JP6615543B2 - ニッケル−タングステン合金めっき液及びニッケル−タングステン合金めっき方法 - Google Patents

ニッケル−タングステン合金めっき液及びニッケル−タングステン合金めっき方法 Download PDF

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本発明は、高硬度で耐摩耗性に優れたニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成に用いるニッケル−タングステン合金めっき液及びニッケル−タングステン合金めっき方法に関する。
従来より、自動車部品や航空部品などの摺動性が要求される機械部品には、表面に硬質クロムめっき皮膜を形成することによって、高硬度で高い耐摩耗性を実現している。しかしながら、近年は水質汚染や大気汚染などの深刻な環境破壊の問題から工業製品において規制が厳しくなっている。2006年のREACH規制や2007年のRohs規制によって、ヨーロッパや米国においては環境や人に悪影響を及ぼすカドミニウムやクロムなどの有害物質の使用は制限されるようになった。そこで、近年では、硬質クロムめっきの代替として高硬度で高摩耗性に優れているニッケル−タングステン合金めっきが開発されている。
例えば、特許文献1には、アンモニアを用いることなしで、硬度が高く、耐食性・耐摩耗性に優れ、離型性に優れたニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成するためのニッケル−タングステン合金めっき液が開示されている。当該特許文献1では、「タングステン酸のナトリウム塩及びカリウム塩の少なくとも1種0.2〜0.6M(Mはモル濃度、以下同じ)、硫酸ニッケル0.07〜0.2M、クエン酸アンモニウム0.2〜0.4M、及びクエン酸又はクエン酸のナトリウム塩又はカリウム塩0.2〜0.4Mを必須成分として含有し、酸又はアルカリの添加によりpHが4〜6に維持されていることを特徴とするニッケル−タングステン合金めっき液」が採用されている。
特開2006−104574号公報
上述の特許文献1に開示された硫酸ニッケルをベースとする浴組成は、ニッケル−タングステン合金めっきの浴組成として一般的に使用されているものであり、当該浴のpHは4〜5の範囲が主流とされている。しかしながら、当該硫酸ニッケルをベースとする従来の浴組成では、電流効率が低く、その傾向は、めっき皮膜の硬度を高めるために、浴組成のタングステン含有率を高める程、顕著となる。よって、市場からは、より高い硬度のニッケル−タングステン合金めっき皮膜を、高い電流効率で形成することを可能とするニッケル−タングステン合金めっき液及び当該ニッケル−タングステン合金めっき液を用いためっき方法の開発が要求されていた。
そこで、本件発明者等は、鋭意研究の結果、より高い電流効率で高硬度のニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成することを可能とするニッケル−タングステン合金めっき液及びニッケル−タングステン合金めっき方法に想到した。以下、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液及びニッケル−タングステン合金めっき方法について述べる。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、被めっき物の表面に、電解めっき法によるニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成に用いるものであって、ニッケルの供給源として塩化ニッケルのみを用い、タングステンの供給源であるタングステン酸塩と、錯化剤とを含み、pHが0.1〜3.0であることを特徴とする。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、前記タングステン酸塩がタングステン酸ナトリウムであることが好ましい。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、前記錯化剤がクエン酸、クエン酸塩、又は、塩化アンモニウムの何れか1種又は2種以上であることが好ましい。
錯化剤は、更に、エチレンジアミン四酢酸を含むことが好ましい。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、ニッケルイオンとタングステン酸イオンの含有量が以下に示す範囲であることが好ましい。
ニッケルイオン : 0.1mol/L〜1.0mol/L
タングステン酸イオン : 0.05mol/L〜0.5mol/L
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき方法は、上述したニッケル−タングステン合金めっき液を用い、液温20℃〜60℃とし、電流密度1.0A/dm〜20A/dmで電解し、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成することを特徴とする。
本発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液によれば、従来の硫酸ニッケルを用いたニッケル−タングステン合金めっき液より得られたニッケル−タングステン合金めっき皮膜と同等の硬度のめっき皮膜を、より高い電流効率で形成することが可能となる。よって、従来と同様の硬度のニッケル−タングステン合金めっき皮膜の生産性が向上する。従って、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、耐食性や耐摩耗性が要求される被めっき物へのニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成に好適である。
以下、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液及び当該めっき液を用いたニッケル−タングステン合金めっき方法の好ましい実施の形態について説明する。まずはじめに、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液の実施の形態について述べた後、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき方法の実施の形態について述べる。
<本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液>
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、被めっき物の表面に、電解めっき法によるニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成に用いるニッケル−タングステン合金めっき液であって、ニッケルの供給源として塩化ニッケルのみを用い、タングステンの供給源であるタングステン酸塩と、錯化剤とを含み、pHが0.1〜3.0であることを特徴としている。
(1)塩化ニッケル
塩化ニッケルは、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において必須の成分である。塩化ニッケルは、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において、ニッケルの供給源として用いられる。当該塩化ニッケルは、水への溶解性が高く、アニオン成分の耐分解性が高い点で有利だからである。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において、めっき液のニッケルイオンの濃度が0.1mol/L〜1.0mol/Lの範囲内となるように塩化ニッケルの濃度を調整することが好ましい。めっき液のニッケルイオンの濃度が0.1mol/L未満の場合には、めっき液中のニッケルイオンの濃度が低すぎて、電解を行ってもニッケルの析出速度が遅く、また析出量も少なくなるため好ましくない。一方、めっき液のニッケルイオン濃度が1.0mol/Lを超える場合、めっき液の安定性が低下するため好ましくない。これらの観点から、当該ニッケル−タングステン合金めっき液中のニッケルイオンの濃度は、0.1mol/L〜0.5mol/Lとなるような範囲内であることがより好ましい。
(2)タングステン酸塩
タングステン酸塩は、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において必須の成分である。タングステン酸塩は、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において、タングステンの供給源として用いられる。本件発明において、タングステン塩は、タングステン酸ナトリウムや、タングステン酸カリウム、タングステン酸アンモニウム等の水溶性の高い塩を少なくとも1種以上、用いることが好ましい。特に、水への溶解性が高く、アニオン成分の耐分解性の観点から、タングステン酸塩は、タングステン酸ナトリウムやタングステン酸カリウムを用いることが好ましい。なかでも、タングステン酸ナトリウムを用いることがより好ましい。当該タングステン酸ナトリウムは、タングステン酸カリウムに比べて、当該ニッケル−タングステン合金めっき液を用いて得られるニッケル−タングステン合金めっき皮膜のタングステン含有率が高くなる傾向があるからである。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において、めっき液のタングステン酸イオンの濃度が0.05mol/L〜0.5mol/Lの範囲内となるようにタングステン酸塩の濃度を調整することが好ましい。めっき液のタングステン酸イオンの濃度が0.05mol/L未満の場合には、めっき液中のタングステン酸イオンの濃度が低すぎて、得られるニッケル−タングステン合金めっき皮膜のタングステン含有率が低くなり、600HV以上の高い硬度のニッケル−タングステン合金めっき皮膜を得ることが困難となるからである。一方、めっき液のタングステン酸イオン濃度が0.5mol/Lを超える場合、めっき液の安定性が低下するため好ましくない。これらの観点から、当該ニッケル−タングステン合金めっき液中のタングステン酸イオンの濃度は、0.05mol/L〜0.3mol/Lとなるような範囲内であることがより好ましい。
(3)錯化剤
錯化剤は、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において、ニッケルイオンとタングステン酸イオンからの水酸化物の沈殿防止、これらニッケルイオンとタングステン酸イオンの濃度調節、めっき液の分解抑制等を目的として用いられる。本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液において用いられる錯化剤としては、クエン酸、クエン酸塩、又は、塩化アンモニウムの何れか1種又は2種以上であることが好ましい。ただし、本件発明において用いられる錯化剤は、これらに限定されるものではなく、例えば、ピロリン酸やその塩、アンモニア、エチレンジアミン、酢酸、酒石酸等の各種有機酸あるいはその塩類などの他の錯化剤を用いても良い。
特に、本件発明において、当該錯化剤は、ニッケル抑制剤としても作用するエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を更に含むものとすることがより好ましい。本件発明におけるニッケル−タングステン合金めっき液がエチレンジアミン四酢酸を含むことにより、ニッケルの析出が抑制されて、タングステンの析出を促進させることが可能となる。よって、ニッケル−タングステン合金めっき皮膜のタングステン含有率を向上させることができ、ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の硬度の向上及び、摩擦係数の低減を図ることが可能となる。得られるニッケル−タングステン合金めっき皮膜の硬度が600HV以上とする場合には、当該ニッケル抑制剤として作用するエチレンジアミン四酢酸の濃度は、0.01mol/L〜0.5mol/Lの範囲内とすることがより好ましい。
当該錯化剤の濃度は、ニッケル−タングステン合金めっき液におけるニッケルイオンとタングステン酸イオンの合計量と等量又はそれ以上となるように調整することが好ましい。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、pHが0.1〜3.0であることを特徴とする。当該めっき液のpHを0.1〜3.0、より好ましくは、pHが0.5〜3.0とすることによって、同程度の硬度のニッケル−タングステン合金めっき皮膜を得る際の電流効率を向上させることが可能となるからである。当該めっき液のpHの調整は、pH調整剤を添加することによって調整しても良い。pH調整剤としては、塩酸、硫酸、リン酸、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、アンモニア水溶液等を用いて調整することができる。当該pH調整剤の添加量は当該めっき液をpH0.1〜3.0の範囲に調整可能な程度に適宜調整することができる。
(4)その他
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、上述した塩化ニッケル、タングステン酸塩、錯化剤、pH調整剤以外にも、各種添加剤を含む構成としても良い。通常のめっきの分野で用いられている各種の薬品、例えば、市販の光沢剤が挙げられる。当該添加量は、通常用いられる範囲で用いることが好ましい。
<本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき方法>
次に、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき方法について述べる。本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき方法は、上述したニッケル−タングステン合金めっき液を用い、液温20℃〜60℃とし、電流密度1.0A/dm〜20A/dm電解して、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成することを特徴とする。
当該めっき液の温度に関しては、20℃を下回る条件では、ニッケルやタングステンの析出速度が低下し、従来レベルでの生産性が維持できなくなるため、好ましくない。一方、当該めっき液の温度が60℃を超える条件では、蒸発水分量が増加して、めっき液の成分濃度変動が大きくなる。更に、めっき装置、特に配管材料として用いることが多い塩化ビニル樹脂が変形し、安定しためっき操作が困難となるため、好ましくない。
当該電解めっきにおける電流密度は、1.0A/dmを下回る条件では、工業的な生産性が維持できなくなり、好ましくない。一方、電流密度が20A/dmを超える条件では、焦げや焼けが発生する傾向が大きくなり、期待する生産性が得られなくなるため、好ましくない。
本件発明における被めっき物としては、特に限定はないが、例えば、銅や鉄鋼などにより製造された機械部品等を挙げることができる。
以下に、上述の内容をより詳細に理解できるように、実施例及び比較例について述べる。
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 実施例1では、塩化ニッケルとしての塩化ニッケル・6水和物(NiCl/6HO)濃度が0.85mol/L、タングステン酸塩としてのタングステン酸ナトリウム・2水和物(NaWO・6HO)濃度が0.15mol/L、錯化剤としてのクエン酸(無水)(HOOHCHC(OH)(COOH)CHCOOH)濃度が0.15mol/Lとしてニッケル−タングステン合金めっき液を調整した。実施例1のニッケル−タングステン合金めっき液の各成分の濃度及び当該めっき液のpHを他の実施例と共に表1に示す。
Figure 0006615543
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 上述したニッケル−タングステン合金めっき液の液温は25℃とした。被めっき物としてめっき面積6.6cm、厚さ0.8mmの楕円形の銅板を用いた。めっき物は、前処理としてアルカリ脱脂液(60℃、5分)、10%硫酸(25℃、1分)に浸漬を行ったものを用いた。アノードとしてSUS304を用いた。これら陰極と陽極との間の距離を50mmとし、上述したニッケル−タングステン合金めっき液を電流密度15A/dmで電解し、被めっき物の表面に厚さ20μmのニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 実施例2では、実施例1と同様に、塩化ニッケルとしての塩化ニッケル・6水和物、タングステン酸塩としてのタングステン酸ナトリウム・2水和物、錯化剤としてのクエン酸(無水)を用いた。実施例1とは、タングステン酸ナトリウム・2水和物の濃度と、クエン酸(無水)の濃度のみが異なる。すなわち、実施例2では、タングステン酸ナトリウム・2水和物(NaWO・6HO)濃度を0.20mol/L、クエン酸(無水)の濃度0.25mol/Lとしてニッケル−タングステン合金めっき液を調整した。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 実施例2では、実施例1と同様の条件で、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 実施例3では、実施例1と同様に、塩化ニッケルとしての塩化ニッケル・6水和物、タングステン酸塩としてのタングステン酸ナトリウム・2水和物、錯化剤としてのクエン酸(無水)を用いた。実施例1とは、タングステン酸ナトリウム・2水和物の濃度と、クエン酸(無水)の濃度のみが異なる。すなわち、実施例3では、タングステン酸ナトリウム・2水和物(NaWO・6HO)濃度を0.25mol/L、クエン酸(無水)の濃度0.35mol/Lとしてニッケル−タングステン合金めっき液を調整した。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 実施例3では、実施例1と同様の条件で、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 実施例4では、実施例1のニッケル−タングステン合金めっき液に更に、ニッケル抑制剤であるEDTA・4Naを添加し、ニッケルの析出を抑制することでタングステンの含有量を上昇させた。pH調整剤として、塩酸及びアンモニア水溶液を用い、ニッケル−タングステン合金めっき液のpHを2.1に調整した。なお、表1に示すEDTA・4Na、塩酸及び10%アンモニア水溶液の添加量は、実施例1のニッケル−タングステン合金めっき液500mLに対して添加した量として示す。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 実施例4では、実施例1と同様の条件で、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 実施例5では、塩化ニッケルとしての塩化ニッケル・6水和物(NiCl/6HO)濃度が0.25mol/L、タングステン酸塩としてのタングステン酸ナトリウム・2水和物(NaWO・6HO)濃度が0.20mol/L、錯化剤としてのクエン酸(無水)(HOOHCHC(OH)(COOH)CHCOOH)濃度が0.15mol/Lとした。さらに、当該ニッケル−タングステン合金めっき液にニッケル抑制剤であるEDTA・4Naを添加し、ニッケルの析出を抑制することでタングステンの含有量を上昇させた。pH調整剤として、塩酸及びアンモニア水溶液を用い、ニッケル−タングステン合金めっき液のpHを1.1に調整した。なお、実施例4と同様に、表1に示すEDTA・4Na、塩酸及び10%アンモニア水溶液の添加量は、実施例1のニッケル−タングステン合金めっき液500mLに対して添加した量として示す。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 実施例5では、実施例1と同様の条件で、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
[比較例1]
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 比較例1では、ニッケル供給源として塩化ニッケルの代わりに従来一般的であった硫酸ニッケルを用いた。具体的には、比較例では、硫酸ニッケルとしての硫酸ニッケル・6水和物(NiSO・6HO)濃度が0.10mol/L、タングステン酸塩としてのタングステン酸ナトリウム・2水和物(NaWO・6HO)濃度が0.25mol/L、錯化剤としてのクエン酸三ナトリウム・2水和物(CNa・2HO)濃度が0.35mol/Lとしてニッケル−タングステン合金めっき液を調整した。比較例1は、pH調整剤として硫酸を用いてpH4.5に調整した。当該比較例1のニッケル−タングステン合金めっき液の各成分の濃度及び当該めっき液のpHを比較例2と共に表2に示す。
Figure 0006615543
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 比較例1では、実施例1と同様の条件で、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
[比較例2]
ニッケル−タングステン合金めっき液の調整: 比較例2は、上述した比較例1と同様の組成のニッケル−タングステン合金めっき液を用いた。比較例2は、比較例1とめっき液のpHのみが異なる。すなわち、比較例2は、pH調整剤として硫酸を用いてpH5.0に調整した。
ニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成: 比較例2では、実施例1と同様の条件で、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成した。
[評価]
上述した実施例1〜実施例5及び比較例1及び比較例2のニッケル−タングステン合金めっき液について、めっき皮膜形成時の電流効率、形成しためっき皮膜のタングステン含有率、硬度、摩擦係数について評価を行った。
電流効率:各実施例及び各比較例におけるめっき皮膜形成時の電流効率は、めっき前後の被めっき物の重量差をもとにして算出した。めっき皮膜の密度は、純Niの8.90g/cmを用いた。めっき電源には、株式会社山本鍍金試験器 A−57−15100Bを使用した。算出した各実施例の電流効率を表3に示す。当該表3には電流効率とあわせて後述するめっき皮膜の硬度(HV)と、タングステン(W)含有率(%)と、摩擦係数μを示す。
Figure 0006615543
タングステン含有率:得られた各実施例及び各比較例のニッケル−タングステン合金めっき皮膜のXRF分析を行い、タングステン含有率を測定した。タングステン含有率の測定は、Bruker AXS、型番:D8ADVANCEを使用し、ステップ幅:0.02degree、計数時間:0.100sec、X線管球:Cu、管電圧(tube voltage):40kV、管電流(tube current):40mAで使用した。測定結果を表3に示す。
硬度:得られた各実施例及び各比較例のニッケル−タングステン合金めっき皮膜の硬度を株式会社ミツトヨ製のHM−200を用いて測定した。測定条件は、荷重0.2N、保持時間5secとし、被めっき物の11箇所を測定した。測定値の最大値、最小値を除いた値の平均を測定結果として、表3に示す。
摩擦係数:得られた各実施例及び各比較例について摺動性試験を行った。摺動性試験は、株式会社CSEMのTRIBOMETERを使用して行った。測定条件はプローブとしてSUJ−2ball φ6mmを使用し、回転速度:10mm/sec、荷重:2N、移動距離:9mmの摩擦係数を測定した。測定値の総平均を測定結果として、表3に示す。
[考察]
表3に示すように、本件発明を適用した塩化ニッケルを含む低pHのニッケル−タングステン合金めっき液を用いた実施例1〜実施例3と、硫酸ニッケルを含むニッケル−タングステン合金めっき液を用いた比較例2とは、得られるニッケル−タングステン合金めっき皮膜の硬度は、550〜580HVでほぼ同程度である。また、本件発明を適用した塩化ニッケルと、ニッケル抑制剤であるEDTA・4Naを含む低pHのニッケル−タングステン合金めっき液を用いた実施例4、実施例5と、硫酸ニッケルを含むニッケル−タングステン合金めっき液を用いた比較例1とは、得られるニッケル−タングステン合金めっき皮膜の硬度は、620〜660HVでほぼ同程度であるといえる。
ここで、得られたニッケル−タングステン合金めっき皮膜の硬度が同程度である実施例1〜実施例3と比較例1との電流効率を比較すると、従来の硫酸ニッケルを用いた比較例1の電流効率が35%であったのに対し、本件発明を適用した塩化ニッケルを含み、pHが0.1〜4の範囲である実施例1〜実施例3の電流効率は78%〜86%までに改善されたことが確認できた。
また、実施例1〜実施例3の組成成分のニッケル−タングステン合金めっき液に対して、更に、タングステン含有率を5%以上に高めるためにニッケル抑制剤を添加した実施例4及び実施例5は、めっき皮膜の硬度を600HV以上とすることが可能となったことが分かる。さらには、めっき皮膜のタングステン含有率を高めることによって、硬度のみならず摩擦係数も低減することができたことが分かる。この実施例4及び実施例5のニッケル−タングステン合金めっき皮膜と硬度が同程度である比較例1との電流効率を比較すると、従来の硫酸ニッケルを用いた比較例1の電流効率が35%であったのに対し、本件発明を適用した塩化ニッケルを含み、pHが0.1〜4の範囲である実施例4及び実施例5の電流効率は53%、さらには、89%にまで改善されたことが確認できた。
上述より、本発明に係る低pHのニッケル−タングステン合金めっき液を用いることにより、従来の硫酸ニッケルを用いたニッケル−タングステン合金めっき液により得られたニッケル−タングステン合金めっき皮膜と同等の硬度のめっき皮膜を、より高い電流効率で形成することが可能となることがいえる。よって、塩化ニッケルを浴組成のベースとし、pHを0.1〜4に調整した本件発明に係るめっき液を用いることによって、従来と同様の硬度のニッケル−タングステン合金めっき皮膜の生産性が向上することが分かる。
本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、水質汚濁防止法での規制物質を含まないものであるため、環境負荷・排水負荷の極めて少ないめっき液である。しかも、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、高い電流効率で硫酸ニッケルを用いた従来のニッケル−タングステン合金めっき液を用いて形成しためっき皮膜と同等の硬度のめっき皮膜を形成することが可能となるため、生産性に優れている。よって、本件発明に係るニッケル−タングステン合金めっき液は、耐食性や耐摩耗性が要求される被めっき物へのニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成に好適である。

Claims (6)

  1. 被めっき物の表面に、電解めっき法によるニッケル−タングステン合金めっき皮膜の形成に用いるニッケル−タングステン合金めっき液であって、
    ニッケルの供給源として塩化ニッケルのみを用い、タングステンの供給源であるタングステン酸塩と、錯化剤とを含み、pHが0.1〜3.0であることを特徴とするニッケル−タングステン合金めっき液。
  2. 前記タングステン酸塩がタングステン酸ナトリウムである請求項1に記載のニッケル−タングステン合金めっき液。
  3. 前記錯化剤がクエン酸、クエン酸塩、又は、塩化アンモニウムの何れか1種又は2種以上である請求項1又は請求項2に記載のニッケル−タングステン合金めっき液。
  4. 前記錯化剤は、更に、エチレンジアミン四酢酸を含む請求項3に記載のニッケル−タングステン合金めっき液。
  5. ニッケルイオンとタングステン酸イオンの含有量が以下に示す範囲である請求項1〜請求項4のいずれかに記載のニッケル−タングステン合金めっき液。
    ニッケルイオン : 0.1mol/L〜1.0mol/L
    タングステン酸イオン : 0.05mol/L〜0.5mol/L
  6. 請求項1〜請求項5のいずれかに記載のニッケル−タングステン合金めっき液を用い、液温20℃〜60℃とし、電流密度1.0A/dm〜20A/dmで電解し、被めっき物の表面にニッケル−タングステン合金めっき皮膜を形成することを特徴とするニッケル−タングステン合金めっき方法。
JP2015177263A 2015-09-09 2015-09-09 ニッケル−タングステン合金めっき液及びニッケル−タングステン合金めっき方法 Active JP6615543B2 (ja)

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