JP6597389B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、R−T−B系焼結磁石の製造方法に関する。
214B型化合物(Rは希土類元素、TはFeを必ず含む遷移元素)を主相とするR−T−B系焼結磁石は、永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や、ハイブリッド車搭載用モータ等の各種モータや家電製品等に使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、高温で固有保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」と表記する)が低下するため、不可逆熱減磁が起こる。不可逆熱減磁を回避するため、モータ用等に使用する場合、高温下でも高いHcJを維持することが要求されている。
R−T−B系焼結磁石は、R214B型化合物中のRの一部を重希土類元素RH(Dy、Tb)で置換すると、HcJが向上することが知られている。高温で高いHcJを得るためには、R−T−B系焼結磁石中に重希土類元素RHを多く添加することが有効である。しかし、R−T−B系焼結磁石において、Rとして軽希土類元素RL(Nd、Pr)を重希土類元素RHで置換すると、HcJが向上する一方、残留磁束密度Br(以下、単に「Br」と表記する)が低下してしまうという問題がある。また、重希土類元素RHは希少資源であるため、その使用量を削減することが求められている。
そこで、近年、Brを低下させないようにより少ない重希土類元素RHによってR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが検討されている。例えば、重希土類元素RHを効果的にR−T−B系焼結磁石に供給し拡散させる方法として、特許文献1〜4にRH酸化物またはRHフッ化物と、各種金属MまたはMの合金との混合粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に存在させた状態で熱処理することによって、RHやMを効率よくR−T−B系焼結磁石に拡散させて、R−T−B系焼結磁石のHcJを高める方法が開示されている。
特許文献1には、M(ここでMはAl、Cu、Znから選ばれる1種又は2種以上)を含有する粉末とRHフッ化物の粉末の混合粉末を用いることが開示されている。また、特許文献2には、熱処理温度で液相となるRTMAH(ここでMはAl、Cu、Zn、In、Si、Pなどから選ばれる1種または2種以上、Aはホウ素または炭素、Hは水素)からなる合金の粉末を用いることが開示されており、この合金の粉末とRHフッ化物などの粉末との混合粉末でも良いと開示されている。
特許文献3、特許文献4では、RM合金(ここでMはAl、Si、C、P、Tiなどから選ばれる1種または2種以上)の粉末またはM1M2合金(M1およびM2はAl、Si、C、P、Tiなどから選ばれる1種または2種以上)の粉末と、RH酸化物との混合粉末を用いることによって熱処理時にRM合金やM1M2合金によりRH酸化物を部分的に還元し、より多量の重希土類元素RHを磁石内に導入することが可能であると開示されている。
特開2007−287874号公報 特開2007−287875号公報 特開2012−248827号公報 特開2012−248828号公報
特許文献1〜4に記載の方法には、RH化合物の粉末を含む混合粉末を磁石全面に存在させて熱処理する方法が開示されている。すなわち、これらの方法では、その具体的開示において、上記混合粉末を水や有機溶媒に分散させたスラリーに磁石を浸漬して引き上げている(浸漬引上げ法)。その場合、スラリーから引き上げられた磁石に対して熱風乾燥または自然乾燥を行っている。また、このようなスラリーに磁石を浸漬する代わりに、前記スラリーを磁石にスプレー塗布することが開示されている(スプレー塗布法)。これらの方法では、磁石全面にスラリーを塗布できるため、磁石全面から重希土類元素RHを磁石内に導入することが可能であり、熱処理後のHcJをより大きく向上させることができる。しかしながら、浸漬引上げ法においては、どうしても重力によってスラリーが磁石下部に偏ってしまう。また、スプレー塗布法においては、表面張力によって磁石端部の塗布厚さが厚くなる。いずれの方法もRH化合物を磁石表面に均一に存在させるのが困難である。またいずれの方法も、塗布する際には磁石に塗布する量よりかなり多くのスラリーを用意する必要があり、特にスプレー塗布法においては、塗布装置内の壁面にもスラリーが塗布されてしまい、スラリーの歩留まりが悪い。その結果、希少資源である重希土類元素RHを無駄に消費してしまうという問題がある。
本開示は、R−T−B系焼結磁石の改質を行うために粉末粒子の層を磁石表面に形成するとき、これらの粉末粒子を含むペーストをR−T−B系焼結磁石の全面に均一に無駄なく塗布することができ、磁石全面から重希土類元素RHを拡散させることができる新しい方法を提供する。
本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法の実施形態は、平行な第1主面および第2主面を有する平板状の複数のR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeを必ず含む遷移元素)を用意する工程Aと、複数の吸引孔を有するトレイの上面に、前記第2主面が接するように前記複数のR−T−B系焼結磁石を配列する工程B1と、前記複数の吸引孔を介して前記複数のR−T−B系焼結磁石を前記トレイに吸引しながら、スクリーン印刷により、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面および側面に対して重希土類元素RHの金属、合金および/または化合物(RHはDyおよび/またはTb)の粉末粒子を含むペーストを塗布する工程C1と、前記重希土類元素RHを前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々に拡散させる工程Dとを含む。
ある実施形態において、前記工程B1は、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の側面が、隣接するR−T−B系焼結磁石の側面に接するように前記複数のR−T−B系焼結磁石の位置を決める工程を含む。
ある実施形態において、前記工程B1は、前記複数のR−T−B系焼結磁石の外周部に少なくとも1つのダミー部材を配置し、前記ダミー部材に隣接するR−T−B系焼結磁石の側面に前記ダミー部材を接触させる工程を含む。
ある実施形態において、前記工程C1は、スキージを前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面に対して平行に移動させることにより、前記ペーストの層を前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面に形成する工程を含む。
ある実施形態において、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々は、前記ペーストに含まれる前記粉末粒子が、隣接するR−T−B系焼結磁石の側面が形成する隙間を移動できる大きさの面粗度を有している。
ある実施形態において、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々は、焼結によって形成された表面を有している。
ある実施形態において、前記ペーストは、5〜90Pa・sの範囲の粘度を有する。
ある実施形態において、前記ペーストに含まれる前記粉末粒子は、1μm以上20μm以下のサイズを有している。
ある実施形態において、前記ペーストは、更に、5μm以上150μm以下のサイズを有するRLM合金(RLはNdおよび/またはPr、MはCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上)の粉末粒子を含有している。
ある実施形態において、前記工程B1は、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の側面が、隣接するR−T−B系焼結磁石の側面から所定の距離だけ離間するように前記複数のR−T−B系焼結磁石の位置を決める工程を含む。
ある実施形態において、前記工程B1は、前記複数のR−T−B系焼結磁石の外周部に少なくとも1つのダミー部材を、前記ダミー部材に隣接するR−T−B系焼結磁石の側面と前記ダミー部材の側面が所定の距離だけ離間するように配置する工程を含む。
ある実施形態において、前記工程C1は、スキージを前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面に対して平行に移動させることにより、前記ペーストの層を前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面および前記側面に形成する工程を含む。
ある実施形態において、前記工程C1と前記工程Dとの間において、前記第1主面に前記ペーストが塗布された前記複数のR−T−B系焼結磁石を上下反転させる工程Eと、前記トレイの前記上面に各々の前記第1主面が対向するように前記複数のR−T−B系焼結磁石を前記トレイの前記上面に配列する工程B2と、前記複数の吸引孔を介して前記複数のR−T−B系焼結磁石を前記トレイに吸引しながら、スクリーン印刷により、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第2主面および前記側面に対して前記ペーストを塗布する工程C2とを含む。
本開示の実施形態によれば、R−T−B系焼結磁石の改質を行うための粉末粒子を含むペーストをR−T−B系焼結磁石の複数の面に対して同時に、かつ均一に無駄なく塗布することができる。
塗布前におけるR−T−B系焼結磁石と塗布装置とを示す斜視図である。 配列されたR−T−B系焼結磁石と塗布装置との関係を示す斜視図である。 ダミー部材を示す斜視図である。 スクリーン部材を示す斜視図である。 塗布装置上においてR−T−B系焼結磁石とスクリーン部材との関係を示す斜視図である。 スクリーン印刷の工程途中の状態を示す斜視図である。 スクリーン印刷の工程途中の他の状態を示す斜視図である。 スクリーン印刷の工程終了後の状態を示す斜視図である。 ペースト層で上面が覆われたR−T−B系焼結磁石を示す斜視図である。 上面に対する塗布直前における複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態を模式的に示す断面図である。 上面に対する塗布後における複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態を模式的に示す断面図である。 下面に対する塗布直前における複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態を模式的に示す断面図である。 下面に対する塗布後における複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態を模式的に示す断面図である。 上面に対する塗布直前における複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態の他の例を模式的に示す断面図である。 上面に対する塗布後における複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態の他の例を模式的に示す断面図である。 実施例において、R−T−B系焼結磁石1から切り出したサンプルの場所を示す斜視図である。
まず、本開示による塗布の対象となるR−T−B系焼結磁石と、塗布するペーストの構成を説明する。本開示の実施形態によれば、複数のR−T−B系焼結磁石の各々の表面に、重希土類元素RH(RHはDyおよび/またはTb)の金属、合金および/または化合物の粉末粒子を含むペーストをR−T−B系焼結磁石全面に均一に効率的に塗布することが可能になる。
[R−T−B系焼結磁石母材]
まず、本開示では、重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石母材を準備する。なお、本明細書では、わかりやすさのため、重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石をR−T−B系焼結磁石母材と厳密に称することがあるが、「R−T−B系焼結磁石」の用語はそのような「R−T−B系焼結磁石母材」を含むものとする。このR−T−B系焼結磁石母材は公知のものが使用でき、例えば以下の組成を有する。
希土類元素R:12〜17原子%
B(B(ボロン)の一部はC(カーボン)で置換されていてもよい):5〜8原子%
添加元素M´(Al、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種):0〜2原子%
Tおよび不可避不純物:残部
ここで、希土類元素Rは、主として軽希土類元素RL(Ndおよび/またはPr)であるが、重希土類元素を含有していてもよい。なお、重希土類元素を含有する場合は、重希土類元素RH(Dyおよび/またはTb)の少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記組成のR−T−B系焼結磁石母材は、任意の製造方法によって製造される。R−T−B系焼結磁石の公知の製造工程においては、寸法調整などの為に切削加工や表面研削加工が施される。本開示におけるR−T−B系焼結磁石母材は、それらの加工を行う前、即ち焼結上がりであっても、加工を施された後の加工上がりであってもよい。焼結上がりの場合、R−T−B系焼結磁石は、焼結によって形成された表面(未加工面)を有している。
焼結上がりのR−T−B系焼結磁石の表面粗度はRmax(Ry)50μm〜200μmの範囲内にある。また、加工上がりのR−T−B系焼結磁石の表面粗度はRmax(Ry)6.3μm〜50μmの範囲にある。加工上がりのR−T−B系焼結磁石の表面粗度は、Rmax(Ry)6.3μm〜25μmであり得る。加工上がりのこのような表面粗度は、公知の切削または研削によって実現され得る。
[ペースト]
ペーストは、重希土類元素RHの金属、合金および/または化合物(RHはDyおよび/またはTb)の粉末粒子(以下、拡散剤と称することがある)を含むように調整されている。本実施形態で使用するペーストは、拡散剤、または、拡散剤と拡散助剤(後述する)との混合物を含有する。
拡散剤は、典型的には、RH化合物(RHはDyおよび/またはTb、RH化合物はRHフッ化物および/またはRH酸フッ化物)の粉末(拡散剤の粉末粒子)であり得る。ある好ましい実施形態において、RH化合物粉末は、後述する拡散助剤として機能するRLM合金粉末よりも質量比で等しいか少ない。RH化合物粉末を均一に塗布するには、RH化合物粉末の粒度が小さいことが好ましい。本発明者の検討によれば、RH化合物の粉末の粒度は凝集した2次粒子の大きさにおいて20μm以下が好ましく、10μm以下がより好ましい。小さいものは1次粒子で数μm程度(1μm以上)である。
拡散助剤は、典型的にはRLM合金の粉末(拡散助剤の粉末粒子)であり得る。ここで、RLとしてはRH化合物を還元する効果の高い軽希土類元素が適しており、RLはNdおよび/またはPrである。MはCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上である。拡散助剤の材料としてNd−Cu合金やNd−Al合金を用いると、NdによるRH化合物の還元能力が効果的に発揮され、HcJの向上効果がより高い。また、ある実施形態において、RLM合金はRLを50原子%以上含み、かつ、その融点は後述の拡散熱処理工程(工程D)の熱処理温度以下である。RLM合金の粉末の粒度は150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましい。RLM合金粉末の粒度が小さすぎると酸化しやすく、酸化防止の観点から、RLM合金粉末の粒度の下限は5μm程度である。RLM合金の粉末の粒度の典型例は、5μm〜100μmである。
RLの含有割合が50原子%以上のRLM合金は、RLがRH化合物を還元する能力が高く、かつ、融点が後述の拡散熱処理工程(工程D)の熱処理温度以下である。このため、熱処理時に溶融してRH化合物を効率よく還元し、より高い割合で還元されたRHがR−T−B系焼結磁石母材中に拡散して少量でも効率よくR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることができる。ある実施形態において、RLM合金はRLを65原子%以上含む。
ペーストは、上述したRH化合物粉末およびRLM合金粉末に、バインダー、水および/または溶媒を混合して作製され得る。溶媒は例えば有機溶剤であり得る。なお、バインダーおよび溶媒は、その後の熱処理の昇温過程において、RLM合金の融点以下の温度で熱分解や蒸発が生じてR−T−B系焼結磁石の表面から除去されるものであればよく、その種類は特に限定されない。RH化合物粉末およびRLM合金粉末と、バインダーと、溶媒とは、例えばRH化合物粉末およびRLM合金粉末が重量比でペースト全体の70%〜90%、好ましくは75%〜85%となるように配合され得る。
本開示の実施形態では、後述するスクリーン印刷の特殊性のため、ペーストの粘度が重要である。粘度が低すぎると、ペーストがR−T−B系焼結磁石の側面を介して後述する吸引装置に吸い込まれてしまったり、R−T−B系焼結磁石の吸引される側の面に接触してしまったりする可能性がある。このようなことが生じると、装置の清浄化のためのメンテナンスが過重になったり、R−T−B系焼結磁石上のペースト層の厚さがばらついたりしてしまう。この観点から、ペーストの粘度は5Pa・s〜90Pa・sが好ましく、5Pa・s〜25Paがより好ましく、15Pa・s〜25Pa・sが更に好ましい。
<塗布工程>
次に、図面を参照しながら、本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法における塗布工程および拡散工程を説明する。
本開示の実施形態においては、図1Aに示されるように、第1主面1a、第2主面1b、および側面1c、1dを有する平板状の複数のR−T−B系焼結磁石1(R−T−B系焼結磁石母材)を用意する(工程A)。この例における各R−T−B系焼結磁石1は、互いに平行な第1主面1aおよび第2主面1bを有している。本開示における「平行」の用語の意義は、数学的な厳密性を有しておらず、実質的にほぼ平行であればよい。R−T−B系焼結磁石1の形状およびサイズは、図示されている例に限定されない。
R−T−B系焼結磁石1の表面、すなわち、第1主面1a、第2主面1b、および側面
1c、1dは、粉末成形体の焼結工程と、必要に応じて付加される加工工程とを経て形成される微細な凹凸を有している。後述する塗布工程により、ペースト層でR−T−B系焼結磁石1の表面を覆うとき、R−T−B系焼結磁石1の表面粗度が重要な要素として機能する。この点については後述する。
ペーストの塗布工程は、図1Aに示される、複数の吸引孔12を有するトレイ10と、トレイ10を載せる吸引装置14とを備える塗布装置100を用いて行う。図示される例において、複数の吸引孔12は、トレイ10の上面において、行および列状に配列されている。吸引孔12の配列は、このような例に限定されない。吸引孔12は、トレイ10の上面において、ハニカム状に配置されていても良いし、ランダムに配置されていても良い。トレイ10の上面において、吸引孔12の配置は、任意の位置に置かれた個々のR−T−B系焼結磁石1の第2主面1bが少なくとも1つの吸引孔12を覆うように設定される。個々のR−T−B系焼結磁石1の第1主面1a(第2主面1b)のサイズが、例えば、縦32mm、横16mmのとき、吸引孔12は、例えば1辺が4mmの正方形の頂点に相当する格子点に位置するようにマトリックス状に配列され得る。個々の吸引孔12のサイズ(内径)は、例えば1mm〜3mmの範囲に設定され得る。トレイ10の上面の法線方向から視た吸引孔の形状は、円形である必要は無く、楕円形、または多角形であってもよい。
トレイ10は、例えばアルミニウム、鉄、ステンレスなどの金属材料、またはアルミナなどのセラミックス材料から形成され得る。トレイ10を金属の網から形成することも可能である。
吸引装置14は、不図示のポンプまたは他の減圧装置に接続され、個々の吸引孔12を介してトレイ10の上方から下方に向けて大気を吸い込むことができるよう構成されている。本実施形態におけるトレイ10は、吸引装置14から自在に脱着することができる。トレイ10は、吸引装置14に一体化されていてもよい。吸引装置14の吸引力は、例えば−100kPa〜−500kPa、好ましくは−200kPa〜−300kPaに設定され得る。
次に、図1Bに示されるように、トレイ10の上面に複数のR−T−B系焼結磁石1を配列する(工程B1)。このとき、R−T−B系焼結磁石1の第2主面1bがトレイ10の上面に接するように、すなわち、各R−T−B系焼結磁石1の第1主面1aが上方を向くように複数のR−T−B系焼結磁石1を配列する。また、この例では、複数のR−T−B系焼結磁石1を密に配列する。すなわち、隣接するR−T−B系焼結磁石1は、各々の側面1cが相互に接するように配置する。各R−T−B系焼結磁石1は、トレイ10の吸引孔12が形成する負圧により、トレイ10の上面に吸い付いた状態を形成する。このため、所定限度以下の外力をR−T−B系焼結磁石1に付与しても、R−T−B系焼結磁石1の位置はずれず、各R−T−B系焼結磁石1の配置関係が安定して維持される。
前述のようにR−T−B系焼結磁石1は焼結上がりのものでも良い。これらは表面に僅かな反りが生じていることもある。しかし、R−T−B系焼結磁石1がトレイ10に吸い付いた状態の間はこのようなわずかな反りは解消され、問題なくペーストを塗布することが可能である。このような吸引によってR−T−B系焼結磁石1がトレイ10の上面を押す圧力は、例えば、0.1MPa〜0.5MPa、好ましくは0.2MPa〜0.5MPa、より好ましくは0.2MPa〜0.3MPaの範囲内に設定され得る。
図示される例において、個々のR−T−B系焼結磁石1は、側面1cを介して一方向に並んで配列されており、以下の説明もこの例に対して行っているが、磁石配列の態様は、この例に限定されない。さらにR−T−B系焼結磁石1の長軸方向に沿って複数のR−T−B系焼結磁石1が配置されていても良い。その場合、R−T−B系焼結磁石1は、側面1cおよび1dを介して接触することになる。
前述したように各R−T−B系焼結磁石1の表面には微細な凹凸が存在するため、R−T−B系焼結磁石1の第2主面1bとトレイ10の上面との間には、わずかな隙間が局在している。また、隣接するR−T−B系焼結磁石1の側面1cを互いに接触させていても、各R−T−B系焼結磁石1の側面1cに存在する微細な凹凸のため、隣接するR−T−B系焼結磁石1の間に気流の通り道が形成される。このため、R−T−B系焼結磁石1に覆われた領域に位置する吸引孔12は、R−T−B系焼結磁石1の第2主面1bおよび側面1cに沿って大気を吸い込むことができる。吸引孔12が作る気流は、密に配列された状態のR−T−B系焼結磁石1の側面1cに沿っても流れるため、R−T−B系焼結磁石1の上面にペーストを塗布するとき、隣接するR−T−B系焼結磁石1の隙間でもペーストに対する吸引力が発生する。また、このような隙間は毛細管現象によってもペーストを吸い込む機能を発揮し得る。このため、1回のペースト塗布工程により、複数のR−T−B系焼結磁石1の各々に対して同時に複数の面に対する塗布が可能になる。
前述のように、ペーストには1μm〜20μm程度、典型的には1μm〜10μm程度の大きさの拡散剤の粉末粒子と、5μm〜150μm程度、典型的には5μm〜100μm程度の大きさの拡散助剤の粉末粒子とが含まれている。R−T−B系焼結磁石1が加工上がりの場合、そのRmaxは6.3μm〜50μmの範囲内である。このような表面粗度を有する2つのR−T−B系焼結磁石1が接している場合、その隙間には、表面粗度の数値よりも大きな隙間を有する経路が幾つも形成され得る。特にサイズが相対的に小さな拡散剤の粉末粒子は、その大きさによらず、隣接するR−T−B系焼結磁石1の隙間を移動することができる。仮に、サイズが相対的に大きな拡散助剤が隙間を流れにくい状況が生じたとしても、拡散助剤の塗布量はHcJ向上の程度に直接関与しないため、問題はない。R−T−B系焼結磁石1が焼結上がりの場合、そのRmax(Ry)は50μm〜200μmの範囲内であるため、拡散剤および拡散助剤は、隣接するR−T−B系焼結磁石1の隙間を流れることができる。
必要に応じてペーストの粘度と吸引装置14の吸引力を調整することにより、R−T−B系焼結磁石1の表面粗度Rmaxの倍程度の大きさまでの粉末粒子がR−T−B系焼結磁石1の隙間に流れ込むようにすることが可能である。拡散剤粉末の粒度が20μm以下の場合、粒度分布が正規分布に近ければ、その半分以上が10μm以下程度の粒子である。従って、R−T−B系焼結磁石1の表面粗度Rmax(Ry)が、下限の6.3μmでも隣接するR−T−B系焼結磁石1の隙間にその大部分が流れ込む。また、拡散助剤の粉末は、粒度分布が正規分布に近ければ、粉末全体の粒度が100μm以下であっても、20μm以下の粒子が全体の2%以上程度、20〜38μmの粒子が全体の15%以上程度である。この場合、全体の35%以上程度が粒度45μm以下である。その結果、R−T−B系焼結磁石1の表面粗度Rmax(Ry)が、下限の6.3μmでも、隣接するR−T−B系焼結磁石1の隙間にその一部が流れ込み、また、表面粗度Rmax(Ry)が25μm程度であれば、粉末全体の半分近くの粒子が流れ込む。
次に、図1Cに示されるように、並べられた複数のR−T−B系焼結磁石1の外周部に少なくとも1つのダミー部材20を配置し、外周に位置するR−T−B系焼結磁石1の側面1cにダミー部材20を接触させる。ダミー部材20は、1つの四角枠であってもよいし、例えばL字型の一対のパーツから構成されていても良い。ダミー部材20はR−T−B系焼結磁石1の厚さと同じ、または同じ程度の厚さを有していれば良く、その材料は任意である。ただし、ダミー部材20の、少なくともR−T−B系焼結磁石1と接する面の表面粗度は、R−T−B系焼結磁石1の表面粗度と同程度であることが好ましい。ダミー部材20として、複数のR−T−B系焼結磁石を用いても良い。
ダミー部材20に隣接するR−T−B系焼結磁石1の側面1cおよび1dとダミー部材20との間にも、隣接するR−T−B系焼結磁石1の隙間と同様の大きさの隙間が形成され得る。そのため、前述したR−T−B系焼結磁石1の側面1cおよび1dに沿った下方への気流と同様の気流が最外周に位置するR−T−B系焼結磁石1の外周側(側面1cおよび1d)にも発生し、また毛細管現象が生じ得る。
次に、図1Dおよび図1Eに示されるように、スクリーン印刷のためのスクリーン部材30を用意し、トレイ10上の複数のR−T−B系焼結磁石1の外周部に配置されたダミー部材20を囲むようにスクリーン部材30を配置する。スクリーン部材30は、通常のスクリーン印刷に使用されるような転写パターンを有している必要は無い。したがって、本実施形態に使用するスクリーン部材30は、配列されたR−T−B系焼結磁石1の上面(第1主面1a)の全体を露出させるように開口されている。スクリーン部材30の厚さ、すなわち、スクリーン部材30の上面の高さは、R−T−B系焼結磁石1の厚さよりも、塗布するペーストの層厚に相当する値だけ大きく設定される。
図2は、塗布直前における、複数のR−T−B系焼結磁石1の配列状態を模式的に示す断面図である。図2に示されるように、隣接するR−T−B系焼結磁石1の側面1cは互い接触している。図面に現れていないが、隣接するR−T−B系焼結磁石1の側面1cの間には、側面1cが持つ微細な凹凸により、小さな隙間が存在し得る。なお、ダミー部材20および/またはスクリーン部材30によって、図中の水平方向の向きにR−T−B系焼結磁石1を押圧してもよい。このような押圧を行うことにより、隣接するR−T−B系焼結磁石1の密着度を調整することも可能である。
次に、図1Fおよび図1Gに示されるように、複数の吸引孔12を介して複数のR−T−B系焼結磁石1をトレイ10に吸引しながら、複数のR−T−B系焼結磁石1の各々の第1主面1aに対してペースト50を塗布する(工程C1)。具体的には、スキージ40を複数のR−T−B系焼結磁石1の各々の第1主面1aに対して平行に移動(スライド)させることにより、ペースト50の層(以下、ペースト層52)を複数のR−T−B系焼結磁石1の各々の第1主面1aに形成する。このようなスキージ40の動作は、不図示の機構によって機械的に実行され得る。ペースト50の供給とスキージ40の動作は、公知のスクリーン印刷装置によるものと特に異なるものではない。
図1Hは、ペースト層52が複数のR−T−B系焼結磁石1の第1主面1aを覆った状態を模式的に示している。ペースト層52の厚さは10μm〜1mm程度である。図3は、塗布直後における、複数のR−T−B系焼結磁石1の状態を模式的に示す断面図である。図示されるように、配列されたR−T−B系焼結磁石1の第1主面1aを覆うようにペースト層52が形成されている。このとき、R−T−B系焼結磁石1の側面1cにもペースト層が形成される。
この塗布工程により、ペースト50は、密に隣接する複数のR−T−B系焼結磁石1の側面1cが形成する小さな隙間に侵入し、各R−T−B系焼結磁石1の側面1cにもペーストの薄い層(厚さ10〜150μm)を形成することができる。本開示の実施形態では、R−T−B系焼結磁石1の上面(第1主面1a)にペースト層52を形成する際、同一工程において、R−T−B系焼結磁石1の側面1cに対してもペースト塗布を行う点に特徴がある。
このような、R−T−B系焼結磁石1の側面1cへのペースト塗布を実現するには、隣接するR−T−B系焼結磁石1の側面1cが形成する隙間の大きさを適切に調整する必要がある。前述したように、本実施形態で使用するペースト50は、重希土類元素RHの金属、合金および/または化合物(RHはDyおよび/またはTB)の粉末粒子を含むように調整され、拡散剤と拡散助剤とを含有している。これらの粉末粒子は、1μm〜150μmの粒径を有しており、また、ペースト50は粘度を持っている。このため、R−T−B系焼結磁石1の少なくとも側面1cが完全に平坦であると、隣接するR−T−B系焼結磁石1が密着した状態では、ペースト50による側面1cの塗布は実現しない。このため、本実施形態では、R−T−B系焼結磁石1の側面1cの粗度を前述した範囲に調整している。このような表面粗度は、通常のR−T−B系焼結磁石製造工程によって容易に実現できる範囲にある。
一方、発明者の検討によると、ペースト50の粘度が5Pa・s〜90Pa・s、好ましくは5Pa・s〜25Pa・s、更に好ましくは15Pa・s〜25Pa・sの範囲に調整されると、吸引装置を汚すことなく、R−T−B系焼結磁石1の側面1cへの塗布が実現することがわかった。ペースト50の粘度を上記範囲に調整し、必要に応じて吸引の圧力を調整することで、R−T−B系焼結磁石1の第1主面1aにペーストを塗布する工程で側面1cの上下方向に3分の2程度ペースト層を塗布できる。その結果、ペーストが吸引装置に吸い込まれてしまったり、R−T−B系焼結磁石1の第2主面1bに接触してしまったり、トレイ10の吸引される側の面に接触してトレイ10を汚してしまったりすることがない。側面1cの残りの部分は後述の通りR−T−B系焼結磁石1の第2主面1bにペーストを塗布する工程で同様に塗布される。
ペースト50の粘度は、使用するバインダーの種類やバインダーと粉末粒子の配合割合、カップリング剤等によって上記の範囲に調整され得る。バインダーの種類は前述の通り特に限定されないが、ペースト50の粘度を調整しやすく、なめらかに引き延ばせて塗布しやすいという観点から、例えば、エチルセルロース系の樹脂やアクリル系の樹脂があげられる。
次に、図1Iに示されるように、スクリーン部材30を除去する。その後、乾燥炉にいれて乾燥させる。乾燥の条件はバインダーの種類にもよるが、80〜100℃程度の温度で30〜60分間、少なくともペーストの表面が乾燥してハンドリング可能な程度まで乾燥すればよい。乾燥炉に入れる際は、R−T−B系焼結磁石1およびダミー部材20をトレイ10に載せたまま乾燥炉に入れてもよいし、別の台板に移し替えてもよい。R−T−B系焼結磁石1およびダミー部材20は塗布後の密着した状態で乾燥しても上記条件程度の乾燥であれば容易に分離することが可能である。側面1cの層を均一にするために個々のR−T−B系焼結磁石1に分離しそれぞれ離間させて乾燥してもよい。
乾燥後、各R−T−B系焼結磁石1を上下反転させ(工程E)、トレイ10の上面にR−T−B系焼結磁石1の第1主面1aが接するように配列し(工程B2)、今度はR−T−B系焼結磁石1の第2主面1bに対する同様の塗布工程を行い(工程C2)、同様に乾燥する。これにより、各R−T−B系焼結磁石1の第1主面1a、第2主面1b、および側面の全て面をペースト層52および54で覆うことが可能になる。
図4は、各R−T−B系焼結磁石1を上下反転させ、R−T−B系焼結磁石1の第2主面1bに対する塗布工程を行う直前の状態を示している。このとき、スクリーン部材30とは厚さが異なるスクリーン部材32を用いる。このスクリーン部材32の厚さ、すなわち上面の高さは、第1主面1aにペースト層52が形成された状態のR−T−B系焼結磁石1の第2主面1bの高さよりも、塗布するペーストの層厚だけ大きな値を持つように設計されている。こうして、前述した塗布工程と同様の塗布工程を実行することにより、図5に示されるように、R−T−B系焼結磁石1の第2主面1bに対してペースト層54が形成され得る。
<他の配置形態>
図6に示すように、意図的に、配列されるR−T−B系焼結磁石1の側面1cの間およびR−T−B系焼結磁石1の側面1cとダミー部材20の側面の間に所定の間隔をあけても良い。このような配列を実現するためには、複数のR−T−B系焼結磁石1を所定の位置に並べるための位置決め枠(不図示)を用いればよい。例えば、各々が対応するR−T−B系焼結磁石1の位置を規制する複数の枠を有する治具を使用すれば、所定の間隔で複数のR−T−B系焼結磁石1を配置することができる。
このような所定の間隔をあけて配置された複数のR−T−B系焼結磁石1に対して最初の塗布工程を行った場合、図7に示されるように、R−T−B系焼結磁石1の第1主面1aと側面1cの両方に対してペースト層52を形成することができる。このとき、配列されるR−T−B系焼結磁石1の側面1cの間に所定の間隔をあけない形態と同様に、ペーストの粘度やトレイの吸引圧力を調整することによって側面1cの上下方向に3分の2程度ペースト層を塗布すれば、吸引装置を汚すことなくR−T−B系焼結磁石1の側面1cへペースト50を塗布することができる。側面1cの残りの部分はR−T−B系焼結磁石1の第2主面1bにペーストを塗布する工程で塗布される。また、前述した位置決めの治具をそのままトレイ10の上に置いておけば、ペーストの無駄な吸引を抑制することも可能である。
上記の方法によりペーストの塗布が終了した後、表面にペーストが塗布された状態にR−T−B系焼結磁石1に対して乾燥工程を行う。このような乾燥工程により、ペースト層に含まれていた粉末の層が形成される。
<拡散熱処理>
本開示においては、ペーストに含まれていたRLM合金の粉末とRH化合物の粉末とをR−T−B系焼結磁石の表面に存在させた状態で熱処理を行う(工程D)。なお、熱処理の開始後、RLM合金の粉末は溶融するため、RLM合金が熱処理中に常に「粉末」の状態を維持する必要は無い。熱処理の雰囲気は真空または不活性ガス雰囲気が好ましい。熱処理温度はR−T−B系焼結磁石の焼結温度以下(具体的には例えば1000℃以下)であり、かつ、RLM合金の融点よりも高い温度である。熱処理時間は例えば10分〜72時間である。また前記熱処理の後必要に応じてさらに400〜700℃で10分〜72時間の熱処理を行ってもよい。
本開示の方法によれば、R−T−B系焼結磁石1の全面にペーストを塗布することができる。本開示の方法はスクリーン印刷法を用いているので、重力によるペーストの偏りなどの問題が無く、ペーストを均一に塗布することができる。またペーストはR−T−B系焼結磁石1の表面に塗布する量だけしか消費されないので、ペーストの歩留まりが良く、希少資源である重希土類元素RHを無駄に消費することがない。
まず、公知の方法で、組成比Nd=13.4、B=5.8、Al=0.5、Cu=0.1、Co=1.1、残部=Fe(原子%)のR−T−B系焼結磁石を作製した。これを機械加工することにより、大きさが27.4mm×50.4mm×5.4mmで、表面粗度がRmax=25μmのR−T−B系焼結磁石母材を得た。得られたR−T−B系焼結磁石母材の磁気特性をB−Hトレーサーによって測定したところ、HcJは1023kA/m、Brは1.45Tであった。
図1に示す装置に縦7個×横3個のR−T−B系焼結磁石母材を並べ、図1A〜図5を参照しながら説明した方法により、以下の通りR−T−B系焼結磁石母材の全面にペーストを塗布した。なお、装置の吸引圧力は−300kPaに設定した。また、R−T−B系焼結磁石母材の上面および下面に塗布したペーストの膜厚は、200μm狙いで±20μmの範囲とした。
まず、R−T−B系焼結磁石母材の上面にペーストを塗布した。塗布後のR−T−B系焼結磁石母材を観察したところ、ペーストはR−T−B系焼結磁石母材の側面の上から3分の2程度にも塗布されており、その膜厚は10μm〜20μm程度であった。また、ペーストの偏りや液だれなどはなく、均一に塗布されていた。塗布後のR−T−B系焼結磁石母材を90℃で1時間乾燥し、上下反転させて、R−T−B系焼結磁石母材の下面にペーストを塗布した。上面と同様、ペーストの偏りや液だれなどはなく均一に塗布されており、上面塗布時に塗布されなかった側面の残り3分の1程度もきれいに塗布されていた。塗布後、90℃で1時間乾燥した。
なお、ペーストの詳細は以下の通りである。
ペースト成分の配合比率(wt%)は、混合粉末:バインダ(エチルセルロース):カップリング剤:溶媒=80:1.9:1.0:17.1であり、ペーストの粘度は70Pa・sであった。
混合粉末は、TbF3の粉末およびNd70Cu30の粉末から構成されており、混合比率(wt%)は、TbF3:Nd70Cu30=4:6であった。TbF3粉末は市販の非球形粉末であり、粒度は10μm以下であった。Nd70Cu30合金粉末は、アトマイズ法で作製された粒度100μm以下の球形粉末であった。Nd70Cu30合金粉末の粒度分布は、20μm未満=2.5wt%、20〜38μm=31.0wt%、38〜45μm=21.5wt%、45〜63μm=23.0wt%、63〜90μm=12.5wt%、90μm超=9.5wt%であった。粉末は篩によって分級された。
このようなペーストを上記のように塗布および乾燥したR−T−B系焼結磁石母材の側面を実体顕微鏡で観察したところ、10μm以下の非球形の粒子と5〜50μm程度の球形粒子が観察された。従って、拡散材粉末と拡散助剤粉末の両方が側面にも塗布されていることが確認された。
ペーストの乾燥後、常温から10℃/minで400℃まで昇温した後、400℃で2時間の熱処理を行った。更に、10℃/minで900℃まで昇温した後、900℃で8時間の熱処理を施した。得られたR−T−B系焼結磁石の表面をそれぞれ0.2mmずつ機械加工によって除去し、磁石の寸法を27mm×50mm×5mmとした。
図8に示すように、こうして得られたR−T−B系焼結磁石1の異なる6カ所からサンプルA〜Fを切り出した。サンプルA〜Fは、いずれも、1mm×1mm×1mmの立方体形状を有している。サンプルBは、図8に示すR−T−B系焼結磁石1における一方の側面1dの中央部から切り出した。サンプルAおよびサンプルCは、それぞれ、同じ側面1dにおいてサンプルBの上側で上面(第1主面1a)に接する部分、および下面(第2主面1b)に接する部分から切り出した。サンプルD〜Fは、R−T−B系焼結磁石1の2つの側面1dの中間に位置する断面から切り出した。サンプルD〜Fの位置は、サンプルA〜Cの位置を平行移動した関係にある。
このようにして得られたサンプルA〜Fについて、HcJの変化量をBHトレーサーによって測定した。その結果を表1に示す。表1の値は、複数のR−T−B系焼結磁石から任意に選択された3個の磁石についての平均値である。
表1からわかるように、サンプルAとサンプルCは、R−T−B系焼結磁石1の側面1dからの拡散と、上面(第1主面1a)または下面(第2主面1b)からの拡散の影響を大きく受け、HcJの向上が最も大きい。他のサンプルについて、HcJ向上の大きさは、サンプルF、D、B、Eの順であった。サンプルD、FよりもサンプルA、Cの方がHcJの向上が大きく、サンプルEよりもサンプルBの方がHcJの向上が大きかった。このことから、本発明の実施形態によれば、磁石の側面(端面)からの拡散によってもHcJをより向上させることができることがわかった。
Figure 0006597389
本開示の実施形態によれば、R−T−B系焼結磁石の改質を行うための粉末粒子を含むペーストをR−T−B系焼結磁石の複数の面に対して同時に塗布することができる。このため、例えば、重希土類元素RHを効果的にR−T−B系焼結磁石に供給し拡散させる方法の量産性が向上する。
1 R−T−B系焼結磁石
1a 第1主面
1b 第2主面
1c 側面
10 トレイ
12 吸引孔
14 吸引装置
20 ダミー部材
30 スクリーン部材
32 スクリーン部材
40 スキージ
50 ペースト
52 ペースト層
54 ペースト層
100 塗布装置

Claims (9)

  1. 平行な第1主面および第2主面を有する平板状の複数のR−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeを必ず含む遷移元素)を用意する工程Aと、
    複数の吸引孔を有するトレイの上面に、前記第2主面が接するように前記複数のR−T−B系焼結磁石を配列する工程B1と、
    前記複数の吸引孔を介して前記複数のR−T−B系焼結磁石を前記トレイに吸引しながら、スクリーン印刷により、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面および側面に対して重希土類元素RHの金属、合金および/または化合物(RHはDyおよび/またはTb)の粉末粒子を含むペーストを塗布する工程C1と、
    前記重希土類元素RHを前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々に拡散させる工程Dと、を含み、
    前記工程B1は、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の側面が、隣接するR−T−B系焼結磁石の側面に接するように前記複数のR−T−B系焼結磁石の位置を決める工程を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記工程B1は、前記複数のR−T−B系焼結磁石の外周部に少なくとも1つのダミー部材を配置し、前記ダミー部材に隣接するR−T−B系焼結磁石の側面に前記ダミー部材を接触させる工程を含む、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記工程C1は、スキージを前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面に対して平行に移動させることにより、前記ペーストの層を前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第1主面に形成する工程を含む、請求項1または2に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  4. 前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々は、前記ペーストに含まれる前記粉末粒子が、隣接するR−T−B系焼結磁石の側面が形成する隙間を移動できる大きさの面粗度を有している、請求項1から3のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々は、焼結によって形成された表面を有している、請求項4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  6. 前記ペーストは、5〜90Pa・sの範囲の粘度を有する、請求項1から5のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  7. 前記ペーストに含まれる前記粉末粒子は、1μm以上20μm以下のサイズを有している、請求項1から6のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  8. 前記ペーストは、更に、5μm以上150μm以下のサイズを有するRLM合金(RLはNdおよび/またはPr、MはCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上)の粉末粒子を含有している、請求項7に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  9. 前記工程C1と前記工程Dとの間において、
    前記第1主面に前記ペーストが塗布された前記複数のR−T−B系焼結磁石を上下反転させる工程Eと、
    前記トレイの前記上面に各々の前記第1主面が対向するように前記複数のR−T−B系焼結磁石を前記トレイの前記上面に配列する工程B2と、
    前記複数の吸引孔を介して前記複数のR−T−B系焼結磁石を前記トレイに吸引しながら、スクリーン印刷により、前記複数のR−T−B系焼結磁石の各々の前記第2主面および前記側面に対して前記ペーストを塗布する工程C2と、
    を含む、請求項1から8のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。






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