JP6475082B2 - 接合材前駆体および電気化学反応セルスタック - Google Patents

接合材前駆体および電気化学反応セルスタック Download PDF

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Description

本明細書によって開示される技術は、接合材前駆体に関する。
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物を含む電解質層を備える固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」ともいう)が知られている。SOFCの発電の最小単位である燃料電池発電単位(以下、単に「発電単位」ともいう)は、電解質層と電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極とを含む燃料電池単セル(以下、単に「単セル」ともいう)と、単セルで発生した電力を集めるために単セルの空気極側に配置された導電性の集電部材とを備える。空気極と集電部材とが導電性の接合材によって接合されることにより、空気極と集電部材とが電気的に接続される。
空気極と集電部材とを接合する接合材としては、例えば、スピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体が用いられる(例えば特許文献1参照)。そのような接合材の焼成前の状態である接合材前駆体が、空気極と集電部材との間に配置された状態で焼成されることにより、接合材が形成される。接合材前駆体は、例えば、セラミックおよび金属の粉末を、バインダとしての有機物と混合することにより生成される。
特開2007−141842号公報
上記従来の接合材前駆体では、熱処理(焼成)の際に粒子間の焼結反応が速く進行し、形成された接合材が過度に緻密質になる場合がある。接合材が過度に緻密質になると、接合材と空気極または集電部材との界面において、部材間の熱膨張差に起因したクラックが発生し、剥離が生じやすいという問題がある。
なお、このような問題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」ともいう)の最小単位である電解セル単位に含まれる空気極と集電部材とを接合する接合材の焼成前の状態である接合材前駆体にも共通の課題である。なお、本明細書では、発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼ぶ。さらに、このような問題は、電気化学反応単位を構成する2つの部材に限られず、第1の導電性部材と第2の導電性部材とを接合する接合材の焼成前の状態である接合材前駆体に共通の課題である。
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本明細書に開示される接合材前駆体は、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体であり、第1の導電性部材と第2の導電性部材とを接合する導電性の接合材の焼成前の状態である接合材前駆体であって、有機物と、前記第1の金属元素の酸化物の粉末である第1の原料と、前記第2の金属元素の粉末である第2の原料と、前記第2の金属元素の酸化物の粉末と前記遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方である第3の原料と、を含み、前記接合材前駆体に含まれる前記第2の金属元素の総量(mol)に対する前記第3の原料に含まれる前記第2の金属元素の量(mol)の割合は、0.1%以上、10%以下であることを特徴とする。第3の原料(第2の金属元素の酸化物の粉末と遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方)は、熱処理(焼成)の際に酸化反応および合成反応に寄与しないため、焼結の進行を妨げる効果がある。そのため、適切な割合の範囲(0.1%以上、10%以下)で第3の原料が含まれる本接合材前駆体を焼成して接合材を形成することにより、接合材によって第1の導電性部材と第2の導電性部材とを強固に接合できると共に、接合材を適度な多孔質とすることができ、接合材と第1の導電性部材または第2の導電性部材との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生して界面での剥離が発生することを抑制することができる。
(2)上記接合材前駆体において、前記第1の金属元素は、Mnであり、前記第2の金属元素は、CoとCuとZnとのいずれかである構成としてもよい。本接合材前駆体によれば、接合体前駆体を焼成して形成した接合材の導電性を高くすることができる。
(3)上記接合材前駆体において、前記第1の導電性部材は、固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を備える電気化学反応単セルにおける前記空気極である構成としてもよい。本接合材前駆体を焼成して接合材を形成すると、電気化学反応単セルにおける空気極と第2の導電性部材とを強固に接合できると共に、接合材と空気極または第2の導電性部材との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生して界面での剥離が発生することを抑制することができる。
(4)上記接合材前駆体において、前記第2の導電性部材は、前記電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記空気極の側に配置された集電部材と、を備える電気化学反応単位における前記集電部材である構成としてもよい。本接合材前駆体を焼成して接合材を形成すると、電気化学反応単位における空気極と集電部材とを強固に接合できると共に、接合材と空気極または集電部材との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生して界面での剥離が発生することを抑制することができる。
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、接合材前駆体、接合材前駆体により形成された接合材により接合された空気極および集電部材を備える電気化学反応単位(燃料電池発電単位または電解セル単位)、複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)、それらの製造方法等の形態で実現することが可能である。
本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図 図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図 図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図 図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図 図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図 本実施形態における燃料電池スタック100の製造方法を示すフローチャート 接合層138の性能評価の結果を示す説明図
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII−IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII−IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)発電単位102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びる連通孔108を構成している。以下の説明では、連通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、連通孔108と呼ぶ場合がある。
各連通孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
各ボルト22の軸部の外径は各連通孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22A)と、そのボルト22Aが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102に供給するガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、該辺の反対側の辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)と、そのボルト22Bが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。なお、本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
また、図1および図3に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)と、そのボルト22Dが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)と、そのボルト22Eが挿入された連通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の燃料ガスFGや燃料ガスFGの発電後のガスを含む燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。なお、本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。また、図2に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通しており、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。また、図3に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102が押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図4および図5に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入される連通孔108に対応する孔が形成されている。
インターコネクタ150は、矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
電解質層112は、矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
空気極側フレーム130は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス導入マニホールド161と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。
燃料極側フレーム140は、中央付近に上下方向に貫通する矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、電極対向部145と、電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触し、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触する。そのため、燃料極側集電体144は、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
空気極側集電体134は、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、複数の四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えば、フェライト系ステンレス等のCr(クロム)を含む金属により形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触することにより、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とは一体の部材として形成されている。すなわち、該一体の部材の内の、上下方向(Z軸方向)に直交する平板形状の部分がインターコネクタ150として機能し、該平板形状の部分から空気極114に向けて突出するように形成された複数の集電体要素135が空気極側集電体134として機能する。空気極側集電体134、または空気極側集電体134とインターコネクタ150との一体部材は、特許請求の範囲における集電部材に相当する。
図4および図5に示すように、空気極側集電体134の表面は、導電性のコート136によって覆われている。コート136は、例えば、スピネル型酸化物(例えば、MnCo、ZnMn、CuMn等)により形成されている。空気極側集電体134の表面へのコート136の形成は、例えば、スプレーコート、インクジェット印刷、スピンコート、ディップコート、めっき、スパッタリング、溶射等の周知の方法で実行される。なお、上述したように、本実施形態では、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されているため、実際には、空気極側集電体134の表面の内、インターコネクタ150との境界面はコート136により覆われていない一方、インターコネクタ150の表面の内、少なくとも酸化剤ガスの流路に面する表面(すなわち、インターコネクタ150における空気極114側の表面や酸化剤ガス導入マニホールド161および酸化剤ガス排出マニホールド162を構成する連通孔108に面した表面等)はコート136により覆われている。また、空気極側集電体134に対する熱処理によって酸化クロムの被膜ができることがあるが、その場合には、コート136は、当該被膜ではなく、当該被膜が形成された空気極側集電体134を覆うように形成された層である。以下の説明では、特記しない限り、空気極側集電体134(または集電体要素135)は「コート136に覆われた空気極側集電体134(または集電体要素135)」を意味する。
空気極114と空気極側集電体134とは、導電性の接合層138により接合されている。接合層138は、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物(例えば、MnCoやZnMn、CuMn等)を含む焼成体である。接合層138の製造方法は、後に詳述する。接合層138により、空気極114と空気極側集電体134とが電気的に接続される。先に、空気極側集電体134は空気極114の表面と接触していると説明したが、正確には、(コート136に覆われた)空気極側集電体134と空気極114との間には接合層138が介在している。接合層138は、特許請求の範囲における接合材に相当する。
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給され、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134(およびコート136、接合層138)を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
各発電単位102の空気室166から排出された酸化剤オフガスOOGは、図2および図4に示すように、酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102の燃料室176から排出された燃料オフガスFOGは、図3および図5に示すように、燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
A−3.燃料電池スタック100の製造方法:
図6は、本実施形態における燃料電池スタック100の製造方法を示すフローチャートである。まず、空気極114と空気極側集電体134とを接合する接合層138を形成するための原料粉末が用意される(S110)。上述したように、接合層138は、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体である。この接合層138を形成するための原料粉末は、上記第1の金属元素の酸化物の粉末(以下、「第1の原料M1」ともいう)と、上記第2の金属元素の粉末(以下、「第2の原料M2」ともいう)と、上記第2の金属元素の酸化物の粉末と上記遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方(以下、「第3の原料M3」ともいう)とを含む。例えば、接合層138がスピネル型の遷移金属複合酸化物であるMnCoを含む場合、原料粉末は、例えば、第1の原料M1として金属酸化物原料であるMnOの粉末と、第2の原料M2として金属原料であるCoの粉末と、第3の原料M3としてのMnCoの粉末とを含む。これらの粉末を所定量秤量し、原料粉末を得る。なお、本明細書において、「金属元素の酸化物」という用語は、当該金属元素と酸素元素とから構成された化合物を意味し、当該金属元素とは異なる他の金属元素を含む化合物(すなわち、金属複合酸化物)を含まない。
また、本実施形態では、原料粉末に含まれる第2の金属元素の総量(mol)に対する第3の原料M3に含まれる第2の金属元素の量(mol)の割合(以下、「第3の原料割合」ともいう)は、0.1%以上、10%以下である。第2の金属元素は、第2の原料M2と第3の原料M3とに含まれ得るが第1の原料M1には含まれないため、上記「原料粉末に含まれる第2の金属元素の総量」は、第2の原料M2に含まれる第2の金属元素の量と第3の原料M3に含まれる第2の金属元素の量との合計に等しい。そのため、第3の原料割合は、(第3の原料M3の量)/(第2の原料M2の量+第3の原料M3の量)(ただし、単位はmol%)で算出される。
次に、所定の割合で用意された原料粉末とバインダとしての有機物とが混合されて、接合層138を形成するための接合用ペーストが作成される(S120)。有機物には第2の金属元素は含まれないため、上述した第3の原料割合は、作成された接合用ペーストにおいても維持される。
次に、この接合用ペーストが、スクリーン印刷等により、燃料電池スタック100の各発電単位102を構成する空気極114と空気極側集電体134との間に配置される(S130)。なお、この際には、空気極114や空気極側集電体134は、各発電単位102を構成する他の部材と接合されていてもよい。
空気極114と空気極側集電体134との間に接合用ペーストが配置された状態で、100℃から200℃程度の乾燥処理が行われ、さらに大気中で700℃から900℃程度の熱処理(焼成)が行われる(S140)。これにより、接合用ペーストは、空気極114と空気極側集電体134とを接合する焼成体である接合層138となる。なお、接合層138の焼成前の状態、すなわち上記接合用ペーストと上記接合用ペーストを乾燥処理したものとを、「接合材前駆体」ともいう。
その後、残りの組み立て工程(例えばボルト22による燃料電池スタック100の締結)が行われ(S150)、上述した構成の燃料電池スタック100の製造が完了する。
A−4.接合層138の性能評価:
上述したように、本実施形態では、接合層138の焼成前の状態である接合用ペースト(接合材前駆体)が、第1の金属元素の酸化物の粉末(第1の原料M1)と、第2の金属元素の粉末(第2の原料M2)と、第2の金属元素の酸化物の粉末と遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方(第3の原料M3)とを含み、かつ、第3の原料割合(M3/(M2+M3))が0.1%以上、10%以下である。そのため、形成された接合層138によって空気極114と空気極側集電体134とを強固に接合できると共に、接合層138と空気極114または空気極側集電体134との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生して界面での剥離が発生することを抑制することができる。この点について、以下の通り、接合層138の性能評価を行った。
図7は、接合層138の性能評価の結果を示す説明図である。性能評価は、図7に示す26種類の構成の原料粉末のそれぞれを有機物と混合して製造した26種類の接合材前駆体を用いて行った。具体的には、各接合材前駆体を、単セル110の空気極114(LSCFにより形成)と空気極側集電体134に見立てたフェライト系金属部材(Φ10)との間に配置し、850℃、2時間の熱処理を行うことによって、単セル110および金属部材(以下、まとめて「被接合部材」ともいう)が接合層138によって接合された26種類のサンプル(サンプル1−26)を製造し、各サンプルに対して固着試験および熱衝撃試験を行った。サンプル1−26の内、サンプル3−6,8−21は、上記実施形態に含まれる実施例であり、残りのサンプルは比較例である。
固着試験は、接合層138による接合強度を調べるために行った。具体的には、各サンプルに対して、2つの被接合部材を引き剥がす方向の引張力を加え、接合層138の内部が破断するか、接合層138と被接合部材との界面が剥離したものを不合格(×)と判定し、そのような破断や剥離が起こる前に単セル110において空気極114が電解質層112から剥がれたものを合格(〇)と判定した。また、熱衝撃試験は、部材間の熱膨張差等に起因する接合層138と被接合部材との界面での剥離の発生しにくさを調べるために行った。具体的には、各サンプルに対して、800℃までの昇温と100℃までの降温との熱サイクルを100回繰り返し与え、接合層138と被接合部材との界面が剥離したものを不合格(×)と判定し、剥離しなかったものを合格(〇)と判定した。
サンプル1(比較例1)では、接合層138が、第1の金属元素(Mn)と第2の金属元素(Co)とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物(MnCo)を含む焼成体であり、原料粉末は、第1の原料M1としての第1の金属元素の酸化物(MnO)の粉末と、第2の原料M2としての第2の金属元素(Co)の粉末とから構成されている。このサンプル1(比較例1)では、固着試験では合格と判定されたものの、熱衝撃試験では不合格と判定された。サンプル1(比較例1)では、原料粉末の総量に占める金属元素の量の割合が比較的高いため、熱処理(焼成)によって原料粉末の焼結が速く進行し、形成される接合層138が過度に緻密質になりやすい。そのため、このサンプル1(比較例1)では、2つの被接合部材の熱膨張差を接合層138によって十分に吸収することができず、界面において剥離が発生したものと考えられる。
サンプル2−7では、サンプル1と同様に、接合層138が、第1の金属元素(Mn)と第2の金属元素(Co)とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物(MnCo)を含む焼成体である。しかし、サンプル2−7では、原料粉末が、第1の原料M1としての第1の金属元素の酸化物(MnO)の粉末と第2の原料M2としての第2の金属元素(Co)の粉末とに加え、第3の原料M3としての遷移金属複合酸化物(MnCo)の粉末を含んでいる。また、サンプル2−7の内、サンプル3−6(実施例1−4)では、第3の原料割合(M3/(M2+M3))が0.1%以上、10%以下であるが、サンプル2(比較例2)では、第3の原料割合が0.1%未満であり、サンプル7(比較例3)では、第3の原料割合が10%より高い。
サンプル3−6(実施例1−4)では、固着試験でも熱衝撃試験でも合格と判定された。第3の原料M3(第2の金属元素の酸化物の粉末と遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方)は、熱処理(焼成)の際に酸化反応および合成反応に寄与しないため、焼結の進行を妨げる効果がある。そのため、第3の原料割合が適切な範囲(0.1%以上、10%以下)内に設定されたサンプル3−6(実施例1−4)では、接合層138の十分な固着強度を確保しつつ、接合層138を適度な多孔質とすることができ、2つの被接合部材の熱膨張差を接合層138によって十分に吸収することができ、界面における剥離の発生が抑制されたものと考えられる。
一方、サンプル2(比較例2)では、固着試験では合格と判定されたものの、熱衝撃試験において不合格と判定された。サンプル2(比較例2)のように、第3の原料割合の値が低すぎると、第3の原料M3による焼結進行阻害効果が十分に得られず、熱処理(焼成)によって原料粉末の焼結が速く進行し、形成される接合層138が過度に緻密質になってしまい、2つの被接合部材の熱膨張差を接合層138によって十分に吸収することができず、界面での剥離が発生したものと考えられる。また、サンプル7(比較例3)では、熱衝撃試験では合格と判定されたものの、固着試験において不合格と判定された。サンプル7(比較例3)のように、第3の原料割合の値が高すぎると、接合層138が過度に多孔質となり、接合層138自体の強度が低くなって被接合部材を強固に固着できなくなったものと考えられる。
サンプル8−21(実施例5−18)では、サンプル3−6(実施例1−4)と同様に、接合層138が、第1の金属元素(Mn)と第2の金属元素(Co、Cu、または、Zn)とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物(MnCo、CuMn、または、ZnMn)を含む焼成体であり、原料粉末が、第1の原料M1としての第1の金属元素の酸化物(MnO、MnO、Mn、または、Mn)の粉末と第2の原料M2としての第2の金属元素(Co、Cu、または、Zn)の粉末とに加え、第3の原料M3としての遷移金属複合酸化物(MnCo、CuMn、または、ZnMn)の粉末と第2の金属元素の酸化物(CuO、ZnO、Co、または、CoO)の粉末との少なくとも一方とを含んでおり、第3の原料割合(M3/(M2+M3))が0.1%以上、10%以下である。サンプル8−21(実施例5−18)では、サンプル3−6(実施例1−4)と同様に、固着試験でも熱衝撃試験でも合格と判定された。サンプル8−21(実施例5−18)でも、第3の原料割合が適切な範囲(0.1%以上、10%以下)内に設定されているため、接合層138の十分な固着強度を確保しつつ、接合層138を適度な多孔質とすることができ、2つの被接合部材の熱膨張差を接合層138によって十分に吸収することができ、界面における剥離の発生が抑制されたものと考えられる。
なお、サンプル22−25(比較例4−7)では、原料粉末が、第1の金属元素(Mn)の粉末と、第2の金属元素(Co)の粉末とを含んでいるが、第1の金属元素(Mn)の酸化物を含んでいない。なお、図7では、便宜上、サンプル22−25(比較例4−7)における第1の金属元素(Mn)の粉末を、第1の原料M1の欄に記載している。これらのサンプル22−25(比較例4−7)では、固着試験では合格と判定されたものの、熱衝撃試験において不合格と判定された。これは、原料粉末が、第1の金属元素(Mn)の粉末と第2の金属元素(Co)の粉末とを含んでいるため、熱処理(焼成)によって原料粉末の焼結が速く進行し、接合層138が過度に緻密質になりやすく、被接合部材の熱膨張差を接合層138によって十分に吸収することができないためであると考えられる。
なお、サンプル22−25(比較例4−7)の内、サンプル23−25(比較例5−7)では、原料粉末が、第1の金属元素(Mn)の粉末と第2の金属元素(Co)の粉末とに加えて、第3の原料M3(MnCo)が含まれている。しかし、これらのサンプルを対象とした熱衝撃試験においても、合格判定を得ることはできなかった。これは、上記各実施例において第1の金属の酸化物の粉末と第2の金属の粉末とを焼結させるのに比べ、金属粉末同士の焼結は格段に速く進行するため、第3の原料M3を添加することによっては焼結の進行を緩やかにすることができないためであると考えられる。
また、サンプル26(比較例8)では、原料粉末が、第1の金属元素(Mn)の酸化物(MnO)の粉末(第1の原料)と、第2の金属元素(Co)の酸化物(CoO)の粉末とを含んでいるが、第2の金属元素(Co)の粉末(第2の原料)を含んでいない。このサンプル26(比較例8)では、熱衝撃試験では合格と判定されたものの、固着試験において不合格と判定された。これは、原料粉末が金属元素の粉末を含んでいないため、焼結の進行が過度に遅く、接合層138が過度に多孔質となり、接合層138自体の強度が小さくなって被接合部材を強固に固着できないためであると考えられる。
以上説明したように、本実施形態では、接合層138は、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体であり、接合層138の焼成前の状態である接合材前駆体は、有機物と、第1の金属元素の酸化物の粉末(第1の原料M1)と、第2の金属元素の粉末(第2の原料M2)と、第2の金属元素の酸化物の粉末と遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方(第3の原料M3)とを含み、接合体前駆体における第3の原料割合(M3/(M2+M3))が0.1%以上、10%以下である。そのため、この接合体前駆体を焼成して接合層138を形成することにより、接合層138によって空気極114と空気極側集電体134とを強固に接合できると共に、接合層138と空気極114または空気極側集電体134との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生して界面での剥離が発生することを抑制することができる。
また、本実施形態では、上記第1の金属元素はMnであり、上記第2の金属元素はCoとCuとZnとのいずれかである。このような、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物は導電性が高い。そのため、この構成によれば、接合体前駆体を焼成して形成した接合層138の導電性を高くすることができる。
なお、上述したように、原料粉末が、第3の原料M3(第2の金属元素の酸化物の粉末と遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方)を含んでいても、さらに、第1の金属元素の粉末と第2の金属元素の粉末とを含んでいると、金属粉末同士の焼結が格段に速く進行して接合層138が過度に緻密質になり、接合層138と空気極114または空気極側集電体134との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生してしまう。すなわち、どのような構成の原料粉末に第3の原料M3を添加しても上述のクラック発生抑制効果が得られる訳ではなく、第1の金属元素の酸化物の粉末(第1の原料M1)と第2の金属元素の粉末(第2の原料M2)とに第3の原料M3を添加することによってはじめて、上述のクラック発生抑制効果が得られるのである。この技術的知見を見出したことが、本願発明の大きな意義の1つである。
A−5.接合材前駆体の分析方法:
接合材前駆体の原料割合(mol%)は、以下のような方法で特定することができる。第1の金属元素の酸化物の粉末(第1の原料M1)と第2の金属元素の粉末(第2の原料M2)とに第3の原料M3を所定量秤量し、バインダとしての有機物と混合した接合用ペーストを120℃の乾燥機で1時間乾燥させて分析用サンプルを得る。なお、接合用ペーストが既に乾燥している場合には、あらためて乾燥させる必要はない。得られた分析用サンプルを対象としてICP−AESで元素比率分析を行い、含有元素の比率を特定する。次に、分析用サンプルを対象としてX線回折で結晶構造解析を行い、分析用サンプルに含まれる原料粉末の結晶構造を特定する。分析用サンプルの元素比率と結晶構造を特定することにより、複数存在する原料物質をそれぞれ特定すると共に、XRDのメインピークの比率から各原料割合を求めることができる。各原料割合を求めることにより、上述した第3の原料割合を特定することができる。
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
上記実施形態では、接合層138が、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体であり、第1の金属元素はMnであり、第2の金属元素はCoとCuとZnとのいずれかであるとしているが、第1の金属元素または第2の金属元素が他の金属元素であってもよい。ただし、上述したように、第1の金属元素をMnとして、第2の金属元素をCoとCuとZnとのいずれかとすれば、接合体前駆体を焼成して形成した接合層138の導電性を高くすることができるため好ましい。
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各連通孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを各ボルト22が挿入される各連通孔108とは別に設けてもよい。
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
また、上記実施形態において、空気極側集電体134と、それに隣接するインターコネクタ150とが別部材であってもよい。また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。例えば、上記実施形態では、空気極側集電体134は、Crを含む金属により形成されているが、空気極側集電体134は、他の材料により形成されていてもよい。また、空気極側集電体134を構成する各集電体要素135の形状は、四角柱状に限らず、他の形状であってもよい。また、空気極側集電体134がコート136に覆われていなくてもよい。
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
本明細書において、部材(または部材のある部分、以下同様)Aを挟んで部材Bと部材Cとが互いに対向するとは、部材Aと部材Bまたは部材Cとが隣接する形態に限定されず、部材Aと部材Bまたは部材Cとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に他の層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
また、上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行うSOFCを対象としているが、本発明は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(SOEC)の最小単位である電解セル単位や、複数の電解セル単位を備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2014−207120号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、連通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、連通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解セル単位および電解セルスタックにおいても、上記実施形態と同様に、接合層138が、第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体であり、接合層138の焼成前の状態である接合材前駆体が、有機物と、第1の金属元素の酸化物の粉末である第1の原料と、第2の金属元素の粉末である第2の原料と、第2の金属元素の酸化物の粉末と遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方(第3の原料M3)とを含み、接合体前駆体における第3の原料割合(M3/(M2+M3))が0.1%以上、10%以下である構成を採用すれば、接合層138によって空気極114と空気極側集電体134とを強固に接合できると共に、接合層138と空気極114または空気極側集電体134との界面で熱膨張差等に起因したクラックが発生して界面での剥離が発生することを抑制することができる。
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本願発明は、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
また、上記実施形態では、燃料電池(または電解セル)における空気極114と空気極側集電体134とを接合する接合層138の焼成前の状態である接合材前駆体を例に説明したが、本願発明は、空気極114と空気極側集電体134との接合に限られず、第1の導電性部材と第2の導電性部材とを接合する接合材の焼成前の状態である接合材前駆体一般に適用可能である。
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:連通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 135:集電体要素 136:コート 138:接合層 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室

Claims (4)

  1. 第1の金属元素と第2の金属元素とを有するスピネル型の遷移金属複合酸化物を含む焼成体であり、第1の導電性部材と第2の導電性部材とを接合する導電性の接合材の焼成前の状態である接合材前駆体であって、
    有機物と、
    前記第1の金属元素の酸化物の粉末である第1の原料と、
    前記第2の金属元素の粉末である第2の原料と、
    前記第2の金属元素の酸化物の粉末と前記遷移金属複合酸化物の粉末との少なくとも一方である第3の原料と、
    を含み、
    前記接合材前駆体に含まれる前記第2の金属元素の総量(mol)に対する前記第3の原料に含まれる前記第2の金属元素の量(mol)の割合は、0.1%以上、10%以下であり、
    前記第1の金属元素は、Mnであり、前記第2の金属元素は、CoとCuとZnとのいずれかであることを特徴とする、接合材前駆体。
  2. 請求項に記載の接合材前駆体において、
    前記第1の導電性部材は、固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を備える電気化学反応単セルにおける前記空気極であることを特徴とする、接合材前駆体。
  3. 請求項に記載の接合材前駆体において、
    前記第2の導電性部材は、前記電気化学反応単セルと、前記電気化学反応単セルの前記空気極の側に配置された集電部材と、を備える電気化学反応単位における前記集電部材であることを特徴とする、接合材前駆体。
  4. 複数の電気化学反応単位を備える電気化学反応セルスタックであって、
    各前記電気化学反応単位は、
    固体酸化物を含む電解質層と、前記電解質層を挟んで互いに対向する空気極および燃料極と、を含む電気化学反応単セルと、
    前記電気化学反応単セルの前記空気極の側に配置された集電部材と、を備え、
    前記第1の導電性部材としての前記空気極と前記第2の導電性部材としての前記集電部材とは、請求項1から請求項までのいずれか一項に記載の接合材前駆体により形成された前記接合材により接合されていることを特徴とする、電気化学反応セルスタック。
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