JP3603428B2 - 成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法 - Google Patents
成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種資材、成形材料、フィルム、繊維等の種々の分野で有用な、耐熱性、機械的性質、耐薬品性を向上させた、有機高分子固体中に金属酸化物粒子が連続的な濃度傾斜構造を持って分散する、所謂、成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
有機高分子の性能を改良する目的で、これまで種々の検討が成されている。
その一つの試みとして、耐熱性、機械的性質、耐薬品性等に優れた特性を持つ炭酸カルシウム、シリカ、チタニア、アルミナ等の粉末状無機材料を有機高分子中に混合することが広く行われている。
【0003】
無機材料との混合による複合化を行う場合、無機材料が持つ熱不溶融性、薬品不溶解性、高比重、表面特性等の性質が有機高分子材料と大きく異なることから、分散状態をミクロに制御することは簡単ではなく、もっぱら均質なバルク複合材料を得ることを目的として複合化されるのが一般である。
【0004】
即ち、改質効果を向上させるために、マトリックスの有機高分子との濡れ性に優れ、且つ、より小さな形状の無機材料を選択して、それらを出来るだけ均質に分散することが複合化における重要な要因となっている。
しかし、無機材料は微粒子にするほど、有機高分子中に均質分散することが困難となり、また製造価格が高くなる問題がある。
【0005】
従って、有機材料と微粒子状無機材料をミクロ的に均質で、且つ分散構造の制御された高性能の複合材とするためには、上述したような単に微粒子状の無機材料を混合分散する方法によって得ることは困難であり、新しい技術の開発が必要である。
【0006】
【発明が解決しょうとする課題】
本発明が解決しょうとする課題は、成形材料、電気・電子部品、機械部品、自動車部品、スポーツ用品、フィルム、繊維等の種々の資材として有用な、耐熱特性、破壊強度等の力学的特性、及び接着性に優れる、有機高分子内部に金属酸化物が連続的な濃度傾斜構造を持って分散する、所謂、成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の優れた製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、固形の有機高分子に金属アルコキシド及び/又は金属アルコキシドの溶液を濃度勾配を生じるように含浸させるか、又は、水及び/又は酸性もしくは塩基性触媒の溶液を濃度勾配を生じるように含浸させ、次いで金属アルコキシドを重縮合させて金属酸化物を固定化させる簡便な方法により、金属酸化物が連続的な濃度傾斜構造を有して分散した、成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体を製造できることを見いだし本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、金属アルコキシドを有機高分子固体内部に、濃度傾斜を持つように含浸させた後、該金属アルコキシドを重縮合反応させ、金属酸化物として固定化することを特徴とする、金属酸化物が濃度勾配を有して分散した、成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を更に詳細に説明する。
本発明に用いられる固形の有機高分子としては、一般に市販されている固形の各種熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂がいずれも使用可能である。その中でも、有機溶媒又は下記にて規定する膨潤液を1重量%以上、好ましくは5重量%以上を含浸する有機高分子が好ましい。
【0019】
具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン−1等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン−6、ナイロン−66等のポリアミド、ポリアセタール、ポリ塩化ビニル、ポリエステル系やポリアミド系等の熱可塑性エラストマー、スチレンとブタジエン、メタアクリル酸等のスチレン共重合体、
【0020】
ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリビニリデンフロライドなどのフッ素系樹脂、ポリカーボネート、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等が用いられ、シート、フィルム、繊維、ロット、ペレット、粉末及び各種の成形品の形態で使用される。
【0021】
本発明の金属アルコキシド又は金属アルコキシドを含む溶液は、金属アルコキシドとして、一般式、R4−nM(OR)n(MはSi、Rは炭素原子数1〜6のアルキル基、nは3または4)で示されるシリコーンアルコキシド系モノマーや、重合度2〜10程度のそれらの部分加水分解重縮合物またはそれらの混合物及び/又はそれと有機溶媒を含む溶液が用いられる。
【0022】
また金属原子として、Si以外に、Ti、Sn、Al、Zrであるものを単独または2種以上を混合して用いることも可能である。
本発明で有機高分子を膨潤させる為に用いる膨潤液としては、金属アルコキシド又は金属アルコキシドを含む溶液と相溶し、且つ使用する有機高分子固体を膨潤させうる有機溶媒又はそれら有機溶媒の混合液が用いられる。
【0023】
金属アルコキシドを含む溶液や膨潤液に用いられる具体的な有機溶媒は、使用する有機高分子や金属アルコキシドの種類によって適切なものが異なるため、一概に規定できないが、例えば、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)等のエーテル系、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)等のアミド系、
【0024】
酢酸エチルや酢酸メチル等のエステル系、アセトンや2−ブタノン(MEK)等のケトン系、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等のアルコール系、ヘキサンやシクロヘキサン等の炭化水素系、トルエン、キシレン、m−クレゾール、ベンゼン、ニトロベンゼン等の芳香族系、四塩化炭素、クロロホルム、ジクロロメタンやジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系、
【0025】
ジメチルポリシロキサンやサイクロメチコーン等のシリコーン系、トリエチルアミン、ジエチルアミン、ピリジン等のアミン系、その他、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、アセトニトリル、二硫化炭素、メチルエチルセルソルブ等の有機溶媒や、或いはアセチルアセトン、2,4−ヘプタジオン等のジケトン系、
【0026】
アセト酢酸メチルやアセト酢酸エチル等のケトエステル、乳酸や乳酸メチル等のヒドロキシカルボン酸系、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトアルコール、モノエタノールアミンやジエタノールアミン等のアミノアルコール類等の有機溶媒を単独、もしくは複数混合して用いることが可能である。
【0027】
また、膨潤液や金属アルコキシドを含む溶液は、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む溶液と併用することが可能であり、この場合、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む溶液と混和する溶媒を用いることが好ましい。特に水を使用する場合は、具体的には、水と混和する、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、2−ブタノン等のケトン系溶媒、或いはテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、ピリジン等の親水性有機溶媒が挙げられる。水を使用しない場合は、膨潤液と同様の有機溶媒が使用できる。
【0028】
また本発明の金属アルコキシドの重縮合反応の酸性触媒としては、ギ酸、酢酸等の有機酸、塩酸等の無機酸が用いられ、また塩基性触媒としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルアミン、エチレンジアミン、ブチルアミン等の塩基性物質である。
【0029】
本発明で言う金属酸化物の成分傾斜構造を有する複合体は、有機高分子の厚み方向に金属酸化物の濃度傾斜構造が形成された複合体である。本発明の金属酸化物が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の形態を図1に模式的に示す。
【0030】
ここで図1は、本発明の製造方法により製造される、金属酸化物が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の形態を模式的に示す図である。図1中のa〜hは、各々が本発明の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の一形態を示している。各々の縦軸は金属酸化物の濃度、横軸は有機高分子の断面の距離(厚み)を示す。
【0031】
本発明の製造方法により製造される金属酸化物の濃度が傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体は、例えば、aのように一方の有機高分子の表面から他方の表面まで金属酸化物濃度が単調に増加又は減少するもの、bのように内部の一部分だけに連続的な傾斜構造を有するもの、cのように表面部分に大きい金属酸化物濃度層を持って傾斜構造を有するもの、
【0032】
dのように内部に金属酸化物の濃度の最大値を有するもの、eのように内部に金属酸化物濃度の極大値を複数持つもの等が挙げられる。また、本発明の金属酸化物が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体は、金属酸化物と有機高分子との傾斜複合化が有機高分子の厚み方向で部分的に行われ、少なくとも一部に金属酸化物と複合化していない領域を含む形態の複合体をも含むものである。
【0033】
この場合の例としては、fやgのように内部に金属酸化物が複合化して存在していないものや、hのように表面部に金属酸化物が複合化して存在していないものが挙げられる。更に、本発明は上述した形態の傾斜構造のなかに不連続な断層が部分的に形成された形態の複合体をも含むものである。この場合の例としては、例えば、iやjのような形態を有するものが挙げられる。
【0034】
本発明の製造方法で得られる、金属酸化物が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体は、通常、複合体中に含まれる金属酸化物の濃度の最大値が5〜100重量%、最小値が0〜20重量%、最大値と最小値の比(最大値/最小値)が1.5以上のものであり、特に、最大値と最小値の比が5以上のものが好ましい。
【0035】
金属酸化物の濃度の最大値が5重量%未満では、複合化の効果が不十分であり、また、最小値が20重量%を越える場合、複合体が脆くなったり、クラックの発生の原因となるため好ましくない。
【0036】
本発明の金属酸化物が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体を得る具体的な方法としては、次に示すA法、B法、C法等の方法が挙げられる。
【0037】
(A法) 必要に応じて、固形の有機高分子を有機溶媒で膨潤させた後、金属アルコキシド又は金属アルコキシドを含む溶液を固形の有機高分子に含浸させることにより、有機高分子内部で濃度傾斜を持つように金属アルコキシドを含浸させた後、金属アルコキシドを重縮合反応させて、金属酸化物として固定化する方法、より具体的には、固形の有機高分子に金属アルコキシドの濃度傾斜を形成させる具体的な方法として、金属アルコキシドが有機高分子固体中に均質に含浸する前に含浸操作を終了させる方法などが挙げられる。
【0038】
更に、有機高分子内に含浸される金属アルコキシドの量や速度が金属アルコキシドの重合度やアルコキシ基の長さ、或いは金属アルコキシドを含む溶液組成、溶液温度などにより異なることを利用して、重合度やアルコキシ基の長さの異なる複数の金属アルコキシドを混合液として使用したり、或いは金属アルコキシドを含む溶液に使用する有機高分子の貧溶媒や良溶媒を添加して、金属アルコキシドの含浸速度を制御する方法などが挙げられる。
【0039】
また、金属アルコキシドを含む溶液中に水を添加して使用する場合、溶液中の溶媒組成が変化することにより有機高分子内への含浸速度が変化すると共に、水の存在により金属アルコキシドの重合反応が進行し、高分子量化に伴い含浸速度が低下することから、やがて有機高分子内の金属アルコキシドの含浸は自発的に停止し、傾斜構造が形成される。傾斜の形態は金属アルコキシドの含浸速度と重合速度に依存し、含浸速度と重合速度は共に溶液温度、触媒種、触媒濃度、水量によって制御される。
【0040】
(B法) 必要に応じて、固形の有機高分子を有機溶媒で膨潤させた後、金属アルコキシド又は金属アルコキシドを含む溶液を固形の有機高分子に(均一に)含浸させた後、該有機高分子を、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む水溶液に、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒が高分子内部で濃度傾斜を形成するように含浸させ、金属アルコキシドの反応性に傾斜を持たせて、金属アルコキシドの重縮合反応を行う方法、
【0041】
より具体的には、固形の有機高分子に水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒の濃度傾斜を形成させる具体的な方法として、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒が有機高分子固体中に均質に含浸する前に含浸操作を終了させる方法が挙げられる。
【0042】
(C法) 必要に応じて、固形の有機高分子を有機溶媒で膨潤させた後、固形の有機高分子を金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液に浸漬し固形の有機高分子中に金属アルコキシドを含浸させた後、該有機高分子から金属アルコキシドの一部を除去することにより、有機高分子内部に金属アルコキシドの濃度傾斜構造を形成させ、次いで、金属アルコキシドを重縮合反応させる方法。
【0043】
より具体的には、固形の有機高分子を、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液に浸漬させた後、特定の時間、常圧もしくは減圧下で、室温或いは高温で保持したり、或いは有機溶媒で抽出する等の方法により、主として表面部から有機高分子中に含浸された金属アルコキシドを除去し、次いで、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む水溶液に浸漬し、次いで金属アルコキシドを重縮合反応させる。
【0044】
同様に、必要に応じて、固形の有機高分子を有機溶媒で膨潤させた後、固形の有機高分子を、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む水溶液に浸漬させた後、常圧もしくは減圧下で、水と混和し得る有機溶媒で、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を除去又は抽出する等の方法により、主として表面部から有機高分子中に含浸された水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を除去し、次に金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液に浸漬し、金属アルコキシドを重縮合反応させる方法でも良い。
【0045】
(D法) 固形の有機高分子を、有機高分子を膨潤せしめる有機溶剤と、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒の溶液とから成る混和溶媒に浸漬し、該有機高分子を膨潤させると共に、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を有機高分子に含浸させ、次いで、該有機高分子を金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液に浸漬し、金属アルコキシドを重縮合反応させる方法。
【0046】
また同様に、固形の有機高分子を、金属アルコキシド又は金属アルコキシドを含む溶液と、金属アルコキシド又は金属アルコキシドを含む溶液と相溶し且つ有機高分子を膨潤させうる有機溶媒とからなる混合溶媒に浸漬し、該有機高分子を膨潤させると共に、金属アルコキシドを有機高分子に含浸させ、次いで、該有機高分子を水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む溶液に浸漬し、金属アルコキシドを重縮合反応させる方法でも良い。
【0047】
これらの方法では、有機高分子中への含浸液の透浸と有機高分子中の膨潤液の外部への拡散が同時に起こる結果、有機高分子内部の金属酸化物の含有率に傾斜構造が生じるものと考えられる。なお、本発明の有機高分子を膨潤させる膨潤液は、用いる固形の有機高分子を1重量%以上、特に5重量%以上膨潤させうるものが好ましい。
【0048】
また、本発明の製造方法では、必ずしも有機高分子を予め膨潤させておく必要はなく、無処理の有機高分子をそのまま用いても差し支えない。即ち、用いる有機高分子、及び目的とする成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の所望する形態により、予め膨潤させた有機高分子を用いるか否か、必要に応じて、適宜、選択すれば良い。
【0049】
ここで、本発明では、金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液、また場合によっては、それに更に水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む溶液を含浸液と呼ぶことがある。
【0050】
本発明では、これらの手法により様々な形態の成分傾斜構造を有する複合体を得ることが可能となる。例えば、有機高分子固体の一面のみを含浸液に接触させて、含浸操作を行い含浸液が他面に充分に透浸する前に含浸操作を中止することによって、図1のaもしくはbの如き傾斜複合体を得ることが可能である。
【0051】
また含浸液を含浸させた後、表面部より金属アルコキシドや水及び/又は触媒を含む含浸液構成成分を除去する方法によって、図1のd、又はe、又はg、又はjの如き複合体を得ることが可能となる。
【0052】
また、有機高分子内部で金属アルコキシドや水及び/又は触媒等が形成する成分傾斜構造は、含浸液や膨潤液の組成や、浸漬時間や浸漬温度等の浸漬条件、また、前処理の有機高分子の膨潤度合い等を組み合わせることにより、制御することが可能である。
【0053】
また、有機高分子に含浸液を含浸させた後、含浸液中の成分を有機高分子固体除去する方法において、除去する際の温度は使用する有機高分子の種類により異なり一概には規定できないが、通常、常圧又は減圧下で、常温〜150℃の範囲である。また、この方法により有効に除去できる金属アルコキドは沸点が250℃以下のものである。
【0054】
これらは、例えば、テトラメトキシシランやテトラエトキシシラン等が挙げられる。また、金属アルコキシドを含浸させた後、金属アルコキシド類を蒸発除去する方法では、使用する温度条件によっては蒸発と同時に、若干ではあるが金属アルコキシドの縮合反応が進行し、金属アルコキシド類の重合度が増加し蒸発によって、もはや除去できなくなる。
【0055】
その結果、含浸された金属アルコキシド類の全てが蒸発することなく、有機高分子固体内部に金属酸化物濃度の極大値を持つ形態の傾斜複合体が得られる。
従って、保持温度や含浸液中に触媒を添加することで傾斜形態を制御することが可能となる。
【0056】
含浸操作により金属アルコキシド類を含浸させた有機高分子の内部に、水、及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒の濃度傾斜を形成させる方法としては、該有機高分子を、必要によっては酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む水溶液の水蒸気雰囲気中に保持する方法や、該水溶液中に浸漬する方法等が挙げられる。
【0057】
これら方法により、図1のc、f、i、又はhの如き形態の複合体を得ることが可能である。また、該有機高分子中に水蒸気や水溶液の成分がスムーズに拡散・浸入することを目的として、水溶液に親水性の有機溶媒を添加することも可能であるが、添加する有機溶媒の種類や添加量によっては含浸した金属アルコキシド類が反応する前に外部に拡散し、金属酸化物の固定化量が小さくなったり、複合体の傾斜が緩やかになることがあるので、その使用量は少量であることが好ましい。
【0058】
膨潤液中に金属アルコキシドを含ませ、固形の有機高分子を予め膨潤させた後、該有機高分子を含浸液に浸漬させることにより、含浸液の高分子への透浸と共に、該高分子中に含まれている膨潤液中の成分の外部(含浸液中)への拡散の同時進行により、該高分子中に含浸液が浸入できる能力が経時的に減少していくことを利用して、有機高分子内部に金属酸化物の成分濃度傾斜構造を形成させる方法では、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル等といった含浸液を含浸し難い有機高分子に対して、特に有効な方法である。
【0059】
また、膨潤させた有機高分子には含浸可能であるが、膨潤させていない有機高分子自体には殆ど含浸し得ない組成の含浸液を用いる場合、図1のc、f、i、又はhの如き傾斜複合体を得ることが可能である。
【0060】
膨潤液に、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を併用して使用する場合、金属アルコキシドを含む含浸液の含浸操作の際に、有機高分子固体内に含浸されている水、触媒が外部へ拡散する。そのため、これらの金属アルコキシド類の反応性を司る水や触媒の濃度が有機高分子の表面付近で低下して、内部に極大値を持って分布する。その結果、得られる複合体は、有機高分子の内部に金属酸化物濃度の最大値を有する、図1のe、g、又はjの如き形態の成分傾斜構造を有する複合体が得られる。
【0061】
本発明に於いては、膨潤液の膨潤操作や含浸液の含浸操作は、通常有機高分子固体をこれら液中に浸漬させて行うが、有機高分子固体をこれらの液の蒸気下に接触させて含浸させる方法を用いることも可能である。
【0062】
本発明における金属アルコキシドの重縮合反応による金属酸化物の生成、固定化は、金属アルコキシドを含浸させた有機高分子を、水(空気中の水分を含む)及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒の存在下に保持することにより、即ち、通常、常温〜該有機高分子の融点以下の温度、より具体的には20〜230℃、好ましくは50〜200℃で保持加熱することにより達成される。
【0063】
本発明の有機高分子内で分散する金属酸化物の粒子径の大きさが連続的に変化した形態を有することを特徴とする金属酸化物が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体は、有機高分子の厚み方向及び/又は長手方向で金属酸化物粒子の粒径が連続的に変化した形態を持つ複合体である。
【0064】
金属酸化物の粒径の大きさは金属酸化物や有機高分子の種類、使用目的等により異なるため一概には規定できないが、通常、10μm以下、好ましくは2μm以下の範囲である。10μmを越えると複合体の力学強度などの特性が低下するため好ましくない。また、粒径の最小値は特に規定されない。これは走査型電子顕微鏡観察では5nm程度の粒径までが確認可能であるが、本発明の複合体中にこれ以下の粒径の粒子、即ち、検出限界以下の粒子が存在している可能性があり、且つ、存在するとしても、本発明の目的とする特性は何等損なわれないからである。
【0065】
また、有機高分子中に分散する金属酸化物の粒子径が異なることにより、複合体の透明性が変化する。通常、0.2μm程度以上の粒径では乳白濁化又は白濁化した複合体が得られ、0.2μm程度以下の粒径では透明な複合体が得られる。有機高分子内で金属酸化物の粒径を変化させることで、透明性が変化した複合体を得ることが可能である。このような性質はスチレン系共重合体、アクリル樹脂、ポリカーボネートなどの透明樹脂を使用する場合、特に有用である。
【0066】
本発明の金属酸化物の粒子が成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体を得る具体的な方法としては、以下に示す方法などが挙げられる。
【0067】
例えば、用いる有機高分子や所望する複合体の形態に応じて、固形の有機高分子を膨潤液で予め膨潤させた後、固形の有機高分子内に金属アルコキシド及び水を含浸させる。金属酸化物の粒径は金属アルコキシドの反応場のpH、水の濃度、温度などに依存するために、該有機高分子内で水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を濃度傾斜するように含浸させて、金属アルコキシドの重縮合反応を行うことにより、有機高分子内で分散する金属酸化物の粒子径の大きさが連続的に変化した形態の複合体を得ることが可能である。
【0068】
また有機高分子の内部に温度の傾斜を持たせた状態で金属アルコキシドの重縮合反応を進行させることによって、有機高分子内で分散する金属酸化物の粒子径の大きさが変化した形態の複合体を得ることも可能である。
【0069】
特に、金属酸化物の粒径は金属アルコキシドの反応場のpHに強く依存するため、酸性触媒もしくは塩基性触媒に濃度傾斜を持たせる方法が最も効果的である。また、有機高分子を予め膨潤させておく膨潤液に酸性触媒もしくは塩基性触媒を使用することにより、有機高分子内のpHを所望の傾斜形態とすることが可能となり、有機高分子内で金属酸化物粒子の大きさが連続的に変化した形態の複合体が得られる。
【0070】
本発明においては、更に、膨潤操作や含浸操作の更なる前処理として、硫酸、硝酸、リン酸等の酸性水溶液や水酸化ナトリウム等の塩基性水溶液、もしくはオゾンやプラズマ等により、固形の有機高分子に予め表面処理を施すことにより、表面部分に金属酸化物の固定率を高めることも可能である。
【0071】
また、アミノアルコキシシラン、エポキシアルコキシシラン、ビニルアルコキシシラン、メルカプトアルコキシシラン等の有機シラン化合物を併用することにより、有機高分子と金属酸化物の親和性を向上させることも可能である。
【0072】
【実施例】
以下に本発明を実施例及び比較例により、より具体的に説明するが、もとより本発明は、以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
【0073】
(実施例1)
フィルム状のナイロン−6(宇部興産株式会社製:UBEナイロン 1022B)をメタノールと蒸留水(重量比=2:1)からなる膨潤液に浸漬させ、80℃で3時間攪拌した。約25重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のテトラメトキシラン(以下、TMOSと呼ぶ。:東京化成工業社製 特級試薬)液中に5時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良くふき取り、室温で5時間乾燥させた。更に、80℃真空中で24時間熱処理を行い、ナイロン−6とシリカの複合体を得た。
【0074】
電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、複合体の断面のSiの分布を測定した。図2に結果を示す。図中の縦軸はシリカ(Si)濃度を、横軸は複合体の深さ方向の距離を表わす。尚、以下の実施例で得られるシリカの分布を示すEPMA測定結果を示す図も、図中の縦軸、横軸は同様の意味を表わす。
表面付近に濃いSiの分布が見られ、表面から70〜80ミクロンの間でSi濃度が急激に減少する形態の成分傾斜複合体が得られた。
【0075】
シリカ濃度の最大は表面から約20ミクロン内部に見られ、最大濃度は約13重量%、最小濃度はゼロである。800℃で2時間焼成したところ、約2.6重量%の袋状の灰分が見られた。走査型電子顕微鏡(SEM)により、複合層のシリカ粒子を観察したところ、10〜30nmの極めて小さな微細粒子が均質に分散しているのが観察された。
【0076】
尚、EPMA測定は島津製作所株式会社製のEPM−810型を用いて、出力15kV−50nA、分解能1ミクロン、100ミクロン/分のスキャン速度、検出はSiのKα線(7.126オームストロング)で行った。また、SEMは日立製作所社製のFE−SEM S−800を用いた。
【0077】
(実施例2及び比較例1)
2mm厚のナイロン−6を用いて、実施例1と同様な方法でナイロン−6とシリカとの複合体を作製した。EPMA測定を行ったところ、シリカは表面付近にのみ観測され、実施例1と同じ形態の傾斜複合体が得られた。
【0078】
複合体を150℃で2時間、熱処理したが、複合体の外観に変化は全く見られなかった。一方、ナイロン−6単体を150℃で2時間熱処理したところ、黄色く変色した(比較例1)。更に、150℃で熱処理した複合体のIZOD衝撃特性を測定したところ、約55kg・cmであった。150℃で熱処理したナイロン−6のIZOD強度は12kg・cmであり、実施例は著しく耐熱特性が向上しているのが判る。尚、IZOD試験は2mm厚、4mm幅のサンプルを用い、ノッチ無で行った。
【0079】
(実施例3)
TMOS含浸操作の際の含浸液の組成をTMOSとメタノール(重量比=20:1)とした場合について検討を行った。なお、含浸液の組成以外の条件は実施例1と同じにした。EPMA測定で得られた複合体断面のSi分布を図3に示す。表面から深さ約90μmの位置にシリカ濃度の最大値(2つ)を有する形態のナイロン−6とシリカとの傾斜複合体が得られた。シリカ濃度の最大値/最小値は約26であった。800℃で2時間焼成したところ、約4.3重量%の灰分が見られた。
【0080】
(実施例4)
TMOS含浸操作の際の含浸液の組成をTMOSとメタノール(重量比=5:1)とした場合について検討を行った。なお、含浸液の組成以外の条件は実施例1と同じにした。EPMA測定で得られた複合体断面のSi分布を図4に示す。複合体の中心部にシリカ濃度の最大値を有する形態のナイロン−6とシリカとの傾斜複合体が得られた。シリカ濃度の最大値/最小値は約2.8であった。800℃で2時間焼成したところ、約3.8重量%の灰分が見られた。
【0081】
(実施例5)
TMOS含浸操作の際の含浸液の組成をTMOSとメタノール(重量比=25:2)とし、含浸温度を50℃として行った。含浸液の組成及び含浸温度以外の条件は実施例1と同じとした。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図5に示す。表面に極めて高いシリカ濃度を持ち、表面から30μmの間で濃度が1/2まで急激に減少し、更にその内側では緩やかに濃度が減少する形態の傾斜複合体が得られた。シリカ濃度の最大値/最小値は約25であった。800℃で2時間焼成したところ、約8.0重量%の灰分が見られた。
【0082】
(実施例6)
フィルム状のナイロン−6をメタノールと0.8モル/lのアンモニア水溶液(重量比=2:1)からなる膨潤液に浸漬させ、80℃で3時間攪拌した。約24.5重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとメタノール(重量比=5:1)からなる含浸液に浸漬させ、30℃で5時間保持した後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取り、室温で5時間乾燥させた。更に、80℃真空中で24時間熱処理を行いナイロン−6とシリカの複合体を得た。
【0083】
EPMAを用いて、複合体の断面のSiの分布を測定した。図6に結果を示す。表面から100μm内部に極大値を形成し、中心部が緩やかな傾斜で窪んでいる形態の傾斜複合体が得られている。シリカ濃度の最大値/最小値は約3.5であり、最大値と中心の鞍部の比(最大値/鞍部)は約1.5である。800℃で2時間焼成したところ、約11.2重量%の灰分が見られた。膨潤操作の際にアンモニア触媒を用いることで複合体中のシリカ固定量が増大した。
【0084】
(実施例7)
厚さ0.5mmのフィルム状のナイロン−6をメタノールと0.23モル/lの塩酸水溶液(重量比=2:1)からなる膨潤液に浸漬させ、80℃で3時間攪拌した。約26重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとメタノール(重量比=20:1)からなる含浸液に浸漬させ、30℃で5時間保持した後、液中から試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取り、0.4モル/lのアンモニア水の飽和水蒸気雰囲気下で10時間(20℃)保持した。更に室温で15時間乾燥後、80℃で24時間真空乾燥を行いナイロン−6とシリカの複合体を得た。
【0085】
EPMAを用いて、複合体の断面のSiの分布を測定した。図7に結果を示す。表面に極めて高いシリカ濃度を持った形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約6.4重量%の灰分が見られた。
【0086】
(実施例8)
TMOS含浸処理の際の含浸液の組成をTMOSとメタノール(重量比=10:1)とした場合について検討した。含浸液の組成以外の条件は実施例7と同じとした。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図8に示す。極めて複雑なシリカ分布を持つ形態の傾斜複合体が得られた。シリカ濃度の最大値/最小値は約6である。800℃で2時間焼成したところ、約5.1重量%の灰分が見られた。含浸液中のメタノール量を若干変えるだけでシリカの分布が大幅に変わるのが判る。
【0087】
(実施例9)
TMOSの代わりに、TMOSの部分重合物(MS−51;三菱化学株式会社製、分子量約500)を用いた場合について検討を行った。シリコーンアルコキシドとしてMS−51を用い、MS−51に浸漬する温度を50℃とした以外の条件は実施例1と同じとした。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図9に示す。表面に極めて大きいシリカ濃度を持ち、表面から60μmの間でシリカ濃度がゼロまで急激に減少する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約1.2重量%の袋状の灰分が見られた。
【0088】
(実施例10)
MS−51の含浸液の組成をMS−51/メタノール(重量比=4:1)とした場合について検討を行った。含浸液の組成以外の条件は実施例9と同じとした。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図10に示す。表面付近にシリカ濃度の最大値を持ち、内部に向かって緩やかな傾斜で減少する形態の傾斜複合体が得られた。シリカ濃度の最大値/最小値は約2.8である。800℃で2時間焼成したところ、約4.8重量%の灰分が見られた。
【0089】
(実施例11)
塩化ビニル(三菱化学株式会社製)のシートをアセトンと蒸留水(重量比=2:1)混合溶媒に3時間、30℃で浸漬させた。約21重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとアセトン(重量比=20:1)の含浸液に5時間、30℃で浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取り、0.5モル/lのアンモニア水溶液の蒸気雰囲気中に8時間保持した。
【0090】
更に、室内(温度23℃、湿度35%)で17時間乾燥後、80℃で24時間熱処理を行い、塩化ビニルとシリカの複合体を得た。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図11に示す。表面部から内部に向かってシリカ濃度が徐々減少する形態で、複合層が表面から約190ミクロンに渡って形成されており、約190ミクロン内部で断層が生じ、この内部では複合化されていない形態の傾斜複合体が得られた。複合層でのシリカ濃度の最大値/最小値は約1.8である。800℃で約2時間焼成したところ約8.9重量%の灰分が認められた。
【0091】
(実施例12)
塩化ビニルをアセトンに10分間、30℃で浸漬させた。約50重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとトルエン(重量比=1:1)の含浸液に8時間、30℃で浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取り、0.5モル/lのアンモニア水溶液の蒸気雰囲気中に8時間保持した。更に、室内(温度23℃、湿度35%)で3時間乾燥後、80℃で24時間熱処理を行い塩化ビニルとシリカの複合体を得た。
【0092】
EPMA測定より得られた複合体のSi分布を図12に示す。表面にシリカ濃度の最大値を持ち、ある厚みまで濃度が急激に減少し、内部では均一なシリカ濃度となった形態の傾斜複合体が形成されている。傾斜層は表面から約80μmの間にあり、シリカ濃度の最大値/最小値は約1.9である。800℃で約2時間焼成したところ約8.9重量%の灰分が認められた。
【0093】
(実施例13)
実施例12において、TMOSを含浸させた後、アンモニア水溶液の蒸気雰囲気下で保持しないで、室内(温度23℃、湿度35%)で15時間乾燥させた場合について検討を行った。図13にEPMA測定の結果を示す。複合体の中心部にシリカ濃度の最大値を持つ形態の傾斜複合体が形成されている。TMOSを含浸した後、表面部よりTMOSが蒸発し、このような形態が形成されたものと考えられる。シリカ濃度の最大値/最小値は約2.3であった。800℃で約2時間焼成したところ約10重量%の灰分が認められた。
【0094】
(実施例14)
アクリル樹脂(アクリライト−L;三菱レイヨン株式会社製)フィルムをTMOSとメタノール(重量比=1:1)に約7日間、30℃で浸漬させた。
約98重量%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取り、0.5モル/lのアンモニア水溶液中に約3時間(25℃)浸漬させた後、室内(温度20℃、湿度35%)で約17時間乾燥し、更に80℃で24時間熱処理を行いアクリル樹脂とシリカの複合体を得た。
【0095】
EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図14に示す。表面部から内部に向かってシリカ濃度が徐々に減少する形態で、中心の約45μm部分が複合化されていない形態の傾斜複合体が得られている。複合層の厚みは表面から330μmであり、複合層でのシリカ濃度の最大値/最小値は約3であった。800℃で2時間焼成したところ、約17重量%の灰分が見られた。
【0096】
(実施例15)
アクリル樹脂フィルムを50℃のTMOSとメタノール(重量比=1:1)含浸液に約1時間浸漬させた。約105%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、1.2モル/lのアンモニア水溶液中に5時間(30℃)浸漬させた後、室内(温度20℃、湿度35%)で約17時間乾燥し、更に80℃で24時間熱処理を行いアクリル樹脂とシリカの複合体を得た。
【0097】
EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図15に示す。表面部から内部に向かってシリカ濃度が徐々に減少する形態の複合体が得られた。複合層でのシリカ濃度の最大値/最小値は約2.5であった。実施例14に比べて傾斜が緩くなっているが、全領域が複合化されている。800℃で2時間焼成したところ、約19重量%の灰分が見られた。
【0098】
(実施例16)
アクリル樹脂フィルムをメタノールとMS−51(重量比=1:1)に約2日間、30℃で浸漬させた。約12重量%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.5モル/lのアンモニア水に約5時間浸漬させた後、室内(温度20℃、湿度35%)で約17時間乾燥し、更に80℃で24時間熱処理を行いアクリル樹脂とシリカの複合体を得た。
【0099】
EPMA測定より得られた複合断面のSi分布を図16に示す。表面にシリカ濃度の最大値があり、表面より25μmの間で濃度がゼロまで急激に減少する形態の傾斜複合体が得られた。表面より25μm以上内側ではシリカ濃度はほとんどゼロであり、複合化されていない。800℃で2時間焼成したところ、約0.8重量%の袋状の灰分が見られた。
【0100】
(実施例17)
ナイロン−66フィルムをテトラヒドロフラン(THF)と蒸留水とトリエチルアミン(重量比=40:10:1)からなる膨潤液に80℃で5時間浸漬させた。約15重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOS溶液に約12時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、室温で約4時間乾燥し、更に80℃真空中で24時間熱処理を行いナイロン−66とシリカの複合を得た。
【0101】
EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図17に示す。表面のシリカ濃度の最大値を持ち、内部に向かって減少する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約2.1重量%の灰分が見られた。
【0102】
(実施例18及び比較例2)
ポリプロピレン(三菱ポリプロ PY−240B、三菱化学株式会社製)のフィルムを105℃のトルエン中に約2時間浸漬させた。約100重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOS中に30℃で20時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.6モル/lのアンモニア雰囲気下で17時間保持させた。室温で5時間乾燥させた後、80℃で3時間、150℃で2時間熱処理してポリプロピレンとシリカの複合体を得た。
【0103】
ポリプロピレンの外観に変化は見られなかった。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図18に示す。表面にシリカ濃度の最大値を持った形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約18重量%の灰分が得られた。
【0104】
動的粘弾性測定を行ったところ、複合体の30℃と100℃でのヤング率はそれぞれ1.5GPaと530MPa、tan δのピーク温度は143℃であった。また、ポリプロピレン単体(比較例2)の30℃と100℃のヤング率はそれぞれ0.8GPaと250MPaであり、tan δピークは81℃であった。弾性特性が著しく向上しているのが判る。
【0105】
エポキシ系接着剤(セメダイン ハイスーパー30、セメダイン株式会社製、アラルダイト)に対する接着性を調べた。複合体とポリプロピレン樹脂単体にそれぞれ接着剤を付けて、接着剤を塗布した面を互いに重ね合わせて接着剤を硬化させた。接着部分を剥離したところ剥離はポリプロピレンと接着剤との接着面で生じており、エポキシ系接着剤に対する接着性が向上しているのが判る。
【0106】
なお、動的粘弾性測定はセイコー電子工業株式会社製のDMA−200を用いて、2℃/分で昇温し、1Hzで測定した。
【0107】
(実施例19)
ポリアセタール(ユピタール F−10、三菱瓦斯化学株式会社製)を100℃のエトラクロロエタン中に3時間浸漬させた。約18重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOS液中に17時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.6モル/lのアンモニア雰囲気下で17時間保持させた。室温で5時間乾燥させた後、80℃で3時間、150℃で2時間熱処理してポリアセタールとシリカの複合体を得た。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図19に示す。表面にシリカ濃度の最大値を持った形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約11重量%の灰分が得られた。
【0108】
(実施例20)
ポリビニリデンフロライド(1000VLD 昭和電工株式会社製)のフィルムを50℃の2−ブタノン溶液に4時間浸漬させた。約9.5重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOSとトリエチルアミン(重量比=10:1)の含浸液中に15時間浸漬させた後、室温で15時間乾燥させた。更に、80℃で24時間、150℃で2時間熱処理してポリビニリデンフロライドとシリカの複合体を得た。EPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を図20に示す。表面にシリカ濃度の最大値を持った形態の傾斜複合体が得られた。
【0109】
(実施例21)
ポリブチレンテレフタレート(PBT;大日本インキ化学工業株式会社製のプラナック BT−128)のシートを80℃のテトラヒドロフラン(THF)と蒸留水とトリエチルアミン(重量比=40:10:1)の混合溶媒に8時間浸漬させた。約4重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOSとクロロホルム(重量比=10:1)の含浸液に15時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、室温で24時間乾燥させた。更に、80℃で10時間、150℃で3時間熱処理を行いPBTとシリカとの複合体を得た。
【0110】
図21にEPMA測定より得られた複合体断面の表面付近のSi分布を示す。表面にシリカ濃度の最大値を持ち70μmで濃度がゼロまで急激に減少する形態の傾斜複合体が得られた。表面より70μm以上内部ではシリカ濃度は殆どゼロであり、複合化されていない。800℃で2時間焼成したところ、約0.6重量%の袋状の灰分が見られた。
【0111】
(実施例22)
PBTのシートをクロロホルム中に60℃で4時間浸漬させた。約28重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOS液に5時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、室温で24時間乾燥させた。更に、80℃で10時間、150℃で3時間熱処理を行いPBTとシリカとの複合体を得た。図22にEPMA測定より得られた複合体断面の表面付近のSi分布を示す。表面にシリカ濃度の最大値を持ち厚み方向に緩やかに傾斜する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約1重量%の袋状の灰分が見られた。
【0112】
(実施例23)
ポリエチレンテレフタレート(PET;三井ペット株式会社製のJ−125)を250℃で溶融プレス後、水中に急冷して非晶性の高い透明性PETフィルムを得た。透明PETフィルムをクロロホルム溶液に60℃で4時間浸漬させた。約45重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOSとクロロホルム(重量比=10:1)の含浸液に15時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.15モル/lのアンモニア水溶液に約5時間浸漬させた。更に、室温で5時間乾燥し、80℃で4時間、150℃で3時間熱処理を行いPETとシリカとの複合体を得た。
【0113】
図23にEPMA測定より得られた複合体断面の表面付近のSi分布を示す。表面にシリカ濃度の最大値を持ち厚み方向に向かって濃度が減少する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約5.3重量%の袋状の灰分が見られた。
【0114】
(実施例24)
PETの配向フィルムをクロロホルムとトリエチルアミン(重量比=50:2)の溶液に60℃で5時間浸漬させた。約18重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOS溶液に15時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.5モル/lのアンモニア水溶液の蒸気雰囲気下で約5時間保持させた。更に、室温で5時間乾燥、80℃で4時間、150℃で3時間熱処理を行いPETとシリカとの複合体を得た。
【0115】
図24にEPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を示す。表面部分に濃いシリカ濃度を持ち厚み方向に傾斜する形態の傾斜複合体が得られた。複合化は表面から15μmの間で行われており、それより内側ではシリカ濃度は殆どゼロとなり、複合化されていない。800℃で2時間焼成したところ、約1重量%の灰分が見られた。
【0116】
(実施例25)
PETフィルムをテトラクロロエタン中に110℃で5時間浸漬させた。約32重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとテトラクロロエタン(重量比=1:1)の含浸液に30℃で10時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.5モル/lのアンモニア水溶液の蒸気雰囲気下で約5時間保持させた。更に、室温で5時間乾燥、80℃で4時間、150℃で3時間熱処理を行いPETとシリカとの複合体を得た。
図25にEPMA測定より得られた複合体断面のSi分布を示す。800℃で2時間焼成したところ、約3.5重量%の灰分が見られた。
【0117】
(実施例26)
ポリエステル系の熱可塑性エラストマー(大日本インキ化学工業株式会社製のグリラックス E−500)のシートをクロロホルムとテトラエトキシスズ(重量比=10:1)の含浸液に5日間浸漬させた。約100重量%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、室温で24時間乾燥後、100℃で24時間熱処理を行い熱可塑性エラストマーと酸化スズとの複合体を得た。
【0118】
図26にEPMAによって得た複合体断面でのスズの分布を示す。
表面に酸化スズ濃度の最大値を持ち厚み方向に向かって傾斜する形態の傾斜複合体が得られた。傾斜領域は表面から約140μmまでであり、それより内側では一定の濃度となっている。800℃で2時間焼成したところ、約2.5重量%の灰分が見られた。
【0119】
(実施例27)
ポリエステル系の熱可塑性エラストマーの球状ペレット0.4gに、TMOSの部分重合物(MS−56;三菱化学株式会社製、分子量約1000)とクロロホルムとエチレンジアミン(重量比=10:100:1)の含浸液2gを含浸させた。次いで、0.5モル/lのアンモニア水溶液の蒸気雰囲気下で24時間保持した後、室温で24時間、80℃で24時間熱処理を行い熱可塑性エラストマーとシリカとの複合体を得た。
【0120】
図27はEPMA測定より得た複合体断面の中心部から表面までのシリカ分布を示す。表面にシリカ濃度の最大値を持ち内部に向かって傾斜する形態の傾斜複合体が得られた。傾斜層は表面から900μmに渡っており、それより内側では一定のシリカ濃度となっている。800℃で約2時間焼成したところ約14.5重量%の袋状の灰分が認められた。
【0121】
(実施例28)
ナイロン−6をメタノールと蒸留水(重量比=2:1)からなる膨潤液に浸漬させ、80℃で3時間攪拌した。約25重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOSとメタノール(重量比=10:1)の含浸液に4日間浸漬させた。更に、このTMOSを含浸したナイロン−6シートをメタノールと蒸留水とトリエチルアミン(重量比=80:40:1)からなる膨潤液に浸漬させ、80℃で3時間攪拌した後、30℃のTMOS溶液に5時間浸漬させた。液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取った後、室温で24時間乾燥させ、80℃真空中で24時間熱処理を行い、ナイロン−6とシリカの複合体を得た。
【0122】
EPMAを用いて、複合体の断面のSiの分布を測定した。図28に結果を示す。表面付近に極めて濃いシリカ濃度を持ち、厚み方向に向かって濃度が急激に低下する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約15重量%の袋状の灰分が見られた。傾斜複合化の処理を2度行うことで、シリカ濃度が極めて高い成分傾斜複合体が得られた。
【0123】
(実施例29)
塩化ビニルのシートを30℃のTMOSとアセトン(重量比=1:1)の含浸液に6時間浸漬させて、含浸液を十分に含浸させた。約120重量%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取った後、TMOSを含浸した塩化ビニルシートを80℃で約15時間保持して塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。EPMAを用いて、複合体の断面のSiの分布を測定した。図29に結果を示す。内部に2つのシリカ濃度の最大値を持ち緩やかに傾斜する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約13.6重量%の灰分が見られた。
【0124】
(実施例30)
実施例29において、TMOSを含浸した塩化ビニルシートを30℃の蒸留水中に約3時間浸漬させた後、室温で15時間乾燥させ、80℃で約15時間熱処理を行い塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。EPMAを用いて、複合体の断面のSiの分布を測定した。図30に結果を示す。表面部に鋭いピークのシリカ濃度の最大値を持ち、且つ内部には緩やかな傾斜で中心部にシリカ濃度の極大値を形成する傾斜する形態の傾斜複合体が得られている。800℃で2時間焼成したところ、約20重量%の灰分が見られた。
【0125】
(実施例31)
塩化ビニルのシートをトルエンとトリイソプロポキシアルミニウム(重量比=4:1)の含浸液に15時間、30℃で浸漬した。約22.5重量%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取った後、0.5モル/lのアンモニア水の蒸気雰囲気中に約15時間保持して塩化ビニルとアルミナとの複合体を得た。EPMAによる複合体断面のAlの分布測定結果を図31に示す。表面部に鋭いピークのアルミナ濃度の最大値を持つ形態の傾斜複合体が得られている。800℃で2時間焼成したところ、約1.5重量%の灰分が得られた。
【0126】
(実施例32)
カルボン酸変性のポリプロピレン(ダイナール GH−110、大日本インキ化学工業株式会社製)をトルエルに80℃で約6時間浸漬させた。約24重量%の重量増加が見られた。次いで、30℃のTMOS溶液に15時間浸漬させた後、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.6モル/lのアンモニア水溶液雰囲気中に約5時間保持させた。更に、室温で3時間乾燥、80℃で24時間、150℃で5時間熱処理を行い変性ポリプロピレンとシリカとの複合体を得た。EPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を図32に示す。 表面にシリカ濃度の最大値を有する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約6.7重量%の灰分が見られた。
【0127】
(実施例33)
スチレン系共重合体(クリアパクトTI−300、大日本インキ化学工業株式会社製)をMS−51とメタノール(重量比=1:1)の含浸液に50℃で90分間浸漬させた。約17重量%の重量増加が見られた。次いで、液中より試片を取り出し、表面の溶液を良く拭き取った後、0.6モル/lのアンモニア水溶液雰囲気中に約5時間保持して、室温で3時間乾燥、更に80℃で24時間熱処理を行いスチレン系共重合体とシリカとの複合体を得た。EPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を図33に示す。表面部にシリカ濃度の最大値を有する形態の傾斜複合体が得られた。800℃で2時間焼成したところ、約3.5重量%の灰分が見られた。
【0128】
(比較例3)
MS−51とメタノールと蒸留水(重量比=4:1:0.8)からなる均質透明なゾル溶液を調製した。該ゾル溶液を25℃で2日間攪拌した後、ナイロン−6とアクリル樹脂のシート上に塗布し、スピンコート(1000rpm、20秒)を行ったが、ナイロン−6とアクリル樹脂は共にゾル溶液をはじき、コートすることができなかった。更に、ディップコート法によりコーテングを試みたが、ゾル液はナイロン−6及びアクリル樹脂上で液滴となりコーティグすることが出来なかった。
【0129】
(比較例4及び5)
MS−51を直接ナイロン−6のシートとアクリル樹脂のシート(0.5mm厚)上に各々塗布し、スピンコート(1000rpm、20秒)を行った。MS−51ははじかれることなく、均質にコーティングされた。コート後、室温で5時間乾燥し、更に80℃で24時間熱処理を行った。
【0130】
コーティングされた有機高分子表面のシリカの様子を調べるために、表面部のSiのEPMAスペクトルを測定した。結果を図34(比較例4、ナイロン−6)と図35(比較例5、アクリル樹脂)に示す。シリカは表面部のみに見られ、有機高分子内には透浸していない。また、塗布されたシリカ量は極微量である。800℃で2時間焼成したが、ナイロン−6では灰分は見られず、アクリル樹脂では灰分の存在は確認できたが微量で残量を求めることは出来なかった。
【0131】
(実施例34)
アクリル樹脂のシートを50℃のメタノールに20分間浸漬させた。約22重量%の重量増加が見られた。次いで、テトラブトキシチタンとアセチルアセトン(モル比=1:2)との溶液に室温で4時間浸漬させた後、溶液から取り出しメタノールで表面を洗浄して、室温で約15時間乾燥させた。更に、80℃で24時間熱処理を行いアクリル樹脂と酸化チタンとの複合体を得た。図36はEPMA測定より得られた複合体断面のTiの分布を示している。表面にチタニア濃度の最大値を持つ形態の複合体が得られている。800℃で2時間焼成したところ、3.5重量%の灰分が見られた。
【0132】
(実施例35)
ポリ塩化ビニルのシートを30℃のアセトンに30分間浸漬させた。約150重量%の重量増加が見られた。次いで、テトラエトキシチタンと酢酸(モル比=2:1)との溶液に室温で4時間浸漬させた後、溶液から取り出しメタノールで表面を洗浄して、室温で約15時間乾燥させた。更に、80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルと酸化チタンとの複合体を得た。図37はEPMA測定より得られた複合体断面のTiの分布を示している。表面にチタニア濃度の最大値を持つ形態の複合体が得られている。800℃で2時間焼成したところ、3.5重量%の灰分が見られた。
【0133】
(実施例36)
ナイロン−6のシートを40℃の1.2モル/lのアンモニア水とメタノール(重量比=2:1)との混合溶液に2時間浸漬させた。約9重量%の重量増加が見られた。次いで、100℃に加熱したTMOSの蒸気雰囲気下で3時間保持した後、取り出し、室温で2時間乾燥させた。更に、80℃で24時間熱処理を行いナイロン−6とシリカとの複合体を得た。図38はEPMA測定より得られた複合体断面のSiの分布を示している。表面にシリカ濃度の最大値を持つ形態の複合体が得られている。800℃で2時間焼成したところ、0.5重量%の灰分が見られた。
【0134】
(実施例37)
TMOS 10gとアセトン 10gと水 1.2gの含浸液を調製し、含浸液調製後すぐにポリ塩化ビニルのシートを2時間(30℃)浸漬させた。63重量%の重量増加が見られた。樹脂を取り出し、室温で2時間乾燥させた後、80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。図39はEPMA測定より得られた複合体断面のSiの分布を示している。800℃で2時間焼成したところ、21重量%の灰分が見られた。
【0135】
(実施例38)
含浸液に蒸留水を4.6g(実施例38)添加した場合について、実施例37と同様な検討を行った。図40はEPMA測定より得られた複合体断面のSiの分布を示している。なお、水を添加しない場合には、シリカはほとんど均質に分布した形態の複合体となっており、含浸液中に水を添加することによって得られる複合体の傾斜形態が大きく異なっているのが判る。800℃で2時間焼成したところ、灰分は3重量%であった。
【0136】
(実施例39)
実施例37で使用した含浸液を30℃で2時間攪拌させた後、ポリ塩化ビニルのシートを含浸液に2時間(30℃)させた。樹脂を取り出し、室温で2時間乾燥させた後、80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。図41はEPMA測定より得られた複合体断面のSiの分布を示している。800℃で2時間焼成したところ、18重量%の灰分が見られた。TMOSを2時間反応させた含浸液を使用することにより、複合体の傾斜形態が変化している。
【0137】
(実施例40)
ポリ塩化ビニルのシートをTMOSとトルエン(重量比=1:1)の含浸液に30℃で24時間浸漬させた。約50重量%の重量増加が見られた。次いで、ポリマーを溶液より取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.2モル/lの塩酸水溶液中に約5時間保持させた。室温で15時間乾燥させた後、80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。複合体の厚みは約600μmであった。複合体中のシリカ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、表面付近では600〜800nmのシリカ粒子が見られ、表面より150μm程度内部では200〜400nm、中心部付近では150〜200nmのシリカ粒子が観察された。
【0138】
(実施例41)
ポリ塩化ビニルのシートをTMOSとトルエン(重量比=1:1)の含浸液に30℃で24時間浸漬させた。約50重量%の重量増加が見られた。次いで、ポリマーを溶液より取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.6モル/lのアンモニア水溶液中に約5時間保持させた。室温で15時間乾燥させた後、80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。複合体の厚みは約600μmであった。複合体中のシリカ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、表面付近では20〜100nmのシリカ粒子が見られ、表面より約150μm内部では100〜200nm、中心部付近では200〜300nmのシリカ粒子が観察された。
【0139】
(実施例42)
ポリ塩化ビニルのシートをアセトンと酢酸(重量比=10:1)の溶液に30℃で1時間浸漬させた。約130重量%の重量増加が見られた。次いで、TMOSとアセトン(重量比=1:1)の含浸液に30℃で16時間浸漬させ、ポリマーを溶液より取り出し、表面の溶液を良く拭き取って、0.7モル/lのアンモニア水溶液中に約5時間保持させた。更に、室温で15時間乾燥させた後、80℃で24時間熱処理を行いポリ塩化ビニルとシリカとの複合体を得た。複合体中のシリカ粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したところ、表面から20μmまでの層では150nm以下のシリカの微細粒子が見られ、その層の内側にで500〜1000nmの巨大粒子の層があり、中心部付近では80〜200nmのシリカ粒子の層が観察された。
【0140】
【発明の効果】
本発明は、成形材料、電気・電子部品、機械部品、自動車部品、スポーツ用品、フィルム、繊維等の種々の資材として有用な、耐熱特性、破壊強度等の力学的特性、及び接着性に優れ、且つ、所望に応じて透明性を変化させ得る、金属酸化物が連続的な成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の優れた製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法により製造される、金属酸化物粒子が成分傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の種々の形態の概略を模式的に示す図である。a〜hの各々が、発明の複合体の一形態を示している。a〜hの各々の縦軸は金属酸化物の濃度、横軸は有機高分子の断面の距離(厚み)を示す。
【図2】実施例1で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図3】実施例3で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図4】実施例4で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図5】実施例5で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図6】実施例6で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図7】実施例7で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図8】実施例8で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図9】実施例9で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図10】実施例10で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図11】実施例11で得られた塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図12】実施例12で得られた塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図13】実施例13で得られた塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図14】実施例14で得られたアクリル樹脂とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図15】実施例15で得られたアクリル樹脂とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図16】実施例16で得られたアクリル樹脂とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。表面付近の拡大図も共に示す。
【図17】実施例17で得られたナイロン−66とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図18】実施例18で得られたポリプロピレンとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図19】実施例19で得られたポリアセタールとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図20】実施例20で得られたポリビニリデンフロライドとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図21】実施例21で得られたポリブチレンテレフタレートとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。表面付近の拡大図も共に示す。
【図22】実施例22で得られたポリブチレンテレフタレートとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図23】実施例23で得られたポリエチレンテレフタレートとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図24】実施例24で得られたポリエチレンテレフタレートとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図25】実施例25で得られたポリエチレンテレフタレートとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図26】実施例26で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマーと酸化錫との複合体のEPMAによる複合体断面の錫分布の測定結果を示す図である。
【図27】実施例27で得られたポリエステル系熱可塑性エラストマーとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図28】実施例28で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図29】実施例29で得られた塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図30】実施例30で得られた塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図31】実施例31で得られた塩化ビニルとアルミナとの複合体のEPMAによる複合体断面のAl分布の測定結果を示す図である。
【図32】実施例32で得られたカルボン酸変性ポリプロピレンとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図33】実施例33で得られたスチレン系共重合体とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図34】比較例4で得られたナイロン−6にシリカをコーテイングした試料のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図35】比較例5で得られたアクリル樹脂にシリカをコーテイングした試料のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図36】実施例34で得られたアクリル樹脂とチタニアとの複合体のEPMAによる複合体断面のTi分布の測定結果を示す図である。
【図37】実施例35で得られたポリ塩化ビニルとチタニアとの複合体のEPMAによる複合体断面のTi分布の測定結果を示す図である。
【図38】実施例36で得られたナイロン−6とシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。表面付近の拡大図も共に示す。
【図39】実施例37で得られたポリ塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図40】実施例38で得られたポリ塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
【図41】実施例39で得られたポリ塩化ビニルとシリカとの複合体のEPMAによる複合体断面のSi分布の測定結果を示す図である。
Claims (9)
- 金属アルコキシドを有機高分子固体内部に、濃度傾斜を持つように含浸させた後、該金属アルコキシドを重縮合反応させ、金属酸化物として固定化することを特徴とする成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 成分濃度傾斜構造を有すると共に、有機高分子中に分散する金属酸化物の粒子径の大きさが連続的に変化した形態を有する請求項1記載の有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 固形の有機高分子を金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液に浸漬し、金属アルコキシドが有機高分子中に均一に含浸する前に、浸漬操作を終了することにより、有機高分子内部に金属アルコキシドの濃度傾斜構造を形成させる請求項1又は2記載の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 固形の有機高分子を金属アルコキシドまたは金属アルコキシドを含む溶液に浸漬し、固形の有機高分子中に金属アルコキシドを含浸させた後、該有機高分子から金属アルコキシドの一部を除去することにより、有機高分子内部に金属アルコキシドの濃度傾斜構造を形成させる請求項1又は2記載の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 固形の有機高分子に金属アルコキシドを均一に含浸させ、次いで、該有機高分子に水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を濃度傾斜を持つように含浸させ、金属アルコキシドの重縮合反応を行う請求項1又は2記載の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 膨張液で予め膨潤させた固形の有機高分子を用いる請求項3〜5のいずれか一つに記載の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 金属アルコキシドを含浸させた固形の有機高分子を、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を含む水溶液または水蒸気雰囲気中に保持することにより、水及び/又は酸性触媒もしくは塩基性触媒を該有機高分子に含浸させて、該有機高分子中の金属アルコキシドを重縮合反応させ、金属酸化物として固定化させる請求項1〜6のいずれか一つに記載の製造方法。
- 有機高分子として、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ポリスチレン共重合体、熱可塑性エラストマー、ポリアセタール、フッ素系樹脂から選ばれる少なくとも1種を用いる請求項1〜7のいずれか一つに記載の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
- 得られる有機高分子と金属酸化物との複合体が、該複合体中に分布する金属酸化物の局所濃度の最大値と最小値の比が1.5以上である請求項1〜8のいずれか一つに記載の成分濃度傾斜構造を有する有機高分子と金属酸化物との複合体の製造方法。
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