以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。しかし、本発明は、以下の実施形態に何ら限定されない。本発明は、本発明の目的の範囲内で、適宜変更を加えて実施できる。なお、説明が重複する箇所については、適宜説明を省略する場合があるが、発明の要旨は限定されない。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。また、化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。更に、反応式(R−1)〜(R−4)で表される反応を各々、反応(R−1)〜(R−4)と記載することがある。
以下、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基及び炭素原子数6以上14以下のアリール基は、何ら規定していなければ、各々次の意味である。
ハロゲン原子(ハロゲン基)は、例えば、フッ素原子(フルオロ基)、塩素原子(クロロ基)、臭素原子(ブロモ基)又はヨウ素原子(ヨード基)である。
炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基又はヘキシル基が挙げられる。
炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基又はヘキシルオキシ基が挙げられる。
炭素原子数6以上14以下のアリール基は、例えば、炭素原子数6以上14以下の芳香族単環炭化水素基、炭素原子数6以上14以下の芳香族縮合二環炭化水素基又は素原子数6以上14以下の芳香族縮合三環炭化水素基である。炭素原子数6以上14以下のアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基、アントリル基又はフェナントリル基が挙げられる。
<1.感光体>
本実施形態に係る感光体は、導電性基体と感光層とを備える。以下、図1A〜図1Cを参照して、感光体1の構造について説明する。図1A〜図1Cは、本実施形態に係る感光体1の一例を示す断面図である。
図1Aに示すように、感光体1は、例えば、導電性基体2と感光層3とを備える。感光層3は、一層である。感光層3は、いわゆる単層型感光層である。感光層3は、電荷発生剤と電子輸送剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを一層に含有する。感光体1は、いわゆる単層型感光体である。
図1Bに示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、中間層4(下引き層)とを備えてもよい。中間層4は、導電性基体2と感光層3との間に設けられる。図1Aに示すように、感光層3は導電性基体2上に直接設けられてもよいし、図1Bに示すように、感光層3は導電性基体2上に中間層4を介して間接的に設けられてもよい。
図1Cに示すように、感光体1は、導電性基体2と、感光層3と、保護層5とを備えてもよい。保護層5は、感光層3上に設けられる。
感光層3の厚さは、感光層としての機能を十分に発現できる限り、特に限定されない。感光層3の厚さは、5μm以上100μm以下であることが好ましく、10μm以上50μm以下であることがより好ましい。
オイルクラックの発生の抑制及びフィルミングの発生の抑制を両立させるためには、感光層3が感光体1の最表面層として配置されることが好ましい。以上、図1A〜図1Cを参照して、感光体1の構造について説明した。次に、感光体の要素について説明する。
<1−1.感光層>
(バインダー樹脂)
感光層は、バインダー樹脂として、下記一般式(1)で表されるポリカーボネート樹脂(以下、ポリカーボネート樹脂(1)と記載することがある)を含む。
一般式(1)中、R1、R2、R3及びR4は、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又は置換基を有していてもよいフェニル基を表す。Xは、単結合、置換基を有していてもよい炭素原子数2以上18以下のアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基、置換基を有していてもよい炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基、−S−、−SO−、−O−又は−CO−を表す。m及びnは、各々独立して、正の数を表す。m+n=1.00であり、0.30≦n≦0.70である。つまり、m及びnは、各々独立して、計算式「m+n=1.00」及び計算式「0.30≦n≦0.70」を満たす正の数を表す。mとnとの和は1.00である。nは0.30以上0.70以下の正の数を表す。
ポリカーボネート樹脂(1)は、下記一般式(5)で表される繰返し構造単位(以下、繰返し単位(5)と記載することがある)と、一般式(6)で表される繰返し構造単位(以下、繰返し単位(6)と記載することがある)とを含む。ポリカーボネート樹脂(1)は、繰り返し単位(5)と繰り返し単位(6)との共重合体である。なお、一般式(5)中のR1及びR2は、各々一般式(1)中のR1及びR2と同義である。一般式(6)中のR3、R4及びXは、各々一般式(1)中のR3、R4及びXと同義である。
一般式(1)中、mは、ポリカーボネート樹脂(1)における繰返し単位(5)と繰返し単位(6)との合計物質量(モル数)に対する、繰返し単位(6)の物質量(モル数)の比率(モル分率)を表す。nは、樹脂(1)における繰返し単位(5)と繰返し単位(6)との合計物質量(モル数)に対する、繰返し単位(5)の物質量(モル数)の比率(モル分率)を表す。
ポリカーボネート樹脂(1)は、繰返し単位として、繰り返し単位(5)及び繰り返し単位(6)のみを実質的に有する。本明細書中において、ポリカーボネート樹脂(1)が繰返し単位として繰り返し単位(5)及び繰り返し単位(6)のみを実質的に有するとは、ポリカーボネート樹脂(1)に含まれる全ての繰り返し単位の物質量(モル数)に対する、繰り返し単位(5)の物質量(モル数)と繰り返し単位(6)の物質量(モル数)との合計物質量(モル数)の比率(モル分率)が、0.97より大きいことをいう。ポリカーボネート樹脂(1)に含まれる全ての繰り返し単位のモル数に対する、繰り返し単位(5)のモル数と繰り返し単位(6)のモル数との合計モル数の比率(モル分率)は、0.98以上であることが好ましく、1.00であることがより好ましい。この比率が1.00である場合、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰返し単位として、繰り返し単位(5)及び繰り返し単位(6)のみを有する。
ポリカーボネート樹脂(1)は、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)とがランダムに共重合したランダム共重合体であってもよい。或いは、ポリカーボネート樹脂(1)は、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)とが交互に共重合した交互共重合体であってもよい。或いは、ポリカーボネート樹脂(1)は、1以上の繰返し単位(5)と、1以上の繰返し単位(6)とが周期的に共重合した周期的共重合体であってもよい。或いは、ポリカーボネート樹脂(1)は、複数の繰返し単位(5)からなるブロックと、複数の繰返し単位(6)からなるブロックとが共重合したブロック共重合体であってもよい。
本実施形態の感光体によれば、フィルミングの発生及びオイルクラックの発生を抑制することができる。理解を容易にするために、フィルミング及びオイルクラックについて説明する。フィルミングは、感光体を備えた画像形成装置とトナーとを用いて記録媒体に画像を形成する場合に、感光体の表面に付着した微小成分が、感光体の表面で固化する現象である。微小成分としては、例えば、トナー成分(具体的には、トナー又はトナーから脱離した外添剤等)又は非トナー成分(具体的には、記録媒体に由来する紙粉等)が挙げられる。また、オイルクラックは、感光体の表面(例えば、感光層)に指の油又はその他の油が付着した場合に、感光体の表面に割れ(クラック)が発生する現象である。本実施形態の感光体がフィルミングの発生の抑制及びオイルクラックの発生の抑制を両立できる理由は、以下のように推測される。
ポリカーボネート樹脂(1)は、「−SO2−」結合を含む繰り返し単位(5)を有する。ポリカーボネート樹脂(1)が「−SO2−」結合を含む繰り返し単位(5)を有することで、感光層のビッカース硬度、特に高温環境(例えば40℃)における感光層のビッカース硬度を向上させることができる。高温環境における感光層のビッカース硬度が向上すると、感光体が備えられる画像形成装置内の温度が上昇した場合であっても、感光体の表面と上述の微小成分との接触面積が減少する傾向がある。感光体の表面と微小成分との接触面積が減少すると、微小成分を感光体の表面からクリーニング(除去)し易くなる。その結果、フィルミングの発生を抑制することができる。
また、一般式(1)中、nは0.30以上の数を表す。つまり、ポリカーボネート樹脂(1)において、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)との合計モル数に対する、繰返し単位(5)のモル数の比率(モル分率)は0.30以上である。一般式(1)中のnが0.30未満であると、フィルミングが発生し易い。ポリカーボネート樹脂(1)中の繰り返し単位(5)のモル分率が小さくなるため、繰り返し単位(5)を含むことで得られるフィルミングの発生の抑制効果が減少するからである。
更に、ポリカーボネート樹脂(1)は、「−SO2−」結合を含む繰り返し単位(5)に加えて、「−SO2−」結合を含まない繰り返し単位(6)を有する。ポリカーボネート樹脂(1)が「−SO2−」結合を含まない繰り返し単位(6)を有することで、オイルクラックの発生を抑制することができる。また、一般式(1)中、nは0.70以下の数を表す。つまり、ポリカーボネート樹脂(1)において、繰返し単位(5)と繰返し単位(6)との合計モル数に対する、繰返し単位(5)のモル数の比率(モル分率)は0.70以下である。一般式(1)中のnが0.70より大きくなると、オイルクラックが発生し易い。ポリカーボネート樹脂(1)中の繰り返し単位(5)のモル分率が大きくなるとともに、繰り返し単位(6)のモル分率が小さくなる。これにより、繰り返し単位(6)を含むことで得られるオイルクラックの発生の抑制効果が減少するからである。以上の理由から、ポリカーボネート樹脂(1)を含有する本実施形態の感光体によれば、フィルミングの発生の抑制及びオイルクラックの発生の抑制を両立できると考えられる。
一般式(1)中のR1〜R4が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。R1〜R4が表す炭素原子数1以上6以下のアルキル基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基の例は、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基))、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数1以上6以下のアルキル基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
一般式(1)中のR1〜R4が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましい。R1〜R4が表す炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基は、置換基を有していてもよい。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有する置換基の例は、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基))、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
一般式(1)中のR1〜R4が表すフェニル基は、置換基を有していてもよい。フェニル基が有する置換基の例は、ハロゲン原子(好ましくは、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基))、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。フェニル基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
一般式(1)中、R1〜R4は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子又は炭素原子数1以上3以下のアルキル基を表すことがより好ましく、水素原子又はメチル基を表すことが特に好ましい。一般式(1)中、R1及びR2は、各々水素原子を表すことが一層好ましい。
一般式(1)中のXが表す炭素原子数2以上18以下のアルキレン基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、アルキル基の両端に位置する炭素原子の各々に結合手が1個ずつ結合した二価の基である。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基としては、例えば、エチレン基、n−プロピレン基、メチルエチレン基、n−ブチレン基、メチルプロピレン基、ジメチルエチレン基、エチルエチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基又はオクタデシレン基が挙げられる。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基としては、炭素原子数2以上6以下のアルキレン基が好ましい。Xが表す炭素原子数2以上18以下のアルキレン基は、置換基を有していてもよい。Xが表す炭素原子数2以上18以下のアルキレン基が有する置換基の例は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数2以上18以下のアルキレン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
一般式(1)中のXが表す炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基は、直鎖状又は分枝鎖状であり、1個の炭素原子に2個の結合手が結合した二価の基である。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基としては、例えば、メチリデン基、エチリデン基、n−プロピリデン基、ジメチルメチリデン基(=C(CH3)2)、n−ブチリデン基、エチルメチルメチリデン基(=C(CH3)(CH2CH3))、ペンチリデン基、イソペンチリデン基、ネオペンチリデン基、ヘキシリデン基、ヘプチリデン基、オクチリデン基、ノニリデン基、デシリデン基、ウンデシリデン基、ドデシリデン基、トリデシリデン基、テトラデシリデン基、ペンタデシリデン基、ヘキサデシリデン基、ヘプタデシリデン基又はオクタデシリデン基が挙げられる。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキリデン基が好ましく、ジメチルメチリデン基(=C(CH3)2)又はエチルメチルメチリデン基(=C(CH3)(CH2CH3))がより好ましい。Xが表す炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基は、置換基を有していてもよい。Xが表す炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基が有する置換基の例は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数1以上18以下のアルキリデン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
一般式(1)中のXが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基は、シクロアルカンを形成する炭素原子のうちの2つの炭素原子の各々に結合手が1個ずつ結合した二価の基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基としては、例えば、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロヘプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロウンデシレン基、シクロドデシレン基、シクロトリデシレン基、シクロテトラデシレン基又はシクロペンタデシレン基が挙げられる。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基としては、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキレン基が好ましい。Xが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基は、置換基を有していてもよい。Xが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基が有する置換基の例は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキレン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
一般式(1)中のXが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基は、シクロアルカンを形成する炭素原子のうちの1つの炭素原子に2個の結合手が結合した二価の基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基としては、例えば、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロヘプチリデン基、シクロオクチリデン基、シクロノニリデン基、シクロデシリデン基、シクロウンデシリデン基、シクロドデシリデン基、シクロトリデシリデン基、シクロテトラデシリデン基又はシクロペンタデシリデン基が挙げられる。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基としては、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基が好ましく、シクロヘキシリデン基がより好ましい。Xが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基は、置換基を有していてもよい。Xが表す炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基が有する置換基の例は、ハロゲン原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基又はフェニル基である。炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基が有する置換基の数は、例えば1つ以上3つ以下である。
Xは、炭素原子数5以上15以下のシクロアルキリデン基を表すことが好ましく、炭素原子数5以上7以下のシクロアルキリデン基を表すことがより好ましく、シクロヘキシリデン基を表すことが特に好ましい。
nは0.30以上0.70以下の数を表す。耐オイルクラック性を一層向上させるためには、nは0.30以上0.50以下の数を表すことが好ましい。つまり、0.30≦n≦0.50であることが好ましい。耐フィルミング性を一層向上させるためには、nは0.50以上0.70以下の数を表すことが好ましい。つまり、0.50≦n≦0.70であることが好ましい。
ポリカーボネート樹脂(1)の好適な例としては、下記一般式(1−A)及び(1−B)で表されるポリカーボネート樹脂が挙げられる。
一般式(1−A)中のmA及びnAは、各々、一般式(1)中のm及びnと同義である。一般式(1−A)中のmA及びnAの好適な例は、各々、一般式(1)中のm及びnの好適な例と同じである。一般式(1−B)中のmB及びnBは、各々、一般式(1)中のm及びnと同義である。一般式(1−B)中のmB及びnBの好適な例は、各々、一般式(1)中のm及びnの好適な例と同じである。
ポリカーボネート樹脂(1)のより好適な例は、下記化学式(1−1)、(1−2)又は(1−3)で表されるポリカーボネート樹脂(以下、それぞれをポリカーボネート樹脂(1−1)、(1−2)及び(1−3)と記載することがある)である。なお、ポリカーボネート樹脂(1)の好適な例が一般式(1−A)で表されるポリカーボネート樹脂であり、一般式(1−A)で表されるポリカーボネート樹脂の好適な例がポリカーボネート樹脂(1−1)及び(1−2)である。また、ポリカーボネート樹脂(1)の別の好適な例が一般式(1−B)で表されるポリカーボネート樹脂であり、一般式(1−B)で表されるポリカーボネート樹脂の好適な例がポリカーボネート樹脂(1−3)である。
ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量は、25,000以上であることが好ましく、25,000以上52,500以下であることがより好ましい。ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量が25,000以上であると、感光体の耐摩耗性を向上させ易い。ポリカーボネート樹脂(1)の粘度平均分子量が52,500以下であると、感光層の形成時にポリカーボネート樹脂(1)が溶剤に溶解し易くなり、感光層用塗布液の粘度が高くなり過ぎない。その結果、感光層を形成し易くなる。
感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)のみを含有してもよい。また、感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)に加えて、ポリカーボネート樹脂(1)以外のバインダー樹脂(以下、その他のバインダー樹脂と記載することがある)を更に含有してもよい。その他のバインダー樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂の例は、ポリカーボネート樹脂(1)以外のポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アクリル酸重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ポリエチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリプロピレン樹脂、アイオノマー樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、アルキド樹脂、ポリアミド樹脂、ウレタン樹脂、ポリスルホン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ケトン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリエステル樹脂又はポリエーテル樹脂である。熱硬化性樹脂の例は、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂又はメラミン樹脂である。光硬化性樹脂の例は、エポキシアクリレート(エポキシ化合物のアクリル酸付加物)又はウレタン−アクリレート(ウレタン化合物のアクリル酸付加物)である。これらのバインダー樹脂の1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(1)の含有量は、バインダー樹脂の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。バインダー樹脂の合計質量は、ポリカーボネート樹脂(1)の質量と、その他のバインダー樹脂の質量との和である。
ポリカーボネート樹脂(1)の製造方法は、ポリカーボネート樹脂(1)を製造できれば、特に限定されない。ポリカーボネート樹脂(1)の製造方法の一例として、ポリカーボネート樹脂(1)の繰返し単位を構成するためのジオール化合物とホスゲンとを縮重合させる方法(いわゆる、ホスゲン法)が挙げられる。より具体的には、例えば、下記一般式(7)で表されるジオール化合物と、下記一般式(8)で表されるジオール化合物と、ホスゲンとを、縮重合させる方法が挙げられる。なお、一般式(7)中のR1及びR2は、各々一般式(1)中のR1及びR2と同義である。一般式(8)中のR3、R4及びXは、各々一般式(1)中のR3、R4及びXと同義である。ポリカーボネート樹脂(1)の製造方法の別の例として、ジオール化合物とジフェニルカーボネートとをエステル交換反応させる方法も挙げられる。
(感光層のビッカース硬度)
感光層の40℃におけるビッカース硬度は、19.5HV以上であることが好ましく、20.0HV以上であることがより好ましく、20.0HV以上23.0HV以下であることが特に好ましい。感光層のビッカース硬度がこのような範囲内であると、感光体の表面と微小成分との接触面積を減少させることができ、微小成分を感光体の表面からクリーニング(除去)し易くなる。その結果、フィルミングの発生を好適に抑制することができる。ビッカース硬度は、例えば、バインダー樹脂の種類及び電子輸送剤の種類の一方又は両方を変更することにより、調整することができる。
感光層のビッカース硬度は、例えば以下の方法で測定される。測定試料(感光層)のビッカース硬度を、日本工業規格(JIS)Z2244に準拠する方法で測定する。ビッカース硬度の測定には、硬度計(例えば、株式会社マツザワ(旧 松沢精機株式会社)製「マイクロビッカース硬度計 DMH−1型」)が使用される。ビッカース硬度の測定は、例えば、温度40℃、ダイヤモンド圧子の荷重(試験力)10gf、試験力に到達するまでの所要時間5秒、ダイヤモンド圧子の接近速度2mm/秒及び試験力の保持時間1秒の条件で行うことができる。
(電子輸送剤)
電子輸送剤は、例えば、感光層中で電子を輸送し、感光層にバイポーラー(両極性)の特性を付与する。電子輸送剤の例は、キノン系化合物、ジイミド系化合物、ヒドラゾン系化合物、マロノニトリル誘導体、チオピラン系化合物、トリニトロチオキサントン系化合物、3,4,5,7−テトラニトロ−9−フルオレノン系化合物、ジニトロアントラセン系化合物、ジニトロアクリジン系化合物、テトラシアノエチレン、2,4,8−トリニトロチオキサントン、ジニトロベンゼン、ジニトロアクリジン、無水コハク酸、無水マレイン酸又はジブロモ無水マレイン酸である。キノン系化合物の例は、ジフェノキノン系化合物、アゾキノン系化合物、アントラキノン系化合物、ナフトキノン系化合物、ニトロアントラキノン系化合物又はジニトロアントラキノン系化合物である。電子輸送剤の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
電子輸送剤は、下記一般式(2)で表される化合物(以下、化合物(2)と記載することがある)又は下記一般式(4)で表される化合物(以下、化合物(4)と記載することがある)を含むことが好ましく、化合物(2)を含むことがより好ましい。
まず、化合物(2)について説明する。化合物(2)は、マロノニトリル誘導体の一例である。
一般式(2)中、R5は、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基;ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基;ハロゲン原子を1つ以上有し、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基;ハロゲン原子を1つ以上有する5員以上14員以下の複素環基:又はハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数7以上20以下のアラルキル基を表す。
電子輸送剤が化合物(2)を含むことで、フィルミングの発生を一層抑制することができる。その理由は以下のように推測される。画像形成において記録媒体(例えば、紙)と感光体とが接触するときに、記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が感光体の表面に付着することがある。感光体の表面への記録媒体の微小成分の付着は、フィルミングの発生の一因である。特に、記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が感光体によって摩擦されて微小成分が負極性又は所望の値より低い正極性に帯電する場合に、フィルミングが発生し易い。ここで、化合物(2)はハロゲン原子を有するため、電気陰性度が高い。感光層に化合物(2)が含有されると、記録媒体の微小成分と感光体とが接触し、電気陰性度が高い化合物(2)を含有する感光体によって微小成分が摩擦されたときに、微小成分が所望の値以上の正極性に帯電すると考えられる。画像形成の帯電工程で感光体の表面が正極性に帯電される場合、正極性に帯電された感光体の表面と、所望の値以上の正極性を帯びる微小成分とが電気的に反発する。これにより、感光体の表面に微小成分が付着し難くなる。その結果、フィルミングの発生を抑制することができる。電子輸送剤が化合物(2)を含むことで、フィルミングの発生を一層抑制するためには、感光体が正帯電単層型感光体であることが好ましい。
一般式(2)のR5で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状である。炭素原子数1以上8以下のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基又はオクチル基が挙げられる。炭素原子数1以上8以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数3以上5以下のアルキル基がより好ましく、n−プロピル基、n−ブチル基又はネオペンチル基が一層好ましく、n−ブチル基が特に好ましい。R5で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R5で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子は、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)であることが好ましく、塩素原子(クロロ基)であることがより好ましい。R5で表される炭素原子数1以上8以下のアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましく、1つであることがより好ましい。
R5で表される炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基又はシクロデシル基が挙げられる。炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R5で表される炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基が有するハロゲン原子は、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)であることが好ましい。R5で表される炭素原子数3以上10以下のシクロアルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。
R5で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基としては、フェニル基が好ましい。R5で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R5で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子は、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)であることが好ましく、塩素原子(クロロ基)であることがより好ましい。R5で表される炭素原子数6以上14以下のアリール基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。炭素原子数6以上14以下のアリール基は、ハロゲン原子に加えて、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を更に有してもよい。
R5で表される5員以上14員以下の複素環基は、炭素原子以外にヘテロ原子を少なくとも1個含む。ヘテロ原子は、窒素原子、硫黄原子及び酸素原子からなる群から選択される1種以上である。5員以上14員以下の複素環基は、例えば、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子を含む5員又は6員の単環の複素環基;このような単環の複素環が2個縮合した複素環基;このような単環の複素環と、5員又は6員の単環の炭化水素環とが縮合した複素環基;このような単環の複素環が3個縮合した複素環基;このような単環の複素環2個と、5員又は6員の単環の炭化水素環1個とが縮合した複素環基;又はこのような単環の複素環1個と、5員又は6員の単環の炭化水素環2個とが縮合した複素環基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基の具体例としては、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルホリニル基、チオフェニル基、フラニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、イソチアゾリル基、フラザニル基、ピラニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、インドリル基、1H−インダゾリル基、イソインドリル基、クロメニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、プリニル基、プテリジニル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、4H−キノリジニル基、ナフチリジニル基、ベンゾフラニル基、1,3−ベンゾジオキソリル基、ベンゾオキサゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンズイミダゾリル基、カルバゾリル基、フェナントリジニル基、アクリジニル基、フェナジニル基又はフェナントロリニル基が挙げられる。5員以上14員以下の複素環基としては、炭素原子以外に1個以上3個以下のヘテロ原子(好ましくは窒素原子)を含む5員又は6員の単環の複素環基が好ましく、ピリジル基がより好ましい。R5で表される5員以上14員以下の複素環基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R5で表される5員以上14員以下の複素環基が有するハロゲン原子は、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)であることが好ましい。R5で表される5員以上14員以下の複素環基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。
R5で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、炭素原子数6以上14以下のアリール基が結合した炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。炭素原子数7以上20以下のアラルキル基としては、フェニル基が結合した炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、フェニルメチル基(ベンジル基)又はフェニルエチル基がより好ましい。R5で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基は、ハロゲン原子を1つ以上有する。R5で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子は、塩素原子(クロロ基)又はフッ素原子(フルオロ基)であることが好ましい。R5で表される炭素原子数7以上20以下のアラルキル基が有するハロゲン原子の数は、1つ又は2つであることが好ましい。
一般式(2)中、一般式「−COOR5」で表される基の結合位置(置換位置)は、特に限定されない。一般式「−COOR5」で表される基は、下記化学式中の1位、2位、3位及び4位の何れの位置に結合してもよい。一般式「−COOR5」で表される基は、下記化学式中の1位、2位又は4位に結合することが好ましく、4位に結合することがより好ましい。
R5は、ハロゲン原子を1つ以上有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表すことが好ましい。R5がハロゲン原子を1つ有する炭素原子数1以上8以下のアルキル基を表す場合、感光層の表面付近における化合物(2)の存在確率が高くなる傾向がある。その結果、感光体によって記録媒体の微小成分(例えば、紙粉)が摩擦されたときに、記録媒体の微小成分が大きな正の値の帯電量を有し易くなるからである。これにより、フィルミングの発生を好適に抑制できると考えられる。
化合物(2)の具体例は、下記化学式(2−1)〜(2−9)で表される化合物(以下、化合物(2−1)〜(2−9)と記載することがある)である。なかでも、化合物(2−1)が好ましい。
[化合物(2)の製造方法]
化合物(2)は、例えば、下記の反応(R−1)及び(R−2)に従って又はこれに準ずる方法によって製造される。これらの反応以外に、必要に応じて適宜な工程が含まれてもよい。反応(R−1)及び(R−2)で示す反応式においてR5は、一般式(2)中のR5と同義である。また、下記化学式(A)、一般式(B)、一般式(C)及び化学式(D)で表される化合物を、各々、化合物(A)、(B)、(C)及び(D)と記載することがある。
反応(R−1)では、1モル当量の化合物(A)と、1モル当量の化合物(B)とを反応させて、1モル当量の化合物(C)を得る。1モルの化合物(A)に対して、1モル以上5モル以下の化合物(B)を添加することが好ましい。反応(R−1)の反応温度は80℃以上150℃以下であることが好ましい。反応(R−1)の反応時間は2時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−1)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、酸触媒が挙げられ、より具体的には、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸又はピリジニウム−p−トルエンスルホン酸が挙げられる。これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。触媒の添加量は、1モルの化合物(A)に対して、少量であり、具体的には0.01モル以上0.5モル以下であることが好ましい。
反応(R−1)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、例えば、エーテル類(具体的には、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル又はジオキサン)、ハロゲン化炭化水素(具体的には、塩化メチレン、クロロホルム又はジクロロエタン)又は芳香族炭化水素(具体的には、ベンゼン又はトルエン)が挙げられる。
反応(R−2)では、1モル当量の化合物(C)と、1モル当量の化合物(D、マロノニトリル)とを反応させて、1モル当量の化合物(2)を得る。1モルの化合物(C)に対して、1モル以上5モル以下の化合物(D)を添加することが好ましい。反応(R−2)の反応温度は40℃以上120℃以下であることが好ましい。反応(R−2)の反応時間は1時間以上10時間以下であることが好ましい。
反応(R−2)は、触媒の存在下で行われてもよい。触媒としては、例えば、塩基触媒が挙げられ、より具体的には、ピペリジン、ピペラジンが挙げられる。
反応(R−2)は、溶媒中で行われてもよい。溶媒としては、極性溶媒が挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、アセトン又はジオキサンが挙げられる。
反応(R−2)で得られた反応生成物を、必要に応じて精製することにより、目的化合物である化合物(2)を単離することができる。精製方法としては、公知の方法が適宜採用される。精製は、例えば晶析又はシリカゲルクロマトグラフィーにより行われてもよい。精製に使用する溶媒として、例えば、クロロホルムが挙げられる。
感光層が電子輸送剤として化合物(2)を含有する場合、化合物(2)の含有量は、電子輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
電子輸送剤としての化合物(2)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上40質量部以下であることが好ましい。化合物(2)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して20質量部以上であると、感光体の電気特性(以下、感度特性と記載する)を向上させ易い。化合物(2)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して40質量部以下であると、感光層を形成するための溶剤に化合物(2)が溶解し易く、均一な感光層を形成し易くなる。
次に、化合物(4)について説明する。化合物(4)は、下記一般式(4)で表される。
一般式(4)中、R18〜R21は、各々独立して、水素原子、炭素原子数6以上14以下のアリール基を有してもよい炭素原子数1以上6以下のアルキル基、炭素原子数2以上6以下のアルケニル基、炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、又は5員以上14員以下の複素環基を表す。
一般式(4)中のR18〜R21が表わす炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、直鎖状又は分枝鎖状で非置換である。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基は、例えば、1個以上3個以下の二重結合を有する。炭素原子数2以上6以下のアルケニル基の例としては、ビニル基(エテニル基)、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ペンタジエニル基、ヘキセニル基、又はヘキサジエニル基が挙げられる。
一般式(4)中のR18〜R21が表わす5員以上14員以下の複素環基の例は、一般式(2)中のR5が表わす5員以上14員以下の複素環基の例と同じである。
一般式(4)中、R18〜R21は、各々独立して、炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、メチル基又はtert−ブチル基を表すことがより好ましい。
化合物(4)の具体例は、下記化学式(4−1)で表される化合物(以下、化合物(4−1)と記載することがある)である。
感光層が電子輸送剤として化合物(4)を含有する場合、化合物(4)の含有量は、電子輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
電子輸送剤としての化合物(4)の含有量は、100質量部のバインダー樹脂に対して、20質量部以上40質量部以下であることが好ましい。化合物(4)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して20質量部以上であると、感光体の感度特性を向上させ易い。化合物(4)の含有量が100質量部のバインダー樹脂に対して40質量部以下であると、感光層を形成するための溶剤に化合物(4)が溶解し易く、均一な感光層を形成し易くなる。
(正孔輸送剤)
感光層は、例えば正孔輸送剤を含有する。正孔輸送剤としては、例えば、トリフェニルアミン誘導体、ジアミン誘導体(例えば、N,N,N’,N’−テトラフェニルベンジジン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェニレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルナフチレンジアミン誘導体、N,N,N’,N’−テトラフェニルフェナントリレンジアミン誘導体又はジ(アミノフェニルエテニル)ベンゼン誘導体)、オキサジアゾール系化合物(例えば、2,5−ジ(4−メチルアミノフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール)、スチリル系化合物(例えば、9−(4−ジエチルアミノスチリル)アントラセン)、カルバゾール系化合物(例えば、ポリビニルカルバゾール)、有機ポリシラン化合物、ピラゾリン系化合物(例えば、1−フェニル−3−(p−ジメチルアミノフェニル)ピラゾリン)、ヒドラゾン系化合物、インドール系化合物、オキサゾール系化合物、イソオキサゾール系化合物、チアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピラゾール系化合物又はトリアゾール系化合物が挙げられる。正孔輸送剤の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
正孔輸送剤は、下記一般式(3)で表される化合物(以下、化合物(3)と記載することがある)を含むことが好ましい。
一般式(3)中、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16及びR17は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。
感光層が化合物(3)を含有することで、オイルクラックの発生を一層抑制することができる。その理由は、以下のように推測される。化合物(3)はジアミン構造を有する。化合物(3)が有するR6〜R17は、各々独立して、水素原子、炭素原子数1以上6以下のアルキル基又は炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基を表す。化合物(3)が有するR6〜R17は、アルケニル基又はアリール基のような共役基ではない。そのため、化合物(3)の分子量は比較的小さい。このような化学構造を有する化合物(3)がポリカーボネート樹脂(1)と組み合わされて感光層に含有されることにより、化合物(3)が感光層のボイド(微小な空隙)を埋めると考えられる。その結果、オイルクラックの発生を好適に抑制できると考えられる。
R6〜R17が表わす炭素原子数1以上6以下のアルキル基としては、炭素原子数1以上3以下のアルキル基が好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましく、メチル基が特に好ましい。
R6〜R17が表わす炭素原子数1以上6以下のアルコキシ基としては、炭素原子数1以上3以下のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基又はエトキシ基がより好ましく、メトキシ基が特に好ましい。
オイルクラックの発生及びフィルミングの発生を抑制するためには、一般式(3)中、R6〜R17は、各々独立して、水素原子又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基を表すことが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基又はエトキシ基を表すことがより好ましく、水素原子又はメチル基を表すことが特に好ましい。
オイルクラックの発生及びフィルミングの発生を抑制するためには、一般式(3)中、R6とR9とは同じ基であることが好ましい。R7とR10とは同じ基であることが好ましい。R8とR11とは同じ基であることが好ましい。
オイルクラックの発生及びフィルミングの発生を抑制するためには、一般式(3)中、R12〜R17は、水素原子を表すことが好ましい。
化合物(3)の具体例は、下記化学式(3−1)〜(3−4)で表される化合物(以下、化合物(3−1)〜(3−4)と記載することがある)である。なかでも、化合物(3−1)が好ましい。
感光層が正孔輸送剤として化合物(3)を含有する場合、化合物(3)の含有量は、正孔輸送剤の合計質量に対して、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
感光層に含有される正孔輸送剤としての化合物(3)の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、40質量部以上100質量部以下であることが好ましい。化合物(3)の含有量がこのような範囲内であると、感光層のビッカース硬度を向上させ易い。その結果、フィルミングの発生を抑制できると考えられる。
(電荷発生剤)
感光層は、電荷発生剤を含有する。電荷発生剤は、感光体用の電荷発生剤である限り、特に限定されない。電荷発生剤としては、例えば、フタロシアニン系顔料、ペリレン系顔料、ビスアゾ顔料、トリスアゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、無金属ナフタロシアニン顔料、金属ナフタロシアニン顔料、スクアライン顔料、インジゴ顔料、アズレニウム顔料、シアニン顔料、無機光導電材料(例えば、セレン、セレン−テルル、セレン−ヒ素、硫化カドミウム又はアモルファスシリコン)の粉末、ピリリウム顔料、アンサンスロン系顔料、トリフェニルメタン系顔料、スレン系顔料、トルイジン系顔料、ピラゾリン系顔料又はキナクリドン系顔料が挙げられる。電荷発生剤の1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
フタロシアニン系顔料としては、例えば、化学式(CGM−1)で表される無金属フタロシアニン又は金属フタロシアニンが挙げられる。金属フタロシアニンとしては、例えば、チタニルフタロシアニン、ヒドロキシガリウムフタロシアニン又はクロロガリウムフタロシアニンが挙げられる。フタロシアニン系顔料は、結晶であってもよく、非結晶であってもよい。フタロシアニン系顔料の結晶形状(例えば、α型、β型、Y型、V型又はII型)については特に限定されず、種々の結晶形状を有するフタロシアニン系顔料が使用される。
無金属フタロシアニンの結晶としては、例えば、無金属フタロシアニンのX型結晶(以下、X型無金属フタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。チタニルフタロシアニンの結晶としては、例えば、チタニルフタロシアニンのα型、β型又はY型結晶(以下、α型、β型又はY型チタニルフタロシアニンと記載することがある)が挙げられる。ヒドロキシガリウムフタロシアニンの結晶としては、ヒドロキシガリウムフタロシアニンのV型結晶が挙げられる。クロロガリウムフタロシアニンの結晶としては、クロロガリウムフタロシアニンのII型結晶が挙げられる。
例えば、デジタル光学式の画像形成装置(例えば、半導体レーザーのような光源を使用した、レーザービームプリンター又はファクシミリ)には、700nm以上の波長領域に感度を有する感光体を用いることが好ましい。700nm以上の波長領域で高い量子収率を有することから、電荷発生剤としては、フタロシアニン系顔料が好ましく、無金属フタロシアニン又はチタニルフタロシアニンがより好ましく、X型無金属フタロシアニン又はY型チタニルフタロシアニンが更に好ましく、X型無金属フタロシアニンが特に好ましい。
短波長レーザー光源(例えば、350nm以上550nm以下の波長を有するレーザー光源)を用いた画像形成装置に適用される感光体には、電荷発生剤として、アンサンスロン系顔料が好適に用いられる。
電荷発生剤の含有量は、感光層に含有されるバインダー樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上50質量部以下であることが好ましく、1質量部以上30質量部以下であることがより好ましい。
(添加剤)
感光層は、必要に応じて、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、劣化防止剤(例えば、酸化防止剤、ラジカル捕捉剤、1重項消光剤又は紫外線吸収剤)、軟化剤、表面改質剤、増量剤、増粘剤、分散安定剤、ワックス、アクセプター、ドナー、界面活性剤、可塑剤、増感剤又はレベリング剤が挙げられる。酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール(例えば、ジ(tert−ブチル)p−クレゾール)、ヒンダードアミン、パラフェニレンジアミン、アリールアルカン、ハイドロキノン、スピロクロマン、スピロインダノン若しくはこれらの誘導体、有機硫黄化合物又は有機燐化合物が挙げられる。
<1−2.導電性基体>
導電性基体は、感光体の導電性基体として用いることができる限り、特に限定されない。導電性基体は、少なくとも表面部が導電性を有する材料で形成されていればよい。導電性基体の一例としては、導電性を有する材料で形成される導電性基体が挙げられる。導電性基体の別の例としては、導電性を有する材料で被覆される導電性基体が挙げられる。導電性を有する材料としては、例えば、アルミニウム、鉄、銅、錫、白金、銀、バナジウム、モリブデン、クロム、カドミウム、チタン、ニッケル、パラジウム、インジウム、ステンレス鋼又は真鍮が挙げられる。これらの導電性を有する材料を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて(例えば、合金として)用いてもよい。これらの導電性を有する材料のなかでも、感光層から導電性基体への電荷の移動が良好であることから、アルミニウム又はアルミニウム合金が好ましい。
導電性基体の形状は、画像形成装置の構造に合わせて適宜選択される。導電性基体の形状としては、例えば、シート状又はドラム状が挙げられる。また、導電性基体の厚さは、導電性基体の形状に応じて適宜選択される。
<1−3.中間層>
中間層(下引き層)は、例えば、無機粒子及び中間層に用いられる樹脂(中間層用樹脂)を含有する。中間層が存在することにより、リーク発生を抑制し得る程度の絶縁状態を維持しつつ、感光体を露光した時に発生する電流の流れを円滑にして、抵抗の上昇が抑えられると考えられる。
無機粒子としては、例えば、金属(例えば、アルミニウム、鉄又は銅)、金属酸化物(例えば、酸化チタン、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化スズ又は酸化亜鉛)の粒子又は非金属酸化物(例えば、シリカ)の粒子が挙げられる。これらの無機粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
中間層用樹脂としては、中間層を形成する樹脂として用いることができる限り、特に限定されない。中間層は、添加剤を含有してもよい。中間層の添加剤の例は、感光層の添加剤の例と同じである。
<1−4.感光体の製造方法>
感光体は、例えば、以下のように製造される。感光体は、感光層用塗布液を導電性基体上に塗布し、乾燥することによって製造される。感光層用塗布液は、電荷発生剤、電子輸送剤、正孔輸送剤、バインダー樹脂及び必要に応じて添加される成分(例えば、添加剤)を、溶剤に溶解又は分散させることにより製造される。
感光層用塗布液に含有される溶剤は、塗布液に含まれる各成分を溶解又は分散できる限り、特に限定されない。溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール又はブタノール)、脂肪族炭化水素(例えば、n−ヘキサン、オクタン又はシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレン)、ハロゲン化炭化水素(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、四塩化炭素又はクロロベンゼン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル又はプロピレングリコールモノメチルエーテル)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン又はシクロヘキサノン)、エステル類(例えば、酢酸エチル又は酢酸メチル)、ジメチルホルムアルデヒド、ジメチルホルムアミド又はジメチルスルホキシドが挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いられる。感光体の製造時の作業性を向上させるためには、溶剤として非ハロゲン溶剤(ハロゲン化炭化水素以外の溶剤)を用いることが好ましい。
塗布液は、各成分を混合し、溶剤に分散することにより調製される。混合又は分散には、例えば、ビーズミル、ロールミル、ボールミル、アトライター、ペイントシェーカー又は超音波分散機を用いることができる。
感光層用塗布液は、各成分の分散性を向上させるために、例えば、界面活性剤を含有してもよい。
感光層用塗布液を塗布する方法としては、塗布液を導電性基体上に均一に塗布できる方法である限り、特に限定されない。塗布方法としては、例えば、ディップコート法、スプレーコート法、スピンコート法又はバーコート法が挙げられる。
感光層用塗布液を乾燥する方法としては、塗布液中の溶剤を蒸発させ得る限り、特に限定されない。例えば、高温乾燥機又は減圧乾燥機を用いて、熱処理(熱風乾燥)する方法が挙げられる。熱処理条件は、例えば、40℃以上150℃以下の温度、かつ3分間以上120分間以下の時間である。
なお、感光体の製造方法は、必要に応じて、中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程の一方又は両方を更に含んでもよい。中間層を形成する工程及び保護層を形成する工程では、公知の方法が適宜選択される。
<2.画像形成装置>
次に、図2を参照して、本実施形態に係る感光体1を備える画像形成装置100について説明する。図2に画像形成装置100の構成の一例を示す。
画像形成装置100は、電子写真方式の画像形成装置である限り、特に限定されない。画像形成装置100は例えば、モノクロ画像形成装置であってもよいし、カラー画像形成装置であってもよい。画像形成装置100がカラー画像形成装置である場合、画像形成装置100は、例えばタンデム方式を採用する。以下、タンデム方式の画像形成装置100を例に挙げて説明する。
画像形成装置100は、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dと、転写ベルト50と、定着部52とを備える。以下、区別する必要がない場合には、画像形成ユニット40a、40b、40c及び40dの各々を、画像形成ユニット40と記載する。
画像形成ユニット40は、感光体1と、帯電部42と、露光部44と、現像部46と、転写部48とを備える。画像形成ユニット40の中央位置に、感光体1が設けられる。感光体1は、矢符方向(反時計回り)に回転可能に設けられる。感光体1の周囲には、帯電部42を基準として感光体1の回転方向の上流側から順に、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48が設けられる。なお、画像形成ユニット40には、クリーニング部(不図示)及び除電部(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。
帯電部42は、感光体1の表面を帯電する。帯電部42は、非接触方式又は接触方式である。非接触方式の帯電部42の例は、コロトロン帯電器又はスコロトロン帯電器である。接触方式の帯電部42の例は、帯電ローラー又は帯電ブラシである。
画像形成装置100は、帯電部42として帯電ローラーを備えることができる。感光体1の表面を帯電するときに、帯電ローラーは感光体1と接触する。感光体1の表面に微小成分が付着している場合には、接触した帯電ローラーによって微小成分が感光体1の表面に押圧される。これにより、感光体1の表面に微小成分が固着し易い。しかし、画像形成装置100は、微小成分の付着により引き起こされるフィルミングの発生を抑制可能な感光体1を備えている。このため、画像形成装置100は、帯電部42として帯電ローラーを備える場合であっても、微小成分が感光体1の表面に固着し難く、形成される画像におけるフィルミングの発生を抑制することができる。
単層型感光体である感光体1の感度特性を向上させるためには、帯電部42は感光体1の表面を正極性に帯電することが好ましい。また、感光層3(図1A〜図1C参照)が電子輸送剤として化合物(2)を含有する場合には、感光体1と記録媒体Pとが摩擦されて、記録媒体Pが正極性に帯電される傾向が強くなる。帯電部42によって感光体1の表面が正極性に帯電されると、感光体1の表面と、正極性に摩擦帯電される記録媒体Pとが、電気的に反発する。その結果、記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が感光体1の表面に付着し難く、フィルミングの発生を好適に抑制することができる。
露光部44は、帯電された感光体1の表面を露光する。これにより、感光体1の表面に静電潜像が形成される。静電潜像は、画像形成装置100に入力された画像データに基づいて形成される。
現像部46は、感光体1に形成された静電潜像にトナーを供給する。これにより、静電潜像がトナー像として現像される。感光体1は、トナー像を担持する像担持体に相当する。トナーは、一成分現像剤として用いられてもよい。或いは、トナーと所望のキャリアとを混合して、トナーを二成分現像剤において用いてもよい。トナーが一成分現像剤として用いられる場合、現像部46は、感光体1に形成された静電潜像に一成分現像剤であるトナーを供給する。トナーが二成分現像剤において用いられる場合、現像部46は、感光体1に形成された静電潜像に、二成分現像剤に含まれるトナーとキャリアとのうちトナーを供給する。
現像部46は、感光体1と接触しながら静電潜像をトナー像として現像することができる。つまり、画像形成装置100は、いわゆる接触現像方式を採用することができる。感光体1の表面に微小成分が付着している場合には、接触した現像部46によって微小成分が感光体1の表面に押圧される。これにより、感光体1の表面に微小成分が固着し易い。しかし、画像形成装置100は、微小成分の付着により引き起こされるフィルミングの発生を抑制可能な感光体1を備えている。このため、画像形成装置100は、接触現像方式を採用する場合であっても、微小成分が感光体1の表面に固着し難く、フィルミングの発生を抑制することができる。
現像部46は、感光体1の表面を清掃することができる。つまり、画像形成装置100は、いわゆるクリーナーレス方式を採用することができる。現像部46は、感光体1の表面に残留する微小成分を除去することができる。クリーナーレス方式を採用する場合、画像形成装置100は、クリーニング部を備えていない。クリーナーレス方式を採用する画像形成装置100では、クリーニング部(例えば、クリーニングブレード)によって感光体1の表面に残留する微小成分が掻き取られない。そのため、クリーナーレス方式を採用する画像形成装置100では、通常、感光体1の表面に微小成分が残り易い。しかし、本実施形態の感光体1は、微小成分の付着により引き起こされるフィルミングの発生を抑制することができる。従って、このような感光体1を備える画像形成装置100は、クリーナーレス方式を採用したとしても、感光体1の表面に微小成分が残り難く、フィルミングの発生を抑制することができる。
現像部46が感光体1の表面を効率的に清掃するためには、以下に示す条件(a)及び条件(b)を満たすことが好ましい。
条件(a):接触現像方式を採用し、感光体1と現像部46との間に周速(回転速度)差が設けられる。
条件(b):感光体1の表面電位と、現像バイアスの電位とが以下の数式(b−1)及び数式(b−2)を満たす。
0(V)<現像バイアスの電位(V)<感光体1の未露光領域の表面電位(V)・・・(b−1)
現像バイアスの電位(V)>感光体1の露光領域の表面電位(V)>0(V)・・・(b−2)
条件(a)に示す接触現像方式を採用し、感光体1と現像部46との間に周速差が設けられていると、感光体1の表面は現像部46と接触し、感光体1の表面の微小成分が現像部46との摩擦により除去される。現像部46の周速は、感光体1の周速よりも速いことが好ましい。
条件(b)では、現像方式が反転現像方式である場合を想定している。感光体1の感度特性を向上させるためには、トナーの帯電極性、感光体1の未露光領域の表面電位、感光体1の露光領域の表面電位及び現像バイアスの電位が何れも正極性であることが好ましい。なお、感光体1の未露光領域の表面電位及び露光領域の表面電位は、転写部48がトナー像を感光体1から記録媒体Pへ転写した後、帯電部42が次周回の感光体1の表面を帯電する前に測定される。
条件(b)の数式(b−1)を満たすと、感光体1に残留したトナー(以下、残留トナーと記載することがある)と感光体1の未露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ大きくなる。このため、感光体1の未露光領域の残留トナーは、感光体1の表面から現像部46へと移動し、回収される。
条件(b)の数式(b−2)を満たすと、残留トナーと感光体1の露光領域との間に作用する静電的斥力が、残留トナーと現像部46との間に作用する静電的斥力に比べ小さくなる。このため、感光体1の露光領域の残留トナーは、感光体1の表面に保持される。感光体1の露光領域に保持されたトナーは、そのまま画像形成に使用される。
転写ベルト50は、感光体1と転写部48との間に記録媒体Pを搬送する。転写ベルト50は、無端状のベルトである。転写ベルト50は、矢符方向(時計回り)に回転可能に設けられる。
転写部48は、現像部46によって現像されたトナー像を、感光体1から記録媒体Pへ転写する。感光体1から記録媒体Pにトナー像が転写されるときに、感光体1は記録媒体Pと接触している。つまり、画像形成装置100は、いわゆる直接転写方式を採用する。直接転写方式を採用する画像形成装置100では、感光体1が記録媒体Pと接触するときに、感光体1の表面に記録媒体Pの微小成分(例えば、紙粉)が付着して固化し易い。そのため、直接転写方式を採用する画像形成装置100では感光体1の表面にフィルミングが発生し易い。しかし、画像形成装置100は、微小成分の付着により引き起こされるフィルミングの発生を抑制可能な感光体1を備えている。このため、画像形成装置100が直接転写方式を採用する場合であっても、微小成分が感光体1の表面に付着して固化し難く、フィルミングの発生を抑制することができる。転写部48は、例えば転写ローラーである。
画像形成ユニット40a〜40dの各々によって、転写ベルト50上の記録媒体Pに、複数色(例えば、ブラック、シアン、マゼンタ及びイエローの4色)のトナー像が順に重ねられる。なお、画像形成装置100がモノクロ画像形成装置である場合には、画像形成装置100は、画像形成ユニット40aを備え、画像形成ユニット40b〜40dは省略される。
定着部52は、転写部48によって記録媒体Pに転写された未定着のトナー像を、加熱及び/又は加圧する。定着部52は、例えば、加熱ローラー及び/又は加圧ローラーである。トナー像を加熱及び/又は加圧することにより、記録媒体Pにトナー像が定着する。その結果、記録媒体Pに画像が形成される。
<3.プロセスカートリッジ>
次に、図2を引き続き参照して、本実施形態の感光体1を備えるプロセスカートリッジについて説明する。プロセスカートリッジは、画像形成ユニット40a〜40dの各々に相当する。プロセスカートリッジは、感光体1を備える。プロセスカートリッジは、感光体1に加えて、帯電部42、露光部44、現像部46及び転写部48からなる群より選択される少なくとも1つを更に備えていてもよい。プロセスカートリッジには、クリーニング装置(不図示)及び除電器(不図示)の一方又は両方が更に備えられてもよい。プロセスカートリッジは、画像形成装置100に対して着脱自在に設計される。そのため、プロセスカートリッジは取り扱いが容易であり、感光体1の感度特性等が劣化した場合に、感光体1を含めて容易かつ迅速に交換することができる。
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明する。しかし、本発明は実施例の範囲に何ら限定されない。
<1.感光体の材料>
感光体の感光層を形成するための材料として、以下のバインダー樹脂、電荷発生剤、正孔輸送剤及び電子輸送剤を準備した。
<1−1.バインダー樹脂>
バインダー樹脂として、実施形態で述べたポリカーボネート樹脂(1−1)〜(1−3)を準備した。ポリカーボネート樹脂(1−1)〜(1−3)の粘度平均分子量は、各々、51200であった。
比較用のバインダー樹脂として、ポリカーボネート樹脂(1−4)〜(1−9)を準備した。ポリカーボネート樹脂(1−4)〜(1−9)の各々は、下記化学式(1−4)〜(1−9)で表される。ポリカーボネート樹脂(1−4)〜(1−9)の粘度平均分子量は、各々、50300であった。なお、化学式(1−4)〜(1−9)中の繰り返し単位に付された添え字は、各繰り返し単位のモル分率を表す。化学式(1−4)及び(1−7)中の添え字である「1.00」は、ポリカーボネート樹脂(1−4)及び(1−7)が、各々、添え字が付された繰り返し単位のみから構成されていることを示す。
<1−2.電荷発生剤>
電荷発生剤として、無金属フタロシアニンのX型結晶を準備した。無金属フタロシアニンは、実施形態で述べた化学式(CGM−1)で表される。
<1−3.正孔輸送剤>
正孔輸送剤として、実施形態で述べた化合物(3−1)を準備した。また、下記化学式(3−5)で表される化合物(以下、化合物(3−5)と記載することがある)も準備した。
<1−4.電子輸送剤>
電子輸送剤として、実施形態で述べた化合物(2−1)及び(4−1)を準備した。化合物(2−1)は、下記反応(R−3)及び(R−4)に従って製造した。下記反応式中の化学式(A−1)、(B−1)、(C−1)、(D)、(2−1)で表される化合物を、各々、化合物(A−1)、(B−1)、(C−1)、(D)、(2−1)と記載することがある。
反応(R−3)では、化合物(A−1)と化合物(B−1)とを反応させて化合物(C−1)を得た。フラスコに、化合物(A−1)2.24g(0.01モル)、化合物(B−1)3.26g(0.03モル)及びトルエン(100mL)を加え、フラスコの内容物を溶解させた。フラスコ内に、p−トルエンスルホン酸(0.001モル)を加えた。フラスコをディーン・スターク装置にセットした。フラスコの内容物を、90℃で5時間、脱水しながら還流した。得られたフラスコの内容物を減圧し、トルエンを留去した。減圧留去後の混合物にイオン交換水を加え、クロロホルムで抽出した。得られた有機層を乾燥した後、有機層を減圧しクロロホルムを留去した。その結果、化合物(C−1)が粗生成物として得られた。化合物(C−1)の収量は2.84gであり、化合物(A−1)からの化合物(C−1)の収率は90mol%であった。
反応(R−4)では、化合物(C−1)と化合物(D、マロノニトリル)とを反応させて化合物(1−1)を得た。化合物(C−1)1.57g(0.005モル)及び化合物(D)0.66g(0.01モル)をメタノール(100mL)に加えて、メタノール溶液を得た。メタノール溶液に、ピペリジン0.08g(0.001モル)を加えて、混合物を得た。混合物を還流しながら80℃で3時間攪拌した。続いて、混合物をイオン交換水(200mL)に加えて固体を析出させ、固体をろ取した。得られた固体を、展開溶媒としてクロロホルムを用いて、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。その結果、化合物(2−1)が得られた。化合物(2−1)の収量は1.45gであり、化合物(C−1)からの化合物(2−1)の収率は80mol%であった。
次に、1H−NMR(プロトン核磁気共鳴分光計)を用いて、製造した化合物(2−1)の1H−NMRスペクトルを測定した。磁場強度は300MHzに設定した。溶媒として、重水素化クロロホルム(CDCl3)を使用した。内部標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)を使用した。化合物(2−1)の1H−NMRスペクトルの化学シフト値を以下に示す。測定された1H−NMRスペクトル及び化学シフト値から、化合物(2−1)が得られていることを確認した。
化合物(2−1):1H−NMR(300MHz,CDCl3)δ=8.53(dd,1H),8.39(d,1H),8.18(d,1H),7.85(dd,1H),7.49(dt,1H),7.35(t,1H),7.34(dt,1H),4.45(t,2H),3.63(t,2H),1.90−2.07(m,4H).
<2.感光体の製造>
感光層を形成するための材料を用いて、感光体(P−1)〜(P−11)を製造した。
<2−1.感光体(P−1)の製造>
容器内に、電荷発生剤としてのX型無金属フタロシアニン2質量部、正孔輸送剤としての化合物(3−1)55質量部、電子輸送剤としての化合物(2−1)35質量部、バインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(1−1)100質量部及び溶剤としてのテトラヒドロフラン700質量部を投入した。容器の内容物を、ボールミルを用いて12時間混合して、溶剤に材料を分散させた。これにより、感光層用塗布液を得た。感光層用塗布液を、導電性基体としてのアルミニウム製のドラム状支持体(直径30mm、全長238.5mm)上に、ディップコート法を用いて塗布した。塗布した感光層用塗布液を、120℃で50分間熱風乾燥させた。これにより、導電性基体上に、一層の感光層(膜厚30μm)を形成した。その結果、感光体(P−1)が得られた。
<2−2.感光体(P−2)〜(P−11)の製造>
次の点を変更した以外は、感光体(P−1)の製造と同じ方法で、感光体(P−2)〜(P−11)の各々を製造した。感光体(P−1)の製造に用いたバインダー樹脂としてのポリカーボネート樹脂(1−1)を、表1に示す種類のバインダー樹脂に変更した。感光体(P−1)の製造に用いた電子輸送剤としての化合物(2−1)を、表1に示す種類の電子輸送剤に変更した。感光体(P−1)の製造に用いた正孔輸送剤としての化合物(3−1)を、表1に示す種類の正孔輸送剤に変更した。
<3.ビッカース硬度の測定>
得られた感光体(P−1)〜(P−11)の各々に対して、感光層のビッカース硬度を測定した。感光層のビッカース硬度は、日本工業規格(JIS)Z2244に準拠する方法で測定した。ビッカース硬度の測定には、硬度計(株式会社マツザワ(旧 松沢精機株式会社)製「マイクロビッカース硬度計 DMH−1型」)を用いた。ビッカース硬度の測定は、温度40℃、ダイヤモンド圧子の荷重(試験力)10gf、試験力に到達するまでの所要時間5秒、ダイヤモンド圧子の接近速度2mm/秒及び試験力の保持時間1秒の条件で行った。測定された感光層のビッカース硬度(単位:HV)を、表1に示す。
<4.耐フィルミング性の評価>
得られた感光体(P−1)〜(P−11)の各々に対して、耐フィルミング性を評価した。評価機として、画像形成装置(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「モノクロプリンターFS−1300D」の改造機)に装着した。この画像形成装置は、直接転写方式、接触現像方式及びクリーナーレス方式を採用する。この画像形成装置では、現像部が感光体上に残留しているトナーを清掃する。この画像形成装置は、帯電部として帯電ローラーを備えている。帯電ローラーの帯電極性を正極性に設定した。この画像形成装置を用いて、感光体の回転速度168mm/秒の条件で、20000枚の用紙(京セラドキュメントソリューションズ株式会社販売「京セラドキュメントソリューションズブランド紙VM−A4」、A4サイズ)に、画像(印字率1%)を連続して印刷した。印刷は、温度35℃、湿度85%RHの環境下で行った。印刷には一成分現像剤(試作品)を使用した。
印刷終了後、感光体を画像形成装置から取り出し、感光体の表面におけるトナーフィルミングの発生の程度を観察した。具体的には、感光体の表面を、光学顕微鏡(株式会社ニコン製「セナーK・K」)を用いて50倍の倍率で観察し、観察画像を得た。得られた観察画像を構成する画素は、各々、0以上255以下の輝度値を有していた。画像解析ソフトウェア(Image J)を用いて、観察画像に対して輝度値180を閾値とした2値化処理を行った。閾値未満の輝度値を有する画素が、フィルミングが発生している領域に対応する。一方、閾値以上の輝度値を有する画素は、フィルミングが発生していない領域に対応する。
2値化処理により、フィルミングが発生している領域の面積(Af)と、フィルミングが発生していない領域の面積(An)とを求めた。得られたAf及びAnから、下記計算式に従って、フィルミングが発生している領域の面積比率(フィルミング面積比率)を求めた。
フィルミング面積比率[%]=100×Af/(Af+An)
耐フィルミング性の評価結果(フィルミング面積比率)を、表1に示す。フィルミング面積比率が1.55%未満である感光体を、耐フィルミング性が良好であると評価した。
<5.耐オイルクラック性の評価>
得られた感光体(P−1)〜(P−11)の各々に対して、耐オイルクラック性を評価した。詳しくは、感光体の表面(10個の測定箇所)に、油脂(オレイン酸トリグリセリド)を付着させて、温度23℃かつ湿度50%RHの環境下で2日間放置した。その後、感光体の表面を肉眼で観察し、各測定箇所についてクラックの有無を確認した。確認結果から、下記基準に従って、感光体の耐オイルクラック性を評価した。耐オイルクラック性の評価結果を、表1に示す。評価がA又はBである感光体を、耐オイルクラック性が良好であると評価した。
(耐オイルクラック性の評価基準)
評価A:クラック発生個数が0個であった。
評価B:クラック発生個数が1個以上3個以下であった。
評価C:クラック発生個数が4個以上10個以下であった。
評価D:クラック発生個数が11個以上であった。
表1中、ETM及びHTMの各々は、電子輸送剤及び正孔輸送剤を示す。
感光体(P−1)〜(P−3)及び(P−10)の感光層は、電荷発生剤と電子輸送剤と正孔輸送剤とバインダー樹脂とを含有する一層の感光層であった。バインダー樹脂がポリカーボネート樹脂(1)、具体的にはポリカーボネート樹脂(1−1)、(1−2)又は(1−3)を含んでいた。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−1)〜(P−3)及び(P−10)では、耐オイルクラック性が良好であった。また、感光体(P−1)〜(P−3)及び(P−10)では、フィルミング面積比率が1.55%未満であり、耐フィルミング性も良好であった。
一方、感光体(P−4)〜(P−9)及び(P−11)の感光層は、ポリカーボネート樹脂(1)を含有していなかった。詳しくは、感光体(P−4)の感光層に含有されるポリカーボネート樹脂(1−4)は、実施形態で述べた繰り返し単位(6)を有していなかった。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−4)は耐オイルクラック性に劣っていた。
感光体(P−5)の感光層に含有されるポリカーボネート樹脂(1−5)は、一般式(1)中のnが0.70より大きかった。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−5)は耐オイルクラック性に劣っていた。
感光体(P−6)の感光層に含有されるポリカーボネート樹脂(1−6)は、一般式(1)中のnが0.30未満であった。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−6)は、フィルミング面積比率が1.55%以上であり、耐フィルミング性に劣った。
感光体(P−7)の感光層に含有されるポリカーボネート樹脂(1−7)は、実施形態で述べた繰り返し単位(5)を有していなかった。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−7)は耐オイルクラック性に劣っていた。また、感光体(P−7)は、フィルミング面積比率が1.55%以上であり、耐フィルミング性も劣っていた。
感光体(P−8)の感光層に含有されるポリカーボネート樹脂(1−8)は、2種の繰り返し単位を有していた。しかし、2種の繰り返し単位のうちの一方が、実施形態で述べた繰り返し単位(5)ではなかった。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−8)は、フィルミング面積比率が1.55%以上であり、耐フィルミング性に劣っていた。
感光体(P−9)及び(P−11)の感光層に含有されるポリカーボネート樹脂(1−9)は、シロキサン結合を含む繰り返し単位を有していた。そのため、表1から明らかなように、感光体(P−9)及び(P−11)は、耐オイルクラック性に劣っていた。また、感光体(P−9)及び(P−11)は、フィルミング面積比率が1.55%以上であり、耐フィルミング性に劣っていた。
以上のことから、本発明に係る感光体によれば、オイルクラックの発生の抑制及びフィルミングの発生の抑制を両立できることが示された。また、本発明に係るプロセスカートリッジ及び画像形成装置によれば、オイルクラックの発生の抑制及びフィルミングの発生の抑制を両立できることが示された。