JP3576373B2 - 静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電荷像を現像するためのトナー用結着樹脂の製造方法及びトナーの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
静電荷像を現像する方法として乾式現像方式が一般的であり、その乾式現像においての定着方式としては種々のものが知られているが、特に加熱ロ−ラ定着機に代表される接触加熱定着方式が主流である。この方式においては、定着時に溶融したトナーの一部が加熱定着ローラに付着して転写紙を汚染するいわゆるオフセット現象が生じるという問題があり、このような現象が生じないようなトナーの開発がなされている。
【0003】
一般に、静電荷像現像用トナ−は樹脂成分、顔料や磁性粉もしくは染料からなる着色剤成分および離型剤、電荷制御剤等の添加剤成分によって構成されている。
従来より定着温度において確実に定着が達成される目的で、ポリエステル樹脂を結着樹脂としたトナーが知られているが、定着性が良い反面、接触加熱ロ−ラにトナ−の一部が付着することによるオフセット現象が発生し易いため、種々の改良がなされてきた。
例えば、特開昭54−114245、特開平2−161464にはポリエステル樹脂とスチレン系高分子量樹脂とを混合する方法が開示されている。しかしながら、本来ポリエステル樹脂とスチレン系樹脂は相溶性が悪いため、これらの樹脂を機械的に混合しても両樹脂は十分に分散混合しない。またポリエステル樹脂は極性を有するため帯電制御剤のような極性を有する添加剤がポリエステル樹脂中に偏って分散されてしまうのでトナーの帯電性が不均一となり、かぶりという現象が発生する。さらに両樹脂の分子量が異なるために溶融粘度に差異が生じ、ポリエステル樹脂の欠点であるオフセット現象が発生し易く、またスチレン系樹脂の欠点である定着強度不足が顕著となる問題を依然有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的はポリエステル樹脂とスチレン系樹脂を均一に相溶分散させることにより耐オフセット性、定着性、保存時の耐ブロッキング性(非凝集性)、像形成時の現像性等が良好である静電荷像現像用トナーを得ることができる、トナー用結着樹脂を効率的に、且つ容易に製造する方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、2軸連続混練機を用いて、ポリエステル樹脂(但し、その重量平均分子量が 200,000 以下で、GPC分子量ピークMpが 1,500 〜 30,000 で且つその重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が 20.0 未満である。)と乳化重合で得られたスチレン系樹脂乳化分散液とを共存せしめて上記ポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度で混合処理を施し、それと並行して該混練機のジャケット温度を120〜300℃に設定し、投入口から排出口までの滞留時間を1〜60分に設定して、上記混合処理によって生成した混合物から水分を蒸発により除去する水分の除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造する工程を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法を提供するものであり、好ましくは、ポリエステル樹脂の重量平均分子量Mwが200,000 以下であり好ましくは、ポリエステル樹脂のGPC分子量ピークMpが1,500 〜30,000で且つその重量平均分子量Mw/数平均分子量Mnが20.0未満であり好ましくは、樹脂乳化分散液中の樹脂の重量平均分子量が200,000 以上であり好ましくは、樹脂乳化分散液中の樹脂のGPC分子量ピークMpが300,000 〜3,000,000 である静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法を提供するものである。更に、本発明は、2軸連続混練機を用いて、ポリエステル樹脂(但し、その重量平均分子量が 200,000 以下で、GPC分子量ピークMpが 1,500 〜 30,000 で且つその重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が 20.0 未満である。)と乳化重合で得られたスチレン系樹脂乳化分散液とを共存せしめて上記ポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度で混合処理を施し、それと並行して該混練機のジャケット温度を120〜300℃に設定し、投入口から排出口までの滞留時間を1〜60分に設定して、上記混合処理によって生成した混合物から水分を蒸発により除去する水分の除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造し、更に着色剤を配合するする工程を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法を提供するものである。
【0006】
しかして、本発明によれば、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを共存せしめて混合処理を施し、それと並行又はその後に水分を除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造することにより、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂とが、均一に相溶分散した、トナー製造時の粉砕性の良い、静電荷像現像用トナー用結着樹脂を効率的に、且つ安価に製造することができる。また、本発明の製造方法により得られたトナー用結着樹脂を使用して静電荷像現像用トナーを製造すると、非オフセット性、定着性、保存時の耐ブロッキング性(非凝集性)、像形成時の現像性等において良好な静電荷像現像用トナーを製造することができるという顕著な特性を有する。
以下、本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法について詳述する。
【0007】
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法は、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを共存せしめて混合処理を施し、それと並行又はその後に水分の除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造する工程を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法である。
【0008】
上記ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを混合する処理とは、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを、機械的その他の方法で混合する操作を行うことである。
【0009】
上記混合処理は、好ましくは上記ポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度、より好ましくは該ガラス転移点よりも20℃以上の温度で行うことによりポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂との混合物の組成が均一になり、得られるトナーの諸物性が向上する。
上記混合処理による上記利点は、該混合処理中に、樹脂乳化分散液中の樹脂粒子が分散された状態でポリエステル樹脂に接触し、合一する作用が上記温度で促進されるためと考えられる。
上記混合処理は常圧で行われても、或いは水分の蒸発揮散を抑制するために圧力を加えた状態で行ってもよい。
【0010】
上記水分除去処理は、上記混合処理によって生成した混合物から水分を蒸発により除去する処理であり、大部分の水分が除去された混合樹脂組成物が得られる。このとき、混合処理により生成した上記混合物中に例えば残留モノマー、有機溶媒等の揮発性不純物が存在していれば、水分除去処理により該揮発性不純物を同時に除去することができる。
【0011】
水分除去処理は、上記混合物を水の沸点以上に加熱することにより行うことができ、さらに加熱下に減圧にすることにより効果的に行うことができる。水分除去処理を常圧で行う場合には、混合物の温度は、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを混合した当初は100℃近辺に設定されればよいが、水分の除去の進行とともに混合物中の水分量が少なくなると更に高温に設定される必要がある。
【0012】
上記水分除去処理は、上記混合処理終了後に行うことができるが、両者を並行して行うことができる。そして両者を並行して行うことが効率的であり、好ましい。
水分除去処理の開始とともに混合物の水分の低下が始まり、最終的に大部分の水分が除去されるが、混合処理と並行して行う場合には混合処理の開始とともに混合物中の水分の蒸発が始まり、水分の低下が始まる。
【0013】
更に、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂との混合物の組成を高度に均一とする場合には、混合処理及び水分除去処理の後に更に混練り処理を施すことが好ましい。
本発明において混練りとは、大部分の水分が除去された混合樹脂組成物を更に機械的に練り合わせることを言う。
この場合少量の水分を更に除去する条件下で混練りが行われても良い。
上記混練処理は、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂との少なくとも一方の樹脂の溶融状態で行われると、より均一な組成の混合物が得られるために好ましい。
【0014】
上記ポリエステル樹脂と、上記樹脂乳化分散液とを共存せしめ、混合処理、水分除去処理及び必要に応じて混練処理をする方法としては、ポリエステル樹脂と、樹脂乳化分散液とを共存せしめ、混合し、水分を除去する方法であれば特に制限はないが、例えば、ポリエステル樹脂と、樹脂乳化分散液とを、混合機能、水分除去機能及び溶融混練機能を備えた装置に添加して、混合処理及び水分除去処理を行う方法が挙げられる。
上記装置としては、加圧ニーダー、バンバリーミキサー、ロールミル、1軸連続混練機、2軸連続混練機等を挙げることができるが、連続的に処理ができ、混合処理、水分除去処理及び混練処理を一つの装置で効率的に行える点で1軸連続混練機或いは2軸連続混練機が好ましい。
【0015】
2軸連続混練機は各種あるが、なかでも複数のパドルを固定したセルフクリーニング性を有する2本の回転軸又はセルフクリーニング性を有する2本のスクリューを有し、特に、パドルが混練機の胴体に内接して回転するとともに、2軸の相対するパドルが相互に接触し合って回転する2軸連続混練機が混練効果が高く、又作業性が良好であるという観点からより好ましい。また、好ましい2軸連続混練機は、粘度10cps〜1×108 cpsの流体をパドル又はスクリューの回転により投入口から排出口まで搬送し得るものである。なお、前記したセルフクリーニング性とは、パドルあるいはスクリューに混合物が残留付着することがほとんどなく、使用後特別に洗浄処理を必要としないことを意味する。
このような2軸連続混練機は、それ自体公知であり、例えば(株)栗本鉄工所からKRCニーダー(商品名)として製造、販売されている。
【0016】
上記装置により、混合処理及び混練処理は上記装置の攪拌軸に固定されたスクリューあるいはパドルの回転により混合物を混合して施すことができる。また、水分除去処理は通常装備されている加熱ジャケットあるいは電熱ヒーターで混合物を前記混合物中の水の沸点以上に加熱する、あるいは加熱に加えて装置内を減圧にすることによってより効率的に行うことができる。
また水分除去処理を行う別法として、例えば上記混合物を必要に応じて加熱後、減圧域に導入し水分を蒸発させる、所謂それ自体公知のフラッシュ法によって実質的に無溶媒の状態とする方法を挙げることができる。
【0017】
上記混合処理及び水分除去処理は単一の装置で行うこともできるし、別々の装置で行うこともできるが、単一の装置で行うことが装置の簡略化という観点から好ましい。
更に混練処理を行う場合には、混合処理、水分除去処理及び混練処理をそれぞれ別々の装置で行うこともできるし、混合処理及び水分除去処理を単一の第1の装置で行い、混練処理を別の第2の装置で行う、若しくは混合処理を第1の装置で行い、水分除去処理及び混練処理を別の単一の第2の装置で行うこともできるし、混合処理、、水分除去処理及び混練処理を単一の装置で行うことができるが、特に均一な混合樹脂組成物を得る場合には混合処理及び水分除去処理を単一の第1の装置で行い、混練処理を別の第2の装置で行うのが好ましく、特に作業性を良好に行う場合には混合処理、水分除去処理及び混練処理を単一の装置で行うことが好ましい。
混合処理及び、水分除去処理を単一の第1の装置で行い、混練処理を別の第2の装置で行う場合、混合処理及び水分除去処理を終えて第1の装置の排出口から得られる混合樹脂組成物の水分含有率は20重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0018】
図1には、好ましい2軸連続混練機の構造が模式的に示されている。図1の(イ)は概略平面図であり、(ロ)は概略側面図である。図1に従って、2軸連続混練機を用いて、混合処理及び水分除去処理を並行して施し、更に混練処理を行う態様を説明する。
【0019】
上記2軸連続混練機は多数のパドル1を固定した2本の回転軸2が設けられており、モーター3によって回転する。この回転運動により、連続的に投入口4から供給されるポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを、ポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度で、攪拌、混合しつつ、排出口5方向にこれらの樹脂を移動させる。
【0020】
一方、蒸気、オイルなどの熱媒体の循環により加熱されたジャケット6あるいは電熱ヒーター(図示せず)により加熱し、上記混合物中の水分を蒸発口7から排出する。通常、移動する混合物と加熱ジャケットの間に空間が生じる様にポリエステル樹脂及び樹脂乳化分散液の供給速度が調整され(図示せず)、蒸発した水分はこの空間を経由して蒸発口7から排出される。投入口4近辺では水分が多量に存在するため、混合物の温度は100〜110℃であるが、水分の減少と共に混合物の温度は上昇し、最終的に混合物中の大部分の水分が除去され、その後、好ましくはポリエステル樹脂が溶融する温度で、混練処理が行われる。この混練処理により、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂はより一層均一に分散される。混練処理が行われる樹脂溶融領域においても残留水分は蒸発して蒸発口7から排出される。
排出口5から得られた混合樹脂組成物は目的とする用途によって、更に連続的に他の装置に導入し、グラニュー状、ペレット状、フレーク状等に加工することもできる。
【0021】
上記のような2軸連続混練装置を用いて混合処理、水分除去処理及び混練処理を行う場合、ジャケットの加熱温度、混合処理、水分除去処理及び混練処理を行うための滞留時間、その他の条件等は、ポリエステル樹脂及び樹脂乳化分散液の種類、樹脂乳化分散液の水分量、排出口5から得られる混合樹脂組成物の、意図するポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂の分散の程度及び水分量、装置の処理能力、その他の要因によって一概に述べることはできない。しかしながら当業者にとって、上記の要因が特定されれば、理論的にかつ実験的に、上記の諸条件を設定することは容易である。
【0022】
一般的には、加熱温度を上げる、減圧にする等の方法により水分除去速度を高めると、混合処理及び、水分除去処理を行う時間及び装置内の領域が短縮され、混練処理を行う時間及び装置内の領域が拡大される。
また、例えば、樹脂乳化分散液中の樹脂が、スチレン系樹脂で、常圧で処理する場合、ジャケットの温度を120〜300℃、好ましくは160〜250℃に設定し、投入口4から排出口5までの滞留時間を、装置の混練能力、その他の要因にもよるが、通常1〜60分、好ましくは5〜30分となるように設定することができる。
【0023】
上記装置の如き水分の蒸発口7を有する装置においては、水分の蒸発口7の開口面積を大きくすると、多量の水分を含んだ混合物からの水分除去処理が効率的となる。即ち、2軸連続混練機において、胴体上部に設けられている投入口4と蒸発口7の開口面積の和が、胴体の長さと幅(各々図1のLとDに相当)の積の15〜100%の範囲にあることが、水分除去処理を効率的に行う観点から、好ましい。上記の値が100%の場合は、2軸連続混練機の胴体上部が全長開口している場合であり、好ましい態様の一つである。この場合ジャケットは胴体上部に存在せず、胴体下部に設けられるか、ジャケットを設けずに回転軸内あるいはパドル内に熱媒体を循環させる。
【0024】
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法で混合されるポリエステル樹脂は、ジオール成分、ジカルボン酸成分、必要に応じて3価以上のアルコール成分若しくは3価以上のカルボン酸成分及びそれらの等価物からなるポリエステル樹脂である。
【0025】
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族ジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸を挙げることができ、またそれらの等価物としては、上記各ジカルボン酸の低分子アルコ−ルとのエステル、例えば、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジメチル等を挙げることができる。これらのうち、特にテレフタル酸、フマル酸が好ましい。
【0026】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコ−ル、プロピレングリコ−ル、水添ビスフェノ−ルA、エーテル化ジフェノール等を挙げることができるが、エ−テル化ジフェノ−ルを主成分とするものが好ましい。
上記エ−テル化ジフェノ−ルとしては、下記化学式で表されるものを挙げることができる。
H(OR)xO−Ph−C(CH3)2−Ph−O(RO)YH
〔式中Phはフェニル基 RはC2〜C3のアルキレン基を示しx,Yは何れも1〜10
の整数である〕
【0027】
上記化学式で表せる化合物の具体例としては、ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(4,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン等を挙げる事ができる。
【0028】
上記3価以上のカルボン酸としては1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、エンポ−ル三量体酸、及びこれらの無水物、アルキルエステル、アルケニルエステル、アリ−ルエステル、その他の三価以上のカルボン酸を挙げることができる。
【0029】
上記3価以上のアルコール成分としては、ソルビト−ル、1,2,3,6−ヘキサンテトロ−ル、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリト−ル、ジペンタエリスリト−ル、トリペンタエリスリト−ル、1,2,4−ブタントリオ−ル、1,2,5−ペンタントリオ−ル、グリセロ−ル、ジグリセロ−ル、2−メチルプロパントリオ−ル、2−メチル−1,2,4−ブタントリオ−ル、トリメチロ−ルエタン、トリメチロ−ルプロパン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼンを挙げることができる。
これら3官能以上の多官能性単量体はポリエステルを構成している全アルコ−ル又は全酸成分中の30モル%未満に抑える事が好ましい。
上記ポリエステルは、公知の製法によって製造することができる。
【0030】
本発明のトナー用結着樹脂に使用されるポリエステル樹脂の分子量は、重量平均分子量Mwで表すと200,000以下が好ましく、更に好ましくは150,000以下、特に好ましくは100,000以下である。
上記Mwが上記上限値を越えると耐オフセット性は良好であるが定着性が悪くなり好ましくない
更に上記ポリエステル樹脂の分子量は、GPCの測定チャートにおける最大値を示す分子量(分子量ピーク)Mpで表すと1,500〜30,000が好ましく、更に好ましくは2,500〜25,000、特に好ましくは3,500〜20,000のものが使用される。
上記Mpが上記下限値未満であると定着性は良好であるがホット・オフセットが発生しやすくなり定着可能温度幅が狭くなり好ましくない。
また、上記Mpが上記上限値を越えると耐オフセット性は良好であるが定着性が悪くなり好ましくない。
上記のポリエステルのガラス転移点は、40〜80℃の範囲内にあることが好ましく、45〜75℃の範囲内にあることが更に好ましい。
【0031】
本発明において、ポリエステル樹脂と混合される樹脂乳化分散液は、樹脂が乳化状態に分散されたものであって、樹脂が乳化状態に分散されたものであれば特に制限はなく、いずれのものでも良いが、例えば、樹脂を水中に強制乳化分散させた樹脂乳化分散液、乳化重合で得られる樹脂乳化分散液等が挙げられるが、保存時及びポリエステル樹脂との混合時に安定であるという観点から、乳化重合で得られた樹脂乳化分散液が好ましい。
【0032】
前記ポリエステル樹脂と、上記樹脂乳化分散液とを組み合わせて使用する場合の混合割合は、上記ポリエステル樹脂と上記樹脂乳化分散液中の樹脂の合計100重量部に対し、ポリエステル樹脂が50〜95重量部、樹脂乳化分散液中の樹脂が50〜5重量部の範囲にあることが好ましく、更に好ましくは、ポリエステル樹脂が55〜85重量部、樹脂乳化分散液中の樹脂が45〜15重量部である。ポリエステル樹脂の混合割合が上記下限値未満(樹脂乳化分散液中の樹脂の混合割合が上記上限値を超える)であると、耐オフセット性は良好であるが、低温領域での定着性は不良となり、定着下限温度が上昇し好ましくない。またポリエステル樹脂の混合割合が上記上限値を超える(樹脂乳化分散液中の樹脂の混合割合が上記下限値未満)と、定着性は良好であるがホット・オフセットが発生しやすくなり、定着可能温度幅が狭くなり好ましくない。
【0033】
トナー結着樹脂中の高分子量の重合体成分として使用される樹脂乳化分散液中の樹脂の分子量は、重量平均分子量Mwで表すと200,000以上が好ましく、更に好ましくは250,000以上、特に好 ましくは300,000以上である。
上記Mwが上記下限値未満であると定着性は良好であるがホット・オフセットが発生しやすくなり定着可能温度幅が狭くなり好ましくない。
更に上記高分子量の重合体成分として使用される樹脂乳化分散液中の樹脂の分子量は、GPCの測定チャートにおける最大値を示す分子量(分子量ピーク)Mpで表すと300,000〜3,000,000が好ましく、更に好ましくは500,000〜2,000,000、特に好ましくは600,000〜1,000,000のものが使用される。
上記Mpが上記下限値未満であると定着性は良好であるがホット・オフセットが発生しやすくなり定着可能温度幅が狭くなり好ましくない。
【0034】
上記樹脂乳化分散液の樹脂の種類はポリエステル樹脂以外のトナー結着樹脂として使用されるものであれば特に制限はなく、いずれの樹脂でも良く、例えば、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、スチレンーブタジエン樹脂等が挙げられるが、トナーとしての性能が得られやすい観点からスチレン系樹脂が好ましい。
【0035】
上記スチレン系樹脂とはスチレン系単量体を主成分とする(共)重合体であり、スチレン系単量体の例としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレン、p−クロルスチレン、3,4−ジクロルスチレンなどを挙げることができるが、このうちスチレンが最も好ましい。
【0036】
上記スチレン系単量体と共重合することのできる他の単量体としては、スチレン系単量体と共重合が可能な単量体であれば特に制限はないが、(メタ)アクリル系単量体が好ましく、(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタアクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ステアリル等があり、特にアクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸ラウリル等が挙げられる。
この(メタ)アクリル系成分は、前記スチレン系成分のモノマ−と通常の条件下で重合せしめて得られる共重合体のガラス転移温度が30〜80℃の範囲内にあることが好ましく、更に35〜70℃の範囲内にあることが好ましい。
【0037】
上記単量体としては、前記の単量体のほかに、重合性の二重結合を二個以上持つ、多官能の架橋性の単量体を挙げることができ、例えばジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン等の芳香族ジビニル化合物、エチレングリコ−ル・ジメタアクリレ−ト、テトラエチレングリコ−ル・ジメタクリレ−ト、1,3ブタンジオ−ル・ジメタクリレ−ト、1,6ヘキサンジオ−ル・ジアクリレ−ト、アリ−ル・メタクリレ−ト、等のジエチレン性カルボン酸エステル、N,Nジビニルアニリン、ジビニルエ−テル、ジビニルスルフイド等がある。ジビニルベンゼン、エチレングリコ−ルジメタアクリレ−ト、1,6ヘキサンジオ−ル・ジアクリレ−トが好適に使用される。
また、架橋性の単量体の共重合割合は、樹脂を構成するモノマ−のうち、0〜2重量%のものが好適に使用され、更に好ましくは0.01〜1重量%、特に好ましくは、0.02〜0.8重量%のものが好適に使用される。
【0038】
上記樹脂乳化分散液の粒子径は0.03μm〜1μmの範囲であることが好ましい。上記樹脂乳化分散液の粒子径が1μmを越えると、低分子量重合体との相溶分散性に劣り、得られるトナーの定着性が悪くかつ、ホット・オフセットが発生しやすくなり定着可能温度幅が狭くなり好ましくない。また、上記樹脂乳化分散液の粒子径が0.03μm未満であると、乳化重合に用いる乳化剤量の増大をまねき、得られるトナーの抵抗が低くなり好ましくない。
特にポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液の樹脂との相溶分散性は、トナーの定着性、耐久性に関わり、相溶分散性の悪いものは、定着時いわゆるホット・オフセットとコールド・オフセットが同時に発生し好ましくない。
又相溶分散性の悪いものは、トナーのスペント化及び微細化が起き易く、現像剤の寿命が短かい。
【0039】
トナー用結着樹脂中の高分子量の重合体成分として使用される上記の樹脂乳化分散液を、乳化重合で得る場合には、単量体、水溶性触媒、乳化剤及び重合媒体としての水を共存せしめ、重合温度に加熱することにより行われる。
【0040】
上記原材料は、全量重合槽中に添加し、重合温度に昇温して重合を進めてもよいし、その一部或いは全部を重合温度に設定した重合層に断続的或いは連続的に添加して重合を進めることができる。また、単量体は単独で重合層に添加してもよいし、予め乳化剤水溶液中に単量体を乳化し、その単量体乳化物を添加しても良い。
重合温度としては触媒の分解する温度であれば特に制限はなく、いずれの温度でもよいが、一般には30〜150℃、好ましくは40〜100℃である。
【0041】
上記乳化重合で使用できる開始剤は、任意の従来の水溶性開始剤を使用することができる。
一群の適当な開始剤は、過酸化水素、ある特定のアルキルハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、過硫酸塩、ぺルエステル、ぺルカーボネート、ケトンパーオキサイドおよびアゾ開始剤のようなフリーラジカル開始剤である。適当なフリーラジカル開始剤の具体的な例としては、過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、tert−アミルハイドロパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)、および2,2’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)が挙げられる。
フリーラジカル開始剤の使用量は、前単量体重量に基づいて0.03%〜1%の量が好ましく、0.05%〜0.8%の量が更に好ましく、0.1〜0.5%が特に好ましい。
【0042】
水溶性過酸化物と水溶性還元剤とを組み合わせた水溶性レドックス開始剤もまた使用できる。水溶性レドックス開始剤に使用される過酸化物としては上記の過酸化物が使用でき、また還元剤としては、重亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、次亜リン酸塩、アスコルビン酸、ホルムアルデヒド−スルホキシル酸ナトリウムなどが使用できる。
レドックス触媒の過酸化物の使用量は、全単量体重量に基づいて、0.03〜1%の範囲で用いられる。
更に上記レドックス触媒に加えて、微量の還移金属、例えば硫酸第一鉄、モール塩、硫酸銅等の併用も使用できる。
【0043】
本発明の乳化重合で使用する乳化剤としてはアニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、カチオン性乳化剤、両性乳化剤、反応性乳化剤のいずれをも使用することができ、これらの乳化剤は単独使用あるいは併用して使用することができ、いずれも公知の乳化剤を使用することができる。
【0044】
上記の如く乳化重合を行い、樹脂の乳化分散液を得るが、必要に応じてアンモニア水、アミン水溶液、水酸化アルカリの水溶液等を乳化分散液に加え、pH調節してもよい。このような樹脂乳化分散液は、通常、pHが通常2〜10の範囲内であることが望ましく、固形分濃度が、一般に10〜70重量%の範囲内、好ましくは20〜60%、更に好ましくは30〜50%のものが好適に用いられる。
また、樹脂乳化分散液の粘度は通常10000cps以下、(BH型回転粘度計、25℃、20rpm;粘度測定条件以下同様)であることが望ましい。
【0045】
乳化重合を行うと、一般に大部分の単量体は重合体に変化して、残存する単量体量は極めて微量である。しかしながら、残留単量体濃度が用途によっては充分低くない場合には、例えば、1種類またはそれ以上の開始剤または還元剤の重合後の添加、蒸気あるいは空気の吹き込み等の方法により残存単量体を減少させても良い。
本発明の高分子量重合体が製造される方法は、水系の乳化重合であるが、アルコール等の水溶性溶媒を併用しても良い。
【0046】
上記の如くして、混合処理及び水分除去処理を施して得られたペレット状、フレーク状等の無溶媒樹脂混合組成物は、トナー用結着樹脂として使用することができ、着色剤、必要に応じて帯電制御剤、磁性体、離型剤等の添加剤を配合して均一に混合溶融し、溶融混合物を冷却後必要に応じ粗砕した上ジェットミル等で微粉砕のち、分級機で分級することにより、所望の粒子径の静電荷像現像用トナーを得ることができる。
【0047】
上記着色剤の使用量は混合樹脂組成物100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、3〜150重量部が更に好ましい。
上記着色剤としては、無機顔料、有機顔料及び合成染料を挙げることができ、無機顔料または有機顔料が好ましく用いられ、また、一種若しくは二種以上の顔料及び/または一種若しくは二種以上の染料を組み合わせて用いることもできる。
【0048】
上記無機顔料としては、金属粉系顔料、金属酸化物系顔料、カ−ボン系顔料、硫化物系顔料、クロム酸塩系顔料、フェロシアン化塩系顔料を挙げることができる。
【0049】
上記金属粉系顔料の例としては、例えば、亜鉛粉、鉄粉、銅粉等を挙げることができる。
上記金属酸化物系顔料としては、例えば、マグネタイト、フェライト、ベンガラ、酸化チタン、亜鉛華、シリカ、酸化クロム、ウルトラマリ−ン、コバルトブル−、セルリアンブル−、ミネラルバイオレット、四酸化三鉛等を挙げることができる。
【0050】
上記カ−ボン系顔料としては、例えば、カ−ボンブラック、サ−マトミックカ−ボン、ファ−ネスブラック等を挙げることができる。
上記硫化物系顔料としては、例えば、硫化亜鉛、カドミウムレッド、セレンレッド、硫化水銀、カドミウムイエロ−等を挙げることができる。
【0051】
上記クロム酸塩系顔料としては、例えば、モリブデンレッド、バリウムイエロ−、ストロンチウムイエロ−、クロムイエロ−等を挙げることができる。フェロシアン化塩系顔料としては、例えば、ミロリブル−等を挙げることができる。
【0052】
また、上記有機顔料としては、アゾ系顔料、酸性染料系顔料及び塩基性染料系顔料、媒染染料系顔料、フタロシアニン系顔料、並びにキナクドリン系顔料及びジオキサン系顔料等を挙げることができる。
上記アゾ系顔料としては、例えば、ベンジジンイエロ−、ベンジジンオレンジ、パ−マネントレッド4R、ピラゾロンレッド、リソ−ルレッド、ブリリアントスカ−レットG、ボンマル−ンライト等を挙げることができる。
【0053】
上記酸性染料系顔料及び塩基性染料系顔料としては、例えば、オレンジII、アシットオレンジR、エオキシン、キノリンイエロ−、タ−トラジンイエロ−、アシッドグリ−ン、ピ−コックブル−、アルカリブル−等の染料を沈澱剤で沈澱させたもの、あるいはロ−ダミン、マゼンタ、マカライトグリ−ン、メチルバイオレット、ビクトリアブル−等の染料をタンニン酸、吐酒石、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸などで沈澱させたもの等を挙げることができる。
【0054】
上記媒染染料系顔料としては、例えば、ヒドロキシアントラキノン類の金属塩類、アリザリンマ−ダ−レ−キ等を挙げることができる。
上記フタロシアニン系顔料としては、例えば、フタロシアニンブル−、スルホン化銅フタロシアニン等を挙げることができる。
上記キナクリドン系顔料及びジオキサン系顔料としては、例えば、キナクリドンレッド、キナクリドンバイオレット、カルバゾ−ルジオキサンバイオレット等を挙げることができる。
【0055】
上記合成染料としては、アクリジン染料、アニリン黒、アントラキノン染料、アジン染料、アゾ染料、アゾメチン染料、ベンゾ及びナフトキノン染料、インジゴ染料、インドフェノール、インドアニリン、インダミン、ロイコ建染メ染料エステル、ナフタールイミド染料、ニグロシン、インジュリン、ニトロ及びニトロソ染料、オキサジン及びジオキサジン染料、酸化染料、フタロシアニン染料、ポリメチン染料、キノフタロン染料、硫化染料、トリ及びジアリルメタン染料、チアジン染料、キサンテン染料等を挙げることができるが、好ましくは、アニリン黒、ニグロシン染料、アゾ染料が用いられ、さらに好適なものとしては、アゾ染料のうち分子中にサリチル酸、ナフトエ酸または8−オキシキノリン残基を有し、クロム、銅、コバルト、鉄、アルミニウム等の金属と錯塩を形成するものが用いられる。
【0056】
上記帯電制御剤としては、プラス用としてニグロシン系の電子供与性染料、その他、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、4級アンモニウム塩、アルキルアミド、キレ−ト、顔料、フッ素処理活性剤等を挙げることができ、また、マイナス用として電子受容性の有機金属錯体、キレート化合物その他、塩素化パラフィン、塩素化ポリエステル、酸基過剰のポリエステル、銅フタロシアニンのスルホニルアミン等を挙げることができる。
【0057】
上記離型剤としてはパラフィンワックス及びその誘導体、マイクロクリスタリンワックス及びその誘導体、フィッシャートロプシュワックス及びその誘導体、ポリオレフィンワックス及びその誘導体、カルナバワックス及びその誘導体等が挙げられる。誘導体は、酸化物、ビニル系モノマーとのブロック共重合体、ビニル系モノマーとのグラフト変成物も含む。
【0058】
その他、アルコール、脂肪酸、酸アミド、エステル、ケトン、硬化ひまし油及びその誘導体、植物系ワックス、動物系ワックス、鉱物系ワックス、ペトロラクタムも利用できる。
【0059】
上記トナーに更に流動性向上剤を添加して用いてもよい。
流動性向上剤としては、トナー粒子に添加することにより、流動性が添加前後を比較すると増加しうるものであれば、使用可能である。例えば、疎水性コロイダルシリカ微粉体、コロイダルシリカ微粉体、疎水性酸化チタン微粉体、酸化チタン微粉体、疎水性アルミナ微粉体、アルミナ微粉体、それらの混合粉体等が挙げられる。
【0060】
上記の如くして製造されたトナーは、鉄粉或いはガラスビ−ズなどより成るキャリアが前記トナ−に混合されたいわゆる二成分系現像剤を用いる現像法において、樹脂被覆層を有するキャリアを使用する現像剤に好適に用いられる。
更に、二成分系現像剤のみに限定するものではなく、キャリアを用いない一成分系現像剤、例えばトナ−中に磁性粉を含有した磁性一成分トナ−、トナ−中に磁性粉を含有しない非磁性一成分トナ−についても適用できる。
【0061】
樹脂被覆層を有するキャリアとしては、一般に鉄、ニッケル、フエライト、ガラスビ−ズより成る核体粒子の表面を絶縁性樹脂の被覆層により被覆したキャリアが代表的なものであり、絶縁性樹脂材料としては、一般にフッ素樹脂、シリコン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリブタジエン樹脂が代表的なものとして挙げられる。
本発明により得られる静電荷像現像用トナ−と樹脂被覆層を有するキャリアとを成分とする現像剤を用いた場合、キャリア粒子の表面にトナ−粒子が付着して汚染されるスペントが著しく少なく、キャリアとトナ−の摩擦帯電特性を制御することが可能であり、耐久性に優れ使用寿命が長い点で特に高速の電子写真機に好適である。
また、本発明の製造方法により得られる結着樹脂以外に他のスチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂等の結着樹脂を補助的にブレンドして使用してもよいが、全結着樹脂中に補助的に用いられる上記結着樹脂が占める割合は30重量%以下が好ましい。
【0062】
更に、本発明の製造方法により静電荷像現像用トナー用結着樹脂を製造する際に、ポリエステル樹脂及び樹脂乳化分散液と共に、上記の各種添加剤を配合して、直接トナーを製造することもできる。
【0063】
以下、本発明を実施例、比較例により具体的に説明する。
【実施例】
以下の実施例で使用する各試験方法を以下に説明する。
〔残存単量体測定法〕
無溶媒樹脂混合組成物中の各単量体の残存単量体量は、ガスクロマトグラフィー(GC)に、カラム(25%Thermon1000)を装着した装置を用いて、試料をクロロホルムに2.5wt%の濃度で溶解し、濾過した抽出液を3μl注入して測定を行った。
なお、試料の濃度測定に際しては、各単量体の検量線より算出した。
〔分子量測定法〕
樹脂の分子量分布測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に、カラム(東ソー(株)製:GMH×3本)を装着した装置を用いて、試料をテトラヒドロフラン(THF)の0.2wt%の濃度で溶解し、温度20℃ において1ml/minの流速で測定を行った。なお、試料の分子量測定に際しては、該試料の有する分子量が、数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の分子量の対数とカウント数が直線となる範囲内に包含される測定条件を選択した。
〔粒子径測定法〕
エマルジョンの粒子径測定は光散乱法(日機装(株)製マイクロトラック)により測定した。
トナーの粒子径の測定は、得られた樹脂粒子をコ−ルタ−マルチサイザ−[(株)日科機製]を使用し、100μオリフィスをセットし測定した。
【0064】
実施例1
(ポリエステル樹脂の調整)
ポリオキシエチレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン20.0重量部、ポリオキシプロピレン(2,2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン44.0重量部、ジエチレングリコール3.5重量部、テレフタル酸32.3重量部、ジブチル錫オキサイド0.2重量部をフラスコに仕込み、窒素フロー下において215℃の反応温度で10時間反応した。更に、減圧下で3時間の反応を行い、フラスコ内容物の軟化点が105℃に達した時点で反応を終了した。
得られたポリエステル樹脂のガラス転移点は60℃、重量平均分子量(Mw)は7,500、数平均分子量(Mn)は3,500、分子量ピークは6,000であった。
【0065】
(樹脂乳化分散液の調整)
攪拌機と滴下ポンプを備えた容器に、脱イオン水27重量部及びアニオン性乳化剤(花王(株)製:商品名ネオゲンR)1重量部を仕込み、攪拌溶解した後、スチレン75重量部、アクリル酸ブチル25重量部、ジビニルベンゼン0.05重量部からなる単量体混合液を攪拌滴下し、単量体乳化分散液を得た。
【0066】
次に、攪拌機、圧力計、温度計及び滴下ポンプを備えた耐圧反応容器に、脱イオン水120重量部を仕込み、窒素置換した後、80℃に昇温し、上記単量体乳化分散液の5重量%を耐圧反応容器へ添加し、さらに2重量%過硫酸カリウム水溶液1重量部を添加し、80℃で初期重合を行った。初期重合終了後、85℃に昇温して残りの単量体乳化分散液及び2重量%過硫酸カリウム4重量部を3時間で添加し、その後、同温度にて2時間保持し、粒子径0.15μm、固形分濃度40%のスチレン系樹脂乳化分散液を得た。
【0067】
得られた樹脂乳化分散液は重合転換率も高く、安定に重合可能であった。
樹脂乳化分散液を超遠心分離器で、樹脂を分離後、分子量を分析した結果、重量平均分子量Mwは950,000、分子量ピークMpは700,000であった。
【0068】
(混合樹脂組成物の調製)
210℃に溶融した上記ポリエステル樹脂100重量部と上記樹脂乳化分散液135重量部とを図1に示した連続混練機((株)栗本鐵工所製コニーダ:商品名KRCニーダー)を用いジャケット温度200℃にて、連続的に混合操作、加熱して水分を蒸発による除去処理及び混練操作を行い、水分が0.1重量%以下の、均一に混合された混合樹脂組成物を得た。得られた混合樹脂組成物の残存単量体は80ppmであった。
【0069】
(トナーの調製)
上記混合樹脂組成物100重量部、カーボンブラック(三菱化学(株)製:商品名カーボンブラックMA−100)6重量部、ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製:商品名ビスコール550P)2重量部、ニグロシン染料(オリエント化学(株)製:商品名ボントロンN−01)2重量部をボールミルで粉砕混合した後、140℃の熱ロールで30分間よく混練した。
冷却後、ハンマーミルで粗砕し、次いでジェットミルで微粉砕を行った。更に得られた微粉砕粉体を風力分級機にて分級を行い5〜20μmの粒子を得た後、疎水性シリカ(日本エアロジル(株)製:商品名R−972 )0.2重量部を加えて混合し、平均粒子径9.8μmのトナーを得た。
【0070】
上記トナーとシリコン樹脂被覆キャリアを用いて複写機で複写試験を行ったところ、画像の定着は140℃から可能となり225℃においても加熱定着ロールへのトナーのオフセットによる汚れはなく100,000枚の複写後もキャリアへのトナー・スペントがなく初期と同様、汚れカブリのない鮮明な画像が得られた。
【0071】
実施例2
(ポリエステル樹脂の調整)
ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン70.0重量部、ネオペンチルグリコール5.5重量部、フマル酸20.0重量部、無水トリメリット酸4.5重量部をフラスコに仕込み、窒素フロー下において200℃の反応温度で5時間反応した。更に、反応温度を230℃に変更した後、減圧下で2時間の反応を行い、フラスコ内容物の軟化点が108℃に達した時点で反応を終了した。
得られたポリエステル樹脂のガラス転移点は55℃、重量平均分子量(Mw)は15,000、数平均分子量(Mn)は4,000、分子量ピークは6,000であった。
【0072】
(樹脂乳化分散液の調整)
単量体混合物をスチレン70量部、アクリル酸ブチル20重量部、メタアクリル酸ブチル10重量部及び1,6−ヘキサンジオール・ジアクリレート0.1重量部の単量体混合物を使用し、乳化剤をネオゲンR(花王(株)製)1.2重量部とした以外は、実施例1と同様にして重合を行い、重量平均分子量(Mw)850,000、分子量ピーク(Mp)650,000、粒子径0.1μm、固形分濃度40%のスチレン系重合体樹脂乳化分散液を得た。
【0073】
(無溶媒樹脂混合組成物の調整)
200℃に溶融した上記ポリエステル樹脂100重量部と上記樹脂乳化分散液107重量部とを実施例1と同様に処理し、無溶媒樹脂混合組成物を得た。
得られた無溶媒樹脂混合組成物の残存単量体は90ppmであった。
(トナーの調整)
実施例1と同様に上記無溶媒樹脂混合組成物を用いてトナーを得、同様の複写試験を行ったところ、画像の定着は140℃より可能となり、225℃においてもオフセットによる汚れはなく、100,000枚の複写後も初期と同様汚れかぶりのない鮮明な画像が得られた。
【0074】
実施例3
実施例1の無溶媒樹脂混合組成物の調製において、連続混練機として(株)栗本鐵工所製コニーダ:商品名KRCニーダーに変えて、プラスチック工学研究所製のコンパーチブル2軸押出機を使用する以外は実施例1と全く同様にしてトナーを調整した。
実施例1と同様の複写試験を行ったところ、画像の定着は150℃より可能となり、220℃においてもオフセットによる汚れはなく、50,000枚の複写後も初期と同様汚れかぶりのない鮮明な画像が得られた。
【0075】
比較例1
(懸濁重合分散液の調製)
撹拌機と滴下ポンプを備えた容器に、脱イオン水200重量部及びポリビニルアルコール〔(株)クラレ製:商品名PVA117〕1重量部を仕込み、撹拌溶解した後、スチレン75重量部、アクリル酸ブチル25重量部、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート(日本化薬(株)製:商品名カヤエステルHTP)0.15重量部からなる単量体混合液を添加した。撹拌下に単量体混合物を分散しつつ、90℃で5時間重合し、懸濁重合樹脂分散液を得た。
次に、上記懸濁重合樹脂分散液からスチレン・アクリル酸ブチル共重合樹脂を分離した後、乾燥して該共重合樹脂を得た。
得られた上記共重合樹脂の平均粒子径は250μmであり、重量平均分子量Mwは 690,000、ピーク位置分子量Mpは 550,000であった。
【0076】
(無溶媒樹脂混合組成物の調製)
配合する樹脂として、実施例1のポリエステル樹脂100重量部と上記懸濁重合して得られた樹脂52重量部を使用する以外は、実施例1の無溶媒樹脂混合組成物の調製と全く同様にして無溶媒樹脂混合組成物の調製を行った。
【0077】
(トナーの調製)
上記無溶媒樹脂混合組成物を結着樹脂として100重量部使用する以外は実施例1と同様にしてトナーの調整を行った。平均粒子径10μmのトナーを得、同様の複写試験を行ったところ、画像の定着は加熱ロールへのオフセットが激しく、又画質のカブリの多いものであった。
【0078】
【発明の効果】
本発明の静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法は、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液とを共存せしめて混合処理を施し、それと並行又はその後に水分を除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造して静電荷像現像用トナー用結着樹脂を得ることを特徴とするものである。
【0079】
本発明によれば、ポリエステル樹脂と樹脂乳化分散液中の樹脂とが、均一に相溶分散した、トナー製造時の粉砕性の良い、静電荷像現像用トナー用結着樹脂を効率的に、且つ安価に製造することができる。また、本発明の製造方法により得られたトナー用結着樹脂を使用して静電荷像現像用トナーを製造すると、非オフセット性、定着性、保存時の耐ブロッキング性(非凝集性)、像形成時の現像性等において良好な静電荷像現像用トナーを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリエステル樹脂及び樹脂乳化分散液を共存せしめ、混合処理及び水分除去処理を施すのに好ましい2軸連続混練機であり、(イ)はその平面図であり、(ロ)はその側面図である。
【符号の説明】
1.パドル
2.回転軸
3.モーター
4.材料の投入口
5.混合生成物の排出口
6.加熱ジャケット
7.蒸発口
Claims (5)
- 2軸連続混練機を用いて、ポリエステル樹脂(但し、その重量平均分子量が200,000 以下で、GPC分子量ピークMpが1,500 〜30,000で且つその重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が20.0未満である。)と乳化重合で得られたスチレン系樹脂乳化分散液とを共存せしめて上記ポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度で混合処理を施し、それと並行して該混練機のジャケット温度を120〜300℃に設定し、投入口から排出口までの滞留時間を1〜60分に設定して、上記混合処理によって生成した混合物から水分を蒸発により除去する水分の除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造する工程を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナー用結着樹脂の製造方法。
- 上記樹脂乳化分散液中の樹脂の重量平均分子量(Mw)が200,000 以上である請求項1に記載の製造方法。
- 上記樹脂乳化分散液中の樹脂のGPC分子量ピーク(Mp)が300,000 〜3,000,000 である請求項1又は2に記載の製造方法。
- 上記ポリエステル樹脂と上記樹脂乳化分散液中の樹脂の合計100 重量部に対し、上記ポリエステル樹脂が50〜95重量部、上記樹脂乳化分散液中の樹脂が50〜5 重量部である請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 2軸連続混練機を用いて、ポリエステル樹脂(但し、その重量平均分子量が200,000 以下で、GPC分子量ピークMpが1,500 〜30,000で且つその重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が20.0未満である。)と乳化重合で得られたスチレン系樹脂乳化分散液とを共存せしめて上記ポリエステル樹脂のガラス転移点以上の温度で混合処理を施し、それと並行して該混練機のジャケット温度を120〜300℃に設定し、投入口から排出口までの滞留時間を1〜60分に設定して、上記混合処理によって生成した混合物から水分を蒸発により除去する水分の除去処理を施し、無溶媒樹脂混合組成物を製造し、更に着色剤を配合する工程を含むことを特徴とする静電荷像現像用トナーの製造方法。
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