以下、適宜図面を参照して本発明の実施形態について説明する。以下に説明される実施形態は本発明を具体化した一例にすぎず、本発明の技術的範囲を限定するものではない。なお、説明の便宜上、画像形成装置10が使用可能な設置状態(図1に示される状態)で鉛直方向を上下方向7と定義する。また、前記設置状態において図1に示される給紙カセット24が挿抜される面を正面(前面)として前後方向8を定義する。また、前記設置状態の画像形成装置10の正面を基準として左右方向9を定義する。
本発明の実施形態に係る画像形成装置10は、少なくとも印刷機能を備えた装置である。画像形成装置10は、所謂タンデムタイプのカラープリンターである。画像形成装置10は、トナーを含む現像剤を用いて、印刷用紙に画像を印刷する。なお、画像形成装置10は、後述の給紙カセット24及び手差しトレイ38を備えたものであればよく、単なるプリンターに限られず、例えば、複合機や、FAX装置、複写機などであってもよい。もちろん、カラー画像を形成するものでなく、単一色の画像を形成するものであってもよい。
図1に示されるように、画像形成装置10は筐体10Aを備える。筐体10Aの内部には、画像形成装置10を構成する各部が設けられている。画像形成装置10は、4つの画像形成部4、転写ベルト5、光走査装置13、二次転写ローラー20、定着装置16、排紙トレイ18、給紙カセット24(本発明の第1シート収容部の一例)、コンテナユニット31、第1給送部32、リフト駆動ユニット60(本発明の押圧部の一例)、操作表示部25、手差しトレイ38(本発明の第2シート収容部の一例)、第2給送部39、シートセンサー44(本発明のシート検知部の一例)、及び制御部80(図2参照)などを備える。印刷用紙は、紙、コート紙、ハガキ、封筒、及びOHPシートなどのシート材である。
画像形成部4各々は、感光体ドラム11、帯電装置12、現像装置14、一次転写ローラー15などを備えており、電子写真方式にしたがって画像を形成する。画像形成部4は、筐体10Aの内部において前後方向8に沿って並設されている。画像形成部4は、各色のトナー像を転写ベルト5の表面に重ね合わせて転写して、転写ベルト5にカラーのトナー像を形成する。転写ベルト5上のトナー像は、二次転写ローラー20により、給紙カセット24から縦搬送路26(本発明の第1搬送路の一例)を経て搬送される印刷用紙に転写される。
光走査装置13は、画像形成部4の下側に設けられている。光走査装置13は、画像データに応じたレーザー光で感光体ドラム11の周面を走査して、前記周面上に静電潜像を形成する。
給紙カセット24は、光走査装置13の下側に設けられている。給紙カセット24は、筐体10Aの底部に装着されている。給紙カセット24に規定サイズの印刷用紙が収容される。給紙カセット24に収容された印刷用紙は、後述するように、第1給送部32によって縦搬送路26側(後方側)へ向かう給送方向へ給送される。なお、本実施形態では、給紙カセット24が一つの構成を例示するが、複数サイズの用紙を個別に収容可能な複数の給紙カセット24が設けられた構成であってもよい。
筐体10Aの内部の後方側に、縦搬送路26が形成されている。縦搬送路26は、前後に対向するように設けられた一対のガイド部材によって挟まれた空間である。縦搬送路26は、給紙カセット24から二次転写ローラー20や定着装置16を経てシート排出口27に至っている。縦搬送路26に沿って複数の搬送ローラー22が設けられている。縦搬送路26の下端部における一部のガイド面は、ガイド部材41によって形成されている。詳細には、縦搬送路26の下端部における下側のガイド面は、筐体10Aの下部の背面側に設けられたガイド部材41によって形成される。
第1給送部32は、給紙カセット24に積載されている印刷用紙を一枚ずつ取り出して、給送方向の下流側に形成された縦搬送路26へ向けて給送する。
第1給送部32は、ピックアップローラー51と、給紙ローラー52と、リタードローラー53と、を備えている。ピックアップローラー51は、給紙カセット24の近傍に設けられている。詳細には、給紙カセット24の後部の上側にピックアップローラー51が設けられている。ピックアップローラー51は、給紙カセット24の後部において、収容されている印刷用紙の用紙束の上面に対向するように設けられている。ピックアップローラー51は、駆動源としての第1モーター54(図2参照)から伝達された回転駆動力を受けて回転駆動される回転体である。ピックアップローラー51は、給紙カセット24に収容された印刷用紙に接触して、その接触した状態で回転することにより、印刷用紙を縦搬送路26の入口へ向かう給送方向へ給送する。
給紙ローラー52は、ピックアップローラー51によって給送された印刷用紙を給送方向下流側へ搬送する。給紙ローラー52は、ピックアップローラー51よりも後方側に設けられている。給紙ローラー52は、第1モーター54(図2参照)から伝達された回転駆動力を受けて回転駆動される回転体である。給紙ローラー52の下方には給紙ローラー52のローラー面に圧接されるリタードローラー53が設けられている。給紙ローラー52が回転されると、リタードローラー53が給紙ローラー52に従動して回転する。ピックアップローラー51によって給送された印刷用紙の先端部が給紙ローラー52とリタードローラー53とのニップ部に到達すると、給紙ローラー52とリタードローラー53とによって挟持されつつ、その印刷用紙が給送方向下流側へ送り出されて、縦搬送路26に搬送される。
二次転写ローラー20は、筐体10Aの後方側において、駆動ローラー5Aと対向する位置に設けられている。二次転写ローラー20によって転写ベルト5から印刷用紙にトナー像が転写される。
定着装置16は、印刷用紙に熱を加えてトナー像を印刷用紙に定着させる。定着装置16は、一対のローラー対である加熱ローラー16Aと、加圧ローラー16Bとを有する。加熱ローラー16Aから印刷用紙に熱が伝達されて、印刷用紙上のトナーが溶融して印刷用紙に定着する。これにより、カラー画像が印刷用紙に形成される。定着装置16を通過した印刷用紙は、排紙ローラー23によってシート排出口27から排紙トレイ18に排出される。
光走査装置13と給紙カセット24との間に中継搬送路28(本発明の第2搬送路の一例)が形成されている。中継搬送路28は、上下に対向するように設けられた一対のガイド部材によって挟まれた空間である。中継搬送路28は、筐体10Aの内部において、画像形成装置10の前面から後方へ延びており、筐体10Aの内部の後方側で縦搬送路26に接続している。したがって、中継搬送路28を後方へ搬送される印刷用紙は、中継搬送路28と縦搬送路26との接続点P1から縦搬送路26に進入すると、縦搬送路26を通って上方へ搬送される。
画像形成装置10の前面には、手差しトレイ38が設けられている。また、筐体10Aの内部において、手差しトレイ38と中継搬送路28との間に第2給送部39が設けられている。手差しトレイ38は、第2給送部39によって給送される印刷用紙を収容する。手差しトレイ38は、画像形成装置10の筐体10Aの前面のカバーを兼ねる。手差しトレイ38は、筐体10Aの前面に対して中継搬送路28の入口を開閉可能に構成されている。図1では手差しトレイ38が筐体10Aの前面に対して閉じられた状態が実線で示されており、手差しトレイ38があけられた状態が破線で示されている。手差しトレイ38が筐体10Aの前面に対して開けられると、手差しトレイ38の内面が上に向けられた状態になる。この状態で、前記内面に所定サイズの印刷用紙が載置可能となる。手差しトレイ38に載置された印刷用紙は第2給送部39によって中継搬送路28を通って縦搬送路26に給送される。
第2給送部39は、手差しトレイ38に載置されている印刷用紙を一枚ずつ取り出して、中継搬送路28に給送し、更に、中継搬送路28に送り込まれた印刷用紙を接続点P1から縦搬送路26に給送する。第2給送部39は、ピックアップローラー391と、給紙ローラー392と、を備えている。第2給送部39は、更に、中継搬送路28に沿って設けられた複数の搬送ローラー393を含む。ピックアップローラー391、給紙ローラー392、及び搬送ローラー393は、駆動源としての第2モーター43(図2参照)から伝達された回転駆動力を受けて回転駆動される回転体である。
シートセンサー44は、縦搬送路26に設けられている。シートセンサー44は、接続点P1よりも給送方向の下流側に設けられている。シートセンサー44は、接続点P1よりも給送方向の下流側の検知位置P2を通過する印刷用紙の先端を検知するために用いられる。シートセンサー44は、例えば、検知位置P2を通過する印刷用紙を検知可能な反射型のフォトトランジスタである。或いは、印刷用紙の通過に応じて変位する検出子とこの検出子の変位に応じて光路が遮断又は透過される透過型のフォトトランジスタとを組み合わせたものであってもよい。シートセンサー44は、縦搬送路26の接続点1よりも下流側を搬送される印刷用紙の有無を検知できるものであれば、如何なる構成のものであってもかまわない。
シートセンサー44は、後述のレジストローラー22Aを回転駆動させるタイミングを決定する用途に用いられる。検知位置P2に印刷用紙の先端が到達すると、シートセンサー44の出力信号がLOWレベルからHIGHレベルに変化する。シートセンサー44は制御部80に接続されており、制御部80は、シートセンサー44の出力信号がLOWレベルからHIGHレベルに変化した場合に、印刷用紙の先端が検知位置P2に到達したと判定する。
複数の搬送ローラー22は、レジストローラー22Aを含む。レジストローラー22Aは、二次転写ローラー20とシートセンサー44との間に設けられた駆動ローラー及び従動ローラーで構成されている。レジストローラー22Aは、第1モーター54(図2参照)からの駆動力を得て回転駆動されることにより、レジストローラー22Aに到達した印刷用紙を下流側へ搬送する。レジストローラー22Aは、縦搬送路26を搬送されてきた印刷用紙に対してレジスト動作を行う用途と、レジスト動作後の印刷用紙を搬送方向下流側へ搬送する用途に用いられる。シートセンサー44によって印刷用紙の先端が検知されてから、予め設定された設定時間(レジスト時間)が経過したときに、停止中のレジストローラー22Aに駆動力が伝達される。この駆動力が伝達されるまでの間に、印刷用紙の先端がレジストローラー22Aのニップ部(駆動ローラーと従動ローラーとのニップ部)に突き当てられる。この状態で搬送ローラー22によって印刷用紙に継続して搬送力が付与されると、印刷用紙の先端がレジストローラー22Aのニップ部で揃えられる。これにより、搬送中の印刷用紙の斜行が補正される。なお、レジストローラー22Aには、図示しない電磁クラッチが設けられており、制御部80が前記電磁クラッチをオンオフ制御することによって、レジストローラー22Aの回転駆動が制御される。
制御部80は、画像形成装置10を統括制御するものである。図2に示されるように、制御部80は、CPU81、ROM82、RAM83、内部メモリー84、モータードライバー85などで構成されている。
図2に示されるように、制御部80は、内部バスや信号線などによって、第1モーター54、第2モーター43、電磁クラッチ57,58などに電気的に接続されている。制御部80によって、第1モーター54及び第2モーター43の駆動制御が行われ、また、電磁クラッチ57,58のオンオフ制御が行われる。
本実施形態では、制御部80は、図13のフローチャートに従った後述の異常判定処理を行う。この異常判定処理は、リフト駆動ユニット60のリフトアップ動作が異常であるかどうかを判定するための処理である。ROM82には、前記異常判定処理を行うための制御プログラムが記憶されている。また、内部メモリー84は、例えばフラッシュメモリーなどの不揮発性記憶装置であり、これには、前記異常判定処理に用いられる閾値や設定値、カウント値などのデータが記憶されている。
なお、制御部80による前記異常判定処理が、集積回路(ASIC、DSP)などの電子回路で実現されていてもよい。
第1モーター54は、例えばDCモーターやステッピングモーターなどである。第1モーター54は、ピックアップローラー51や給紙ローラー52、搬送ローラー22などを回転させる回転駆動力を出力する。また、第1モーター54は、リフト駆動ユニット60が備える二段カム65に回転駆動力を供給するものでもある。つまり、第1モーター54の回転駆動力は、二段カム65を駆動させる力としても用いられる。したがって、ピックアップローラー51や二段カム65は、同じ駆動源である第1モーター54によって回転駆動される。
第2モーター43は、ピックアップローラー391や給紙ローラー392、搬送ローラー393などを回転させる回転駆動力を出力する。
第1モーター54及び第2モーター43は、制御部80が備えるモータードライバー85に接続されており、モータードライバー85によって駆動制御される。なお、本実施形態では、第1モーター54によって、ピックアップローラー51、給紙ローラー52、搬送ローラー22、二段カム65を駆動させる例について説明するが、複数のモーターを使用して、これらを別々に駆動させる構成を採用してもよい。
駆動伝達機構55,56は、第1モーター54の回転駆動力を他の駆動機器に伝達するものである。駆動伝達機構55は、前記回転駆動力を給紙ローラー52、ピックアップローラー51、及び搬送ローラー22などに伝達する。駆動伝達機構56は、前記回転駆動力をリフト駆動ユニット60の二段カム65に伝達する。駆動伝達機構55,56としては、例えば、軸継ぎ手やギヤなどで構成されたギヤ伝達機構、ベルトやプーリーなどで構成されたベルト伝達機構、ワイヤーやプーリーなどで構成されたワイヤー伝達機構などが考えられる。
電磁クラッチ57,58は、制御部80からの制御信号に応じてオン又はオフするクラッチである。電磁クラッチ57は、第1モーター54とピックアップローラー51との間の伝達経路に設けられている。電磁クラッチ58は、第1モーター54とリフト駆動ユニット60の二段カム65との間の伝達経路に設けられている。電磁クラッチ57は駆動伝達機構55に組み込まれていてもよく、また、電磁クラッチ58は駆動伝達機構56に組み込まれていてもよい。電磁クラッチ57,58がオンのときに、駆動伝達機構55,56などから供給される前記回転駆動力が他の駆動機器に伝達される。電磁クラッチ57,58がオフのときに、駆動伝達機構55,56などから他の駆動機器に至る伝達経路が遮断される。つまり、制御部80によって電磁クラッチ58がオフにされると、第1モーター54の回転駆動力が二段カム65に伝達されなくなり、電磁クラッチ58がオンにされると第1モーター54の回転駆動力が二段カム65に伝達される。
以下、給紙カセット24及びリフト駆動ユニット60について詳細に説明する。
給紙カセット24は、筐体10Aの最下部に設けられている。図3に示されるように、給紙カセット24は、複数枚の印刷用紙を収容可能なように、上面に開口を有するトレイ形状に形成されている。給紙カセット24は、画像形成部4によって画像が形成される印刷用紙を積載する。
給紙カセット24の底部46には、収容される印刷用紙を支持するリフト板45と、リフト板45を上昇させるリフト上昇機構34とが設けられている。リフト板45は、底部46において後方側に設けられている。リフト板45の上に印刷用紙が積載される。リフト板45の前端部47(図4参照)は、給紙カセット24の底部46に回動可能に支持されており、後端部48(図4参照)は自由端となっている。リフト板45の前端部47を回動中心としてリフト板45が回動することによって、リフト板45が上下方向7へ昇降可能となる。本実施形態では、リフト板45は、後端部48が給紙カセット24の底部46に近接する第1位置(図4(C)に示される位置)と、この第1位置よりも上方の第2位置(図4(A)に示される位置)との間で変位可能となっている。前記第1位置及び前記第2位置については後述する。
リフト上昇機構34は、リフト板45を給紙カセット24の底部46側の前記1位置から、印刷用紙の給送が可能な前記第2位置まで上昇させるものである。リフト上昇機構34は、図4に示されるように、給紙カセット24の底部46の上面に設けられた弾性部材34A(本発明の付勢部材の一例)を有する。リフト板45は、給紙カセット24の底部46の上面に弾性部材34Aを介して取り付けられている。弾性部材34Aは、所謂圧縮バネであり、例えば、圧縮状態にされたコイルバネである。弾性部材34Aによって、リフト板45は常に上方へ付勢されている。言い換えると、弾性部材34Aは、その弾性力によって、リフト板45を前記第1位置から前記第2位置へ向けて付勢している。この付勢力によって、前記第1位置にあるリフト板45が前記第2位置に持ち上げられる。これにより、リフト板45に印刷用紙が積載された状態であっても、最上位に位置する印刷用紙は、常に、ピックアップローラー51の外周面に接触可能である。
給紙カセット24は、筐体10Aに着脱可能に支持されている。詳細には、給紙カセット24は、周知のレール支持機構によって、画像形成装置10の前面から筐体10Aの内部に対して前後方向8へ挿抜できるようにスライド可能に支持されている。前記レール支持機構は、例えば、筐体10Aに設けられた支持レールと、この支持レールに支持されつつ前記支持レールに沿って摺動する被支持部とからなるものが考えられる。
図3に示されるように、給紙カセット24は、前方側の端部に前壁35を備え、左右に一対の側壁36を備え、後方側に用紙の移動を規制する規制壁37を備えている。側壁36の後方側には開口部36Aが形成されている。また、規制壁37には、後述する係合部70が設けられている。なお、図6に示されるように、リフト板45の後端部48の両側端には、左右方向9の外側へ突出する矩形状のウイング部48Aが設けられている。このウイング部48Aは、開口部36Aに挿通されており、これによりウイング部48Aが側壁36よりも外側に配置される。
図4に示されるように、給紙カセット24は、係合部70を有する。係合部70は、給紙カセット24の規制壁37の下端に設けられている。係合部70は、給紙カセット24が筐体10Aにおける装着位置から離脱された未装着状態においてリフト板45の後端部48に係合して後端部48を底部46に近接する第1位置(図4(C)に示される位置)に保持可能である。本実施形態では、リフト板45は、前記第1位置において底部46に接しており、概ね底部46と平行な姿勢となる。また、係合部70は、筐体10Aに給紙カセット24が装着された装着状態で後端部48との係合を解除可能である。具体的には、係合部70は、ロック部材71と、弾性部材72とにより構成されている。規制壁37の下端の幅方向の中央には挿通孔74が形成されており、底部46の後端には挿通孔74に連続する溝75が前後方向8に延びるように形成されている。挿通孔74にロック部材71が挿通されている。また、溝75に弾性部材72が取り付けられている。弾性部材72は、圧縮されたコイルバネであり、一端が溝75の前端に固定されており、他端がロック部材71に固定されている。これにより、図4(A)に示されるように、ロック部材71が弾性部材72によって給紙カセット24の内部側に引っ張られた状態となる。
ロック部材71は、前方へ突出した係合片71Aと、下方へ突出したストッパー部71Bとを有する。係合片71Aの前方側に傾斜面が形成されている。係合片71Aは、底部46の上面との間で、リフト板45が挿入可能な隙間を形成する。ストッパー部71Bは、規制壁37よりも外側において給紙カセット24の底面よりも下方へ突出しており、係合片71Aが規制壁37の内面から前方へ突出した姿勢でロック部材71の前方への移動を制止する。
このように係合部70が構成されているため、給紙カセット24に印刷用紙を収容するために筐体10Aから取り外された給紙カセット24に対して印刷用紙が収容されて、その際に、リフト板45が下方へ押し付けられると、リフト板45の後端部48が係合片71Aの前記傾斜面に当接する。そして更にリフト板45が下方へ押し付けられると、ロック部材71が後方へ移動する(図4(B)参照)。これにより、リフト板45の後端部48が係合片71Aの下側の前記隙間に入り込む。前記隙間に後端部48が入ると、ロック部材71が元の姿勢に戻り、係合片71Aが後端部48の上面に配置される。これにより、リフト板45が底部46に接する前記第1位置に保持される(図4(C)参照)。
一方、リフト板45が前記第1位置に保持された状態で、給紙カセット24が筐体10Aに装着されると、その装着過程で、筐体10Aに設けられた解除部材49がストッパー部71Bの下端を前方へ押し付ける。具体的には、筐体10Aにおける装着位置に給紙カセット24が到達すると、解除部材49がストッパー部71Bを前方へ押圧する。このとき、図4(C)の点線で示されるように、ストッパー部71Bが後方へ傾斜した姿勢となり、係合片71Aが後方へ変位して、後端部48と係合片71Aとの係合が解除される。これにより、リフト板45が弾性部材34Aの付勢力を受けて上方へ持ち上げられて、前記第1位置よりも上方の前記第2位置(図4(A)に示される位置)にリフト板45が配置される。ここで、前記第2位置は、給紙カセット24に収容された印刷用紙がピックアップローラー51の周面に接触して給送可能な位置である。
ところで、給紙カセット24が筐体10Aに装着されて係合部70による係合が解除されると、リフト板45が弾性部材34Aの付勢力を受けて上方へ移動する。このとき、リフト板45が勢いよく上昇すると、ピックアップローラー51に用紙の上面が衝突して衝突音が発生する。特に、給紙カセット24に比較的少ない枚数の印刷用紙が収容されている場合、印刷用紙が衝撃音の吸収材として機能せず、比較的大きな衝撃音が発生する。このような衝突音を軽減するために、本実施形態では、リフト駆動ユニット60が設けられている。
リフト駆動ユニット60は、筐体10Aの内部において、給紙カセット24よりも後方側に設けられている。筐体10Aには、縦搬送路26のガイド面を構成するガイド部材41が設けられている。図5に示されるように、リフト駆動ユニット60は、ガイド部材41の左右方向9の両方の側面42それぞれに設けられている。
リフト駆動ユニット60は、給紙カセット24が筐体10Aに装着された前記装着状態において、リフト板45が上方へ変位する変位速度を段階的に減速する。給紙カセット24が筐体10Aに装着されて、係合部70によるリフト板45の係合が解除されると、リフト板45が前記第1位置から前記第2位置へ上昇しようとする。このときの上昇速度がリフト駆動ユニット60によって減速される。
図5乃至図7に示されるように、リフト駆動ユニット60は、アクチュエーター64と、二段カム65とを備える。なお、図6及び図7には、右側のリフト駆動ユニット60が示されている。
アクチュエーター64は、側面42に回転可能に支持されている。具体的には、側面42に第1回転軸61が設けられている。第1回転軸61は、側面42から突設している。アクチュエーター64は、第1回転軸61を中心に回転可能に支持されている。アクチュエーター64には、軸受部91が設けられており、その軸受部91に第1回転軸61が挿通されている。つまり、第1回転軸61は、アクチュエーター64を回転可能に支持するための支軸である。図5及び図6に示されるように、第1回転軸61は、前記第1位置にあるリフト板45の後端部48よりも後方へ隔てられた位置に設けられている。より詳細には、第1回転軸61は、側面42の後方端部に設けられている。
図5に示されるように、ガイド部材41には、左右方向9へ延びる第2回転軸62が設けられている。第2回転軸62は、ガイド部材41に回転可能に支持されている。第2回転軸62は、ガイド部材41の各側面42それぞれを貫通しており、各側面42から外側へ突出している。第2回転軸62は、前記第1位置にあるリフト板45の後端部48よりも後方であって、第1回転軸61よりも前方に設けられている。つまり、第2回転軸62は、側面42において、後端部48と第1回転軸61との間に設けられている。
アクチュエーター64は、円筒形状の軸受部91と、概ね円形状の貫通穴92が形成されたベース部95と、ベース部95から突出したアーム状のアーム部93とを有する。アーム部93の突出長さはリフト板45に当接可能な寸法に定められている。図6に示されるように、貫通穴92は、アクチュエーター64のベース部95の概ね中央に形成されている。貫通穴92に第2回転軸62が挿通された状態で、軸受部91が第1回転軸61に回転可能に支持されている。上述したように、第1回転軸61が軸受部91の内孔に挿通されることにより、アクチュエーター64は、側面42において回転可能に支持されている。
アーム部93は、第1回転軸61から遠ざかる方向へ突出している。そのアーム部93は、リフト板45の後端部48の両側端に設けられた前記ウイング部48Aの上面に当接可能である。アーム部93の先端には、下方へ突出する突起94が設けられている。突起94は、アーム部93の先端から下方へ傾斜する傾斜面94Aを有する。傾斜面94Aは、給紙カセット24が筐体10Aにおける装着位置に装着されたときにリフト板45のウイング部48Aが接触される部分である。ウイング部48Aが傾斜面94Aに当接することにより、アーム部93が上方へ押し上げられつつ、ウイング部48Aが後方へ移動し、給紙カセット24が装着位置に配置される。また、ウイング部48Aの上面には、凹部48Bが設けられている。アーム部93がウイング部48Aに当接されるときに、突起94が凹部48Bに入り込む。これにより、アーム部93とウイング部48Aとが接離可能に係合する。
アクチュエーター64は、後述する第3位置と第4位置との間で回転する。具体的には、上述したように、アーム部93がウイング部48Aの上面に当接しているため、リフト板45が前記第1位置から前記第2位置へ上昇すると、その上昇に追従(従動)してアーム部93が上方へ持ち上げられるように回転する。リフト板45が前記第1位置にあるときに、アーム部93がウイング部48Aに当接しているときのアクチュエーター64の位置が前記第3位置(図8に示される位置)である。つまり、前記第3位置は、リフト板45の前記第1位置に対応する位置である。また、リフト板45が上昇して前記第2位置まで到達すると、アーム部93が上方へ持ち上げられて第4位置(図11に示される位置)まで持ち上げられる。つまり、前記第4位置は、リフト板45の前記第2位置に対応する位置である。
本実施形態では、アクチュエーター64がリフト板45の上昇とともに前記第3位置から前記第4位置に回転する過程で、二段カム65がアクチュエーター64に対して段階的な負荷を与える。この段階的な負荷がアーム部93を介してウイング部48Aに伝わることによって、リフト板45の上昇速度が減速される。
二段カム65は、第2回転軸62の両端部に取り付けられている。二段カム65は、第2回転軸62に固定されており、そのため、第2回転軸62が回転されると、二段カム65も同じ方向へ回転する。第2回転軸62の左端部には、駆動伝達機構56から伝達される回転駆動力が入力される入力ギヤ68が連結されている。この入力ギヤ68に前記回転駆動力が伝達されることにより、第2回転軸62を介して前記回転駆動力が二段カム65に入力(伝達)される。
図7に示されるように、二段カム65は、第1カム101と、第2カム102とを有している。二段カム65は、第1カム101と第2カム102とが一体に形成された樹脂成型品である。二段カム65において、第1カム101は第2回転軸62の軸方向の外側に形成されており、第2カム102は軸方向の内側(側面42側)に形成されている。第1カム101及び第2カム102それぞれは、所謂偏心カムである。つまり、第1カム101及び第2カム102それぞれの中心は、第2回転軸62からずれた位置に定められている。
前記回転駆動力が入力ギヤ68に入力されると、第2回転軸62は、図8において反時計回転方向D5へ一定の速度で回転される。これにより、二段カム65も、同方向へ一定の速度で回転される。本実施形態では、二段カム65は、後述するように、初期位置(図8に示される位置)から中継開始位置(図9に示される位置、第5位置)および中継終了位置(図10に示される位置、第6位置)を経て、解除位置(図11に示される位置)に回転される。二段カム65が取り得る各位置において第1カム101及び第2カム102それぞれが、各位置に応じて、アクチュエーター64に接触して作用する。
具体的には、図6及び図7に示されるように、アクチュエーター64のベース部95には、第1突起部の一例である第1ボス64A、及び第2突起部の一例である第2ボス64Bが設けられている。第1ボス64A及び第2ボス64Bは、アクチュエーター64の側面から垂直に突出する突起状の部材である。第1ボス64Aは、二段カム65が前記初期位置から反時計回転方向D5へ回転して前記中継開始位置に達するまでの間に第1カム101が接触される部分である。第1ボス64Aにおいて、第1カム101との接触面は曲面に形成されている。第2ボス64Bは、二段カム65が前記中継開始位置から反時計回転方向D5へ回転して前記中継終了位置に達するまでの間に第2カム102が接触される部分である。第2ボス64Bにおいて、第2カム102との接触面は曲面に形成されている。
図8乃至図12は、リフト駆動ユニット60の動作状態を示す図であり、具体的には、二段カム65の回転に応じて動作するアクチュエーター64の動作状態を示す図である。ここで、図8(A)、図9(A)、図10(A)、図11(A)、図12(A)には、二段カム65の第1カム101が示されており、図8(B)、図9(B)、図10(B)、図11(B)、図12(B)には、二段カム65の第2カム102が示されている。また、図8は、二段カム65が前記初期位置にある状態を示している。また、図9は、二段カム65が前記中継開始位置にある状態を示しており、図10は、二段カム65が前記中継終了位置にある状態を示している。図11は、二段カム65が前記解除位置にある状態を示している。
第1カム101及び第2カム102は、第2回転軸62の周りを取り囲むように形成された環状部材である。図8(A)に示されるように、第1カム101は、その外周面に係合面の一例である係止部111、及び、第1カム面の一例である第1作用部112を有する。また、図8(B)に示されるように、第2カム102は、その外周面に第2カム面の一例である第2作用部113を有する。
二段カム65が図8に示す初期位置にあるときに、係止部111が第1ボス64Aに当接している。係止部111は、第1カム101の外周面に対して少し凹んだ形状に形成されている。この係止部111が第1ボス64Aに当接した状態が前記初期位置である。このとき、係止部111は、第1ボス64Aの上端を下方へ押すように当接している。このときの下方への作用力をF1とする。本実施形態では、二段カム65が前記初期位置にある状態で、アクチュエーター64は前記第3位置に配置されており、係止部111の作用力F1によって、アクチュエーター64が前記第3位置に保持されている。したがって、二段カム65が前記初期位置にあるときは、リフト板45からアーム部93に弾性部材34Aによる上方への付勢力F10が付与されても、作用力F1のほうが大きいため、アクチュエーター64は前記第3位置を保持する。言い換えると、リフト板45の前記第1位置から上方への変位(上昇)がアクチュエーター64のアーム部93によって規制され、リフト板45が前記第1位置に保持されている。
係止部111は、第2カム102にも連続して形成されている。したがって、前記初期位置において、第1カム101及び第2カム102が係止部111を介して第1ボス64Aに接触している。言い換えると、二段カム65は、幅方向において第1カム101から第2カム102に至る領域に係止部111を有している。なお、係止部111は、第2カム102に連続して形成されていなくてもよく、少なくとも前記初期位置において第1ボス64Aに接触する係止部111が第1カム101に設けられていればよい。
第1作用部112は、図8において係止部111よりも時計回転方向D6側に形成された曲面である。第1作用部112は、係止部111側から遠ざかるにつれて第2回転軸62との距離が短くなるように形成されている。第2回転軸62に回転駆動力が入力されて反時計回転方向D5へ二段カム65が回転されると、係止部111が第1ボス64Aに作用して、アクチュエーター64が同方向へ少しだけ回転する。これにより、アクチュエーター64の第1ボス64Aが係止部111を乗り越える。このとき、アクチュエーター64は、図8において時計回転方向D6への回転が許容され、第1ボス64Aが第1作用部112の曲面上を摺動しながら、時計回転方向D6へ回転する。つまり、二段カム65の反時計回転方向D5への回転時に係止部111が第1ボス64Aを通り過ぎて、第1ボス64Aが第1作用部112の曲面に対向する位置までくると、第1ボス64Aと第2回転軸62との間の距離が縮まる。これにより、係止部111は、アクチュエーター64を反時計回転方向D5へ向けて押す作用力F1が作用しなくなり、また、係止部111によるアクチュエーター64の時計回転方向D6への回転の規制が解除される。その結果、アクチュエーター64の第1ボス64Aは、第1作用部112の曲面上を摺動しながら、時計回転方向D6へ回転する。以下、このときに第1ボス64Aと第1作用部112の曲面との間に生じる摺動抵抗などの負荷を第1負荷F21と称する。つまり、前記第1負荷F21は、アクチュエーター64が前記第3位置にある状態で二段カム65が前記初期位置から反時計回転方向D5へ回転されたときに第1カム101が第1ボス64Aに接触し、そのときに第1ボス64A通じてアクチュエーター64に付与される時計回転方向D6の力である。前記第1負荷F21は、図9に示されるように、アクチュエーター64の時計回転方向D6への回転を阻害する方向に働くものであり、アーム部93を介してリフト板45の後端部48を下向きに押圧する力として作用する。
前記第1負荷F21は、二段カム65が前記初期位置(図8参照)から前記中継開始位置(図9参照)に到達するまで生じる。前記第1負荷F21は、リフト板45を上方へ付勢する前記付勢力F10よりも小さい。したがって、アクチュエーター64は、前記付勢力F10を受けることにより時計回転方向D6へ回転し始める。つまり、アクチュエーター64によって上昇が抑えられていたリフト板45が前記第1位置から前記第2位置へ向けて移動し始める。このときのリフト板45の上昇速度をV1とする。なお、前記第1負荷F21は、二段カム65が前記中継開始位置に近づくにつれて第1ボス64Aが第2回転軸62に近づくため小さくなるが、前記付勢力F10もリフト板45の上昇とともに小さくなる。したがって、二段カム65が前記初期位置から前記中継開始位置に到達するまでの間は、リフト板45の速度V1に大きな変化はない。
図9は、二段カム65が前記中継開始位置まで回転された状態を示す。前記中継開始位置は、二段カム65が前記初期位置から反時計回転方向D5へ所定の角度θ1だけ回転されたときの位置である。本実施形態では、角度θ1は60°である。つまり、前記中継開始位置は、前記初期位置から反時計回転方向D5へ角度θ1隔てられた位置である。前記中継開始位置において、第1作用部112は第1ボス64Aに接触している。また、二段カム65が前記中継開始位置に到達したときに、第2カム102の第2作用部113が第2ボス64Bに接触する。
本実施形態では、二段カム65が前記中継開始位置から更に反時計回転方向D5へ回転されると、第1カム101は第1ボス64Aから離間する(図10参照)。一方、第2カム102の第2作用部113は、二段カム65が前記中継開始位置から前記中継終了位置(図10参照)に到達するまで、第2ボス64Bに接触する。そして、二段カム65が前記中継終了位置から更に反時計回転方向D5へ回転されて前記解除位置に到達すると、第2カム102の第2作用部113は、第2ボス64Bから離間する。
つまり、第1カム101は、前記初期位置から前記中継開始位置までの間は、第1作用部112を通じてアクチュエーター64に前記第1負荷F21を作用していたが、前記中継開始位置を境にして、第1カム101は前記第1負荷F21を作用しなくなる。その代わり、第1カム101の役割を引き継いで、前記中継開始位置以降は、第2カム102が第2作用部113を通じてアクチュエーター64に後述の第2負荷F22を作用する。ここで、二段カム65が前記中継開始位置から更に反時計回転方向D5へ回転されると、第2ボス64Bは第2作用部113の曲面上を摺動する。このときに生じる摺動抵抗などの負荷が前記第2負荷F22である。つまり、前記第2負荷F22は、二段カム65が前記中継開始位置から反時計回転方向D5へ回転されたときに第2カム102が第2ボス64Bに接触し、そのときに第2ボス64B通じてアクチュエーター64に付与される時計回転方向D6の力である。前記第2負荷F22は、アクチュエーター64の時計回転方向D6への回転を阻害する方向に働くものであり、アーム部93を介してリフト板45の後端部48を下向きに押圧する力として作用する。この第2負荷F22は、前記第1負荷F21よりも大きい力である。
本実施形態では、第2カム102及び第2ボス64Bの接触点を通る接面の傾斜角θ12(図10(B)参照)は、第1カム101及び第1ボス64Aの接触点を通る接面の傾斜角θ11(図9(A)参照)よりも小さい。具体的には、傾斜角θ12が概ね20°であるのに対して、傾斜角θ11は概ね85°である。このため、図9(A)に示される状態では、二段カム65の第1カム101が第1ボス64Aを下方に押圧する押圧力により前記第1負荷F21が生じているが、図10(B)に示される状態では、二段カム65の第2カム102が第2ボス64Bを下方に押圧するより大きな押圧力が作用するため、その押圧力の分だけ、前記第2負荷F22は前記第1負荷F21よりも大きくなる。
前記第2負荷F22は、二段カム65が前記中継終了位置に到達するまで生じる。つまり、第2カム102の第2作用部113は、前記中継終了位置までは第2ボス64Bに接触し、前記中継終了位置以降は第2ボス64Bから離間する。前記中継終了位置は、前記初期位置から反時計回転方向D5へ角度θ2(>θ1)を隔てた位置である。本実施形態では、角度θ2は80°である。前記第2負荷F22は、前記第1負荷F21よりも大きいが、リフト板45を上方へ付勢する前記付勢力F10よりも小さい。したがって、アクチュエーター64は、前記付勢力F10を受けることにより時計回転方向D6へ継続して回転するが、前記第2負荷F22の影響により、そのときの回転速度は減速する。したがって、リフト板45の上昇速度も前記速度V1よりも遅い速度V2に減速される。
そして、更に二段カム65が回転されて前記解除位置(図11参照)に到達すると、二段カム65は、第1ボス64A及び第2ボス64Bのいずれにも接触しない状態となる。このときの状態が前記解除位置である。このとき、アクチュエーター64には、二段カム65から負荷を受けず、リフト板45から付勢力F10だけを受ける。給紙カセット24に収容された印刷用紙の枚数にもよるが、前記中継終了位置から前記解除位置までの間で、リフト板45は、前記第2位置に到達しており、最上位の印刷用紙の上面がピックアップローラー51に当接している。なお、前記解除位置は、前記初期位置から反時計回転方向D5へ角度θ3(>θ2)を隔てた位置である。本実施形態では、角度θ3は90°である。
また、制御部80は、上述のように構成されたリフト駆動ユニット60に対して、第1給送部32によって印刷用紙の給送動作の実行指示が無い状態では、二段カム65を前記初期位置に配置させるように制御する。そして、前記給送動作の実行指示が入力されると、電磁クラッチ58をオンにして、二段カム65を前記初期位置(図8に示される位置)から前記解除位置(図11に示される位置)まで回転させ、前記解除位置に到達したときに電磁クラッチ58をオフにする。二段カム65が前記初期位置又は前記解除位置に到達したかどうかの判定は、例えば、第2回転軸62にロータリーエンコーダーなどの回転角度センサーを設け、そのセンサー出力に基づいて判定可能である。
第1カム101は、その外周面に第3作用部114(本発明の押圧付与部の一例)を有する。図11に示されるように、第3作用部114は、第1カム101の外周面に形成された段部であって、二段カム65が前記解除位置にあり、アクチュエーター64が前記第2位置にある状態で、第1ボス64Aの近傍に設けられている。第3作用部114は、二段カム65が前記解除位置から反時計回転方向D5へ回転されて前記初期位置に戻る過程で、第1ボス64Aに接触して、アーム部93を介してリフト板45の後端部48を下方へ変位させる押圧力F30(図12参照)を付与する。具体的には、図12に示されるように、第3作用部114は、前記解除位置から二段カム65が反時計回転方向D5へ回転されたときに第1ボス64Aに当接する。これにより、第3作用部114は、第1ボス64Aを反時計回転方向へ押圧する。このときの押圧力F30は、アーム部93からリフト板45の後端部48に作用する。前記押圧力F30は、リフト板45を上方へ付勢する付勢力F10よりも大きい。この押圧力F30を受けて、アクチュエーター64は、反時計回転方向D5へ回転し始める。アクチュエーター64が前記第3位置まで回転すると、第3作用部114は第1ボス64Aを通り過ぎて、代わりに、第3作用部114から係止部111までの曲面115が第1ボス64Aを付勢力F10に抗して押圧する。そして、二段カム65が、係止部111が第1ボス64Aに当接する前記初期位置まで到達すると、制御部80によって二段カム65は停止される。このとき、アクチュエーター64は、係止部111によって前記第3位置に保持される。
このように、リフト駆動ユニット60が構成されているため、給紙カセット24が筐体10Aに装着されて係合部70による係合が解除された場合にリフト板45が弾性部材34Aの付勢力を受けて上方へ移動しても、その移動速度が段階的に減速される。具体的には、係合解除直後は前記速度V1で上昇するが、リフト駆動ユニット60の二段カム65が前記中継開始位置に到達すると、前記速度V1よりも遅い前記速度V2で上昇する。このため、リフト板45がピックアップローラー51に当接する前に減速されるため、接触時の衝突音が生じなくなる。
また、ピックアップローラー51などと共用される第1モーター54の一定速度の回転駆動力を利用してリフト板45を上下方向7へ昇降させることができるので、個別の駆動源を設ける場合に比べてリフト駆動ユニット60の周辺の省スペース化を実現することができ、装置のコンパクト化にも寄与できる。
ところで、給紙カセット24が筐体10Aに装着されて装着位置に到達した場合であっても、解除部材49(図4参照)やロック部材71に不具合が生じている場合は、リフト板45が前記第1位置(図4(C)の位置)に保持されたままとなる。この場合、給紙カセット24に収容された印刷用紙がリフト板45のピックアップローラー51の周面に接触することができないため、給紙カセット24に対する給送動作が行われても、印刷用紙は給送されないという問題が生じる。この問題は、リフト駆動ユニット60が故障などして動かなくなってアクチュエーター64のアーム部93がリフト板45を常に下方へ押し付けた状態となった場合や、弾性部材34Aに不具合が生じて付勢力がリフト板45に付与されなくなった場合にも生じる。とりわけ、リフト駆動ユニット60のように二段カム65を用いて駆動力を伝達する場合、部材と部材の接触箇所や駆動伝達箇所が多くなるため、部材と部材が固着してアクチュエーター64が前記第3位置で固着するおそれがある。また、シートセンサー44が故障していて検知位置P2を通る印刷用紙を検知できない場合も上記問題が生じうる。
一方、制御部80は、給送動作後のシートセンサー44の検出信号の変化に基づいて、縦搬送路26のシートセンサー44の検知位置P2に印刷用紙が到達しなかったこと(以下「無給紙」という。)を判定することが可能である。例えば、給送動作後から所定の時間が経過するまでにシートセンサー44の出力に変化が無かった場合に、制御部80は、前記無給紙と判定する。しかしながら、従来構成の画像形成装置では、制御部80は、前記無給紙の原因が、リフト板45の上昇異常による給紙エラーなのか、それとも、給紙はされたが縦搬送路26で生じた用紙詰まり(ジャム)なのかを判定することができない。本実施形態に係る画像形成装置10においては、制御部80が後述の異常判定処理を行うことによって、リフト板45の位置を検知する位置センサーを用いることなく、リフト板45の上昇異常を判定することが可能である。
以下、図13のフローチャートを参照して、制御部80によって実行される異常判定処理の手順の一例について説明する。図13におけるS11、S12、…は処理手順(ステップ)の番号を表している。前記異常判定処理が制御部80によって実行されることにより、本発明の判定部が実現される。なお、以下の異常判定処理は、給紙カセット24が筐体10Aにおける装着位置に装着された状態で行われる。
画像形成装置10に対して、画像形成動作とともに給紙カセット24から印刷用紙を給送する給送動作の指示信号が入力されると、制御部80のモータードライバー85は、第1モーター54を駆動させて、第1給送部32を動作させて、給紙カセット24から印刷用紙を縦搬送路26に給送させる給送動作(第1給送動作)を行う。具体的には、制御部80は、第1モーター54を駆動させて、給紙ローラー52、搬送ローラー22、排紙ローラー23を回転させる(S11)。また、制御部80は、電磁クラッチ57に対してON信号を出力して、電磁クラッチ57をオン状態(嵌状態)に制御する。これにより、ピックアップローラー51が回転されて、給紙カセット24から印刷用紙を縦搬送路26へ給送可能となる。ここで、給紙カセット24から印刷用紙を給送させる動作は、本発明の第1給送部32による第1給送動作に該当する。なお、ピックアップローラー51は、リフト板45が前記第2位置にあるときに印刷用紙を給送可能であるが、リフト板45の上昇異常が生じていて前記第1位置にリフト板45がある場合は、印刷用紙の給送はできない。なお、搬送ローラー22によって搬送される位置まで印刷用紙が給送されると、制御部80は、電磁クラッチ57をオフ状態(脱状態)にして、ピックアップローラー51の回転を停止させる。
次に、制御部80は、シートセンサー44の検知位置P2に印刷用紙の先端が到達したかどうかを判定する(S12)。具体的には、制御部80は、予め定められた設定時間内に、シートセンサー44の出力信号がLOWレベルからHIGHレベルになったときに、印刷用紙の先端が検知位置P2に到達したと判定する。ここで、シートセンサー44が印刷用紙の先端を検知したと判定されると、制御部80は、当該異常判定処理を終了する。一方、制御部80は、前記設定時間内に、シートセンサー44の出力信号がLOWレベルからHIGHレベルにならなかったときに、印刷用紙の先端が検知位置P2に到達しなかったと判定する。つまり、制御部80は、印刷用紙野先端が検知されたかったことを前記無給紙と判定する。
前記無給紙と判定されると、制御部80は、前記無給紙と判定された回数、つまり、前記無給紙が発生した発生回数(本発明の未検知回数に相当)をカウントアップする(S13)。カウントアップしたカウント値は、内部メモリー84に記憶される。
次に、制御部80は、前記無給紙の発生回数が予め定められた設定回数に達したかどうかを判定する(S14)。本実施形態では、前記設定回数は、例えば2回に設定されている。もちろん、前記設定回数の具体的な回数は任意に定めることができる。
ステップS14において前記無給紙の発生回数が前記設定回数未満であると判定された場合は、ステップS11に戻り、ステップS11以降の処理が繰り返される。つまり、制御部80は、前記発生回数(検知位置P2で印刷用紙が検知されなかった未検知回数)が前記設定回数に到達するまで、給紙カセット24からの印刷用紙の給送動作を行う。一方、ステップS14において前記無給紙の発生回数が前記設定回数に達したと判定されると、制御部80は、操作表示部25の表示部に手差しトレイ38に印刷用紙をセットするように促すメッセージを表示する(S15)。
その後、画像形成装置10に対して、手差しトレイ38から印刷用紙を給送する給送動作の指示信号が入力されると、制御部80のモータードライバー85は、第2モーター43を駆動させて、第2給送部39を動作させて、手差しトレイ38から印刷用紙を中継搬送路28に給送させる給送動作(第2給送動作)を行う。具体的には、制御部80は、第2モーター43を駆動させて、ピックアップローラー391、給紙ローラー392、搬送ローラー393を回転させる(S16)。なお、このとき、第1モーター54は駆動されており、電磁クラッチ57はオフ状態にされている。
ステップS16の給送動作が行われると、手差しトレイ38の印刷用紙は、中継搬送路28に給送され、更に、接続点P1を通って縦搬送路26に搬送されて、検知位置P2へ搬送される。そして、制御部80は、ステップS12と同様に、シートセンサー44の検知位置P2に手差しトレイ38から給送された印刷用紙の先端が到達したかどうかを判定する(S17)。
ステップS17において、シートセンサー44が印刷用紙の先端を検知したと判定されると、制御部80は、給紙カセット24からの給送動作時の前記無給紙の原因がリフト板45の上昇異常であると判定し、前記上昇異常を示すエラー出力を行う(S18)。このように、制御部80は、第1給送部32による印刷用紙の給送動作後にシートセンサー44によって印刷用紙が検知されなかった場合に、第2給送部39による手差しトレイ38からの印刷用紙の給送動作を行い、その給送動作後にシートセンサー44によって印刷用紙が検知された場合に、リフト板45の上昇異常と判定する。この場合、画像形成装置10において、給紙カセット24の使用を禁止する処理を行う(S19)。例えば、画像形成装置10において給紙カセット24を選択できないようにする。また、リフト上昇機構34やリフト駆動ユニット60の動作チェックを促すメッセージを操作表示部25の表示部に表示してもよい。
一方、ステップS17において、シートセンサー44が印刷用紙の先端を検知しなかったと判定されると、制御部80は、前記無給紙の原因が縦搬送路26における用紙詰まり又はシートセンサー44の故障と判定し、用紙詰まり又はセンサー異常を示すエラー出力を行い(S20)、用紙除去を促すメッセージ或いはシートセンサー44の動作チェックを促すメッセージを操作表示部25の表示部に表示する。
このように、制御部80は、リフト板45の位置を検知する位置センサーを設けなくても、リフト板45の上昇異常を判定することができる。これにより、画像形成装置10における部品点数を増やすことなく、また、コストアップを招くことなく、リフト板45の上昇異常を判定することができる。
また、上述したように、前記無給紙の発生回数が前記設定回数未満であると判定された場合は、ステップS11に戻り、前記発生回数が前記設定回数に到達するまで、給紙カセット24からの印刷用紙の給送動作を行うことにより、リフト板45の上昇異常の判定の確実性を高めることができる。
なお、上述の実施形態では、本発明の第2シート収容部の一例として手差しトレイ38を例示したが、例えば、給紙カセット24の上段又は下段に給紙カセット24と同じ構成の他の給紙カセットが設けられている場合は、本発明の第2シート収容部は、前記他の給紙カセットであってもよい。
また、上述の実施形態では、前記異常判定処理を行う画像形成装置10を例示したが、本発明は、前記異常判定処理を行う制御部を備え、更に、シートセンサー44、給紙カセット24、リフト上昇機構34、第1給送部32、手差しトレイ38、及び第2給送部39を備えるシート給送装置であってもよい。