JP6592424B2 - 軟磁性扁平粉末およびこれを用いた磁性シート - Google Patents

軟磁性扁平粉末およびこれを用いた磁性シート Download PDF

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Description

本発明は、各種の電子デバイスに用いられる、高透磁率を有する磁性シート用軟磁性扁平粉末およびこれを含有する磁性シートに関する。
従来より、軟磁性扁平粉末を含有する磁性シートは、電磁波吸収体、RFID(Radio Frequency Identification)用アンテナとして用いられてきた。また、近年では、デジタイザと呼ばれる位置検出装置にも用いられるようになってきている。このデジタイザには、例えば特開2011−22661号公報(特許文献1)に開示されているような電磁誘導型のものがあり、ペン形状の位置指示器の先に内蔵されるコイルより発信された高周波信号を、パネル状の位置検出器に内蔵されたループコイルにより読み取ることで指示位置を検出する。ここで、検出感度を高める目的で、ループコイルの背面には高周波信号の磁路となるシートが配置される。
この磁路となるシートとしては、軟磁性扁平粉末を含有する磁性シートや、軟磁性アモルファス合金箔を貼り合わせたものなどが適用される。磁性シートを用いる場合は、検出パネル全体を1枚のシートに出来るため、アモルファス箔のような貼り合せ部での検出不良などがなく優れた均一性が得られる。
デジタイザ機能はスマートフォンやノートPCなどへ適用されるが、このようなモバイル電子デバイスは小型化の要求が厳しく、磁路シートとして用いられる磁性シートにも薄肉化の要求が高い。このような薄肉化には、従来使用されてきた電磁波吸収体やRFID用アンテナ用磁性シートよりも、さらに高い透磁率が必要になる。したがって、デジタイザの作動周波数である数百kHzにおいて、高い透磁率を有する磁性シートが求められている。
従来より、磁性シートには、Fe−Si−Al合金、Fe−Si合金、Fe−Ni合金、Fe−Al合金、Fe−Cr合金などからなる粉末を、アトライタ(アトリッションミル)などにより扁平化したものが添加されてきた。これは、高い透磁率の磁性シートを得るために、いわゆる「Ollendorffの式」からわかるように、透磁率の高い軟磁性粉末を用いること、反磁界を下げるため磁化方向に高いアスペクト比を持つ扁平粉末を用いること、磁性シート中に軟磁性粉末を高充填することが重要であるためである。
特にセンダストと呼ばれるFe−Si−Al合金は、Fe−9.6%Si−5.4%Alの組成において、結晶磁気異方性と磁歪がともにゼロとなり、これによって著しく高い透磁率が得られることから、現在、電磁波吸収体などに多く使用されている。例えば特開2005−281783号公報(特許文献2)に開示しているように、Siを8〜11wt%、Alを4〜7wt%含有するFe−Si−Al合金を用いることが提案されている。なお、この特許文献2の段落[0025]に好ましい範囲として記載されているとおり、Siが9.0〜10.5wt%、Alが4.5〜6.5wt%の成分が、上述にも示した最も高い透磁率が得られる組成として知られており、この組成の扁平粉末を用いることで磁気特性に優れた磁性シートが得られる。
一方、特開2005−209753号公報(特許文献3)には、軟磁性扁平粉末が、また、特開2002−299113号公報(特許文献4)には、軟磁性粉末およびそれを用いた圧粉磁心について開示されている。また、特開2005−123531号公報(特許文献5)には、電磁波吸収体に用いる扁平粉末が開示されている。さらに、特開平10−330806号公報(特許文献6)には凝球状異形金属粉末の製造方法や特開昭62−13207号公報(特許文献7)には金属粉末の製造方法がそれぞれ提案されている。
特開2011−22661号公報 特開2005−281783号公報 特開2005−209753号公報 特開2002−299113号公報 特開2005−123531号公報 特開平10−330806号公報 特開昭62−13207号公報 特開2010−196123号公報 特開2012−9825号公報
しかしながら、上述したような特許文献1および2に開示されているデジタイザ用磁路シートに用いる磁性シートなどにあっては、さらなる高透磁率化の要求が厳しく、従来の技術では対応しきれない状況になってきている。一方、特許文献3および4に開示されているような酸化皮膜を求めるものではない。また、それぞれの実施例には、本発明でいう成分組成やアスペスト比を満たすものは記載されていない。
また、特許文献5に記載の扁平前粉末の酸素量については何ら課題とするものではない。しかも、特許文献3、4と同様に、実施例には本発明でいう成分組成を満たすものは記載されていない。さらに、特許文献6および7に開示されているようなアトマイズガスに酸素を積極的に添加するような必要はない。しかも、特許文献7の実施例には、特許文献3、4と同様に、本発明の成分組成やアスペスト比を満たすものは記載されていない。
上述したような特許文献1および2の課題と特許文献3〜7の掲げる技術にはない特性を得るために、発明者らは鋭意開発を進めた結果、特に合金組成として最も高い透磁率が得られるFe−9.6%Si−5.4%Alから意図的に外れた組成を詳細に検討し、磁性シートに用いる場合に高い透磁率を実現できる軟磁性扁平粉末として、さらに高い透磁率が得られる組成範囲を見出し本発明に至った。
その発明の要旨とするところは、
(1)組成が質量%で、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが1.0%以上13.0%以下よりなり、下記式(1)を満たし、かつ、アスペクト比が15以上であることを特徴とする軟磁性扁平粉末。
2Si%−Al%≦15.0 ・・・ 式(1)
(2)前記(1)に記載された軟磁性扁平粉末を含有することを特徴とする磁性シートにある。
以上述べたように、本発明により、磁性シートとして用いる場合に高い透磁率を実現できる軟磁性扁平粉末とこれを用いた高透磁率磁性シートを提供できることにある。
Fe−Si−Al合金の初透磁率を示す図である。 Fe−Si−Al合金のKおよびλsのマップを示す図である。 実験Aのμ’を示す図である。 実験Aのμ”を示す図である。 実験Aのアスペクト比を示す図である。 実験Aの結晶粒径を示す図である。 実験Aの保磁力を示す図である。 実験Bの結果:μ’に及ぼすアスペクト比の影響を示す図である。
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明における特徴は、従来、最も高い透磁率が得られると考えられてきたFe−9.6%Si−5.4%Alから外れた組成域において、扁平加工を施し磁性シートに用いた場合に、より高い透磁率が得られる組成域を見出したことである。すなわち、従来より知られてきた最も高い透磁率が得られる組成の近傍から、積極的に外れた組成域とすることで得られた技術である。
Fe−Si−Al合金を扁平化し磁性シートに用いる例は、過去に数多く見られ、多くの特許が出願されている。しかしながら、磁性シート用として提案されている組成はいずれもFe−9.6%Si−5.4%Alの近傍で、さらに、実際に特性評価されている組成はいずれもFe−9.6%Si−5.4%Alの直近である。これは、Fe−9.6%Si−5.4%Alの組成の特異性によると考えられる。すなわち、例えば図1に示すように、Fe−Si−Al合金の初透磁率は、Fe−9.6%Si−5.4%Alの、ごく近傍のわずかな組成域でのみ著しく高くなることが知られている。したがって、この組成からわずかでも外れた組成を、積極的に高透磁率磁性シート用として適用する検討がなされないことによると考えられる。
これに対し、発明者らは、Fe−9.6%Si−5.4%Alから外れた広い範囲の組成域において、合金粉末を作製し、これを扁平加工した粉末についてX線回折を行なった。その結果、扁平化した粉末の厚さ方向とこれに垂直な面内において著しい結晶方位の異方化が認められ、扁平粉末の厚さ方向に(100)方向が揃っていることがわかった。すなわち、プレスにより扁平粉末の厚さ方向を磁性シートの厚さ方向に一致させたシートの表面でCu−Kα線を用いてX線回折したところ、アトライタ前の球状粉末と比較し、回折角2θ=65°付近のピークが明確に高いことが認められた。さらに、これら粉末を用いて作製した磁性シートの透磁率を測定したところ、Fe−9.6%Si−5.4%Alより低Si側の広いAl量範囲において、より高い透磁率が得られることを見出した。この組成域の扁平粉末を用いた磁性シートがFe−9.6%Si−5.4%Al組成よりも優れた透磁率を示す要因について、詳細は定かではないが以下のように推測される。
本発明の範囲である、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが3.0%以上8.5%以下、Alが1.0%以上13.0%以下で、かつ、2Si%−Al%≦15.0の組成は、例えば従来より知られている図2から、結晶磁気異方性定数(K)が正で、飽和磁歪定数(λs)もゼロ近傍から正となる領域である。ここで、立方晶の金属における結晶磁気異方性定数は、(100)方向が磁化容易軸になる場合が正の値で、(111)方向が磁化容易軸になる場合が負の値である。
上述したように扁平化した粉末は、厚さ方向に(100)が揃っているため、これに垂直な面内方向にも(010)や(001)の磁化容易軸方向が多く存在し、逆に磁化困難軸である(111)方向はほとんど存在しないものと考えられる。なお、磁性シートとして用いる場合、扁平粉末の厚さと垂直の面内方向が外部磁化方向となるため、このように正の結晶磁気異方性定数を有する合金は、磁性シート使用時の外部磁化方向と、結晶としての磁化容易方向が多く一致すると推測される。
また、正の飽和磁歪定数は、磁性体を磁化した場合に、磁化方向に伸びることを意味し、その垂直の面においては僅かに収縮することを意味する。一般に、磁性シートは軟磁性扁平粉末と樹脂やゴムを混合したのち、これをプレスやロールなどによりシート状に延ばして作製される。したがって、軟磁性扁平粉末はプレスやロールによる圧縮によってシートの面内方向と扁平粉末の面内方向が一致し、積層するように配向する。同時にシートの厚さ方向に圧縮されるため、磁性シート内で扁平粉末は厚さ方向に押された状態が残留する。このような状態において、飽和磁歪定数が正の扁平粉末を、その面内方向に磁化すると、これに垂直な厚さ方向には僅かに収縮すると考えられる。この収縮は上述した扁平粉末が厚さ方向に押され、残留している応力を減じる方向に働くと推測される。
以上のように、磁性シートとして使用する際に、外部磁化方向と磁化容易軸方向が多く一致すること、および、外部磁化方向に伸びることにより厚さ方向に押され、残留している応力が減じられることは、外部からの高周波磁界に対し、扁平粉末の面内方向での磁化回転を促進すると考えられ、通常の等方的な用途と比較し、本用途において、結晶磁気異方定数と飽和磁歪定数がともにゼロとなるFe−9.6%Si−5.4%Al組成よりも、高い透磁率を有する磁性シートが得られるものと推測される。
さらに、本発明の組成範囲においては、通常の高透磁率組成であるFe−9.6%Si−5.4%Alと比較し、扁平加工による粉末粒子の変形挙動も異なることがわかった。すなわち、本発明の組成範囲は、Fe−9.6%Si−5.4%Al組成よりも高いアスペクト比に変形されることも見出した。これにより、磁性シート中で発生する反磁界を小さくすることも可能であり、磁性シートの高透磁率化を促進する効果もあると考えられる。この変形挙動には、粉末粒子の硬さや延性などの機械的力学物性が影響していると考えられる。
またさらに、本発明の組成範囲は扁平加工による結晶粒の微細化挙動も、Fe−9.6%Si−5.4%Al組成とはことなることがわかった。アトライタなどの機械加工による扁平化加工において、粉末には大きな塑性ひずみが導入され、これにより、扁平粉末は結晶粒が微細化する。一般に透磁率や保磁力に及ぼす結晶粒径の影響は、20〜40nm程度を境に挙動が変化すると考えられているが、磁性シートに用いられる扁平粉末の結晶粒径は概ね50nm以上であり、この結晶粒径の領域では結晶粒径が小さくなるほど透磁率は低下し、保磁力は増加する。ここで、本発明範囲の組成とFe−9.6%Si−5.4%Al組成で、扁平加工による結晶粒微細化効果を比較したところ、本発明範囲の組成のほうが比較的結晶粒径が大きいことを見出した。
これにより、本発明範囲の組成はFe−9.6%Si−5.4%Al組成と比較し、扁平加工による透磁率の低下が比較的小さく抑えられると考えられる。なお、この現象についての要因は以下のように考えられる。一般に、Siをはじめ、B、C、Pといった半金属元素は、Feに対しアモルファス形成を促進する元素である。したがってSiには、メカニカルアロイのような機械的なひずみ導入によるアモルファス化やナノ結晶粒化も促進する効果があると考えられる。このことから本発明範囲の組成は、Fe−9.6%Si−5.4%Al組成よりもSiが低いため、扁平加工後の結晶粒が比較的大きいものと推測される。
以上に述べたように、本発明範囲の組成は、結晶磁気異方性や磁歪といった磁気特性、硬さや延性などの機械的力学特性、さらには結晶粒微細化挙動によると考えられる複数の特徴から、本用途に用いる場合に限り、Fe−9.6%Si−5.4%Al組成よりも優れた透磁率を示すことを見出し、本発明に至った。
なお、Fe−9.6%Si−5.4%Al組成から外れた組成の検討例として、扁平加工時の酸化を考慮する特許文献8(特開2010−196123号公報)や、高温で用いる圧粉磁心に関する特許文献9(特開2012−9825号公報)などがあるが、前者は酸化による組成ズレを考慮し、より厳密にFe−9.6%Si−5.4%Al組成の有する高透磁率を得ようとするものであり、後者は扁平加工をともなわず、かつ、用途や使用環境(特に使用温度)も全く異なるため、いずれも本発明の成分検討の意図とは明確に異なっている。
本発明における扁平粉末の製造方法は従来提案されている方法で可能である。例えば、各種のアトマイズ法により原料となる合金粉末を作製し、これを各種のミル装置により扁平加工した後、熱処理により透磁率を向上することが可能である。特に、原料粉末の製造効率や扁平加工処理の効率を考慮すると、水アトマイズもしくはガスアトマイズ法により原料粉末を作製し、アトライタにより扁平加工する方法が好適である。
また、扁平加工後の粉末は塑性ひずみが多量に導入され結晶粒も微細化しているため、従来提案されている熱処理によりこれらを解消し、透磁率を向上させることが可能であり、酸化による透磁率劣化を考慮すると、真空中や不活性雰囲気での熱処理が好適である。さらに、シアン系カップリング剤に代表される従来提案されている表面処理により、耐食性を改善したりゴムへの分散性を改善することも可能である。また、磁性シートの製造方法も従来提案されている方法で可能である。例えば、トルエンに塩素化ポリエチレンなどを溶解したものに扁平粉末を混合し、これを塗布、乾燥させたものを各種のプレスやロールで圧縮することで製造可能である。
Feが84.0%以上96.0%以下
本発明においてFeは、扁平粉末に強磁性を持たせ磁性シートの透磁率を向上させる必須元素である。しかしながら、84.0%未満もしくは96.0%を超えると磁性シートの透磁率が劣化する。84.0%未満の場合は扁平粉末の飽和磁束密度が過度に低くなるためと考えられ、96.0%を超えると扁平粉末の結晶磁気異方性定数が過度に大きくなるためと考えられる。好ましくは86.0%を超え94.0%未満であり、より好ましくは85.0%を超え92.0%未満の範囲である。
Siが3.0%以上8.5%以下
本発明においてSiは、扁平粉末の透磁率を上げ磁性シートの透磁率を向上させる必須元素である。しかしながら、3.0%未満もしくは8.5%を超えると磁性シートの透磁率が劣化する。3.0%未満の場合は扁平粉末の結晶磁気異方性定数が過度に大きくなるためと考えられ、8.5%を超えると扁平粉末の結晶磁気異方性定数および/もしくは飽和磁歪定数が負の値になり、かつ、粉末粒子の硬さを過度に上昇させ扁平粉末のアスペクト比を下げてしまい、さらには、扁平加工における結晶粒微細化を過度に促進してしまう複合的な効果のためと考えられる。好ましくは3.5%を超え8.0%未満であり、より好ましくは4.0%を超え7.0%未満の範囲である。
Alが1.0%以上13.0%以下
本発明においてAlは、扁平粉末の透磁率を上げ磁性シートの透磁率を向上させる必須元素である。しかしながら、1.0%未満もしくは13.0%を超えると磁性シートの透磁率が劣化する。1.0%未満の場合は扁平粉末の結晶磁気異方性定数が過度に大きくなるためと考えられ、13.0%を超えると扁平粉末の飽和磁束密度が過度に低くなるためと考えられる。好ましくは2.0%を超え12.0%未満であり、より好ましくは3.5%を超え11.0%未満の範囲である。
2Si%−Al%≦15.0
本発明において2Si%−Al%は、本発明扁平粉末を用いた磁性シートの透磁率に影響するパラメータである。すなわち、2Si%−Al%が15.0を超えると磁性シートの透磁率が劣化する。ここで、2Si%−Al%=12.0は図2におけるFeが84.0%以下の範囲において、概ねλs=0のラインに一致する。したがって、2Si%−Al%が12.0より過度に高くなると、λsが大きく負の値となる組成域になる。このことから、2Si%−Al%が15.0を超えると磁性シートの透磁率が劣化すると考えられる。好ましくは13.5%未満、より好ましくは12.0%未満の範囲である。
アスペクト比が15以上
本発明において扁平粉末のアスペクト比は、本発明扁平粉末を用いた磁性シートの透磁率に影響する因子である。すなわち、扁平粉末のアスペクト比が15未満では磁性シートの透磁率が劣化する。ここで扁平粉末のアスペクト比とは、扁平粉末の面内の長手方向の長さを厚さで除したものである。なお扁平粉末のアスペクト比は、大きければ大きいほど磁性シートの透磁率が向上するため、特に上限に規定はない。しかしながら、磁性シートの製造方法や製造条件によっては、アスペクト比が過度に大きい場合、ゴムや樹脂への分散が困難になったり、磁性シートの表面の凹凸を大きくするなどの問題が出る場合もある。したがって、扁平粉末のアスペクト比の好ましい範囲は35を超え300未満、より好ましくは50を超え250未満である。
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。
(実験A)
[扁平粉末の作製]
まず、磁性シートの透磁率に及ぼすFe、Si、Al量の影響を検討した。水アトマイズ法により所定の成分の粉末を作製し75μm以下に分級した。水アトマイズは、アルミナ製坩堝を溶解に用い、坩堝下の直径5mmのノズルから合金溶湯を出湯し、これに高圧水を噴霧することで実施した。これを原料粉末としアトライタにより扁平加工した。アトライタは、SUJ2製の直径4.8mmのボールを使用し、原料粉末と工業エタノールとともに攪拌容器に投入し、羽根の回転数を300rpmとして実施した。
通常、アトライタによる扁平加工において加工時間によりアスペクト比が変化するが、加工の前半は原料粉末が扁平化されアスペクト比は増大するがある加工時間を過ぎて加工の後半になると扁平化された粉末が粉砕されアスペクト比は減少する。したがって本実験においては、アトライタ加工時間ごとに粉末をサンプリングし、いずれの組成もアスペクト比が最大になる加工時間での比較を行なった。扁平加工後に攪拌容器から取り出した扁平粉末と工業エタノールをステンレス皿に移し、80℃で24時間乾燥させた。このようにして得た扁平粉末を窒素中で650℃で2時間熱処理し、磁性シート評価に用いた。
[磁性シートの作製および評価]
トルエンに塩素化ポリエチレンを溶解し、これに得られた扁平粉末を混合、分散した。この分散液をポリエステル樹脂に厚さ1mm程度に塗布し、常温常湿で乾燥させた。その後、130℃、15MPaの圧力でプレス加工し、磁性シートを得た。なお、磁性シート中の扁平粉末の体積充填率はいずれも約50%であった。次に、この磁性シートを、外径7mm、内径3mmのドーナツ状に切り出し、インピーダンス測定器により、室温で1MHzにおけるインピーダンス特性を測定し、その結果から透磁率(複素透磁率の実数部:μ’)を算出した。また、同様に0.1MHz〜100MHzの範囲における損失部(複素透磁率の虚数部:μ”)の最大値を評価した。
さらに、得られた磁性シートの断面を樹脂埋め研磨し、その光学顕微鏡像から「長手方向の長さ/厚さ」をランダムに50粉末測定し、その平均をアスペクト比とした。またさらに、得られた磁性シートの表面にてX線回折を行い、Scherrerの式を用い結晶粒径を評価した。X線回折にはCu−Kα線を用い、回折角2θ=45°付近のメインピークの半値幅から結晶粒径を算出した。そして、磁性シートの保磁力を保磁力メータで測定した。印加磁場は144kA/mで、磁性シートの面内方向に印加した。
これらの結果を、図3(μ’)、図4(μ”)、図5(アスペクト比)、図6(結晶粒径)、図7(保磁力)に示す。図3においては、μ’が160以上を●、140以上160未満を○、120以上140未満を△、120未満を×とした。図4においては、μ”の最大値が45以上を●、40以上45未満を○、35以上40未満を△、35未満を×とした。図5においては、アスペクト比が50を超えるものを●、35を超え50以下のものを○、15以上35以下のものを△、15未満のものを×とした。図6においては、結晶粒径が150nm以上のものを●、100nm以上150nm未満のものを○、80nm以上100nm未満のものを△、80nm未満のものを×とした。図7においては、保磁力が100A/m未満のものを●、100A/m以上200A/m未満のものを○、200A/m以上300A/m未満のものを△、300A/m以上のものを×とした。
図3より、本発明の組成範囲内(太い点線枠の範囲)の扁平粉末を用いた磁性シートは、いずれも120以上の高いμ’を有している。また、図4より、概ね高いμ’が得られた組成範囲において、高いμ”も得られていることがわかり、本発明の磁性シートは電磁波吸収特性にも優れている。図5から高いアスペクト比が概ね低Si組成により得られ、図6から比較的大きい結晶粒径も低Si組成において得られていることがわかる。なお、図5から、実験Aにおける本発明範囲の組成の扁平粉末は、いずれもアスペクト比が15以上であることがわかる。これに対し、図7から、保磁力は従来から高透磁率組成として知られるFe−9.6%Si−5.4%Al組成の、ごく近傍のみで著しく低い値となっていることがわかる。しかしながら、Fe−9.6%Si−5.4%Al組成ほどではないものの、本発明範囲の組成全体の広い組成域にわたり、比較的低い保磁力が得られている。これは、この組成域における結晶粒径が比較的大きいことに起因していると考えられる。
したがって、合金組成自体の保磁力は、結晶磁気異方性定数および飽和磁歪定数がともにゼロとなるFe−9.6%Si−5.4%Al組成近傍で最も低い値が得られているが、扁平加工を受けた粉末を添加した磁性シートとして高周波磁界に対しては高い透磁率がこの組成から外れた本発明組成領域で得られていることがわかる。これは、合金組成自体の透磁率だけでなく、正の結晶磁気異方性および飽和磁歪定数、高いアスペクト比、大きい結晶粒径が得られる組成であることが要因であると考えられる。なお、本実験におけるX線回折の結果、全ての扁平粉末において、磁性シートの厚さ方向に(100)方向が異方化していることが認められた。
(実験B)
次に、磁性シートのμ’に及ぼすアスペクト比の影響について検討した。Fe−6%Si−7%AlおよびFe−3%Si−13%Alの組成において、アトライタ加工時間を変更し、数水準のアスペクト比の扁平粉末を作製し、実験Aと同様の方法でμ’およびアスペクト比の評価を行なった。なお、アトライタ加工時間以外の条件は、実験Aと同様である。その結果を図8に示す。図8から、両組成において高いアスペクト比に加工することにより高いμ’が得られていることがわかる。しかしながら、アスペクト比が15未満になると120未満のμ’しか得られていないことがわかる。
以上述べたように、センダスト中心組成より、低Si組成とすることで、合金の硬さが下がり、扁平加工においてアスペクト比が大きく出来、かつ結晶磁気異方性定数および飽和磁歪定数が共に正となり、磁性シートとしての複素透磁率を高く出来る。さらには、アトライタによる扁平加工において、結晶粒の微細化効果が小さい等の極めて優れた磁性シートとして用いる場合に高い透磁率を実現できる軟磁性扁平粉末とこれを用いた高透磁率磁性シートを提供できることにある。


特許出願人 山陽特殊製鋼株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊

Claims (2)

  1. 組成が質量%で、Feが84.0%以上96.0%以下、Siが4.0%を超え7.0%未満、Alが3.5%を超え5.4%以下よりなり、残部が不可避的不純物であり、下記式(1)を満たし、かつ、アスペクト比が15以上であることを特徴とする軟磁性扁平粉末。
    2Si%−Al%≦15.0 ・・・ 式(1)
  2. 請求項1に記載された軟磁性扁平粉末を含有することを特徴とする磁性シート。
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