JP3658469B2 - 電子写真感光体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば電子写真感光体に関し、特に有機光導電材料を用いた電子写真感光体に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
電子写真感光体の光導電材料には、一般的に、セレン(Se)、硫化カドミウム(CdS)、酸化亜鉛(ZnO)、アモルファスシリコン(a−Si)等の無機材料が使用されているが、かかる無機材料を用いた感光体は、暗所で例えば帯電ローラーにより帯電し、次いで、像露光を行い露光部のみの電荷を選択的に消失させて静電潜像を形成し、さらに、現像剤で可視化して画像形成するごとく利用されている。かかる電子写真感光体に要求される基本特性として、(1)暗所で適当な電位に帯電できること、(2)光照射により表面電荷を消失することができる機能を備えていること等であるが、前記無機材料は、各々長所、短所を有している。例えば、セレン(Se)は、前記(1)、(2)の特性は十分満足するが、可撓性がなくフィルム状に加工することが難しく、また、熱や機械的衝撃に鋭敏であるため取扱いに注意を要する等の欠点がある。さらに、アモルファスシリコン(a−Si)は製造条件が難しく、製造コストが高くなるという欠点がある。
【0003】
このため、近年は、電子写真感光体として、有機光導電物質として知られるフタロシアニンやアゾ化合物を電荷発生層として用い、さらにヒドラゾン化合物等からなる電荷移動層を積層して構成される機能分離型の有機感光体が主流になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来より、かかる有機感光体の電荷移動層の結着樹脂としては、ビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂が最も一般的に用いられている。
しかしながら、結着樹脂としてビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂を用いて電荷移動層を形成した場合には、電荷移動剤を感光体に塗布する際に塗工液が安定しない等の欠点がある。このため、かかる欠点のない電荷移動層の材料が要望されている。
【0005】
その一方で、最近は、近赤外域に波長を有する半導体レーザーを光源とするレーザープリンタ、LEDを光源とするLEDプリンタの開発が盛んである。この分野に適用される電子写真感光体は、半導体レーザーの発振波長域及びLEDの発光波長領域(600〜800nm)の波長の光に対して高い感度を有することが必要であるとともに、それに伴って帯電した電荷が光照射で消滅するまでの時間、即ちレスポンスタイムが速いことが感光体として求められる大きなファクターとなってきている。
【0006】
そこで、このような課題を解決するため、種々の電荷移動剤及びその結着樹脂として種々の樹脂を用いた電子写真感光体が提案されている(例えば、特開平1−26992号公報、特開平3−233461号公報、特開平6−102685号公報等参照)。
【0007】
しかし、これらの電子写真感光体においても、光疲労及び機械的特性の点で満足のゆくものは得られていないのが現状である。
【0008】
本発明は、このような従来の技術の課題を解決するためになされたもので、光疲労が小さく、かつ、機械的特性に優れ、しかも、塗工液の安定性の高い電子写真感光体を提供することを目的とするものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、感光層中に特定の構造の電荷移動剤と結着樹脂として特定の構造のポリカーボネート共重合体を用いた電子写真感光体が、前記従来の技術の問題点がなく、しかも長期間にわたって優れた機械的強度及び電子写真特性を維持することを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の発明は、導電性支持体上に少なくとも電荷発生剤と電荷移動剤と結着樹脂を有する感光層を形成した電子写真感光体において、該感光層中に結着樹脂として式〔Ia〕及び式〔IIa〕で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体と、電荷移動剤として式〔IV〕で表されるブタジエン化合物とを含有することを特徴とする電子写真感光体である。
【化9】
【化10】
【化11】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、電荷移動剤として、式〔IV〕で表されるブタジエン化合物に代えて、式〔V〕で表されるブタジエン化合物を含有することを特徴とする。
【化12】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、電荷移動剤として、式〔IV〕で表されるブタジエン化合物に代えて、式〔V〕で表されるブタジエン化合物と式〔VII〕で表されるヒドラゾン化合物との混合物を含有することを特徴とする。
【化13】
【化14】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明において、電荷移動剤として、式〔IV〕で表されるブタジエン化合物に代えて、式〔V〕で表されるブタジエン化合物と式〔VIII〕で表されるヒドラゾン化合物との混合物を含有することを特徴とする。
【化15】
【化16】
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電子写真感光体の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る電子写真感光体の好ましい実施の形態の構成を示す断面図である。
図1に示すように、本発明は、例えば、導電性支持体1の上に電荷発生層2が形成され、その上に電荷移動層3が形成される負帯電型機能分離型2層構造の電子写真感光体に適用されるものである。この場合、電荷発生層2と電荷移動層3とにより感光層4が形成される。
【0013】
本発明の電子写真感光体に用いられる導電性支持体1としては、公知のものなど各種のものを使用することができ、具体的には、例えば、アルミニウム、陽極酸化処理されたアルミニウム、ニッケル、銅、ステンレス、真ちゅう等、あるいは、プラスチック、プラスチック表面にアルミニウム、銅、ニッケル等の金属を蒸着又はめっきしたもの等を使用することができる。また、電子写真感光体の形状については、ドラム状、板状、シート状、ベルト状のものを使用することができる。
【0014】
電荷発生層2は、少なくとも電荷発生剤を有するものであり、この電荷発生層2は、その下地となる導電性支持体1上に電荷発生剤を結着樹脂を用いて結着することにより形成することができる。
【0015】
電荷発生層2の形成方法としては、公知の方法等各種の方法を使用することができるが、電荷発生剤を結着樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗工液を、所定の下地となる導電性支持体1上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0016】
また、真空蒸着により電荷発生層2を形成することもできる。
【0017】
電荷発生剤としては、公知のものなど各種のものを使用することができ、具体的には、例えば、フタロシアニン系、ジスアゾ系、トリスアゾ系、多環キノン系、インジゴ系、ペリレン系、ベンズイミダゾール等の顔料又は染料を使用することができる。
【0018】
また、電荷発生層2における結着樹脂としては、特に制限はなく公知のものなど各種のものを使用でき、具体的には、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、塩ビ−酢ビ共重合体、ポリビニルアセタール、アルキド樹脂、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリケトン、ポリアクリロアミド、ブチラール樹脂などの熱硬化樹脂等を使用することができる。
【0019】
なお、電荷発生層2における結着樹脂として、後述する一般式〔I〕及び一般式〔II〕で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体を用いることもできる。
【0020】
電荷移動層3は、少なくとも電荷移動剤を有するものであり、この電荷移動層3は、例えば、その下地となる電荷発生層2上に電荷移動剤を結着樹脂を用いて結着することにより形成することができる。電荷移動層3の形成方法としては、公知の方法等各種の方法を使用することができるが、通常の場合、電荷移動剤を結着樹脂とともに適当な溶媒により分散もしくは溶解した塗工液を、所定の下地となる電荷発生層2上に塗布し、乾燥させる方法を用いることができる。
【0021】
本発明の電子写真感光体は、その感光層中、特に電荷移動層3中に結着樹脂として基本構造が一般式〔I〕及び一般式〔II〕で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体を含有するものである。
【0022】
【化17】
【0023】
〔式中、Xは−CR 1 R 2 −(但し、R 1 及びR 2 は、各々独立に水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、トリフルオロアルキル基又は炭素数6〜12のアリール基を表す。)、炭素数5〜8の1,1−シクロアルキレン基、炭素数2〜12のα,ω - アルキレン基、単結合、−O−、−CO−、−S−、−SO−又は−SO 2 −を表す。また、R 3 及びR 4 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、m及びnは、各々独立に0〜4の整数を表す。〕
ここで、「単結合」とは、ベンゼン環の炭素原子同士が直接共有結合している場合をいい、以下、同様の意味を表す。
【0024】
【化18】
【0025】
〔式中、Yは一般式〔I〕のXと同様の意味を表す。但し、XとYは互いに同一でも良く、相違していても良い。〕
【0026】
このポリカーボネート共重合体としては、例えば、以下に挙げる繰り返し単位からなるものを含有することができる。
また、ポリカーボネート共重合体における繰り返し単位の組成比は、このポリカーボネート共重合体が合成しうる限り、特に限定されない。
【0027】
【化19】
【0028】
【化20】
【0029】
【化21】
【0030】
【化22】
【0031】
【化23】
【0032】
【化24】
【0033】
【化25】
【0034】
【化26】
【0035】
【化27】
【0036】
【化28】
【0037】
【化29】
【0038】
【化30】
【0039】
【化31】
【0040】
【化32】
【0041】
【化33】
【0042】
そして、本発明の電子写真感光体は、感光層中に結着樹脂として式〔Ia〕及び式〔IIa〕で表される繰り返し単位からなるポリカーボネート共重合体を含有する。
【0043】
【化34】
【0044】
【化35】
【0045】
一方、電荷移動層3を構成する電荷移動剤としては、基本構造が一般式〔III〕で表されるブタジエン化合物を用いることができ、特に、式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエン、式〔V〕で表される1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3ブタジエンが好適である。
【0046】
【化36】
【0047】
〔式中、R5からR8はアリール基を置換基として有してもよいアルキル基を表す。〕
【0048】
【化37】
【0049】
【化38】
【0050】
さらに、本発明では、電荷移動剤に基本構造が一般式〔VI〕で表されるヒドラゾン化合物、特に、式〔VII〕で表されるo−メチル−p−ジベンジルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾン、式〔VIII〕で表されるo−メチル−p−ジフェニルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾンを含有させることもできる。
【0051】
【化39】
【0052】
〔式中、R9 、R10はアルキル基、フェニル基、ベンジル基、メトキシフェニル基で相互に同じであっても異なっていてもよく、R11はアルキル基、フェニル基、p−メトキシベンジル基、エトキシ基、ベンジル基、メトキシフェニル基、トリル基、ナフチル基を表し、R12は水素原子、アルキル基、−OR13(R13は炭素原子数5〜10個を有する直鎖状又は分岐状アルキル基、アルケニル基、アルカジェニル基、炭素原子数7〜10個を有するアラルキル基)を表す。〕
【0053】
【化40】
【0054】
【化41】
【0055】
電荷移動剤としては、前記ブタジエン化合物及びヒドラゾン化合物以外で公知のものなど各種の電子供与性物質又は電子受容性物質を含有させることができる。
【0056】
電子供与性物質としては、例えばポリビニルカルバゾール、ハロゲン化ポリビニルカルバゾール、ポリビニルピレン、ポリビニルインドロキノキサリン、ポリビニルベンゾチオフェン、ポリビニルアントラセン、ポリビニルアクリジン、ポリビニルピラゾリン、ポリアセチレン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリイソチアナフテン、ポリアニリン、ポリジアセチレン、ポリヘプタジイエン、ポリピリジンジイル、ポリキノリン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェロセニレン、ポリペリナフチレン、ポリフタロシアニン等の導電性高分子化合物、低分子化合物として、アントラセン、ピレン、フェナントレン等の多環芳香族化合物、インドール、カルバゾール、イミダゾール、等の含窒素複素環化合物、フルオレノン、フルオレン、オキサジアゾール、オキサゾール、ピラゾリン、前記特定以外のブタジエン、トリフェニルメタン、トリフェニルアミン、エナミン、前記特定以外のヒドラゾン化合物などを使用することができる。
【0057】
電子受容性物資としては、例えばトリニトロフルオレノン、テトラシアノエチレン、テトラシアノキノジメタン、キノン、ジフェノキノン、ナフトキノン、アントラキノン及びこれらの誘導体、及び特願平7−185583号に記載の特定のキノン誘導体、特願平7−234732号及び特願平7−319718号に記載の特定のジフェノキノン誘導体などを使用することができる。
【0058】
本発明の電子写真感光体は、光導電材料や結着樹脂の酸化劣化による特性変化、クラック等の防止の目的で、その感光層中に酸化防止剤や紫外線吸収剤を含有することができる。
【0059】
本発明に用いることができる酸化防止剤としては、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−4−メトキシフェノール、2−tert−ブチル−4−メトキシフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、ブチル化ヒドロキシアニソール、プロピオン酸ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)、α−トコフェロール、β−トコフェロール、n−オクタデシル−3−(3’−5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系、2,2’−メチレンビス(6−tert−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス−(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のポリフェノール系等が好ましく、これらを1種若しくは2種以上を同時に感光層中に含有することができる。
【0060】
本発明に用いることができる紫外線吸収剤としては、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル〕−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−tert−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系、サリチル酸フェニル、サリチル酸−p−tert−ブチルフェニル、サリチル酸−p−オクチルフェニル等のサリチル酸系が好ましく、これらを1種若しくは2種以上を同時に感光層に含有することができる。
【0061】
また、酸化防止剤と紫外線吸収剤を同時に添加することもできる。これらの添加は感光層中であれば何れの層でもよいが、最表面の層特に電荷移動層に添加することが好ましい。
【0062】
本発明に係る電子写真感光体においては、導電性支持体と感光層との間に、接着機能、バリヤー機能、支持体表面の欠陥被覆機能などを持つ中間層を設けてもよい。この中間層としては、酸化アルミニウム、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリアミド樹脂、ナイロン樹脂等を用いることができる。それらの中間層は、単独の樹脂で構成しても良く、2種類以上の樹脂を混合して構成しても良い。また、樹脂中に金属酸化物やカーボンを分散させた中間層を用いることもできる。
【0063】
さらにまた、電子写真感光体の耐久性を向上させるため、感光層上に表面保護層を設けることもできる。この場合、感光層の材料としては、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ふっ素樹脂等を用いることができる。
【0064】
【実施例】
以下、本発明に係る電子写真感光体の実施例を比較例とともに詳細に説明する。
【0065】
〔実施例1〕
直径30mmのアルミニウムからなる円筒ドラム上に、結着樹脂としてポリビニルブチラールを用いたオキシチタニウムフタロシアニンの分散液を浸漬塗工により0.1μm塗布し、電荷発生層を形成する。
【0066】
次いで、結着樹脂として、式〔Ia〕及び式〔IIa〕で表されるポリカーボネート共重合体(樹脂2)と、電荷移動剤として式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンとを1.0/0.8の重量比でクロロホルムに溶解して塗工液を調製する。
【0067】
【化42】
【0068】
【化43】
【0069】
【化44】
【0070】
この場合、ポリカーボネート共重合体の繰り返し単位の組成(モル)比は、式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1とする。また、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度は0.76dl/gであった。
そして、浸漬塗工によりこの塗工液を塗布した後、100℃の温度下で1時間乾燥し、20μmの膜厚の電荷移動層を形成する。以上のような方法で電子写真感光体を作製した。
【0071】
〔実施例2〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0072】
〔実施例3〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.2/0.8で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂に用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0073】
〔実施例4〕
実施例1において、電荷移動剤として式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンに代えて、式〔V〕で表される1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3ブタジエンを用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0074】
【化45】
【0075】
〔実施例5〕
実施例4において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例4と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0076】
〔実施例6〕
実施例4において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.2/0.8で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例4と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0077】
〔実施例7〕
実施例1において、電荷移動剤として式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンに代えて、前記式〔V〕で表される1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3ブタジエンと式〔VII〕で表されるo−メチル−p−ジベンジルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾンを用い、ポリカーボネート共重合体/化合物式〔V〕/化合物式〔VII〕=1.0/0.1/1.0の重量比でクロロホルムに溶解し、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0078】
【化46】
【0079】
〔実施例8〕
実施例7において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例7と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0080】
〔実施例9〕
実施例7において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.2/0.8で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例7と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0081】
〔実施例10〕
実施例1において、電荷移動層として式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンに代えて、前記式〔V〕で表される1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3ブタジエンと式〔VIII〕で表されるo−メチル−p−ジフェニルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾンを用い、ポリカーボネート共重合体/化合物式〔V〕/化合物式〔VIII〕=1.0/0.1/1.0の重量比でクロロホルムに溶解し、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0082】
【化47】
【0083】
〔実施例11〕
実施例10において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例10と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0084】
〔実施例12〕
実施例10において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.2/0.8で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例10と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0085】
〔実施例13〕
電荷発生剤としてオキシチタニウムフタロシアニンを用い、これを真空度1.0×10-6mmHgの雰囲気中で加熱し、直径30mmのアルミニウムからなる円筒ドラム上に0.1μmの厚さに蒸着して電荷発生層を形成する。そして、実施例1と同様に、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.76dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例1と同様の方法により電荷移動層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0086】
〔実施例14〕
実施例13と同様の方法によって電荷発生層を形成し、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例13と同様の方法により電荷発生層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0087】
〔実施例15〕
実施例13と同様の方法によって電荷発生層を形成し、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.2/0.8で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例13と同様の方法により電荷発生層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0088】
〔実施例16〕
実施例13と同様の方法によって電荷発生層を形成する。そして、電荷移動剤として式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンに代えて、前記式〔V〕で表される1,1−ビス(p−ジエチルアミノフェニル)−4,4−ジフェニル−1,3ブタジエンと前記式〔VII〕で表されるo−メチル−p−ジベンジルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾンを用い、ポリカーボネート共重合体/化合物式〔V〕/化合物式〔VII〕=1.0/0.1/1.0の重量比でクロロホルムに溶解し、実施例13と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0089】
〔実施例17〕
実施例13において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例13と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0090】
〔実施例18〕
実施例13において、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.9/0.1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ia〕/式〔IIa〕=0.2/0.8で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gであるポリカーボネート共重合体を結着樹脂として用い、実施例13と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0091】
〔参考例1〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ib〕/式〔IIb〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.76dl/gである樹脂6で表されるポリカーボネート共重合体を結着樹脂に用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0092】
【化48】
【0093】
【化49】
【0094】
〔参考例2〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ic〕/式〔IIc〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.75dl/gである樹脂8で表されるポリカーボネート共重合体を結着樹脂に用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0095】
【化50】
【0096】
【化51】
【0097】
〔参考例3〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Id〕/式〔IId〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gである樹脂11で表されるポリカーボネート共重合体を結着樹脂に用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0098】
【化52】
【0099】
【化53】
【0100】
〔参考例4〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔Ie〕/式〔IIe〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gである樹脂12で表されるポリカーボネート共重合体を結着樹脂に用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0101】
【化54】
【0102】
【化55】
【0103】
〔参考例5〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、繰り返し単位のモル比が式〔If〕/式〔IIf〕=0.5/0.5で、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.77dl/gである樹脂13で表されるポリカーボネート共重合体を結着樹脂に用い、実施例1と同様の方法で電子写真感光体を作製した。
【0104】
【化56】
【0105】
【化57】
【0106】
〔比較例1〕
実施例1と同様の方法によって電荷発生層を形成し、電荷移動剤として式〔IV〕で表される1−p−ジベンジルアミノフェニル−1−p−ジエチルアミノフェニル−4,4−ジフェニル−1,3−ブタジエンに代えて、前記式〔VII〕で表されるo−メチル−p−ジベンジルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾンを用い、実施例1と同様の方法により電荷移動層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0107】
〔比較例2〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.74dl/gである前記式〔IIa〕を繰り返し単位とするポリカーボネートを結着樹脂として用い、実施例1と同様の方法により電荷移動層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0108】
〔比較例3〕
実施例1のポリカーボネート共重合体に代えて、塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dlの溶液の20℃における還元粘度が0.72dl/gである一般式〔Ia〕を繰り返し単位とするポリカーボネートを結着樹脂として用い、実施例1と同様の方法により電荷移動層を形成して電子写真感光体を作製した。
【0109】
評価方法
〔光疲労の測定〕
電子写真感光体評価装置(山梨電子工業社製)を用い、実施例及び比較例によって作製された電子写真感光体を印加電圧−5KVで帯電させ、波長λ=780nm、露光光量20erg/cm2の光を用いて電子写真感光体を露光したときの表面電位VR (−V)を測定した。
【0110】
一方、前記電子写真感光体に照度800luxの蛍光灯光を10分間照射し、その後、前記電子写真感光体評価装置によりVR1を測定し、光を照射する前のVR との差(|VR −VR1|)を光疲労△VR (V)とした。その結果を実施例は表1に、比較例は表2に示す。
【0111】
〔画像試験〕
前記電子写真感光体を、ブラシ帯電方式により電子写真感光体を負に帯電し、LED露光、非磁性一成分現像方式、ブレードクリーニング方式により画像形成を行う電子写真装置1に装着し、A4用紙を5,000枚印字させ、初期画像と5000枚印字後の画像を比較した。その結果を実施例は表1に、比較例は表2に示す。この場合、判定は、◎が良好、○はやや難があるが実用レベル、×は難があり実用不可とした。
【0112】
〔膜減りの測定〕
前記電子写真感光体を画像試験にて用いた電子写真装置に装着し、5000枚の印字を行い、印字前と5000枚印字後の感光層の膜厚差△t(μm)を測定した。その結果を実施例は表1に、比較例は表2に示す。
【0113】
〔液安定性の評価〕
実施例及び比較例において調製された電荷移動層用の塗工液を1ケ月常温で放置し、塗工液のゲル化の有無を評価した。その結果を実施例は表1に、比較例は表2に示す。
この場合、判定は、変化のないものを○、ゲル化したものを×とした。
【0114】
【表1】
【0115】
【表2】
【0116】
表1から明らかなように、本発明の実施例の電子写真感光体は、光疲労がほとんど生ずることなく、また、画像試験の結果も良好であった。さらに、5000枚印字した後においても、感光層表面の膜減りはごくわずかであった。
【0117】
また、実施例の塗工液を1ケ月常温で放置してもゲル化するものはなく、液安定性も良好であった。
【0118】
加えて、表1から明らかなように、これらの効果は、電荷移動層の結着樹脂である式〔Ia〕及び式〔IIa〕の繰り返し単位の共重合組成比を変化させても大きく変わることがなかった。
【0119】
これに対し、表2から明らかなように、電荷移動剤として式〔VII〕で表されるo−メチル−p−ジベンジルアミノベンズアルデヒド・ジフェニルヒドラゾンを用いた比較例1の場合は、光疲労が大きくなり、これに伴い、画像試験において5K後の画像に濃度の低下が発生した。
【0120】
一方、結着樹脂として式〔IIa〕で表されるポリカーボネート樹脂を用いた比較例2の場合は、実施例のものに比べて感光層表面の膜減りが2〜3倍になり、その結果、画像試験において5K後の画像に縦方向のすじが発生した。
【0121】
さらに、結着樹脂として式〔Ia〕で表されるポリカーボネート樹脂を用いた比較例3の場合は、感光層表面の膜減りがかなり大きくなるとともに、感光層表面にキズが生じ、その結果、画像試験において5K後の画像に縦方向のすじが発生した。また、1ケ月放置した塗工液にゲル化が生じた。
【0122】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、光疲労が小さく、かつ、機械的特性に優れ、しかも、塗工液の安定性の高い電子写真感光体を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電子写真感光体の好ましい実施の形態の構成を示す断面図である。
【符号の説明】
1・・・導電性支持体、2・・・電荷発生層、3・・・電荷移動層
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