以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法は、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類を含む原材料を共存させて混合する工程(1)〔以下、混合工程(1)又は単に工程(1)ということがある〕並びに、それと同時に及び/又はその後に揮発成分を除去する工程(2)〔以下、揮発成分除去工程(2)又は単に工程(2)ということがある〕を含むことを特徴とする。
上記の低分子量樹脂の製造は、必ずしも限定されるものではなく、縮合重合、付加重合、ビニル単量体の塊状重合等で無溶媒樹脂を得る方法;溶液重合、乳化重合等により樹脂溶液又は樹脂水性分散液を得る方法;等により製造することができるが、これらのうち、有機溶媒や乳化剤などを使用しないですみ、製造操作が比較的容易で、且つ混合工程(1)において溶融状態で容易に添加することができるなどの観点からビニル単量体の塊状重合により製造することが好ましい。
なおここで上記の「無溶媒樹脂」とは、フレーク状、粉体状、粒状、ブロック状、溶融状態等の樹脂であって、水又は有機溶剤の含有率が10重量%以下、好ましくは5重量%以下、特に好ましくは実質的に水又は有機溶剤を含有しない樹脂をいうものとする。
また上記混合工程(1)への低分子量樹脂の添加方法も、無溶媒樹脂をフレーク状、粉体状、粒状又はブロック状の形体で添加する方法;無溶媒樹脂を溶融状態で添加する方法;樹脂溶液又は樹脂分散液の形体で添加する方法;などがあるが、低分子量樹脂を塊状重合により製造する場合には、得られる無溶媒樹脂をそのまま添加することができる。溶液重合による場合には、得られる樹脂溶液をそのまま、又は該樹脂溶液から有機溶媒を適宜公知の方法で除去して無溶媒樹脂として添加することができる。さらに乳化重合による場合には、得られる樹脂水性分散液をそのまま、又は後記する高分子量樹脂の水性分散液と予備混合し、もしくはさらにこれらに後記のワックス類の水性分散液と予備混合して添加することができ、或いは低分子量樹脂水性分散液を単独で、又は該低分子量樹脂2種以上の水性分散液の予備混合物を後記するようにスラッジとして添加することも可能である。
これら低分子量樹脂の添加方法のうち、連続操作が可能となり、得られる結着樹脂の均質性が高い等の理由から、無溶媒樹脂を溶融状態で添加することが好ましい。
塊状重合は、ビニル単量体と該単量体に溶解する重合開始剤とを共存させ、実質上溶媒や分散剤・乳化剤等が存在しない原料混合物を重合温度に加熱することにより行うことができる。重合の方式は、全ての原料を1つの重合槽中で反応させるバッチ重合方式でも、また原料添加、重合及び重合体の取り出しを連続的に行う連続式、或いはこれらを組み合わせた半連続式であってもよいが、連続的に塊状重合を行い、得られた低分子量樹脂をそのまま溶融状態で高分子量樹脂との混合工程に直接添加することが効率的であり好ましい。
本発明で用いられる低分子量樹脂は、次に記載する方法によって測定される特定範囲の分子量特性を有していることが好ましい。
分子量特性の測定:
「TSK gel GMH xl」〔商品名;東ソー(株)製〕カラムを2本装着したゲルバーゲルバーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置「HLC-8220」〔商品名;東ソー(株)製〕を用い、各種樹脂の試料をテトラヒドロフラン(THF)に0.2重量%濃度となるように溶解し、この溶液を温度20℃で約150μL該装置に注入した後、THFを1mL/分の流速で流すことにより測定を行う。なお、試料の分子量測定に際しては、該試料の有する分子量が、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択する。
得られるGPCの測定チャートにおいて、最大の値を示す分子量(分子量ピーク)をMpで表し、またコンピーター演算により求められる数平均分子量及び重量平均分子量をそれぞれMn及びMwで表し、数平均分子量に対する重量平均分子量の比(Mw/Mn)を求め
て分子量分布の指標とする。
低分子量樹脂の分子量ピーク値(MpL)は、好ましくは1,500〜30,000の範囲内、さらに好ましくは2,000〜20,000の範囲内にあるのがよい。MpL値が上記下限値以上であれば、得られるトナーが良好な定着性を有すると共に、現像機中で凝集して現像剤としての寿命が短くなるなどの不具合が生じにくく、また保存安定性にも優れており、高温保存時に固まるなどの問題が生じにくいので好ましい。またMpLが上記上限値以下であれば、得られるトナーにトナースペントやフィルミングなどの不具合が生じにくいのはもとより、低温領域での定着性にも優れており、定着の下限温度が上昇して、コールド・オフセット温度が不良となるなどの不具合が生じにくいので好ましい。
上記の低分子量樹脂の重量平均分子量(MwL)は、好ましくは1,000〜50,000、より好ましくは1,000〜30,000、特に好ましくは1,000〜20,000の範囲であるのがよい。MwLが上記下限値以上であれば、得られるトナーが良好な定着性を有すると共に、現像機中で凝集して現像剤としての寿命が短くなるなどの不具合が生じにくく、また保存安定性にも優れており、高温保存時に固まるなどの問題が生じにくいので好ましい。またMwLが上記上限値以下であれば、得られるトナーのスペント化及び微細化などが起きにくいのはもとより、低温領域での定着性にも優れており、定着の下限温度が上昇して、コールド・オフセット温度が不良となるなどの不具合が生じにくいので好ましい。
また前記低分子量樹脂の、重量平均分子量(MwL)と数平均分子量(MnL)との比(MwL/MnL)は4未満であることが好ましい。MwL/MnLが上記上限値未満上であれば定着性不良などを引き起こしにくいので好ましい。
本発明で用いられる低分子量樹脂は、トナーの結着樹脂として使用される樹脂であれば、どのような樹脂であっても特に制限はなく使用することができ、例えば、アクリル系重合体、スチレン系重合体、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体等が挙げられるが、トナーとしての性能が得やすいことからスチレン系重合体を用いることが好ましい。
上記スチレン系重合体とは、スチレン系単量体を主成分量、例えば50重量%以上(共)重合する(共)重合体をいい、スチレン系単量体の例としては、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、p-n-ブチルスチレン、p-t-ブチルスチレン、p-n-ヘキシルスチレン、p-n-オクチルスチレン、p-n-ノニルスチレン、p-n-デシルスチレン、p-n-ドデシルスチレン、p-メトキシスチレン、p-フェニルスチレン、p-クロルスチレン、3,4-ジクロルスチレンなどを挙げることができるが、このうちスチレンが最も好ましい。
上記スチレン系単量体と共重合することのできる他の単量体としては、スチレン系単量体と共重合が可能な単量体であれば特に制限はないが、アクリル系単量体が好ましく、このようなアクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル等のアクリル酸エステル;例えば、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等のメタクリル酸エステルを挙げることができるが、特にアクリル酸n-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、メタクリル酸n-ブチル、メタクリル酸ラウリル等が好適に用いられる。
本発明で低分子量樹脂として好適に用いられるスチレン系重合体のガラス転移温度(TgL)は、好ましくは40〜80℃の範囲、さらに好ましくは50〜70℃の範囲内にあるのがよい。
本発明に用いられる好ましい低分子量樹脂の製造方法である、前記塊状重合の重合温度は、好ましく130〜250℃、より好ましくは170〜250℃、特に好ましくは190〜230℃の範囲である。該反応温度が上記下限温度以上であれば、良好な反応速度を示し、得られる重合体の分子量ピーク(MpL)が高くなりすぎるなどの不都合が生じないので好ましい。また反応温度が上記上限温度以下であれば、解重合反応などが起って分子量500以下のオリゴマーが増大するなどの不都合が生じにくいので、得られる重合体を配合して作製したトナーはその保存性及びスペント化・微細化などを起し難いので好ましい。
塊状重合に使用される重合開始剤は、従来公知の任意の油溶性重合開始剤が使用できる。好適な重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、t-ヘキシルヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。本発明においては、反応温度として170℃以上の高い温度を用いるのが特に好適であるため、これらの開始剤のうち、t-ブチルヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルヒドロペルオキシドなどの高温分解性の開始剤を用いることが特に好ましい。重合開始剤の使用量は、前記単量体の合計100重量部に基づいて、0.01〜5重量部であること好ましく、0.03〜3重量部であることがより好ましく、0.05〜1重量部であることが特に好ましい。
上記の如くして得られるスチレン系低分子量重合体は、その転換率が90%以上、好ましくは95%以上、更に好ましくは97%以上となる様に反応温度と反応滞留時間を設置するのが好ましいが、必要に応じて、薄膜蒸留装置などにより残存単量体の回収を行うこともできる。
かくして得られる塊状重合低分子量重合体は、特にトナーの帯電性の保持性が高く、且つ臭気の発生が少ないので好ましい。
本発明に用いられる低分子量樹脂は、慣用の溶液重合により作製されたものであってもよい。溶液重合により得られた低分子量樹脂は、前記のように樹脂溶液としてそのまま添加することもできるが、前記の理由により樹脂溶液から適宜公知の方法により有機溶媒を除去し無溶媒樹脂として用いることもできる。
上記低分子量樹脂の製造に利用することのできる溶液重合は、前記塊状重合で用いられる単量体、重合開始剤及び、該単量体と重合開始剤とを溶解する溶媒を共存させ、これらの混合物を加熱することにより行うことができる。
上記の溶媒としては、特に制限されるものではなく、いずれの溶媒も使用可能であり、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素;例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン等の芳香族炭化水素;例えば、1-クロルブタン、塩化アミル、ジ臭化エチレン、塩化メチレン、ジ塩化エチレン、ジ塩化プロピレン、ジクロルペンタン、クロロホルム、1,1,2-トリクロルエタン、1,2,3-トリクロルプロパン、四塩化炭素、1,1,2,2-テトラクロルエタン、トリクロルエチレン、ペルクロルエチレン、エピクロルヒドリン、モノクロルベンゼン、ジクロルベンゼン、トリクロルベンゼン、弗素化炭化水素等のハロゲン化炭化水素類;
例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、アリルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール等のアルコール類;例えば、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ブチルアミン、ジアミルアミン、プロピレンジアミン、アニリン、ジメチルアニリン、シクロヘキシルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ピリジン、キノリン等のアミン類;例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルヘキシルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルヘキサノン等のケトン類;
例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、n-ブチルエーテル、n-ヘキシルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、アセタール等のエーテル類;例えば、炭酸ジエチル、ギ酸メチル、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸フルフリル、プロピオン酸エチル、プロピオンサンブチル、プロピオン酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸アミル、蓚酸ジエチル、蓚酸ジブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類;例えば、ガソリン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、ミネラルスピリット、灯油、軽油、重油等の石油系炭化水素;例えば、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化炭化水素;例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;例えば2硫化炭素等のその他の溶媒を挙げることができ、これらの溶媒は単独で又は複数のもの混合して使用することができる。
上記溶媒のうち、得られる低分子量樹脂との相溶性の良さの観点から、脂肪族炭化水素類、環状脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、ケトン類、エーテル類、エステル類が好ましい。また得られた樹脂溶液をそのまま直接混合工程(1)に添加するか、或いは該樹脂溶液から有機溶媒を揮散させて無溶媒樹脂とし、これを混合工程(1)に添加する何れの場合にも、溶媒の蒸発除去性の良さの観点から、これらの溶媒のうち沸点が50〜150℃のものが好ましい。
上記溶液重合の重合温度は、一般に40〜250℃の範囲であり、好ましくは60〜230℃、さらに好ましくは70〜220℃の範囲であるのがよい。
得られた樹脂溶液をそのまま直接混合工程(1)に添加する場合、該樹脂溶液中の溶媒の量は、一般には10重量%を超える量、例えば20〜80重量%、特には30〜70重量%程度の量を例示できる。
本発明に用いられる低分子量樹脂を乳化重合によって製造する場合には、前記塊状重合で用いられる単量体並びに、後記する高分子量樹脂の乳化重合による製造で用いられるものと同様の乳化剤及び重合開始剤を用い、また必要に応じて公知の連鎖移動剤を用いて、後記する高分子量樹脂の乳化重合における重合温度により製造することができる。
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法では、混合工程(1)において、以上述べた低分子量樹脂と共に高分子量樹脂が添加混合される。高分子量樹脂の添加方法は、必ずしも限定されるものではなく、水性分散液の形体で添加する方法;該水性分散液の分散安定性を適宜公知の方法で低下させて水性スラッジとして添加する方法;などがあるが、乳化重合などで得られるものをそのまま用いることができ、均質性の高い樹脂混合物が得やすい等の理由から水性分散液の形体で使用することがさらに好ましい。高分子量樹脂の添加方法としてはさらに、該高分子量樹脂の水性分散液を、前記の低分子量樹脂の水性分散液及び/又は後述するワックス類の水性分散液と予め混合して添加する方法;このような水性分散液の混合物を水性スラッジとしてから添加する方法;などを採用することができる。
上記の高分子樹脂の水性分散液は、高分子樹脂が乳化状態で分散されたものであれば特に制限されるものではなく、例えば、樹脂を適宜公知の乳化剤を用いて水中に強制乳化分散させた樹脂水性分散液、乳化重合で得られる樹脂水性分散液等を挙げることができるが、保存時及び低分子量樹脂との混合時に安定であるという観点から、乳化重合で得られた樹脂水性分散液が好ましい。さらには樹脂粒子が、樹脂自体の持つ極性によって自己安定化した、乳化剤が使用されていない樹脂粒子であってもよい。
本発明で使用される高分子量樹脂の分子量特性もまた前記の「分子量特性の測定」に記載した方法に従って測定されるが、そのGPCの測定チャートにおける分子量ピーク値(MpH)は30万〜300万の範囲であることが好ましく、50万〜200万の範囲であることがより好ましく、60万〜100万の範囲であることがさらに好ましい。該MpHが該下限値以上であれば、得られるトナーが優れた定着性を示すことはもとより、ホット・オフセットが発生するなど定着可能温度幅が狭くなるなどの不具合が生じにくいので好ましい。
また上記高分子量樹脂の重量平均分子量(MwH)は10万以上であることが好ましく、20万以上であることが特に好ましい。該MwHが上記下限値以上であれば、得られるトナーが優れた定着性を示すことはもとより、ホット・オフセットが発生するなど定着可能温度幅が狭くなるなどの不具合が生じにくいので好ましい。さらに必要に応じて、この高分子量樹脂と共に、前記低分子量樹脂とこの高分子量樹脂との中間的な分子量を有する中分子量樹脂を併用してよい。
本発明で使用される高分子量樹脂は、前記低分子量樹脂と同一の種類のものを使用することができ、例えば高分子量樹脂にも低分子量樹脂にもスチレン系重合体を使用することができる。
高分子量樹脂として水性分散液を使用するときには、その分散粒子の平均粒子径は30nm〜1000nmの範囲であることが好ましい。該粒子径が該上限値以下であれば、低分子量樹脂との相溶分散性が優れており、得られるトナーの定着性が不十分なものとなったり、ホット・オフセットが発生しやすくなって定着可能温度幅が狭くなったりするなどの不都合が生じにくいので好ましい。また、上記樹脂乳化分散液の粒子径が該下限値以上であれば、乳化重合時などに比較的少量の乳化剤量の使用ですむため、得られるトナーの電気抵抗値が低くなるなどの不具合が生じにくいので好ましい。
なお高分子量樹脂の水性分散液中における分散粒子の平均粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置により測定された値であり、具体的には「マスターサイザー2000」〔商品名;シスメックス(株)製〕を用いて測定された重量平均粒子径である。
特に無溶媒形体などの低分子量樹脂と、水性分散液又は水性スラッジ形体の高分子量樹脂との相溶分散性は、得られるトナーの定着性、耐久性に影響があり、相溶分散性の悪いものは、定着時いわゆるホット・オフセットとコールド・オフセットが同時に発生しやすく、またトナーのスペント化及び微細化が起き易く、現像剤としての寿命が短いので好ましくない。
本発明に用いられる高分子量樹脂の水性分散液を、乳化重合で得る場合には、単量体、水溶性触媒、乳化剤及び重合媒体としての水を共存させ、重合温度に加熱することにより行われる。
上記原材料は、全量重合槽中に添加し、重合温度に昇温して重合を進めてもよいし、また少なくとも水の一部を容れ重合温度に設定した重合層に、残りの水並びに、単量体、水溶性触媒及び乳化剤の一部又は全部を、断続的又は連続的に添加して重合を進めることもできる。また、単量体は単独で重合層に添加してもよいし、予め乳化剤水溶液中に単量体を乳化し、その単量体乳化物を添加してもよい。
重合温度は、触媒の分解する温度であれば特に制限されるものではないが、一般には30〜150℃、好ましくは40〜100℃の範囲であるのがよい。
上記単量体としては、前記低分子量の重合体成分として使用される樹脂溶液中の樹脂の重合に使用される単量体のほかに、重合性の二重結合を2個以上持つポリビニル単量体を併用することができ、このようなポリビニル単量体としては、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物;例えばエチレングリコールジメタアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、等のポリオールポリ(メタ)アクリレート化合物;アリルメタクリレート等の不飽和アルコールポリ(メタ)アクリレート化合物;N,N-ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフイド、トリアリルシアヌレート等のその他のジビニル化合物;がある。これらのうち、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタアクリレ−ト、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートなどが好適に使用される。
これら架橋性のポリビニル単量体の共重合割合は、高分子樹脂を構成する単量体の合計100重量%に基づいて、一般に0〜2重量%、好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは0.02〜0.8重量%の範囲内であるのがよい。
前記乳化重合で使用できる重合開始剤としては、従来慣用の任意の水溶性開始剤を挙げることができ、例えば、過酸化水素;t-ブチルヒドロペルオキシド、t-アミルヒドロペルオキシド等のアルキルヒドロペルオキシド;ジアルキルペルオキシド;過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;ペルオキシエステル;ペルオキシカルボナート;メチルエチルケトンペルオキシド等のケトンペルオキシド及び、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)、2,2’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ開始剤などの遊離ラジカル重合開始剤が使用できる。重合開始剤の使用量は、前単量体の合計重量100重量部に基づいて0.03〜1重量部の範囲であること好ましく、0.05〜0.8重量部の範囲であることがより好ましく、0.1〜0.5重量部の範囲であることが特に好ましい。
上記の水溶性重合開始剤と水溶性還元剤とを組み合わせた水溶性レドックス重合開始剤もまた使用できる。水溶性レドックス開始剤に使用される重合開始剤としては上記の重合開始剤が使用でき、また還元剤としては、例えば、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、次亜リン酸塩、アスコルビン酸、酒石酸、クエン酸、ブドウ糖、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシラートなどが使用できる。レドックス触媒の過酸化物の使用量は、全単量体の合計重量100重量部に基づいて0.03〜1重量部の範囲で用いられる。更に上記レドックス重合開始剤に加えて、微量の還移金属、例えば硫酸第一鉄、モール塩硫酸銅等の併用も使用できる。
本発明に好適に用いられる、高分子量樹脂水性分散液の乳化重合で使用することのできる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、反応性乳化剤のいずれをも使用することができ、これらの乳化剤は公知の種類の乳化剤を公知の使用方法で使用することができ、またこれらの乳化剤は単独で又は併用して使用することができる。
得られた高分子量樹脂水性分散液は、必要に応じて、アンモニア水、アミン水溶液、水酸化アルカリの水溶液等を加えることによりpH調節を行うこともできる。このような水性分散液は、通常、固形分濃度が、一般に10〜70重量%の範囲、好ましくは20〜60重量%の範囲、更に好ましくは30〜50重量%の範囲であり、粘度は、通常10,000 mPa・s(BH型回転粘度計、25℃、20rpm;粘度測定条件以下同様)以下、pHは通常2〜10の範囲内であることが望ましい。
乳化重合を行うと、一般に大部分の単量体は重合体に変化して、残存する単量体量は極めて微量である。しかしながら、残留単量体濃度が用途によっては充分低くない場合には、例えば、1種類またはそれ以上の開始剤または還元剤の重合後の添加、蒸気あるいは空気の吹き込み等の方法により残存単量体を減少させてもよい。
本発明で好適に用いられる高分子量樹脂は水系の乳化重合で製造されるが、その場合、水性媒体としてアルコール等の水溶性有機溶媒を含有させることもできる。
本発明で用いられる高分子量樹脂は、前記にとおり高分子量樹脂の水性スラッジとして、すなわち、以上述べた高分子量樹脂の水性分散液の分散安定性を適宜公知の方法で低下させた樹脂粒子の水性分散液であって、高分子量樹脂水性分散液中の樹脂粒子同士が凝集したものを含む水性スラッジの形体で使用することもできる。これらのスラッジ中の樹脂粒子は粒子の分散安定性が損なわれているため、機械的撹拌により分散しているが、静置することにより、あるいは水で希釈することにより容易に沈降する。
上記の高分子樹脂の分散樹脂粒子の分散安定性を低下させる方法としては、特に制限されるものではないが、例えば、該樹脂水性分散液に無機金属塩を加えて塩析を行う方法、樹脂水性分散液のpHを調節して粒子の分散安定性を損なわせる方法、有機溶媒を加えて不安定にする方法、樹脂分散粒子が有する電荷とは逆の電荷を持つ乳化剤の水溶液を加える方法、樹脂水性分散液に強力な機械的撹拌を行って凝集させる方法、樹脂水性分散液を冷凍した後解凍して凝集させる方法等が挙げられるが、操作の容易性の観点から、樹脂水性分散液に金属塩を加えて塩析を行う方法、樹脂水性分散液のpHを調節して粒子の分散安定性を損なわせる方法が好ましい。
上記の高分子樹脂水性分散液に金属塩を加えて塩析する場合には、例えば、該分散液を撹拌しながら、無機金属塩の水溶液を添加することにより行うことができる。使用できる無機金属塩としては、水溶性の無機金属塩であれば特に制限はないが、例えば、各種金属のハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、燐酸塩、酢酸塩、炭酸塩等を挙げることができ、これらの金属塩の金属としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、鉄、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、アルミニウム等を挙げることができる。
樹脂水性分散液のpHを調節して粒子の分散安定性を低下させる場合には、例えば、該分散液がアニオン性の乳化剤で安定化されている場合には、pHを下げることにより行うことができ、該分散液がカチオン性の乳化剤で安定化されている場合にはpHを上げることにより行うことができる。前者の場合にはpH1〜6、特にはpH1〜3とすることが更に好ましく、樹脂水性分散液を撹拌しながら塩酸、硫酸、燐酸、酢酸、炭酸等又はそれらの水溶液を加えることにより行うことができる。また後者の場合にはpH8〜14、特にはpH12〜14が好ましく、樹脂水性分散液にアンモニア、各種のアミン等又はそれらの水溶液を加えることにより行うことができる。
有機溶媒を加えて粒子の分散安定性を低下させる場合には、水に溶解し、樹脂をほとんど溶解しない有機溶媒を樹脂水性分散液中に添加することにより行うことができる。このような有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類;例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等のニトリル類;例えばアセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;例えばジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類が挙げられる。
樹脂水性分散液中の分散粒子が有する電荷とは逆の電荷を持つ乳化剤の水溶液を加える方法で水性スラッジを作製する場合には、プラス電荷をしている分散粒子に対しては、乳化剤としてカルボン酸系、スルホン酸系、燐酸系等のアニオン活性剤を使用し、マイナス帯電をしている樹脂乳化分散粒子に対しては、3級アミン系、4級アミン系等のカチオン乳化剤を使用することができる。また、ポリアミン系、ポリアクリルアミド系、ポリアクリル系等の高分子凝集剤、アルギン酸塩系、セルロース系等の水溶性親水コロイドを添加してスラッジを作製することもできる。
上記のようにして製造したスラッジ中の樹脂粒子を一旦濾過洗浄し、スラッジ中の余分な乳化剤、重合開始剤等を水洗除去し、濾別粒子を再度水中に分散させてスラッジとして使用することができる。
前記低分子量樹脂と高分子量樹脂との混合割合は、それぞれの樹脂の組成や分子量により、一概に規定されるものではないが、一般的には、該低分子量樹脂及び高分子量樹脂の合計100重量%に基づいて、低分子量樹脂が、好ましくは50〜80重量%、さらに好ましくは55〜75重量%の範囲;高分子量樹脂が、好ましくは50〜20重量%、さらに好ましくは45〜25重量%の範囲であるのがよい。低分子量樹脂の混合割合が上記下限値以上(高分子量樹脂の混合割合が上記上限値以下)であれば、耐オフセット性が良好であることはもとより、低温領域での定着性にも優れており、定着下限温度の上昇などの不都合が生じないので好ましい。また低分子量樹脂の混合割合が上記上限値以下(高分子量樹脂の混合割合が上記下限値以上)であれば、定着性が良好であると共に、ホット・オフセット発生などにより定着可能温度幅が狭くなるなどの不都合が生じにくいので好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法は、混合工程(1)において、低分子量樹脂及び高分子量樹脂と共に、ワックス類を一緒に添加混合することを特徴とするものである。従来ワックス類は、トナーが熱ロール表面に付着転移してオフセット現象を起こすことを防止する離型剤として、トナー製造段階でトナー用結着樹脂、着色剤、帯電制御剤、磁性体などと共に溶融混合されていたが、本発明者等は、このように低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類を一緒に添加混合することによって、前記のトナースペントやフィルミングなどの不具合を生じることなく長時間連続印刷が可能であり、また長時間連続印刷時に生じる熱ロール温度の低下に伴って起こりがちな低温オフセットを顕著に改善できることを見出した。
本発明方法で用いることのできるワックス類は、特に限定されるものではなく、脂肪族炭化水素系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、脂肪酸系ワックス、脂肪族アルコール系ワックス及びカルボン酸アミド系ワックス、並びにそれらの誘導体及び配合物の中から適宜選択することができる。本発明においては、トナーの高温貯蔵時などにトナーから分離することがなく、且つ使用時の高温オフセット防止性にも優れている等の観点から、その軟化点が55〜160℃、特には60〜150℃の範囲であるものを使用することが好ましい。
なお、本明細書におけるワックス類の軟化点は、JIS K 2207に記載されている環球法軟化点により測定された値である。
上記の脂肪族炭化水素系ワックスには、低分子量ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプッシュワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラタム、オゾケライト及びセレシンなどがある。
低分子量ポリオレフィンワックスは、炭素数2〜10、好ましくは2〜6のα-オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、2-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、2-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、4-メチル-1-ヘキセン、1-オクテン、5-メチル-1-ヘプテン、1-デセンがあるが、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン(好ましくはエチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン)などを主構成成分(50モル%以上、好ましくは80モル%以上)とするオレフィン系単量体を高圧下でラジカル重合又は、チーグラー触媒などを用いてイオン重合することにより誘導される分子量500〜10000程度の重合体であるが、該オレフィン系単量体には、これらα-オレフィンと共に、必要に応じて、カルボキシル基、エステル基、ヒドロキシル基、エトキシ基、スルホニル基などを有する単量体を含有させることもできる。
フィッシャー・トロプッシュワックスとは、一酸化炭素と水素からなる合成ガスから合成される炭化水素の蒸留残分から、又はこれらに水素添加して得られる炭素数16〜78の合成炭化水素である。
パラフィンワックスとは、石油の減圧蒸留留出油から分離精製される炭素数20〜40の直鎖状炭化水素を主成分とするものであり、またマイクロクリスタリンワックスとは、石油の減圧蒸留残渣油又は重質留出油から分離精製される炭素数30〜60の分枝鎖状炭化水素を主成分とするであり、ペトロラタムとは、石油の減圧蒸留残渣油から分離される油分が多く粘稠性のある半固体状のペトロラタムであり、さらにオゾケライトとは石油鉱床近くの第三紀層の鉱床から採掘される炭化水素を主成分とするもので、その精製物であるセレシンである。
これら脂肪族炭化水素系ワックスのうち、低分子量ポリオレフィンワックス、フィッシャー・トロプッシュワックス、パラフィンワックス及びマイクロクリスタリンワックスが好適に使用され、特に低分子量ポリオレフィンワックスが好適に使用される。
前記脂肪酸エステル系ワックスには、ブラジルのヤシ科植物の葉から採取される炭素数24〜32の脂肪酸及びアルコールのエステルを主成分とするカルナウバワックス;北米南部乾燥地帯の多汁植物から採取される炭素数30と32の脂肪酸、アルコール及びそれらのエステルを主成分とするキャンデリラワックス;米糠油から採取され必要に応じて水素添加される炭素数16〜32の脂肪酸及びアルコールのエステルを主成分とするライスワックス;蜂蜜の巣から採取される炭素数16〜32の脂肪酸及びアルコールのエステル、並びに炭化水素を主成分とする蜜蝋;泥炭乃至褐炭から炭化していない植物蝋成分を抽出して得られる炭素数20〜32の脂肪酸及びアルコールのエステル、並びに樹脂分を主成分とするモンタンワックス;などがあり、さらに合成脂肪酸エステル系ワックスとしては、例えばグリセロール、ソルビトール等の多価アルコールの脂肪酸エステルなどがある。これらの脂肪酸エステル系ワックスのうち、低温定着性のよさ等の観点から、カルナウバワックスなどの使用が好ましい。
また前記脂肪酸系ワックスには、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、モンタン酸等の炭素数16〜30程度の飽和直鎖脂肪酸類;例えば、エライジン酸、エレオステアリン酸、バナリン酸、ブラシン酸等の炭素数18〜30程度の不飽和脂肪酸類;例えば、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム等の脂肪酸金属塩などがあり、脂肪族アルコール系ワックスには、例えば、セチルアルコール、ステアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナービルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなど炭素数16〜34程度の飽和脂肪族一価アルコール;例えばソルビトールなどの脂肪族多価アルコールなどがある。
さらにカルボン酸アミド系ワックスには、例えば、リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミド等の脂肪族アミド類;例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、m-キシレンビスステアリン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;例えば、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド等の飽和脂肪酸ビスアミド類;例えば、N,N’-ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’-ジオレイルセバシン酸アミド、N,N’-ジステアリルイソフタル酸アミド等の脂肪族アルコールビスアミド類などがある。
本発明ではまた、以上述べたワックス類を、必要に応じて、酸化、水素化もしくは加水分解し、又はこれらワックス類にビニル単量体をグラフト化させた誘導体として、或いはこれらワックス類及びその誘導体同士又はその他の成分を適宜は配合した配合物として使用することもできる。
さらに本発明においては、以上述べたワックス類を、適宜公知の方法を用いて水性媒体中に分散した水性分散液の形体の、所謂ワックスエマルジョンを使用することもできる。このようなワックスエマルジョンのうち、低分子量ポリオレフィンワックスに基づくものには、例えばハイテックE-4A、E-4B、E-68A、E-68A、E-103N、E-433N、E-1000、E-6000、E-6500、E-7058、P-5043、P-5060、S-3121、S-3127、S-3148、S-8512〔商品名;東邦化学工業(株)製〕、ケミパールWP100、W100、W200、W300、W308、W400、W401、W410、W500、W700、W800、W900、W950、W4005、WF640〔商品名;三井化学(株)製〕などがあり、それらは本発明におけるワックス類としてそれぞれ好適に使用することができる。
これらワックス類の配合量は、樹脂成分である低分子量樹脂及び高分子量樹脂の合計100重量部に基づいて、有効成分量として、一般に0.1〜10重量部の範囲、好ましくは1〜8重量部の範囲である。またワックス類の配合量は、トナーの製造に際して配合される顔料の種類や量によっても左右され、顔料としてカーボンブラックを用いるときには、ワックス類の配合量は、樹脂成分100重量部に基づいて、有効成分量として1〜4重量部の範囲;マグネタイトなどを用いるときには、有効成分量として2〜6重量部の範囲用いるのが好ましい。別の観点からすると、ワックス類の配合量は、樹脂成分、顔料及び後記する帯電制御剤の合計100重量部に対して、一般に0.1〜6重量部、好ましくは0.5〜4重量部の範囲である。
ワックス類の配合量が上記の各下限値以上であれば、優れたオフセット抑制効果を発揮できるので好ましく、一方、上記各上限値以下であれば、得られるトナーの長期間の保存が可能となると共に、その他のトナー配合物の分散性も低下することがなくフィルミングの発生を押さえることができ、さらにトナーの流動性の劣化や画像特性の低下などの不具合も生じにくいので好ましい。
本発明方法の混合工程(1)においては、ワックス類の添加方法もまた、必ずしも限定されるものではなく、フレーク状、粉体状、粒状又はブロック状などの無溶媒固体状態で添加する方法;無溶媒溶融状態で添加する方法;水性分散液の形体で添加する方法;などがあり、さらにワックス類の水性分散液を、前記低分子量樹脂水性分散液及び/又は高分子量樹脂水性分散液と予め混合して添加する方法;このような水性分散液の混合物を水性スラッジとしてから添加する方法;などを採用することもできる。
本発明における混合工程(1)では、以上述べた低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類を含む原材料を機械的その他の方法によって攪拌しながら混合操作を行う。該工程(1)は、好ましくは上記低分子量樹脂のガラス転移点以上の温度、更に好ましくは該ガラス転移点よりも20℃以上の温度で行うことにより、得られる低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類の混合物の組成が均一になり、該混合物をトナー用結着樹脂として用いて作製したトナーの諸物性が向上する。
このような混合工程(1)による上記利点は、該工程(1)の間に、高分子量樹脂として好適な形体である水性分散液又は該水性分散液より導かれる水性スラッジの中の樹脂粒子又は樹脂粒子に由来する微粒子と、無溶媒樹脂、樹脂溶液又は水性分散液の形体の低分子量樹脂と、無溶媒固体状態、無溶媒溶融状態又は水性分散液の形体のワックス類とが互いに接触し、或いは水性分散液の形体で予め混合された高分子量樹脂、低分子量樹脂及び/又はワックス類の混合水性分散液もしくはその水性スラッジの中の粒子がさらに密接に接触して、互いに分散された状態で合一する作用が上記の温度で促進されるためと考えられる。
混合工程(1)は解放状態又は密閉状態で常圧下に行われてもよく、また水分や有機溶媒等の揮発成分の蒸発揮散を制御するために密閉加圧状態で行ってもよい。
本発明方法においては、上記混合工程(1)と同時に及び/又はその後に揮発成分を除去する工程(2)を行う。該揮発成分除去工程(2)は、混合工程(1)によって生成した混合物から、水、有機溶媒等の揮発成分を蒸発により除去する処理であり、この工程(2)によって大部分の揮発成分が除去された無溶媒状態の樹脂混合物が得られる。このとき該混合物中に、例えば残留単量体等の揮発性不純物が存在していれば、これらも同時に除去することができる。
工程(2)は、混合工程(1)で得られる樹脂混合物を該混合物中の揮発成分の蒸発平衡温度以上に加熱することにより行うことができ、さらに加熱下に減圧にすることにより一層効率的に行うことができる。揮発成分除去を常圧で行う場合には、樹脂混合物の温度は、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類を混合した直後には、それぞれの成分が随伴している媒体である揮発成分のうち主要なものの沸点、本方法の好適な態様では水の沸点である100℃近辺に設定されればよいが、これら揮発成分の除去の進行と共に高温となる。該工程(2)は前記混合工程(1)終了後に行うこともできるが、両者を同時に行う方が効率的であり好ましい。
揮発成分除去工程(2)の開始とともに樹脂混合物中の水分など揮発成分の低下が始まり、最終的に大部分の揮発成分が除去されるが、混合工程(1)と同時に行う場合には混合工程(1)の開始とともに混合物中の揮発成分の蒸発が始まり、揮発成分の低下が始まる。
さらに、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類の混合物の組成を高度に均一とする場合には、混合工程(1)及び揮発成分除去工程(2)の後に、大部分の揮発成分が除去された実質的に無溶媒の樹脂混合物を、更に機械的に練り合わせる工程(3)〔以下、混練工程(3)ということがある〕を行うことが好ましい。少量の揮発成分が残存する時には、これらを更に除去する条件下で混練処理するのがよい。混練工程(3)は、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類の少なくとも何れか一つの成分が溶融状態の時に行われると、より均一な組成の混合物が得られるために好ましい。
本発明者等は、これらの工程、すなわち混合工程(1)及び揮発成分除去工程(2)並びに必要に応じて行われる混練工程(3)を、本発明に用いられる高分子量樹脂、低分子量樹脂、ワックス類及びこれらに随伴することのある溶媒類の何れに対しても親和性や反応性を有しない、窒素やアルゴンなどの不活性気体雰囲気中で行うことによって、得られる無溶媒の樹脂混合物をトナー用結着樹脂として用いたとき、プリンターや複写機の定着時における臭気の発生を顕著に改善できることを見出した。またこれらの工程を密閉状態で該不活性気体を流しながら行うことにより、樹脂混合物中に存在する残留単量体や溶媒などの揮発性不純物を一層効率的に除去することができる。
本発明において、前記の工程(1)及び工程(2)、並びに必要に応じて行われる工程(3)は、これらの工程が不都合なく実施できる手段であれば特に制限されず、加熱機能、混合機能及び/又は揮発成分除去機能を有する少なくとも1種の手段を用いて遂行されることができる。
上記機能を有する好ましい手段としては、例えば、加熱ニーダー、バンバリーミキサー、ロールミル、1軸連続混練機、2軸連続混練機、連続混合脱溶媒機及び乾燥機等を挙げることができる。これらの手段のうち、前記の工程(1)〜(3)を連続的に行うことができ、これらの工程を一つの装置で効率的に行えるという点で1軸連続混練機又は2軸連続混練機を用いることが好ましい。
2軸連続混練機には各種あるが、中でも複数のパドルを固定したセルフクリーニング性を有する2本の回転軸又はセルフクリーニング性を有する2本のスクリューを有し、特に、パドルが混練機の胴体に内接して回転するとともに、2軸の相対するパドルが相互に接触し合って回転する2軸連続混練機は、混練効果が高く、また作業性が良好であるという観点からより好ましい。さらに好ましい2軸連続混練機は、粘度10〜108mPa・sの流体をパドル又はスクリューの回転により投入口から排出口まで搬送し得るものである。このような2軸連続混練機は、それ自体公知であり、例えば(株)栗本鉄工所からKRCニーダー(商品名)として製造、販売されているものを挙げることができる。
なお、上記「セルフクリーニング性」とは、パドル又はスクリューに混合物が残留付着することがほとんどなく、使用後特別に洗浄処理を必要としないことを意味する。
上記の装置を用いれば、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類を該装置の撹拌軸に固定されたスクリュー又はパドルの回転により混合して、前記混合工程(1)及び混練工程(3)を実施することができる。また揮発成分除去工程(2)は、通常、装備されている加熱ジャケット又は電熱ヒーターにより、混合物中の主たる揮発成分の蒸発平衡温度以上に加熱することにより実施することができるが、加熱に加えて装置内に不活性気体を流したり、装置内を減圧状態にすることによってより効率的に行うことができる。
また揮発成分除去処理を行う別法として、例えば上記混合物を必要に応じて加熱後、減圧域に導入し水分を蒸発させる、それ自体公知の、所謂フラッシュ法によって実質的に無溶媒の状態とする方法を挙げることができる。
本発明方法における混合工程(1)及び揮発成分除去工程(2)は、単一の装置で行うこともできるし、別々の複数の装置で行うこともできるが、作業の容易さやコストの低廉さ等の観点から単一の装置で行うことが好ましい。
更に混練工程(3)を行う場合にも、混合工程(1)、揮発成分除去工程(2)及び混練工程(3)をそれぞれ別々の装置で行うこともできるし、また混合工程(1)及び揮発成分除去工程(2)を単一の第1の装置で行い、混練工程(3)を別の第2の装置で行うか、又は混合工程(1)を第1の装置で行い、揮発成分除去工程(2)及び混練工程(3)を別の第2の装置で行うこともできる。さらに混合工程(1)、揮発成分除去工程(2)及び混練工程(3)を単一の装置で行うことも可能である。これらの方法の中では、特に高度に均一な無溶媒樹脂混合物を得るという観点から、混合工程(1)及び揮発成分除去工程(2)を単一の第1の装置で行い、混練工程(3)を別の第2の装置で行うのが好ましく、作業性の良さの観点から、混合工程(1)、揮発成分除去工程(2)及び混練工程(3)を単一の装置で行うことが特に好ましい。
上記の混合工程(1)及び揮発成分除去工程(2)を単一の第1の装置で行い、混練工程(3)を別の第2の装置で行う場合には、該工程(1)及び工程(2)を終えての第1の装置の排出口から得られる樹脂混合物の水分含有率は、20重量%以下であることが好ましく、5重量%以下であることがより好ましい。
以下、図面により本発明方法を一層詳細に説明する。
図1〜図3には、本発明に好適に使用できる密閉型2軸連続混練機の構造が模式的に示されている。図1は概略平面図であり、図2は概略側面図であり、図3は、図1におけるA-A’に沿って切断し矢印の方向に見たときの概略断面図である。
次に、図1〜図3に従って、密閉型2軸連続混練機を用いて、混合処理、水分除去処理を並行して施し、更に混練処理を行う態様を説明する。
上記の2軸連続混練機は多数のパドル1を固定した2本の回転軸2が設けられており、これらのパドル1は、図3に示すとおり互いに噛み合った状態でモーター3によって回転する。多数のパドル1を固定した2本の回転軸2は、周囲を加熱ジャケット8で覆われた胴体11中に封入されており、パドル1の表面と胴体11の内壁面との間の空隙部分が混合室12をなしている。加熱ジャケット8は、その内部に設けられた熱媒体用配管13中を流れる蒸気、オイルなどの熱媒体の循環により、又は電熱ヒーターなど(図示せず)により加熱される。原料供給口4〜6からは、溶融状態の無溶媒樹脂である低分子量樹脂、水性分散液の形体である高分子量樹脂及び、溶融状態又は水性分散液の形体であるワックス類がそれぞれ別々に、連続的に混合室12に供給される。また高分子量樹脂及びワックス類が共に水性分散液の形体であるときには、これらを予め混合したものを1つの原料供給口から供給することもでき、この場合には原料供給口4〜6のうちの1つを封止しておけばよい。供給された低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類は、混合室12中で、加熱ジャケット8からの熱を受けて低分子量樹脂のガラス転移点以上の温度まで加熱され、回転軸2の回転運動によって撹拌、混合され、且つ水分などの揮発成分を分離しつつ、排出口7方向に樹脂混合物として移送される。
これらの低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類の供給及び混合、並びに以下に記す水分などの揮発成分の除去は、密閉状態で、且つ気体導入口9から導入される、窒素など供給原料及び生成混合物に対して不活性な気体の流通雰囲気下で行われる。
上記の供給原料中の水分など揮発成分は、窒素などの不活性流通気体と共に蒸発口10から排出される。通常、移動する樹脂混合物と胴体11の内壁との間に空隙が生じる様に低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類の供給速度が調整され(図示せず)、蒸発した揮発成分はこの空隙を経由して、導入不活性気体と共に蒸発口10から排出される。
原料供給口4〜6近辺では水分など揮発成分が多量に存在するため、混合物の温度は100〜110℃であるが、揮発成分の減少と共に混合物の温度は上昇し、最終的に混合物中の大部分の揮発成分が除去され、その後、好ましくは低分子量樹脂が溶融する温度で、混練処理が行われる。この混練処理により、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類はより一層均一に分散される。混練処理が行われる樹脂溶融領域においても残留揮発成分は蒸発して不活性気体と共に蒸発口10から排出される。
排出口7から得られた樹脂は目的とする用途によって、更に連続的に他の装置に導入しペレット状、フレーク状等に加工することもできる。
上記のような2軸連続混練装置を用いて混合処理、揮発成分除去処理及び混練処理を行う場合、加熱ジャケット8の加熱温度、混合処理、揮発成分除去処理及び混練処理を行うための滞留時間、その他の条件等は、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類のそれぞれの種類、樹脂水性分散液形体の高分子量中の水分量などこれら供給成分中の揮発成分量、それら成分の供給速度、不活性気体の流通速度、排出口7から得られる無溶媒の樹脂混合物の所期の組成及び水分量、装置の処理能力、その他の要因によってきまるものであり、一概に述べることはできないが、上記の要因が特定されれば、理論的にかつ実験的に、上記の諸条件を設定することは容易である。
一般的には、加熱温度を上げる等の方法により水分など揮発成分除去速度を高めると、混合処理及び水分除去処理を行う時間及び装置内の領域が短縮され、混練処理を行う時間及び装置内の領域が拡大される。
低分子量樹脂及び高分子量樹脂が、例えばポリスチレン樹脂で、それぞれ無溶媒状態及び水性分散液の状態である場合、加熱ジャケット8の温度を120〜300℃、好ましくは160〜250℃に設定し、原料供給口4〜6から排出口7までの滞留時間を、装置の混練能力、その他の要因にもよるが、通常1〜60分、好ましくは5〜30分となるように設定することができる。
上記装置の如き揮発成分の蒸発口10を有する装置においては、該蒸発口10の開口面積を大きくすると、多量の水を含んだ樹脂混合物からの揮発成分除去処理が効率的となる。すなわち、2軸連続混練機において、胴体上部に設けられている原料供給口4〜6と、蒸発口10の開口面積の和が、胴体11の長さLと幅Dの積の15〜100%の範囲にあることが、水分除去処理を効率的に行う観点から、好ましい。上記の値が100%の場合は、2軸連続混練機の胴体11の上部が全長開口している場合であり、好ましい態様の一つである。この場合加熱ジャケット8は胴体11の上部に存在せず、胴体11の下部にのみ設けられるか、加熱ジャケット8を設けずに回転軸2内あるいはパドル1内に熱媒体用配管を設けて熱媒体を循環させることにより加熱を行うことができる。
上記の如くし得られたペレット状、フレーク状など無溶媒状態の樹脂混合物は、耐オフセット性、定着性、トナースペント及びフィルミング防止性、保存時の耐ブロッキング性(非凝集性)、画像形成時の現像性等が良好で、且つ臭気発生の少ない卓越した静電荷像現像用トナー製造が可能な結着樹脂として使用することができる。
静電荷像現像用トナーの製造は、このようにして得られたトナー用結着樹脂に、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、離型剤等の添加剤を配合して均一に混合溶融し、溶融混合物を冷却後必要に応じ粗砕した上ジェットミル等で微粉砕のち、分級機で分級することにより、所望の粒子径の静電荷像現像用トナーを得ることができる。
上記の着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び合成染料を挙げることができ、無機顔料または有機顔料が好ましく用いられ、また、一種若しくは二種以上の顔料及び/または一種若しくは二種以上の染料を組み合わせて用いることもできる。着色剤の使用量はトナー用結着樹脂100重量部に対して1〜200重量部であることが好ましく、3〜150重量部が更に好ましい。
上記無機顔料としては、例えば、亜鉛粉、鉄粉、銅粉等の金属粉系顔料;例えば、マグネタイト、フェライト、ベンガラ、酸化チタン、亜鉛華、シリカ、酸化クロム、ウルトラマリーン、コバルトブルー、セルリアンブルー、ミラネルバイオレット、四酸化三鉛等の金属酸化物系顔料;例えば、カーボンブラック、サーマトミックカーボン、ファーネスブラック等のカーボン系顔料;例えば、硫化亜鉛、カドミウムレッド、セレンレッド、硫化水銀、カドミウムエロー等の硫化物系顔料;例えば、モリブデンレッド、バリウムエロー、ストロンチウムエロー、クロムエロー等のクロム酸塩系顔料;例えば、ミロリブルー等のフェロシアン化塩系顔料;などを挙げることができる。
また有機顔料としては、例えば、ベンジジンエロー、ベンジジンオレンジ、パーマネントレッド4R、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ブリリアントスカーレットG、ボンマルーンライト等のアゾ系顔料;例えば、オレンジII、アシットオレンジR、エオキシン、キノリンエロー、タートラジンエロー、アシッドグリーン、ピーコックブルー、アルカリブルー等の酸性染料を沈澱剤で沈澱させた酸性染料系顔料;例えば、ローダミン、マゼンタ、マカライトグリーン、メチルバイオレット、ビクトリアブルー等の塩基性染料をタンニン酸、吐酒石、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸などで沈澱させた塩基性染料系顔料;例えば、ヒドロキシアントラキノン類の金属塩類、アリザリンマーダーレーキ等の媒染染料系顔料;例えば、フタロシアニンブルー、スルホン化銅フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料;並びに、例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、カルバゾールジオキサンバイオレット等のキナクドリン系顔料及びジオキサン系顔料;などを挙げることができる。
前記の合成染料としては、アクリジン染料、アニリン黒、アントラキノン染料、アジン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、ベンゾ及びナフトキノン染料、インジゴ染料、インドフェノール、インドアニリン、インダミン、ロイコ建染メ染料エステル、ナフタールイミド染料、ニグロシン、インジュリン、ニトロ及びニトロソ染料、オキサジン及びジオキサジン染料、酸化染料、フタロシアニン染料、ポリメチン染料、キノフタロン染料、硫化染料、トリ及びジアリルメタン染料、チアジン染料、キサンテン染料等を挙げることができるが、好ましくは、アニリン黒、ニグロシン染料、アゾ染料が用いられ、さらに好適なものとしては、アゾ染料のうち分子中にサリチル酸、ナフトエ酸または8-オキシキノリン残基を有し、クロム、銅、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属と錯塩を形成するものが用いられる。
前記の帯電制御剤としては、プラス用としてニグロシン系の電子供与性染料、その他、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、キレート、顔料、フッ素処理活性剤等を挙げることができ、また、マイナス用として電子受容性の有機金属錯体、キレート化合物、その他、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、酸基過剰のポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等を挙げることができる。
トナーには、必要に応じて、更に流動性向上剤を添加して用いてもよい。流動性向上剤としては、トナー粒子に添加することにより、流動性が添加前後を比較すると増加しうるものであれば、使用可能である。例えば、疎水性コロイダルシリカ微粉体、コロイダルシリカ微粉体、疎水性酸化チタン微粉体、酸化チタン微粉体、疎水性アルミナ微粉体、アルミナ微粉体、それらの混合粉体等が挙げられる。
以上の如くして製造されたトナーは、トナーとキャリアからなる二成分系現像剤として、特に樹脂被覆層を有するキャリアを使用する現像剤に好適に用いられる。樹脂被覆層を有するキャリアとしては、一般に鉄、ニッケル、フェライト、ガラスビーズよりなるキャリア核体粒子の表面を絶縁性樹脂の被覆層により被覆したキャリアが代表的なものであり、絶縁性樹脂材料としては、一般に、フッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂が代表的なものとして挙げられる。
本発明により得られる静電荷像現像用トナーと樹脂被覆層を有するキャリアとを成分とする二成分系現像剤を用いた場合、キャリア粒子の表面にトナー粒子が付着して汚染されるスペントが著しく少なく、キャリアとトナーの摩擦帯電特性を制御することが可能であり、耐久性に優れ使用寿命が長い点で特に高速の電子写真機に好適である。
また本発明により提供されるトナーは、二成分系現像剤のみに限定されるものではなく、キャリアを用いない一成分系現像剤、例えばトナー中に磁性粉を含有した磁性一成分トナー、トナー中に磁性粉を含有しない非磁性一成分トナーにも適用できる。
さらにトナーの製造に際しては、本発明の製造方法により得られる結着樹脂以外に他のスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の結着樹脂を補助的にブレンドして使用してもよいが、これらの補助的な結着樹脂の全結着樹脂中に占める割合は30重量%以下であることが好ましい。
さらにまた、本発明の製造方法により静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造する際に、低分子量樹脂、高分子量樹脂及びワックス類と共に、前記の各種添加剤を配合することにより直接トナーを製造することもできる。
次に本発明を、実施例、比較例、製造例によりさらに具体的に説明する。得られたトナーの試料については以下の試験法に従ってその評価を行った。
1. 残存水分の測定
カールフィッシャー式水分計、本体CA-05型、気化機VA-05〔商品名;(株)ダイヤインスツルメント製〕を用いて測定した。トナーの試料0.5gを精秤し、気化機VA-05に投入して所定の方法により残存水分の測定をした。
2. 残存単量体の測定
トナーの臭気発生の主原因となる結着樹脂中に残存する単量体の量を、次の方法により測定した。
「DB-WAX」〔商品名;J&W Scientific社製〕カラムを装着したガスクロマトグラフィー(GC)装置「GC-14A」〔商品名;(株)島津製作所製〕を用い、結着樹脂試料をクロロホルムに2.5重量%の濃度となるように溶解・濾過して、濾液を3μL注入して測定を行った。なお試料中の単量体濃度は、別途作成した各単量体の検量線より算出した。
3. トナー粒子径の測定
トナーの試料を電解液ISOTON R-II〔商品名;コールター・サイエンティフィック・ジャパン(株)製〕に添加してよく分散させた後、コールターカウンターTA-II型〔商品名;ベックマン・コールター社製〕の濃度計にて5%程度になるよう分散液を調整して、所定の方法によりトナーの体積平均粒子径を測定した。
4. トナー保存性
磁性及び非磁性トナーを100mlのポリエチレン製のビンに容れてしっかり蓋をし、50℃の条件下に16時間放置したのち、「ホソカワミクロンパウダテスタ PT-E」〔商品名;ホソカワミクロン(株)製〕を用いて、目開き350μmの篩上にサンプルを載せ振動させて篩上の残留量を求め、次式によりトナー凝集物残存量の値とし、これに基づいて次の通り評価を行った。
◎:凝集物残存量が50%未満。
○:凝集物残存量が50%以上70%未満。
△:凝集物残存量が70%以上90%未満。
×:凝集物残存量が90%以上。
5. 印字試験1(非磁性トナー)
非磁性トナーの試料5重量部にシリコン樹脂被覆キャリア「F141-1030」〔商品名;パウダーテック(株)製〕95重量部配合したものを用い、市販の高速複写機「Konica Sitios
7075」〔商品名;複写速度75枚/分;シャープ(株)製〕の定着部を可変温度に改造して、複写機用普通紙(75g/m2)に対する画像面積5%の画像チャートの印字試験を行った。
5-1. 画像定着試験
画像定着部の温度を130℃から200℃まで変化させて画像定着試験を行い、画像定着可能温度を測定した。
5-2. 耐オフセット性試験
画像定着部の温度を200℃に設定して1000枚連続印字を行ってから白紙を印字して、トナーオフセットによる白紙の汚れ具合と加熱ロールの汚れの程度を目視により観察して、以下の基準に従って耐オフセット性の評価とした。
○:白紙及び加熱ロール共に汚れなし。
△:白紙に汚れはないが、加熱ロールにわずかに汚れが認められる。
×:白紙上に汚れが認められる。
5-3. 印字密着性試験
前(5-2)項における連続印字により得られた1000枚目の印字の表面に、スコッチメンディングテープ〔商品名;住友スリーエム(株)製〕の粘着面を載せ、1kgの円盤の厚さ16mmの円周部分を当接して1往復させた後、メンディングテープを剥がし、テープ貼着前とテープ剥離後の画像濃度をマクベス反射濃度計〔商品名;マクベス・コールター社製〕を用いて測定し、その結果から次式により求められる印字の定着率の値に基づいて、普通紙に対する試料トナーの印字密着性を次の通り評価した。
○:定着率95%以上。
△:定着率95%以上95%未満。
×:定着率90%未満。
5-4. 連続印字試験
画像定着部の温度を200℃に設定して10万枚の連続印字を行い、連続印字終了後の感光体へのトナーフィルミングの度合(フィルミング防止性)及び最終印字画像の状態を調べ、以下の基準に従って耐オフセット性及び最終印字画像の状態の評価とした。
フィルミング防止性の評価基準
○:感光体へのトナーフィルミングなし。
△:感光体へのフィルミングは少し見られるが、画像への影響は少ない。
×:感光体へのフィルミング多く実用上の画像として問題がある。
最終印字画像の状態−最終印字画像5枚と初期印字画像5枚を比較観察
○:初期印字画像と同様、汚れやカブリがなく鮮明。
△:汚れやカブリが少し見られるが、画像への影響が少ない。
×:汚れやカブリが多く実用上の画像として問題がある。
6. 印字試験2(磁性トナー)
磁性トナーの試料を用い、市販のレーザープリンター「LaserJet 5」〔商品名;印字速度12枚/分;ヒューレットパッカード社製〕を改造して、可変温度で定着できる外部定着器を用い、複写機用普通紙(75g/m2)に対する画像面積5%の画像チャートの印字試験を行った。
6-1. 画像定着試験
画像定着部の温度を130℃から200℃まで変化させて画像定着試験を行い、画像定着可能温度を測定した。
6-2. 耐オフセット性試験
画像定着部の温度を200℃に設定して5枚連続印字を行ってから白紙を印字して、トナーオフセットによる白紙の汚れ具合と加熱ロールの汚れの程度を目視により観察して、以下の基準に従って耐オフセット性の評価とした。
○:白紙及び加熱ロール共に汚れなし。
△:白紙に汚れはないが、加熱ロールにわずかに汚れが認められる。
×:白紙上に汚れが認められる。
6-3. 印字密着性試験
前(6-2)項における連続印字により得られた5枚目の印字を用いる以外は前(5-3)項の方法と同様に試験を行い、同様の数式により印字の定着率の値を求め、同様の評価基準に従って普通紙に対する試料トナーの印字密着性を評価した。
○:定着率95%以上。
△:定着率90%以上95%未満。
×:定着率90%未満。
6-4. 印字画像状態試験
前(5-2)項における連続印字により得られた最終印字画像5枚の画像状態を目視により観察し、以下の基準に従って印字画像状態の評価とした。
○:初期印字画像と同様、汚れやカブリがなく鮮明。
△:わずかに汚れやカブリが発生するが実用上問題ないレベルである。
×:汚れやカブリが発生し実用上問題あり。
〔低分子量樹脂の作製〕
製造例1
撹拌機、加熱装置、冷却装置、温度計及び滴下ポンプを備え、210℃に制御されているオートクレーブ中に、スチレン(St)100重量部とジ-t-ブチルペルオキシド0.5重量部とを均一に混合した単量体混合液を30分で連続添加し、更に温度210℃に保った状態で30分保持して塊状重合を行い、無溶媒の低分子量スチレン系樹脂を得た。得られた低分子量樹脂は、分子量ピーク値MpLが4,500で、重量平均分子量MwLが5,100、数平均分子量MnLが2,400であり、MwLとMnLとの比MwL/MnLが2.1であった。
〔高分子量樹脂の作製〕
製造例2
撹拌機と滴下ポンプを備えた容器に、脱イオン水27重量部及びアニオン性乳化剤「ネオゲンR」〔商品名;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム;第一工業製薬(株)製〕1重量部を仕込んで撹拌溶解した後、St 75重量部、アクリル酸ブチル(BA)25重量部及びジビニルベンゼン(DVB)0.05重量部からなる単量体混合液を滴下しながら攪拌して単量体乳化液を得た。
次に、撹拌機、圧力計、温度計及び滴下ポンプを備えた耐圧反応容器に、脱イオン水120重量部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温し、上記単量体乳化液の15重量%を添加し、さらに2重量%過硫酸カリウム水溶液1重量部を添加して80℃で初期重合を行った。初期重合終了後、85℃に昇温して残りの単量体乳化液及び2重量%過硫酸カリウム4重量部を3時間で添加し、その後、同温度にて2時間保持し、平均粒子径130nm、固形分濃度40重量%のスチレン・アクリル系樹脂の水性分散液を得た。
重合反応は安定に進行し、得られた樹脂の重合転換率も高かった。樹脂水性分散液を超遠心分離器で樹脂を分離後、GPCにより分子量を測定した結果、重量平均分子量(MwH)97万、分子量ピーク値(MpH)72万であった。
〔静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造〕
実施例1
図1〜3に模式的に示した連続混練機である「KRCニーダー」〔商品名;(株)栗本鐵工所製〕を用い、ジャケット温度を200℃に設定して、これに製造例1の低分子量樹脂60重量部(有効成分量約60重量部)並びに、製造例2の高分子量樹脂水性分散液100重量部(有効成分量約40重量部)及び「ハイテックP-5060S」〔商品名;低分子量ポリプロピレン系ワックスエマルジョン、ワックスの軟化点145℃、有効成分40重量%;東邦化学工業(株)製〕(P5060)5重量部(有効成分2重量部)を予め混合したものを別々の材料供給口(例えば図1の4及び6)から連続的に添加しながら、加熱・混合操作を行い、水分及び溶媒を蒸発・除去して均一に混合されたWAXを含有した無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。得られた結着樹脂について、前記の残存水分及び残存単量体の測定法に従って測定したところ、残存水分は0.1重量%以下、残存単量体含有量は100ppmであった。
実施例2〜5及び比較例1
実施例1において、P5060の配合量を変え、又はこれを配合しない以外は実施例1と同様にして無溶媒の静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。低分子量樹脂、高分子量樹脂及びP5060それぞれの配合量(有効成分量)並びに、得られた結着樹脂の残存水分及び残存単量体含有量を表1に示す。
実施例6、比較例7
実施例1において、P5060を5重量部(有効成分約2重量部)用いる代わりに、「ケミパールWP100」〔商品名;低分子量ポリプロピレン系ワックスエマルジョン、ワックスの軟化点148℃、有効成分40重量%;三井化学(株)製〕(WP100)5重量部(有効成分約2重量部)又は「ビスコール330P」〔商品名;低分子量ポリプロピレン系ワックス、軟化点152℃、有効成分100重量%;三洋化成工業(株)製〕(V330P)2重量部を用いる以外は実施例1と同様にして静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得た。使用したワックス類の種類及びその配合量(有効成分量)並びに、得られ結着樹脂の残存水分及び残存単量体含有量を表1に示す。
〔非磁性トナーの製造〕
実施例11
実施例1で得られた無溶媒の電荷像現像用トナー用結着樹脂100重量部、カーボンブラック「MA-100」〔商品名;三菱化学(株)製〕6重量部及びアゾ系鉄錯体「T-77」〔商品名;保土ヶ谷化学(株)製〕2重量部をそれぞれにヘンシェルミキサー「FM5C/1」〔商品名;三井鉱山(株)製〕に投入して混合した後、2軸の混練押出機「KRCS1ニーダー」〔商品名;栗本鐵工所(株)製〕を用いて溶融混練した。冷却後、ハンマーミル「VC-210」〔商品名;(株)ホーライ製〕で粗砕し、次いでジェットミル「LJ-N」〔商品名;日本ニューマチック工業(株)製〕で微粉砕を行った。更に得られた微粉破粉体を風力分級機「MDS-2」〔商品名;日本ニューマチック工業(株)製〕を用いて分級を行い5〜20μmの粒子を得た後、疎水性シリカ「TG-308F」〔キャボット・スペシャルティ・ケミカルズ社製〕1重量部を加えて混合し、非磁性トナーを得た。
得られた非磁性トナーを用いて、前記の各種試験を行った。トナーの平均粒子径及びトナー保存性などのトナー特性を表2に、印字試験1によるトナーの各種印字物性試験の結果を表3に示す。
実施例12〜15
実施例11において、実施例1で得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いる代わりに実施例2〜4、実施例6及び実施例7の何れかで得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂を用い、以下実施例1と同様にして非磁性トナーを得た。得られた非磁性トナーを用いて、前記の各種試験を行った。トナーの配合組成及びトナー特性を表2に、印字試験1によるトナーの各種印字物性試験の結果を表3に示す。
比較例11
実施例11において、実施例1で得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いる代わりに比較例1で得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂100重量部を用い、さらにポリプロピレン(PP)系ワックス「ケミパールWP100」5重量部を添加する以外は実施例1と同様にして非磁性トナーを得た。得られた非磁性トナーを用いて、前記の各種試験を行った。トナーの配合組成及びトナー特性を表2に、印字試験1によるトナーの各種印字物性試験の結果を表3に示す。
〔磁性トナーの製造〕
実施例17
実施例11において、カーボンブラック「MA-100」6重量部を用いる代わりにマグネタイト「BL-200」〔商品名;チタン工業(株)製〕80重量部を用いる以外は実施例1と同様にして、平均粒子径10.0μmの磁性トナーを得た。得られた磁性トナーを用いて、前記のトナー保存性試験及び印字試験2に従ってトナーの物性試験を行った。非磁性トナーの配合組成及び試験結果を表3に示す。
実施例18〜21、比較例22
実施例17において、実施例1で得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いる代わりに実施例3〜7の何れかで得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂を用い、以下実施例17と同様にして磁性トナーを得た。得られた磁性を用いて、前記のトナー保存性試験及び印字試験2に従ってトナーの物性試験を行った。非磁性トナーの配合組成及び試験結果を表3に示す。
比較例12
実施例17において、実施例1で得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂を用いる代わりに比較例1で得られた電荷像現像用トナー用結着樹脂100重量部を用い、さらにポリプロピレン系ワックス「ビスコール330P」9重量部を添加する以外は実施例17と同様にして磁性トナーを得た。得られた磁性を用いて、前記のトナー保存性試験及び印字試験2に従ってトナーの物性試験を行った。非磁性トナーの配合組成及び試験結果を表3に示す。