JP6760169B2 - R−t−b系焼結磁石の製造方法 - Google Patents

R−t−b系焼結磁石の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo、Bはホウ素)の製造方法に関する。
R−T−B系焼結磁石は永久磁石の中で最も高性能な磁石として知られており、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)、電気自動車用(EV、HV、PHVなど)モータ、産業機器用モータなどの各種モータや家電製品などに使用されている。
R−T−B系焼結磁石は、主としてR14B化合物からなる主相と、この主相の粒界部分に位置する粒界相とから構成されている。主相であるR14B化合物は高い飽和磁化と異方性磁界を持ち、R−T−B系焼結磁石の特性の根幹をなしている。
高温では、R−T−B系焼結磁石の保磁力HcJ(以下、単に「HcJ」という場合がある)が低下するため、不可逆熱減磁が起こる。そのため、特に電気自動車用モータに使用されるR−T−B系焼結磁石では、高いHcJを有することが要求されている。
R−T−B系焼結磁石において、R14B化合物中のRに含まれる軽希土類元素RL(例えば、NdやPr)の一部を重希土類元素RH(例えば、DyやTb)で置換すると、HcJが向上することが知られている。RHの置換量の増加に伴い、HcJは向上する。
しかし、R14B化合物中のRLをRHで置換すると、R−T−B系焼結磁石のHcJが向上する一方、残留磁束密度B(以下、単に「B」という場合がある)が低下する。また、特にTb、DyなどのRHは、資源存在量が少ないうえ、産出地が限定されているなどの理由から、供給が安定しておらず、価格が大きく変動するなどの問題を有している。そのため、近年、RHをできるだけ使用することなく、HcJを向上させることが求められている。
一方、Bを低下させないように、より少ない重希土類元素RHによってR−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが検討されている。例えば、重希土類元素RHのフッ化物または酸化物や、各種の金属MまたはM合金をそれぞれ単独、または混合して焼結磁石の表面に存在させ、その状態で熱処理することにより、HcJ向上に寄与する重希土類元素RHを磁石内に拡散させることが提案されている。例えば、特許文献1は、R酸化物、Rフッ化物、R酸フッ化物の粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に接触させて熱処理を行うことによりそれらを磁石内に拡散させる方法を開示している。
国際公開第2006/043348号 国際公開第2015/163397号
特許文献1には、RH化合物の粉末を含む混合粉末を磁石表面の全体(磁石全面)に存在させて熱処理を行う方法が開示されている。この方法の具体例によると、上記粉末を水または有機溶媒に分散させたスラリーに磁石を浸漬して引き上げている(浸漬引上げ法)。浸漬引上げ法の場合、スラリーから引き上げられた磁石に対して熱風乾燥または自然乾燥が行われる。スラリーに磁石を浸漬する代わりに、スラリーを磁石にスプレー塗布することも開示されている(スプレー塗布法)。
これらの方法では、磁石全面にスラリーを塗布できる。このため、磁石全面から重希土類元素RHを磁石内に導入することが可能であり、熱処理後のHcJをより大きく向上させることができる。しかしながら、浸漬引上げ法では、どうしても重力によってスラリーが磁石下部に偏ってしまう。また、スプレー塗布法では、表面張力によって磁石端部の塗布厚さが厚くなる。いずれの方法もRH化合物を磁石表面に均一に存在させるのが困難である。
粘度の低いスラリーを用いて塗布層を薄くすると、塗布層の厚さの不均一性をある程度改善することができる。しかし、スラリーの塗布量が少なくなるため、熱処理後のHcJを大きく向上させることができなくなってしまう。スラリーの塗布量を多くするために複数回の塗布を行うと、生産効率が非常に低下してしまう。特にスプレー塗布法を採用した場合、スプレー塗布装置の内壁面にもスラリーが塗布されてしまい、スラリーの利用歩留まりが低くなる。その結果、希少資源である重希土類元素RHを無駄に消費してしまうという問題がある。
本出願人は、特許文献2において、RLM合金粉末とRHフッ化物粉末とをR−T−B系焼結磁石表面に存在させた状態において拡散熱処理を行う方法を開示している。これらの粉末をR−T−B系焼結磁石表面に均一に存在させる方法については十分に確立されているとは言い難い。
本開示は、R−T−B系焼結磁石に重希土類元素RHを拡散させてHcJを向上させるために重希土類元素RHを含む粉末粒子の層を磁石表面に形成するとき、これらの粉末粒子をR−T−B系焼結磁石の表面に均一に無駄なく効率的に塗布することができ、磁石表面から重希土類元素RHを内部に拡散させてHcJを大きく向上させることができる新しい方法、さらに、拡散熱処理後のR−T−B系焼結磁石表面の不要な凹凸が少なく、生産効率の高い製造方法を提供する。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、例示的な実施形態において、R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo)を用意する工程と、DyおよびTbの少なくとも一方である重希土類元素RHの合金または化合物の粉末から形成した粒度調整粉末を用意する工程と、M酸化物(Mは、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Zrからなる群から選ばれる1種以上)の粉末を用意する工程と、前記R−T−B系焼結磁石の表面の塗布領域に粘着剤を塗布する塗布工程と、前記粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石の表面の前記塗布領域に前記粒度調整粉末を前記M酸化物の粉末とともに付着させることによって、前記R−T−B系焼結磁石の表面に重希土類元素RHおよび前記M酸化物を存在させる工程と、前記粒度調整粉末および前記M酸化物の粉末が表面に存在するR−T−B系焼結磁石を、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下の温度で熱処理して、前記粒度調整粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石の表面から内部に拡散する拡散工程とを含む。
ある実施形態において、前記M酸化物の粉末を前記粒度調整粉末と共に前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる工程は、前記粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石の表面に、前記M酸化物の粉末を散布する工程である。
ある実施形態において、前記M酸化物の粉末を前記粒度調整粉末と共に前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる工程は、前記粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石を、前記M酸化物の粉末中に埋没させる工程である。
本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法は、他の例示的な実施形態において、R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo)を用意する工程と、DyおよびTbの少なくとも一方である重希土類元素RHの合金または化合物の粉末、およびM酸化物(Mは、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Zrからなる群から選ばれる1種以上)の粉末から形成した粒度調整混合粉末を用意する工程と、前記R−T−B系焼結磁石の表面の塗布領域に粘着剤を塗布する塗布工程と、前記粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石の表面の前記塗布領域に前記粒度調整混合粉末を付着させることによって、前記R−T−B系焼結磁石の表面に前記粒度調整混合粉末を存在させる工程と、前記粒度調整混合粉末が表面に存在するR−T−B系焼結磁石を、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下の温度で熱処理して、前記粒度調整粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石の表面から内部に拡散する拡散工程とを含む。
ある実施形態において、前記粒度調整粉末または前記粒度調整混合粉末は、RHM1M2合金(M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末、または、RLRHM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上)を含む。
ある実施形態において、前記粒度調整粉末または前記粒度調整混合粉末は、RH化合物(RHはDy、Tbから選ばれる1種以上、RH化合物はRHフッ化物、RH酸フッ化物、RH酸化物から選ばれる1種以上)の粉末を含む。
ある実施形態において、前記粒度調整粉末または前記粒度調整混合粉末は、RLM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末を含む。
ある実施形態において、前記粒度調整粉末または前記粒度調整混合粉末は、バインダと共に造粒された粒度調整粉末または粒度調整混合粉末である。
本開示の実施形態によれば、R−T−B系焼結磁石に重希土類元素RHを拡散させてHcJを向上させるために重希土類元素RHを含む粉末粒子の層をR−T−B系焼結磁石の表面に均一に無駄なく効率的に塗布することができる。このため、希少資源である重希土類元素RHの消費量を低減しつつ、R−T−B系焼結磁石のHcJを向上させることが可能になる。さらに、拡散熱処理後の磁石表面の不要な凹凸が少なくなるため、これら凹凸を平坦化する必要もなく、生産効率が高い。
用意されたR−T−B系焼結磁石100の一部を模式的に示す断面図である。 磁石表面の一部に粘着層20が形成された状態のR−T−B系焼結磁石100の一部を模式的に示す断面図である。 粒度調整粉末を構成する粉末粒子30が付着された状態のR−T−B系焼結磁石100の一部を模式的に示す断面図である。 瘤状物が発生しなかったR−T−B系焼結磁石(左側)と、瘤状物が発生したR−T−B系焼結磁石(右側)の写真を示す図である。
本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法の例示的な実施形態は、
(1)R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo、Bはホウ素)を用意する工程、
(2)DyおよびTbの少なくとも一方である重希土類元素RHの合金または化合物の粉末、または、重希土類元素RHの化合物の粉末およびRLM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alからなる群から選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末を含む粒度調整粉末を用意する工程、
(3)M酸化物(Mは、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Zrからなる群から選ばれる1種以上)の粉末を用意する工程、
(4)前記R−T−B系焼結磁石の表面の塗布領域に粘着剤を塗布する塗布工程、
(5)粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石の表面の前記塗布領域に前記粒度調整粉末を付着させることによって、前記R−T−B系焼結磁石の表面に前記粒度調整粉末を存在させる工程、
(6)前記M酸化物の粉末を前記粒度調整粉末と共に前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる工程、
(7)前記粒度調整粉末および前記M酸化物の粉末が表面に存在するR−T−B系焼結磁石を、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下の温度で熱処理(拡散熱処理)して、前記粒度調整粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石の表面から内部に拡散する拡散工程と、
を含む。
なお、上記工程は必ずしもそれぞれの工程が別々に行われなくてもよく、いくつかの工程が同時に行われてもよい。具体的には後述する。
図1Aは、本開示によるR−T−B系焼結磁石の製造方法で使用され得るR−T−B系焼結磁石100の一部を模式的に示す断面図である。図面には、R−T−B系焼結磁石100の上面100a、および側面100b、100cが示されている。本開示の製造方法に用いられるR−T−B系焼結磁石の形状およびサイズは、図示されているR−T−B系焼結磁石100の形状およびサイズに限定されない。図示されているR−T−B系焼結磁石100の上面100a、および側面100b、100cは平坦であるが、R−T−B系焼結磁石100の表面は凹凸または段差を有していても良いし、湾曲していてもよい。
図1Bは、R−T−B系焼結磁石100の表面の一部(塗布領域)に粘着剤の層(粘着層)20が形成された状態のR−T−B系焼結磁石100の一部を模式的に示す断面図である。粘着層20は、R−T−B系焼結磁石100の表面の全体に形成されても良い。粘着層20は、粘着剤組成物をスプレー法、浸漬法、ディスペンサーによる塗布等の方法によって塗布することによって形成され得る。
図1Cは、粒度調整粉末が付着された状態のR−T−B系焼結磁石100の一部を模式的に示す断面図である。R−T−B系焼結磁石100の表面に位置する粒度調整粉末を構成する粉末粒子30は、塗布領域を覆うように付着されて、粘着剤組成物とともに粒度調整粉末層40を形成している。本開示のR−T−B系焼結磁石の製造方法によれば、R−T−B系焼結磁石100の表面において法線方向が異なる複数の領域(例えば上面100aと側面100b)に対しても、粒度調整粉末を、R−T−B系焼結磁石100の向きを変えることなく、一つの塗布工程で簡単に付着させることができる。粒度調整粉末を、R−T−B系焼結磁石100の全面に均一に付着させることも容易である。
このような粒度調整粉末が付着した状態のR−T−B系焼結磁石100に対して拡散熱処理を行うと、重希土類元素RHなどの粒度調整粉末に含まれる元素をR−T−B系焼結磁石の表面から内部に無駄なく効率的に拡散することができる。拡散熱処理の際、粒度調整粉末層40中の粘着剤組成物は、例えば、不活性ガス雰囲気下において150〜200℃において低粘度の液体とならず、150〜700℃の範囲で熱分解し、磁石表面に極力残渣を残さないような特性をもつことが好ましい。
本開示の方法においては、R−T−B系焼結磁石100の表面に、具体的には、粘着層20に付着した粉末粒子30の上には更に粉末粒子が重なって付着することはないので、粒度調整粉末は図1CのようにR−T−B系焼結磁石100の表面に1層程度付着する。したがって、粒度調整粉末をR−T−B系焼結磁石100の表面の粘着層20が塗布された部分に均一に付着させることができる。さらに、粒度調整粉末の粒度を、形成したい粒度調整粉末の層厚程度に調整しておくと、図1Cに示される例において、R−T−B系焼結磁石100の表面に付着した粒度調整粉末の層厚は、粒度調整粉末を構成する粉末粒子の粒度程度となる。このことを利用すれば、R−T−B系焼結磁石100の表面における単位面積当たりの粒度調整粉末の量を調整でき、R−T−B系焼結磁石100中に拡散させる元素の量を制御できる。
本発明の実施形態においては、重希土類元素RHの合金または化合物の粉末、または、重希土類元素RH化合物の粉末およびRLM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alからなる群から選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末、を含む粒度調整粉末とともに、M酸化物の粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に存在させて熱処理を行う。
M酸化物の粉末を用いることなく上記の粒度調整粉末をR−T−B系焼結磁石の表面に存在させて熱処理を行った場合、熱処理後に軽希土類元素RLを多く含む瘤状物が磁石表面に発生するという問題があることを本発明者らは見出した。これらの瘤状物は、大きさが数百μmから最大で4mm程度の主に半球状の粒であり、磁石表面に強く固着して取れず、加工などの後工程の大きな妨げになることがわかった。このような瘤状物が発生する詳細な理由は不明である。本発明者らの分析によると、瘤状物に含まれるRLは、重希土類元素RHのR−T−B系焼結磁石中への拡散に伴う相互拡散によって磁石内部から磁石表面に移動してきたRL、および、粒度調整粉末にRLが含まれる場合はそのRLであると考えられる。また、粘着剤によって粒度調整粉末を磁石に付着させた場合、例えば粒子の大きさの僅かな違いによって磁石表面におけるRLまたはRHの濃度差が発生することがある。このような磁石表面における希土類元素の濃度差が瘤状物の形成に影響している可能性がある。
発明者らが検討を重ねたところ、粒度調整粉末とともにM酸化物の粉末を磁石表面に存在させて熱処理を行うことにより、瘤状の固着物が発生しなくなることがわかった。粒度調整粉末およびM酸化物がともに磁石表面に存在すると、還元力の強いRLがM酸化物の還元に消費されることにより、RLが瘤状に凝集することが抑制され、RL酸化物を形成して磁石表面に存在すると考えられる。
また、本開示によれば、還元されたM元素が磁石内に拡散して磁石特性へ悪影響を及ぼすことがないように、M元素を適切に選択している。
以下、本実施形態の詳細を説明する。
1.R−T−B系焼結磁石母材の準備
重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石母材を準備する。本明細書では、わかりやすさのため、重希土類元素RHの拡散の対象とするR−T−B系焼結磁石をR−T−B系焼結磁石母材と厳密に称することがあるが、「R−T−B系焼結磁石」の用語はそのような「R−T−B系焼結磁石母材」を含むものとする。このR−T−B系焼結磁石母材は公知のものが使用でき、例えば以下の組成を有する。
希土類元素R:12〜17原子%
B(B(ホウ素)の一部はC(炭素)で置換されていてもよい):5〜8原子%
添加元素M´(Al、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Sn、Hf、Ta、W、Pb、およびBiからなる群から選択された少なくとも1種):0〜2原子%
T(Feを主とする遷移金属元素であって、Coを含んでもよい)および不可避不純物:残部
ここで、希土類元素Rは、主として軽希土類元素RL(Nd、Prから選択される少なくとも1種の元素)であるが、重希土類元素を含有していてもよい。なお、重希土類元素を含有する場合は、DyおよびTbの少なくとも一方を含むことが好ましい。
上記組成のR−T−B系焼結磁石母材は、任意の製造方法によって製造される。R−T−B系焼結磁石母材は焼結上がりでもよいし、切削加工や研磨加工が施されていてもよい。
2.粒度調整粉末の準備
本開示の実施形態において、粒度調整粉末とは、次に説明する拡散剤の粉末または拡散剤の粉末と拡散助剤の粉末を必要に応じて造粒して粒度調整した粉末のことを言う。
[拡散剤]
粒度調整粉末は、DyおよびTbの少なくとも一方である重希土類元素RHの合金または化合物の粉末を含む。これらの合金および化合物の粉末は、いずれも拡散剤として機能する。
重希土類元素RHの合金は、例えばRHM1M2合金(M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alからなる群から選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)および/またはRHRLM1M2合金(RLは、Nd、Prから選ばれる1種以上)である。
重希土類元素RHの合金粉末の作製方法は、特に限定されない。ロール急冷法によって合金薄帯を作製し、この合金薄帯を粉砕する方法で作製してもよいし、遠心アトマイズ法、回転電極法、ガスアトマイズ法、プラズマアトマイズ法などの公知のアトマイズ法で作製してもよい。鋳造法で作製したインゴットを粉砕してもよい。急冷法や鋳造法で作製する場合、粉砕性を良くするために、M1≠M2とする。重希土類元素RHの合金の典型例は、DyFe合金、DyAl合金、DyCu合金、TbFe合金、TbAl合金、TbCu合金、DyFeCu合金、TbCuAl合金、NdTbCu合金、PrTbGa合金、PrTbCuGa合金などである。重希土類元素RHの合金粉末の粒度は、例えば500μm以下であり、小さいものは10μm程度である。
重希土類元素RHの化合物は、RHフッ化物、RH酸フッ化物、RH酸化物から選ばれる1種以上であり、これらを総称してRH化合物と称する。RH酸フッ化物は、RHフッ化物の製造工程における中間物質としてRHフッ化物に含まれるものであってもよい。これらの化合物の粉末は単独で用いてもよいし、後述するRLM1M2合金粉末と混合して用いてもよい。入手可能な多くのRH化合物の粉末の粒度は、凝集した2次粒子の大きさにおいて、20μm以下、典型的には10μm以下、小さいものは1次粒子で数μm程度である。
[拡散助剤]
粒度調整粉末は、拡散助剤として機能する合金の粉末を含んでいても良い。このような合金の一例は、RLM1M2合金である。RLは、Nd、Prから選ばれる1種以上、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alからなる群から選ばれる1種以上であり、M1=M2でもよい。RLM1M2合金の典型例は、NdCu合金、NdFe合金、NdCuAl合金、NdCuCo合金、NdCoGa合金、NdPrCu合金、NdPrFe合金などである。これらの合金の粉末は、上述のRH化合物粉末と混合して用いられる。複数種のRLM1M2合金粉末とRH化合物粉末を混合して用いてもよい。RLM1M2合金の粉末の作製方法は特に限定されない。急冷法または鋳造法で作製される場合、粉砕性を良くするために、M1≠M2とし、例えば、NdCuAl合金、NdCuCo合金、NdCoGa合金などの3元系以上の合金を採用することが好ましい。RLM1M2合金粉末の粒度は、例えば500μm以下であり、小さいものは10μm程度である。
[粒度調整]
これらの粉末は、混合した状態または単独の状態で、粒度が調整され、粒度調整粉末が作製される。粒度は、ある実施形態において、粒度調整粉末を構成する粉末粒子がR−T−B系焼結磁石の表面の全体に配置されて1層の粒子層を形成したときに、粒度調整粉末に含まれる重希土類元素RHの量がR−T−B系焼結磁石に対して質量比で0.7〜1.5%の範囲内になるように設定され得る。粒度はこのような計算および/または実験によって決定すればよい。粒度を決定するための実験は、実際の製造方法に準じて行うことができる。
R−T−B系焼結磁石に拡散させる重希土類元素RHのR−T−B系焼結磁石に対する質量比率がゼロから増加するにつれて保磁力の増加幅は大きくなる。しかし、別途行った実験から、熱処理条件など、RH量以外の条件が同じ場合、RH量が1.0質量%付近で保磁力は飽和し、RH量を1.5質量%よりも増加させても保磁力の増加幅は大きくならないことがわかった。すなわち、R−T−B系焼結磁石の0.7〜1.5質量%となる量のRHをR−T−B系焼結磁石の表面の全体に付着させたとき、最も効率よく保磁力を向上させることができる。
R−T−B系焼結磁石の表面に1層程度付着したときに、RH量が上記範囲になるようにすると、粒度調整によってRH量、もしくは保磁力向上度を管理できるという利点がある。最適な粒度は、粒度調整粉末に含まれるRH量によるが、例えば、50μm超、500μm以下である。
粒度調整粉末の粒度はJIS Z 8801の標準ふるいによって分級することによって調整すればよい。また、篩わけで排除される粒度調整粉末が10質量%以内であれば、その影響は少ないので、篩わけせずに用いてもよい。すなわち、粒度調整粉末の粒度は、90質量%以上が上記範囲内であることが好ましい。なお、本開示において種々の粉末の粒度は、JISZ8801に記載の標準ふるいによる分級の他、その粒度に応じて、例えば顕微鏡観察、市販の粒度分布測定装置(例えば、マイクロトラック・ベル社製レーザー回折・散乱式 粒子径分布測定装置等)等によって測定することができる。
これらの粉末は、混合または単独で、バインダと共に造粒されることが好ましい。バインダと共に造粒することによって、後に説明する後加熱工程においてバインダが溶融し、粉末粒子同士が溶融したバインダによって一体化され、落ちにくくなりハンドリングしやすくなるという利点がある。さらに複数種の粉末を混合して用いる場合は、バインダと共に造粒することによって混合割合が均一な粒度調整粉末を作製することができるので、これらの粉末を一定の混合割合でR−T−B系焼結磁石表面に存在させやすくなる。
重希土類元素RHの合金の粉末を単独で用いる場合、造粒することなく粒度調整が可能である。例えば、粉末粒子の形状が等軸的または球形であれば、付着させるRHM1M2合金粉末のRH量がR−T−B系焼結磁石に対して質量比で0.7〜1.5%となるように粒度を調整することによって、造粒せずにそのまま用いることもできる。
バインダとしては、乾燥、または混合した溶剤が除去されたときに粘着、凝集することなく、粒度調整粉末がさらさらと流動性を持てるものが好ましい。バインダの例としては、PVA(ポリビニルアルコール)などがあげられる。適宜、水などの水系溶剤や、NMP(n−メチルピロリドン)などの有機溶剤を用いて混合してもよい。溶剤は、後述する造粒の過程で蒸発し除去される。
RLM1M2合金の粉末とRH化合物の粉末を混合して用いる場合、これらの粉末のみの混合では互いに均一に混ざりにくいことがある。この理由は、RH化合物の粉末は、一般に、RLM1M2合金の粉末より相対的に粒度が小さいためである。例えば、RLM1M2合金の粉末の粒度は、典型的には500μm以下であり、RH化合物の粉末の粒度は、典型的には20μm以下である。このため、RLM1M2合金の粉末とRH化合物の粉末とバインダを造粒した粒度調整粉末とすることが好ましい。このような粒度調整粉末を採用することによって、RLM1M2合金の粉末とRH化合物の粉末の配合比を粉末全体で均一にできるという利点がある。また、磁石表面に均一に存在させることが可能となる。
バインダと共に造粒する方法はどのようなものであってもよい。例えば、転動造粒法、流動層造粒法、振動造粒法、高速気流中衝撃法(ハイブリダイゼーション)、粉末とバインダを混合し、固化後解砕する方法、などがあげられる。
RLM1M2合金の粉末とRH化合物の粉末とを混合する場合、粉末状態にあるRLM1M2合金およびRH化合物のR−T−B系焼結磁石の表面における存在比率(熱処理前)は、質量比率でRLM1M2合金:RH化合物=96:4〜50:50とすることができる。すなわち、ペーストに含まれる混合粉末全体のうちRLM1M2合金の粉末は50質量%以上96質量%以下とすることができる。存在比率はRLM1M2合金:RH化合物=95:5〜60:40であり得、65:35〜50:50の時本発明の効果が大きい。すなわち、RLM1M2合金の粉末は、前記混合粉末の全体の60質量%以上95質量%であり得、50質量%以上65質量%以下が好ましい。RLM1M2合金とRH化合物をこの質量比率で混合して使用すると、RLM1M2合金がRH化合物を効率よく還元する。その結果、十分に還元されたRHがR−T−B系焼結磁石中に拡散し、少ないRH量でHcJを大きく向上させることができる。RH化合物がRHのフッ化物または酸フッ化物を含む場合、RLM1M2合金がRH化合物を効率よく還元するので、RH化合物に含まれるフッ素はR−T−B系焼結磁石内部に侵入せず、RLM1M2合金のRLと結びついてR−T−B系焼結磁石外部に残存することが発明者らの別の実験で確かめられている。R−T−B系焼結磁石の内部にフッ素が侵入しないことはR−T−B系焼結磁石のBを顕著に低下させない要因となると考えられる。
本開示の実施形態において、RLM1M2合金およびRH化合物の粉末以外の粉末(第三の粉末)がR−T−B系焼結磁石の表面に存在することを必ずしも排除しないが、第三の粉末がRH化合物中のRHをR−T−B系焼結磁石の内部に拡散することを阻害しないように留意する必要がある。R−T−B系焼結磁石の表面に存在する粉末全体に占める「RLM1M2合金およびRH化合物」の粉末の質量比率は、70%以上であることが望ましい。
このように粒度が調整された粉末を用いることにより、粒度調整粉末を構成する粉末粒子をR−T−B系焼結磁石の全面に均一に無駄なく効率的に付着させることができる。本開示の方法によれば、従来技術の浸漬法またはスプレー法のように、塗布膜の厚さが重力で偏ったり、表面張力で偏ったりすることがない。
粒度調整粉末を構成する粉末粒子を、R−T−B系焼結磁石の表面に、より均一に存在させるためには、粉末粒子を1層程度、具体的には1層以上3層以下でR−T−B系焼結磁石の表面に配置することが好ましい。複数種の粉末を造粒して用いる場合は、造粒した粒度調整粉末の粒子を1層以上3層以下で存在させる。ここで「3層以下」とは、粒子が連続して3層付着するということではなく、粘着剤の厚さや個々の粒子の大きさによって部分的に3層まで粒子が付着することが許容される、ということをあらわす。粒度によってRH付着量をより正確に管理するためには、塗布層の厚さを粉末粒子層の1層以上2層未満にする(層厚を粒度の大きさ以上、粒度の大きさの2倍未満にする)こと、すなわち、粒度調整粉末同士が粒度調整粉末中のバインダによって接着されて2層以上に積層されないことが好ましい。
3.粘着剤塗布工程
粘着剤としては、PVA(ポリビニルアルコール)、PVB(ポリビニルブチラール)、PVP(ポリビニルピロリドン)などがあげられる。粘着剤が水系の粘着剤の場合、塗布の前にR−T−B系焼結磁石を予備的に加熱してもよい。予備加熱の目的は余分な溶媒を除去し粘着力をコントロールすること、および、均一に粘着剤を付着させることである。加熱温度は60〜100℃が好ましい。揮発性の高い有機溶媒系の粘着剤の場合はこの工程は省略してもよい。
R−T−B系焼結磁石表面に粘着剤を塗布する方法は、どのようなものでも良い。塗布の具体例としては、スプレー法、浸漬法、ディスペンサーによる塗布などがあげられる。
4.R−T−B系焼結磁石の表面に粒度調整粉末を付着させる工程
ある好ましい態様では、R−T−B系焼結磁石の表面全体(全面)に粘着剤が塗布されている。R−T−B系焼結磁石の表面全体ではなく、一部に付着させてもよい。本開示の製造方法によれば、R−T−B系焼結磁石の表面において法線方向が異なる複数の領域に対して、一度の工程で粒度調整粉末を1層以上3層以下付着させることができる。
R−T−B系焼結磁石に粒度調整粉末を付着させる方法は、どのようなものでも良い。付着方法には、例えば、粒度調整粉末を収容した処理容器内に粘着剤が塗布されたR−T−B系焼結磁石をディッピングする方法、粘着剤が塗布されたR−T−B系焼結磁石に粒度調整粉末を振り掛ける方法、などがあげられる。この際、粒度調整粉末を収容した処理容器に振動を与えたり、粒度調整粉末を流動させて、粒度調整粉末がR−T−B系焼結磁石表面に付着しやすくしてもよい。ただし、本発明では、粒度調整粉末を1層程度付着させたいため、付着は実質的に粘着剤の粘着力のみによることが好ましい。例えば、処理容器内に付着させたい粉末をインパクトメディアと共に入れて衝撃を与えてR−T−B系焼結磁石表面に付着させたり、さらに粉末同士をインパクトメディアの衝撃力によって結合させて膜を成長させたりする方法は好ましくない。
ある好ましい実施形態において、粒度調整粉末をR−T−B系焼結磁石表面に固着させるための熱処理(後熱処理)を行う。加熱温度は150〜200℃に設定され得る。粒度調整粉末がバインダで造粒されたものであれば、バインダが溶融固着することによって、粒度調整粉末が固着される。
5.M酸化物を存在させる工程
[M酸化物]
本開示では、M酸化物の粉末を用意し、M酸化物の粉末を上記の粒度調整粉末と共にR−T−B系焼結磁石の表面に存在させる。ここで、Mは、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Zrからなる群から選ばれる1種以上である。
M酸化物の粉末を前記粒度調整粉末と共に前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる工程は、R−T−B系焼結磁石表面に粒度調整粉末を付着させた後、M酸化物をR−T−B系焼結磁石の上から散布したり、表面に粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石をM酸化物の粉末の中に埋没させてもよい。
M酸化物を散布するには、表面に粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石表面に、M酸化物の粉末をそのまま振り掛けたり、M酸化物の粉末を水や有機溶剤などの溶媒に分散させてスプレー塗布すればよい。また、熱処理装置のR−T−B系焼結磁石を載置する台板にM酸化物の粉末を敷いて、その上にR−T−B系焼結磁石を載置してからM酸化物を散布してもよい。
R−T−B系焼結磁石をM酸化物の粉末の中に埋没させるには、処理容器内をM酸化物の粉末で満たし、その粉末の中に、粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石を埋め込んだり、熱処理装置の台板上でR−T−B系焼結磁石に覆いかぶさるようにM酸化物の粉末を載せればよい。
なお、上記粒度調整粉末の個々の成分(粉末粒子)とM酸化物の粉末粒子とを混合してバインダで造粒し、この造粒粉末を磁石表面に付着させても良い。本開示ではこのような造粒粉末を粒度調整混合粉末と称することとする。この場合、例えば、拡散剤の粉末とM酸化物の粉末、または重希土類元素RHの化合物の粉末と拡散助剤の粉末とM酸化物の粉末をバインダで造粒して用いる。M酸化物の粉末を拡散剤や拡散助剤と一緒に造粒することによって、M酸化物の粉末を存在させる工程を別途設ける必要がなくなる。また、M酸化物を所望の配合比で均一に存在させることが可能となる。このとき、M酸化物を拡散剤に対し過剰に配合すると、上手く造粒できない可能性があるため、M酸化物の配合割合は、拡散剤に対して1.0質量%以上15.0質量%以下程度であることが好ましく、2.0質量%以上10.0重量%以下程度であることがより好ましい。R−T−B系焼結磁石の表面に粒度調整混合粉末を付着させる工程は、上記R−T−B系焼結磁石の表面に粒度調整粉末を付着させる工程に準ずれば良い。
6.粒度調整粉末およびM酸化物、または粒度調整混合粉末が付着したR−T−B系焼結磁石を熱処理する拡散工程
拡散のための熱処理温度は、R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下(具体的には例えば1000℃以下)である。また、粒度調整粉末または粒度調整混合粉末がRLM1M2合金の粉末を含む場合は、それらの融点よりも高い温度、例えば500℃以上である。熱処理時間は例えば10分〜72時間である。また前記熱処理の後必要に応じてさらに400〜700℃で10分〜72時間の熱処理を行ってもよい。
(実験例1)
まず公知の方法で、組成比Nd=13.5、B=5.7、Al=1.0、Cu=0.1、Co=2.2、Ga=0.3、残部Fe(原子%)のR−T−B系焼結磁石を作製した。これを機械加工することにより、厚さ4.9mm×幅7.4mm×長さ60mmのR−T−B系焼結磁石母材を得た。得られたR−T−B系焼結磁石母材の長さ60mm方向の中央部より4.9mm×7.4mm×7.4mmのサンプルを切り出し、各表面を0.2mmずつ表面研削して4.5mm×7.0mm×7.0mmとした後、磁気特性をB−Hトレーサーによって測定したところ、HcJは1105kA/m、Bは1.41T(n=6平均)であった。
次に、TbF粉末またはDyF粉末とNdCu粉末とをバインダで造粒して粒度調整粉末を作製した。TbF粉末およびDyF粉末は市販の非球形粉末であり、粒度は10μm以下であった。NdCu粉末は遠心アトマイズ法で作製した球形のNd70Cu30合金の粉末であり、粒度は106μm以下であった。バインダはPVA(ポリビニルアルコール)、溶媒として水を用いた。粒度調整粉末Aは、NdCu粉末:TbF粉末:PVA:水=52:42:3:3(質量比)(NdCu粉末:TbF粉末の質量比は55:45)で、粒度調整粉末BはNdCu粉末:TbF粉末:PVA:水=56:38:3:3(質量比)(NdCu粉末:TbF粉末の質量比は60:40)で、粒度調整粉末CはNdCu粉末:DyF粉末:PVA:水=56:38:3:3(質量比)(NdCu粉末:DyF粉末の質量比は60:40)で、それぞれ混合したペーストを熱風乾燥して溶媒を蒸発させ、Ar雰囲気中で粉砕した。
次に、R−T−B系焼結磁石母材に、R−T−B系焼結磁石母材に対し乾燥後で0.2mass%程度になるように粘着剤を塗布した。具体的には、粘着剤としてPVP(ポリビニルピロリドン)(粘着剤:水=30:70に希釈)を用い、R−T−B系焼結磁石母材を粘着剤へ浸漬し5mm/secの一定の引上げ速度でR−T−B系焼結磁石母材全面に粘着剤を塗布した。粘着剤を塗布したあと、粘着剤に含まれる余分な水分を120℃×5〜10minで乾燥させた。
次に、粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石母材を常温まで降温させた後、粒度調整粉末をR−T−B系焼結磁石母材全面に振りかけて付着させた。
粒度調整粉末が付着したR−T−B系焼結磁石母材を実体顕微鏡で観察したところ、R−T−B系焼結磁石母材の表面に粒度調整粉末がほぼ隙間なく1層均一に付着しているのが観察された。このとき、粒度調整粉末中のTbまたはDyの付着量がR−T−B系焼結磁石母材に対し0.7mass%となるように粒度調整粉末の粒度を調整した。具体的には、50〜250μmの間のJIS Z 8801の標準ふるいから適宜ふるいを選択、分級して、前記付着量となるように粒度を調整した。
一方、M酸化物の粉末を用意した。実験に用いたM酸化物を表1に記載している。これらのM酸化物は、市販の粉末であり、その粒度はいずれも10μm以下であった。
粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石母材の、7.4mm×60mmの面(上面1面)に表1記載の塗布方法でM酸化物を均一に塗布した。塗布方法はそれぞれ、「乾粉ふりかけ」はM酸化物の粉末を篩を用いて上から振りかける方法、「スプレー」はM酸化物の粉末と純水をM酸化物:純水=1:1(質量比)で混合したスラリーをスプレーで塗布する方法、「埋没」はM酸化物の粉末の中に粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石母材を埋没させる方法、である。(サンプルNo.1〜25。)
また、サンプルNo.1〜25とは別に、粒度調整混合粉末の実施例として、No.26〜28のサンプルを作製した。ベースとなる粒度調整粉末Aの成分を100%として、それに対し表1記載の量のM酸化物を添加して粒度調整混合粉末を作製した。すなわち、サンプルNo.26では、NdCu粉末:TbF粉末:PVA:水:M酸化物=52:42:3:3:8の割合で、サンプル27、28ではNdCu粉末:TbF粉末:PVA:水:M酸化物=52:42:3:3:4の割合でそれぞれ混合したペーストを上記と同様の方法で熱風乾燥、粉砕、分級した。それらを各々、上記と同様の方法で、粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石母材表面に付着させた。
サンプルNo.1〜28を熱処理炉に収容し、100PaのAr雰囲気中、900℃で10時間の熱処理を行った。その後さらに10Pa以下の真空中、500℃で3時間の熱処理を行った。
熱処理後の磁石の外観評価および磁気特性の評価を行った。結果を表1に示す。外観評価は目視確認にて、熱処理後のR−T−B系焼結磁石の表面に瘤状物が観察されるものは有、観察されないもの無と判定した。
図2は、瘤状物が発生しなかったR−T−B系焼結磁石(左側)と、瘤状物が発生したR−T−B系焼結磁石(右側)の写真を示す図である。瘤状物が発生しなかったR−T−B系焼結磁石(左側)は、M酸化物としてZrの酸化物(ZrO)の粉末が塗布されていた試料(サンプルNo.10)である。瘤状物が発生したR−T−B系焼結磁石(右側)は、M酸化物の粉末を塗布しなかった試料(サンプルNo.1)である。
磁気特性は、R−T−B系焼結磁石の長さ60mm方向の中央部より4.9mm×7.4mm×7.4mmのサンプルを切り出し、各表面を0.2mmずつ表面研削して4.5mm×7.0mm×7.0mmとした後、磁気特性をB−Hトレーサーによって測定した。R−T−B系焼結磁石母材の磁気特性バラツキも考慮し、測定したHcJが「同じ粒度調整粉末を用いてM酸化物を塗布していないサンプルのHcJ−20kA/m」以上であれば○、それ未満であれば×とした。
表1から、本発明で用いるM酸化物を塗布、または粒度調整混合粉末に含ませて付着させ、熱処理したR−T−B系焼結磁石では、磁気特性に影響を与えることなく瘤状物の発生が抑制(総合評価:○)されることがわかった。
本発明は、より少ない重希土類元素RHによってHcJを向上させ、かつ、生産効率が高いR−T−B系焼結磁石の製造方法を提供し得る。

Claims (12)

  1. R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo)を用意する工程と、
    DyおよびTbの少なくとも一方である重希土類元素RHの合金または化合物の粉末から形成した粒度調整粉末を用意する工程と、
    M酸化物(Mは、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Zrからなる群から選ばれる1種以上)の粉末を用意する工程と、
    前記R−T−B系焼結磁石の表面の塗布領域に粘着剤を塗布する塗布工程と、
    前記粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石の表面の前記塗布領域に前記粒度調整粉末を前記M酸化物の粉末とともに付着させることによって、前記R−T−B系焼結磁石の表面に重希土類元素RHおよび前記M酸化物を存在させる工程と、
    前記粒度調整粉末および前記M酸化物の粉末が表面に存在するR−T−B系焼結磁石を、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下の温度で熱処理して、前記粒度調整粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石の表面から内部に拡散する拡散工程と、
    を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  2. 前記M酸化物の粉末を前記粒度調整粉末と共に前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる工程は、前記粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石の表面に、前記M酸化物の粉末を散布する工程である、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  3. 前記M酸化物の粉末を前記粒度調整粉末と共に前記R−T−B系焼結磁石の表面に存在させる工程は、前記粒度調整粉末を付着させたR−T−B系焼結磁石を、前記M酸化物の粉末中に埋没させる工程である、請求項1に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  4. R−T−B系焼結磁石(Rは希土類元素、TはFeまたはFeとCo)を用意する工程と、
    DyおよびTbの少なくとも一方である重希土類元素RHの合金または化合物の粉末、およびM酸化物(Mは、Mg、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Zrからなる群から選ばれる1種以上)の粉末から形成した粒度調整混合粉末を用意する工程と、
    前記R−T−B系焼結磁石の表面の塗布領域に粘着剤を塗布する塗布工程と、
    前記粘着剤を塗布したR−T−B系焼結磁石の表面の前記塗布領域に前記粒度調整混合粉末を付着させることによって、前記R−T−B系焼結磁石の表面に前記粒度調整混合粉末を存在させる工程と、
    前記粒度調整混合粉末が表面に存在するR−T−B系焼結磁石を、前記R−T−B系焼結磁石の焼結温度以下の温度で熱処理して、前記粒度調整混合粉末に含まれる重希土類元素RHを前記R−T−B系焼結磁石の表面から内部に拡散する拡散工程と、
    を含む、R−T−B系焼結磁石の製造方法。
  5. 前記粒度調整粉末は、RHM1M2合金(M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末、または、RLRHM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上)を含む、請求項1からのいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  6. 前記粒度調整粉末は、RH化合物(RHはDy、Tbから選ばれる1種以上、RH化合物はRHフッ化物、RH酸フッ化物、RH酸化物から選ばれる1種以上)の粉末を含む、請求項1からのいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  7. 前記粒度調整粉末は、RLM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末を含む、請求項6に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  8. 前記粒度調整粉末は、バインダと共に造粒された粒度調整粉末である、請求項1から3、および5から7のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  9. 前記粒度調整混合粉末は、RHM1M2合金(M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末、または、RLRHM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上)を含む、請求項4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  10. 前記粒度調整混合粉末は、RH化合物(RHはDy、Tbから選ばれる1種以上、RH化合物はRHフッ化物、RH酸フッ化物、RH酸化物から選ばれる1種以上)の粉末を含む、請求項4に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  11. 前記粒度調整混合粉末は、RLM1M2合金(RLはNd、Prから選ばれる1種以上、M1、M2はCu、Fe、Ga、Co、Ni、Alから選ばれる1種以上、M1=M2でもよい)の粉末を含む、請求項10に記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
  12. 前記粒度調整混合粉末は、バインダと共に造粒された粒度調整混合粉末である、請求項4、および9から11のいずれかに記載のR−T−B系焼結磁石の製造方法。
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