JP6609710B2 - マイカ製部材、電気化学反応単位、および、電気化学反応セルスタック - Google Patents
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Description
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を「上方向」といい、Z軸負方向を「下方向」というものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。なお、燃料電池スタックは、特許請求の範囲における電気化学反応セルスタックに相当する。
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
スペーサー149は、X線結晶構造解析(XRD)において、KMg3(Si3Al)O10(OH)2(以下、「軟質マイカ」という)の強度ピーク(回折強度の頂点)と、Mg2SiO4(以下、「フォルステライト」という)の強度ピークとを含む結晶構造を備える。換言すれば、スペーサー149の形成材料をXRDで分析して得られるX線回折パターンは、軟質マイカの強度ピークと、フォルステライトの強度ピークとを含む。また、スペーサー149の形成材料のX線回折パターンにおいて、マイカのミラー指数003の面における強度ピークに対する、フォルステライトのミラー指数120の面における強度ピークの比率である強度ピーク比は、0.001以上、かつ、0.029以下であることが好ましい。
上述した構成の燃料電池スタック100の製造方法は、例えば、以下の通りである。単セル110は、公知の方法により作製することができる。例えば、燃料極基板層用グリーンシートと燃料極活性層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとを準備し、燃料極基板層用グリーンシートと燃料極活性層用グリーンシートと電解質層用グリーンシートとを貼り付けて約280℃で脱脂する。さらに、約1350℃にて焼成を行い、電解質層112と燃料極116との積層体を得る。また、空気極を形成するための材料を混合した混合液を、上記積層体における電解質層112の表面に噴霧塗布し、1100℃で焼成することによって空気極114が形成される。以上の工程により、上述した構成の単セル110が製造される。
上述のマイカの原料部材の加熱処理(以下、「マイカ加熱処理」という)の条件が互いに異なる複数の作製方法のそれぞれによって作製された複数のサンプル1〜6(スペーサー)を用いて行った各性能評価について説明する。各サンプルについての性能評価では、複数のサンプル1〜6のそれぞれを用いて、上述した構成の燃料電池スタック100を組み立て、耐久劣化率(発電劣化率)を測定した。図6は、各サンプルについての性能評価の結果を示す説明図である。
サンプル1〜5は、上述の作製方法により作製された上記構成のスペーサー149であり、サンプル6は、上述の作製方法とはマイカ加熱処理の条件が異なる作製方法により作製されたスペーサーである。それぞれの作製方法により作成されたサンプル1〜5について、XRD(粉末X線回折法)により、X線回折パターンを得た。具体的には、X線回折装置を用いて、板状のマイカの平面部分にX線を照射して分析することによって、各サンプル1〜5のX線回折パターンを得た。図7から図11は、各サンプル1〜5のX線回折パターンを示す説明図である。縦軸は回折強度(CPS)であり、横軸は回折角度2θ(deg)である。
サンプル1の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1000(℃)であり、加熱時間が30時間である。サンプル1のX線回折パターンは、図7に示す通りである。このサンプル1のX線回折パターンと、既知物質の回折パターンのデータベース(本実施形態では、例えばPDFカード(Powder Diffraction File))とを対比した。その結果、サンプル1のX線回折パターンは、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル1は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、サンプル1の上記強度ピーク比は、0.0012である。
サンプル2の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1100(℃)であり、加熱時間が5時間である。サンプル2のX線回折パターンは、図8に示す通りである。このサンプル2のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル2のX線回折パターンは、サンプル1と同様、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル2は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、サンプル2の上記強度ピーク比は、0.0031である。
サンプル3の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1100(℃)であり、加熱時間が30時間である。サンプル3のX線回折パターンは、図9に示す通りである。このサンプル3のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル3のX線回折パターンは、サンプル1,2と同様、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル3は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、サンプル3の上記強度ピーク比は、0.0282である。
サンプル4の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1000(℃)であり、加熱時間が120時間である。サンプル4のX線回折パターンは、図10に示す通りである。このサンプル4のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル4のX線回折パターンは、サンプル1,2と同様、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)に加えて、例えばフォルステライトのミラー指数120,211,221の面のそれぞれにおける強度ピーク(回折角度D1,D3,D4)を含むことが確認された。したがって、このサンプル4は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有すると判断できる。また、また、サンプル4の上記強度ピーク比は、0.1500である。
サンプル5の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が850(℃)であり、加熱時間が5時間である。サンプル5のX線回折パターンは、図11に示す通りである。このサンプル5のX線回折パターンとPDFカードとを対比した結果、サンプル5のX線回折パターンは、サンプル1〜3とは異なり、軟質マイカのミラー指数003の面における強度ピーク(回折角度D2参照)を含むことは確認できたが、フォルステライトの強度ピークを含むことはほとんど確認できなかった。したがって、このサンプル5は、軟質マイカの結晶を有するが、フォルステライトの結晶を有しないと判断できる。また、サンプル5の上記強度ピーク比は、0.0002である。
サンプル6の作製方法では、マイカ加熱処理における加熱温度が1300(℃)であり、加熱時間が30時間である。この条件でマイカ加熱処理を行った結果、サンプル6が破損したため、定性分析や性能評価を行うことができなかった。
(電圧低下)
各サンプル1〜5を備えるそれぞれの燃料電池スタック100(つまり、4台の燃料電池スタック100)について、まず、850(℃)で、空気極114に酸化剤ガスOGとして空気を供給し、燃料極116に燃料ガスFGとして40%の水蒸気と水素とを供給しつつ、400時間、通電試験を行った。この通電試験によれば、燃料電池スタック100の温度が定格発電運転時より高いため、燃料電池スタック100内を、Si(シリコン)が飛散し易い環境下にすることができる。また、この通電試験開始時において、電流密度が0.55(A/cm2)のときの燃料電池スタック100の出力電圧を測定し、その測定値を、初期電圧とした。その後、約700(℃)で、空気極114に酸化剤ガスOGとして空気を供給し、燃料極116に燃料ガスFGとして4%の水蒸気と水素とを供給しつつ、定格発電運転を開始し、電流密度が0.55(A/cm2)であるときの燃料電池スタック100の出力電圧(試験後電圧)を測定し、初期電圧と試験後電圧との差である電圧低下(mV)を算出した。電圧低下が大きいほど、発電劣化率が大きいことを意味する。試験後電圧は、通電試験時より温度が低いときの燃料電池スタック100の出力電圧であることによって電圧差が顕著になるため、電圧低下をより明確に評価することができる。そして、各サンプルについて、電圧降下が判定電圧(例えば65(mV))未満である場合「○」とし、判定電圧以上である場合「×」とした。なお、初期電圧とは、燃料電池スタック100が発電可能な状態で出荷され、定格発電が行われてから1000時間以内の燃料電池スタック100について測定するものとする。
上述の(電圧低下)の性能評価を行ったサンプル1〜5を備えるそれぞれの燃料電池スタック100について、燃料電池スタック100の単セル110の燃料極116における燃料ガスFGに晒された表面のSiの付着量を測定した。この付着量を測定することで、各サンプル1〜5におけるSi飛散量とすることができる。Siの飛散量の測定方法は次の通りである。単セル110の燃料極116における燃料ガスFGに晒された表面を含む測定サンプルを準備する。この測定用サンプルに対し、二次イオン質量分析法(SIMS)により、測定用サンプルの燃料ガスFGに晒された表面に付着したSiの付着量を分析する。具体的には、SIMSの装置に測定用サンプルをセットして、測定用サンプルにおける燃料ガスFGに晒された表面に対し、一次イオンを照射する。これにより、測定用サンプル表面から二次イオンが飛び出し、この二次イオンを質量分析することでSiの付着量を測定することができる。このSiの付着量をそのまま、サンプル1〜5のSi飛散量とする。
まず、サンプル1〜5の評価結果について検討する。図6に示すように、電圧降下の評価では、サンプル1〜4の判定結果は「〇」であるのに対し、サンプル5の判定結果は「×」であった。また、サンプル1〜4のSiの飛散量は600〜690(ppm)であるのに対し、サンプル5のSiの飛散量は900(ppm)であり、サンプル1〜4では、サンプル5に比べて、Siの飛散量が抑制されていることが確認できる。また、上述したように、サンプル1〜4は、軟質マイカの結晶とフォルステライトの結晶とを有するのに対し、サンプル5は、軟質マイカの結晶を有するが、フォルステライトの結晶を有しない。
上述したように、本件の発明者は、マイカ製部材が、XRDにおいて、KMg3(Si3Al)O10(OH)2(軟質マイカ)の強度ピークと、Mg2SiO4(フォルステライト)の強度ピークとを含む結晶構造を備える場合、XRDにおいて、KMg3(Si3Al)O10(OH)2の強度ピークのみを有する純粋な軟質マイカに比べて、Siの飛散を抑制することができることを実験等によって見出した。そこで、本実施形態によれば、スペーサー149は、XRDにおいて、KMg3(Si3Al)O10(OH)2の強度ピークと、Mg2SiO4の強度ピークとを含む結晶構造を備えるため、Siの飛散を抑制することができる。
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
Claims (7)
- マイカ製部材であって、
X線結晶構造解析(XRD)において、KMg3(Si3Al)O10(OH)2の強度ピークと、Mg2SiO4の強度ピークとを含む結晶構造を備えることを特徴とする、マイカ製部材。 - 請求項1に記載のマイカ製部材において、
前記KMg3(Si3Al)O10(OH)2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg2SiO4(120)面の強度ピークの比率は、0.001以上であることを特徴とするマイカ製部材。 - 請求項1または請求項2に記載のマイカ製部材において、
前記KMg3(Si3Al)O10(OH)2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg2SiO4(120)面の強度ピークの比率は、0.15以下であることを特徴とするマイカ製部材。 - 請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のマイカ製部材において、
前記KMg3(Si3Al)O10(OH)2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg2SiO4(120)面の強度ピークの比率は、0.003以上であることを特徴とするマイカ製部材。 - 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のマイカ製部材において、
前記KMg3(Si3Al)O10(OH)2(003)面の強度ピークに対する、前記Mg2SiO4(120)面の強度ピークの比率は、0.029以下であることを特徴とするマイカ製部材。 - 電解質層と前記電解質層を挟んで第1の方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記空気極に面する空気室または前記燃料極に面する燃料室に面する構造部材と、を備える電気化学反応単位において、
前記構造部材は、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のマイカ製部材により形成されていることを特徴とする、電気化学反応単位。 - 前記第1の方向に並べて配置された複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタックにおいて、
前記複数の電気化学反応単位の少なくとも1つは、請求項6に記載の電気化学反応単位であることを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
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