JP6600192B2 - 静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法に関する。
静電荷像現像用トナーにおいて、耐オフセット性を改善するため、トナーに含まれる結着樹脂に炭化水素系ワックスやエステル系ワックスのようなワックスを添加することが知られている。
一般に、炭化水素系ワックスは、樹脂と相溶しにくいため、結着樹脂の樹脂特性を変化させにくい。そのため、炭化水素系ワックスを含む結着樹脂は、トナーに用いた際に定着性等に優れた特性を示す。
一方、エステル系ワックスは、極性基であるエステル基を備え、界面活性剤に似た助乳化効果を示す。そのため、エステル系ワックスを含む結着樹脂は分散性が良好であり、結着樹脂用のワックスとして好ましく用いられる。
炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスの両方の利点を得るために、これら2種以上のワックスを混合して樹脂に加えた静電荷像現像用トナー用結着樹脂が知られている(例えば下記特許文献1参照)。
しかし、異なる種類のワックスを併用する場合、結着樹脂中のワックスの分散性の点で改善の余地があった。
そこで、下記特許文献2には、ワックスとの分散性の良好な低分子量樹脂と、耐オフセット性の良好な高分子量樹脂と、ワックスとを共存させて混合し、それと同時に又はその後に揮発成分を除去することで、ワックスの分散性を高めつつ、耐オフセット性を改善する静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法が開示されている。
特開2012−181263号公報 特開2005−165124号公報
しかし、上記特許文献2に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法は、特にワックスの分散性の点で未だ改善の余地を有していた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、静電荷像現像用トナーに対して優れた耐オフセット性を付与することができ、ワックスが十分に分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造できる静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決し得る静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法を開発すべく鋭意検討を行ってきた。その結果、本発明者らは以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出した。
すなわち、本発明は、溶融された低分子量樹脂100質量部に対し、炭化水素系ワックス2〜6質量部及びエステル系ワックス2〜6質量部を混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物、及び、前記低分子量樹脂よりも大きい重量平均分子量を有する高分子量樹脂を含む水性分散液を混合して溶融混練し、静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得る溶融混練工程とを含み、前記低分子量樹脂及び前記高分子量樹脂がいずれもスチレン系重合体である、静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法である。
本発明によれば、静電荷像現像用トナーに対して優れた耐オフセット性を付与することができ、ワックスが十分に分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造できる。本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法によれば、ワックスが十分に分散するので、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造する場合、そのトナーは定着性、特に低温定着性に優れることとなる。具体的には、そのようなトナーにおけるワックスのトナー表面への露出や、ワックスのトナーからの遊離による画像形成装置の各所の汚染が十分に抑制される。
上記効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推測している。
すなわち、混合工程において、ワックスと分散しやすい低分子量樹脂に炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスを混合させることで、これらの異なる性質のワックスを用いても低分子量樹脂中にワックスを容易に分散させることができる。また、混合工程で得られる混合物及び高分子量樹脂の水性分散液を溶融混練する際、高分子量樹脂の水性分散液から水の蒸発が起こることで、系の粘度上昇が起こり、混合物と高分子量樹脂とが混ざりやすくなる。このため、結着樹脂に対するワックスの分散性を向上させることができる。また得られる結着樹脂中に含まれる炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスは耐オフセット性を改善し得るものである。以上のことから、本発明によって上記効果が得られるものと本発明者らは推測している。
本発明においては、低分子量樹脂がスチレン系重合体であるため、低分子量樹脂がスチレン系重合体以外である場合と比べて、得られる結着樹脂を静電荷像現像用トナーに用いる場合にそのトナーがトナーとしての性能をより得やすい。
さらに、本発明においては、高分子量樹脂がスチレン系重合体であるため、高分子量樹脂がスチレン系重合体以外である場合と比べて、得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂において、高分子量樹脂の均質性がより向上する。
上記製造方法においては、前記低分子量樹脂が塊状重合によって得られることが好ましい。
この場合、混合工程において、溶融された低分子量樹脂を容易に準備することができる。
上記製造方法においては、前記低分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)が1,000〜50,000の範囲であることが好ましい。
この場合、Mwが1,000未満である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが良好な定着性を有するとともに、現像機中で凝集して現像材としての寿命が短くなるなどの不具合が生じにくい。またMwが上記範囲にあると、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが保存安定性にも優れ、高温保存時に固まるなどの不具合が生じにくい。また、Mwが50,000以下であれば、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーのスペント化及び微細化などが起きにくい。また、そのようなトナーは低温領域での定着性にも優れ、定着の下限温度が上昇してコールド・オフセット温度が不良となるなどの不具合が生じにくい。
上記製造方法においては、前記低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が1,500〜30,000の範囲にあり、且つ、前記低分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4未満であることが好ましい。
この場合、Mw/Mnが4以上である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが定着性不良などをより引き起こしにくい。また低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が1,500未満である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが良好な定着性を有するとともに、現像機中で凝集して現像材としての寿命が短くなるなどの不具合が生じにくい。またGPC分子量ピーク値(Mp)が上記範囲にあると、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが保存安定性にも優れ、高温保存時に固まるなどの不具合が生じにくい。また低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が30,000を超える場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーのスペント化及び微細化などが起きにくい。また、そのようなトナーは、低温領域での定着性にも優れ、定着の下限温度が上昇してコールド・オフセット温度が不良となるなどの不具合が生じにくい。
上記製造方法においては、前記高分子量樹脂が乳化重合によって得られることが好ましい。
この場合、高分子量樹脂が乳化重合以外の重合法で得られた場合と比べて、高分子量樹脂が保存時及び低分子量樹脂との混合時により安定となる。
上記製造方法においては、前記高分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)が10万以上であることが好ましい。
この場合、重量平均分子量(Mw)が10万未満である場合と比べて、トナーに対して硬さと脆さをバランスよく付与することが可能なトナー用結着樹脂を製造できる。
上記製造方法においては、前記高分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が30万〜300万の範囲にあることが好ましい。
この場合、高分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が30万〜300万の範囲から外れる場合と比べて、トナーに対して定着性と耐オフセット性とをバランスよく付与することが可能なトナー用結着樹脂を製造できる。
上記製造方法においては、前記炭化水素系ワックス及び前記エステル系ワックスの融点が55〜160℃であることが好ましい。
この場合、融点が55〜160℃の範囲から外れる場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーの高温貯蔵時などにワックスがトナーから分離しにくくなり、かつそのトナーは高温時の耐オフセット性により優れる。
なお、本発明において、重量平均分子量分子量(Mw)、重量平均分子量分子量(Mw)、GPC分子量ピーク値(Mp)、GPC分子量ピーク値(Mp)、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)、及び、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は以下の測定方法によって測定されたものを言う。
すなわち、(Mw)、(Mw)、(Mp)、(Mp)、(Mw/Mn)、及び、(Mw/Mn)は、「TSK gel GMH xl」〔商品名;東ソー(株)製〕カラムを2本装着したゲルバーゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置「HLC−8220」〔商品名;東ソー(株)製〕を用い、各種樹脂の試料をテトラヒドロフラン(THF)に0.2質量%濃度となるように溶解し、この溶液を温度20℃で約150μL該装置に注入した後、THFを1mL/分の流速で流すことにより測定されたものを言う。
なお、試料の分子量特性の測定に際しては、該試料の有する分子量が、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
本発明によれば、静電荷像現像用トナーに対して優れた耐オフセット性を付与することができ、ワックスが十分に分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造できる静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法が提供される。
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
<静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法>
本発明は、溶融された低分子量樹脂、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスを混合して混合物を得る混合工程と、この混合物、及び、低分子量樹脂よりも大きい重量平均分子量を有する高分子量樹脂を含む水性分散液とを混合させる溶融混練工程を含む、静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法である。
上記の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法によれば、静電荷像現像用トナーに対して優れた耐オフセット性を付与することができ、ワックスが十分に分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造できる。本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法によれば、ワックスの分散性を向上させることができるので、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造する場合、そのトナーは定着性、特に低温定着性に優れることとなる。具体的には、そのようなトナーにおけるワックスのトナー表面への露出や、ワックスのトナーからの遊離による画像形成装置の各所の汚染が十分に抑制される。
以下、上記混合工程及び溶融混練工程について詳細に説明する。
〔混合工程〕
混合工程は、溶融された低分子量樹脂、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスを混合して混合物を得る工程である。
(低分子量樹脂)
上記の低分子量樹脂は、いかなる製造方法で製造されたものであってもよいが、ビニル単量体の塊状重合により得られるものが好ましい。この場合、混合工程において、溶融された低分子量樹脂を容易に準備することができる。
また上記の溶融された低分子量樹脂は、無溶媒樹脂を溶融状態で混合槽に投入する方法、又は、非溶融状態で低分子量樹脂を混合槽に投入した後、低分子量樹脂を加熱溶融する方法などが挙げられる。
ここで上記の「無溶媒樹脂」とは、水又は有機溶剤の含有率が10質量%以下、好ましくは5質量%以下、特に好ましくは実質的に水又は有機溶剤を含有しない樹脂をいうものとする。
溶融された低分子量樹脂は、生産性等の理由から、無溶剤の低分子量樹脂を溶融状態のまま、混合槽に投入することが好ましい。
塊状重合は、ビニル単量体と該単量体に溶解する重合開始剤とを共存させ、実質上溶媒や分散剤・乳化剤等が存在しない原料混合物を重合温度に加熱することにより行うことができる。重合の方式は、全ての原料を1つの重合槽中で反応させるバッチ重合方式でも、また原料添加、重合及び重合体の取り出しを連続的に行う連続式、或いはこれらを組合せた半連続式であってもよい。
低分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)は特に制限されるものではないが、1,000〜50,000の範囲にあることが好ましい。この場合、Mwが1,000未満である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが良好な定着性を有すると共に、現像機中で凝集して現像剤としての寿命が短くなるなどの不具合が生じにくい。また、Mwが上記範囲にあると、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが保存安定性にも優れ、高温保存時に固まるなどの問題が生じにくい。またMwが50,000を超える場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーのスペント化及び微細化などが起きにくい。また、そのトナーは低温領域での定着性にも優れ、定着の下限温度が上昇してコールド・オフセットが不良となるなどの不具合が生じにくい。Mwの範囲はより好ましくは1,000〜30,000、特に好ましくは1,000〜20,000の範囲である。
上記低分子量樹脂においては、低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が1,500〜30,000の範囲にあり、且つ、低分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4未満であることが好ましい。
この場合、Mw/Mnが4以上である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが定着性不良などをより引き起こしにくい。また低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が1,500未満である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが良好な定着性を有するとともに、現像機中で凝集して現像材としての寿命が短くなるなどの不具合が生じにくい。またGPC分子量ピーク値(Mp)が上記範囲にあると、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーが保存安定性にも優れ、高温保存時に固まるなどの不具合が生じにくい。また低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が30,000を超える場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーのスペント化及び微細化などが起きにくい。またそのトナーは、低温領域での定着性にも優れ、定着の下限温度が上昇してコールド・オフセット温度が不良となるなどの不具合が生じにくい。
ここで、低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)は、2,000〜20,000の範囲にあることがより好ましい。
低分子量樹脂は、トナーの結着樹脂として使用される樹脂であれば、どのような樹脂であっても特に制限なく使用することができる。このような低分子量樹脂としては、例えばスチレン系重合体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられるが、スチレン系重合体を用いることが好ましい。この場合、低分子量樹脂がスチレン系重合体以外である場合と比べて、得られる結着樹脂を静電荷像現像用トナーに用いる場合にトナーとしての性能をより得やすい。
上記スチレン系重合体とは、スチレン系単量体を主成分量、例えば50質量%以上含む単量体を(共)重合させて得られる(共)重合体をいい、スチレン系単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどを挙げることができるが、このうちスチレンが最も好ましい。
上記スチレン系単量体と共重合することのできる他の単量体としては、スチレン系単量体と共重合が可能な単量体であれば特に制限はないが、アクリル酸エステルやメタクリル酸エステルが好ましく、このようなアクリル酸エステル、メタクリル酸エステルとしては、例えば、アクリル酸ブチルエステル等が好適に用いられる。
スチレン系重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは40〜80℃の範囲であり、さらに好ましくは50〜70℃の範囲である。
本発明に用いられる好ましい低分子量樹脂の製造方法である、塊状重合の重合温度は、130〜250℃であることが好ましい。この場合、塊状重合の重合温度が130℃未満である場合と比べて、塊状重合が良好な反応速度を示し、得られる重合体の分子量ピーク(Mp)が高くなりすぎるなどの不都合が生じないので好ましい。また塊状重合の重合温度が250℃を超える場合と比べて、解重合反応などが起って分子量500以下のオリゴマーが増大するなどの不都合が生じにくいので、得られる重合体を配合して作製したトナー用結着樹脂を用いたトナーはその保存性及びスペント化及び微細化などを起し難い。塊状重合の重合温度は、より好ましくは170〜250℃、特に好ましくは190〜230℃の範囲である。
塊状重合に使用される重合開始剤は、従来公知の任意の油溶性重合開始剤が使用できる。好適な重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t−ヘキシルヒドロペルオキシド、p−メンタンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。本発明においては、反応温度として170℃以上の高い温度を用いるのが特に好適であるため、これらの開始剤のうち、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジ−t−ブチルヒドロペルオキシドなどの高温分解性の開始剤を用いることが特に好ましい。重合開始剤の使用量は、前記単量体の合計100質量部に対して、0.01〜5質量部であることが好ましく、0.03〜5質量部であることがより好ましく、0.05〜1質量部であることが特に好ましい。
上記の如くして得られる低分子量樹脂は、その転換率が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上となる様に反応温度と反応滞留時間を設定することが好ましいが、必要に応じて、薄膜蒸留装置などにより残存単量体の回収を行うこともできる。
上記のように塊状重合によって得られる低分子量樹脂は、特にトナーの帯電の保持性を高くすることができ、且つ臭気の発生を少なくできるので好ましい。
(ワックス)
本発明で用いられるワックスは、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスの混合物である。本発明においては、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスの融点が55〜160℃であることが好ましい。この場合、融点が55〜160℃の範囲から外れる場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーの高温貯蔵時などにワックスがトナーからより分離しにくく、かつそのようなトナーが高温時の耐オフセット性により優れる。
炭化水素系ワックス及びエステル系ワックスの融点は60〜115℃であることがより好ましい。
炭化水素系ワックスとしては、低分子量ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプッシュワックス、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスなどが挙げられる。これらは単独で又は2種以上を混合して使用することができる。炭化水素系ワックスとしては、具体的には、HNP−3、HNP−5、HNP−9、HNP−10、HNP−11、HNP−12、HNP−51、FT−0070、FT100、FT105[商品名:日本精鑞株式会社製]などが挙げられる。
低分子量樹脂100質量部に対する炭化水素系ワックスの配合量は特に制限されるものではないが、2〜6質量部の割合で配合されることが好ましい。この場合、炭化水素系ワックスの配合量が2質量部未満である場合に比べて、本発明の製造方法によって得られる結着樹脂を用いてトナーを製造する場合、そのトナーの定着性がより良好となる。一方、炭化水素系ワックスの配合量が6質量部を超える場合に比べて、炭化水素系ワックスの分散性がより良好となる。
エステル系ワックスとしては、たとえば脂肪酸エステルワックスが挙げられる。エステル系ワックスとしては、具体的には、ブラジルのヤシ科植物の葉から採取される炭素数24〜32の脂肪酸及びアルコールのエステルを主成分とするカルナウバワックス;北米南部乾燥地帯の多汁植物から採取される炭素数30と32の脂肪酸、アルコール及びそれらのエステルを主成分とするキャンデリラワックス;米糠油から採取され必要に応じて水素添加される炭素数20〜32の脂肪酸及びアルコールのエステルを主成分とするライスワックス;蜂蜜の巣から採取される炭素数16〜32の脂肪酸及びアルコールのエステル、並びに炭化水素を主成分とする蜜蝋;泥炭乃至褐炭から炭化していない植物蝋成分を抽出して得られる炭素数20〜32の脂肪酸及びアルコールのエステル、並びに樹脂分を主成分とするモンタンワックスなどが挙げられる。エステル系ワックスとしては、具体的には、ニッサンエレクトールWEP−3、WEP−5、WEP−9〔商品名;日油社製〕などが挙げられる。
低分子量樹脂100質量部に対するエステル系ワックスの配合量は特に制限されるものではないが、2〜6質量部の割合で配合されることが好ましい。この場合、エステル系ワックスの配合量が2質量部未満である場合に比べて、本発明の製造方法によって得られる結着樹脂を用いてトナーを製造する場合、そのトナーの定着性がより良好になる。一方、エステル系ワックスの配合量が6質量部を超える場合に比べて、エステル系ワックスの分散性がより良好になる。
炭化水素系ワックスに対するエステル系ワックスの質量比は、特に制限されるものではないが、2〜6であることが好ましい。この場合、質量比が2未満である場合に比べて、本発明の製造方法によって得られる結着樹脂を用いてトナーを製造する場合、そのトナーの定着性がより良好になる。一方、質量比が6を超える場合に比べて、炭化水素系ワックス及びエステル系ワックス分散性がより良好になる。
上記混合工程においては、混合物は、低分子量樹脂を溶融させながらワックスをその融点以上の温度に加熱することが好ましい。この場合、ワックスが低分子量樹脂中に分散しやすくなる。
低分子量樹脂、炭化水素系ワックスおよびエステル系ワックスを投入後に溶融混合する時間は、1〜30分間であることが、炭化水素系ワックスおよびエステル系ワックスの分散性がより良好になるため好ましい。
〔溶融混練工程〕
溶融混練工程は、上記混合工程で得られた混合物、及び、低分子量樹脂よりも大きい重量平均分子量を有する高分子量樹脂を含む水性分散液を混合して溶融混練し、静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得る工程である。
(高分子量樹脂を含む水性分散液)
上記の高分子量樹脂を含む水性分散液は、高分子量樹脂が乳化状態で分散されたものであれば特に制限されるものではなく、例えば、高分子量樹脂を適宜公知の乳化剤を用いて水中に強制乳化分散させた樹脂水性分散液、乳化重合で得られる樹脂水性分散液等を挙げることができるが、乳化重合で得られた樹脂水性分散液が好ましい。この場合、高分子量樹脂が乳化重合以外の重合法で得られた場合と比べて、高分子量樹脂が保存時及び低分子量樹脂との混合時により安定となる。あるいは、高分子量樹脂の水性分散液は、樹脂粒子が、樹脂自体の持つ極性によって自己安定化した、乳化剤が使用されていない樹脂水性分散液であってもよい。
高分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)は、低分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)より大きければよいが、10万以上であることが好ましい。この場合、Mwが10万未満である場合と比べて、得られる結着樹脂を用いてトナーを製造する場合、そのトナーが優れた定着性を示すことはもとより、ホット・オフセットが発生せず定着可能温度幅が広くなる。高分子量樹脂のMwは、20万以上であることが特に好ましい。
なお、必要に応じて、この高分子量樹脂と共に、前記低分子量樹脂とこの高分子量樹脂との中間的な分子量を有する中分子量樹脂を併用してよい。
高分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)は、特に制限されるものではないが、30万〜300万の範囲にあることが好ましい。この場合、高分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が30万〜300万の範囲から外れる場合と比べて、トナーに対して定着性と耐オフセット性とをバランスよく付与することが可能なトナー用結着樹脂を製造できる。
高分子量樹脂は、低分子量樹脂の重量平均分子量より大きい重量平均分子量を有するものであれば特に制限されない。このような高分子量樹脂としては、前記低分子量樹脂と同様のものを使用することができる。具体的には、高分子量樹脂としては、スチレン系単量体とアクリル系単量体との共重合体などのスチレン系重合体を用いることが好ましい。この場合、低分子量樹脂にもスチレン系重合体を使用すると、得られるトナー用結着樹脂において高分子量樹脂の均質性がより向上する。
高分子量樹脂の水性分散液においては、高分子量樹脂は分散粒子となって水性分散液中に分散して存在している。この分散粒子の平均粒子径は30nm〜1000nmの範囲であることが好ましい。この場合、高分子量樹脂の水性分散液中の分散粒子の平均粒子径が1000nmを超える場合と比べて、高分子量樹脂が、低分子量樹脂との相溶性および分散性に優れ、得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いて製造したトナーの定着性が優れ、ホット・オフセットが発生しにくく定着可能温度幅が広くなる。また、高分子量樹脂の水性分散液中の分散粒子の平均粒子径が30nm未満である場合と比べて、乳化重合時に比較的少量の乳化剤の使用で済むため、得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーの電気抵抗値が低くなるなどの不具合が生じにくい。
なお、高分子量樹脂の水性分散液中における分散粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された値であり、具体的には「マスターサイザー2000」〔商品名;シスメックス(株)製〕を用いて測定された質量平均粒子径である。
高分子量樹脂の水性分散液を乳化重合で得る場合には、この乳化重合は、単量体、水溶性触媒、乳化剤及び重合媒体としての水を共存させ、重合温度に加熱することにより行われる。
上記原材料は、全て重合槽中に容れ、重合温度に昇温して重合を進めてもよいし、また少なくとも水の一部を容れ重合温度に設定した重合槽に、残りの水並びに、単量体、水溶性触媒及び乳化剤の一部又は全部を、断続的又は連続的に添加して重合を進めることもできる。また、単量体は単独で重合槽に添加してもよいし、予め乳化剤水溶液中に単量体を乳化し、その単量体乳化物を添加してもよい。
重合温度は、触媒が作用する温度であれば特に制限されるものではないが、一般には30〜150℃であり、好ましくは40〜100℃の範囲である。
上記単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸や、前記低分子量樹脂の重合に使用されるアクリル酸エステル等の単量体のほかに、架橋性の二重結合を2個以上持つポリビニル単量体を併用することができる。このようなポリビニル単量体としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;アリルメタクリレート等の不飽和アルコールポリ(メタ)アクリレート化合物;N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフイド、トリアリルシアヌレート等のその他のジビニル化合物;が挙げられる。これらのうち、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレ−ト、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(1,6−HDDA)などが好適に使用される。
これら架橋性のポリビニル単量体は、高分子量樹脂を構成する単量体の合計100質量%中に、一般に0〜2質量%、好ましくは0.01〜1質量%、特に好ましくは0.02〜0.8質量%の割合で含まれる。
前記乳化重合で使用できる触媒としては、慣用の任意の水溶性重合開始剤を挙げることができ、例えば、過酸化水素;t−ブチルヒドロペルオキシド、t−アミルヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロペルオキシド;ジアルキルペルオキシド;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;ペルオキシエステル;ペルオキシカルボナート;メチルエチルケトンペルオキシド等のケトンペルオキシド及び、2,2‘−アゾビス(2−アミジノプロパン)、2,2‘−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ開始剤などの遊離ラジカル重合開始剤が使用できる。重合開始剤の使用量は、上記単量体の合計100質量部に対して0.03〜1質量部の範囲であることが好ましく、0.05〜0.8質量部の範囲であることがより好ましく、0.1〜0.5質量部の範囲であることが特に好ましい。
前記乳化重合で使用できる触媒としては、上記の水溶性重合開始剤と水溶性還元剤とを組合せた水溶性レドックス重合開始剤もまた使用できる。水溶性レドックス重合開始剤に使用される水溶性重合開始剤としては上記の重合開始剤が使用できる。また水溶性還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、次亜リン酸塩、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラートなどが使用できる。水溶性レドックス重合開始剤中の過酸化物は、例えば全単量体の合計100質量部に対して0.03〜1質量部の範囲で用いられる。更に上記水溶性レドックス重合開始剤に加えて、微量の還移金属、例えば硫酸第一鉄、モール塩硫酸銅等も併用できる。
高分子量樹脂の水性分散液の乳化重合で使用することのできる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、反応性乳化剤のいずれをも使用することができる。これらの乳化剤は公知の種類の乳化剤を公知の使用方法で使用することができ、またこれらの乳化剤は単独で又は複数を組合せて使用できる。
得られた高分子量樹脂の水性分散液は、必要に応じて、アンモニア水、アミン水溶液、水酸化アルカリの水溶液等を加えることによりpH調節を行うこともできる。このような水性分散液は、通常、固形分濃度が、一般に10〜70質量%の範囲、好ましくは20〜60質量%の範囲、更に好ましくは30〜50質量%の範囲であり、粘度は、通常100mPa・s(BH型回転粘度計、25℃、20rpm;粘度測定条件以下同様)以下、pHは通常2〜10の範囲内であることが望ましい。
乳化重合を行うと、一般に大部分の単量体は重合体に変化して、残存する単量体量は極めて微量である。しかしながら、残留単量体濃度をさらに低くする必要がある場合には、例えば、1種類またはそれ以上の開始剤または還元剤の重合後の添加、蒸気あるいは空気の吹き込み等の方法により残存単量体を減少させてもよい。
上記高分子量樹脂の酸価は、特に制限されるものではないが、2〜33KOHmg/gであることが好ましく、3〜16KOHmg/gであることがより好ましい。この場合、高分子量樹脂の酸価が2KOHmg/g未満である場合に比べて、得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いたトナーのホット・オフセット性がより良好になる。一方、高分子量樹脂の酸価が33KOHmg/gを超える場合に比べて、得られるトナー用結着樹脂を用いたトナーの定着性がより悪化しにくくなる。
高分子量樹脂の水性分散液の使用割合は、低分子量樹脂及び高分子量樹脂のそれぞれの組成や重量平均分子量に依存するため、一概に規定されるものではないが、一般的には、高分子量樹脂が、低分子量樹脂及び高分子量樹脂の合計100質%量中に20〜50質量%の割合となるように決定される。この場合、高分子量樹脂の配合割合が20質量%未満となる場合と比べて、得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーの耐オフセット性がより良好となる。また、低温領域において得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーは、定着性にも優れ、定着下限温度の上昇などの不都合が生じにくい。また、高分子量樹脂の配合割合が50質量%を超える場合と比べて、得られる静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いてトナーを製造した場合、そのトナーの定着性がより良好となる。また、ホット・オフセットの発生により定着可能温度幅が狭くなるなどの不都合が生じにくい。また高分子量樹脂の配合割合は、25〜45質量%の範囲であることがより好ましい。
本発明における溶融混練工程では、上記混合工程で得られた混合物と上記高分子量樹脂の水性分散液とを混合槽に加え、機械的その他の方法によって攪拌しながら混合操作及び溶融混練操作を行い、結着樹脂を製造する。溶融混練工程は、高分子量樹脂の融点以上の温度、更に好ましくは上記高分子量樹脂の融点よりも20℃以上高い温度で行う。
混合工程及び溶融混練工程は開放状態又は密閉状態で常圧下に行われてもよく、また水分や有機溶媒等の揮発成分の蒸発揮散を制御するために密閉加圧状態で行ってもよい。
上記混合槽は、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックスを混合できる槽であればよく、例えば混練機の一部を混合槽として使用してもよい。
本発明において、前記の混合工程及び溶融混練工程は、これらの工程が不都合なく実施できる手段であれば特に制限されず、加熱機能、混合機能及び/又は揮発成分除去機能を有する少なくとも1種の手段を用いて遂行できる。
上記機能を有する好ましい手段としては、例えば、加熱ニーダー、バンバリーミキサー、ロールミル、1軸連続混練機、2軸連続混練機、連続混合脱溶媒機及び乾燥機等を挙げることができる。これらの手段のうち、前記の工程を連続的に行うことができ、これらの工程を一つの装置で効率的に行えるという点で1軸連続混練機又は2軸連続混練機を用いることが好ましい。
次に本発明の内容を、実施例によりさらに具体的に説明する。
〔低分子量樹脂の作製〕
製造例1
撹拌機、加熱装置、冷却装置、温度計及び滴下ポンプを備え、210℃に制御されているオートクレーブ中に、スチレン(St)100質量部とジ−t−ブチルペルオキシド0.5質量部とを均一に混合した単量体混合液を30分で連続添加し、更に温度210℃に保った状態で30分保持して塊状重合を行い、無溶媒のスチレン系重合体からなる低分子量樹脂を得た。得られた低分子量樹脂は、分子量ピーク値Mpが4,500で、重量平均分子量Mwが5,100であり、数平均分子量Mnが2,400であり、MwとMnとの比Mw/Mnが2.1であった。
〔高分子量樹脂の作製〕
製造例2
撹拌機と滴下ポンプを備えた容器に、脱イオン水27質量部及びアニオン性乳化剤「ネオゲンR」〔商品名;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;第一工業製薬(株)製〕1質量部を仕込んで撹拌溶解した後、St 69質量部、アクリル酸ブチル(BA)30質量部及びジビニルベンゼン(DVB)1質量部からなる単量体混合液を滴下しながら攪拌して単量体乳化液を得た。
次に、撹拌機、圧力計、温度計及び滴下ポンプを備えた耐圧反応容器に、脱イオン水120質量部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温し、上記単量体乳化液の15質量%を添加し、さらに2質量%過硫酸カリウム水溶液1質量部を添加して80℃で初期重合を行った。初期重合終了後、85℃に昇温して残りの単量体乳化液及び2質量%過硫酸カリウム4質量部を3時間かけて添加し、その後、同温度にて2時間保持し、平均粒子径130nm、固形分濃度40質量%のスチレン−アクリル系樹脂の水性分散液を得た。
重合反応は安定に進行し、得られた樹脂の重合転換率も高かった。超遠心分離器を用いて樹脂水性分散液から樹脂を分離後、GPCにより分子量を測定した結果、樹脂の重量平均分子量(Mw)は97万であり、分子量ピーク値(Mp)は72万であった。
〔トナー用結着樹脂の製造〕
実施例1
連続混練機である「KRCニーダー」〔商品名;(株)栗本鐵工所製〕を用い、ジャケット温度を200℃に設定して、これに製造例1の低分子量樹脂60質量部(有効成分量約60質量部)、炭化水素系ワックス1.5質量部及びエステル系ワックス「ニッサンエレクトールWEP−3」〔商品名;日油社製〕1.5質量部を連続的に投入して1分間溶融混合して混合物を得た。混合直後、この混合物63質量部、及び、製造例2の高分子量樹脂の水性分散液100質量部(有効成分量約40質量部)を混合し、高分子量樹脂の水性分散液中に含まれる水を蒸発させつつ130〜300℃で60分間溶融混練した。こうして無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。
比較例1
連続混練機である「KRCニーダー」〔商品名;(株)栗本鐵工所製〕を用い、ジャケット温度を200℃に設定して、これに製造例1の低分子量樹脂60質量部(有効成分量約60質量部)、炭化水素系ワックス1.5質量部及びエステル系ワックス「ニッサンエレクトールWEP−3」〔商品名;日油社製〕1.5質量部、並びに、製造例2の高分子量樹脂の水性分散液を連続的に投入して同時に、高分子量樹脂の水性分散液中に含まれる水を蒸発させつつ60分間溶融混合した。こうして無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。
比較例2
連続混練機である「KRCニーダー」〔商品名;(株)栗本鐵工所製〕を用い、ジャケット温度を200℃に設定して、これに製造例1の低分子量樹脂60質量部(有効成分量約60質量部)及びエステル系ワックス「ニッサンエレクトールWEP−3」〔商品名;日油社製〕1.5質量部を連続的に投入して1分間溶融混合して混合物を得た。混合直後、この混合物61.5質量部、及び、製造例2の高分子量樹脂の水性分散液100質量部(有効成分量約40質量部)を混合し、高分子量樹脂の水性分散液中に含まれる水を蒸発させつつ130〜300℃で60分間溶融混練した。こうして無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。
比較例3
連続混練機である「KRCニーダー」〔商品名;(株)栗本鐵工所製〕を用い、ジャケット温度を200℃に設定して、これに製造例1の低分子量樹脂60質量部(有効成分量約60質量部)及び炭化水素系ワックス1.5質量部を連続的に投入して1分間溶融混合して混合物を得た。混合直後、この混合物61.5質量部、及び、製造例2の高分子量樹脂の水性分散液100質量部(有効成分量約40質量部)を混合し、高分子量樹脂の水性分散液中に含まれる水を蒸発させつつ130〜300℃で60分時間溶融混練した。こうして無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。
〔特性評価〕
実施例1及び比較例1〜3で得られた静電荷像現像用トナー用結着樹脂について、耐オフセット性、及び、樹脂中のワックスの分散性を評価するために、まず静電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いて以下のようにして非磁性トナーを製造した。
〔非磁性トナーの製造〕
上記のようにして得られた実施例1及び比較例1〜3の無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂100質量部、カーボンブラック「MA−100」〔商品名;三菱化学(株)製〕6質量部及びアゾ系鉄錯体「T−77」〔商品名;保土ヶ谷化学(株)製〕2質量部をそれぞれにヘンシェルミキサー「FM5C/1」〔商品名;三井鉱山(株)製〕に投入して混合した後、2軸の混練押出機「KRCS1ニーダー」〔商品名;栗本鐵工所(株)製〕を用いて溶融混練した。冷却後、ハンマーミル「VC−210」〔商品名;(株)ホーライ製〕で粗砕し、次いでジェットミル「LJ−N」〔商品名;日本ニューマチック工業(株)製〕で微粉砕を行った。更に得られた微粉破粉体を風力分級機「MDS−2」〔商品名;日本ニューマチック工業(株)製〕を用いて分級を行い5〜20μmの粒子を得た後、疎水性シリカ「TG−308F」〔キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製〕1質量部を加えて混合し、非磁性トナーを得た。こうして得られた非磁性トナーについて、耐オフセット性、及び、樹脂中のワックスの分散性を以下のようにして評価した。
<耐オフセット性>
耐オフセット性は耐オフセット性試験によって評価した。耐オフセット性試験は、市販の高速複写機「Konica Sitios 7075」(商品名、複写速度75枚/分、コニカミノルタ(株)製)の画像定着部を温度可変に改造した高速複写機を用いて行った。具体的には、この高速複写機の画像定着部の温度を200℃に設定して1000枚連続印字を行ってから白紙を印字して、トナーオフセットによる白紙の汚れ具合と加熱ロールの汚れの程度を目視により観察して、以下の基準に従って耐オフセット性を評価した。結果を表1に示す。なお、「○」は耐オフセット性に優れるとして合格とし、「△」及び「×」は耐オフセット性に優れないとして不合格とした。

○:白紙及び加熱ロール共に汚れなし
△:白紙に汚れはないが、加熱ロールにわずかに汚れが認められる
×:白紙上に汚れが認められる
<ワックスの分散性>
ワックスの分散性は、非磁性トナーの定着性に基づいて評価した。非磁性トナーの定着性は、印字密着性試験及び印字こすり性試験によって調べた。
(1−1) 印字密着性試験
印字密着性試験は、耐オフセット性の評価で用いた改造高速複写機を用いて行った。具体的には、この改造高速複写機の画像定着部の温度を200℃に設定して1000枚連続印字を行い、1000枚目の印字の表面に、スコッチメンディングテープ〔商品名;スリーエムジャパン(株)製〕の粘着面を載せ、1kgの円盤の厚さ16mmの円周部分を当接して1往復させた後、メンディングテープを剥がし、印字のテープ貼着前とテープ剥離後の画像濃度を、マクベス反射濃度計〔商品名;マクベス・コールター社製〕を用いて測定し、その結果から次式により求められる印字の定着率の値に基づいて、普通紙に対する非磁性トナーの印字密着性を次の通り評価した。結果を表1に示す。
Figure 0006600192

○:定着率95%以上
△:定着率90%以上95%未満
×:定着率90%未満
(1−2) 印字こすり性試験
印字こすり性試験は、耐オフセット性の評価で用いた改造高速複写機を用いて行った。具体的には、この改造高速複写機の画像定着部の温度を200℃に設定して1000枚連続印字を行い、1000枚目の印字の表面に、複写機用普通紙(75g/m)を25mm幅で短冊状にしたこすり紙を置き、指で一定の力で、50mmの長さを3往復/秒程度の速度で10往復した。印字表面に置いたこすり紙のこすり面について、マクベス反射濃度計〔商品名;マクベス・コールター社製〕を用いて画像濃度を測定した。その結果から次式により求められる印字のこすり汚れの値に基づいて、普通紙に対する試料トナーの印字こすり性を以下の通り評価した。結果を表1に示す。

こすり汚れ=(試験後のこすり面画像濃度)−(試験前のこすり面画像濃度)

○:こすり汚れ 0.13未満
△:こすり汚れ 0.13以上0.20未満
×:こすり汚れ 0.20以上
(1−3) 分散性の合否基準
ワックスの分散性については、印字密着性試験及び印字こすり性試験の両方で「○」である場合にのみ合格とし、それ以外の場合には不合格とした。
Figure 0006600192
表1に示す結果より、実施例1は、耐オフセット性及びワックスの分散性のいずれの点でも合格であった。これに対し、比較例1〜3は、耐オフセット性及びワックスの分散性のうちのいずれかの点で不合格となることが分かった。
以上より、本発明のトナー用結着樹脂の製造方法によれば、トナーに対して優れた耐オフセット性を付与することができ、ワックスが十分に分散した静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造できることが分かった。

Claims (8)

  1. 溶融された低分子量樹脂100質量部に対し、炭化水素系ワックス2〜6質量部及びエステル系ワックス2〜6質量部を混合して混合物を得る混合工程と、
    前記混合物、及び、前記低分子量樹脂よりも大きい重量平均分子量を有する高分子量樹脂を含む水性分散液を混合して溶融混練し、静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得る溶融混練工程を含み、前記低分子量樹脂及び前記高分子量樹脂がいずれもスチレン系重合体である、静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  2. 前記低分子量樹脂が塊状重合によって得られる、請求項1に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  3. 前記低分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)が1,000〜50,000の範囲である請求項1又は2に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  4. 前記低分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が1,500〜30,000の範囲にあり、且つ、前記低分子量樹脂の重量平均分子量と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)が4未満である請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  5. 前記高分子量樹脂が乳化重合によって得られる、請求項1〜のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  6. 前記高分子量樹脂の重量平均分子量(Mw)が10万以上である請求項1〜のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  7. 前記高分子量樹脂のGPC分子量ピーク値(Mp)が30万〜300万の範囲にある請求項1〜のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
  8. 前記炭化水素系ワックス及び前記エステル系ワックスの融点が55〜160℃である請求項1〜のいずれか一項に記載の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
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