JP3841532B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は複写機やプリンター等の画像形成装置において、感光体に形成された静電荷像を現像するのに使用されるトナーに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から静電荷像現像用トナーは、着色剤等のトナー構成成分をバインダー樹脂中において溶融混練して冷却固化した後、粉砕、分級する混練・粉砕法により製造されるのが一般的である。また、電子写真装置等の画像形成装置におけるトナーの定着方式としては、圧力定着方式、フラッシュ定着やオープン定着等の非接触加熱定着方式、熱ロール定着等の接触加熱定着方式等が採用されている。特に接触加熱定着方式は圧力定着方式に比べ高速化が可能であり、また非接触加熱定着方式に比べ熱効率が高く、比較的低温の熱源を用いることができ、装置の小型化やエネルギーの節約を図ることができるため、最も普及している定着方式である。
【0003】
近年、このような接触加熱定着方式の電子写真装置に対して、さらなる高速化や省エネルギー化が要求されている。このためトナーに対して低温定着特性が要求されている。低温定着が実現すれば電子写真装置の省エネルギー化を図れるばかりでなく、ウォームアップ時間も短縮することができ、より快適な操作性を得ることができる。
【0004】
このような接触加熱定着方式においては、例えば、熱ロール定着方式による定着時に像を構成するトナーの一部が熱ロールの表面に転移し、これが次に送られてくる転写紙に再転移して画像を汚染するオフセット現象の発生が問題となっていた。このオフセット現象を防止する技術として、例えば、ポリプロピレンワックスをオフセット防止剤(離型剤)として添加する技術(例えば特開昭49−65231号公報)が知られている。
【0005】
また、近年においては、電子写真による複写速度の高速化や多機能化に伴い、自動原稿送り装置や両面複写装置を搭載した複写機が標準になっている。これらの装置による原稿送り時、または裏面複写や多色複写時の2回目の複写工程において紙送時にローラーで複写画像表面がこすられて、画像ににじみや汚れが発生する等の問題が生じている。複数の複写画像を重ねて複写機内に一時保管したものを2回目の複写のために紙送りローラーで1枚づつ取り出す際にも同様な現象がみられ、画質の低下が引き起こされる。このような問題を有するトナーはスミア性が悪いと言われている。スミア性を改良する方法としては、混練時にポリエチレンワックスを添加することが有効であること(例えば特開平4−313762号)が知られている。
【0006】
しかしながら、オフセット性およびスミア性を同時に改良するために、上述の混練・粉砕法による混練時にポリプロピレンワックスとポリエチレンワックスを同時に添加すると、複写時にフィルミングが発生し、トナーの流動性や帯電性の低下が起こるという新たな問題が発生している。これは、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスの併用により、これらとバインダー樹脂との相溶性が一層悪化するため、ワックス、特にポリエチレンワックスが遊離し、その結果、遊離ワックスが感光体へ付着してフィルミングが発生し、さらにはトナーの流動性や帯電性が悪化すると考えられる。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は複写時のスミア、オフセットおよびフィルミングの発生が防止でき、トナーの流動性や帯電性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は少なくともポリエチレンワックスがバインダー樹脂合成時に含有せしめられた樹脂組成物ならびに少なくともポリプロピレンワックスおよび着色剤からなる静電荷像現像用トナーに関する。
【0009】
トナー中にポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスを同時に含む場合であっても、バインダー樹脂の合成時にポリエチレンワックスを含有せしめることにより複写画像上にスミア、オフセットおよびフィルミングが発生せず、かつ流動性および帯電性に優れた静電荷像現像用トナーを提供することが可能となった。
【0010】
本発明のトナーはポリエチレンワックスがバインダー樹脂合成時に含有せしめられた樹脂組成物、ポリプロピレンワックスおよび着色剤からなる。樹脂組成物中においてポリエチレンワックスはバインダー樹脂を介して小粒径、かつ均一に分散している。
【0011】
本発明に使用するポリエチレンワックスは軟化点が100〜150℃、好ましくは110〜145℃、より好ましくは120〜140℃の範囲のものを使用する。ポリエチレンワックスの軟化点が100℃より低いと耐熱性が悪く、フィルミングを発生し易くなり、逆に150℃以上ではスミア性が低下する。ポリエチレンワックスは高密度または低密度いずれのものを用いてもよいが、スミア性向上の観点から高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。
【0012】
また、ポリエチレンワックスとしてはビニル系モノマーグラフトポリエチレンを用いてもよい。これはビニル系モノマーをグラフト重合させることにより、得られるポリエチレンであり、高圧法ポリエチレンの熱分解によるもの、高圧でエチレンをラジカル重合して得られる高圧重合ポリエチレンワックス、更にはエチレン又はエチレンとプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセンなどのα−オレフィンとを遷移金属化合物触媒を用いて中・低圧重合することにより得られるものである。
【0013】
ビニル系モノマーグラフトポリエチレンワックスはスチレン系重合体等のバインダー樹脂やそれらを構成する単量体との相溶性に優れているばかりでなく、種々の添加剤、例えば顔料や染料、荷電制御剤、可塑剤等との相溶性あるいは親和性にも優れている。したがって、樹脂組成物中においてこれらのバインダー樹脂への分散性を高め、荷電制御性等のトナーの物理的均一性を高め、現像剤としての性能を向上させる作用をも有する。
【0014】
本発明においてポリエチレンワックスはバインダー樹脂を構成し得る単量体100重量部に対して0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜4.5重量部、より好ましくは約0.5〜約3重量部が適当である。ポリエチレンワックスの配合量がこれより少ないとスミア防止効果が不十分であり、多すぎるとフィルミングが発生し易くなり、トナー流動性も低下する傾向がある。
【0015】
上記ポリエチレンワックスはバインダー樹脂の合成時に含有せしめられる。このようにポリエチレンワックスはバインダー樹脂の合成時に添加、混合されるため、樹脂組成物中において小粒径、かつ均一に分散されてトナー表面への露出量およびトナーからの脱離量が低減されるため、従来から特に問題となっていたポリエチレンワックスの遊離による複写時のフィルミングやトナーの流動性や帯電性の低下を防止でき、それと同時にポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスのスミア防止性およびオフセット防止性が有効に機能し得ると考えられる。
【0016】
詳しくは、ポリエチレンワックスは、バインダー樹脂を構成し得る単量体(以下、単に「単量体」という)を重合させた後、その重合体溶液に添加、混合される。その後、このポリエチレンワックス分散重合体溶液を溶剤留去してポリエチレンワックスがバインダー樹脂中に分散した樹脂組成物が得られる。
【0017】
重合方法としては従来からバインダー樹脂を調製するために行われている方法例えば、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等を採用することができ、目的とするバインダー樹脂の種類、その分子量、および分子量分布等に応じて適宜選択され、または組み合わせて採用してもよい。重合条件については従来からのバインダー樹脂を得るための重合条件と同様の条件を採用することができるが、所望のバインダー樹脂分子量を達成するため、重合温度、重合時間、溶剤等を適宜設定する必要がある。なお、ポリエチレンワックスの分散方法としては、ポリエチレンワックスが沈澱しない程度に、小粒径、具体的には平均粒径20μm程度以下、好ましくは0.1〜5μm程度で分散することができる方法であれば、特に制限されることはない。ポリエチレンワックスの分散粒径が大きすぎると本発明の効果が十分に得られず、すなわち後のトナー製造工程においてポリエチレンワックスが遊離するおそれがある。
【0018】
ポリエチレンワックスをバインダー樹脂合成時に添加する別の態様においては、ポリエチレンワックスは単量体の重合前、該単量体を含む単量体溶液中に添加、混合される。その後、ポリエチレンワックスを分散させながら、該単量体を重合させてポリエチレンワックス分散重合体溶液を得、これを溶媒留去して樹脂組成物を得ることができる。重合方法および重合条件については、前述したポリエチレンワックスを単量体の重合後に添加する場合と同様の方法および条件を採用することができる。なお、ポリエチレンワックスの分散方法については、単量体の重合前に添加する場合と重合後に添加する場合とでは添加されるべき溶液の粘度が異なるため、すなわち、溶液粘度は重合前に添加する場合より重合後に添加する場合の方が大きくなっているため、混合速度を前述の場合より大きく設定するか、あるいは混合時間を長く設定する必要があるが、いずれにしてもポリエチレンワックスが沈澱することなく小粒径で分散できればよい。
【0019】
本発明に使用し得るバインダー樹脂は、従来トナー用バインダー樹脂として使用されてきたスチレン系共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂などを任意に使用できるが、本発明においては上述のごとくポリエチレンワックスがその合成時に添加、混合されるため、該バインダー樹脂中に比較的小粒径、かつ均一に分散されており、ポリエチレンワックスを含む樹脂組成物として使用される。
【0020】
バインダー樹脂を構成する単量体としては、例えば、スチレン系単量体、アクリル系単量体、メタクリル系単量体、ビニル系単量体、ポリカルボン酸系単量体、ポリヒドロキシ系単量体、エポキシ系単量体、ポリエステル系単量体等が挙げられ、これらのうち2種以上の単量体を併用して用いてもよい。
【0021】
このような単量体から構成されるバインダー樹脂は、ポリエチレンワックスを含有しない状態でゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定された数平均分子量分布が少なくとも2,000〜10,000の範囲、より好ましくは2,500〜7,000また、重量平均分子量/数平均分子量が20〜90の範囲、より好ましくは25〜85である。
【0022】
数平均分子量が2,000より小さいと耐熱性が低下したりオフセットし易くなり、10,000を越えると定着強度が低下する。また重量平均分子量/数平均分子量の比が20より小さいとオフセット性が低下し、90より大きいと定着強度が悪くなり易い。
【0023】
上記したバインダー樹脂の中でも、スチレン系共重合体樹脂が本発明の目的をより効果的に達成でき、特に好ましい。スチレン系共重合体樹脂を構成するスチレン系単量体の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロルスチレン等のスチレン系単量体およびその誘導体を用いることができる。
【0024】
スチレン系単量体に共重合させる単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸3−(メチル)ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシルおよびメタクリル酸ドデシル等のメタクリル酸アルキルエステル;アクリル酸メチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸3−(メチル)ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシルおよびアクリル酸ドデシル等のアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸;アクリロニトリル、マレイン酸エステル、イタコン酸エステル、塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニル、ビニルメチルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルおよびビニルイソブチルエーテル等のビニル系単量体を用いることができる。好ましいものはメタクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜17)、アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数1〜17)である。
【0025】
上記のバインダー樹脂には、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスおよび着色剤等の分散性をさらに向上させるために、酸価を付与しても良い。例えば、バインダー樹脂としてスチレン系共重合体樹脂を用いる場合、酸価は(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸の量を調整して樹脂組成物に含有させることにより制御し、その値は1〜30KOHmg/g 好ましくは、3〜10KOHmg/gが適当である。
【0026】
本発明において最も好ましい樹脂組成物は詳しくは以下のごとく製造される。まず、単量体を重合させ低分子量重合体溶液を得た後、該重合体溶液にポリエチレンワックスを添加、混合して分散させ、ポリエチレンワックス分散低分子量重合体溶液を調製する。一方、別の容器で同種の単量体を重合させ高分子量重合体溶液を調製する。その後、これらのポリエチレンワックス分散低分子量重合体溶液と高分子量重合体溶液を1に混合し、撹拌してポリエチレンワックスを再度分散させ、これを溶剤留去して、ポリエチレンワックスがバインダー樹脂中で小粒径、かつ均一に分散した樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
また、別の態様においては、まず、単量体を含む単量体溶液にポリエチレンワックスを添加、混合して分散させた後、該単量体を重合させてポリエチレンワックス分散低分子量重合体溶液を調製する。一方、別の容器で同種の単量体を重合させ高分子量重合体溶液を調製する。その後、これらのポリエチレンワックス分散低分子量重合体溶液と高分子量重合体溶液を1に混合し、撹拌してポリエチレンワックスを再度分散させ、これを溶剤留去して、ポリエチレンワックスがバインダー樹脂中で小粒径、かつ均一に分散した樹脂組成物を得ることができる。
【0028】
以上のようにして得られた樹脂組成物は、少なくともポリプロピレンワックスおよび着色剤とともに従来からの混練・粉砕法に供される。なお、ポリプロピレンワックスは、上述のごとくポリエチレンワックスとともにバインダー樹脂の合成時に含有せしめ、樹脂組成物中に存在させた場合、オフセット防止効果が不十分となるため好ましくない。
【0029】
本発明に使用するポリプロピレンワックスは軟化点が130〜160℃、好ましくは140〜155℃、より好ましくは145〜155℃が適当である。軟化点が130℃より低いと耐熱性が低下するのみならず、フィルミングを発生し易くなる。一方、160℃より高いとオフセット性が低下する。併用するポリエチレンワックスの軟化点より高いポリプロピレンワックス、好ましくはその差が25℃以内のものを使用することにより高温オフセットが有効に防止される。
【0030】
ポリエチレンワックスおよび後述するポリプロピレンワックスの合計添加量はバインダー樹脂100重量部に対して2〜10重量部、好ましくは3〜9重量部、より好ましくは3〜8重量部が適当である。ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスの合計添加量がこれより少ないとオフセット性やスミア性が低下し、多すぎるとトナーの流動性が悪く、またフィルミングが発生し易くなる。ここで、以下、バインダー樹脂100重量部とは、樹脂組成物中において存在するバインダー樹脂のみの重量を意味するものとする。
【0031】
このうち、ポリプロピレンワックスとポリエチレンワックスとの添加重量比は10:1〜1:10であり、好ましくは10:1〜1:2、より好ましくは10:1〜1:1.3が適当である。ポリエチレンワックスの添加重量比がこれより少ないとスミアが発生し易くなり、多いとオフセット性が低下し易くなる。
【0032】
本発明に使用される着色剤は特に限定されるものではなく、従来電子写真で使用されてきた着色剤を用いることができ、以下のものが例示できる。
黒色顔料としては、カーボン・ブラック、酸化銅、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭、フェライト、マグネタイトなどを使用することができる。
黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマネントイエローNCG、タートラジンレヘーキなどを使用することができる。
【0033】
赤色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、レーキレッドC、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B、パーマネントオレンジGTR、バルカンファストオレンジGG、パーマネントレッドF4RH、パーマネントカーミンFBなどを使用することができる。
【0034】
青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルーなどを使用することができる。
【0035】
なお、これらの着色剤の添加量も特に限定的ではないが、通常、バインダー樹脂100重量部に対して1〜20重量部、好ましくは3〜15重量部になるようにする。
【0036】
本発明のトナーは、他の添加剤を添加含有していてもよく、荷電制御剤、磁性粉等を適宜配合してもよい。
【0037】
荷電制御剤としては、トナーを正荷電制御したいときは正荷電制御剤、トナーを負荷電制御したいときは負荷電制御剤を用いることができる。本発明に使用可能な正荷電制御剤としては、例えばニグロシン染料、トリフェニルメタン系化合物、4級アンモニウム塩系化合物等が挙げられる。トリフェニルメタン系化合物としては、例えば特開昭51−11455号公報、特開昭59−100457号公報、特開昭61−124955号公報等に記載された化合物が使用可能である。また、4級アンモニウム塩系化合物としては、例えば特開平4−70849号公報等に記載された化合物が使用可能である。負荷電制御剤としてはサリチル酸金属錯体、含金アゾ染料、カリックスアレン化合物、含ホウ素化合物等が挙げられる。上記荷電制御剤は単独であるいは2種以上混合して使用可能であるが、その添加量としてはバインダー樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部が好ましい。
【0038】
磁性粉としては、フェライト、マグネタイト、鉄粉を単独あるいは混合して使用することができる。磁性粉を含有させることによってフィルミングの防止、磁力によるトナーの飛散、コボレなどがより効果的に防止できる。
【0039】
磁性粉のトナー中での分散不良による帯電性の低下を防止するため、BET比表面積が2〜15m2/g、好ましくは5〜12m2/gの磁性粉が望ましい。
【0040】
本発明に使用する磁性粉の添加量はバインダー樹脂100重量部に対して0.5〜20重量部、好ましくは1〜10重量部である。20重量部より多いと現像性の低下により画像濃度が低下する。
【0041】
本発明の静電荷像現像用トナーは、公知の混練・粉砕法等により容易に製造することができる。少なくとも、上述のごとく製造したポリエチレンワックスを含む樹脂組成物、着色剤、ポリプロピレンワックスおよび他の添加剤からなる混合物を混練押出機により混練し、混練物を冷却固化した後、粉砕、分級し、平均粒径5〜14μm、好ましくは6〜12μmのトナー粒子を得、該粒子に所望により流動化剤やクリーニング助剤を添加することにより得られる。なお、粉砕工程においては、フェザーミル等の粉砕機により、一旦、2mm以下に粗粉砕した後、機械式粉砕機により所望粒径まで微粉砕してもよい。
【0042】
本発明のトナーにおいては、ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスの両者がトナー粒子中に小粒径で分散されており、ポリエチレンワックスとポリプロピレンワックスの両者の特性がいかされる。
【0043】
トナー中に含まれるポリプロピレンワックス微粒子は、その粒子の長径が2μm以上のものの含有量が、2〜50個数%、好ましくは2〜38個数%である。2.0個数%より少ないとオフセット性が悪くなる。また50個数%より多いとフィルミングが発生しやすく、またカブリが発生しやすくなる。
【0044】
トナー中に含まれるポリエチレンワックス微粒子は、その粒子の長径が2μm以上のものの含有量が3.0個数%以下、好ましくは2.0個数%以下、より好ましくは1.5個数%以下である。2.0個数%より多くなると、フィルミングが発生しやすく、またカブリも発生しやすくなる。
【0045】
上記のワックス粒子の粒径の分散測定は、以下のようにして測定した値を用いている。トナー0.1gをクロロホルム25mlに溶かして遠心分離機でワックスを分離し回収した後、回収ワックスに再度クロロホルム25mlを加えて遠心分離機でワックスを分離回収する。その後、3000倍の走査電子顕微鏡(SEM)写真を撮影してワックスの微粒子の粒径を算出した。更に、撮影したワックスをポリエチレンワックスの軟化点以上、ポリプロピレンワックスの軟化点未満となるように加熱した後、冷却して再度SEM観察を行いポリエチレンワックスとポリプロピレンワックスを判別した。
【0046】
所望により添加される流動化剤としては、シリカ微粒子、二酸化チタン微粒子、アミルナ微粒子、フッ化マグネシウム微粒子、炭化ケイ素微粒子、炭化ホウ素微粒子、炭化チタン微粒子、炭化ジルコニウム微粒子、窒化ホウ素微粒子、窒化チタン微粒子、窒化ジルコニウム微粒子、マグネタイト微粒子、二硫化モリブデン微粒子、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸マグネシウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子等が挙げられる。
【0047】
なお、これらの微粒子は、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイル等で疎水化処理して用いることが望ましい。
【0048】
流動化剤の量は、トナー100重量部に対して0.05〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部用いることが望ましい。
【0049】
クリーニング助剤としては、乳化重合、ソープフリー乳化重合、非水分散重合等の湿式重合法または気相法等により造粒したスチレン系、アクリル系、メタクリル系、ベンゾグアナミン、シリコーン、テフロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種の有機微粒子を単独あるいは組み合わせて用いることができる。添加量は通常、バインダー樹脂100重量部に対して0.01〜1重量部である。
【0050】
以上のようにして得られる本発明の静電荷像現像用トナーはキャリアを使用しない1成分現像剤、キャリアとともに使用する2成分現像剤のいずれにおいても使用可能であるが、2成分現像剤として使用することが好ましい。本発明のトナーとともに使用するキャリアとしては、公知のキャリアを使用することができ、例えば、鉄粉、フェライト等の磁性粒子よりなるキャリア、磁性粒子表面を樹脂等の被覆剤で被覆したコートキャリア、あるいはバインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散してなる分散型キャリア等いずれも使用可能である。このようなキャリアとしては体積平均粒径が15〜100μm、好ましくは20〜80μmのものが好適である。
【0051】
本発明トナーを正帯電性トナーとして用いるときに好ましいキャリアは、トナーに対する荷電性、即ち表面に負帯電性の樹脂が存在するキャリアである。このような樹脂としてはポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、含フッ素ビニル系単量体の単独重合体あるいは他のビニル系単量体との共重合体等の含フッ素系樹脂等が挙げられる。特に好ましいのは上記負帯電性樹脂被覆層を形成したキャリア、あるいは上記負帯電性樹脂中に磁性体微粉末を分散してなるキャリアが、本発明のトナーとの組み合わせにおいて帯電性の観点から好ましい。
【0052】
本発明のトナーを負帯電性トナーとして用いるときは表面に正帯電性の樹脂が存在するキャリアが好ましい。このような樹脂としては、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられる。
本発明を以下の実施例により、さらに詳しく説明する。
【0053】
【実施例】
実施例1
キシレン100重量部中にスチレン70重量部、アクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸2重量部および触媒3重量部を連続的に滴下して重合を行い、低分子量重合体溶液を作製した。この重合体溶液中にポリエチレンワックス(ハイワックス800P;三井石油化学社製)4重量部を添加し、予備分散を行った。
【0054】
一方、スチレン70重量部、アクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸2重量部を120℃で塊状重合により重合させた後、更にキシレンと触媒を加えて溶液重合を行い高分子量重合体溶液を作製した。これら低分子量重合体溶液および高分子量重合体溶液を樹脂分重量比で1:1にて混合した後、撹拌してポリエチレンワックスを分散させた。その後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却、固化後、粉砕して樹脂組成物を得た。なお、同様の方法で製造したポリエチレンワックスを含まないバインダー樹脂の数平均分子量(Mn)は4000、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は68.8、軟化点は121.8℃、酸価は6.5KOHmg/gであった。
【0055】
・上記樹脂組成物 100重量部(バインダー樹脂98.04重量部およびポリエチレンワックス1.96重量部からなる(換算値))
・ポリプロピレンワックス(軟化点145℃) 4重量部
(ビスコール660P、三洋化成社製)
・カーボンブラック(モーガルL、キャボット社製) 10重量部
・ニグロシン染料 5.0重量部
(ニグロシンベースEX、オリエント化学社製)
・4級アンモニウム塩 0.5重量部
(P−53、オリエント化学社製)
・磁性粉(MFP−2、TDK社製) 2重量部
以上の材料をヘンシェルミキサー(容量75リットル)を用いて、3000rpmで3分間混合した。この混合物をスクリュー押出混練機(TEM50:東芝機械社製)により、温度120℃、供給量30kg/hr、スクリュー回転数150rpmの条件で連続押出混練した後、スリット間隔1mmのプレスローラで圧延し、更にベルトクーラー上で強制水冷した。
【0056】
この混練物をフェザーミル(2mmメッシュ)で粗粉砕した。粗粉砕物を機械式粉砕機(クリプトンKTM−O型、川崎重工業社製)で11μmまで微粉砕し、自然気流式分級機を備えたジェットミル(IDS−2型、日本ニューマチック社製)で粗粉のカットを行い、さらに回転ロータ式分級機(50ATP分級機、ホソカワミクロン社製)で微粉のカットを行い体積平均粒径11μmのトナー粒子を得た。得られたトナー粒子に流動化剤として疎水性シリカ(アエロジル、R974)を0.15重量%を添加してトナーを得た。
【0057】
実施例2〜7および比較例1〜4
実施例1に準じて、トナーを調製した。但し、樹脂組成物を調製する際の重合条件については適宜設定し、得られた樹脂組成物がワックスを含まない場合のバインダー樹脂のMn、Mw/Mnおよび軟化点、樹脂合成時に添加されるワックスの種類および量(換算値)ならびにトナー混練時に添加されるワックスの種類および量、および粒径2μm以上のワックス粒子の個数%を表1および表2に示す。
【0058】
実施例8
樹脂組成物として、以下の方法により製造したものを使用したこと以外、実施例1と同様にしてトナーを製造した。
【0059】
キシレン100重量部中にスチレン70重量部、アクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸2重量部およびポリエチレンワックス(ハイワックス100P;三井石油化学社製)5重量部を添加し、予備分散を行った後、触媒3重量部を連続的に滴下して重合を行い、低分子量重合体溶液を作製した。
【0060】
一方、スチレン70重量部、アクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸ブチル14重量部、メタクリル酸2重量部を120℃で塊状重合により重合させた後、更にキシレンと触媒を加えて溶液重合を行い高分子量重合体溶液を作製した。これら低分子量重合体溶液および高分子量重合体溶液を樹脂分重量比で2:3にて混合した後、撹拌してポリエチレンワックスを分散させた。その後、有機溶剤を留去し、得られた樹脂を冷却、固化後、粉砕して樹脂組成物を得た。なお、同様の方法で製造したポリエチレンワックスを含まないバインダー樹脂の数平均分子量(Mn)は4500、重量平均分子量/数平均分子量(Mw/Mn)は83.4、軟化点は127.5℃、酸価は6.5KOHmg/gであった。また、樹脂組成物100重量部中、バインダー樹脂は98.04重量部、ポリエチレンワックスは1.96重量部であった。
【0061】
以上の実施例1〜8および比較例1〜4で得られたトナーを、以下のごとく製造したバインダー型キャリアと重量混合比(トナー:キャリア)5:95にて混合して現像剤を得た。
【0062】
(バインダー型キャリアの製造)
成 分 重量部
・ポリエステル樹脂(花王社製:NE−1110) 100
・無機磁性粉(TDK社製:MFP−2) 500
・カーボンブラック(三菱化成社製:MA#8) 2
上記材料をヘンシェルミキサーにより充分混合、粉砕し、次いでシリンダ部180℃、シリンダヘッド部170℃に設定した押出混練機を用いて、押出混練した。混練物を冷却、粗粉砕後、ジェットミルで微粉砕し、さらに風力分級機を用いて分級し、体積平均粒径55μmの磁性キャリアを得た。
【0063】
上記バインダー型キャリアと混合して得られた現像剤を以下の項目について評価した。
(1) スミア性
上記現像剤および複写機(EP4050;ミノルタ社製)を使用して複写し、複写紙上に定着させた後、別の未使用の複写紙を、先に得られた複写画像が形成された用紙とこすり合わせて、その未使用複写紙の汚れ具合を観察し、以下のようにランク付けを行った。
○:ほとんど汚れが目立たなかった;
△:若干汚れが観察されたが実用上問題がない;
×:全紙面に汚れがみられた。
【0064】
(2) オフセット性
定着温度を変化させ得るよう改造した上記複写機を用いて複写する際、定着ローラ温度を250℃近辺まで上昇させて行き、オフセットの発生する温度により以下の通りランク付けを行った
○:250℃でオフセット発生しない;
△:250℃未満ではオフセット発生しない;
×:230℃未満でオフセット発生。
【0065】
(3) フィルミング
複写機(EP4050;ミノルタ社製)を使用して連続5万枚を複写した後、ハーフトーン画像を画出しするとともに感光体を観察し、以下のようにランク付けを行った。
○:画像の乱れ、感光体へのトナー成分付着がともになし。
△:感光体表面の一部がうっすらとくもっているが、画像の乱れはない。
×:感光体全体がくもっており、更に画像が乱れている。
【0066】
以上の評価結果を、上述の実施例および比較例のトナーの製造条件とともに、まとめて以下の表1および表2に示す。なお、便宜上、樹脂100重量部に添加されるワックスの添加量は単量体総重量100重量部を基準にした値であり、トナー混練時に添加されるワックスの添加量はそれぞれの実施例または比較例において調製される樹脂組成物100重量部を基準にした値である。トナー混練時に添加されるワックスの添加量についてはバインダー樹脂100重量部を基準にした値を換算値として示した。本実施例および比較例で用いられる樹脂組成物中のバインダー樹脂は付加重合型ポリマーであるため、単量体総重量とバインダー樹脂重量とは等しい。なお、ポリエチレンワックス(PE)およびポリプロピレンワックス(PP)の樹脂に対する添加量およびその比をわかりやすく表3に示してある。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
本実施例中、キャリアの平均粒径は、コールターマルチサイザー(コールター社製)を用い、280μmのアパチャーチューブで測定した。トナーの平均粒径は同装置を用い100μmのアパチャーチューブで測定した。
【0071】
【発明の効果】
本発明によると複写時のスミアやオフセットが防止できると共に、フィルミングの発生を防止でき、トナーの流動性や帯電性の低下などを起こさないトナーを提供することができる。
Claims (4)
- 少なくともポリエチレンワックスがバインダー樹脂合成時に含有せしめられた樹脂組成物ならびに少なくともポリプロピレンワックスおよび着色剤からなる静電荷像現像用トナー。
- ポリエチレンワックスおよびポリプロピレンワックスの合計添加量がバインダー樹脂100重量部に対して2〜10重量部であり、ポリプロピレンワックスとポリエチレンワックスとの添加重量比が10:1〜1:10であることを特徴とする、請求項1記載の静電荷像現像用トナー。
- ポリプロピレンワックスの軟化点が130〜160℃であり、ポリエチレンワックスの軟化点が100〜150℃であって、ポリプロピレンワックスの軟化点がポリエチレンワックスの軟化点より高いことを特徴とする、請求項1または2記載の静電荷像現像用トナー。
- ポリエチレンワックスの微粒子の長径が2μm以上のものの含有量が3.0個数%以下である請求項1〜3いずれかに記載の静電荷現像用トナー。
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