JP6627517B2 - 光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの製造方法 - Google Patents

光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、光学フィルム、偏光板、画像表示装置及び光学フィルムの製造方法に関し、より詳しくは、接着剤との親和性及び耐折り曲げ性に優れた光学フィルム、これを備えた偏光板及び画像表示装置、並びに光学フィルムの製造方法に関する。
近年、液晶表示装置等の画像表示装置用途の光学フィルムを構成する材料として、耐水性及び耐久性の観点から、シクロオレフィン樹脂(シクロオレフィンポリマー(COP)ともいう。)が用いられている。
画像表示装置には、偏光子、偏光板保護フィルム等を有する偏光板が搭載されており、この偏光板保護フィルムとして、種々の光学特性を備えた光学フィルム(例えば、位相差フィルム等)を適用することができる。
上記のような偏光板を作製するにあたっては、偏光子と光学フィルムとを接着させる工程が必須となる。
未処理のシクロオレフィン樹脂は、接着剤との親和性(密着性)が低いため、一般に、光学フィルムに対して、表面改質処理、特にコロナ放電処理等が行われているが、コロナ放電処理では接着剤との親和性において未だ十分とは言えない。
これに対し、特許文献1では、コロナ放電処理に代えてプラズマ放電処理を施すことにより、シクロオレフィン樹脂と接着剤との親和性の改善を図っている。
しかし、プラズマ放電処理では、光学フィルムにほこりなど異物がつきやすく、フィルム欠陥、コントラスト低下の原因となってしまう。
他の方法として、特許文献2には、光学フィルムに下塗り層を設けて接着性を改善する方法が開示されている。
しかし、下塗り層を設ける場合、(1)工程数の増加、(2)必要な材料量の増加、(3)下塗り層が剥がれることによる偏光板の収率低下(歩留り低下)等のデメリットがある。
特開2003−121648号公報 特開2015−160434号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、接着剤との親和性及び耐折り曲げ性に優れた光学フィルム、これを備えた偏光板及び画像表示装置、並びに光学フィルムの製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量を特定の数値以上とすることにより、接着剤との親和性及び耐折り曲げ性に優れた光学フィルム、これを備えた偏光板及び画像表示装置、並びに光学フィルムの製造方法を提供できることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくともシクロオレフィン樹脂と、表面調整剤とが含有された光学フィルムであって、
前記表面調整剤が、表面張力40mN/m以下の有機ケイ素化合物であり、
前記光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、前記光学フィルム表面から前記光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、20at%以上であることを特徴とする光学フィルム。
2.前記光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、前記光学フィルム表面から前記光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、20〜90at%の範囲内であることを特徴とする第1項に記載の光学フィルム。
3.前記光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、前記光学フィルム表面から前記光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、40〜80at%の範囲内であることを特徴とする第2項に記載の光学フィルム。
4.前記有機ケイ素化合物が、ポリシロキサン誘導体であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
5.前記光学フィルムの厚さが、5.0〜40.0μmの範囲内であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
6.マット剤として、平均1次粒子径が5〜100nmの範囲内である無機微粒子が含有されていることを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
7.前記光学フィルム中の残留溶媒量が、30〜700質量ppmの範囲内であることを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
8.偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に貼合された偏光板保護フィルムとを有する偏光板であって、
前記偏光板保護フィルムが、第1項から第7項までのいずれか一項に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
9.第8項に記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。
10.第1項から第7項までのいずれか一項に記載の光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法であって、
溶液流延法により製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
本発明の上記手段により、接着剤との親和性及び耐折り曲げ性に優れた光学フィルム、これを備えた偏光板及び画像表示装置、並びに光学フィルムの製造方法を提供することができる。
本発明の効果の発現機構・作用機構については明確になっていないが、以下のように推察している。
本発明は、上記のとおり、表面調整剤として表面張力40mN/m以下の有機ケイ素化合物を採用し、光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量を20at%以上とすることにより、接着剤との親和性及び耐折り曲げ性を向上させるものである。
すなわち、表面調整剤である有機ケイ素化合物は表面張力が低いため、バルク中における分子間力による安定化と、空気界面との接触による不安定化に程度の差がなく、空気界面で安定に存在できるため、フィルムに含有させるとキャスト成膜時などで表面に偏在化できる。この光学フィルムに高エネルギーのコロナ放電処理を行うことにより、有機ケイ素化合物が活性化する。コロナ放電処理により、同時に空気中で生成した酸素ラジカルやオゾン等と、この有機ケイ素化合物とは容易に反応することができ、その結果、光学フィルム表面にヒドロキシ基やカルボキシ基、カルボニル基が発生することとなる。これらの官能基により、接着剤との親和性が向上し、光学フィルムと接着剤との親和性を向上させることができるものと考えられる。
一方で、従来のシクロオレフィン樹脂のみからなる光学フィルムにおいては、コロナ放電処理を行ってもシクロオレフィン樹脂の活性が不十分であり、このシクロオレフィン樹脂と空気中で生成した酸素ラジカル等との反応が起きにくい。すなわち、上記した本発明のような表面改質がされにくいため、接着剤となじむことなく、親和性の改善には至らないものと考えられる。
また、本発明の光学フィルムは単一膜として構成されているため、耐折り曲げ性を向上させることができるものと考えられる。
本発明の光学フィルムは、少なくともシクロオレフィン樹脂と、表面調整剤とが含有され、表面調整剤が有機ケイ素化合物であり、光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が20at%以上であることを特徴とする。この特徴は、各請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、20〜90at%の範囲内であることが好ましく、40〜80at%の範囲内であることがより好ましい。
また、空気界面との親和性及び生産性の観点から、有機ケイ素化合物がポリシロキサン誘導体であることが好ましい。
また、薄膜化の観点から、光学フィルムの厚さが5.0〜40.0μmの範囲内であることが好ましい。
また、搬送性及びヘイズ値低減の観点から、マット剤として、平均1次粒子径が5〜100nmの範囲内である無機微粒子が含有されていることが好ましい。
また、光学フィルム中の残留溶媒量が、30〜700質量ppmの範囲内であることが好ましい。これにより、溶液流延法を用いて本発明の光学フィルムを製造した場合に、金属支持体から剥離する際に良好な平面性を有する膜状物を得ることができる。
また、本発明は、偏光子と、偏光子の少なくとも一方の面に貼合された偏光板保護フィルムとを有し、偏光板保護フィルムが、上記本発明の光学フィルムである偏光板を提供することができる。これにより、ヘイズ値の小さい偏光板とすることができる。
また、上記偏光板を備える画像表示装置を提供することができる。これにより、視認性を向上させることができる。
また、本発明の光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法であって、溶液流延法により製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法を提供することができる。これにより、搬送性が良好であり、ヘイズ値の小さい光学フィルムを製造することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、数値範囲を表す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用している。
《1.光学フィルムの概要》
本発明の光学フィルムは、少なくともシクロオレフィン樹脂と、表面調整剤とが含有され、表面調整剤が表面張力40mN/m以下の有機ケイ素化合物であり、光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が20at%以上であることを特徴とする。
ここで、「光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子」とは、光学フィルムの一方の面(空気界面)側に偏在化する表面調整剤としての有機ケイ素化合物由来のものに限られず、その他のケイ素原子を含む化合物由来のケイ素原子を含む。
以上のように、本発明の光学フィルムは、単一膜でありながらも、特定の表面調整剤(有機ケイ素化合物)のみが含有されていることで、接着剤との親和性、すなわち、偏光子等との接着性、及び耐折り曲げ性を向上させるものである。
光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量は、20〜90at%の範囲内であることが好ましく、40〜80at%の範囲内であることがより好ましい。
上記のとおり、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量の上限は好ましくは90at%以下、より好ましくは80at%以下であるが、これによりバルクとの硬度差が小さく、良好な耐折り曲げ性を得ることができる。
(ケイ素原子の分析:TOF−SIMS)
光学フィルム中におけるケイ素原子の局在状態の確認は、各面を飛行時間型2次イオン質量分析計(TOF−SIMS)やX線光電子分析装置(ESCA)によって分析することで確認することができる。
ここで、飛行時間型2次イオン質量分析法とは、固体試料上の原子や分子の化学情報を1分子層以下の感度で測定でき、特定の原子や分子の分布を100nm以下の空間分解能で観察可能な質量分析法である。飛行時間型2次イオン質量分析法は、2次イオン質量分析法(SIMS)の1種であり、1次イオンビームを固体試料に照射し、その際に試料の最表面から放出されるイオン(2次イオン)を検出することによって、分析が行われる。質量分析計として飛行時間型質量分析計(TOF−MS)が用いられることから、TOF−SIMSと称される。
具体的には、光学フィルムの空気界面側について、TOF−SIMS分析装置を用いて分析する。なお、TOF−SIMS分析は、下記測定条件によって行った。
測定装置:2100TRIFT2(Physical Electronics社製)
測定モード:冷却測定(温度範囲−105〜−95℃)
1次イオン:Ga(15kV)
測定領域:60μm角
積算時間:2分
なお、測定及び解析は、Physical Electronics社製WIN−Cadence Ver4.0.0.14にて行う。
光学フィルム断面に対して上記分析を行い、得られたピークの積分値からケイ素原子の局在率(at%)を算出することができる。
1−1.シクロオレフィン樹脂
本発明の光学フィルムに含有されるシクロオレフィン樹脂は、シクロオレフィン単量体の重合体、又はシクロオレフィン単量体とそれ以外の共重合性単量体との共重合体であることが好ましい。
シクロオレフィン単量体としては、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体であることが好ましく、下記一般式(A−1)又は(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体であることがより好ましい。
Figure 0006627517
一般式(A−1)中、R〜Rは、各々独立に、水素原子、炭素原子数1〜30の炭化水素基、又は極性基を表す。pは、0〜2の整数を表す。ただし、R〜Rの全てが同時に水素原子を表すことはなく、RとRとが同時に水素原子を表すことはなく、RとRとが同時に水素原子を表すことはないものとする。
一般式(A−1)におけるR〜Rで表される炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10の炭化水素基であることが好ましく、炭素原子数1〜5の炭化水素基であることがより好ましい。
炭素原子数1〜30の炭化水素基の例には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が含まれる。
炭素原子数1〜30の炭化水素基は、例えば、ハロゲン原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はケイ素原子を含む連結基を更に有していてもよい。そのような連結基の例には、カルボニル基、イミノ基、エーテル結合、シリルエーテル結合、チオエーテル結合等の2価の極性基が含まれる。
一般式(A−1)におけるR〜Rで表される極性基の例には、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基及びシアノ基が含まれる。中でも、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基が好ましく、溶液成膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基が好ましい。
一般式(A−1)におけるpは、光学フィルムの耐熱性を高める観点から、1又は2を表すことが好ましい。pが1又は2を表すと、得られる重合体が嵩高くなり、ガラス転移温度が向上しやすいためである。
Figure 0006627517
一般式(A−2)中、Rは、水素原子、炭素数1〜5の炭化水素基、又は炭素数1〜5のアルキル基を有するアルキルシリル基を表す。Rは、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基、アミド基、シアノ基、又はハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子若しくはヨウ素原子)を表す。pは、0〜2の整数を表す。
一般式(A−1)におけるRは、炭素数1〜5の炭化水素基を表すことが好ましく、炭素数1〜3の炭化水素基を表すことがより好ましい。
一般式(A−2)におけるRは、カルボキシ基、ヒドロキシ基、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基を表すことが好ましく、溶液成膜時の溶解性を確保する観点から、アルコキシカルボニル基及びアリールオキシカルボニル基がより好ましい。
一般式(A−2)におけるpは、光学フィルムの耐熱性を高める観点から、1又は2を表すことが好ましい。pが1又は2を表すと、得られる重合体が嵩高くなり、ガラス転移温度が向上しやすいためである。
一般式(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体は、有機溶剤への溶解性を向上させる点から好ましい。一般的に有機化合物は対称性を崩すことによって結晶性が低下するため、有機溶媒への溶解性が向上する。一般式(A−2)におけるR及びRは、分子の対称軸に対して片側の環構成炭素原子のみに置換されているので、分子の対称性が低く、すなわち、一般式(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体は溶解性が高いため、光学フィルムを溶液流延法によって製造する場合に適している。
シクロオレフィン単量体の重合体における一般式(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体の含有割合は、シクロオレフィン樹脂を構成する全シクロオレフィン単量体の合計に対して、例えば、70モル%以上、好ましくは80モル%以上、より好ましくは100モル%とし得る。一般式(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を一定以上含むと、樹脂の配向性が高まるため、位相差値が上昇しやすい。
以下、一般式(A−1)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物1〜14に示し、一般式(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体の具体例を例示化合物15〜34に示す。
Figure 0006627517
シクロオレフィン単量体と共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロオレフィン単量体と開環共重合可能な共重合性単量体、及びシクロオレフィン単量体と付加共重合可能な共重合性単量体等が含まれる。
開環共重合可能な共重合性単量体の例には、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘプテン、シクロオクテン、ジシクロペンタジエン等のシクロオレフィンが含まれる。
付加共重合可能な共重合性単量体の例には、不飽和二重結合含有化合物、ビニル系環状炭化水素単量体、(メタ)アクリレート等が含まれる。
不飽和二重結合含有化合物の例には、炭素原子数2〜12(好ましくは2〜8)のオレフィン系化合物が含まれ、その例には、エチレン、プロピレン、ブテン等が含まれる。
ビニル系環状炭化水素単量体の例には、4−ビニルシクロペンテン、2−メチル−4−イソプロペニルシクロペンテン等のビニルシクロペンテン系単量体が含まれる。
(メタ)アクリレートの例には、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の炭素原子数1〜20のアルキル(メタ)アクリレートが含まれる。
シクロオレフィン単量体と共重合性単量体との共重合体におけるシクロオレフィン単量体の含有割合は、共重合体を構成する全単量体の合計に対して、例えば、20〜80モル%の範囲内、好ましくは30〜70モル%の範囲内とし得る。
シクロオレフィン樹脂は、前述の通り、ノルボルネン骨格を有するシクロオレフィン単量体、好ましくは一般式(A−1)又は(A−2)で表される構造を有するシクロオレフィン単量体を重合又は共重合して得られる重合体であり、その例には、以下のものが含まれる。
(1)シクロオレフィン単量体の開環重合体
(2)シクロオレフィン単量体と、それと開環共重合可能な共重合性単量体との開環共重合体
(3)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体の水素添加物
(4)上記(1)又は(2)の開環(共)重合体をフリーデル・クラフツ反応により環化した後、水素添加した(共)重合体
(5)シクロオレフィン単量体と、不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体
(6)シクロオレフィン単量体のビニル系環状炭化水素単量体との付加共重合体及びその水素添加物
(7)シクロオレフィン単量体と、(メタ)アクリレートとの交互共重合体
上記(1)〜(7)の重合体は、いずれも公知の方法、例えば、特開2008−107534号公報や特開2005−227606号公報に記載の方法で得ることができる。例えば、上記(2)の開環共重合に用いられる触媒や溶媒は、例えば特開2008−107534号公報の段落0019〜0024に記載のものを使用できる。上記(3)及び(6)の水素添加に用いられる触媒は、例えば特開2008−107534号公報の段落0025〜0028に記載のものを使用できる。上記(4)のフリーデル・クラフツ反応に用いられる酸性化合物は、例えば特開2008−107534号公報の段落0029に記載のものを使用できる。上記(5)〜(7)の付加重合に用いられる触媒は、例えば特開2005−227606号公報の段落0058〜0063に記載のものを使用できる。上記(7)の交互共重合反応は、例えば特開2005−227606号公報の段落0071及び0072に記載の方法で行うことができる。
中でも、上記(1)〜(3)及び(5)の重合体が好ましく、上記(3)及び(5)の重合体がより好ましい。すなわち、シクロオレフィン樹脂は、得られるシクロオレフィン樹脂のガラス転移温度を高くし、かつ光透過率を高くすることができる点で、下記一般式(B−1)で表される構造単位及び下記一般式(B−2)で表される構造単位の少なくとも一方を含むことが好ましく、一般式(B−2)で表される構造単位のみを含むか、又は一般式(B−1)で表される構造単位と一般式(B−2)で表される構造単位の両方を含むことがより好ましい。一般式(B−1)で表される構造単位は、前述の一般式(A−1)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構造単位であり、一般式(B−2)で表される構造単位は、前述の一般式(A−2)で表されるシクロオレフィン単量体由来の構造単位である。
Figure 0006627517
一般式(B−1)中、Xは、−CH=CH−又は−CHCH−を表す。R〜R及びpは、それぞれ一般式(A−1)のR〜R及びpと同義である。
Figure 0006627517
一般式(B−2)中、Xは、−CH=CH−又は−CHCH−を表す。R、R及びpは、それぞれ一般式(A−2)のR、R及びpと同義である。
本発明に係るシクロオレフィン樹脂は、市販品であってもよい。シクロオレフィン樹脂の市販品の例には、JSR(株)製のアートン(Arton)G(例えば、G7810等)、アートンF、アートンR(例えば、R4500、R4900、R5000等)、及びアートンRXが含まれる。
シクロオレフィン樹脂の固有粘度〔η〕inhは、30℃において、0.2〜5cm/gの範囲内であることが好ましく、0.3〜3cm/gの範囲内であることがより好ましく、0.4〜1.5cm/gの範囲内であることが更に好ましい。
シクロオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)は、8000〜100000の範囲内であることが好ましく、10000〜80000の範囲内であることがより好ましく、12000〜50000の範囲内であることが更に好ましい。
シクロオレフィン樹脂の重量平均分子量(Mw)は、20000〜300000の範囲内であることが好ましく、30000〜250000の範囲内であることがより好ましく、40000〜200000の範囲内であることが更に好ましい。
シクロオレフィン樹脂の数平均分子量(Mn)や重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にてポリスチレン換算にて測定することができる。
固有粘度〔η〕inh、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲にあると、シクロオレフィン樹脂の耐熱性、耐水性、耐薬品性、機械的特性、及びフィルムとしての成形加工性が良好となる。
シクロオレフィン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、通常、110℃以上であり、110〜350℃の範囲内であることが好ましく、120〜250℃の範囲内であることがより好ましく、120〜220℃の範囲内であることが更に好ましい。ガラス転移温度(Tg)が110℃以上であると、高温条件下での変形を抑制しやすい。一方、Tgが350℃以下であると、成形加工が容易となり、成形加工時の熱による樹脂の劣化も抑制しやすい。
シクロオレフィン樹脂の含有量は、光学フィルムに対して70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましい。
1−2.表面調整剤
本発明に係る表面調整剤は、表面張力が40mN/m以下であることを特徴とする。このような表面調整剤を添加することで、表面調整剤をフィルム表面近傍に存在させ、接着剤との親和性を向上させることができる。これに加えて、すべり性の向上ひいては搬送性の向上を達成することができるというものである。
表面調製剤の表面張力は、wilhelmy法(プレート法)により測定する。より詳しくは、wilhelmy板と液体試料とを接触させて歪みを与え、wilhelmy板を液中に引っ張ろうとする力を測定することにより算出する。測定装置としては、株式会社ユービーエム製の動的表面張力測定装置であるレオサーフを用いる。
なお、表面張力の測定は、溶剤の液温と室温とを一定にした後行う。具体的には、室温(25℃)の環境下に溶剤を放置し、溶剤の液温が25℃になった時点で、溶剤の表面張力を測定する。
本発明に係る表面調整剤としての有機ケイ素化合物としては、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量を20at%以上とするものであれば特に限定されず、低分子体であってもよいし、高分子体でもよい。特に好ましくはオリゴマーやポリマーであり、具体的には、ポリシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系化合物、ポリジメチルシロキサン系共重合体等のポリシロキサン誘導体が挙げられる。また、これら化合物を組む合わせたものであってもよい。
ポリシロキサン骨格を有する化合物は、下記一般式(I)で表される構造を有しており、一般式(I)中の繰り返し数n(1以上の数)や有機変性部の種類を変化させることで、表面張力を任意にコントロールすることができる。
Figure 0006627517
上記一般式(I)中のnや有機変性部の種類を変化させる一例として、例えば、下記一般式(II)で表される構造(x及びyは繰り返し数を表す1以上の数、mは1以上の整数)が挙げられ、側鎖を付与することによりシリコーン骨格を変性させることができる。なお、一般式(II)におけるRとしては、例えば、メチル基、エチル基、デキル基等が挙げられる。Rとしては、例えば、ポリエーテル基、ポリエステル基、アラルキル基等が挙げられる。
さらに、下記一般式(III)で表される構造(mは1以上の整数)を有する化合物も用いることが可能であり、シリコーン鎖は数個のSi−O結合からなり、Rに相当する平均1個のポリエーテル鎖等を有する。
このように、一般式(II)で表される構造を有する化合物及び一般式(III)で表される構造を有する化合物いずれにおいても、表面自由エネルギーのコントロールや相溶性の調整を任意に行うことができる。
Figure 0006627517
(ポリシロキサン系化合物)
ポリシロキサン系化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトキエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン等の加水分解性シリル基を有するシラン化合物の部分加水分解物や、有機溶媒中に無水ケイ酸の微粒子を安定に分散させたオルガノシリカゾル、又は該オルガノシリカゾルにラジカル重合性を有する上記シラン化合物を付加させたもの等が挙げられる。
(ポリジメチルシロキサン系化合物)
ポリジメチルシロキサン系化合物としては、ポリジメチルシロキサン、アルキル変性ポリジメチルシロキサン、カルボキシ変性ポリジメチルシロキサン、アミノ変性ポリジメチルシロキサン、エポキシ変性ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン、(メタ)アクリレート変性ポリジメチルシロキサン(例えば、東亞合成(株)製GUV−235)などが挙げられる。
(ポリジメチルシロキサン系共重合体)
ポリジメチルシロキサン系共重合体は、ブロック共重合体、グラフト共重合体、ランダム共重合体のいずれであってもよいが、ブロック共重合体、グラフト共重合体が好ましい。
(市販材料)
また、市販されている材料としてはケイ素原子を有していれば特に限定されないが、例えば以下に記したものを用いることができる。
共栄社化学株式会社製:GL-01、GL-02R、GL-03、GL-04R
日信化学工業株式会社製:シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG008、シルフェイスSAG503A、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG−50、サーフィノール104S、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノール485、サーフィノールSE
信越化学工業株式会社製:FA−600、KC−89S、KR−500、KR−516、X−40−9296、KR−513、X−22−161A、X−22−162C、X−22−163、X−22−163A、X−22−164、X−22−164A、X−22−173BX、X−22−174ASX、X−22−176DX、X−22−343、X−22−2046、X−22−2445、X−22−3939A、X−22−4039、X−22−4015、X−22−4272、X−22−4741、X−22−4952、X−22−6266、KF−50−100cs、KF−96L−1cs、KF−101、KF−102、KF−105、KF−351、KF−352、KF−353、KF−354L、KF−355A、KF−393、KF−615A、KF−618、KF−857、KF−859、KF−860、KF−862、KF−877、KF−889、KF−945、KF−1001、KF−1002、KF−1005、KF−2012、KF−2201、X−22−2404、X−22−2426、X−22−3710、KF−6004、KF−6011、KF−6015、KF−6123、KF−8001、KF−8010、KF−8012、X−22−9002
東レダウコーニング株式会社製:DOW CORNING 100F ADDITIVE、DOW CORNING 11 ADDITIVE、DOW CORNING 3037 INTERMEDIATE、DOW CORNING 56 ADDITIVE、DOW CORNING TORAY Z−6094、DOW CORNING TORAY FZ−2104、DOW CORNING TORAY AY42−119、DOW CORNING TORAY FZ−2222
花王株式会社製:エマルゲン102KG、エマルゲン104P、エマルゲン105、エマルゲン106、エマルゲン108、エマルゲン109P、エマルゲン120、エマルゲン123P、エマルゲン147、エマルゲン210P、エマルゲン220、エマルゲン306P、エマルゲン320P、エマルゲン404、エマルゲン408、エマルゲン409PV、エマルゲン420、エマルゲン430、エマルゲン705、エマルゲン707、エマルゲン709、エマルゲン1108、エマルゲン1118S−70、エマルゲン1135S−70、エマルゲン2020G−HA、エマルゲン2025G、エマルゲンLS−106、エマルゲンLS−110、エマルゲンLS114
表面調整剤は、光学フィルムを構成する材料中の溶剤を除く全成分に対し、0.005〜5質量%の範囲内で含有されていることが好ましい。
1−3.その他の添加剤
本発明の光学フィルムには、更に他の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤としては、例えば、マット剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等が挙げられる。
(マット剤)
マット剤としての微粒子とは、透過型電子顕微鏡により測定した場合における数平均粒子径が400nm以下である粒子を指す。この場合、各粒子の粒径は透過型電子顕微鏡における投影面を同面積の円に換算した場合の直径として定義される。不要な散乱を発生させないためには、微粒子の粒径は可視光の波長より十分に小さいことが好ましく、具体的には、平均1次粒子径が5〜100nmの範囲内であることが好ましい。平均1次粒子経が5nm以上であると、フィルム表面に適度な大きさの凹凸を作るため、搬送ローラーとの接触やフィルム同士の接触時の摩擦低減につながり、搬送性が向上するため好ましい。平均1次粒子経が100nm以下であると、前述した搬送性の向上をフィルムのヘイズ値を低く保ったまま達成できるため好ましい。
微粒子の平均1次粒子径の測定は、透過型電子顕微鏡(倍率50万〜200万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個の粒子径を測定し、その平均値をもって、平均1次粒子径とする。粒子の形状は球状に限定されず、不定形の形状であってもよい。
微粒子としては、無機微粒子であってもよいし、有機微粒子であってもよいが、無機微粒子であることが好ましい。また、有機化合物で表面修飾された無機微粒子であってもよい。
無機微粒子としては、例えば、ケイ素を含む化合物(ケイ素化合物)、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等であることが好ましく、更に好ましくは、ケイ素化合物や酸化アルミニウムであるが、二酸化ケイ素が特に好ましく用いられる。無機微粒子として、二酸化ケイ素を用いることで、搬送性を向上させることができる。
これらは、球状、平板状又は無定形状等の形状の粒子が挙げられる。
二酸化ケイ素の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R972CF、R974、R812、50、200、200V、300、R202、OX50、TT600、R711、RY300、R106、R816、RA200HS、MOX170(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
酸化アルミニウムの微粒子としては、例えば、アエロジルAlu C、Alu130及びAlu C805(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
また、有機微粒子としては、例えば、ポリスチレン樹脂、シリコーン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、メラミン樹脂等、アクリル−スチレン樹脂、メラミン−シリカ等複合されたものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
また、これらの無機微粒子及び有機微粒子は、単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。また、有機微粒子を使用する場合には、単分散における屈折率とシクロオレフィン樹脂との屈折率の差が少ないものを使用することが好ましい。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムは、添加剤として紫外線吸収剤を含有していてもよい。
紫外線吸収剤は、400nm以下の紫外線を吸収するため、光学フィルムの耐久性を向上させることができる。紫外線吸収剤は、特に波長370nmでの光透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
紫外線吸収剤の具体例としては特に限定されないが、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、トリアジン系化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられ、特に好ましくはベンゾトリアゾール系化合物及びベンゾフェノン系化合物である。
紫外線吸収剤としては、より具体的には、例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等を用いることができる。これらは、市販品を用いてもよく、例えば、BASFジャパン社製のチヌビン109(オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ―2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ―2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物)、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328、チヌビン928(2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(1−メチル−1−フェニルエチル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール)等のチヌビン類を好ましく使用できる。
その他、1,3,5−トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特にポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
トリアジン系紫外線吸収剤としては、市販品であるBASFジャパン社製のチヌビン400(2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヒドロキシフェニルとオキシランとの反応生成物)、チヌビン460(2,4−ビス[2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル]−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3−5−トリアジン)、チヌビン405(2−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−4,6−ビス―(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと(2−エチルヘキシル)−グリシド酸エステルの反応生成物)等を用いることができる。
紫外線吸収剤の添加方法としては、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール、メチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒又はこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してから、光学フィルムの製造に用いられる樹脂溶液(ドープ)に添加するか、又は直接ドープに添加してもよい。無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースアセテート中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の含有量としては、例えば、光学フィルムに対して0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、0.6〜4質量%の範囲内が更に好ましい。
(酸化防止剤)
本発明の光学フィルムは、その他の添加剤として酸化防止剤(劣化防止剤)を含有していてもよい。
酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレート等を挙げることができる。
酸化防止剤の含有量は、例えば、光学フィルムに対して0.0001〜1質量%の範囲内が好ましく、0.001〜0.1質量%の範囲内が更に好ましい。
1−4.光学フィルムの物性
(残留溶媒量)
本発明の光学フィルムにおける1種類以上の残留溶媒の合計含有量は、30〜700質量ppmの範囲内であることが好ましい。1種類以上の残留溶媒の合計含有量が30質量ppm以上であると、光学フィルムの曲げ強度が損なわれないので、耐折り曲げ性が損なわれにくく、それによる光学フィルムや偏光板の製造工程における割れを抑制できる。1種類以上の残留溶媒の合計含有量が700質量ppm以下であると、光学フィルムの引張り強度が適度に高いため、光学フィルムや偏光板の製造工程における光学フィルムの破断を抑制できる。光学フィルムにおける1種類以上の残留溶媒の合計含有量は、50〜500質量ppmであることがより好ましい。
光学フィルムに含まれる残留溶媒の定性及び定量は、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーにより行うことができる。すなわち、ヘッドスペースガスクロマトグラフィーでは、試料を容器に封入して加熱し、容器中に揮発成分が充満した状態で速やかに容器中のガスをガスクロマトグラフに注入し、質量分析を行って化合物の同定を行いながら揮発成分の定量を行うものである。揮発成分の定量は、濃度が既知の試料を用いて、検量線をあらかじめ作成しておき、測定で得られた揮発成分のピーク面積と検量線とを照合して行うことができる。以下に、測定条件を示す。
〔測定条件〕
ヘッドスペース装置:HP7694 Head Space Sampler(ヒューレットパッカード社製)
温度条件:トランスファーライン200℃、ループ温度200℃
サンプル量:0.8g/20mlバイアル
GC:HP5890(ヒューレットパッカード社製)
MS:HP5971(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−624(30m×内径0.25mm)
オーブン温度:初期温度40℃(保持時間3分)、昇温速度10℃/分、到達温度200℃(保持時間5分)
測定モード:SIM(セレクトイオンモニター)モード
光学フィルムに含まれる残留溶媒の組成及び量は、光学フィルムの製造工程における、ドープの溶媒組成及び膜状物の乾燥工程における乾燥条件によって調整され得る。
光学フィルムの製造工程における膜状物の残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
(上記式中、Mは、膜状物の質量を表す。Nは、当該膜状物を120℃で1時間加熱した後の質量を表す。)
剥離して得られた膜状物は、必要に応じて、更に乾燥させてもよい。
(光学特性)
光学フィルムは、全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは92%以上である。また、現実的な上限としては99%程度である。ヘイズ値は10%以下であることが好ましく、より好ましくは2%以下である。全光線透過率及びヘイズ値は、それぞれJIS K 7361及びJIS K 7136に準じて測定することができる。
(リターデーション値)
本発明の光学フィルムの使用用途は特に限定されず、偏光板保護フィルムとして用いられてもよいし、位相差フィルムとして用いられてもよい。位相差フィルムとして用いられる場合は、その用途に応じて種々のリターデーション値をとり得る。
例えば、本発明の光学フィルムがVA(Virtical Alignment)液晶用の位相差フィルムとして用いられる場合、測定波長590nm、23℃・55%RHの環境下で測定される面内方向のリターデーション値Ro(nm)は、10nm≦Ro≦100nmを満たすことが好ましく、20nm≦Ro≦80nmを満たすことがより好ましい。厚さ方向のリターデーション値Rt(nm)は、70nm≦Rt≦200nmを満たすことが好ましく、90nm≦Rt≦150nmを満たすことがよりに好ましい。
リターデーション値Ro及びRtは、下記式(i)及び(ii)で定義される値である。
式(i):Ro=(n−n)×d(nm)
式(ii):Rt=[{(n+n)/2}−n]×d(nm)
(式(i)及び(ii)中、nは、光学フィルム面内の遅相軸方向の屈折率を表す。nは、光学フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率を表す。nは、光学フィルムの厚さ方向の屈折率を表す。dは、光学フィルムの厚さ(nm)を表す。)
本発明の光学フィルムがλ/4フィルムとして用いられる場合、測定波長590nm、23℃・55%RHの環境下で測定される面内方向のリターデーション値Ro(nm)は、50nm≦Ro≦250nmを満たすことが好ましく、70nm≦Ro≦200nmを満たすことがより好ましい。厚さ方向のリターデーション値Rt(nm)は、−200nm≦Rt≦200nmを満たすことが好ましく、−120nm≦Rt≦120nmを満たすことがより好ましい。
また、本発明の光学フィルムがゼロ位相差フィルムとして用いられる場合、測定波長590nm、23℃・55%RHの環境下で測定される面内方向のリターデーション値Ro(nm)は、0nm≦Ro≦5nmを満たすことが好ましく、厚さ方向のリターデーション値Rt(nm)は、−5nm≦Rt≦5nmを満たすことが好ましい。
上記リターデーション値は、例えば、自動複屈折率計アクソスキャン(Axo Scan Mueller Matrix Polarimeter:アクソメトリックス社製)を用いて、23℃・55%RHの環境下で、波長590nmにて求めることができる。上記リターデーション値に制御した光学フィルムを用いることが、タッチパネルや液晶表示装置等の画像表示装置に用いた際の視認性に優れる点から好ましい。リターデーション値は、表面調整剤やその他の添加剤の種類、添加量、光学フィルムの厚さや延伸条件等で調整できる。
(厚さ)
光学フィルムの厚さは、上記リターデーション値RoとRtが上記範囲を満たし、かつ薄膜化の観点から、5.0〜40.0μmの範囲内であることが好ましい。厚さが5.0μm以上であれば、良好な搬送性が得られ、40.0μm以下であれば、耐折り曲げ性を向上させることができる。
《2.光学フィルムの製造方法》
本発明の光学フィルムは、溶液流延法で製造される。すなわち、本発明の光学フィルムの製造方法は、少なくともシクロオレフィン樹脂と表面調整剤とを1種類以上の溶媒に溶解させてドープ(樹脂溶液)を得る工程(ドープ調製工程)と、ドープを支持体上に流延した後、剥離して膜状物を得る工程(流延・剥離工程)と、膜状物を乾燥させる工程(乾燥工程)と、を有することが好ましい。また、本発明の光学フィルムの製造方法は、流延・剥離工程と乾燥工程との間に、膜状物を延伸する工程(延伸工程)を有することが好ましく、乾燥工程の後に、得られた光学フィルムを巻き取る工程(巻取り工程)を有することが好ましい。
2−1.ドープ調製工程
ドープ調製工程について説明する。ドープ中の樹脂濃度は、高い方が金属支持体に流延した後の乾燥負荷を低減できて好ましいが、樹脂の濃度が高すぎると濾過時の負荷が増えて、濾過精度が悪くなる。これらを両立する濃度としては、10〜45質量%の範囲内が好ましく、更に好ましくは15〜40質量%の範囲内である。
ドープに含有される溶剤は、単独で用いても2種以上を併用してもよいが、樹脂の良溶剤と貧溶剤とを混合して使用することが生産効率の点で好ましく、良溶剤が多い方が樹脂の溶解性の点で好ましい。良溶剤と貧溶剤との混合比率の好ましい範囲は、良溶剤が70〜98質量%の範囲内であり、貧溶剤が2〜30質量%の範囲内である。ここで、良溶剤及び貧溶剤とは、使用する樹脂を、単独で溶解するものを良溶剤、単独では膨潤するか又は溶解しないものを貧溶剤と定義している。
また、ドープの調製に有用な有機溶媒の組み合わせとしては、シクロオレフィン樹脂や、その他の添加剤を同時に溶解するものであれば特に制限されない。例えば、塩素系有機溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルム、非塩素系有機溶媒としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸アミル、アセトン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、トルエン、p−キシレン、ギ酸エチル、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−ヘキサフルオロ−1−プロパノール、1,3−ジフルオロ−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−メチル−2−プロパノール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール、2,2,3,3,3−ペンタフルオロ−1−プロパノール、ニトロエタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール等を挙げることができ、塩化メチレン、トルエン、テトラヒドロフラン、エタノール、アセトンを好ましく使用し得る。
ドープは、シクロオレフィン樹脂、表面調整剤及びその他の添加剤を、上記溶媒に計15〜45質量%溶解させたドープであることが好ましい。
上記ドープを調製するときの、溶媒への樹脂の溶解方法としては、一般的な方法を用いることができる。特に、溶解装置への負担低減や、樹脂の着色を防ぐ観点から、常温、常圧での溶解が望ましい。
次に、この樹脂を溶解した溶液を濾紙等の適当な濾過材を用いて濾過する。濾過材としては、不溶物等を除去するために絶対濾過精度が小さい方が好ましいが、絶対濾過精度が小さすぎると濾過材の目詰まりが発生しやすいという問題がある。このため、絶対濾過精度が0.008mm以下の濾材が好ましく、0.001〜0.008mmの範囲内の濾材がより好ましく、0.003〜0.006mmの範囲内の濾材が更に好ましい。
濾材の材質は特に制限はなく、通常の濾材を使用することができるが、ポリプロピレン、テフロン(登録商標)等のプラスチック製の濾材や、ステンレススティール等の金属製の濾材が繊維の脱落等がなく好ましい。濾過により、原料の樹脂に含まれていた不純物、特に輝点異物を除去、低減することが好ましい。
輝点異物とは、2枚の偏光板をクロスニコル状態にして配置し、その間に光学フィルム等を置き、一方の偏光板の側から光を当てて、他方の偏光板の側から観察した時に反対側からの光が漏れて見える点(異物)のことであり、径が0.01mm以上である輝点の数が200個/cm以下であることが好ましい。より好ましくは100個/cm以下であり、更に好ましくは50個/m以下であり、特に好ましくは0〜10個/cmの範囲内である。また、0.01mm以下の輝点も少ない方が好ましい。
ドープの濾過は通常の方法で行うことができるが、溶媒の常圧での沸点以上で、かつ加圧下で溶媒が沸騰しない範囲の温度で加熱しながら濾過する方法が、濾過前後の濾圧の差(差圧という。)の発現が小さく、好ましい。好ましい温度は45〜120℃の範囲内であり、45〜70℃の範囲内がより好ましく、45〜55℃の範囲内であることが更に好ましい。
濾圧は小さい方が好ましい。具体的には、濾圧が1.6MPa以下であることが好ましく、1.2MPa以下であることがより好ましく、1.0MPa以下であることが更に好ましい。
2−2.流延・剥離工程
流延・剥離工程では、得られたドープを流延ダイから吐出させて金属支持体上に流延し、得られた流延膜を乾燥及び剥離して膜状物を得る。流延幅は、例えば1〜4mの範囲内とすることができる。金属支持体としては、ステンレススティールベルト又は鋳物で表面をメッキ仕上げしたドラムを用いることができる。金属支持体の表面は、鏡面仕上げされていることが好ましい。なお、ドープが流延される支持体は金属製に限られるものではなく、樹脂製等、いずれの材質であってもよい。
金属支持体の表面温度は、−50℃〜溶媒の沸点未満の温度で、高い方が膜状物の乾燥速度を高くすることができるので好ましいが、高すぎると膜状物が発泡したり、平面性が劣化したりする。したがって、金属支持体の表面温度は、0〜40℃の範囲内であることが好ましく、5〜30℃の範囲内であることがより好ましい。
金属支持体の温度を制御する方法は特に制限されないが、温風又は冷風を吹き付ける方法や、金属支持体の裏側に温水を接触させる方法が挙げられる。温水を用いる方が熱の伝達が効率的に行われるため、金属支持体の温度が一定になるまでの時間が短く好ましい。
温風を用いる場合は溶媒の蒸発潜熱によるウェブの温度低下を考慮して、溶媒の沸点以上の温風を使用しつつ、発泡も防ぎながら目的の温度よりも高い温度の風を使用する場合がある。
良好な平面性を有する膜状物を得るためには、金属支持体から剥離する際の膜状物の残留溶媒量が、10〜150質量%の範囲内であることが好ましく、20〜40質量%又は60〜130質量%の範囲内であることがより好ましく、20〜30質量%又は70〜120質量%の範囲内であることが更に好ましい。
ここで、膜状物の残留溶媒量は、下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
(上記式中、Mは、膜状物の質量を表す。Nは、当該膜状物を120℃で1時間加熱した後の質量を表す。)
本発明においては、金属支持体上にドープを流延したときに、金属支持体界面側と空気界面側との間に極性の差が生まれるため、ドープ中の成分の空気界面における安定化の程度差によって、溶媒の揮発とともに表面調整剤が流延膜中で移動し、表面調整剤が空気界面側に局在した光学フィルムが得られる。さらに、流延されたドープ中にマット剤としての微粒子が含有されている場合には、この微粒子が表面調整剤の局在化に伴って空気界面側に移動するため、得られる光学フィルムにおいて微粒子も空気界面側に局在する。
これにより、溶液流延法を用いて光学フィルムを製造することで、光学フィルムに滑り性を付与して搬送性を向上させることができ、プロテクトフィルムを用いることなく高収率で偏光板等を作製することができる。
2−3.乾燥工程
乾燥工程は、金属支持体より剥離した膜状物を、残留溶媒量が1000質量ppm以下になるまで乾燥することが好ましく、更に好ましくは800質量ppm以下、特に好ましくは30〜700質量ppmの範囲内である。これにより、光学フィルムを得ることができる。
乾燥工程では、一般にローラー乾燥方式(上下に配置した多数のローラーに膜状物を交互に通し乾燥させる方式)やテンター方式で膜状物を搬送させながら乾燥する方式が採られる。
特に、流延から剥離するまでの間で、上記金属支持体の温度及び乾燥風の温度を変更し、効率的に乾燥を行うことが好ましい。
2−4.延伸工程
延伸工程では、剥離して得られた膜状物を延伸して位相差の調整を行う。
延伸は、少なくとも一方向に行うことができる。延伸方向は、膜状物の長手方向(MD方向)、膜状物の長手方向と直交する幅手方向(TD方向)、及び膜状物の長手方向に対して斜め方向のいずれであってもよい。延伸は、逐次延伸でもよいし、同時延伸でもよい。
互いに直交する2軸方向の延伸倍率は、それぞれ最終的にはMD方向に1.0〜2.0倍の範囲内、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲内とすることが好ましく、MD方向に1.0〜1.5倍の範囲内、TD方向に1.05〜2.0倍の範囲内とすることがより好ましい。例えば、複数のローラーに周速差をつけ、その間でローラー周速差を利用してMD方向に延伸する方法、膜状物の両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に広げてMD方向に延伸する方法、同様に横方向に広げてTD方向に延伸する方法、又はMD方向及びTD方向に同時に広げて両方向に延伸する方法等が挙げられる。
延伸工程におけるこれらの幅保持又は幅手方向の延伸は、テンターによって行うことが好ましく、ピンテンターでもクリップテンターでもよい。
テンター等のフィルム搬送張力は温度にもよるが、120〜200N/mの範囲内が好ましく、140〜200N/mの範囲内が更に好ましく、140〜160N/mの範囲内が最も好ましい。
延伸する際の温度は、光学フィルムのガラス転移温度をTgとすると、(Tg−30)〜(Tg+100)℃の範囲内が好ましく、(Tg−20)〜(Tg+80)℃の範囲内がより好ましく、(Tg−5)〜(Tg+20)℃の範囲内が更に好ましい。
光学フィルムのガラス転移温度は、光学フィルムを構成する材料種及び構成する材料の比率によって制御することができる。光学フィルムの乾燥時のガラス転移温度は、110℃以上が好ましく、120℃以上が更に好ましく、150℃以上が特に好ましい。また、光学フィルムのガラス転移温度は、190℃以下が好ましく、170℃以下がより好ましい。光学フィルムのガラス転移温度は、JIS K 7121に記載の方法等に準拠して求めることができる。
延伸する際の光学フィルムの温度を(Tg+10)℃以上とし、延伸倍率を1.10倍以上とすると、光学フィルムの表面に適度な粗さを付与できるため好ましい。光学フィルム表面に適度な粗さを付与することにより、滑り性が向上するとともに、表面加工性が向上するため好ましい。
2−5.巻取り工程
巻取り工程では、得られた光学フィルムを、巻取り機で巻き取る。巻取り方法は、一般に使用される方法を採用でき、例えば、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法、内部応力一定のプログラムテンションコントロール法等を用いることができる。
本発明の光学フィルムは、長尺状であることが好ましく、具体的には、長さが100〜7000m程度であることが好ましい。このような長尺状の光学フィルムは、通常、長さ方向に対して直交する方向を巻取り軸として巻き取ったロール体で提供され得る。光学フィルムの幅は、1.3〜4mの範囲内であることが好ましく、1.4〜2mの範囲内であることがより好ましい。光学フィルムの長さ及び幅を当該範囲内とすることで、機能性層等の塗布における加工適性や光学フィルム自体のハンドリング性に優れる。
巻き取る前に、製品となる幅になるように、光学フィルムの端部をスリットして裁ち落とし、巻取り中の貼付きや擦り傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施してもよい。ナール加工の方法としては、凹凸のパターンを側面に有する金属リングを用いて、光学フィルムに対して加熱や加圧をすることにより加工する方法を挙げることができる。光学フィルム両端部のクリップによる把持部分は、通常、変形しており、製品として使用できないため切除され、その切除片は原料として再利用される。
《3.偏光板》
本発明の偏光板は、偏光子と、偏光板保護フィルムとしての上記光学フィルムと、を備えることを特徴とする。
本発明の偏光板は、一般的な方法で作製することができる。例えば、本発明の光学フィルムをコロナ放電処理(詳細は後述する。)し、処理した光学フィルムをヨウ素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の少なくとも一方の面に、完全ケン化型ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせることが好ましい。偏光子は、本発明の光学フィルムのケイ素原子が局在した表面側に貼合される。
偏光子のもう一方の面には、上記光学フィルムや、市販品であるKC8UX、KC4UX、KC4UY、KC8UY、KC6UA、KC4UA、KC4UE、KC4CZ、KC8UCR、KC4FR(コニカミノルタ(株)製)、アートンフィルム(JSR(株)製)、ゼオノアフィルム(日本ゼオン(株)製)等を貼り合わせることができる。
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、現在知られている代表的な偏光子は、ポリビニルアルコール系偏光フィルムである。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
ポリビニルアルコール系偏光フィルムは、ポリビニルアルコール系フィルムを一軸延伸した後、ヨウ素又は二色性染料で染色したフィルム(好ましくは更にホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよいし、ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素又は二色性染料で染色した後、一軸延伸したフィルム(好ましくは、更にホウ素化合物で耐久性処理を施したフィルム)であってもよい。偏光子の吸収軸は、通常、最大延伸方向と平行である。
偏光子としては、例えば、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%の範囲内、重合度2000〜4000の範囲内、ケン化度99.0〜99.99モル%の範囲内のエチレン変性ポリビニルアルコールが用いられる。中でも、熱水切断温度が66〜73℃の範囲内であるエチレン変性ポリビニルアルコールフィルムが好ましく用いられる。
偏光子の厚さは、5〜30μmの範囲内であることが好ましく、偏光板を薄型化する観点等から、5〜20μmの範囲内であることがより好ましい。
(表面改質処理)
本発明の光学フィルムを接着剤を用いて偏光子と接着させる際には、表面改質処理を施して、フィルム表面を活性化させることが好ましい。具体的な処理としては、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、フレーム処理、オゾン処理、プライマー処理、グロー放電処理、ケン化処理、カップリング剤による処理などが挙げられるが、生産性の観点から、特にプラズマ放電処理又はコロナ放電処理が好ましい。
コロナ放電処理とは、誘電体と絶縁された電極間に高周波・高電圧をかけてコロナを発生させ、誘電体と電極との間に基材フィルムを通過させることで、基材フィルムの表面を処理する方法である。これにより、基材フィルムの表面の接着性が高められる。電極の材質の例には、セラミックス及びアルミが含まれる。電極と誘電体との距離は、1〜5mmの範囲内であることが好ましく、1〜3mmの範囲内であることがより好ましい。ライン速度(移動速度)は、3〜70m/分程度が好ましく、3〜50m/分程度がより好ましい。
コロナ出力強度は、0.2〜3kWの範囲内であることが好ましく、0.5〜1.5kWの範囲内であることがより好ましい。コロナ出力強度が0.2kW以上であれば、コロナ放電が安定になり、基材フィルムの表面に安定した接着力を付与することができ、コロナ出力強度が3.0kW以下であれば、基材フィルムが傷付きにくい。コロナ放電処理における電子照射量は、100〜1000W・min/mとし得る。
プラズマ放電処理は、減圧下又は大気圧下で発生させた不活性ガスや酸素ガス等のガス雰囲気下で、プラズマ放電をすることにより、基材フィルムの表面を活性化させる処理である。ローラーを用いた搬送下で効率よく生産するためには、大気圧下でのプラズマ放電処理が好ましい。
プラズマ放電処理は、ガスの種類を種々変更することにより基材層の表面を種々に改質することができる。そのため、基材層の表面を活性化するにあたり、適宜任意にガスの種類を選択することができる。ガスの種類の例には、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、アクリル酸、ヒドロキシアルキルや、CF、CHF、C等のフッ素系化合物が含まれる。
プラズマ出力は、0.2〜3kWの範囲内であることが好ましい。ライン速度(移動速度)は、3〜70m/分の範囲内であることが好ましく、3〜50m/分の範囲内であることがより好ましい。周波数は、3〜30kHzの範囲内であることが好ましく、5〜20kHzの範囲内であることがより好ましい。
《4.画像表示装置》
本発明の画像表示装置は、上記光学フィルムを有する偏光板を備えることを特徴とする。これにより、視認性やムラに優れる性能が発揮される点で好ましい。画像表示装置としては、反射型、透過型、半透過型液晶表示装置、又は、TN型、STN型、OCB型、VA型、IPS型、ECB型等の各種駆動方式の液晶表示装置、タッチパネル表示装置、有機EL表示装置やプラズマディスプレイ等が挙げられる。
また、本発明の光学フィルムは、例えば、液晶表示装置(上面側偏光板/液晶セル/下面側偏光板構成)の上面側偏光板の下にタッチパネル部材を用いたインナータッチパネルや静電容量方式のタッチパネル等にも使用することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
まず、本実施例において使用する各種材料について説明する。
(1)シクロオレフィン系樹脂
G7810:ARTON−G7810(JSR社製)、重量平均分子量(Mw)=140000(式(A−2)で表される単量体と他の単量体との共重合体(前述の(5)の重合体))
R5000:ARTON−R5000(JSR社製)、重量平均分子量(Mw)=50000(式(A−1)で表される単量体と、式(A−2)で表される単量体と、他の単量体との共重合体(前述の(5)の重合体))
RX4500:ARTON−RX4500(JSR社製)、重量平均分子量(Mw)=63000(式(A−1)で表される単量体と、式(A−2)で表される単量体と、他の単量体との共重合体(前述の(5)の重合体))
(2)表面調整剤(有機ケイ素化合物)
GL−01:アクリル変性シリコーン(共栄社化学社製、固形分濃度20質量%)、重量平均分子量(Mw)=5200、表面張力=30mN/m
GL−03:アクリル変性シリコーン(共栄社化学社製、固形分濃度20質量%)、重量平均分子量(Mw)=4100、表面張力=26mN/m
GL−04R:アクリル変性シリコーン(共栄社化学社製、固形分濃度20質量%)、重量平均分子量(Mw)=4700、表面張力=28mN/m
TMSOH:トリメチルシラノール(信越化学社製)、重量平均分子量(Mw)=90、表面張力=50mN/m
(3)マット剤
R812:シリカ微粒子(日本アエロジル社製)、平均一次粒子径7nm
R816:シリカ微粒子(日本アエロジル社製)、平均一次粒子径12nm
R106:シリカ微粒子(日本アエロジル社製)、平均一次粒子径7nm
R972V:シリカ微粒子(日本アエロジル社製)、平均一次粒子径12nm
200V:シリカ微粒子(日本アエロジル社製)、平均一次粒子径12nm
300V:シリカ微粒子(日本アエロジル社製)、平均一次粒子径7nm
SiO:シリカ微粒子(CIKナノテック社製)、平均一次粒子径110nm
《光学フィルムの作製》
〈光学フィルム101の作製〉
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製し、これを密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープを調製した。
シクロオレフィン樹脂:G7810 120質量部
紫外線吸収剤:TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 357質量部
エタノール 19質量部
次に、ベルト流延製膜装置を用い、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が80質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。得られたウェブを35℃に保持して更に溶媒を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、160℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、130℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、光学フィルム101を作製した。光学フィルム101の厚さは10.0μm、巻長は5000mであった。なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
〈光学フィルム102の作製〉
(二酸化ケイ素分散希釈液の調製)
マット剤としての10質量部のR812と、80質量部のエタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、二酸化ケイ素分散液を調製した。調製した二酸化ケイ素分散液に、80質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した後、微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過して二酸化ケイ素分散希釈液を調製した。
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製し、これを密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープを調製した。
シクロオレフィン樹脂:G7810 120質量部
マット剤:二酸化ケイ素分散希釈液 20質量部
紫外線吸収剤:TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 356質量部
エタノール 14質量部
(シクロオレフィン樹脂層の形成)
次に、ベルト流延製膜装置を用い、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が80質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。得られたウェブを35℃に保持して更に溶媒を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、160℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、130℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、シクロオレフィン樹脂層を形成した。シクロオレフィン樹脂層の厚さは10.0μm、巻長は5000mであった。なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
(下塗り層の形成)
特開2015−160434号公報の実施例1を参照して、シクロオレフィン樹脂層上に下塗り層を形成した。
具体的には、下記組成の下塗り層形成用塗布液を調製した。
ウレタン系バインダー(タケラックWS5100、三井武田ケミカル(株)製、濃度30質量%) 3.90質量部
オキサゾリン基含有水分散性ポリマー(エポクロスK−2010E、Tg=−50℃、日本触媒(株)製、固形分濃度:40質量%) 0.32質量部
コロイダルシリカ(スノーテックスUP、日産化学(株)製、固形分濃度:10質量%水希釈) 0.27質量部
滑り剤:カルナバワックス(セロゾール524、中京油脂(株)製、固形分濃度:3質量%水希釈) 1.67質量部
・界面活性剤A:界面活性剤(ナロアクティーCL95、三洋化成工業(株)製、固形分濃度:1質量%水溶液) 1.67質量部
界面活性剤B:界面活性剤(ラピゾールA−90、日油(株)製、固形分濃度:1質量%水溶液) 2.67質量部
蒸留水 89.50質量部
次いで、シクロオレフィン樹脂層上の一方の表面上に、8kJ/mの条件でコロナ放電処理を行い、このコロナ放電処理を行った表面に下塗り層形成用塗布液を、乾燥後の膜厚が90nmになるように塗布し、膜面温度90℃で1分間乾燥させて、下塗り層を形成し、厚さ10.1μmの光学フィルム102を作製した。
〈光学フィルム103の作製〉
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製し、これを密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープを調製した。
(ドープの調製)
シクロオレフィン樹脂:G7810 120質量部
表面調整剤:GL−03 0.6質量部
紫外線吸収剤:TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 365質量部
エタノール 23質量部
次に、ベルト流延製膜装置を用い、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が80質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。得られたウェブを35℃に保持して更に溶媒を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、160℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、130℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、光学フィルム103を作製した。光学フィルム103の厚さは10.0μm、巻長は5000mであった。なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
〈光学フィルム104〜111の作製〉
光学フィルム103の作製において、シクロオレフィン樹脂の材料種、並びに表面調製剤の材料種及びその光学フィルム中の含有量が表1に記載のとおりとなるように変更した以外は同様にして、光学フィルム104〜111を作製した。
〈光学フィルム112の作製〉
(二酸化ケイ素分散希釈液の調製)
マット剤としての10質量部のR812と、80質量部のエタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、二酸化ケイ素分散液を調製した。調製した二酸化ケイ素分散液に、80質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した後、微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過して二酸化ケイ素分散希釈液を調製した。
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製し、これを密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープを調製した。
シクロオレフィン樹脂:G7810 120質量部
マット剤:二酸化ケイ素分散希釈液 4質量部
紫外線吸収剤:TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 361質量部
エタノール 21質量部
次に、ベルト流延製膜装置を用い、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が80質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。得られたウェブを35℃に保持して更に溶媒を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、160℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、130℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、光学フィルム112を作製した。光学フィルム112の厚さは10.0μm、巻長は5000mであった。なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
〈光学フィルム113の作製〉
光学フィルム112の作製において、マット剤としての微粒子の光学フィルム中の含有量が表1に記載のとおりとなるように変更した以外は同様にして、光学フィルム113を作製した。
〈光学フィルム114の作製〉
(二酸化ケイ素分散希釈液の調製)
マット剤としての10質量部のR812と、80質量部のエタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散を行い、二酸化ケイ素分散液を調製した。調製した二酸化ケイ素分散液に、80質量部のメチレンクロライドを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合した後、微粒子分散希釈液濾過器(アドバンテック東洋(株):ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1N)で濾過して二酸化ケイ素分散希釈液を調製した。
(ドープの調製)
下記組成のドープを調製し、これを密閉容器に投入し、加熱し、撹拌しながら、完全に溶解し、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24を使用して濾過し、ドープを調製した。
(ドープの調製)
シクロオレフィン樹脂:G7810 120質量部
表面調整剤:GL−03 1.9質量部
マット剤:二酸化ケイ素分散希釈液 6質量部
紫外線吸収剤:TINUVIN 928(BASFジャパン(株)製) 3質量部
メチレンクロライド 360質量部
エタノール 20質量部
次に、ベルト流延製膜装置を用い、ステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体で、残留溶剤量が80質量%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体上から剥離した。得られたウェブを35℃に保持して更に溶媒を蒸発させ、1.15m幅にスリットし、160℃の乾燥温度で乾燥させた。その後、130℃の乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら15分間乾燥させた後、1.0m幅にスリットし、フィルム両端に幅10mm、高さ2μmのナーリング加工を施し、巻芯に巻き取り、光学フィルム114を作製した。光学フィルム114の厚さは10.0μm、巻長は5000mであった。なお、ステンレスバンド支持体の回転速度とテンターの運転速度から算出されるMD方向の延伸倍率は1.01倍であった。
〈光学フィルム115〜128の作製〉
光学フィルム114の作製において、表面調整剤及びマット剤の材料種及びその光学フィルム中の含有量、並びに光学フィルムの厚さを表1に記載のとおりに変更した以外は同様にして、光学フィルム115〜128を作製した。
《評価》
作製した光学フィルム101〜128について、以下の各評価を行った。評価結果を表1に示す。
〈ケイ素原子の含有量の測定〉
各光学フィルムの作製時に空気界面と触れていた面をA面、ステンレスバンド支持体に触れていた面をB面とし、これら各面についてTOF−SIMS分析装置を用いて、下記測定条件でケイ素原子の含有量を分析した。
(測定条件)
測定装置:2100TRIFT2(Physical Electronics社製)
測定モード:冷却測定(温度範囲−105〜−95℃)
1次イオン:Ga(15kV)
測定領域:60μm角
積算時間:2分
なお、測定及び解析は、Physical Electronics社製WIN−Cadence Ver4.0.0.14にて行った。
各光学フィルム断面に対して上記分析を行い、得られたピークの積分値から、光学フィルム表面(A面)から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量(at%)を算出した。
〈搬送性の評価〉
偏光板を作製する際の搬送途中に発生したツレ、シワについて、以下の評価基準に従って評価した。
○:目視で全く認識できない
△:フィルム端に認識される
×:フィルム全体に確認される
〈偏光子との接着性の評価〉
(偏光子の作製)
厚さ25μmのポリビニルアルコールフィルムを、35℃の水で膨潤させた。得られたフィルムを、ヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g及び水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、更にヨウ化カリウム3g、ホウ酸7.5g及び水100gからなる45℃の水溶液に浸漬した。得られたフィルムを、延伸温度55℃、延伸倍率5倍の条件で一軸延伸した。この一軸延伸フィルムを、水洗した後、乾燥させて、厚さ7μmの偏光子を得た。
(評価用サンプルの作製)
得られた各光学フィルムに対し、コロナ放電処理を施した。コロナ放電における誘電体との距離は2mm、電子照射量は500W・min/mとした。
次いで、コロナ放電処理した各光学フィルム上に、水系接着剤であるポリビニルアルコール(クラレ製PVA−117H)3質量%水溶液を塗布した後、上記作製した偏光子を貼り合わせた。貼り合わせは、光学フィルムの遅相軸と偏光子の吸収軸とが直交するように行った。得られた積層物を60℃で5分間乾燥させて、評価用サンプルを得た。
得られた評価用サンプルを、23℃・55%RHの環境下で24時間放置した。その後、評価用サンプルの偏光子と光学フィルムとの接着面を手で引き剥がしたとき、光学フィルムに材料破壊の発生の有無、及び剥離の程度を目視観察して、以下の評価基準に従って接着性を評価した。〇以上であれば実用上問題ないレベルと判断した。
◎:剥がれない
○:光学フィルムと偏光子との間の接着力に問題はなく、光学フィルムを剥がそうとすると、光学フィルムと偏光子の少なくとも一方の端部の一部に材料(基材)破壊が生じる
△:光学フィルムと偏光子との界面の一部が剥がれる
×:光学フィルムと偏光子との界面の全部が剥がれる
〈耐折り曲げ性の評価〉
各光学フィルムを、1.5cm×10cmの大きさに切り出して試料片とした。この試料片を、25℃・60%RHの環境下、MIT耐折疲労試験機(東洋精機製)にセットし、折り曲げ速度170rpm、折り曲げ角度135°、チャック先端半径(折り曲げクランプの先端半径)0.35mm、及び荷重4.9Nの条件で折り曲げたときの割れの有無を、以下の評価基準に従って評価した。
◎:2500回折り曲げて割れを生じない
〇:2000回折り曲げて割れを生じない
△:1500回折り曲げて割れを生じない
×:1500回未満で割れを生じた
〈残留溶媒量の測定〉
作製した各光学フィルムについて、以下の測定条件にて残留溶媒量を測定した。
(測定条件)
ヘッドスペース装置:HP7694 Head Space Sampler(ヒューレットパッカード社製)
温度条件:トランスファーライン200℃、ループ温度200℃
サンプル量:0.8g/20mlバイアル
GC:HP5890(ヒューレットパッカード社製)
MS:HP5971(ヒューレットパッカード社製)
カラム:HP−624(30m×内径0.25mm)
オーブン温度:初期温度40℃(保持時間3分)、昇温速度10℃/分、到達温度200℃(保持時間5分)
測定モード:SIM(セレクトイオンモニター)モード
Figure 0006627517
〈まとめ〉
表1から明らかなように、本発明の光学フィルムは、比較例の光学フィルムと比べて、搬送性、偏光子との接着性(接着剤との親和性)、耐折り曲げ性及び残留溶媒量において、優れていることが確認された。
光学フィルム101では、表面調整剤(有機ケイ素化合物)及びマット剤(シリカ微粒子)が含有されていないため、偏光子と接着しなかった。また、マット剤(シリカ微粒子)のみを添加した光学フィルム112及び113についても同様であった。
光学フィルム102においては、下塗り層を設けたことにより、偏光子との接着性は向上したものの、その反面、下塗り層に起因して耐折り曲げ性の劣化が見られた。
光学フィルム128では、表面調整剤であるTMSOHの表面張力が大きく、フィルム表面に偏在化できないため、偏光子との接着性の向上には至らなかった。
以上から、表面調整剤が有機ケイ素化合物であり、光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、光学フィルム表面から光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が20at%以上であることが、偏光子との接着性(接着剤との親和性)に有用であることがわかる。

Claims (10)

  1. 少なくともシクロオレフィン樹脂と、表面調整剤とが含有された光学フィルムであって、
    前記表面調整剤が、表面張力40mN/m以下の有機ケイ素化合物であり、
    前記光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、前記光学フィルム表面から前記光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、20at%以上であることを特徴とする光学フィルム。
  2. 前記光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、前記光学フィルム表面から前記光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、20〜90at%の範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記光学フィルム中のケイ素原子の含有量を100at%としたとき、前記光学フィルム表面から前記光学フィルムの厚さ方向10%の深さまでの領域におけるケイ素原子の含有量が、40〜80at%の範囲内であることを特徴とする請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 前記有機ケイ素化合物が、ポリシロキサン誘導体であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  5. 前記光学フィルムの厚さが、5.0〜40.0μmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  6. マット剤として、平均1次粒子径が5〜100nmの範囲内である無機微粒子が含有されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  7. 前記光学フィルム中の残留溶媒量が、30〜700質量ppmの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  8. 偏光子と、前記偏光子の少なくとも一方の面に貼合された偏光板保護フィルムとを有する偏光板であって、
    前記偏光板保護フィルムが、請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の光学フィルムであることを特徴とする偏光板。
  9. 請求項8に記載の偏光板を備えることを特徴とする画像表示装置。
  10. 請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の光学フィルムを製造する光学フィルムの製造方法であって、
    溶液流延法により製造することを特徴とする光学フィルムの製造方法。
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