JP6596954B2 - 継目無鋼管及びその製造方法 - Google Patents

継目無鋼管及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6596954B2
JP6596954B2 JP2015119015A JP2015119015A JP6596954B2 JP 6596954 B2 JP6596954 B2 JP 6596954B2 JP 2015119015 A JP2015119015 A JP 2015119015A JP 2015119015 A JP2015119015 A JP 2015119015A JP 6596954 B2 JP6596954 B2 JP 6596954B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
steel pipe
seamless steel
less
quenching
temperature
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015119015A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2017002369A (ja
Inventor
貴志 相馬
勇次 荒井
洋祐 建林
武典 倉本
圭祐 風呂
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2015119015A priority Critical patent/JP6596954B2/ja
Publication of JP2017002369A publication Critical patent/JP2017002369A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6596954B2 publication Critical patent/JP6596954B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Heat Treatment Of Steel (AREA)
  • Heat Treatment Of Articles (AREA)

Description

本発明は、継目無鋼管及びその製造方法に関する。
近年の油井開発は低温環境下の極北で行われる場合がある。さらに、油井は高深度化している。そのため、油井開発に利用される継目無鋼管には、優れた耐コラプス性及び低温靭性が要求される。
耐コラプス性と低温靭性とは一般に相反する特性である。継目無鋼管の強度を高めれば、耐コラプス性は高まる。しかしながら、強度を高めれば、継目無鋼管の低温靭性は低下する。オーステナイト粒の細粒化は、低温靭性を高める。フェライトからオーステナイトに逆変態させれば、オーステナイト粒が細粒化される。
熱間での穿孔圧延により継目無鋼管を製造した後、常温まで冷却し、その後、継目無鋼管を再加熱することにより、上述の逆変態を実現できる。この場合、焼入れ装置は、穿孔圧延機、延伸圧延機及び定径圧延機及びこれらの圧延機をつなぐ搬送ラインとを含む製管ラインから離れて、いわゆるオフラインに配置される。オフラインに配置される焼入れ装置を用いた焼入れを、「オフライン焼入れ」という。オフライン焼入れは、生産効率を低下する。
高強度及び優れた低温靭性を有する継目無鋼管の生産効率を高める方法が、特開2007−31756号公報(特許文献1)に開示されている。特許文献1では、製管ライン内の搬送ライン上に焼入れ装置を配置して焼入れを実施する、いわゆる「インライン焼入れ」を提案する。具体的には、質量%で、C:0.15〜0.20%、Si:0.01%以上0.15%未満、Mn:0.05〜1.0%、Cr:0.05〜1.5%、Mo:0.05〜1.0%、Al:0.10%以下、V:0.01〜0.2%、Ti:0.002〜0.03%、B:0.0003〜0.005%及びN:0.002〜0.01%を含有し、残部がFe及び不純物からなる鋼塊を1000〜1250℃の温度へ加熱し、最終圧延温度を900〜1050℃として製管圧延を終了した後、Ar3変態点以上の温度から直接焼入れするか、或いは、製管圧延を終了した後、インラインでAc3変態点〜1000℃に補熱してAr3変態点以上の温度から焼入れし、その後、600℃〜Ac1変態点の温度域で焼戻しする。この製造方法により製造された継目無鋼管は、110ksi級の強度(758〜861MPa)を有し、かつ、高い降伏比、優れた靭性及び耐硫化物応力割れ性を有する、と特許文献1には記載されている。
特開2007−31756号公報
しかしながら、最近では、110ksi級よりもさらに強度の高い、125ksi級(862〜1069MPa)でも優れた低温靭性を示す継目無鋼管が要求されている。特許文献1の製造方法の場合、862MPa以上の降伏強度を有し、かつ、優れた低温靭性を有する継目無鋼管が得られない場合がある。
本発明の目的は、862MPa以上の高強度を有し、優れた低温靭性を有する継目無鋼管及びその製造方法を提供することである。
本実施形態による継目無鋼管は、質量%で、C:0.21〜0.35%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、N:0.010%以下、Cr:0.10〜1.30%、Mo:0.05〜1.00%、Ti:0.002〜0.040%、V:0〜0.30%、Nb:0〜0.050%、及び、B:0〜0.0050%を含有し、さらに、Ca:0.0010〜0.0060%、及び、希土類元素:0.0010〜0.0060%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物からなる。継目無鋼管の組織における旧オーステナイトの結晶粒度番号は7.0以上である。継目無鋼管中の硫化物系介在物のうち、長径が1μm以上の特定硫化物系介在物の個数は5000個/100μm2以下であり、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比は3.4以下である。降伏強度は862MPa以上である。
本実施形態による継目無鋼管の製造方法は、質量%で、C:0.21〜0.35%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、N:0.010%以下、Cr:0.10〜1.30%、Mo:0.05〜1.00%、Ti:0.002〜0.040%、V:0〜0.30%、Nb:0〜0.050%、及び、B:0〜0.0050%を含有し、さらに、Ca:0.0010〜0.0060%、及び、希土類元素:0.0010〜0.0060%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物からなる丸ビレットを950〜1100℃に加熱する工程と、丸ビレットを、傾斜ロールを有する穿孔機を用いて、傾斜ロールの回転数を20〜75rpmとして穿孔圧延し、さらに、延伸圧延を実施して素管を製造し、最終の圧延時の素管温度を850〜1000℃とする工程と、素管をA3変態点以上の温度から焼入れし、焼入れ開始時の素管温度から、素管温度が300℃に至るまでの平均冷却速度を15℃/秒以上とする工程と、焼入れされた素管を500℃〜Ac1変態点で焼戻しする工程とを備える。
本実施形態による継目無鋼管は、862MPa以上の高強度を有し、優れた低温靭性を有する。本実施形態による製造方法は、上記継目無鋼管を製造できる。
図1は、製管時の素管を想定した、熱間加工時の鋼材温度と旧オーステナイト粒径との関係を示す図である。
本発明者らは、125ksi級(862〜1069MPa)の高強度を有する継目無鋼管において、低温靭性を高める方法を検討した。その結果、次の知見を得た。
125ksi級の降伏強度を有しつつ、かつ、優れた低温靭性を得るために、鋼中の硫化物系介在物の個数及び形態を制御する。硫化物系介在物のうち、長径が1μm以上の硫化物系介在物を「特定硫化物系介在物」と定義する。鋼中の特定硫化物系介在物の個数が多すぎれば、特定硫化物系介在物が割れの起点となりやすいため、低温靭性が低下する。また、特定硫化物系介在物が扁平形状であれば、特定硫化物系介在物が割れの起点となりやすく、低温靭性が低下する。
上述の化学組成において、特定硫化物系介在物の個数TNが5000個/100μm2以下であり、かつ、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比ARが3.4以下であれば、後述の旧オーステナイト粒の規定を満たすことを条件に、125ksi級の高強度を有しても優れた低温靭性が得られる。
上述のとおり、旧オーステナイト粒径が微細であれば、高強度であっても優れた低温靭性が得られる。本実施形態では、特定硫化物系介在物の個数TN及び平均アスペクト比ARが上記条件を満たし、かつ、ASTM E112に準拠した旧オーステナイト結晶粒度番号が7.0以上であれば、125ksi級の高強度を有しても優れた低温靭性が得られる。
逆変態を利用すれば、旧オーステナイト粒を微細化しやすい。しかしながらこの場合、オフライン焼入れを実施することとなる。そのため、生産効率が低下し、エネルギーも省力化しにくい。
インライン焼入れを採用すれば、生産効率を高めることができ、エネルギー省力化も可能である。しかしながら、インライン焼入れでは、逆変態を利用できない。そこで、本発明者らは、通常の製管工程時の圧延比(最終仕上げ長さ/ビレット長さ)を1.6〜13.0で素管を製造した場合の、素管温度と旧オーステナイト粒径との関係を調査した。
図1は製管時の素管を想定した、熱間加工時の鋼材温度と旧オーステナイト粒径との関係を示す図である。図1は次の方法により得られた。上述の化学組成を満たす鋼材(鋼板)を製造した。鋼板から径8mm×高さ12mmの丸棒状の試験片を採取した。試験片に対して、熱間加工試験(サーメックマスタ試験)を実施した。試験装置には、富士電波工機製のサーメックマスターZ(商品名)試験機を用いた。圧縮試験の環境は真空雰囲気とした。試験片を所定温度に加熱した。試験片が所定温度となった後、試験片に対して、通常の製管時の圧延比を想定した所定の圧縮歪(高さ変化50%)を掛けながら5分均熱した。均熱後、試験片をHeガスにて急冷した。急冷後の試験片の所定の領域で旧オーステナイト粒径を測定し、その平均値を、旧オーステナイト粒径(μm)と定義した。得られた旧オーステナイト粒径に基づいて図1を作成した。
図1を参照して、高強度が得られる上記化学組成の鋼材において、熱間加工中(製管中)の鋼材温度が1100℃よりも高ければ、熱間加工後の鋼材中の旧オーステナイト粒径は80μm以上となり、旧オーステナイト粒が粗大となる。一方、熱間加工中の鋼材温度がA3変態点以上1100℃以下であれば、熱間加工後の鋼材中の旧オーステナイト粒径は20μm未満でほぼ一定であり、微細な旧オーステナイト粒が維持される。
以上の知見より、逆変態による旧オーステナイト粒の微細化を利用しなくても、製管工程中の丸ビレット(素管)温度を1100℃以下に維持することができれば、製管後の継目無鋼管の旧オーステナイト粒を微細にすることができる。
製管工程は、穿孔工程と、圧延工程とを備える。圧延工程は、延伸圧延工程と、定径圧延工程とを備える。
製管工程中の丸ビレット(又は素管)では、加工により加工発熱が発生しうる。加工発熱により穿孔圧延中の丸ビレットの温度が1100℃を超えれば、オーステナイト粒が粗大化する。その結果、製管後の旧オーステナイト粒が粗大化する。そこで、丸ビレットの加熱時の温度を1100℃以下にするだけでなく、製管工程中の丸ビレットの温度も1100℃以下に抑えることが望ましい。
穿孔工程及び圧延工程のうち、圧延比が最も高い工程は、穿孔工程である。穿孔工程では、一対の傾斜ロールを有する穿孔機を用いて、丸ビレットを穿孔圧延する。このとき、傾斜ロールの回転速度(rpm)は、加工発熱量と関係する。具体的には、傾斜ロールの回転速度が速ければ、加工発熱が大きくなり、回転速度が遅ければ、加工発熱が抑制される。
そこで、本実施形態では、丸ビレットの加熱温度を1100℃以下とし、さらに、穿孔工程において、穿孔機の傾斜ロールの回転数を75rpm以下とする。この場合、製管工程中において、加工発熱により丸ビレット(素管)温度が1100℃を超えにくい。その結果、逆変態を利用しなくても、製管後の継目無鋼管の旧オーステナイト結晶粒を微細化できる。
さらに、製管工程の最終の圧延時の素管温度を1000℃以下とする。この場合、製管工程中に素管温度が1100℃を超えにくい。そのため、製管後の継目無鋼管の旧オーステナイト結晶粒を微細化できる。
以上の知見に基づいて完成した本実施形態の継目無鋼管は、質量%で、C:0.21〜0.35%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、N:0.010%以下、Cr:0.10〜1.30%、Mo:0.05〜1.00%、Ti:0.002〜0.040%、V:0〜0.30%、Nb:0〜0.050%、及び、B:0〜0.0050%を含有し、さらに、Ca:0.0010〜0.0060%、及び、希土類元素:0.0010〜0.0060%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物からなる。継目無鋼管の組織における旧オーステナイトの結晶粒度番号は7.0以上である。継目無鋼管中の硫化物系介在物のうち、長径が1μm以上の特定硫化物系介在物の個数は5000個/100μm2以下であり、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比は3.4以下である。継目無鋼管の降伏強度は862MPa以上である。
本実施形態による継目無鋼管は、125ksi(862MPa)以上の強度を有し、かつ、優れた低温靭性を有する。
上記継目無鋼管は、V:0.01〜0.30%、及び、Nb:0.001〜0.050%からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。上記継目無鋼管は、B:0.0001〜0.0050%を含有してもよい。
本実施形態の継目無鋼管の製造方法は、質量%で、C:0.21〜0.35%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、N:0.010%以下、Cr:0.10〜1.30%、Mo:0.05〜1.00%、Ti:0.002〜0.040%、V:0〜0.30%、Nb:0〜0.050%、及び、B:0〜0.0050%を含有し、さらに、Ca:0.0010〜0.0060%、及び、希土類元素:0.0010〜0.0060%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物からなる丸ビレットを950〜1100℃に加熱する工程と、丸ビレットを、傾斜ロールを有する穿孔機を用いて、傾斜ロールの回転数を20〜75rpmとして穿孔圧延し、さらに、延伸圧延を実施して素管を製造し、最終の圧延時の素管温度を850〜1000℃とする工程と、素管をA3変態点〜1000℃の温度から焼入れし、焼入れ開始時の素管温度から、素管温度が300℃に至るまでの平均冷却速度を15℃/秒以上とする工程と、焼入れされた素管を500℃〜Ac1変態点で焼戻しする工程とを備える。
この場合、インライン焼入れを実現できるため、従来のオフライン焼入れを用いた製造方法と比較して、生産効率が高まる。さらに、焼入れ時に常温の素管を再加熱する必要がない。そのため、エネルギー省力を実現できる。
さらに、上記製管工程により、製管工程時の丸ビレット(素管)の温度を1100℃以下に抑制しやすい。その結果、逆変態を利用しなくても、製管後の継目無鋼管の旧オーステナイト粒を微細に維持できる。
上記製造方法はさらに、製造された素管をAc3変態点以上に再加熱する工程を備えてもよい。この場合、焼入れする工程は、Ac3変態点以上に再加熱された素管を焼入れする。
上記製造方法において、丸ビレットは、V:0.01〜0.30%、及び、Nb:0.001〜0.050%からなる群から選択される1種以上を含有してもよい。上記丸ビレットは、B:0.0001〜0.0050%を含有してもよい。
以下、本実施形態の継目無鋼管及びその製造方法について詳述する。元素に関する「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
[化学組成]
本実施形態の継目無鋼管の化学組成は、次の元素を含有する。
C:0.21〜0.35%
炭素(C)は、鋼の強度を高める。C含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、C含有量が高すぎれば、鋼の低温靭性が低下する。したがって、C含有量は0.21〜0.35%である。C含有量の好ましい下限は0.23%であり、さらに好ましくは0.25%である。C含有量の好ましい上限は0.30%であり、さらに好ましくは0.27%である。
Si:0.10〜0.50%
シリコン(Si)は鋼を脱酸する。Si含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が高すぎれば、鋼の低温靭性及び加工性が低下する。したがって、Si含有量は0.10〜0.50%である。Si含有量の好ましい下限は0.15%であり、さらに好ましくは0.20%である。Si含有量の好ましい上限は0.40%であり、さらに好ましくは0.35%である。
Mn:0.05〜1.00%
マンガン(Mn)は鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Mn含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、Mnが粒界に偏析して鋼の低温靭性が低下する。したがって、Mn含有量は0.05〜1.00%である。Mn含有量の好ましい下限は0.30%であり、さらに好ましくは0.40%である。Mn含有量の好ましい上限は0.95%であり、さらに好ましくは0.90%である。
P:0.025%以下
燐(P)は不純物であり、鋼中に不可避的に含有される。Pは粒界に偏析して鋼の低温靭性を低下する。したがって、P含有量は0.025%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
S:0.010%以下
硫黄(S)は不純物であり、鋼中に不可避的に含有される。SはMnと結合して硫化物系介在物を形成し、鋼の低温靭性を低下する。したがって、S含有量は0.010%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
Al:0.005〜0.100%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Al含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Al含有量が高すぎれば、その効果が飽和する。Al含有量が高すぎればさらに、粗大なAl系酸化物が多数生成して鋼の低温靭性を低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.100%である。Al含有量の好ましい下限は0.010%であり、さらに好ましくは0.020%である。Al含有量の好ましい上限は0.070%であり、さらに好ましくは0.050%である。本明細書において、Al含有量とは、いわゆる酸可溶Al(sol.Al)の含有量を意味する。
N:0.010%以下
窒素(N)は不純物であり、鋼中に不可避に含有される。Nは鋼の低温靭性を低下する。したがって、N含有量は0.010%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。
Cr:0.10〜1.30%
クロム(Cr)は鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Cr含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Cr含有量が高すぎれば鋼の低温靭性が低下する。したがって、Cr含有量は0.10〜1.30%である。Cr含有量の好ましい下限は0.20%であり、さらに好ましくは0.40%である。Cr含有量の好ましい上限は1.20%であり、さらに好ましくは1.15%である。
Mo:0.05〜1.00%
モリブデン(Mo)は鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Mo含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、Mo含有量が高すぎれば、その効果が飽和するとともに、製造コストが嵩む。したがって、Mo含有量は0.05〜1.00%である。Mo含有量の好ましい下限は0.10%であり、さらに好ましくは0.15%である。Mo含有量の好ましい上限は0.80%であり、さらに好ましくは0.60%である。
Ti:0.002〜0.040%
チタン(Ti)はNと結合してTi窒化物を形成し、不純物であるNを固定する。Ti窒化物の生成により、結晶粒が微細化され、さらに、鋼の強度が高まる。鋼にBが含有される場合はさらに、TiはB窒化物の生成を抑制するため、Bによる焼入れ性の向上を促進する。Ti含有量が低すぎれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が高すぎれば、Nb系介在物中にTiが固溶して、Nb系介在物が粗大化する。この場合、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Ti含有量は0.002〜0.040%である。Ti含有量の好ましい下限は0.003%であり、さらに好ましくは0.004%である。Ti含有量の好ましい上限は0.035%であり、さらに好ましくは0.030%である。
Ca:0.0010〜0.0060%、及び、
希土類元素(REM):0.0010〜0.0060%
からなる群から選択される1種又は2種
カルシウム(Ca)及び希土類元素(REM)はいずれも、鋼中の硫化物系介在物を球状化する。これにより、鋼の靭性が高まる。これらの元素含有量が低すぎれば、この効果が得られない。一方、これらの元素含有量が高すぎれば、介在物が過剰に多く生成し、鋼の靭性が低下する。したがって、Ca含有量は0.010〜0.0060%であり、REM含有量は0.0010〜0.0060%である。Ca含有量の好ましい下限は0.0015%である。Ca含有量の好ましい上限は0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。REM含有量の好ましい下限は0.0015%である。REM含有量の好ましい上限は0.0050%であり、さらに好ましくは0.0040%である。Ca及びREMを含有する場合、Ca及びREMの合計含有量の好ましい上限は0.0060%である。
本明細書におけるREMは、Sc、Y、及び、ランタノイド(原子番号57番のLa〜71番のLu)の少なくとも1種以上を含有し、REM含有量は、これらの元素の合計含有量を意味する。
本実施の形態による継目無鋼管の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、継目無鋼管を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものであって、本実施形態の継目無鋼管に悪影響を与えない範囲で許容されるものを意味する。
[任意元素について]
上述の継目無鋼管の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、V及びNbからなる群から選択される1種又は2種を含有してもよい。これらの元素は任意元素であり、いずれも鋼の靭性を高める。
V:0〜0.30%
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは微細な炭化物を生成して焼戻し軟化抵抗を高め、高温焼戻しを可能とする。これにより、鋼の低温靭性が高まる。Vを少しでも含有すれば、上記効果が得られる。しかしながら、V含有量が高すぎれば、炭化物が過剰に生成して鋼の靭性がかえって低下する。したがって、V含有量は0〜0.30%である。上記効果をさらに有効に得るためのV含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。V含有量の好ましい上限は0.25%であり、さらに好ましくは0.20%である。
Nb:0〜0.050%
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Nbは炭窒化物を形成したり、Ti及びAlとともに複合炭化物を形成する。これらの炭窒化物及び複合炭化物は、ピン止め効果により細粒化して鋼の低温靭性を高める。Nbが少しでも含有されれば、上記効果が得られる。しかしながら、Nb含有量が高すぎれば、粗大なNb系介在物が多数生成して、鋼の低温靭性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.050%である。上記効果をさらに有効に得るためのNb含有量の好ましい下限は0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。Nb含有量の好ましい上限は0.040%であり、さらに好ましくは0.035%である。
上述の継目無鋼管の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Bを含有してもよい。
B:0〜0.0050%
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Bは鋼の焼入れ性を高め、鋼の強度を高める。Bが少しでも含有されれば、この効果が得られる。しかしながら、B含有量が高すぎれば、粒界に炭窒化物が析出して、鋼の低温靭性が低下する。したがって、B含有量は0〜0.0050%である。上記効果をさらに有効に得るためのB含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%である。B含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0020%である。
[ミクロ組織]
本実施形態の継目無鋼管のミクロ組織は主として焼戻しマルテンサイトからなり、残部はベイナイト、パーライト、フェライト又はこれらの混合相等である。ここで、「主として」とは、ミクロ組織中の焼戻しマルテンサイトの総面積率が90%以上であることを意味する。
[旧オーステナイト粒度番号]
上記ミクロ組織ではさらに、旧オーステナイト粒の結晶粒度番号は7.0以上である。旧オーステナイト粒度番号が7.0未満であれば、旧オーステナイト粒が粗いため、低温靭性が低下する。旧オーステナイト粒度番号が7.0以上であれば、結晶粒が十分に微細であるため、優れた低温靭性が得られる。本実施形態では、製管工程において従来よりも低温(1100℃以下)で製管し、かつ、穿孔圧延時に発生する加工発熱を抑制することにより、上記旧オーステナイト結晶粒度番号を実現する。
[旧オーステナイト結晶粒度番号の測定方法]
旧オーステナイト結晶粒度の測定方法は次のとおりである。継目無鋼管から、鋼管長手方向に直交する表面(以下、観察面という)を有する試験片を採取する。試験片の観察面を機械研磨する。その後、ピクラール(Picral)腐食液を用いて観察面をエッチングして、観察面内の旧オーステナイト結晶粒界を現出させる。その後、ASTM E112に準拠して、旧オーステナイト結晶粒度番号を求める。
[鋼中の特定硫化物系介在物の個数及び平均アスペクト比]
本実施形態の継目無鋼管において、鋼中の硫化物系介在物のうち、長径が1μm以上の硫化物系介在物(特定硫化物系介在物)の個数TNは5000個/100μm2以下である。さらに、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比ARは3.4以下である。以下、個数TN及びアスペクト比ARについて説明する。
[特定硫化物系介在物の個数TN]
硫化物系介在物のうち、長径が1μm以上の特定硫化物系介在物の個数TNは5000個/100μm2以下である。鋼中の介在物のうち、長径が1μm以上である特定硫化物系介在物は、鋼の低温靭性を低下する。したがって、特定硫化物系介在物の個数は少ないほど好ましい。特定硫化物系介在物の個数TNが5000個/100μm2以下であれば、特定硫化物系介在物に起因する低温靭性の低下を抑制でき、優れた低温靭性を維持できる。一方、個数TNが5000個を超えれば、継目無鋼管の低温靭性が低下する。したがって、個数TNは5000個/100μm2以下である。
[平均アスペクト比AR]
本実施形態ではさらに、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比が3.4以下である。硫化物系介在物が扁平形状であれば、硫化物系介在物と母材との界面から割れが発生しやすいため、低温靭性が低くなる。したがって、特定硫化物系介在物の形状が球状に近いほど、低温靭性の低下を抑制できる。特定硫化物系介在物の平均アスペクト比ARが3.4以下であれば、高強度であっても優れた低温靭性が得られる。
[特定硫化物系介在物の個数及び平均アスペクト比の測定方法]
継目無鋼管の圧延方向に対して平行な断面(以下、観察面という)を有する試験片を採取する。観察面を研磨した後、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、観察面のうちの任意の視野(全肉厚を含む100mm2以上の面積)において、硫化物系介在物を特定する。具体的には、エネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を用いた測定により、硫化物系介在物を同定する。同定された各硫化物系介在物の長径を100〜10,000倍の適切な倍率で測定する。具体的には、硫化物系介在物と母材との界面上の異なる2点を結ぶ直線のうち、最大のものを硫化物系介在物の長径Lと定義する。さらに、定義された長径Lと直交する硫化物系介在物の幅Wを求める。得られた長径L及び幅Wを用いて、アスペクト比を次の式で求める。
アスペクト比=L/W
硫化物系介在物のうち、視野中において、長径Lが1μm以上の硫化物系介在物(特定硫化物系介在物)の総個数を求める。求めた総個数及び視野面積(全肉厚を含む100mm2以上の面積)に基づいて、特定硫化物系介在物の個数TN(個/100μm2)を求める。さらに、特定硫化物系介在物のアスペクト比の平均を求め、平均アスペクト比ARと定義する。
[製造方法]
本実施形態の継目無鋼管の製造方法の一例を説明する。本製造方法は、ビレットを加熱する工程(加熱工程)と、加熱後のビレットを用いて素管を製造する工程(製管工程)と、素管を再加熱する工程(補熱工程)と、素管に対して焼入れを実施する工程(焼入れ工程)と、焼入れ後の素管に対して焼戻しを実施する工程(焼戻し工程)とを備える。補熱工程は実施しなくてもよく、必要に応じて実施される。
本製造方法は、加熱工程、製管工程及び焼入れ工程を連続して実施する、いわゆるインライン焼入れを実現する。この場合、製管後の素管を常温まで冷却することなく、製管後の素管に対して速やかに焼入れ工程を実施する。以下、各工程について詳述する。
[加熱工程]
初めに、上述の化学組成を有する丸ビレットを準備する。丸ビレットの製造方法は特に限定されない。丸ビレットはたとえば、次の方法により製造される。上記化学組成を有する溶鋼を製造する。溶鋼の製造には、たとえば、転炉等を利用する。溶鋼を用いて、連続鋳造法によるブルームを製造する。溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造してもよい。ブルーム及びインゴットを熱間圧延して、横断面が円形状の丸ビレットを製造する。溶鋼を用いて連続鋳造法により丸ビレットを製造してもよい。以上の方法により丸ビレットを準備する。
準備された丸ビレットを加熱する。加熱温度は950〜1100℃とする。図1に示すとおり、丸ビレットの温度が1100℃以下であれば、旧オーステナイト粒径は微細な状態で維持される。そのため、ビレットの加熱温度の上限は1100℃である。一方、加熱温度が低すぎる場合、ビレットの変形抵抗が高まる。この場合、穿孔圧延が困難となる。したがって、加熱温度の下限は950℃である。
[製管工程]
加熱されたビレットを穿孔圧延して素管を製造する。製管工程は、穿孔工程と、圧延工程とを備える。圧延工程は、延伸圧延工程と、定径圧延工程とを含む。穿孔工程では、穿孔機を用いて丸ビレットを穿孔圧延して素管にする。延伸圧延工程では、延伸圧延機を用いて、素管を延伸圧延する。延伸圧延機はたとえば、プラグミル、マンドレルミルである。定径圧延工程では、定径圧延機を用いて、素管を定径圧延する。定径圧延機はたとえば、サイザー又はストレッチレデューサである。
上述のとおり、製管工程中の丸ビレット(素管)温度は1100℃以下が好ましい。しかしながら、製管時のビレットでは加工発熱が発生するため、温度が上昇する可能性がある。特に、丸ビレットを加熱した直後に実施される穿孔工程では、圧延比が高い。そのため、加工発熱が最も発生しやすく、穿孔工程で丸ビレット(素管)温度が1100℃を超えやすい。
穿孔工程では、穿孔機を用いて穿孔圧延を実施する。穿孔機は一対の傾斜ロールを備える。傾斜ロールの回転速度は、加工発熱と関係する。そこで、本実施形態では、穿孔機の傾斜ロールの回転数を20〜75rpmとする。傾斜ロール回転数が75rpm以下であれば、1.6〜13.0の圧延比での穿孔圧延において、1100℃以下で加熱された丸ビレットを穿孔圧延する場合においても、穿孔圧延中の丸ビレット温度が加工発熱により上昇するのを抑制できる。
さらに、最終の圧延(定径圧延での最終圧下スタンドでの圧延)時の素管温度は1000℃以下とする。この場合、延伸圧延工程及び定径圧延工程において、加工発熱が発生しても、延伸圧延中及び定径圧延中の素管温度が1100℃を超えにくい。そのため、旧オーステナイト粒が粗大になるのを抑制できる。一方、最終圧延時の素管温度が低すぎれば、製管が困難となる。したがって、最終圧延時の素管温度は850〜1000℃である。
最終圧延時の素管温度は次の方法で測定される。延伸圧延機及び定径圧延機は、一列に配列された複数の圧延スタンドを備える。複数の圧延スタンドのうち、最終圧延を実施するスタンドの出側に配置された測温計により測定された素管温度を、最終圧延時の素管温度と定義する。
[補熱工程]
補熱工程は必要に応じて実施される。最終圧延終了直後の素管温度がA3変態点(Ar3変態点)未満であれば、焼入れを実施できない。この場合、素管を再加熱して、素管温度をAc3変態点〜1000℃にする。好ましくは、再加熱による素管温度の上限は、Ac3変態点+50℃である。素管の再加熱はたとえば、補熱炉や、インダクションヒータを用いて実施する。
[焼入れ工程]
製管後の素管、又は補熱工程後の素管に対して、加速冷却(焼入れ)を実施する。焼入れ処理での焼入れ温度はA3変態点〜1000℃である。さらに、加速冷却時にける素管の冷却速度のうち、焼入れ開始時の素管温度から、素管温度が300℃に至るまでの間の平均冷却速度CRを、15℃/秒以上とする。
平均冷却速度CRが遅すぎれば、鋼中のマルテンサイトの割合が減少し、ベイナイトの割合が増加する。この場合、十分な強度が得られず、さらに、低温靭性も低下する。そのため、平均冷却速度CRを15℃/秒以上とする。平均冷却速度CRの好ましい下限は17℃/秒であり、さらに好ましくは19℃/秒である。
加速冷却(インライン焼入れ)はたとえば、定径圧延機の下流に配置された水冷装置により実施される。水冷装置はたとえば、ラミナー水流装置と、ジェット水流装置とを備える。ラミナー水流装置は、素管に対して上方から水を注ぐ。このとき、素管に注がれる水は、ラミナー状の水流を形成する。ジェット水流装置は、素管の端から素管内部に向かってジェット水流を噴射する。水冷装置は、上述のラミナー水流装置及びジェット水流装置以外の他の装置であってもよい。水冷装置はたとえば、水槽であってもよい。この場合、素管は水槽内に浸漬され、冷却される。水冷装置はまた、ラミナー水流装置のみであってもよい。
[焼戻し工程]
焼入れされた素管を、焼戻しして継目無鋼管とする。焼戻し温度は、500℃〜Ac1点であり、所望の力学特性に基づいて調整される。具体的には、焼戻し後の継目無鋼管の降伏強度が862MPa以上となるように、焼戻し温度が調整される。
以上の工程により製造された継目無鋼管は、862MPa以上の降伏強度を有し、さらに、優れた低温靭性を有する。
種々の化学組成を有する複数の継目無鋼管を製造し、継目無鋼管の強度、靭性及び低温靭性を調査した。
[調査方法]
表1に示す化学組成を有する溶鋼を製造した。
Figure 0006596954
溶鋼を用いて連続鋳造により複数の丸ビレットを製造した。丸ビレットを用いて、表2に示す製造条件で継目無鋼管を製造した。
Figure 0006596954
具体的には、各試験番号の丸ビレットを表2に記載の加熱温度(℃)で加熱した。加熱された丸ビレットに対して、穿孔圧延、延伸圧延及び定径圧延を実施して、外径346.1mm、肉厚15.9mmの素管を製造した。穿孔圧延時の穿孔機の傾斜ロールのロール回転数(rpm)は表2に示すとおりであった。
製造された素管のうち、試験番号2及び6以外の素管に対して、表2に示す補熱温度で再加熱を行った。定径圧延後(試験番号2及び6)、又は補熱後の素管に対して、表2に示すA3変態点以上の焼入れ温度で焼入れを実施した。焼入れ開始時から素管温度が300℃に至るまでの平均冷却速度CR(℃/秒)は表2に示すとおりであった。焼入れ後の素管に対して焼戻しを実施した。焼戻し温度は表2に示すとおりであり、焼戻し時間はいずれも30分であった。いずれの試験番号の焼入れ温度も、Ac1変態点以下であった。
[旧オーステナイト粒度番号]
上述の測定方法に基づいて、各試験番号の継目無鋼管の旧オーステナイト粒度番号を求めた。
[特定硫化物系介在物の個数TN及び平均アスペクト比AR]
上述の測定方法に基づいて、各試験番号の継目無鋼管の特定硫化物系介在物(長径1μm以上の硫化物系介在物)及び特定硫化物系介在物の平均アスペクト比ARを求めた。
[引張試験]
各試験番号の継目無鋼管から、弧状引張試験片を採取した。弧状引張試験片の横断面(継目無鋼管の長手方向と垂直な断面)は弧状であり、弧状引張試験片の長手方向は、継目無鋼管の長手方向と平行であった。弧状引張試験片を用いて、API規格の5CT規定に準拠して、常温にて引張試験を実施した。試験結果に基づいて、継目無鋼管の降伏強度YS(MPa)及び引張強度TS(MPa)を求めた。
[低温靭性試験]
各試験番号の継目無鋼管から、JIS Z2242の4号試験片に準拠したVノッチ試験片を作製した。Vノッチ試験片の長手方向は、継目無鋼管の圧延方向と垂直とした。Vノッチ試験片の横断面は10mm×10mmであり、Vノッチの深さは2mmであった。Vノッチ試験片を用いて、JIS Z2242に準拠したシャルピー衝撃試験を0℃で実施し、0℃での吸収エネルギーを求めた。
[試験結果]
表2に試験結果を示す。表2中の「YS」は降伏強度YS(MPa)を示し、「TS」は引張強度TS(MPa)を示す。「吸収エネルギー」は0℃での吸収エネルギー(J)を示す。
表2を参照して、試験番号1〜13では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、継目無鋼管内の旧オーステナイト結晶粒度はいずれも7.0以上であり、特定硫化物系介在物の個数は5000個/100μm2以下であり、平均アスペクト比ARは3.4以下であった。そのため、降伏強度YSが862MPa以上であるにもかかわらず、0℃での吸収エネルギーが100J以上であり、優れた低温靭性が得られた。
一方、試験番号14では、丸ビレットの加熱温度が高すぎ、試験番号15では、傾斜ロール回転数が上限値を超え、その結果、素管の仕上げ温度が高すぎた。そのため、試験番号14及び15の継目無鋼管では、旧オーステナイト結晶粒度番号が7.0未満であった。そのため、0℃での吸収エネルギーが100J未満であり、低温靭性が低かった。
試験番号16では、Caを含有しなかった。そのため、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比ARが3.4を超えた。その結果、0℃での吸収エネルギーが100J未満となり、低温靭性が低かった。
試験番号17では、Ca含有量が高すぎた。そのため、特定硫化物系介在物が多数生成し、個数TNが5000個/100μm2を超えた。その結果、0℃での吸収エネルギーが100J未満であり、低温靭性が低かった。
試験番号18では、S含有量が高すぎた。そのため、特定硫化物系介在物が多数生成し、個数TNが5000個/100μm2を超えた。さらに、特定硫化物系介在物の平均アスペクト比が3.4を超えた。その結果、0℃での吸収エネルギーが100J未満であり、低温靭性が低かった。
試験番号19及び20では、焼入れ時の950〜300℃までの平均冷却速度CRが10℃/秒以下であった。得られた鋼管は、降伏強度YSが862MPa未満で、0℃での吸収エネルギーが100J未満であった。また鋼管のミクロ組織は、焼戻しマルテンサイトとベイナイトの混相組織であった。平均冷却速度CRが遅すぎたため、焼入れが不十分となり、その結果、高い降伏強度と十分な低温靭性が得られなかったと考えられる。
以上、本発明の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。したがって、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。

Claims (7)

  1. 継目無鋼管であって、
    質量%で、
    C:0.21〜0.35%、
    Si:0.10〜0.50%、
    Mn:0.05〜1.00%、
    P:0.025%以下、
    S:0.010%以下、
    Al:0.005〜0.100%、
    N:0.010%以下、
    Cr:0.10〜1.30%、
    Mo:0.05〜0.60%、
    Ti:0.002〜0.040%、
    V:0〜0.30%、
    Nb:0〜0.050%、及び、
    B:0〜0.0050%を含有し、さらに、
    Ca:0.0010〜0.0060%、及び、
    希土類元素:0.0010〜0.0060%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物からなり、
    前記継目無鋼管の組織における旧オーステナイトの結晶粒度番号は7.0以上であり、
    前記継目無鋼管中の硫化物系介在物のうち、長径が1μm以上の特定硫化物系介在物の個数は5000個/100μm2以下であり、前記特定硫化物系介在物の平均アスペクト比は3.4以下であり、
    ミクロ組織中の焼戻しマルテンサイトの総面積率は90%以上であり、
    862MPa以上の降伏強度を有する、継目無鋼管。
  2. 請求項1に記載の継目無鋼管であって、
    V:0.01〜0.30%、及び、
    Nb:0.001〜0.050%からなる群から選択される1種以上を含有する、継目無鋼管。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の継目無鋼管であって、
    B:0.0001〜0.0050%を含有する、継目無鋼管。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の継目無鋼管の製造方法であって、
    質量%で、C:0.21〜0.35%、Si:0.10〜0.50%、Mn:0.05〜1.00%、P:0.025%以下、S:0.010%以下、Al:0.005〜0.100%、N:0.010%以下、Cr:0.10〜1.30%、Mo:0.05〜0.60%、Ti:0.002〜0.040%、及び、V:0〜0.30%、Nb:0〜0.050%、B:0〜0.0050%を含有し、さらに、Ca:0.0010〜0.0060%、及び、希土類元素:0.0010〜0.0060%からなる群から選択される1種又は2種を含有し、残部がFe及び不純物からなる丸ビレットを950〜1100℃に加熱する工程と、
    前記丸ビレットを、傾斜ロールを有する穿孔機を用いて、傾斜ロールの回転数を20〜75rpmとして穿孔圧延し、さらに、延伸圧延を実施して素管を製造し、最終の圧延時の素管温度を850〜1000℃とする工程と、
    前記素管をA3変態点〜1000℃の温度から焼入れし、焼入れ開始時の素管温度から、素管温度が300℃に至るまでの平均冷却速度を15℃/秒以上とする工程と、
    焼入れされた前記素管を500℃〜Ac1変態点で焼戻しする工程とを備える、継目無鋼管の製造方法。
  5. 請求項4に記載の継目無鋼管の製造方法であってさらに、
    製造された前記素管をAc3変態点〜1000℃に再加熱する工程を備え、
    前記焼入れする工程は、前記Ac3変態点以上に再加熱された前記素管を焼入れする、継目無鋼管の製造方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の継目無鋼管の製造方法であって、
    前記丸ビレットは、
    V:0.01〜0.30%、及び、
    Nb:0.001〜0.050%からなる群から選択される1種以上を含有する、継目無鋼管の製造方法。
  7. 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の継目無鋼管の製造方法であって、
    前記丸ビレットは、
    B:0.0001〜0.0050%を含有する、継目無鋼管の製造方法。
JP2015119015A 2015-06-12 2015-06-12 継目無鋼管及びその製造方法 Active JP6596954B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015119015A JP6596954B2 (ja) 2015-06-12 2015-06-12 継目無鋼管及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2015119015A JP6596954B2 (ja) 2015-06-12 2015-06-12 継目無鋼管及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2017002369A JP2017002369A (ja) 2017-01-05
JP6596954B2 true JP6596954B2 (ja) 2019-10-30

Family

ID=57753421

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015119015A Active JP6596954B2 (ja) 2015-06-12 2015-06-12 継目無鋼管及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6596954B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021171826A1 (ja) 2020-02-26 2021-09-02 Jfeスチール株式会社 継目無管およびその製造方法

Families Citing this family (9)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN107723598B (zh) * 2017-10-23 2019-01-04 中国石油天然气集团公司 一种改善疲劳性能的耐硫化氢腐蚀油管及其生产方法
EP3530761B1 (en) * 2018-02-23 2022-04-27 Vallourec Deutschland GmbH High tensile and high toughness steels
JP6996641B2 (ja) * 2018-10-01 2022-02-04 日本製鉄株式会社 サワー環境での使用に適した継目無鋼管
WO2021131461A1 (ja) * 2019-12-26 2021-07-01 Jfeスチール株式会社 高強度継目無鋼管およびその製造方法
JP6981570B2 (ja) * 2019-12-26 2021-12-15 Jfeスチール株式会社 高強度継目無鋼管およびその製造方法
US20230175107A1 (en) * 2020-04-01 2023-06-08 Nippon Steel Corporation Steel material
BR112022020096A2 (pt) 2020-04-15 2022-11-29 Nippon Steel Corp Material de aço
CN114855072A (zh) * 2022-03-11 2022-08-05 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种稀土微合金化机加工用热轧无缝钢管的制造方法
CN116590596A (zh) * 2023-05-11 2023-08-15 包头钢铁(集团)有限责任公司 一种非调质易切削f35vsre热轧圆钢制备方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AR088424A1 (es) * 2011-08-22 2014-06-11 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp Tubo de acero para pozo de petroleo con excelente resistencia a la corrosion bajo tension por presencia de sulfuros
AU2013228617B2 (en) * 2012-03-07 2015-07-30 Nippon Steel Corporation Method for producing high-strength steel material having excellent sulfide stress cracking resistance
JP6107437B2 (ja) * 2012-06-08 2017-04-05 Jfeスチール株式会社 耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用低合金高強度継目無鋼管の製造方法
JP5958450B2 (ja) * 2012-11-27 2016-08-02 Jfeスチール株式会社 耐硫化物応力腐食割れ性に優れた油井用低合金高強度継目無鋼管およびその製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2021171826A1 (ja) 2020-02-26 2021-09-02 Jfeスチール株式会社 継目無管およびその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2017002369A (ja) 2017-01-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6596954B2 (ja) 継目無鋼管及びその製造方法
JP6635194B2 (ja) 継目無鋼管及びその製造方法
JP4911265B2 (ja) ラインパイプ用継目無鋼管及びその製造方法
JP5880787B2 (ja) 低合金油井用鋼管及びその製造方法
JP6369547B2 (ja) 低合金油井用鋼管
JP6146542B2 (ja) 厚肉油井用鋼管及びその製造方法
US11821051B2 (en) Apparatus line for manufacturing seamless steel pipe and tube and method of manufacturing duplex seamless stainless steel pipe
WO2017094870A1 (ja) 冷間鍛造調質品用圧延棒線
JP6384626B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼
JP2016117944A (ja) 二相ステンレス継目無鋼管の製造方法
JP2016164288A (ja) 油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法
WO2015064006A1 (ja) 継目無鋼管製造用装置列およびそれを利用した油井用高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法
JPWO2015190377A1 (ja) 低合金油井用鋼管
JP6384627B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼
JP2017031493A (ja) ステンレス鋼管の製造方法
JPWO2016080308A1 (ja) 冷間鍛造部品用圧延棒鋼または圧延線材
JP2017141502A (ja) 冷間鍛造調質品用圧延棒線
JP2017122270A (ja) 冷間加工部品用鋼
JP2016188408A (ja) 薄肉高強度継目無鋼管製造用装置列およびそれを利用した油井用薄肉高強度ステンレス継目無鋼管の製造方法
WO2017122405A1 (ja) 油井用ステンレス鋼管の製造方法及び油井用ステンレス鋼管
JP6292366B1 (ja) 継目無鋼管およびその製造方法
JP2016033237A (ja) 低温靭性に優れた油井用高強度ステンレス継目無鋼管およびその製造方法
JP6202010B2 (ja) 高強度2相ステンレス継目無鋼管の製造方法
WO2021210655A1 (ja) 鋼材
JP2017039983A (ja) 継目無鋼管及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20180205

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20190110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20190129

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20190327

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20190903

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20190916

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6596954

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151