JP6611167B2 - 熱電変換デバイス及び熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換デバイス及び熱電変換素子 Download PDF

Info

Publication number
JP6611167B2
JP6611167B2 JP2015208510A JP2015208510A JP6611167B2 JP 6611167 B2 JP6611167 B2 JP 6611167B2 JP 2015208510 A JP2015208510 A JP 2015208510A JP 2015208510 A JP2015208510 A JP 2015208510A JP 6611167 B2 JP6611167 B2 JP 6611167B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoelectric conversion
conversion element
conversion device
voltage
antiferromagnetic material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015208510A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017084854A5 (ja
JP2017084854A (ja
Inventor
知 中▲辻▼
義近 大谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
University of Tokyo NUC
Original Assignee
University of Tokyo NUC
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by University of Tokyo NUC filed Critical University of Tokyo NUC
Priority to JP2015208510A priority Critical patent/JP6611167B2/ja
Publication of JP2017084854A publication Critical patent/JP2017084854A/ja
Publication of JP2017084854A5 publication Critical patent/JP2017084854A5/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6611167B2 publication Critical patent/JP6611167B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Hard Magnetic Materials (AREA)
  • Hall/Mr Elements (AREA)

Description

本発明は、熱電変換デバイスに関するものである。
近年、異常ネルンスト効果(Anomalous Nernst effect)を利用した熱電変換デバイスが考えられている(例えば、特許文献1参照)。ここで、異常ネルンスト効果とは、磁化した磁性体に熱流を流した際、磁性体の磁化方向と熱流方向とにそれぞれ直交する方向(外積方向)に電圧が生じる現象である。このため、従来の熱電変換デバイスでは、磁性体として所定方向に強い磁化を持つ強磁性体を熱電変換素子として用い、当該熱電変換素子の強磁性体の磁化方向に直交する方向に温度差を与えて電圧を得ている。
特開2014−72256号公報
しかしながら、従来の熱電変換デバイスでは、強磁性体からなる熱電変換素子を用いていることから、強磁性体による大きな漏れ磁場が発生してしまうという問題があった。このように、熱電変換素子からの漏れ磁場が大きい場合には、熱電変換デバイス内に複数の熱電変換素子を緻密に設けることができず、また熱電変換デバイス周辺の周辺機器等にも漏れ磁場により何らかの影響を与えてしまう可能性もあるため、漏れ磁場が高度な集積化の妨げとなっていた。そのため、このような熱電変換デバイスでは、漏れ磁場が従来よりも格段的に抑制できる新規な構造を有した新たな熱電変換デバイスの開発が望まれている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、温度差により電圧を発生させることができるとともに、漏れ磁場を従来よりも格段的に抑制できる熱電変換デバイス及び熱電変換素子を提供することを目的とする。
本発明の熱電変換デバイスは、非共線性のスピン構造を有する反強磁性体からなる熱電変換素子を備え、前記熱電変換素子には、異常ネルンスト効果により、面内の微小磁化方向と直交する方向に生じる温度差により電圧が発生することを特徴とする。
本発明によれば、反強磁性体からなる熱電変換素子であっても異常ネルンスト効果により、温度差によって電圧を発生させることができ、また、強磁性体のような強い磁化を持たない反強磁性体により熱電変換素子を形成したことにより、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも漏れ磁場を格段的に抑制できる。
非共線性の反強磁性体における異常ネルンスト効果の発現する状態を模式的に示す説明図である。 MnSnの局在するスピンの方向を示す説明図である。 MnとNiの化合物のうち熱電変換素子とすることができる範囲を示す状態図である。 熱電変換デバイスの構成を示す概略図である。 MnSnにおける単位温度当りの電圧Sxyと、外部磁場Bとの関係を示すグラフである。 従来の強磁性体と、MnSnとについて、単位温度当りの電圧Sxyと、磁化Mと、比例係数Qとをまとめた表である。 他の実施の形態による熱電変換デバイスの構成を示す概略図である。
(1)熱電変換素子に用いる反強磁性体について
先ず初めに、本発明による熱電変換デバイスの熱電変換素子となる反強磁性体について説明する。熱電変換素子となる反強磁性体は、非共線性(non-collinear)の反強磁性体(以下、非共線反強磁性体とも呼ぶ)であり、格子点上の原子の磁気モーメント(局在スピンの方向)が互いに傾いて非平行となったスピン構造を有する。非共線性の反強磁性体としては、スピン構造における磁気モーメントが同一平面で互いに傾いて存在する共面性のものと、磁気モーメントの方向が同一平面になく立体的に傾いている非共面性のものとがある。
共面性および非共面性のいずれの非共線性の反強磁性体においても、磁気モーメントが互い傾いていることに起因して、漏れ磁場が抑制され、さらに当該反強磁性体に対して熱流が与えられた際には、反強磁性体の微小磁化方向と熱流方向とにそれぞれ直交する方向(外積方向)に電圧が生じる現象(異常ネルンスト効果)を発現し得る。
例えば、図1に示すように、非共面性の反強磁性体では、格子点上の原子Aの各磁気モーメントM1が互いに立体的に傾いたスピン構造を有しており、伝導を担う電子(すなわち伝導電子D)が、当該スピン構造の各サイトを通り抜ける際に、伝導電子DのスピンDaの方向が、磁気モーメントM1による影響でその磁気モーメントM1の方向に向く。そして、各磁気モーメントM1が互いに異なる方向に傾いて非平行になっているため、図中右側に示すように、伝導電子Dが最近接の格子点を一周する際に、伝導電子DのスピンDaの方向が回転運動をする。この伝導電子DのスピンDaの回転運動は、伝導電子Dの軌道運動の回転運動を誘起する。このように誘起される伝導電子Dの軌道運動の回転運動は、熱流が流されて温度差が生じると、その熱流とカップルすることにより熱流方向に垂直な方向の電場を形成し、異常ネルンスト効果を発現する。共面性を有する非共線の反強磁性体についても同様な原理で異常ネルンスト効果を発現する。
このような異常ネルンスト効果によって生じる磁化方向は、スピンDaの軌道運動の回転方向によって決まる。因みに、非共線性の反強磁性体は、例えばスピントランスファートルク(スピン注入)方式や、磁場印加方式等によって、磁気モーメントM1の方向を反転させることが可能であり、このような磁気モーメントM2の反転により、スピンDaの軌道運動の回転方向が変わる。
ここで、非共線性の反強磁性体としては、例えばMnSnがあり、以下、その一例としてMnSnに着目して説明する。MnSnは、六方晶であり、50[K]〜430[K]の間で、図2に示すように、a軸([2−1−10])、b軸([−12−10])としたab面において、隣接するMn(マンガン)間距離に歪があるカゴメ格子を形成し、このカゴメ格子が積層した構造を有している。Mnの磁気モーメント(局在スピンの向き)M2は、ゼロ磁場において、ab面に存在し、幾何学的フラストレーションが逆三角形スピン構造として現れる。また、MnSnは、通常の120°スピン構造に対して逆のベクトルカイラリティを持つカイラルスピン構造を構成している。
MnSnは、隣接する3つのMnの磁気モーメントM2のうち、1つの磁気モーメントM2が磁化容易軸に平行となるが、他の2つの磁気モーメントM2がそれぞれ磁化容易軸から傾いた状態になり、各磁気モーメントM2が互いに傾いている。このようにして、非共線反強磁性体であるMnSnでは、局在する磁気モーメントM2が互いに傾き、小さな強磁性モーメントを誘起する。本発明による熱電変換デバイスでは、熱電変換素子となるMnSnにおけるMnの磁気モーメントM2が所定の方向に向いている状態で用いられる。
熱電変換素子となるMnSnは、Mnの磁気モーメントM2が2.78x10−23[A・m](3[μ])以下である。カイラルスピン構造の3つのMnの磁気モーメントM2は打ち消し合うが、磁気モーメントは完全には打ち消されない。すなわち、MnSnからなる熱電変換素子は、カイラルスピン構造における局所的な磁化容易軸に傾いた2つの磁気モーメントM2により、2.78x10−26[JT−1/Mn](0.003[μ/Mn])以下の弱い磁気モーメントが残り、その結果、所定の微小磁化方向に磁化された状態になる。このように、MnSnにより形成した熱電変換素子は、弱く磁化された状態になるが、それは極めて弱い磁気モーメントによるものであるため、強磁性体に比して漏れ磁場を格段的に抑制し得る。
因みに、このMnSnは、例えばスピントランスファートルク(スピン注入)方式や、磁場印加方式等によって、図2に示すような第1磁化状態にあるMnの磁気モーメントM2を反転させて、この第1磁化状態とは磁気モーメントM2が異なる方向に変化した第2磁化状態とすることもできる。MnSnは、第2磁化状態においても、第1磁化状態と同様に、カイラルスピン構造の3つのMnの磁気モーメントM2が不完全に打ち消し合い、弱い磁気モーメントが残り、その方向(磁化方向)に微小磁化が生じた状態になるが、その微小磁化方向は第1磁化状態とは逆向きになる。
因みに、このMnSnは、例えばスピントランスファートルク(スピン注入)方式や、磁場印加方式などによって、第2磁化状態にある反転した磁気モーメントM2を再び第1磁化状態に戻すこともできる。このようにMnSnは、第1磁化状態と第2磁化状態との間で繰り返し磁気モーメントM2を変えることができる。
なお、熱電変換素子を形成するMnSnは、Mn(3+x)Sn(1−x)(0≦x≦0.2)としてもよい。
また、この実施の形態の場合においては、熱電変換素子を形成する非共線性の反強磁性体として、MnSnについて説明したが、本発明はこれに限らず、MnSn以外の非共線性の六法晶系の反強磁性体を適用してもよい。このような非共線性の六法晶系の反強磁性体としては、例えばMnGe、MnGa等があり、このような反強磁性体であっても、上述したMnSnと同様の効果を得ることができる。る。また、非共面性であって、カイラルスピン構造の磁気モーメントを有した反強磁性体を熱電変換素子として用いてもよい。このような反強磁性体としては、立方晶の物質、化合物を挙げることができる。
立方晶の反強磁性体としては、例えばγ相(FCC(face-centered cubic)構造)のMnを含む立方晶合金、またはFeを含む立方晶合金でもよく、具体的にはγ−(Fe,Mn)、MnIr、MnPtを熱電変換素子として適用することができる。また、図3の状態図にハッチングで示すように、Niを一定の比率以上を含み、反強磁性を示す立方晶となり、かつMnおよびNiの化合物を、熱電変換素子としてもよい。正方晶となる、一部のMnおよびNiの化合物も用いることができる。
なお、熱電変換素子を形成する反強磁性体として、MnSnを用いた場合には、室温以下において、例えばFePtや、MnGa等の一般的な強磁性体よりも、大きな電圧を得られることが確認できている。
(2)熱電変換デバイスの構成
次に、上述した反強磁性体を利用した熱電変換デバイスについて説明する。図4に示すように、本発明による熱電変換デバイス1は、上記「(1)熱電変換素子に用いる反強磁性体について」で説明した非共線性の反強磁性体からなる熱電変換素子2を備えており、当該熱電変換素子2の対向する端面2a,2bに配線を介して電圧器3が接続された構成を有する。ここで、熱電変換素子2は、例えば直方体状に形成されており、この場合、配線が接続された端面2a,2bが矢印y方向に沿って対向配置され、当該矢印y方向と直交する矢印z方向に沿って裏面2cおよび表面2dが対向配置され、矢印y,z方向と直交する矢印x方向に沿って熱流面2e,2fが対向配置され得る。
熱電変換素子2は、矢印x,y方向と直交し、かつ裏面2cから表面2dに向かう矢印z方向が微小磁化方向Ar2となり、当該微小磁化方向Ar2に向けて面内に微小磁化Mが発生し得るように構成されている。この場合、熱電変換素子2には、矢印y,z方向と直交する矢印x方向に向けて一の熱流面2eから他の熱流面2fへ熱流Qが流れることで、面内の微小磁化方向Ar2と直交する矢印x方向にて熱流面2e,2fで温度差が生じる。その結果、熱電変換素子2は、異常ネルンスト効果によって、温度差が生じた熱流方向Ar1と、面内の微小磁化方向Ar2とにそれぞれ直交する矢印y方向(外積方向)へ向けて端面2a,2b間に電圧が発生する。
この際、本発明の熱電変換デバイス1は、強磁性体のような強い磁化を持たない反強磁性体により熱電変換素子2が形成されていることにより、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも、漏れ磁場の発生を格段的に抑止し得る。
(3)検証試験
次に、MnSnにより直方体状の熱電変換素子2を作製して200[K]および300[K]での異常ネルンスト効果による電圧値について調べた。ここで、MnSnの試料は、次のようにして作製した。先ず始めに、MnとSnの混合物を清浄なアルゴン雰囲気中でアーク溶解することにより、複数の多結晶質サンプルを準備した。Mnは、アーク溶解中の損失と結晶の成長とを考慮して、正規組成量を超えた過剰量(10モル%)を加えた。得られた多結晶質材料は、ブリッジマン法での結晶成長に用いた。得られた単結晶および粉末のX線回折測定では、格子定数a=5.66(1)Å、c=4.53(1)Åの六方晶のMnSnの単相を示唆した。
また、走査型電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDX,Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Detector)による分析では、MnSnがバルク相であることが確認された。誘導結合プラズマ(ICP,inductively coupled plasma)分光法によると、複数の単結晶の組成は、Mn3.02Sn0.98であった。すなわち、結晶格子当たりのMnが3.02個、Snが0.98個であり、Mnが過剰になっていた。抵抗率と磁化の測定のために、成長した状態の複数の単結晶を、ラウエ回折計を用いて配列した後、直方体状の試料を作製した。
次いで、この試料を実施例1の熱電変換素子2とし、当該熱電変換素子2をチャンバ内にセットし、当該チャンバ内を200[K]または300[K]とした。次いで、200[K]または300[K]のチャンバ内で、熱電変換素子2の一方の熱流面2eに向けて所定温度(6[K]、または、9[K])の熱流を流し、熱電変換素子2の対向する熱流面2e,2fに温度差を与えた。ここでは、MnSnの[01−10]と平行に熱流を流し、さらにMnSnのa軸([2−1−10])と平行に外部磁場(B[Oe])を印加した。なお、ミラー指数に表記した“−”はその直後の指数につくバーを意味している。そして、MnSnの単位温度当りの電圧(Sxy[μV/K])と、外部磁場(B[Oe])との関係について調べたところ、図5に示すような結果が得られた。
図5の結果から、200[K]のときのMnSnは、印加される外部磁場の変化に対して、単位温度当りの電圧Sxyが、約1.5[μV/K]の幅(+0.75[μV/K]〜−0.75[μV/K])で変化するヒステリシスが得られた。また、300[K]のときのMnSnは、印加される外部磁場の変化に対して、単位温度当りの電圧Sxyが、約0.92[μV/K]の幅(+0.46[μV/K]〜−0.46[μV/K])で変化するヒステリシスが得られた。この結果から、MnSnは、室温等の通常の使用環境の温度において、外部磁場がゼロでも異常ネルンスト効果が発現し、電圧が発生することが確認できた。
また、300KのときのMnSnの面内の磁化Mを磁気特性測定装置で測定したところ、図6に示すように、微小な0.72[emu/cc]であった(図6中、「M(emu/cc)」)。さらに、MnSnの比例係数Qは510[μV/TK]であった。ここで、200[K]のときの単位温度当りの電圧Sxyと、300[K]のときの単位温度当りの電圧Sxyと、磁化Mと、比例係数Qとについて、MnSn(実施例1)と、強磁性体(比較例1〜5)との各数値を、図6にまとめた。
なお、強磁性体(表中、「FM」と表記)であるFePt(比較例1)、FePd(比較例2)、MnGa(比較例3)、MnGa(比較例4)、およびCo/Ni(比較例5)の各数値については、「Hasegawa et al., Appl. Phys. Lett. 106, 252405 (2015)」に基づく数値である。図6の結果から、300[K]では、MnSnの試料における磁化Mが極めて弱いことが分かる。
このMnSnの試料における磁化Mは、図6に示した強磁性体の1/236〜1/1389程度であることが確認できた。これにより、MnSnは、従来の熱電変換素子に用いられる強磁性体よりも漏れ磁場が格段的に小さいことが分かる。
また、図6において、実施例1となるMnSnは、200[K]のとき、単位温度当りの電圧Sxyが0.75[μV/K]と最も高く、300[K]のときも、単位温度当りの電圧Sxyが0.46[μV/K]となり比較例2(強磁性体のFePd)と同程度で、比較例1(FePt)、比較例2(FePd)に次いで高い値であることが確認できた。
実施例1により得られた単位温度当りの電圧Sxyの値は、磁性体としては極めて大きく、比較例のうち少なくともMnGa、MnGa、およびCo/Niの強磁性体で見られる単位温度当りの電圧Sxyの値よりも大きいことが確認できた。また、単位温度当りの電圧Sxyは、通常、磁化Mに比例すると考えられ、その比例係数Qが強磁性体では約0.1〜1[μV/TK]の間の値をとる。しなしながら、実施例1であるMnSnは、微小な自発磁化に影響により、強磁性体よりも3桁程度大きな値をとることが確認できた。
このようにMnSnを熱電変換素子2として用いた場合には、強磁性体と同程度かそれ以上の単位温度当りの電圧Sxyを得られ、かつ従来の熱電変換素子に用いられる強磁性体よりも漏れ磁場が格段的に小さくできることが確認できた。
(4)作用および効果
以上の構成において、熱電変換デバイス1は、非共線性のスピン構造を有する非共線性の反強磁性体からなる熱電変換素子2を備え、当該熱電変換素子に対して面内の微小磁化方向Ar2と直交する方向に熱流を流して温度差を与える。これにより、熱電変換デバイス1では、異常ネルンスト効果によって、熱電変換素子2の面内の微小磁化方向Ar2と直交する熱流方向Ar1に生じる温度差を基に、微小磁化方向Ar2および熱流方向Ar1とそれぞれ直交する方向に電圧を発生させることができる。
また、熱電変換デバイス1では、強磁性体のような強い磁化を持たない反強磁性体により熱電変換素子2を形成したことにより、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも、漏れ磁場の発生を格段的に抑止し得る。このように、熱電変換デバイス1では、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも漏れ磁場を格段的に抑制できることから、複数の熱電変換素子2を高集積化させたり、或いは、他の周辺機器を近接させても、隣接する熱電変換素子2や周辺機器で漏れ磁場による影響が生じることを防止できる。
従って、熱電変換デバイス1では、隣接する熱電変換素子2同士の漏れ磁場による影響を考慮することなく、熱流が流れる限られた面積内に、熱電変換素子2同士の隙間を小さくして緻密に配置させることができるので、単位面積当りにより多くの熱電変換素子2を実装でき、かくして、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも、単位面積当りの発電効率を向上させることができる。
また、熱電変換デバイス1は、周辺機器に漏れ磁場による影響を与え難いことから、磁気の影響を受け易く、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスを近接させることができなかった周辺機器に対しても近接して配置させることができるので、周辺機器とともに緻密な配置が可能となり、さらには周辺機器から発する熱流を利用して電圧を発生させることもできる。
(5)他の実施の形態による熱電変換デバイス
上述した実施の形態においては、図4に示したように、直方体状の熱電変換素子2を備えた熱電変換デバイス1について説明したが、本発明はこれに限らず、図4との対応部分に同一符号を付して示す図7のように、熱電変換素子24と接続素子25とを交互に並列して配置し、複数の熱電変換素子24と複数の接続素子25とを電気的に直列接続させた熱電変換デバイス21であってもよい。
この場合、熱電変換デバイス21は、蛇行状に形成された発電体23が基板22上に設置された構成を有しており、基板22の裏面から発電体23に向けて熱流が流されることにより、基板22の面直方向に温度差が与えられ得る。これにより熱電変換デバイス21は、発電体23で異常ネルンスト効果が発現し、当該発電体23で電圧を発生させ得る。ここで、基板22は、例えばMgO単層や、Au層の上にMgO層が積層された構成でなり、熱流が当てられる裏面と対向した設置面23aに沿って蛇行状に延びた発電体23が設置されている。
発電体23は、長手方向を有した複数の熱電変換素子24と、長手方向を有した複数の接続素子25とが交互に並列配置され、かつ熱電変換素子24および接続素子25が電気的に直列接続された構成を有する。熱電変換素子24は、「(1)熱電変換素子に用いる反強磁性体について」にて上述した反強磁性体からなり、基板22の裏面側に当てられた熱流を基に温度差が生じると、異常ネルンスト効果により、面内の微小磁化方向Ar2および熱流方向Ar1と直交する方向(矢印x1方向)に電圧が発生し得る。
ここで、熱電変換素子24は、長手方向(矢印x1,x2方向)と熱流方向Ar1と直交した方向(矢印z2方向)に向けて面内の微小磁化が向けられている。これにより、熱電変換素子24では、微小磁化方向Ar2が矢印z2方向であることから、基板22の裏面側から流れる熱流により温度差が生じると、長手方向に沿って矢印x1方向に電圧が発生し得る。
また、この実施の形態の場合、接続素子25も、熱電変換素子24と同様に、「(1)熱電変換素子に用いる反強磁性体について」にて上述した反強磁性体からなり、基板22の裏面側に当てられた熱流を基に温度差が生じると、異常ネルンスト効果により、面内の微小磁化方向Ar2および熱流方向Ar1と直交し、かつ熱電変換素子24とは逆方向(矢印x2方向)に電圧が発生し得る。接続素子25は、長手方向(矢印x1,x2方向)と熱流方向Ar1と直交し、かつ熱電変換素子24とは逆方向(矢印z1方向)に向けて面内の微小磁化Mが向けられている。これにより、接続素子25では、微小磁化方向Ar2が熱電変換素子24とは逆の矢印z1方向であることから、基板22の裏面側から流れる熱流により温度差が生じると、長手方向に沿って熱電変換素子24とは逆の矢印x2方向に電圧が発生し得る。
ここで、隣接する熱電変換素子24間に配置された接続素子25は、一の熱電変換素子24の一端側と、この一の熱電変換素子24と隣接した他の熱電変換素子24の他端とを電気的に直列接続しており、一の熱電変換素子24で発生した電圧を、他の熱電変換素子24に印加し得る。このようにして発電体23は、熱電変換素子24および接続素子25でそれぞれ電圧が発生し、出力電圧を増大し得る。
かかる構成に加えて、発電体23は、強磁性体のような強い磁化を持たない反強磁性体により熱電変換素子24および接続素子25を形成していることから、熱電変換素子24および接続素子25が互いの漏れ磁場の影響を受け難い。そのため、発電体23では、熱電変換素子24および接続素子25間の隙間が極めて小さく、基板22上に緻密に配置されている。
なお、このような熱電変換デバイス21は、フォトリソグラフィ技術等を利用して、蛇行状に延びた発電体23を基板22上に作製した後、当該発電体23の形状に合わせてN極およびS極が予め配置された外部磁場を、作製した発電体23の表面に近づけることにより、熱電変換素子24および接続素子25の面内の微小磁化方向Ar2を制御することで製造できる。
以上の構成において、熱電変換デバイス21でも、非共線性のスピン構造を有する反強磁性体からなる熱電変換素子24および接続素子25を備え、当該熱電変換素子24および接続素子25に対して面内の微小磁化方向Ar2と直交する方向に熱流を流して温度差を与える。これにより、熱電変換デバイス1では、異常ネルンスト効果によって、熱電変換素子24および接続素子25の面内の微小磁化方向Ar2と直交する熱流方向Ar1に生じる温度差を基に、微小磁化方向Ar2および熱流方向Ar1とそれぞれ直交する方向に電圧を発生させることができる。
熱電変換デバイス21では、特に、強磁性体のような強い磁化を持たない反強磁性体により熱電変換素子24および接続素子25を形成したことにより、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも、漏れ磁場の発生を格段的に抑止でき、熱電変換素子24および接続素子25間の隙間を小さくして高集積化させても、隣接する熱電変換素子24および接続素子25へ漏れ磁場による影響が生じることを防止できる。
従って、熱電変換デバイス21では、隣接する熱電変換素子24および接続素子25の漏れ磁場による影響を考慮することなく、熱流が流れる限られた面積内に、熱電変換素子24および接続素子25間の隙間を小さくして緻密に配置させることができるので、単位面積当りに、より多くの熱電変換素子24および接続素子25を実装でき、かくして、強磁性体を用いた従来の熱電変換デバイスよりも、単位面積当りの発電効率を向上させることができる。
なお、上述した実施の形態においては、熱電変換素子24に加えて、接続素子25も反強磁性体で形成した発電体23について述べたが、本発明はこれに限らず、例えば接続素子25を強磁性体で形成し、熱電変換素子24だけを反強磁性体で形成した発電体としてもよい。また、発電体23では、熱電変換素子24と接続素子25とを、異なる反強磁性体により形成したり、磁化を持たない導電材料で接続素子25を形成してもよい。
1、21 熱電変換デバイス
2、24 熱電変換素子
22 基板
23 発電体
25 接続素子

Claims (6)

  1. 非共線性のスピン構造を有する反強磁性体からなる熱電変換素子を備え、
    前記熱電変換素子には、異常ネルンスト効果により、面内の微小磁化方向と直交する方向に生じる温度差により電圧が発生する
    ことを特徴とする熱電変換デバイス。
  2. 前記反強磁性体は、MnSn、MnGe,MnGaのいずれかである
    ことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  3. 前記反強磁性体は、
    立方晶または正方晶になり、かつMnおよびNiの化合物、
    γ相のMnを含む立方晶合金、
    Feを含む立方晶合金
    の3つのうちいずれかである
    ことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換デバイス。
  4. 長手方向を有した前記熱電変換素子と、長手方向を有した接続素子とが交互に並列して配置された発電体を基板上に備えており、
    前記発電体は、
    一の前記熱電変換素子の一端と、前記一の熱電変換素子と隣接した他の前記熱電変換素子の他端とが前記接続素子により電気的に直列接続されており、前記基板上に蛇行状に配置されている
    ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換デバイス。
  5. 前記接続素子は、非共線性のスピン構造を有する反強磁性体からなり、
    前記熱電変換素子と前記接続素子とでは、面内の微小磁化方向が逆向きで、温度差により生じる電圧が逆向きに生じる
    ことを特徴とする請求項4に記載の熱電変換デバイス。
  6. 非共線性のスピン構造を有する反強磁性体からなり、面内の微小磁化方向と直交する方向に温度差が生じると、異常ネルンスト効果により電圧が発生する、熱電変換素子。
JP2015208510A 2015-10-23 2015-10-23 熱電変換デバイス及び熱電変換素子 Active JP6611167B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015208510A JP6611167B2 (ja) 2015-10-23 2015-10-23 熱電変換デバイス及び熱電変換素子

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015208510A JP6611167B2 (ja) 2015-10-23 2015-10-23 熱電変換デバイス及び熱電変換素子

Publications (3)

Publication Number Publication Date
JP2017084854A JP2017084854A (ja) 2017-05-18
JP2017084854A5 JP2017084854A5 (ja) 2019-10-03
JP6611167B2 true JP6611167B2 (ja) 2019-11-27

Family

ID=58711354

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015208510A Active JP6611167B2 (ja) 2015-10-23 2015-10-23 熱電変換デバイス及び熱電変換素子

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6611167B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11710501B2 (en) 2021-06-10 2023-07-25 Kabushiki Kaisha Toshiba Magnetic head and magnetic recording device

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11683985B2 (en) 2017-07-03 2023-06-20 The University Of Tokyo Thermoelectric conversion element and thermoelectric conversion device
US10256391B2 (en) * 2017-08-25 2019-04-09 International Business Machines Corporation Thermoelectric device
WO2019163641A1 (ja) * 2018-02-22 2019-08-29 株式会社アルバック 磁性膜の形成方法、および、磁気記憶素子の製造方法
JP7163971B2 (ja) * 2018-12-04 2022-11-01 日本電気株式会社 可搬型電源
JP7205770B2 (ja) * 2019-03-18 2023-01-17 三菱マテリアル株式会社 複合センサ
WO2020218613A1 (ja) * 2019-04-26 2020-10-29 国立大学法人東京大学 熱電変換素子及び熱電変換装置
CN115485867A (zh) * 2020-04-23 2022-12-16 国立大学法人东京大学 热电转换元件以及热电转换装置
JP2022041249A (ja) * 2020-08-31 2022-03-11 国立大学法人 東京大学 熱電素子及び熱電装置
CN118555839A (zh) * 2023-02-24 2024-08-27 华为技术有限公司 存储阵列及其制备方法、存储器、电子设备

Family Cites Families (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2002064228A (ja) * 2000-06-09 2002-02-28 Sumitomo Special Metals Co Ltd Bi基熱電変換材料と熱電変換素子
JP4915765B2 (ja) * 2005-07-15 2012-04-11 地方独立行政法人山口県産業技術センター 強磁性半導体交換結合膜
JP4904452B2 (ja) * 2005-12-07 2012-03-28 独立行政法人物質・材料研究機構 半導体系熱電材料における耐環境性被覆膜の自己形成法
JP2010102805A (ja) * 2008-10-27 2010-05-06 Hitachi Global Storage Technologies Netherlands Bv トンネル接合型磁気抵抗効果ヘッド
KR101673639B1 (ko) * 2009-03-24 2016-11-22 바스프 에스이 열교환기용 열자기 성형체 제조를 위한 인쇄 방법
JP5585314B2 (ja) * 2010-04-30 2014-09-10 国立大学法人東北大学 熱電変換素子及び熱電変換装置
US8379350B2 (en) * 2010-06-30 2013-02-19 Tdk Corporation CPP-type magnetoresistive element including spacer layer
WO2013047254A1 (ja) * 2011-09-27 2013-04-04 日本電気株式会社 熱電変換機能付き部材及びその製造方法
JP6079995B2 (ja) * 2012-09-28 2017-02-15 国立大学法人東北大学 熱電発電デバイス
JP2015185778A (ja) * 2014-03-26 2015-10-22 日本電気株式会社 熱電変換素子及びその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US11710501B2 (en) 2021-06-10 2023-07-25 Kabushiki Kaisha Toshiba Magnetic head and magnetic recording device

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017084854A (ja) 2017-05-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6611167B2 (ja) 熱電変換デバイス及び熱電変換素子
JP6733496B2 (ja) スピン軌道トルク型磁化反転素子及び磁気メモリ
Niimi et al. Reciprocal spin Hall effects in conductors with strong spin–orbit coupling: a review
KR101948464B1 (ko) 자기 저항 효과 소자
JP6419825B2 (ja) 磁気抵抗素子、当該磁気抵抗素子を用いた磁気ヘッド及び磁気再生装置
KR101965999B1 (ko) 자기 저항 효과 소자
US11158785B2 (en) Magnetoresistance effect element including a crystallized Heusler alloy
JP2018056388A (ja) 磁気抵抗効果素子
JP2017108067A (ja) 磁気抵抗効果素子
Hoffman et al. Tunable noncollinear antiferromagnetic resistive memory through oxide superlattice design
JPWO2016158865A1 (ja) 磁気抵抗効果素子
JP2022089885A (ja) 磁気抵抗効果素子
JP2020155432A (ja) 磁気抵抗効果素子
WO2016158910A1 (ja) 磁気抵抗効果素子
US10355202B2 (en) Magnetoresistance effect element
Joe et al. Iron-based ferromagnetic van der Waals materials
Miao et al. Anisotropic magnetoresistance effect of intercalated ferromagnet FeTa3S6
JPWO2020040264A1 (ja) ホール素子
JP2020004865A (ja) 磁気抵抗効果素子
JP2021125551A (ja) 磁気抵抗効果素子
WO2022137284A1 (ja) 磁気抵抗効果素子
WO2021199233A1 (ja) 磁気抵抗効果素子
Hu et al. Unconventional spin-dependent thermopower in epitaxial Co2Ti0. 6V0. 4Sn0. 75 Heusler film
JP7375858B2 (ja) 磁気抵抗効果素子
JP2021103771A (ja) 磁気抵抗効果素子

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20181010

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190816

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190816

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20191001

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20191024

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6611167

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250