JP6600575B2 - 赤色発光を示すハロ燐酸塩蛍光体及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、赤色発光を示すハロ燐酸塩蛍光体及びその製造方法に関し、特に、可視光励起により赤色発光可能なハロ燐酸塩蛍光体、さらには、フッ素添加量及び/又は共添加する希土類元素の選択により赤色及び青色発光強度比を制御可能なハロ燐酸塩蛍光体及びその製造方法に関する。
近年、白色LEDは、長寿命・高効率などの利点から照明、液晶のバックライト等多くの場所で利用されている。ここで白色LEDは、青色LEDの青色光に、Ce3+:Y3Al5O12(Ce3+:YAG)の黄色光を重ね合わせることで、白色光を実現しているため、赤色成分が少ないという問題があった。現在、この演色性の問題を解決できる実用的な赤色蛍光体として、窒化物蛍光体があげられる。
この窒化物蛍光体は、窒化物蛍光体の組成によっては、青色〜緑色の可視光励起により赤色残光を示し、太陽光を有効利用した応用等が期待されるものもある。ただし、窒化物蛍光体は、製造に高温・高圧での焼成を必要とするため、コストがかかるという問題があった。
一方、コストの問題がなく、現在実用化されているものとしてハロ燐酸塩蛍光体がある。このハロ燐酸塩蛍光体としては、一般的な蛍光灯に用いられるSb3+及びMn2+を添加した蛍光体(Ca5 (PO4)3 (F, Cl): Sb3+, Mn2+)(特許文献1及び非特許文献1)や、Eu2+を単独添加した蛍光ランプ用の青色蛍光体や、Eu2+,Mn2+を共添加した蛍光体として報告されている(M5 (PO4)3 X: Eu2+, Mn2+(Mはアルカリ土類金属、XはF, Cl, BrまたはI))(特許文献2並びに非特許文献2及び3)が挙げられる。
Sb3+及びMn2+を添加したハロ燐酸塩蛍光体は、一般的に、紫外光励起により、Sb3+からMn2+へのエネルギー移動を利用して、波長400nm〜700nmのブロードな発光を示す。
また、Eu2+及びMn2+を添加したアパタイト構造を持つハロ燐酸塩蛍光体は、紫外光励起により、Eu2+からMn2+へのエネルギー移動を利用して、400nm〜700nm付近の波長での発光が可能である。
しかしながら、上述したこれらの従来のハロ燐酸塩蛍光体については、400nm〜700nmの広い波長での発光を示すものの、主な発光色が青色〜緑色である(特許文献3)ため、十分な赤色発光を発現できるものではなかった。
また、従来のハロ燐酸塩蛍光体は、紫外線励起により発光する、又は、紫外領域に最適励起波長が存在するものであるため、紫外線LED(UV-LED)との組み合わせとして有用であるものの、可視光励起により発光するものはなく、青色LEDを励起光の光源として利用することができなかった。
そのため、ハロ燐酸塩蛍光体と励起光源としての青色LEDとを組み合わせる技術について、製品等における実用化には至っていない。
特開平5−140551号公報 特開2005−307035号公報 特開2013−045896号公報
神谷茂・水野秀夫, 「蛍光体ハンドブック」, 蛍光体同学会編, オーム社(1987), pp 210-214. P. Dorenbos, Journal of luminescence, 104, pp. 239-260 (2003) Wei-Ning Wang et al., Adv. Mater., 20, pp. 3422-3426 (2008)
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、可視光励起により赤色発光可能なハロ燐酸塩蛍光体及びその製造方法を提供することを目的とする。
発明者は、紫外線励起により青色〜緑色に発光するハロ燐酸塩蛍光体について、蛍光体中の組成及び蛍光体の原料の組成並びに添加イオンの種類と、発光色及び励起光の波長との関係について鋭意研究を行った。その結果、Eu及びSrを添加したアパタイト構造を持つハロ燐酸塩蛍光体に、少なくともLiを含むアルカリ金属と少なくともFを含むハロゲンとを特定量含有させることにより、可視光励起において赤色発光することを見出した。
この知見に基づき、従来の諸問題を解決すべくさらに研究を重ねた結果、原料中のFの割合並びに/または原料中に共添加されるイオン(カチオン・アニオン)の種類及び割合に応じて、可視光により赤色発光するハロ燐酸塩蛍光体が、残光を発現し、しかも、発光波長をハロ燐酸塩蛍光体の用途に応じて制御可能であることをさらに見出した。本発明はこれらの新規知見に立脚するものである。
即ち、前記課題を解決するための手段としては以下の通りである。
1.(M1-α-β-γ Euα Bγ)5 (PO4)3 Xの一般式にて表わされるアパタイト構造を有することを特徴とするハロ燐酸塩蛍光体。
(式中、α、β及びγは、0<α<0.08, 0<β<0.06, 0<γ<0.08であり、Mは、Sr, Ca, Mg及びBaからなる群より選択され、少なくともSrを含む1種または2種以上のアルカリ土類金属であり、Aは、Sc, Y, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb及びLuからなる群より選択される1種または2種以上の希土類元素であり、Bは、Li及びNaからなる群より選択され、少なくともLiを含む1種または2種のアルカリ金属であり、Xは、F及びClからなる群より選択され少なくともFを含む1種または2種のハロゲンであり、Xの一部が欠損しているかまたは酸素もしくは硫黄に置換されうる。)
2.前記ハロ燐酸塩蛍光体は、ハロ燐酸塩蛍光体中の酸素及びハロゲンの含有比率を変えることにより、赤色発光及び青色発光の強度比が制御される、1.に記載のハロ燐酸塩蛍光体。
3.前記ハロ燐酸塩蛍光体は、350nm〜550nmの波長の励起光を照射され、遮断後、102msec時点において、遮断時の蛍光強度の100分の1以上の蛍光強度を示す特性を有する、1.または2.に記載のハロ燐酸塩蛍光体。
4.前記ハロ燐酸塩蛍光体は、前記希土類元素の種類を変えることにより、赤色光の放射時間が制御される、3.に記載のハロ燐酸塩蛍光体。
5.アパタイト構造を有するハロ燐酸塩蛍光体の製造方法であって、
mol%で、
Sr: 30%〜60%
Ca: 0%〜25%
Ba: 0%〜5.0%
Mg: 0%〜2.5%
(ただし、Mを、Sr, Ca, Mg及びBaからなる群より選択される1種または2種以上のアルカリ土類金属とした場合にM:55%〜60%である。)
Eu: 0.1%〜3.6%
A: 0.1%〜1.5%
(ただし、AはSc, Y, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb及びLuからなる群より選択される1種または2種以上の希土類元素である。)
Li: 2.5%〜4.5%
Na: 0%〜2.0%
(ただし、BはLi及びNaからなる群より選択され、少なくともLiを含む1種または2種のアルカリ金属とした場合にB=2.5%〜4.5%である。)及び
P: 34%〜38%
を含有する、H及びCを除いたカチオン元素と、
mol%で、
Cl: 0%〜3.0%
F: 3.0%〜9.8%
(ただし、Xを、F及びClからなる群より選択される1種または2種のハロゲンとした場合に、X=3.0%〜9.8%である。)及び
O: 90.2%〜97.0%を含有する、N及びSを除いたアニオン元素と、
を有する出発原料を用いることを特徴とする、ハロ燐酸塩蛍光体の製造方法。




6.前記出発原料は、フッ化リチウムを含むことを特徴とする、5.に記載のハロ燐酸塩蛍光体の製造方法。
本発明によれば、可視光励起により赤色発光可能なハロ燐酸塩蛍光体を得ることができる。
実施例1の蛍光体を波長450nmの励起光で励起した時の発光スペクトル及び650nmの波長をモニターした際の励起スペクトルを示すグラフである。 実施例1、比較例1、比較例3、比較例4及び比較例5の蛍光体を波長450nmの励起光で励起した時の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例1の蛍光体を波長365nmの励起光で励起した時の発光スペクトル及び450nmの波長をモニターした際の励起スペクトルを示すグラフである。 実施例1、比較例1、比較例3、比較例4及び比較例5の蛍光体を波長365nmの励起光で励起した時の発光スペクトルを示すグラフである。 実施例1の蛍光体に対するフッ素含有量を変化させた場合(実施例2〜4)の、赤色/青色発光強度比の変化を示すグラフである。 実施例1〜4の蛍光体のX線回折パターンを示すグラフである。 比較例1、比較例3及び比較例5の蛍光体のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例1、比較例2、比較例4の蛍光体のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例8〜21の蛍光体における希土類元素の種類と赤色/青色発光強度比との関係を示すグラフである。 実施例11、12、18、20の蛍光体のX線回折パターンを示すグラフである。 実施例13の蛍光体を405nmの励起光で励起した場合の450nmの蛍光減衰曲線を示すグラフである。 実施例13の蛍光体を365nm、450nm、520nmの励起光で励起した場合の650nmの蛍光減衰曲線を示すグラフである。 実施例15、20、21の蛍光体を450nmの励起光で励起した場合の650nmの蛍光減衰曲線を示すグラフである。 実施例15、20、21の蛍光体を520nmの励起光で励起した場合の650nmの蛍光減衰曲線を示すグラフである。
以下、本発明の(M1-α-β-γ Euα Aβ Bγ)5 (PO4)3 Xの一般式にて表わされるハロ燐酸塩蛍光体及びその製造方法を具体的に説明する。本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、(M1-α-β-γ Euα Aβ Bγ)5 (PO4)3 Xの一般式にて表わされるアパタイト構造を有する結晶組成物である。
式中、α、β及びγは、0<α<0.08, 0≦β<0.06, 0<γ<0.08であり、Mは、Sr, Ca, Mg及びBaからなる群より選択され、少なくともSrを含む1種または2種以上のアルカリ土類金属であり、Aは、Sc, Y, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb及びLuからなる群より選択される1種または2種以上の希土類元素であり、Bは、Li及びNaからなる群より選択され、少なくともLiを含む1種または2種のアルカリ金属であり、Xは、F及びClからなる群より選択され少なくともFを含む1種または2種のハロゲンであり、Xの一部が欠損しているかまたは酸素もしくは硫黄に置換されうる。
本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、混合時にmol%で、下記の含有率でカチオン元素及びアニオン元素を有する出発原料を用いて製造できるが、出発原料のカチオン元素及びアニオン元素の含有率は下記のものに限定されるものではない。
また本発明のアパタイト構造を有するハロ燐酸塩蛍光体の製造方法は、
mol%で、
Sr: 30%〜60%
Ca: 0%〜25%
Ba: 0%〜5.0%
Mg: 0%〜2.5%
(ただし、M: 55%〜60%)
Eu: 0.1%〜3.6%
A: 0%〜5.0%
Li: 2.5%〜4.5%
Na: 0%〜2.0%
(ただし、B=2.5%〜4.5%)及び
P: 34%〜38%
を含有するH, Cを除くカチオン元素と、
mol%で、
Cl: 0%〜3.0%
F: 3.0%〜9.8%
(ただし、X=3.0%〜9.8%)及び
O: 90.2%〜97.0%を含有するN, Sを除くアニオン元素と
を有する出発原料を用いる。
以下、本発明における、ハロ燐酸塩蛍光体の構造及び組成、並びに、ハロ燐酸塩蛍光体の製造条件について具体的に説明する。
なお本明細書において、「カチオン元素」及び「アニオン元素」の各成分の含有率については、ハロ燐酸塩蛍光体の出発原料の構成成分を、カチオン元素成分とアニオン元素成分とに分けて、全カチオン元素のうち、H及びCを除いたものの合計を100mol%とした場合、及び、アニオン元素成分のうち、N及びSを除いたものの合計を100mol%とした場合、における各成分の含有率を、カチオン元素又はアニオン元素に対するモル比に基づいて表記している。
・カチオン元素
<アルカリ土類金属M:55%〜60%>
Mは、Sr, Ca, Mg及びBaからなる群より選択され、少なくともSrを含む1種または2種以上のアルカリ土類金属であり、本発明のハロ燐酸塩蛍光体の母体を構成する重要な成分である。
出発原料のカチオン元素におけるMの含有率が、55%未満となると単一のアパタイト相を得ることが出来ず、60%を超えるとアルカリ土類金属酸化物が副相に生じるため、効率的に赤色蛍光を取り出せなくなる。そのため前記Mの含有率を55〜60%とし、好ましくは57%〜59.5%とする。
[Sr:30%〜60%]
Srは、本発明のハロ燐酸塩蛍光体の一般式(M1-α-β-γ Euα Aβ Bγ)5 (PO4)3 XにおけるカチオンサイトMの全部または一部を占める成分であり、アパタイト構造を構成するための有用成分である。
ただし、出発原料におけるカチオン元素におけるSrの含有率が30%未満では、赤色発光がほぼ消失し、60%を超えると副相が生じ、赤色蛍光を効率的に取りだせなくなるため、その含有率を30%〜60%とした。出発原料におけるカチオン元素のSrの含有率は、好ましくは、32%〜50%、より好ましくは33〜40%である。
本発明のハロ燐酸塩蛍光体のようなアルカリ土類金属を含むアパタイト構造を持つ結晶において、Srイオン(Sr2+)のイオン半径は、発光中心として添加するEu2+のイオン半径と等しいので、置換が可能となる。
Srは、フッ化ストロンチウム(SrF2)または炭酸ストロンチウム(SrCO3)等を用いて原料中に含有させることができる。
[Ca:0%〜25%]
Caは、カチオンサイトMの一部を占める任意成分であり、Eu2+の発光波長を長波長側へ移動することができる有用成分である。
Caは、Eu2+との置換が可能であり、Ca置換量の増加により、Eu2+の発光波長は長波長側へ移動する。
なお出発原料において、カチオン元素におけるCaの含有率が、25%を超えると赤色蛍光が消失し、青色蛍光のみが発現することとなるため、Caを含有する場合にはカチオン元素におけるCaの含有率は25%以下、好ましくは15%〜25%、より好ましくは22%〜25%である。
Caは、フッ化カルシウム(CaF2)または炭酸カルシウム(CaCO3)等を用いて原料中に含有させることができる。
また、出発原料におけるSrに対するCaの割合は、38%〜42%であることが好ましい。38%未満となると、Eu2+の発光波長は短波長側へ移動してしまう場合がある。また、42%より大きくなると、赤色発光が消失してしまう場合があるからである。
[Mg:0%〜2.5%]
Mgは、カチオンサイトMの一部を占める任意成分であり、少量を添加することにより、赤色発光を増大させる効果がある有用成分である。
出発原料において、カチオン元素におけるMgの含有率が、2.5%を超えると発光の減衰及び結晶化度の低下を招くため、Mgを含有する場合にはカチオン元素におけるMgの含有率は2.5%以下とする必要があり、好ましくは0.2%〜0.8 %である。
Mgは、酸化マグネシウム(MgO)、フッ化マグネシウム(MgF2)または炭酸マグネシウム(MgCO3)等を用いて出発原料中に含有させることができる。
また、発光強度とMg添加量の観点から、出発原料におけるSrに対するMgの割合は、1.0%〜4.0%であることが好ましい。1.0%未満となると、発光の増大を観測することができない場合がある。また、4.0%より大きくなると、赤色発光がほぼ消失する場合があるからである。
[Ba:0%〜5.0%]
Baは、カチオンサイトMの一部を占める任意成分であり、少量の添加により、青色発光を増大させる効果がある有用成分である。
出発原料において、カチオン元素におけるBaの含有率は、5.0%を超えると赤色発光が消失するため、Baを含有する場合には、カチオン元素におけるBaの含有率を5.0%以下とする必要があり、好ましくは1.5%〜2.5%とする。
Baは、フッ化バリウム(BaF2)または炭酸バリウム(BaCO3)等を用いて原料中に含有させることができる。
また、発光波長を制御する観点から、出発原料におけるSrに対するBaの割合は、1.0%〜5.0%であることが好ましい。1.0%未満となると、赤色発光の割合が増大しすぎてしまう場合がある。また、5.0%より大きくなると、赤色発光が消失する場合があるからである。
[Eu:0.1%〜3.6%]
Euは、本発明のハロ燐酸塩蛍光体においてブロードな励起・発光スペクトルを得るために重要な元素であり、発光中心となる元素である。本発明のハロ燐酸塩蛍光体においてブロードな励起・発光スペクトルを得るためには、Euのイオン価数を二価(Eu2+)に制御する必要がある。そのため、本実施形態の製造方法では、還元雰囲気の下で焼成を行うことが好ましい。通常の大気雰囲気での焼成ではEu3+が生成する場合があるためである。
ただし、本発明のハロ燐酸塩蛍光体の式中のαが0.08以上となる割合でEuを含有すると、赤色発光が生じなくなるため、0<α<0.08とした。
また出発原料において、カチオン元素におけるEuの含有率が、0.1%未満となると十分な赤色発光が得られず、3.6%を超えると赤色発光が消失する。そのため、カチオン元素におけるEuの含有率を、0.1%〜3.6%とし、好ましくは0.1%〜3.2%、より好ましくは0.3%〜2%である。
<希土類元素A:0%〜5.0%>
Aは、Sc, Y, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb及びLuからなる群より選択される1種または2種以上の希土類元素である。
これらの希土類元素Aは、本発明のハロ燐酸塩蛍光体において青色発光の強度、赤色発光の強度及び残光を制御する場合に重要な任意成分である。本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、希土類元素Aの種類により赤色及び青色発光の発光強度が変化する。そのため、含有する希土類元素Aの元素の種類を変更することにより、所望の赤色及び青色発光の強度比を得ることが可能となる。
ただし、本発明のハロ燐酸塩蛍光体では、式中のβが0.06以上となる割合で希土類元素Aを含有すると、副相が生じ、均一に発光を示すアパタイト相を得ることが出来なくなるため、0≦β<0.06とした。
また出発原料において、カチオン元素におけるAの含有率は、5.0%を超えると、アパタイト結晶の単一相を合成できなくなる。そのため、Aを含有する場合のカチオン元素におけるAの含有率は5.0%以下、好ましくは0.1%〜1.5%、より好ましくは0.3%〜1.0%とする。
希土類元素Aは、酸化物またはフッ化物等を用いて出発原料中に含有させることができる。
<アルカリ金属B:2.5%〜4.5%>
Bは、Li及びNaからなる群より選択され少なくともLiを含む1種または2種のアルカリ金属であり、本発明のハロ燐酸塩蛍光体をアパタイト構造へと変化させ、かつ反応を促進させる重要な成分である。
ただし、本発明のハロ燐酸塩蛍光体の式中のγが0.08以上となる割合でアルカリ金属Bを含有すると、アパタイト構造が析出しないため、本発明のハロ燐酸塩蛍光体の式中のγは、0<γ<0.08とした。
また出発原料において、カチオン元素におけるアルカリ金属Bの含有率は、2.5%未満となると焼成が効率的に進まなくなり、4.5%を超えるとアパタイト相とは異なる結晶を析出させるため、その含有率を2.5%〜4.5%とした。出発原料におけるカチオン元素の組成におけるアルカリ金属Bの含有率は、好ましくは3.0%〜4.0%である。
[Li:2.5%〜4.5%]
Liは、本発明のハロ燐酸塩蛍光体をアパタイト構造へと変化させ、かつ反応を促進させる重要な成分である。Liは例えば、出発原料に用いるLiFに由来するものであり、焼成時に助剤として作用する。LiFを用いることで、アパタイト構造の結晶の合成をより効率的に行える。なお、助剤として作用するものとしては他に、LiCl2及びLi2Sを出発原料に用いることができる。
出発原料において、カチオン元素におけるLiの含有率は、4.5%を超えるとアパタイトとは異なる結晶を析出させ、また2.5%を下回るとアパタイト構造の単一相を構成することが出来ないため、その含有率を2.5%〜4.5%とした。出発原料におけるカチオン元素のLiの含有率は、好ましくは3.5%〜4.0%とする。
[Na:0%〜2.0%]
Naは、本発明のハロ燐酸塩蛍光体をアパタイト構造へと変化させ、かつ青色発光を増大させる成分である。
また出発原料において、カチオン元素におけるNaの含有率が、2.0%を超えると赤色発光が消失するため、好ましくは0.5%〜1.0%である。
また、出発原料におけるLiに対するNaの割合は、1.0%〜5.0%であることが好ましい。1.0%未満となると、赤色発光の割合を減少させることが出来なくなる場合がある。また、5.0%より大きくなると、赤色発光が消光する場合がある。
<P:34%〜38%>
ハロ燐酸塩蛍光体のアパタイト構造の結晶内ではPO4 3-のユニットで存在する。Pは出発原料のメタリン酸塩に由来する。
また出発原料において、カチオン元素の組成におけるPの含有率が、38%を超える、または、34%に満たないと副相が析出する可能性がある。そのため出発原料において、カチオン元素におけるPの含有率は、34%〜38%の必要があり、好ましくは35%〜37%である。
・アニオン元素
<O:90.2%〜97.0%>
ハロ燐酸塩蛍光体のアパタイト構造の結晶内ではPO4 3-のユニットで存在する。Oは出発原料のメタリン酸塩に由来する。
出発原料において、アニオン元素の組成におけるOの含有率が、97.0%を超えると、過剰の酸素が供給されて、Fが配位されて存在すべき場所にO2−が入る可能性がある。またOの含有率が、90.2%未満となると、青色発光が増大し、赤色発光が消失する可能性がある。
そのため、出発原料において、アニオン元素におけるOの含有率は、90.2%〜97.0%とする必要があり、好ましくは92%〜94%の範囲である。
<ハロゲンX:3.0%〜9.8%>
XはF, Clからなる群より選択され少なくともFを含む1種または2種のハロゲンであり、本発明のハロ燐酸塩蛍光体のアニオン部分を構成するための重要な成分である。
しかしながら、出発原料において、アニオン元素におけるXの含有率が、3.0%未満となると青色、赤色発光共に得られなくなり、9.8%を超えると赤色発光が消失するためアニオン元素におけるXの含有率は3.0%〜9.8%とする。アニオン元素におけるXの好ましい含有率は5.0%〜7.0%である。また、Xは一部が欠損しているか酸素または硫黄に置換されうる。
[F:3.0%〜9.8%]
Fは出発原料中のアルカリ土類金属フッ化物に由来する。Fは本発明のハロ燐酸塩蛍光体のアニオン部分を構成するとともに焼成を促進するために重要な成分である。
出発原料において、アニオン元素におけるFの含有率が、9.8%を超える、または、3.0%未満となると、赤色発光は発現しない。そのため、出発原料において、アニオン元素におけるFの含有率は、3.0%〜9.8%とする。出発原料において、アニオン元素におけるFの含有率は、好ましくは4%〜7.5%、より好ましくは5%〜7%の範囲である。
[Cl:0%〜3.0%]
Clは出発原料中のアルカリ土類金属フッ化物に由来する。ハロ燐酸塩蛍光体において、ClはFと同様な挙動を見せる。また、一部がCl2ガスとして揮発する際には、還元作用を与える。また、Cl添加により青色発光強度が増大する。
出発原料において、アニオン元素におけるClの含有率が、3.0%を超えると、青色発光強度が大きくなりすぎる。そのため、出発原料において、アニオン元素におけるClの含有率は0%〜3.0%であり、好ましくは0%〜0.5%の範囲である。
また、アニオンの種類及び発光波長の観点から、出発原料におけるFに対するClの割合は、0%〜5.1 %であることが好ましい。5.1 %より大きくなると、赤色発光が消失する場合があるからである。
本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、ハロ燐酸塩蛍光体中の酸素及びハロゲンの含有比率を変えることにより、赤色発光及び青色発光の発光強度を変化させて、強度比を制御することが可能である。
ここで、出発原料における酸素に対するハロゲンの割合は、3.1%〜9.8%であることが好ましい。3.1%未満となると、アパタイトの単相を得ることが出来なくなってしまう場合がある。また、9.8%より大きくなると、赤色発光を得られない場合があるからである。
さらにEuは、本発明のハロ燐酸塩蛍光体が希土類元素を含有する場合には、350nm〜550nmの波長の励起光を照射し、遮断後、102msecの時点において、遮断時の蛍光強度の100分の1以上の蛍光強度を示す特性を本発明のハロ燐酸塩蛍光体に与える。
またEuが赤色光を放射する時間は、本発明のハロ燐酸塩蛍光体が含有する希土類元素の種類を変えることにより制御可能である。即ち本発明のハロ燐酸塩蛍光体の残光特性は、本発明のハロ燐酸塩蛍光体が含有する希土類元素の種類を変えることにより、制御可能である。
なお、本発明のハロ燐酸塩蛍光体の製造方法については、出発原料について上述した好適範囲を満足すればよく、その他の製造条件については特に限定されるものではない。例えば、従来の製造条件を採用できる。
すなわち、各成分の出発原料としてそれぞれに相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化物などを所定の割合で秤量し、十分混合したものをハロ燐酸塩蛍光体原料とする。ただし、上述したように、酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、硫化物等を用いる場合にも、これらに含まれる特定のカチオン及びアニオン元素(H,C,N及びS)を除いた状態を100mol%として、カチオン及びアニオン元素の含有率は考える。
この出発原料としては、上述したカチオン元素とアニオン元素とを含む出発原料を使用しうる。本発明のハロ燐酸塩蛍光体の製造方法における出発原料を使用することにより、上述した本発明のハロ燐酸塩蛍光体を得ることができる。
ついで、この出発原料を、例えば、エタノール等の有機溶媒を用いて十分に湿式混合し、乾燥させた後、乾燥により生成した粉末をグラッシーカーボン坩堝またはアルミナ坩堝に入れ、雰囲気制御できる電気炉を用いて、還元雰囲気中で焼成し、焼成後、還元雰囲気のまま室温に下がるまで放置することで、本発明のハロ燐酸塩蛍光体を製造することができる。
なお、上述のように、アパタイト結晶の合成をより効率的に行うために、燃焼時の助剤として作用するLiFを出発原料に含むことが好ましい。
またこの方法は、固相反応でハロ燐酸塩蛍光体を合成しているため、溶液を使用した合成よりも簡便でかつ収率が良いという利点がある。固相反応での合成としては、原料の合計が10gになるように計算された粉末、及び外割りで0.1gのフッ化リチウムを乳鉢に入れ、エタノールと共に湿式混合を行った後、80 ℃の乾燥機内で8時間放置した。その後、乾燥した粉末をアルミナ等のるつぼに入れ、窒素ないしはアルゴンと水素の混合ガスをフローし、炉内を還元雰囲気にして焼成及び焼結を行った。
<ハロ燐酸塩蛍光体を用いた製品>
本発明のハロ燐酸塩蛍光体及び本発明のハロ燐酸塩蛍光体の製造方法によって得られたハロ燐酸塩蛍光体については、白色LED、可視光LEDと組み合わせた発光デバイス、可視光励起可能な蛍光塗料、一般照明用蛍光体、ディスプレイ用蛍光体等の多くの用途で用いることができる。
本発明のハロ燐酸塩蛍光体を用いることで、可視光励起において赤色発光することができるため、従来技術に比べて、良好な赤色発光が実現された製品が製造可能となる。
また、上述した用途の中でも、本発明のハロ燐酸塩蛍光体による効果を最も享受できる点からは、照明装置に用いることが好ましい。なお、ハロ燐酸塩蛍光体の照明装置への適用方法については、特に限定はされず、公知の技術と同様に適用することができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明のハロ燐酸塩蛍光体を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜4)
表1に示す重量の酸化物、炭酸塩、フッ化リチウムを含むフッ化物等を秤量し、表2に示すカチオン元素の組成及びアニオン元素の組成を含有する出発原料を作製した。作製した原料をエタノール等の有機溶媒を用いて十分に湿式混合し、乾燥させた。乾燥後、粉末をグラッシーカーボン坩堝またはアルミナ坩堝に入れ、雰囲気制御できる電気炉を用いて、800 ℃〜 1100℃で2時間焼成後、焼成物を粉砕してペレット成型後、800 ℃〜1100℃で5時間焼結を行った。この時、炉内には、アルゴンまたは窒素ガスからなる不活性ガス、及び、水素ガスの混合ガス(5%H2)を流し、還元雰囲気にした。
焼成後、還元雰囲気のまま室温に下がるまで放置し、赤色または青色で発光を示す実施例1〜4のハロ燐酸塩蛍光体を得た。
(実施例5〜7)
また、実施例1の組成のうち、表3に示すように出発原料中の各成分の配合割合を変えることで、表4に示すカチオン元素の組成及びアニオン元素の組成を含有する出発原料からEuの含有率を変更した実施例5〜7のハロ燐酸塩蛍光体を、実施例1と同様の手順にて得た。
(実施例8〜21)
さらに、表5に示すように出発原料中の各成分の配合割合を変えて実施例8〜21のハロ燐酸塩蛍光体を、実施例1と同様の手順にて得た。なお実施例13のハロ燐酸塩蛍光体は、表3の「Eu単独」に示す含有率で、希土類元素Aを含まないものである。
(比較例1〜5)
表6に示すように出発原料中の各成分の配合割合を変えて比較例1〜5のハロ燐酸塩蛍光体を、実施例1と同様の手順にて得た。なお比較例1は、一般式中のαがα>0.08のハロ燐酸塩蛍光体であり、比較例2は、Liを含まないハロ燐酸塩蛍光体であり、比較例3は、一般式中のβがβ>0.06のハロ燐酸塩蛍光体であり、比較例4は、一般式中のγがγ>0.08のハロ燐酸塩蛍光体であり、比較例5は、一般式中のαがα=0のハロ燐酸塩蛍光体である。
(評価)
各実施例及び比較例のハロ燐酸塩蛍光体について、以下の評価を行った。なお、各実施例及び比較例の励起・発光スペクトル、発光強度、赤色蛍光の蛍光寿命の測定は、日立製作所製の蛍光分光光度計F4500で、365nm、450nm、520nmの励起光を用いて行った。また、表5の実施例13のハロ燐酸塩蛍光体の青色発光の蛍光寿命の測定は、浜松ホトニクス社製の小型蛍光寿命測定装置C11367-04で405nmの励起光を用いて行った。
さらに、X線回折パターンについての測定は、リガク社製のX線回折装置UltimaIV(リガク)を用いて、CuのKα線(λ=1.5418Å、40kV-50mA)をX線源として行った。
(1)実施例1のハロ燐酸塩蛍光体の赤色発光について、波長450nmの励起光で励起した時の発光スペクトル及び650nmの波長をモニターした際の励起スペクトルを測定した。図1は、発光スペクトル及び励起スペクトルの測定結果を示すグラフである。図1中の実線は波長450nmの励起光で励起した時の発光スペクトルを示し、破線は650nmの波長をモニターした際の励起スペクトルを示す。
図1の測定結果から、本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、赤色発光について650nmの波長をモニターした際の励起スペクトルは、400nm〜600nm付近に広くピークを示すことが確認された。
図2は、波長450nmの励起光で励起した時の実施例1、比較例1、比較例3、比較例4及び比較例5の発光スペクトルを示している。図2から明らかなように、比較例1、比較例3、比較例4及び比較例5では、赤色発光は確認されなかった。
(2)次に実施例1のハロ燐酸塩蛍光体の青色発光について、波長365nmの励起光で励起した時の発光スペクトル及び450nmの波長をモニターした際の励起スペクトルを測定した。図3は、発光スペクトル及び励起スペクトルの測定結果を示すグラフである。図3中の実線は波長365nmの励起光で励起した時の発光スペクトルを示し、破線は450nmの波長をモニターした際の励起スペクトルを示す。図3の測定結果が示すように、本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、450nmの波長をモニターした際の励起スペクトルは、270nm〜430nm付近に広くピークを示すことが確認された。
図4は、波長365nmの励起光で励起した時の実施例1、比較例1、比較例3、比較例4及び比較例5の発光スペクトルを示している。図4から明らかなように、比較例1及び比較例4では、実施例1に比べて強度は弱いものの、青色発光が確認された。比較例5では青色発光は確認されなかった。
次に、本発明のハロ燐酸塩蛍光体におけるFの添加量と、発光強度の関係について評価を行った。表1の実施例1〜4のハロ燐酸塩蛍光体について、赤色発光領域(Ex=450nm:波長範囲550nm〜800nm)、及び、青色発光領域(Ex=365nm:波長領域380nm〜550nm)の面積を算出し、その比とハロ燐酸塩蛍光体中に添加したFの割合について確認した。評価結果を図5に示す。
図5の結果から、Fの割合が大きくなるに連れて、青色発光に対する赤色発光の強度比が小さくなり、赤色発光の存在割合が減少する傾向が見られた。このことから、ハロ燐酸塩蛍光体中のFの割合によって大きく発光特性が変化することが確認された。
(4)次に、実施例1〜4及び比較例1〜5のハロ燐酸塩蛍光体の結晶構造について評価を行った。表1の実施例1〜4のハロ燐酸塩蛍光体について、X線回折パターンを測定し、アパタイト構造を有するSr7.3Ca2.7(PO)6F2(#01-078-1715)のX線回折パターンを参照データとして比較を行った。図6は、実施例1〜4のハロ燐酸塩蛍光体及び参照データのX線回折パターンである。
図6の結果から、実施例1〜4のハロ燐酸塩蛍光体のX線回折パターンは、参照データのX線回折パターンとほぼ同様であることから、本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、アパタイト構造を有していることが確認された。
図7は、比較例1、比較例3及び比較例5のハロ燐酸塩蛍光体及び参照データのX線回折パターンである。
図7の結果が示すように、Euを過剰に含む比較例1(α>0.08)では、アパタイトの単相は得られなかった。また、Dy及びYbを過剰に含む比較例3(β>0.06)ではアパタイト相の他にYb(PO4)相が析出していた。比較例5(α=0)は、アパタイトの単相であった。
図8は、実施例1、比較例2、比較例4のハロ燐酸塩蛍光体及び参照データのX線回折パターンである。
図8の結果が示すように、NaFを1wt%添加して合成した比較例2は、析出した結晶はアパタイトの単一相ではなく、Ca9Li(PO4)7に類似した結晶が析出していた。一方、LiFを1.5wt%添加し、Liがγ>0.08の状態にある比較例4では、アパタイト相のピーク及びCa9Li(PO4)7相のピークが観測でき、混合している状態であると考えられる。
(5)次に、本発明のハロ燐酸塩蛍光体におけるEuの含有率と、赤色発光の有無の関係について評価を行った。表7は、出発原料中のカチオン元素の組成中のEuの含有率を変更した実施例1、実施例5〜7及び比較例1のハロ燐酸塩蛍光体について、赤色発光の有無を確認した結果を示す。
表7の結果から、カチオン元素の組成中のEuの濃度が0.3%〜3.6%の実施例1及び実施例5〜7のハロ燐酸塩蛍光体では赤色発光が確認されたが、3.6%以上である比較例1のハロ燐酸塩蛍光体では赤色発光が消失する傾向があることが確認された。
(6)次に、本発明のハロ燐酸塩蛍光体における希土類元素Aの有無及びその種類と、赤色発光及び青色発光の強度比との関係について評価した。表5に示す実施例8〜21のハロ燐酸塩蛍光体について、図5における赤色及び青色の発光強度の評価と同様の手法で評価した。図9は実施例8〜21のハロ燐酸塩蛍光体の評価結果を示すグラフである。なお、図9においては、縦軸が発光強度比を示し、横軸が添加した希土類元素Aの原子番号を示す。ただし、希土類元素Aを添加していない実施例13のハロ燐酸塩蛍光体は、原子番号を63として示した。
図9の結果から、希土類元素Aを添加していない実施例13〜Luを添加した実施例21のハロ燐酸塩蛍光体では、La〜Smまでを添加した実施例8〜12のハロ燐酸塩蛍光体と比べて、赤色発光の割合が2〜6倍程度上昇することが確認された。これらの結果から、本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、希土類元素Aの有無及びその種類により、赤色発光を制御可能であることが確認された。
(7)次に、希土類元素Aを添加したハロ燐酸塩蛍光体の結晶構造について確認を行った。表5に示す実施例8〜21のうち、Nd、Sm、Er、Ybを添加した実施例11、12、18及び20のハロ燐酸塩蛍光体について、実施例1〜4と同様の手法により、結晶構造について確認する試験を行った。
図10の結果から、11、12、18及び20のハロ燐酸塩蛍光体のX線回折パターンは、参照データのX線回折パターンとほぼ同様であることから、希土類元素Aを添加した本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、アパタイト構造を有していることが確認された。
(8)次に、本発明のハロ燐酸塩蛍光体における赤色蛍光寿命及び青色蛍光寿命について評価を行った。図11は、表5に示す実施例13のハロ燐酸塩蛍光体について、405nmの励起光で励起したときの450nmの蛍光減衰曲線を示すグラフである。ここで、蛍光強度が励起光遮断時の強度の100分の1となる時間をτ1/100と定義すると、図11より、実施例13の450nmの発光に関して、τ1/100は2.54μsであった。
また図12は、実施例13の蛍光体について、励起光を365nm、450nm及び520nmと変化させた時の650nmの蛍光減衰曲線を示すグラフであり、365nm、450nm及び520nmの波長の励起光を照射し、遮断後、102msecの時点において100分の1以上の蛍光強度を示し、τ1/100はそれぞれ780ms、464ms、530msであった。
図11及び図12の結果から、青色蛍光寿命と比べると、赤色蛍光寿命は大幅に長いことが確認された。
(9)次に、本発明のハロ燐酸塩蛍光体における希土類元素Aの有無及びその種類と、赤色蛍光寿命との関係についての評価を行った。表5に示す実施例8〜21のうち、図9において、赤色発光強度が高い実施例15、20及び21を選択し、ハロ燐酸塩蛍光体の可視光励起における赤色蛍光寿命を測定し、実施例13のハロ燐酸塩蛍光体の赤色蛍光寿命と比較した。実施例15、20、21の赤色蛍光寿命を図13及び図14にそれぞれ示す。この際に、450nm及び520nmの励起光を照射することにより励起したときの650nmの蛍光減衰曲線を測定した。
図13及び図14の結果から、τ1/100に注目すると、450nm及び520nmの励起において、実施例15、20及び21のうち最も赤色蛍光寿命が長いものは実施例15のサンプル(Eu,Tb)であり、その寿命τ1/100は、それぞれ940 ms(Ex=450 nm)、1068 ms(Ex=520 nm)であった。これに対し、実施例13のサンプル(Euのみ)では464 ms(Ex=450 nm),530 ms(Ex=520 nm)であり、実施例13に比べて実施例15のハロ燐酸塩蛍光体の赤色蛍光寿命が長いことを確認した。
このことから、本発明のハロ燐酸塩蛍光体は、含有する希土類元素の種類を変えることにより、赤色光を放射する時間を制御可能であることが確認された。

Claims (6)

  1. (M1-α-β-γ Euα Bγ)5 (PO4)3 Xの一般式にて表わされるアパタイト構造を有することを特徴とするハロ燐酸塩蛍光体。
    (式中、α、β及びγは、0<α<0.08, 0<β<0.06, 0<γ<0.08であり、Mは、Sr, Ca, Mg及びBaからなる群より選択され、少なくともSrを含む1種または2種以上のアルカリ土類金属であり、Aは、Sc, Y, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb及びLuからなる群より選択される1種または2種以上の希土類元素であり、Bは、Li及びNaからなる群より選択され、少なくともLiを含む1種または2種のアルカリ金属であり、Xは、F及びClからなる群より選択され少なくともFを含む1種または2種のハロゲンであり、Xの一部が欠損しているかまたは酸素もしくは硫黄に置換されうる。)
  2. 前記ハロ燐酸塩蛍光体は、ハロ燐酸塩蛍光体中の酸素及びハロゲンの含有比率を変えることにより、赤色発光及び青色発光の強度比が制御される、請求項1に記載のハロ燐酸塩蛍光体。
  3. 前記ハロ燐酸塩蛍光体は、350nm〜550nmの波長の励起光を照射され、遮断後、102msec時点において、遮断時の蛍光強度の100分の1以上の蛍光強度を示す特性を有する、請求項1または2に記載のハロ燐酸塩蛍光体。
  4. 前記ハロ燐酸塩蛍光体は、前記希土類元素の種類を変えることにより、赤色光の放射時間が制御される、請求項3に記載のハロ燐酸塩蛍光体。
  5. アパタイト構造を有するハロ燐酸塩蛍光体の製造方法であって、
    mol%で、
    Sr: 30%〜60%
    Ca: 0%〜25%
    Ba: 0%〜5.0%
    Mg: 0%〜2.5%
    (ただし、Mを、Sr, Ca, Mg及びBaからなる群より選択される1種または2種以上のアルカリ土類金属とした場合にM:55%〜60%である。)
    Eu: 0.1%〜3.6%
    A: 0.1%〜1.5%
    (ただし、AはSc, Y, La, Ce, Pr, Nd, Sm, Gd, Tb, Dy, Ho, Er, Tm, Yb及びLuからなる群より選択される1種または2種以上の希土類元素である。)
    Li: 2.5%〜4.5%
    Na: 0%〜2.0%
    (ただし、BはLi及びNaからなる群より選択され、少なくともLiを含む1種または2種のアルカリ金属とした場合にB=2.5%〜4.5%である。)及び
    P: 34%〜38%
    を含有する、H及びCを除いたカチオン元素と、
    mol%で、
    Cl: 0%〜3.0%
    F: 3.0%〜9.8%
    (ただし、Xを、F及びClからなる群より選択される1種または2種のハロゲンとした場合に、X=3.0%〜9.8%である。)及び
    O: 90.2%〜97.0%を含有する、N及びSを除いたアニオン元素と、
    を有する出発原料を用いることを特徴とする、ハロ燐酸塩蛍光体の製造方法。
  6. 前記出発原料は、フッ化リチウムを含むことを特徴とする、請求項5に記載のハロ燐酸塩蛍光体の製造方法。
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