者Aに装着される。即ち、第一の装着部14が使用者Aの膝関節の下方で膝部に巻き付けられて装着されると共に、第二の装着部16が使用者Aの腰部に巻き付けられて装着される。これにより、使用者Aが歩行補助装置10を装着した状態において、第一の装着部14,14と第二の装着部16が使用者Aの股関節を挟んで両側に装着されており、第一の装着部14,14と第二の装着部16を繋ぐ補助力伝達部12,12が使用者Aの股関節を跨いで配されている。
また、第一の連結手段20を備えた第一の装着部14の両端部が、使用者Aの膝裏において連結されており、第一の装着部14の中央部分に取り付けられた補助力伝達部12の下端部が、使用者Aの膝部の前面側に配置されている。一方、第二の連結手段24を備えた第二の装着部16の両端部が、使用者Aの腹部において相互に連結されており、第二の装着部16の両端部分に配された駆動源25,25が第二の装着部16の前半部分に配置されていると共に、回転軸を介して電動モータ26,26の出力軸に取り付けられた補助力伝達部12,12の上端部が、使用者Aの腰部の前面側に配置されている。このように、補助力伝達部12,12が第一の装着部14,14の前半部分および第二の装着部16の前半部分に取り付けられており、使用者Aの装着状態において補助力伝達部12,12が大腿部の前方に上下に延びるように配されている。
本実施形態では、第一の装着部14,14が膝部に巻き付けられて装着されると共に、第二の装着部16が腰部に巻き付けられて装着されることから、それら第一の装着部14,14および第二の装着部16の人体への装着が容易であると共に、使用者Aの体格(胴や脚の太さなど)に応じた調節も簡単である。しかも、第一の装着部14,14および第二の装着部16の前後が分かり易く、補助力伝達部12,12が左右各一方の脚部の前方に配された適切な装着状態を容易に実現できる。
ここにおいて、第二の装着部16には、吊り支持部としてのサスペンダ40が取り付けられている。サスペンダ40は、ズボン吊状のものであって、本実施形態では、図1,2に示されてるように、使用者Aの肩部に掛けられる2本のバンド部42,42が使用者Aの背面において交差する、いわゆるX型のものが例示されている。尤も、サスペンダ40としては、Y型やH型、ホルスター型、サイド吊り型等の各種公知の構造が採用され得る。
さらに、本実施形態のサスペンダ40は、バンド部42,42が非伸縮性とされていると共に、各バンド部42の中間部分に長さの調節機構であるアジャスタ44を備えており、使用者Aの体格などに応じてバンド部42の長さを調節できるようになっている。本実施形態のアジャスタ44は金具によって構成されているが、例えば、バンド部42の中間に分断部分を設けて、当該分断部分の接合位置を調節可能とすることでアジャスタ44を構成することもできるし、結び目などでバンド部42に不使用部分を形成して、当該不使用部分の長さを調節することによってバンド部42の実質的な長さを調節するアジャスタ44を構成することもできる。
また、サスペンダ40における各バンド部42の端部には、それぞれ取付部材46が設けられている。取付部材46は、各バンド部42の両端部に設けられており、本実施形態では第二の装着部16のベルト部22に対して着脱自在に取付可能なクリップとされている。尤も、取付部材46は、第二の装着部16に取付可能とされていれば、特に限定されるものではなく、例えば、ボタンやスナップ、面ファスナ、フック、ファスナ、ピン、バックルなどによって構成され得る。
そして、サスペンダ40は、第二の装着部16に取り付けられる。即ち、サスペンダ40のバンド部42,42の一端に設けられた取付部材46,46が、使用者Aの前面に位置する第二の装着部16のベルト部22の両端部分に取り付けられると共に、バンド部42,42の他端に設けられた取付部材46,46が、使用者Aの背面に位置する第二の装着部16のベルト部22の中間部分に取り付けられる。これにより、使用者Aの装着状態において、サスペンダ40は、バンド部42,42の一端が第二の装着部16の前半部分に取り付けられていると共に、バンド部42,42の他端が第二の装着部16の後半部分に取り付けられており、バンド部42,42が使用者Aの肩部の上方を跨いで肩部に掛けられている。本実施形態において、サスペンダ40のバンド部42,42は、第二の装着部16に対して取付部材(クリップ)46で着脱可能に取り付けられている。
そして、バンド部42,42の中間部分が使用者Aの肩部の各一方に掛けられることにより、第二の装着部16がサスペンダ40を介して使用者Aの肩部で支持されて、第二の装着部16の下方への変位(ずり下がりなど)がサスペンダ40によって防止されるようになっている。
さらに、前側の取付部材46,46は、回転軸と補助力伝達部12,12との接続部分32,32に対して、左右方向の内側で第二の装着部16のベルト部22に取り付けられる。更にまた、後側の取付部材46,46は、左右中央を外れた外側においてベルト部22に取り付けられており、本実施形態では後半部分の左右両端部付近において取り付けられている。これらにより、各駆動源25を挟んだ前後両側に各バンド部42のベルト部22への取付部分が設けられていると共に、バンド部42,42のベルト部22への取付位置が駆動源25の近くに設定されている。
本実施形態のサスペンダ40では、バンド部42,42が非伸縮性とされて、使用者Aの体格に応じた伸縮変形は許容されていないが、バンド部42,42の途中に設けられたアジャスタ44,44によってバンド部42,42の長さが調節可能とされていることから、サスペンダ40を使用者Aの体格に応じた適切なサイズに調節して装着することができる。
このような構造とされた歩行補助装置10は、図1,2に示すような使用者Aの装着状態において、使用者Aの歩行動作を補助する。即ち、使用者Aが歩行のために脚を持ち上げて振り出す際に、歩行補助装置10のアシスト力が使用者Aの脚部に及ぼされて小さな筋力で脚の持上げと振り出しの動作を行うことができる。
より詳細には、左右の関節角度センサ36,36と左右の荷重センサ38,38の各検出値に基づいて使用者Aの歩行動作に対して適切なタイミングで作動する電動モータ26,26によって、補助力伝達部12,12が巻き取られる。これにより、補助力伝達部12,12の自由長が短くなることから、第一の装着部14と第二の装着部16の間に接近方向のアシスト力(引張力)が及ぼされて、第一の装着部14を装着した使用者Aの左右一方の膝部が持ち上げられるとともに股関節が曲げられる。その結果、歩行動作において使用者Aが脚部を持ち上げて立脚を遊脚に移行させる動作が、歩行補助装置10のアシスト力によって小さな筋力で実行可能となる。
かくの如き歩行補助装置10による歩行動作の補助において、駆動源25,25の発生力をアシスト力として使用者Aの脚部に伝達する補助力伝達部12,12は、使用者Aの脚部の前方に配されており、アシスト力の反力が第二の装着部16の前半部分に下向きに作用する。ここにおいて、本実施形態では、第二の装着部16の前半部分がサスペンダ40によって使用者Aの肩部に吊り下げられた状態で支持されており、第二の装着部16の下方への変位(ずり下がり)が防止されている。これにより、アシスト力の反力が第二の装着部16によって有効に受けられて、駆動源25の発生力がアシスト力として使用者Aの脚部に効率的に及ぼされると共に、第二の装着部16の位置ずれによって目的とするアシスト力を得難くなるのを防いで、目的とするアシスト力を精度良く且つ安定して得ることができる。
さらに、電動モータ26,26を含む駆動源25,25がベルト部22の前半部分に取り付けられていることから、ベルト部22が捲れるように捻れる方向で電動モータ26,26のトルク反力が作用するが、ベルト部22の前半部分がサスペンダ40によって吊下げ状態で支持されていることにより、ベルト部22の捲れるような捻り変形が防止される。これにより、第二の装着部16の適正な装着状態が維持されて、目的とするアシスト力を有効に得ることができる。
特に本実施形態では、第二の装着部16の前半部分に取り付けられるサスペンダ40のバンド部42,42の一端が、補助力伝達部12,12と駆動源25,25の接続部分32,32よりも左右内側に配されている。これにより、第二の装着部16に及ぼされるアシスト力の反力や電動モータ26,26のトルク反力が、左右のバンド部42,42による支持部分に対して左右内側で第二の装着部16の変位が生じるのを防ぐことができる。
さらに、サスペンダ40のバンド部42,42の他端は、第二の装着部16の後半部分に取り付けられており、第二の装着部16が前半部分だけでなく後半部分においても吊下げ支持されることで、第二の装着部16の適正な装着状態がより安定して維持される。しかも、バンド部42,42の他端は、第二の装着部16の後半部分における左右中央を外れた左右外側に取り付けられており、第二の装着部16の前半部分に取り付けられたバンド部42,42の一端と、第二の装着部16の後半部分に取り付けられたバンド部42,42の他端とが、補助力伝達部12,12と駆動源25,25の接続部分32,32を挟んだ周方向両側に配されている。これにより、バンド部42,42の一端と他端が接続部分32,32に対して大きく離れすぎない位置で接続部分32,32を挟んだ両側に配置されており、アシスト力の反力や電動モータ26,26のトルク反力などがサスペンダ40によって効率的に支持される。加えて、第二の装着部16の後半部分に取り付けられるバンド部42,42の他端が、使用者Aの左右側方に近い位置に配されることにより、使用者Aの上半身の姿勢を正して背筋を伸ばす効果も発揮され得る。
また、サスペンダ40が第二の装着部16に対してクリップ(取付部材46)で着脱自在に取り付けられていることから、電気回路を備えた第二の装着部16から取り外したサスペンダ40を洗濯したり、使用者Aの体格や好み、作用するアシスト力の大きさ等に応じてサスペンダ40を交換したりすることも可能である。
図4には、本発明の第二の実施形態としての歩行補助装置50が示されている。本実施形態の歩行補助装置50は、第二の装着部16に取り付けられる吊り支持部としてのサスペンダ52を備えている。以下の説明において、第一の実施形態と実質的に同一の部材および部位については、図中に同一の符号を付すことにより、説明を省略する。
より詳細には、サスペンダ52は、第一の実施形態のサスペンダ40と同様のX型とされており、バンド部54,54を備えている。このバンド部54は、第二の装着部16の前半部分への取付部分を構成する取付部材56が、左右に分岐した二股形状とされている。この取付部材56は、布や皮革などで形成されており、分岐した各端部にそれぞれボタン穴58が形成されている。そして、左右のバンド部54,54の各取付部材56に設けられたボタン穴58,58に対して、第二の装着部16の前半部分に設けられた取付ボタン60,60が掛止されることにより、サスペンダ52が第二の装着部16に取り付けられている。
さらに、第二の装着部16の前半部分に設けられた取付ボタン60は、左右の補助力伝達部12,12と第二の装着部16における左右の駆動源25,25との接続部分32,32に対して左右両側にそれぞれ配置されている。そして、それら4つの取付ボタン60,60,60,60に対して、サスペンダ52のバンド部54,54の取付部材56,56が取り付けられることにより、サスペンダ52における各バンド部54の取付部材56の両端部が、接続部分32に対する左右両側で第二の装着部16に取り付けられている。
また、サスペンダ52のバンド部54,54には、装着状態で使用者Aの肩部に当接する中間部分に対して、緩衝体としての肩パッド62がそれぞれ設けられている。肩パッド62は、厚さ方向の緩衝作用を有する柔軟なものであって、バンド部54,54における使用者Aの肩部に重ね合わされる面を覆うように、バンド部54,54のそれぞれに対して着脱自在或いは着脱不能に取り付けられている。なお、肩パッド62の構造は特に限定されるものではないが、例えば布製の袋に綿を入れたものや高分子弾性体などが採用される。
このような本実施形態に従う構造とされた歩行補助装置50によれば、第一の実施形態と同様に、駆動源25,25が配されて補助力伝達部12,12が接続された第二の装着部16の前半部分が、サスペンダ52によって使用者Aの肩部に吊下げ状態で支持されることから、第二の装着部16の変位が制限されて、適正な装着状態が維持される。
また、本実施形態の歩行補助装置50では、サスペンダ52のバンド部54,54の取付部材56,56が、左右に分岐した二股形状とされており、バンド部54,54の取付部材56,56が、補助力伝達部12,12と駆動源25,25との接続部分32,32の各一方を挟んだ胴回りの内外両側で第二の装着部16の前半部分に取り付けられている。これにより、アシスト力の反力や電動モータ26,26のトルク反力などがサスペンダ52でより効率的に支持されて、第二の装着部16の位置ずれや捲れなどを効果的に防ぐことができる。
また、サスペンダ52の各バンド部54に肩パッド62が設けられていることにより、アシスト力の反力などが使用者Aの肩部に掛けたバンド部54,54に下向きに作用しても、肩パッド62,62の緩衝作用によってバンド部54,54の肩部への食い込みなどが低減乃至は回避されて、使用者Aの痛みや不快感を防ぐことができる。
図5には、本発明の第三の実施形態としての歩行補助装置70が示されている。歩行補助装置70は、吊り支持部としてのサスペンダ72を備えている。本実施形態のサスペンダ72は、使用者Aの上半身に着用される衣服状の着衣部74に対して、左右のバンド部76,76を設けた構造とされている。
より具体的には、シャツ状とされた着衣部74の胴部が使用者Aの胴部に対して短くされていると共に、かかる着衣部74の胴部から左右のバンド部76,76が下方に延び出している。本実施形態のバンド部76,76は、着衣部74の前半部分だけに設けられていると共に、上端部分が着衣部74にスナップや面ファスナなどで固着される、或いは縫い付けられる等して、着衣部74に対して着脱自在又は着脱不能に取り付けられている。なお、本実施形態のバンド部76,76は、長さの調節機構として第一の実施形態のアジャスタ44と同様のものを設けても良い。
そして、着衣部74が使用者Aの上半身に着用されて使用者Aの肩部に掛けられると共に、バンド部76,76の端部に設けられた取付部材46,46が第二の装着部16の前半部分に取り付けられることにより、使用者Aの肩部によって第二の装着部16が吊下げ状態で支持される。
このような本実施形態に係る歩行補助装置70によれば、使用者Aの肩部に掛けられる部分がシャツ状の着衣部74とされていることから、使用者Aが着衣部74を着るだけでサスペンダ72を簡単に装着することができる。更に、着衣部74が使用者Aの肩部を広い範囲で覆っており、肩部に対するアシスト反力などの荷重の作用面積が大きくされて、荷重が肩部に対して分散して作用することから、使用者Aの痛みや不快感が簡単な構造によって防止される。
なお、本実施形態のサスペンダ72では、バンド部76,76の取付部材46,46がクリップや面ファスナなどの第二の装着部16に対して着脱自在に取付け可能な構造とされることが望ましい。これにより、取付部材46,46を第二の装着部16から取り外した状態で使用者Aが着衣部74を着ることにより、着衣部74の上半身への装着に際して、下半身に取り付けられる補助力伝達部12や第一,第二の装着部14,16などが邪魔になることがなく、装着が容易になる。
また、着衣部74の胴部の下端部と第二の装着部16とに留め具を設けて、それら着衣部74が第二の装着部16に直接取り付けられるようにしても良い。具体的には、例えば、着衣部74の下端部に複数のボタン穴を形成して、それらボタン穴に第二の装着部16のボタンを留めるようにすれば、バンド部76,76を省略することができる。このように、吊り支持部は、バンド部を有するサスペンダ構造に限定されるものではない。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、サスペンダ40の取付部材46,46が、補助力伝達部12,12と駆動源25,25の接続部分32,32よりも左右内側において第二の装着部16に取り付けられていたが、第二の装着部16の前半部分におけるサスペンダ40の取付位置は、例えば、胴回りの周方向左右において接続部分32,32と同じ位置であっても良いし、接続部分32,32よりも外側であっても良い。
また、第一,第二の実施形態では、ベルト状の第二の装着部16が例示されているが、第二の装着部は、例えば使用者Aの膝上または膝下まで或いは足首まで延びたスパッツやレギンスの他、足裏の一部または全体を覆うトレンカやタイツなどのような構造の一部とされていても良く、この場合には第一の装着部と一体的に設けられ得る。尤も、このような一体的に設けられた第一の装着部と第二の装着部であっても、それら第一の装着部と第二の装着部は、たとえば位置ずれを防止するための材質や織り方などの違いによって、他の部分と区別可能とされることが望ましい。更に、第二の装着部は、必ずしも第二の連結手段24によって周上の一部が分離可能に連結されたベルト状に限定されることなく、例えば予めリング状に形成されて周上の全周に亘って分離不能とされていても良い。
また、吊り支持部は、必ずしも第二の装着部に対して着脱可能に取り付けられるものに限定されず、縫い付けられるなどして実質的に着脱不能な状態で一体的に取り付けられていても良い。この場合には、予め相互に連結された第二の装着部と吊り支持部の間に使用者Aが腕部および肩部を差し入れることで、吊り支持部を肩部に掛けることができる。
また、駆動源25,25は、好適には補助力伝達部12,12の接続部分32,32に近い第二の装着部16の前半部分に取り付けられるが、第二の装着部16の後半部分に制御装置28などとともに配することもできる。その場合には、トルク反力による第二の装着部16の後半部分の捲れなどが回避されるように、吊り支持部が第二の装着部16の後半部分にも取り付けられる構造であることが望ましい。また、電動モータ26,26を後半部分に配すると共に、回転軸を前半部分に配して、それら電動モータ26,26と回転軸を減速歯車列などの伝力機構で相互に繋ぐようにしても良い。
また、補助力伝達部12は、人体への接触などを考慮して紐状乃至は帯状のものが望ましいが、特に限定されるものではなく、例えば合成樹脂製のチューブ内に挿通された金属製のワイヤ等で構成することもできる。