JP6602296B2 - 金型 - Google Patents

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Description

本発明は、キャビティに充填される溶融樹脂を基部と基部から突出されたリブとを有する樹脂成形品として形成するための金型及びこれにより成形される灯具用エクステンションの技術分野に関する。
特開2009−102581号公報
車輌用灯具の部品として用いられる車輌用灯具部品には、例えば、光源が配置されるランプハウジング、光源から出射された光を反射するリフレクター、内部構造を遮蔽して見栄えの向上を図るための灯具用エクステンション等の各種のものがある。
このような車輌用灯具部品には、コア型とキャビ型を有する金型のキャビティに充填された溶融樹脂が冷却されて樹脂成形品として成形されるものがある(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1には、リフレクターや灯具用エクステンション等の車輌用灯具部品がポリブチレンテレフタレート(PBT)等の樹脂材料によって成形される技術が開示されている。
ところで、上記のような樹脂成形品として成形される車輌用灯具部品は、金型のキャビティに充填された溶融樹脂が冷却されることにより成形されるため、冷却時に収縮が生じ易い。特に、樹脂材料としてポリブチレンテレフタレート等の結晶性樹脂材料が用いられた場合には、冷却時に大きな収縮が生じるおそれがある。
一方、車輌用灯具部品は各種の機能を有し様々な形状に形成されるため、一部が所定の方向へ屈曲された屈曲部として設けられていることが多い。
従って、溶融樹脂の冷却時に収縮が生じると、収縮によって屈曲部に曲率半径が大きくなる方向への力が生じてしまい、金型の離型時に車輌用灯具部品が金型に擦ってしまい、車輌用灯具部品が傷付いて成形性が低下するおそれがある。
そこで、金型に成形用凹部を形成し、成形用凹部によって冷却時における収縮に起因する屈曲部の変形方向に対して傾斜されるリブが車輌用灯具部品に成形されるようにし、リブによって溶融樹脂の冷却時における屈曲部の変形を防止して屈曲部の金型との接触による傷付きを防止することが考えられる。
ところが、成形用凹部を有する金型を用いて車輌用灯具部品を成形する場合には、金型のキャビティへの溶融樹脂の充填時に、キャビティに存在する空気の一部が溶融樹脂によって成形用凹部に一時的に残留エアーとして閉じ込められ、残留エアーが成形用凹部に充填される溶融樹脂によって押し出されたときに成形用凹部以外の部分に充填される溶融樹脂の表面に残留エアーが吹き付けられてしまう。
成形用凹部以外の部分に充填される溶融樹脂に残留エアーが吹き付けられてしまうと、残留エアーの作用によって溶融樹脂の表面が荒らされて所謂脱気シルバーが生じ、脱気シルバーによって車輌用灯具部品における外観不良が生じるおそれがある。
そこで、本発明金型は、上記した問題点を克服し、成形上の向上を図った上で外観不良を防止することを課題とする。
本発明に係る金型は、上記した課題を解決するために、キャビティに充填される溶融樹脂を基部と前記基部から突出されたリブとを有する樹脂成形品として形成するための金型であって、ベース部と前記リブを形成するための溶融樹脂が充填される充填凹部を有する入れ子とを備え、外部と前記充填凹部に連通され前記溶融樹脂の侵入が不能とされた隙間が前記充填凹部における前記溶融樹脂の流れの川上側に形成され、前記入れ子が階段形状に形成されたものである。
これにより、隙間から充填凹部に存在していた空気が外部へ流出される。また、入れ子の形状が簡素になる。
別の本発明に係る金型は、上記した課題を解決するために、キャビティに充填される溶融樹脂を基部と前記基部から突出されたリブとを有する樹脂成形品として形成するための金型であって、ベース部と前記リブを形成するための溶融樹脂が充填される充填凹部を有する入れ子とを備え、前記入れ子に、前記充填凹部に連通された空気溜まり凹部が前記充填凹部における前記溶融樹脂の流れの川上側に形成され、前記空気溜まり凹部が前記入れ子の一端部に形成されて前記入れ子が階段形状に形成されたものである。
これにより、充填凹部に存在していた空気が空気溜まり凹部に滞留される。また、入れ子の形状が簡素になる。
に、上記した別の本発明に係る金型においては、前記ベース部と前記入れ子の間に、外部及び前記空気溜まり凹部に連通され前記溶融樹脂の侵入が不能とされた隙間が形成されることが望ましい。
これにより、充填凹部に存在する空気が溶融樹脂よって空気溜まり凹部へ押し出されると共に隙間から外部へ押し出される。
本発明によれば、充填凹部に存在していた空気が充填凹部に充填される溶融樹脂以外の溶融樹脂に吹き付けられ難いため、成形性の向上を図った上で外観不良を防止することができる。
図2乃至図17と共に本発明の実施の形態を示すものであり、本図は、車輌用灯具の断面図である。 樹脂成形品の斜視図である。 樹脂成形品の一部を示す拡大図である。 金型のキャビティに溶融樹脂が充填された状態を示す断面図である。 金型の一部を示す拡大断面図である。 図7及び図8と共に溶融樹脂が充填されるときの状態を示すものであり、本図は、溶融樹脂がキャビティの第1の部分に充填されている状態を示す拡大断面図である。 溶融樹脂がキャビティの第1の部分から第2の部分に充填されている状態を示す拡大断面図である。 溶融樹脂がキャビティの第1の部分と第2の部分に充填された状態を示す拡大断面図である。 第1の変形例に係る入れ子が用いられた金型の一部を示す拡大断面図である。 第1の変形例に係る入れ子が用いられた金型において隙間が形成された例を示す拡大断面図である。 図12及び図13と共に第1の変形例に係る入れ子が用いられた金型において溶融樹脂が充填されるときの状態を示すものであり、本図は、溶融樹脂がキャビティの第1の部分に充填されている状態を示す拡大断面図である。 溶融樹脂がキャビティの第1の部分から第2の部分に充填されている状態を示す拡大断面図である。 溶融樹脂がキャビティの第1の部分と第2の部分に充填された状態を示す拡大断面図である。 第2の変形例に係る入れ子が用いられた金型の一部を示す拡大断面図である。 図16及び図17と共に測定に関するものであり、本図は、テスト用の金型を示す断面図である。 溶融樹脂としてポリブチレンテレフタレートを用いた場合の測定結果を示す図表である。 溶融樹脂としてポリカーボネートを用いた場合の測定結果を示す図表である。
以下に、本発明を実施するための形態について添付図面を参照して説明する。
<車輌用灯具の概略構成>
先ず、樹脂成形品が設けられる車輌用灯具の概略構成について説明する(図1参照)。
車輌用灯具50は、例えば、それぞれ車体の前端部における左右両端部に取り付けられて配置されている。
車輌用灯具50は前方に開口を有するランプハウジング51とランプハウジング51の開口を閉塞するカバー52とを備えている。ランプハウジング51とカバー52によって灯具外筐53が構成され、灯具外筐53の内部空間が灯室54として形成されている。
灯室54にはリフレクター55が配置され、リフレクター55には光源56が取り付けられている。灯室54にはリフレクター55の前側に灯具用エクステンション57が配置されている。灯具用エクステンション57は車輌用灯具50の内部構造を遮蔽して見栄えの向上を図る機能を有し、樹脂材料によって形成され、後述する樹脂成形品として成形されている。
尚、車輌用灯具50にあっては、灯室54にレンズホルダーや投影レンズを有するランプユニットが配置されていてもよい。
<樹脂成形品(車輌用灯具部品)の構成>
次に、金型によって車輌用灯具部品である灯具用エクステンション57として成形される樹脂成形品1の構成について説明する(図2及び図3参照)。
樹脂成形品1は射出成形によって、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)、ポリカーボネート(PC)等の結晶性樹脂材料により成形されている。樹脂成形品1は車輌用灯具の部品として用いられ、例えば、車輌用前照灯の内部構造を遮蔽して見栄えの向上を図るための灯具用エクステンションとして成形されている。
樹脂成形品1は横長の環状に形成された基部2と基部2の外面から外方へ突出されたリブ3、3、・・・とを有している(図2参照)。
基部2は一部、例えば、下方側に位置する左右両側の部分がそれぞれ屈曲部4、4として設けられ、屈曲部4、4は外方へ凸の緩やかな曲面状に形成されている。
リブ3、3、・・・はそれぞれ屈曲部4、4の外周面から突出され、前後に延びる形状に形成され、基部2の周方向に離隔して位置されている。リブ3は、屈曲部4のうちリブ3と連続する連続部分4aの厚み方向(図3に示すH)に対して所定の角度傾斜する方向へ突出されている。
リブ3の厚み方向Hに対する傾斜角度θは、例えば、10°程度にされている。リブ3、3、・・・は、後述する溶融樹脂の収縮に起因する屈曲部4、4の変形を防止する機能を有している。
樹脂成形品1は少なくとも基部2の内周面と前面が、例えば、鏡面にされた意匠面1a、1aとして形成され、樹脂成形品1が灯室54に配置された状態において意匠面1a、1aが外部から視認可能な面とされている。また、樹脂成形品1のうちリブ3、3、・・・の表面は外部から視認不能な非意匠面1b、1b、・・・とされている。
<金型の構造>
次に、樹脂成形品1を射出成形によって成形する金型100について説明する(図4及び図5参照)。図4は、リブ3が形成される位置における金型100の左右方向を向く状態の垂直断面図であり、図5は、リブ3が形成される位置における金型100の一部を示す前後方向を向く状態の拡大垂直断面図である。尚、後述する図6乃至図13も図5と同様の切断位置における拡大垂直断面図である。また、図5乃至図13は、説明の理解を容易にするために、一つのリブ3が形成される例を示している。
金型100は可動型として用いられたコア型101と固定型として用いられたキャビ型102と入れ子103とを有している。コア型101とキャビ型102は金型100におけるベース部として設けられている。コア型101とキャビ型102の各内面はそれぞれキャビティ300を形成するキャビティ形成面101a、102aとして形成されている。
コア型101の下端部には少なくとも下方に開口された配置凹部101b、101b、・・・が形成されている。配置凹部101b、101b、・・・にはそれぞれ入れ子103、103、・・・が挿入されて配置される。入れ子103、103、・・・はリブ3、3、・・・を形成するためのものであり、形成されるリブ3、3、・・・の数と同数が設けられている。
配置凹部101b、101b、・・・にそれぞれ入れ子103、103、・・・が挿入されたコア型101とキャビ型102が突き合わされることにより、溶融樹脂200が充填されるキャビティ300が形成される。金型100にあっては、コア型101とキャビ型102の型閉め時又は型開き時の離接方向が、例えば、前後方向とされている。
入れ子103はリブ3が延びる方向(前後方向)と同じ方向に延びる形状に形成され、入れ子103には上方及び側方に開口された充填凹部103aが形成されている(図5参照)。従って、入れ子103は延びる方向(前後方向)に対して直交する断面形状が階段形状に形成されている。
このように金型100にあっては、入れ子103が階段形状に形成されているため、入れ子103の形状が簡素であり、例えば、入れ子103を製造するための材料に対して切削用の刃物を鉛直方向及び水平方向において一方から他方へ移動させることにより入れ子103を階段状の形状に製造することが可能であり、入れ子103の製造が容易になり、金型100の製造コストの低減を図ることができる。
コア型101の配置凹部101bに入れ子103が挿入された状態において、入れ子103とコア型101の間に一定の隙間400が形成される。隙間400は充填凹部103a側に形成され、一端が充填凹部103aに連通され他端が外部、即ち、金型100の外部600に連通される。隙間400は溶融樹脂200の侵入が不能な幅とされ、例えば、幅が0.1mm乃至0.35mmとされている。
上記したように、配置凹部101b、101b、・・・にそれぞれ入れ子103、103、・・・が挿入されたコア型101とキャビ型102が突き合わされることにより、溶融樹脂200が充填されるキャビティ300が形成されるが、キャビティ300は基部2を成形するための環状に形成された第1の部分300aとリブ3、3、・・・をそれぞれ成形するための第2の部分300b、300b、・・・とによって構成される。第2の部分300b、300b、・・・はそれぞれ入れ子103、103、・・・の充填凹部103a、103a、・・・に相当する部分である。
<金型による樹脂成形品の成形>
金型100のキャビティ300に溶融樹脂200が充填されて冷却されると、冷却時に溶融樹脂200に収縮力が生じ、基部2においては、収縮力が、特に、周方向(図2及び図3に示すA方向)において大きい。このようなA方向への収縮力が生じると、収縮力に起因して屈曲部4、4に曲率半径が大きくなる方向(図3に示すB方向)への変形力が生じる。B方向(変形方向)はリブ3の厚み方向に一致する。
ところが、樹脂成形品1においては、変形方向Bに対して所定の角度θ傾斜するリブ3、3、・・・が設けられているため、収縮力に起因する屈曲部4、4の変形方向Bへの変形が防止される。
従って、樹脂成形品1にあっては、リブ3、3、・・・によって溶融樹脂200の冷却時における屈曲部4、4の変形が防止されるため、コア型101とキャビ型102の型開き時に屈曲部4、4が変形されず屈曲部4、4のキャビ型102との接触による傷付きが防止され、樹脂成形品1の成形性の向上を図ることができる。
金型100のキャビティ300に溶融樹脂200が充填されるときには、先ず、溶融樹脂200がキャビティ300の第1の部分300aに充填されていく(図6参照)。溶融樹脂200は引き続いて第1の部分300aに充填されていくと共に第1の部分300aから第2の部分300b(入れ子103の充填凹部103a)にも充填される(図7参照)。このとき充填凹部103aに存在する空気(残留エアー)が第2の部分300bに充填される溶融樹脂200によって隙間400から外部600へ押し出されていく。溶融樹脂200はさらに第1の部分300a及び第2の部分300bに充填されていき、キャビティ300の全体に亘って充填される(図8参照)。
このように充填凹部103aに存在する空気は、第2の部分300bに充填される溶融樹脂200によって隙間400から外部600へ押し出されていくため、第1の部分300aに侵入し難く第1の部分300aに充填される溶融樹脂200に影響を及ぼし難い。
<入れ子の第1の変形例>
以下に、第1の変形例に係る入れ子103Aについて説明する(図9乃至図13参照)。
入れ子103Aはリブ3が延びる方向(前後方向)と同じ方向に延びる形状に形成され、入れ子103Aには上方及び側方に開口された充填凹部103aと充填凹部103aに連続する空気溜まり凹部103bとが形成されている。空気溜まり凹部103bは充填凹部103aより下側に形成され、入れ子103Aは延びる方向(前後方向)に対して直交する断面形状が階段形状に形成されている。
このように金型100にあっては、入れ子103Aが階段形状に形成されているため、入れ子103Aの形状が簡素であり、入れ子103Aの製造が容易になり、金型100の製造コストの低減を図ることができる。
尚、入れ子103Aが用いられた場合には、コア型101の配置凹部101bに入れ子103Aが挿入された状態において、入れ子103Aとコア型101の間に隙間400が形成されていなくてもよい(図9参照)。
但し、入れ子103Aが用いられた場合においても、入れ子103が用いられた場合と同様に、コア型101の配置凹部101bに入れ子103Aが挿入された状態において、入れ子103Aとコア型101の間に隙間400が形成されていてもよい(図10参照)。
入れ子103Aが用いられた場合において、金型100のキャビティ300に溶融樹脂200が充填されるときには、先ず、溶融樹脂200がキャビティ300の第1の部分300aに充填されていく(図11参照)。溶融樹脂200は引き続いて第1の部分300aに充填されていくと共に第1の部分300aから第2の部分300b(入れ子103Aの充填凹部103a)にも充填される(図12参照)。このとき充填凹部103aに存在する空気が第2の部分300bに充填される溶融樹脂200によって空気溜まり凹部103bへ向けて押し出されて空気溜まり凹部103bに滞留されていく。溶融樹脂200はさらに第1の部分300a及び第2の部分300bに充填されていき、キャビティ300の全体に亘って充填される(図13参照)。
このように充填凹部103aに存在する空気は、第2の部分300bに充填される溶融樹脂200によって空気溜まり凹部103bへ押し出されて空気溜まり凹部103bに滞留されるため、第1の部分300aに侵入し難く第1の部分300aに充填される溶融樹脂200に影響を及ぼし難い。
尚、入れ子103Aが用いられた場合において、隙間400が形成されているとき(図10参照)には、充填凹部103aに存在する空気が第2の部分300bに充填される溶融樹脂200によって空気溜まり凹部103bへ押し出されていくと共に隙間400から外部600へ押し出されていく。従って、充填凹部103aに存在する空気が第1の部分300aに一層侵入し難く第1の部分300aに充填される溶融樹脂200に一層影響を及ぼし難くなる。
<入れ子の第2の変形例>
以下に、第2の変形例に係る入れ子103Bについて説明する(図14参照)。
入れ子103Bはコア型101の配置凹部101bに挿入されて配置され、階段状の同様の形状に形成された第1の成形部104と第2の成形部105と第3の成形部106が左右方向において連続して一体に形成されて成る。入れ子103Bには、第1の成形部104と第2の成形部105と第3の成形部106に、それぞれ充填凹部103a、103a、103aが形成されている。
コア型101の配置凹部101bに入れ子103Bが挿入された状態において、入れ子103の第1の成形部104とコア型101の間に一定の隙間400が形成される。第1の成形部104と第2の成形部105の間には隙間(貫通孔)400が形成され、第2の成形部105と第3の成形部106の間には空気溜まり凹部103bが形成されている。
入れ子103Bが用いられた金型100において、充填凹部103a、103a、103aに溶融樹脂200が充填されることによりリブ3、3、3が成形される。溶融樹脂200がキャビティ300に充填されていくときには、充填凹部103a、103a、103aに存在する空気が溶融樹脂200によって隙間400、400から外部600へ押し出されていくと共に空気溜まり凹部103bへ向けて押し出されて空気溜まり凹部103bに滞留されていく。
このように充填凹部103a、103a、103aに存在する空気は、溶融樹脂200によって隙間400、400から外部600へ押し出されていくと共に空気溜まり凹部103bへ押し出されて空気溜まり凹部103bに滞留されるため、第1の部分300aに侵入し難く第1の部分300aに充填される溶融樹脂200に影響を及ぼし難い。
また、入れ子103Bはリブ3、3、3を成形するための三つの充填凹部103a、103a、103aを有しているため、入れ子103Bを用いることにより金型100の部品点数を低減することができ、金型100の製造コストの低減を図ることができる。
尚、上記には、三つの充填凹部103a、103a、103aを有する入れ子103Bの例を示したが、入れ子103Bの充填凹部103aの数は任意であり、充填凹部103aは成形するリブ3の数に応じた数が形成されていればよい。また、隙間400と空気溜まり凹部103bの数及び位置も任意であり、入れ子103Bには隙間400、400、・・・のみが形成されていてもよく、空気溜まり凹部103b、103b、・・・のみが形成されていてもよく、また、隙間400と空気溜まり凹部103bがそれぞれ少なくとも一つずつ任意の位置に形成されていてもよい。
<隙間の効果測定>
金型100にあっては、上記したように、充填凹部103aに存在する空気が第2の部分300bに充填される溶融樹脂200によって押し出されていくため、第1の部分300aに侵入し難いが、万が一、充填凹部103aに存在する空気が第1の部分300aに侵入すると、第1の部分300aに充填される溶融樹脂200の表面が侵入する空気によって荒らされて脱気シルバーが生じるおそれがある。
そこで、空気溜まり凹部103bの幅や高さを変更して、金型100による効果を確認するための測定を以下のようにしてテスト用の金型100Xを用いて行った(図15乃至図17参照)。尚、図15は、リブ3が形成される位置におけるテスト用の金型100Xの左右方向を向く状態の垂直断面図である。また、図15は、説明の都合上、リブ3が形成される部分を誇張して示しており、縦横高さの比を実際のものとは異なる状態で示している。
金型100Xはコア型101Xとキャビ型102Xと入れ子103Xを有している。入れ子103Xは第1の変形例に係る入れ子103Aと同様に充填凹部103aと空気溜まり凹部103bを有している。入れ子103Xとコア型101の間には、入れ子103Xの両側にそれぞれ一定の隙間400と隙間500が形成される。
測定における溶融樹脂200の温度は250°Cとし、金型100Xの温度は50°Cとした。隙間400、500の幅H、Hはそれぞれ0.01mm乃至0.04mmとし、形成されるリブ3(充填凹部103a)は高さAを2mmとし幅Bを0.8mmとした。また、空気溜まり凹部103bは高さCと幅Dをそれぞれ変更して測定を行った。
図16は、溶融樹脂200としてポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いた場合の測定結果を示し、図17は、溶融樹脂200としてポリカーボネート(PC)を用いた場合の測定結果を示している。図16及び図17において、「○」は脱気シルバーとウエルドラインが認められなかった例であり、「△」は脱気シルバー又はウエルドラインの少なくとも一方が若干認められたが製品としての外観上問題がない例であり、「×」は脱気シルバー又はウエルドラインの少なくとも一方が認められ製品として外観上支障を来すと判断された例である。
図16に示すように、溶融樹脂200としてポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いた場合には、空気溜まり凹部103bの高さが0.1mm乃至0.6mmにおいて一部を除いて良好な結果が得られ、空気溜まり凹部103bの幅が0.10mm乃至0.35mmにおいて一部を除いて良好な結果が得られた。特に、空気溜まり凹部103bの高さが0.1mm乃至0.6mmかつ空気溜まり凹部103bの幅が0.15mm乃至0.30mmにおいて良好な結果が得られた。
また、図17に示すように、溶融樹脂200としてポリカーボネート(PC)を用いた場合には、空気溜まり凹部103bの高さが0.1mm乃至1.0mmにおいて一部を除いて良好な結果が得られ、空気溜まり凹部103bの幅が0.10mm乃至0.90mmにおいて一部を除いて良好な結果が得られた。特に、空気溜まり凹部103bの高さが0.1mm乃至1.0mmかつ空気溜まり凹部103bの幅が0.20mm乃至0.70mmにおいて良好な結果が得られた。
<まとめ>
以上に記載した通り、金型100にあっては、入れ子103が用いられた場合には充填凹部103aに存在する空気が隙間400から外部600へ押し出され、入れ子103Aが用いられた場合には充填凹部103aに存在する空気が空気溜まり凹部103bへ押し出されて空気溜まり凹部103bに滞留され又は隙間400から外部600へ押し出される。また、入れ子103Bが用いられた場合には充填凹部103a、103aに存在する空気が隙間400、400から外部600へ押し出されていくと共に充填凹部103aに存在する空気が空気溜まり凹部103bへ押し出されて空気溜まり凹部103bに滞留される。
従って、溶融樹脂200の収縮力に起因する屈曲部4、4の変形がリブ3、3、・・・によって防止されることによる樹脂成形品1の成形性の向上を図った上で樹脂成形品1の外観不良を防止することができる。
特に、樹脂成形品1の材料としてポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアセタール(POM)等の結晶性樹脂材料が用いられた場合には、結晶性樹脂材料が非結晶性樹脂材料に比し溶融時における流動性が高いため、金型100の成形面に対する転写性が高く成形面に存在する気泡を成形面から飛散させ易く、充填凹部103aに存在する空気が充填凹部103aから他の部分へ向けて押し出され易くなる。
従って、樹脂成形品1の材料として結晶性樹脂材料が用いられた場合に、上記のように、入れ子103、入れ子103A又は入れ子103Bを用いることは、樹脂成形品1の成形性の向上を図った上で樹脂成形品1の外観不良を防止することに関して特に大きな効果が発揮される。
また、入れ子103Aが用いられた場合においてコア型101と入れ子103Aの間に隙間400が形成されることにより、充填凹部103aに存在する空気が空気溜まり凹部103bへ押し出され又は隙間400から外部600へ押し出されていくため、樹脂成形品1の成形性の向上を図った上で樹脂成形品1の一層の外観不良を防止することができる。
さらに、金型100によって成形された樹脂成形品1は、充填凹部103aに存在する空気が第1の部分300aに充填される溶融樹脂200に影響を及ぼし難い状態で成形されるため、成形性の向上を図った上で外観不良が防止された良好な製品として成形される。
尚、充填凹部103aに存在する空気によってリブ3、3、・・・に脱気シルバーが発生する可能性があるが、リブ3、3、・・・の表面は非意匠面1bとして形成される面であるため、リブ3、3、・・・に脱気シルバーが発生した場合においては樹脂成形品1として外観上問題にならず、良好な製品として成形される。
57…灯具用エクステンション、1…樹脂成形品、2…基部、3…リブ、100…金型、101…コア型(ベース部)、102…キャビ型(ベース部)、103…入れ子、103a…充填凹部、200…溶融樹脂、300…キャビティ、400…隙間、103A…入れ子、103b…空気溜まり凹部、103B…入れ子

Claims (3)

  1. キャビティに充填される溶融樹脂を基部と前記基部から突出されたリブとを有する樹脂成形品として形成するための金型であって、
    ベース部と前記リブを形成するための溶融樹脂が充填される充填凹部を有する入れ子とを備え、
    外部と前記充填凹部に連通され前記溶融樹脂の侵入が不能とされた隙間が前記充填凹部における前記溶融樹脂の流れの川上側に形成され、
    前記入れ子が階段形状に形成された
    金型。
  2. キャビティに充填される溶融樹脂を基部と前記基部から突出されたリブとを有する樹脂成形品として形成するための金型であって、
    ベース部と前記リブを形成するための溶融樹脂が充填される充填凹部を有する入れ子とを備え、
    前記入れ子に、前記充填凹部に連通された空気溜まり凹部が前記充填凹部における前記溶融樹脂の流れの川上側に形成され、
    前記空気溜まり凹部が前記入れ子の一端部に形成されて前記入れ子が階段形状に形成された
    金型。
  3. 前記ベース部と前記入れ子の間に、外部及び前記空気溜まり凹部に連通され前記溶融樹脂の侵入が不能とされた隙間が形成された
    請求項2に記載の金型。
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